クリスマスにグールさんと食事した話
クリスマス。
日本では家族や恋人と過ごすイベント。
子供は枕元にプレゼントが置かれ、恋人達は性夜を過ごす。
では、それ以外の人達、主に彼女や妻がいない男性は？
大人になってしまった男はどうするのか？
友達と一緒にドンチャン騒ぎをする人もいるだろう。
しかし、そんな時は決まって誰かが、
「なんでクリスマスに野郎同士で集まってんだ？」
と言うのだ。
そしてため息をつき、彼女がいれば、などの話に花を咲かせる。
まぁ、それはいい。
いや、ホントは良くないけど今の俺よりかはまだマシだと思う。
今年の俺は寂しく一人で聖夜を過ごすことになっている。
ああ、今年はクリスマスが中止になればいいのに。
「っと、以前はそんなこと考えてた時期もありました！」
そう、なにもクリスマスに寂しい思いをしているのは男ばかりではない、魔物娘もそうなのだ。
話が逸れるがこの世界、主に日本では魔物娘の異世界からの移住が認められている。
認められて半年も経たないが関係は良好、表立った問題も無いように見える。
ニュースに取り上げられる以前から社会に潜伏していたらしいが、魔物娘の存在が囁かれ始めた当時はネットのオカルト関連の記事で多少もてはやされるぐらいで、認められた後も人々の生活はほとんど変化しなかった。
そんな人々と良好な関係を作っている魔物娘達は季節ごとのイベントが行なわれるたびに不満を漏らしていた。
出会いが無い、イチャつくカップルが妬ましい、なぜ私だけが独り身なのか、と。
しかし1ヶ月前そんな魔物娘の怨恨の声がピッタリと止んだ。
それと同時にこんな噂が彼女や妻がいない男達の間でよく話される様になった。
魔物娘専門マッチングサイト「魔物娘といっしょ！」
このサイトは悪いいい方をすると「出会い系」と呼ばれるものだが、サクラがいない、情報は正確、時間さえ合えば必ず会える代物らしい。
しかし、『選ばれた者』、『招待された者』しか見つけることができず、見つけた者は一週間似内に彼女ができるというものだった。
そして俺はその『選ばれた者』になったのだ！
気づいたのは今日、いつものようにメールをチェックしていると「魔物娘といっしょ！」と書かれたメールが送られていた。
俺はすぐにメールを開いた。
あなたは１７５９人目に選ばれた人です。
魔物娘と一夜を共にしてみませんか？クリスマスは魔物娘と楽しく過ごそう！
マッチングサイト「魔物娘といっしょ！」 詳しくはWEBで！！
やっぱりそうだ、これは「魔物娘といっしょ！」への招待状だった！
メールに記載されているURLをクリックする。
最初に現れたのは登録画面。
どうやら登録しなれば利用できないらしい。
登録は名前と住所、あと今後ログインする時に使うパスワードを入力するだけだった。
ログインすると中央にプロィールの編集画面、画面の上の方にはメールボックス、魔物娘の検索、デートプランというボタンがあった。
メールボックスは連絡を取りたい魔物娘にメールを送る機能だ。
検索機能は自分が住んでいる付近の魔物娘の中から種族を絞り込むことしかできない。
他にも「おすすめボタン」なるものもあり、検索以外に「あなたとベストな関係になれる」魔物娘を勝手に選択してすすめてくれる。
こちらの方は地域などに縛られないため検索ヒット数は多い。
検索が面倒と思う人用に「リリム様の一押し！」というもあり、登録されている魔物娘一人をランダムに検索してくれるらしいのだが、これがランダムかどうかはわかっていない。
聞いた話よると、何度やっても同じ相手が出てきたり、相手を決めた直後に家のインターフォンがなったりした、などの噂や、自分好みの相手しかヒットしない、検索でヒットしなかった理想の相手がヒットしたなど噂もあるので、これが良い機能なのかどうかは判断に困る。
「さて、どんなかわいこちゃんがいるのかな？」
早速検索機能を使いPCの前で吟味する。
「なるほど、ウシオニやオーガ、アカオニなんかも結構いるな。あ、アオオニの子が取られた。ふむ、これはグズグズしてられないな」
