連載小説
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冬のひととき (修正版
「今日薪を忘れたのは痛かったなぁ・・・」
 顔に無精髭をたずさえた男が身震いをした。男はまだ20歳になったばかりではあるが、その髭と、まるで隠居した老人のように一人寂しく暮らしている事もあり、10歳は老けて見えてしまっている。
たまに町に降りては子供にばかり好かれるので、完全にやさしいおじさん扱いなのだろう。

「寒いからって火にかけたままスープなんて贅沢な事するもんじゃないな」

 部屋の明かりの蝋燭すら、最後の一本。せめて明かりのあるうちに夢に堕ちてしまおう。

そんな時だった。

・・・ン、コン

「ん?」
あまりにも弱弱しい音だったため、風かとも思ったが
 コン、コン
その規則的な音が来客だと知らせていた。

「こんな日に出歩くような奴がいるとはね・・・」
今日は冬の中でも寒波の影響でもっとも寒いといっていいほどである。
日付が変わるほどの夜中ではないとはいえ、家の中ですら上着を4枚は着込んだうえで毛布にくるまりたいほどの寒さである。

コン、コン、コン
「っと、考えてる場合じゃないな」
さぞ凍えているだろうと思い、急いで玄関を開けた。
「・・・子供?」
「・・・・・・あの」
こちらが気づいたのを知ってか知らずか、目の前の少女が声を発した。
「わs・違・・の・・・はになてくれません・・・か?」
「え?」

少女がハっとしたような表情になり、男に向き直った。
「わたしの!・・・ちちははに、なってくれませんか!?」
「・・・なに?」
「なって、くれませんk!・・・ケホッ」
「ちょ、大丈夫か!? とりあえず入って!」

 それから少女はまた、すがるように言葉を繰り返していたが、すぐに糸が切れたかのように倒れてしまった。
屋内とはいえ放置するわけにもいかないと思い、 男はなけなしの薪をなんとかまとめ、朝までその少女を暖めていた。


「ん・・・・・・?んぅ・・・」
「お目覚めかい?」
「ふぇ!?」
 寝起きにやさしく声をかけたつもりだったが、予想以上に驚かせてしまったらしい。怯え気味の少女に内心謝りながらも、話す以外に手段が見つからないのでなんとか話題を探す。

「昨日言ってたこととか、君の事、聞いてもいいかな?」
一瞬ではあるが、少女の顔に笑顔が浮かんだ気がした。

 そして、少女はゆっくりと語り始めた。自分は両親もおらず、帰る家もないということ、そして、昨日話した『ちちはは』になってくれる人を探しているということを。

「要するに・・・。ちちははってのは父母・・・新しい両親探し、でいいのかな?」
「ふ・・・ぼ」
たしかそんな感じだったよね。と少女が小声で、自分に何か言い聞かせ、しっかりと頷いた。

「親、ねえ」
正直男は迷った。身元もわからない少女の親を、二つ返事で承諾していいものか、と。
しかし、布切れのようにしか見えない服、赤く切れた指先。それに反して顔や服の破れ目から覗く肌がやけに綺麗なのは不審でもあったが、それ以上に情が湧いた。

そして何より、どこから漂うのか定かではない甘い香りが、養うくらいいいではないか、という気分にさせていた。
「まあ、家なんかでよければ、住むくらいはいいさ」
「!!」
パァっと少女の顔が明るくなった。


そしてその日から、名も知らない少女との2人暮らしが始まった。
「とりあえず、買い物くらいは行かないと、な」
「は、はいっ!」
「いやそんな意気込まなくてもいいから」
まるで鞄の紐をちぎってしまいそうな掴み方をしてる少女をなんとか落ち着かせ、外へ出る。
「うへぇー。寒いなぁ」
「(コクコク)・・・(ブルッ」
男のものとはいえ、トレーナーをまるでワンピースのように着ている少女が震える。
コートも貸してやりたい男ではあるが、あいにくコートは1枚しか持っていない。
できる限り自分が風よけになりながら、2人は町へ急いだ。

