読切小説
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剣と拳
あたり一面緑の草原、そんな中にふたつの人影があった

ひとつは大剣を背中に背負い、大きなかばんを持ち、少し生え放題の髭があることから男の冒険家なんだろうとわかる

もうひとつは腰に付けている少し大振りの剣、全体的に緑色の鎧を着て、鎧の胸のあたりが自己主張していることから女の冒険家ということがわかる

しかし女の手足は鎧と同じような色をし、鎧の隙間から出ている爬虫類のようなすべすべとした尻尾から人間ではなく魔物のリザードマンだと言うことがわかる

女の方は不機嫌そうな顔をし、男は面倒なことに出くわしたような顔をしている


     「何度でも言うが私と決闘をしろ」


女の不機嫌そうな声を聞いて男は答える


 「こちらも何度でも言うが俺は必要なとき意外戦いたくないし、アマゾネスだろうがリザードマンだろうが女性に手を出すことを俺はしたくないからな」


しかし女は諦めることなくしばらくたった後にもう一度男に不機嫌そうな声を変えることなく訊ねる


  「貴様のポリシーはともかく、剣士たるもの日々己の武に磨きをかけていくものだと私は考えているが、必要最低限しか戦わないとは、貴様はよほど自分の武に自信があるのか、ただのヘタレなのかどっちなのだ?」



男も面倒そうな顔を変えずに答える


 「ご生憎様俺はヘタレではないし自分の腕に自信があるわけでもない、
ただ必要以上に戦うと疲れたり無駄に腹が減ってしまう、腹が減るって事はその分食費がかかるってことだからそれが嫌なんだよ」


女は男の返事を聞いてついに我慢ができなくなったのか男に怒鳴り始める

 「じゃあ何か私は貴様にとって取るに足らない存在で、私と決闘することより決闘しないことで食費があまりかからなくなる方が大事なのか!!」


男は女の怒声に顔をしかめながら答える


 「俺は別にあんたをなめてるわけではないし、あんたと決闘してかかる食費も気になるが、それよりも決闘するって事はあんたに怪我をさせてしまうかもしれないからそれが嫌なんだよ」
男は続けて言う


 「それにあんたはなんで俺なんかにこだわるんだ?、今はこんな場所だから全然いないが、あと2、3日進めば街があるはずだから剣士なんてたくさんいるだろうに」


男の軽くあしらうようにいった言葉に女はまだ怒っている表情で答える


 「今の私は貴様と戦いたいんだ!旅の出会いは一期一会、貴様とは街で別れる前に手合わせがしたいんだ!」


しばらく二人が似たようなやりとりをしているといくつかの人影が二人を取り囲んだ

どの人もぼろぼろのぎりぎり服だといえるような布を纏い、その服と同じように手入れのされていない斧や剣を持ち、旅人の男よりも生え放題の髭があることから街へ向かったり街から出てきた商人などを狙っている盗賊なのだろうと察せる