ここではお互いが同意し会うことが決まった魔物娘から他人の選択画面から消えていく、つまり早いこと相手を見つけないと次々と取られてしまうのだ。
しかし、検索でヒットしたのはウシオニ、オーガ、アカオニ、ゴブリン、あとさっき取られたアオオニの5人だけだ。
「といっても、ささやかなクリスマスを送りたいしな。飲み会みたいなドンチャン騒ぎは別の機会に……っと、お？」
上の方でメッセージが届いたと知らせる「！」マークが点滅している。
このマッチングサイトではなにも男性ばかりが魔物娘を選ぶばかりではない、魔物娘も男性を選んでくるのだ。
「でもおかしいな。さっき登録したばかりで顔写真も無いのに」
相手に公開出来る情報は自分の顔写真と簡単なプロフィールぐらいなのだが、さっき登録した俺は写真どころかプロフィールも「よろしく」の一言である。
こんなことで人物像など想像できるはずもない。
「まぁいいや。とにかくメッセージをひらきましょうかね」
そこには
「一目見た時からあなたに決めていました。クリスマスを一緒にすごしませんか？できれば二人きりで」
とのメッセージが。
差出人はグールのセラさん。
顔写真の他にも日本のファッションに身を包んだ全身の写真が添付されている。
小麦肌のモデルだと言われても納得出来るプロポーションだ。
こんな綺麗な子と一緒に食事できるならいいかも、と思ったが少し気になるので質問をする。
「メッセージ、ありがとうございます。自分もあなたとクリスマスを一緒に過ごしたいです。ですが、どうして私を選んだのかを聞かせてもらえないでしょうか？」
返信を返す。
数分もしないうちに返事が帰ってきた。
「最近引っ越してきたばかりなので、できれば近い人がいいなと。ダメだったでしょうか？」
うん、ダメじゃない。
確かに近いか遠いかも重要だし、なによりすぐに会ってみたい。
そうと決まれば返信だ。
少し怪しいが大丈夫、このサイトは嘘つかない。
「了解です。では待ち合わせは…………」
---------------------------------------------------------------------------------------
「お待たせしました！」
夜。
待ち合わせの駅前の大きなクリスマスツリーの前。
せっかくのデートなので服選びに時間がかかり、美容院などにも行き、さらには電車が遅れたため待ち合わせに五分遅刻してしまった。
セラさんは既に待っていた。
褐色の肌にサラサラな銀色の長い髪、白のモコモコのニット帽に白いマフラー、白のコートをきて、寒いのに赤いミニスカート、足には黒のニーソと、薄茶色のブーツを履いている。
「いいえ、私もきたところなので」
白い息を吐きながら微笑む彼女。
しばらく待っていたのか、褐色の頬は赤みを帯びている。
待たせてしまったことに良心が傷んだが、今は落ち込むより彼女を暖かい所へ連れて行かなければいけない。
「では行きましょうか」
彼女を連れて家を出る前に予約をとっていたレストランへ向かうことにする。
このマッチングサイトは出会いだけでなく、その後のデートプランの予定も
立てれるツールも用意されおり、
魔物娘関連の飲食店やレジャー施設、ホテルなどを検索でき、大まかなデートプランを簡単に組めるのだ。
そんなわけで、現在利用可能なオススメのお店を検索し、家を出る前に予約を入れておいた魔物娘関連の洒落たレストランで食事をした。
料理自体はとても美味しかったが、見たことのない食材がいくつかあった。
ネバネバした平べったいキノコの入ったスープや、青筋の入ったピリリと辛いキノコが乗っているステーキ。
その添え野菜のじゃがいもによく似た味の赤みがかった芋や半透明な半液体状の野菜。
デザートには冷やしたハート型の果実にねっとりとした甘い香りがする粘性の高いハチミツをかけた物や濃厚なミルクの味がするケーキが出てきた。
これらはセラさんのいた世界の食べ物らしいが、人間が食べても害はないらしい。
その食材の話がきっかけで、俺たちの会話はとても弾んだ。
いろんなことを話した。
自分のこと、趣味のこと、あと毎年クリスマスに寂しい思いをしてきたことを話した。