町へ着いてからは、男は驚いてばかりだった。
町から流れてきたのだから、ある程度は知っていると思っていた知識が、ほとんどないのだ。地理はもちろんのこと、買い物はおろか、金貨すら知らないと言ったのだ。
あやしさは増す一方ではあるが、男はなるべく考えないようにしながら、あくまで初めて自分以外のための買い物を楽しんだ。

夕方になり、男たちは家へと帰ってきた。
「結構買ったなぁ・・・」
「はぃぃ」
結局鞄に入りきらず、お互いが手にいっぱいの荷物を抱えて帰ることとなっていた。
「けどごめんなぁ。服似合うの買ってやれなくて」
最初は少女用の服も買う予定だったのだが、品物を選んでいる最中の周りからの視線に耐えきれず逃げてしまい、結局男が新しく着る服を買ってしまい、少女は今までの服をおさがりに着ることになったのだ。
「だ、だいじょうぶです」
まだぎこちないが笑顔を見せてくれた。
「いいにおい、です」
そっと少女が来ている服の袖を顔に差し出す。
確かに素材がいいのか、花のような落ち着く良い香りがした。
つられて男も笑顔になっていた。

次の日
「ん・・・?なんか旨そうな・・・」
「あ、おはようございます」
見ると、昨日渡した服を早速着た少女が、台所で料理をしていた。
「ああ、すまん。やらせちゃって」
少女はそれには答えず、調理し終えた料理を更に載せてパタパタと走ってきた。
「どうぞ!」
満面の笑みで差し出した皿の上には、出来たてで湯気をたてるウインナー。
かじってみると、パリっといういい歯ごたえとともにうま味が口に広がる。自分が調理したときとは大違いのできである。
「料理旨いんだなあ!すごいぞ」
思わず少女の頭をなでていた。あ、と思いひっこめようかとも思ったが
「・・・♪」
気持ち良さそうに目を細める少女を見て、もう少しなでてやりたいと思う男だった。

さすがにのどを潤そうと思い、水道へ行こうとすると、目の前で少女が牛乳の入ったコップを差し出してくれていた。
「そういえば、牛乳なんて買ってあったっけか?ゴクッ」
飲むときに何やら微笑んでいるような表情をした少女がはっとして答える。
「あ、あの。・・・昨日勝手に買いました・・・すいません・・・」
「ああいや、別に謝らなくてもいいさ。ありがとう」
そういえば少し小遣いもあげていたんだった。と納得した男はそのまま牛乳を飲みほした。

そんなやりとりも何日か繰り返し、1週間経つころにはかなり打ち解け、少女の体力も回復し、お互いに暮らしを楽しめるようになっていた。
1週間、出どころのわからない甘い香りも続いていたが、特に不快でもないからと気にしていなかった。

そんなある日。

「おなかすきました・・・」
やけに紅く染まった顔で少女が言った。

「今腹いっぱいにしてお互いに食器を片づけてるわけなんだが?」
男の頭には困惑という2文字しか浮かばない。
「おなかが・・・」
そっと少女の額に手を当ててみた。

「あっついな・・・」
「はぅぅ」
少女は気持ちよさそうに目を細めているが、男の心配は募る。
「寝た方がいいな。お前多分幻覚かなんか見えてるだろ」

食器を流しに置き、少女を抱えてベッドに寝させる。
「水、飲むか?」
「いい、ですぅ・・・」
さらに熱さが増したように思える少女が、ハァハァと辛そうに息をする。
その時に、少女と初めて話した時に嗅いだ甘いにおいを特に強く感じたが、それどころではないと男は雑念を振り払った。