そのうちのリーダーだと思われる男がニタニタと笑い顔を浮かべながら二人に話しかけた


 「よぉお二人さん、二人仲良く旅してんのか、まだ旅がしたかったら金目のものをおいていきな」


男は3日前女に初めて決闘を申し込まれた時のような顔をして答える


 「ご生憎様こいつとは3日前にあったばかりで残念だが仲もあまりいいとはいえないんだ」


盗賊の一人がイラついたような顔で怒鳴る


 「んなぁこたぁどうでもいいんだ!さっさと金目の物を出しやがれってんだ!代わりにその女を置いていってもいいんだがよ」


男はまた顔をしかめながら答える


 「残念だが金目のものなんて俺のこの剣ぐらいだ、まぁ知り合いのサイクロプスに打ってもらったやつだから結構値は張るとおもうが」


男はそういって自分の得物を差し出しながら盗賊の方に歩み寄る


 「わかればいいんだよ!少々ものたりねぇがさぁやろうどもずらかるぞ!」


逃げようとしている盗賊に男は先回りして言う


 「何を勘違いしているんだ?俺はお前らがあんまりにもみすぼらしいから俺の剣をみせてやろうって渡しただけだぞ」


いきなり先回りしてきた男に盗賊達は少し驚いたが男の言葉を聴いたとたん全員の顔が怒った表情になった

対して男はそんな盗賊達の表情など気にせずに盗賊たちの向こう側にいる女に対して少し大きめの声で話しかける


 「なぁ、決闘はしてやれないが共闘はできそうだがどうする?」


女は少しハッとした顔になったがすぐに少し笑った後答えた


 「わかった、決闘ができないのは残念だが貴方の実力が見れるならそれに越したことは無い」

そういいながら女は自分の得物を鞘から抜き

男は襲い掛かってきた盗賊に回し蹴りを浴びせる


       「このやろう!ぶっ殺してやrぶへぇ」


そうしてそれなりの数がいた盗賊もどんどん減っていく

女は自分に近づいてきた盗賊に一撃を浴びせながら男の剣を取り返し言う


 「おい、貴方も剣士なら自分の得物ぐらいしっかり持っていないとだめじゃないか」


男は女から自分の剣を受け取って言う


 「すまないな、俺は武道家でもあるから別に無くても問題ないんだが・・やはり無いと変な感じだな」


その時全員倒したと思っていた女が突然起き上がったリーダーに捕まってしまう

リーダーは女の首に自分の剣をあてながら血走った目で男の方を見て叫ぶ


 「このやろう!この俺様を馬鹿にした挙句ボコボコにしやがって!!こいつを殺してやる!!そのあとお前もころしてやる!!!」


男はリーダーに対してまるで汚物を見るような目で見て言う


 「おい、人質に取るなら殺さないほうが効果的だぞ、あとその人にそんなことをしようとするんだったらこっちにも手はある」


リーダーはまるで狂ったように笑いながら叫ぶ


 「あははははそんなことしったもんか俺様を怒らした罰だぶっ殺してやる」


リーダーの笑い声を聞きながら男は自分の得物に手をかけて言う


 「仕方無い、テメェがそうするならとっておきをみせてやるよ」


        「キャストオフ」


男がそう言うとなんと男の大剣が中ほどから割れて中から少し長いカタナが出てきた

リーダーは少し驚いたような顔をしたがすぐに女の首に突きつけている自分の得物に意識を戻した


 「そんな小細工しようがぁ!こいつでザックリしちまえば俺様の勝ちなんだよおおお!」

リーダーが女の首を自分の得物で切り飛ばそうとしたそのとき、それなりに離れていたはずの男が突然二人の真後ろに現れた


             「遅いな」


男の腕が少し動いたと思ったときリーダーの体がぐらりと傾き地面に倒れた


             「セット」


今度はそう呟くと少し前に男がいたところに落ちていた大剣のパーツがカタナのところに戻っていき、やがて元の大剣に戻った


        「すごい・・・・・」

女は無意識の内にそう呟いていた


 「こいつにはちょっとした魔力が込めてあってな、大剣の時はなんにもないが、カタナになるとあとですごく疲れるがかなり身体能力が上がるんだ」


男がそう説明すると女は急に申し訳なさそうな顔をして謝る


 「すまない私の詰めが甘かったせいで貴方に迷惑をかけてしまった・・・」


男は少し息切れしているがまた面倒そうな顔をして言う


 「別に謝らなくてもいい、あんたが無事だったんだしな」


男はそう言うとまた真面目な顔に戻り続ける


 「さて俺は1つあんたに言いたかったことがあるんだ」


女は明るい顔になって答える


 「なんだ?今の私ならスリーサイズから性癖だって答えてやるぞ」


男は少し笑ってから言う


「なんか急に友好的になったな、まぁそっちのほうが言いやすいからいいか」


    「俺があんたに言いたいことはたった一つ」


          「俺と結婚してくれ」


女はいきなりの男のプロポーズに少し困った顔をしたがすぐに少し顔を赤面させながら答えた


 「えと、私なんかでいいのか?今まで戦うことしか考えてなかったし、魔物だし、女らしくないし・・・」


男は少し表情を曇らせて言った


 「その・・・あれだ・・・急に言ってすまなかったな嫌ならべつにいいんだが・・・」


女は慌てて言った


 「嫌じゃない!ちょっと驚いただけだ・・・私から言おうと思ってたからな」


男は女の返事に喜びながら言った


 「ふむ、相思相愛とはな、じゃあこれからもよろしくな、えーっと・・・」


女は男に微笑みながら答えた


   「そういえば私たちはお互いの名前を知らなかったな」


   「私の名前はリム=リアーナだこれからよろしくな♪旦那様」


男もリムに微笑みながら言った


     「旦那様か、悪い気はしないな」


   「俺の名前はマグラス=デイムだこちらこそよろしくな」


マグラスは自分たちが蹴散らした盗賊たちを見ながら言う


 「たしかこいつらは街で指名手配されてたはずだから、街の役所に引き渡して式を挙げるための資金にするか」
























            「そういえばマグ」


            「ん?どうした」


 「あのときに言いたかったことがあるといって私にプロポーズしたよな?」


           「それがどうした?」


 「言いたかったことがあるってことは前から言おうとしてたってことだろうが何で出会って間もないのに言おうと思ったんだ?」


            「簡単な話だ」


    「俺がお前に一目惚れしたってだけのことだよ」
10/06/29 21:51更新 / 錆鐚鎌足

■作者メッセージ
ていうことでリザ子の話です
途中で一気に厨二臭くなってしまいましたがそれがやりたかったから書いたので仕方が無い

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