彼女はこの世界に来たときの苦労話や驚いたこと、あと故郷の話してくれた。
いつの間にか「ですます」口調を忘れ、お互いに砕けた話し方をするまで仲が良くなっていた。
ふと腕時計を見ると思った以上に時間が過ぎている。
時間もいい感じになってきたし、そろそろ帰ろうかな。
話を区切りのいいところで終わらせ、二人で店を出た。
「今日はありがとう。楽しい時間だったよ」
「こちらこそ、楽しかった」
一瞬寂しそうな顔をしたセラさんだったが、すぐに優しい笑顔でそう言ってくれた。
俺とセラさんは駅まで一緒に歩いて行こうとしたのだが、
「きゃっ！」
なんとセラさんが何もない所でつまずき右足を怪我してしまったのだ。
僕たち人間の流す血よりもより赤い血がニーソからにじみ出ている。
まるで刑事ドラマで被害者が流す血の色かと思ったほどだ。
足を抑えて痛そうにしている。
「大丈夫かい？！」
彼女に駆け寄り、タクシーで病院へ行こうと提案したが、魔物娘は人間ではないため普通の病院での治療は難しいそうだ。
かといってこのままここにいる訳にはいかない、外は寒すぎる。
ここはゆっくり休める暖かい室内で休む方がいいだろうと思い、セラさんに肩を貸してさっき出た店の隣にあるホテルへ入った。
これは決してやましい気持ちはない、紳士的な態様だ。
部屋に入ると甘く官能的な香りがしたが、今は気にしている場合じゃない。
セラさんをホテルに置いて、先程までいた店で事情を話し、魔物娘の店員さんにどうしたらいいかと聞いた。
店員さんはあらかじめ用意していなのかと勘違いしてしまいそうなほど早く塗り薬とガーゼ、それと包帯をを持ってきてくれた。
なんでも、この塗り薬なら怪我はもちろんのこと、痛みも和らぐとのこと。
これでセラさんの怪我が直せる！
店員さんにお礼を言い、俺はすぐにホテルに戻った。
部屋に戻りセラさんを治療しようとしたのだが、恥ずかしいので自分でやらせてほしいと言われた。
そりゃそうだ。
あって間もない男に足を触られたくはないだろう。
俺はセラさんが怪我の治療が終わるまでセラさんに背を向けた。
怪我の治療も終ったようなので振り向くと、右足に包帯を巻いているセラさんがいる。
できれば魔物娘でも治療が出来る病院へ連れて行ってやりたいが、どこにあるかはわからなかったし、応急処置は済んだので今日は家に帰って安静にしといた方がいいだろう。
せめて家までは送り届けてあげなくては！
「歩けるようになったら家まで送るよ」
「ごめんなさい、今日は帰りたくないの」
やはり家で一人なのは寂しいのだろうか？
怪我をしているのならなおさら、かもしれない。
しかし、俺も男だ。
男と女がひとつ屋根の下、いやホテルにいるのだ。
もし間違いなど起きたら目も当てられない。
「じゃぁ僕は別の部屋をとるよ。一緒の部屋だとまずいし」
理性を押さえつけて退散しようしたのだがセラさんに腕を掴まれてしまった。
「……一緒にいて？」
うるうるとした目で上目ずかいに見つめられてしまった。
胸がドキドキする。
「わ、わかった。じゃぁセラさんが眠るまでの間だけここにいることにする。それなら寂しくないだろ？」
俺は一夜の過ちを犯すまいと必死に妥協点を探りながら理性で欲望を押さえ込む。
しかし、セラさんは納得していないらしく、首を横に振る。
「ずっと一緒にいて、私、あなたがいないと不安で潰れそう」
俺の腕に胸を押し付けてくるセラさん。
り、理性が！
「で、でも、もしものことがあると困るし」
「いいよ」
「え？」
「もしものこと起こっても、あなたなら、いいよ？」
その瞬間、欲望が理性を上回り勢い余ってセラさんに抱きついてしまった。
「俺もセラさんと一緒にいたい！離したくない！！」
「ほんとに？！うれしい！」
セラさんも足の怪我を忘れて俺に抱きついてきた。
体に柔らかい体を抱きしめ、そのままキスをしたため息子もいつも以上に盛り上がってしまった。
息子がいつもの１．５倍以上に膨れ上がり、硬いゴムの素材かと思われるくらい固くなってしまっている。
そのままベットへ倒れた俺とセラさんは今夜、ホテルで性夜を過ごすことになった。