「何か欲しいものは?」
「・・・rく・・」
「え?」
「ミルクが、欲しいです」
そう言うなり少女は、懇願するように男の手を握っていた。
「うーむ・・・」
しかし、あいにくと現在男の家にはミルクの買い置きがない。
「買ってこないとならないんだが、待てるか?」
すぐさま行こうと男が立ち上がる。
「だめ・・・」
今にも泣きそうな声で引き止められ、男は結局少女が寝付くまで見ていた。
少女が寝てからミルクも忘れず買いに行き、ついでに喉を通りやすそうなものもいくつか買っているうちに夜が訪れ、男は足早に帰路についた。

家に着くと、少女は目を覚ましてテーブルに向かっていた。
「起きてても大丈夫なのか?」
「あ・・・はい」

「あ、そうだ。ミルク買ってきたぞ」
「え!?」
突然、目を見開いて少女が男の手元を見る。
しかし、すぐに目を伏せた。
「あれ、これじゃなかったのか?」
「えと・・・はい」
「ミルクって、どういう奴のことなんだ?」
ん、と少し少女は考え
「ちちはは」
それだけを簡潔に言った。
「いや、それは聞いたって」
「ん・・・。あ
 にゅう・・・はは?」
「にゅうはは?なんだそれ」
男は、少女の言っている意味がよくわからなかったが
自分の手を見、なんとなく理解し始める。

「にゅう・・・て、乳母のことか!?」
パァっと少女の顔が輝いた。
「いや、でもそれはあきらかに男じゃ無理だろ」
しかし、少女は嬉しそうな顔をしているばかりだった。


そのとき、男は自分の異変に初めて気づいた。
(愚息が・・・勃っ・・・!?)
それに気を取られていたせいなのか、少女はいつの間にか自分の目の前にいた。甘い香りが強くなっていく。
そして、男のズボンをずらしはじめようとしている。

さらに、その全開になりつつあるナニが、少女の手によって外気に触れそうになってしまっている。
「ちょっと待て!離そう、ゆっくりと」
しかし、少女は掴んだ体制から動かず、顔だけをぬぅっと上に向け、男と視線を合わせた。
顔の横に見える手には、毛皮のようなものが見える。
「おとーさん。オナニーって、しないんですか?」
少女が初めて自分の事を父と呼んだ。しかし、そんなことなど頭から消え去るほどの言葉が、後に付け足されていた。

「オナ!?女子がそんなことを言うんじゃない!」
反射的に手を挙げると少女が少し離れた。急いで男はズボンを上げる。
しかし少女は笑顔だった。
「ほっほぅ。オナニーとオナゴをかけるとはやるのぅ」
突然口調が変わっている。脳が追いつかないと唖然とするしかないということを体で悟った男である。
少女が何やら舌なめずりをしている。
その頭には、羊のような角が生え、服は男のおさがりであったはずが、黒く大人びた下着姿に変化していた。

「しっかし、町一番のロリコンじゃと聞いた家ばかり巡ってよやく辿り着いた家じゃというのに、ワシの色気(魔力含む)や策に今更反応とはどういう了見じゃ」
「魔力・・・って、お前魔法使いじゃあるまいし・・・」
やっと落ち着きを取り戻した男が、唯一指摘できたのはそこだった。ロリコンという言葉に関しては反応する余裕もなかったようだ。

「魔法使いなんぞではない。ワシは魔物じゃよ」
その指摘によって、自分が今窮地であると悟った。

11/02/03 21:09更新 / 機械人形
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■作者メッセージ
初投稿です。はじめまして

ついにやりました・・・ぐっだぐだやぁ(殴

山場などの作り方もよくわからず、すごく展開が早かったり遅かったりしますので楽しんでいただけたかはわかりませんが、これからよろしくお願いします。

こんな感じでも基本2話構成予定です(短くまとめられる余裕が・・
誤字などあったらすいません
感想いただけたりすると歓喜のあまりいろいろ暴走します。

これからよろしくお願いします。

2/3結構付け足し部分あり(?)

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