---------------------------------------------------------------------------------------
数時間経ち、俺の息子が弾切れになった俺はセラさんの肩を抱き、外に見える星を見ていた。
「見て、流れ星。綺麗」
「ああ、そうだね」
俺はその流れ星に願う。
この関係がずっと続きますようにと。
---------------------------------------------------------------------------------------
所変わって、とある地下にあるバフォメット諜報部のオペレーター室。
そこには何人もの魔女と少し高い席にバフォメットが一人ずでんと座っていた。
各自の目の前にはキーボードやマウス、ディスプレイが置かれ、耳にはヘッドホンマイクを付けている。
さらに部屋の正面一面には何種類もの大きなモニターが設置されており、画面には魔物娘と男性が写っていたり、PCを操作する男性だけが写っていたりとまちまちだ。
「目標、ターゲットを仕留めたようです」
「うむ、今年は豊作じゃな！わざわざ人工衛星まで飛ばした甲斐があったわい！」
一つのモニターにはホテルの窓からこちらを見上げているグールと先ほど彼氏になった男が写ってる。
ここにいる彼女達は自分たちの存在が明るみに出る前から世界に暗躍していた者たちだ。
この世界のパソコンやネット環境について研究し、つい1ヶ月前にこの世界に移住した魔物娘達の要望であるサイトの作ったのだ。
「チーフ、調査班からの報告です」
魔女の一人がバフォメットへ報告をする。
バフォメットの席のディスプレイにクノイチの顔が映った。
「こちら調査班のクノイチ。ターゲットHのエロ本、お呼びPCのDドライブ内のエロ画像を調べた結果、猫耳率が非常に高く、タイトル、魔物娘フォルダーには278枚のワーキャット、ネコマタ、スフィンクス、チシャ猫などのイラスト、お呼び画像が発見されました。引き続き調査を続けます」
ディスプレイは元の画面に戻り、バフォメットは先ほどの魔女に指示を出す。
「作戦班にダーゲットHのデータを送りデートプランとターゲットの彼女希望をするキャット属の募集をするのじゃ！」
「了解！作戦班、こちらオペレーター室。今から送るダーゲットHのデータを元にデートプランと彼女候補のキャット属の募集をおねがします」
他にもクノイチやカラステングなどの裏で活動する魔物娘によって「魔物娘といっしょ！」に招待する男性候補を選び出し、監視、調査を行ってる。
候補となる男性はフリーであること、魔物娘に興味があることが条件なのだが、その場合、エロ本やPCのエロフォルダまで調べあげられるので慈悲はない。
「チーフ。やっぱりこのサイトの名前、変えた方がいいと思うのですが」
別の魔女がバフォメットへサイトの名前について不満を漏らす。
「何を言っとる、そっちは魔物娘専用じゃろ？それに、これが見つかったとしても男達は勘違いしてくれるじゃろうて」
不満を漏らした魔女のディスプレイには「必殺！ヤギちゃんの狩り部屋」と血文字で書かれたサイトが写っていた。
どうやらこのサイトはIDとパスワードが無くなっており、ログインしてもゲームの攻略法や、映画のネタバレなど情報が載ってるだけであった。
しかし、画面上に居る動物のヤギの画像の角をクリックすることで、そのサイトは別の顔を見せる。
ヤギは可愛いバフォメットのイラストに変わり、ゲームの攻略法は「魔物娘と一緒！」の登録している男性の詳細なプロフィールと性格や性癖が書かれており、魔物娘達はその中から今夜を一緒に過ごす男性を見つけ出す。
映画のネタバレは個人の魔物娘達が狙っている男性の状況が人工衛星から撮った写真を数時間おきに更新されていた。
写真には家の中のはずなのに、まるで人形の家の様に邪魔な屋根や天井、壁だけが取り除かれ、男性がなにをしているか確実にわかるようになっている。
今魔女のディスプレイ写っていたのは家から出る寸前の、グールの彼氏になる前の男の姿が写っていた。
魔女はキーボードをカタカタと打ち込み、グールの彼氏の情報を消していき、さらにもう一度「必殺！ヤギちゃんの狩り部屋」に入り、グールの彼氏の情報が消えているか確認した。
「チーフ、ダーゲット筋肉スキーSとドールコレクターYがアクセスしてきました」
さらに別の魔女がバフォメットへ報告する。
「うむ、ではAにはオークなどのぽっちゃり系を、Bには妖艶なサキュバスなどのお姉さま系の検索結果にだすのじゃ！頃合をみてオーガとリビングドールに連絡をいれるのじゃぞ？」
「了解。待合室のオーガのカーヤさん、リビンドールのエリザさん、そろそろ本番です。各自PC前で待機してください。繰り返します……」
「魔物娘といっしょ！」に招待する男性は、魔物娘が調査の依頼をしたものもある。
本来、「必殺！ヤギちゃんの狩り部屋」で提示されている男性の中から気に入った男性も選ぶのだが、たまたま見かけた男性が気になった場合などは調査班が動き、男性がフリーだった場合は依頼した魔物娘へ連絡され、デート服やプランなどを立て、男性が「魔物娘といっしょ！」にアクセスした後、頃合をみてこちらから自分の一番写りのいい全体像が写っている写真をメッセージに添付してを送り、あたかも男の方がデートプランを立てたかのように見せかけ、以前から練っていたデートプランを提供する。
さらに各所にいるサポーターの力を借りて男のハートを仕留め、見事彼氏、もとい夫を手に入れるのだ。
「さぁ、まだまだ仕事は残っておるぞ！気合入れていこう！」
「「「「「おー！」」」」」
小さな彼女たちは片腕を上げ、自らの仕事に戻ってく。
今日はクリスマス、いつも以上に忙しいが、家へ帰ったら自分専用のサンタさんが待っているのだ。
いい子にしてたらプレゼント、彼女達はそのことを頭に入れ、頑張るのであった。
日本では家族や恋人と過ごすイベント。
子供は枕元にプレゼントが置かれ、恋人達は性夜を過ごす。
では、それ以外の人達、主に彼女や妻がいない男性は？
大人になってしまった男はどうするのか？
友達と一緒にドンチャン騒ぎをする人もいるだろう。
しかし、そんな時は決まって誰かが、
「なんでクリスマスに野郎同士で集まってんだ？」
と言うのだ。
そしてため息をつき、彼女がいれば、などの話に花を咲かせる。
まぁ、それはいい。
いや、ホントは良くないけど今の俺よりかはまだマシだと思う。
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そんな人々と良好な関係を作っている魔物娘達は季節ごとのイベントが行なわれるたびに不満を漏らしていた。
出会いが無い、イチャつくカップルが妬ましい、なぜ私だけが独り身なのか、と。
しかし1ヶ月前そんな魔物娘の怨恨の声がピッタリと止んだ。
それと同時にこんな噂が彼女や妻がいない男達の間でよく話される様になった。
魔物娘専門マッチングサイト「魔物娘といっしょ！」
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そして俺はその『選ばれた者』になったのだ！
気づいたのは今日、いつものようにメールをチェックしていると「魔物娘といっしょ！」と書かれたメールが送られていた。
俺はすぐにメールを開いた。
あなたは１７５９人目に選ばれた人です。
魔物娘と一夜を共にしてみませんか？クリスマスは魔物娘と楽しく過ごそう！
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「さて、どんなかわいこちゃんがいるのかな？」
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「なるほど、ウシオニやオーガ、アカオニなんかも結構いるな。あ、アオオニの子が取られた。ふむ、これはグズグズしてられないな」
ここではお互いが同意し会うことが決まった魔物娘から他人の選択画面から消えていく、つまり早いこと相手を見つけないと次々と取られてしまうのだ。
しかし、検索でヒットしたのはウシオニ、オーガ、アカオニ、ゴブリン、あとさっき取られたアオオニの5人だけだ。
「といっても、ささやかなクリスマスを送りたいしな。飲み会みたいなドンチャン騒ぎは別の機会に……っと、お？」
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「でもおかしいな。さっき登録したばかりで顔写真も無いのに」
相手に公開出来る情報は自分の顔写真と簡単なプロフィールぐらいなのだが、さっき登録した俺は写真どころかプロフィールも「よろしく」の一言である。
こんなことで人物像など想像できるはずもない。
「まぁいいや。とにかくメッセージをひらきましょうかね」
そこには
「一目見た時からあなたに決めていました。クリスマスを一緒にすごしませんか？できれば二人きりで」
とのメッセージが。
差出人はグールのセラさん。
顔写真の他にも日本のファッションに身を包んだ全身の写真が添付されている。
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返信を返す。
数分もしないうちに返事が帰ってきた。
「最近引っ越してきたばかりなので、できれば近い人がいいなと。ダメだったでしょうか？」
うん、ダメじゃない。
確かに近いか遠いかも重要だし、なによりすぐに会ってみたい。
そうと決まれば返信だ。
少し怪しいが大丈夫、このサイトは嘘つかない。
「了解です。では待ち合わせは…………」
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夜。
待ち合わせの駅前の大きなクリスマスツリーの前。
せっかくのデートなので服選びに時間がかかり、美容院などにも行き、さらには電車が遅れたため待ち合わせに五分遅刻してしまった。
セラさんは既に待っていた。
褐色の肌にサラサラな銀色の長い髪、白のモコモコのニット帽に白いマフラー、白のコートをきて、寒いのに赤いミニスカート、足には黒のニーソと、薄茶色のブーツを履いている。
「いいえ、私もきたところなので」
白い息を吐きながら微笑む彼女。
しばらく待っていたのか、褐色の頬は赤みを帯びている。
待たせてしまったことに良心が傷んだが、今は落ち込むより彼女を暖かい所へ連れて行かなければいけない。
「では行きましょうか」
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料理自体はとても美味しかったが、見たことのない食材がいくつかあった。
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その添え野菜のじゃがいもによく似た味の赤みがかった芋や半透明な半液体状の野菜。
デザートには冷やしたハート型の果実にねっとりとした甘い香りがする粘性の高いハチミツをかけた物や濃厚なミルクの味がするケーキが出てきた。
これらはセラさんのいた世界の食べ物らしいが、人間が食べても害はないらしい。
その食材の話がきっかけで、俺たちの会話はとても弾んだ。
いろんなことを話した。
自分のこと、趣味のこと、あと毎年クリスマスに寂しい思いをしてきたことを話した。
彼女はこの世界に来たときの苦労話や驚いたこと、あと故郷の話してくれた。
いつの間にか「ですます」口調を忘れ、お互いに砕けた話し方をするまで仲が良くなっていた。
ふと腕時計を見ると思った以上に時間が過ぎている。
時間もいい感じになってきたし、そろそろ帰ろうかな。
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「今日はありがとう。楽しい時間だったよ」
「こちらこそ、楽しかった」
一瞬寂しそうな顔をしたセラさんだったが、すぐに優しい笑顔でそう言ってくれた。
俺とセラさんは駅まで一緒に歩いて行こうとしたのだが、
「きゃっ！」
なんとセラさんが何もない所でつまずき右足を怪我してしまったのだ。
僕たち人間の流す血よりもより赤い血がニーソからにじみ出ている。
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足を抑えて痛そうにしている。
「大丈夫かい？！」
彼女に駆け寄り、タクシーで病院へ行こうと提案したが、魔物娘は人間ではないため普通の病院での治療は難しいそうだ。
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ここはゆっくり休める暖かい室内で休む方がいいだろうと思い、セラさんに肩を貸してさっき出た店の隣にあるホテルへ入った。
これは決してやましい気持ちはない、紳士的な態様だ。
部屋に入ると甘く官能的な香りがしたが、今は気にしている場合じゃない。
セラさんをホテルに置いて、先程までいた店で事情を話し、魔物娘の店員さんにどうしたらいいかと聞いた。
店員さんはあらかじめ用意していなのかと勘違いしてしまいそうなほど早く塗り薬とガーゼ、それと包帯をを持ってきてくれた。
なんでも、この塗り薬なら怪我はもちろんのこと、痛みも和らぐとのこと。
これでセラさんの怪我が直せる！
店員さんにお礼を言い、俺はすぐにホテルに戻った。
部屋に戻りセラさんを治療しようとしたのだが、恥ずかしいので自分でやらせてほしいと言われた。
そりゃそうだ。
あって間もない男に足を触られたくはないだろう。
俺はセラさんが怪我の治療が終わるまでセラさんに背を向けた。
怪我の治療も終ったようなので振り向くと、右足に包帯を巻いているセラさんがいる。
できれば魔物娘でも治療が出来る病院へ連れて行ってやりたいが、どこにあるかはわからなかったし、応急処置は済んだので今日は家に帰って安静にしといた方がいいだろう。
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もし間違いなど起きたら目も当てられない。
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「……一緒にいて？」
うるうるとした目で上目ずかいに見つめられてしまった。
胸がドキドキする。
「わ、わかった。じゃぁセラさんが眠るまでの間だけここにいることにする。それなら寂しくないだろ？」
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「で、でも、もしものことがあると困るし」
「いいよ」
「え？」
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その瞬間、欲望が理性を上回り勢い余ってセラさんに抱きついてしまった。
「俺もセラさんと一緒にいたい！離したくない！！」
「ほんとに？！うれしい！」
セラさんも足の怪我を忘れて俺に抱きついてきた。
体に柔らかい体を抱きしめ、そのままキスをしたため息子もいつも以上に盛り上がってしまった。
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そのままベットへ倒れた俺とセラさんは今夜、ホテルで性夜を過ごすことになった。
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数時間経ち、俺の息子が弾切れになった俺はセラさんの肩を抱き、外に見える星を見ていた。
「見て、流れ星。綺麗」
「ああ、そうだね」
俺はその流れ星に願う。
この関係がずっと続きますようにと。
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所変わって、とある地下にあるバフォメット諜報部のオペレーター室。
そこには何人もの魔女と少し高い席にバフォメットが一人ずでんと座っていた。
各自の目の前にはキーボードやマウス、ディスプレイが置かれ、耳にはヘッドホンマイクを付けている。
さらに部屋の正面一面には何種類もの大きなモニターが設置されており、画面には魔物娘と男性が写っていたり、PCを操作する男性だけが写っていたりとまちまちだ。
「目標、ターゲットを仕留めたようです」
「うむ、今年は豊作じゃな！わざわざ人工衛星まで飛ばした甲斐があったわい！」
一つのモニターにはホテルの窓からこちらを見上げているグールと先ほど彼氏になった男が写ってる。
ここにいる彼女達は自分たちの存在が明るみに出る前から世界に暗躍していた者たちだ。
この世界のパソコンやネット環境について研究し、つい1ヶ月前にこの世界に移住した魔物娘達の要望であるサイトの作ったのだ。
「チーフ、調査班からの報告です」
魔女の一人がバフォメットへ報告をする。
バフォメットの席のディスプレイにクノイチの顔が映った。
「こちら調査班のクノイチ。ターゲットHのエロ本、お呼びPCのDドライブ内のエロ画像を調べた結果、猫耳率が非常に高く、タイトル、魔物娘フォルダーには278枚のワーキャット、ネコマタ、スフィンクス、チシャ猫などのイラスト、お呼び画像が発見されました。引き続き調査を続けます」
ディスプレイは元の画面に戻り、バフォメットは先ほどの魔女に指示を出す。
「作戦班にダーゲットHのデータを送りデートプランとターゲットの彼女希望をするキャット属の募集をするのじゃ！」
「了解！作戦班、こちらオペレーター室。今から送るダーゲットHのデータを元にデートプランと彼女候補のキャット属の募集をおねがします」
他にもクノイチやカラステングなどの裏で活動する魔物娘によって「魔物娘といっしょ！」に招待する男性候補を選び出し、監視、調査を行ってる。
候補となる男性はフリーであること、魔物娘に興味があることが条件なのだが、その場合、エロ本やPCのエロフォルダまで調べあげられるので慈悲はない。
「チーフ。やっぱりこのサイトの名前、変えた方がいいと思うのですが」
別の魔女がバフォメットへサイトの名前について不満を漏らす。
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どうやらこのサイトはIDとパスワードが無くなっており、ログインしてもゲームの攻略法や、映画のネタバレなど情報が載ってるだけであった。
しかし、画面上に居る動物のヤギの画像の角をクリックすることで、そのサイトは別の顔を見せる。
ヤギは可愛いバフォメットのイラストに変わり、ゲームの攻略法は「魔物娘と一緒！」の登録している男性の詳細なプロフィールと性格や性癖が書かれており、魔物娘達はその中から今夜を一緒に過ごす男性を見つけ出す。
映画のネタバレは個人の魔物娘達が狙っている男性の状況が人工衛星から撮った写真を数時間おきに更新されていた。
写真には家の中のはずなのに、まるで人形の家の様に邪魔な屋根や天井、壁だけが取り除かれ、男性がなにをしているか確実にわかるようになっている。
今魔女のディスプレイ写っていたのは家から出る寸前の、グールの彼氏になる前の男の姿が写っていた。
魔女はキーボードをカタカタと打ち込み、グールの彼氏の情報を消していき、さらにもう一度「必殺！ヤギちゃんの狩り部屋」に入り、グールの彼氏の情報が消えているか確認した。
「チーフ、ダーゲット筋肉スキーSとドールコレクターYがアクセスしてきました」
さらに別の魔女がバフォメットへ報告する。
「うむ、ではAにはオークなどのぽっちゃり系を、Bには妖艶なサキュバスなどのお姉さま系の検索結果にだすのじゃ！頃合をみてオーガとリビングドールに連絡をいれるのじゃぞ？」
「了解。待合室のオーガのカーヤさん、リビンドールのエリザさん、そろそろ本番です。各自PC前で待機してください。繰り返します……」
「魔物娘といっしょ！」に招待する男性は、魔物娘が調査の依頼をしたものもある。
本来、「必殺！ヤギちゃんの狩り部屋」で提示されている男性の中から気に入った男性も選ぶのだが、たまたま見かけた男性が気になった場合などは調査班が動き、男性がフリーだった場合は依頼した魔物娘へ連絡され、デート服やプランなどを立て、男性が「魔物娘といっしょ！」にアクセスした後、頃合をみてこちらから自分の一番写りのいい全体像が写っている写真をメッセージに添付してを送り、あたかも男の方がデートプランを立てたかのように見せかけ、以前から練っていたデートプランを提供する。
さらに各所にいるサポーターの力を借りて男のハートを仕留め、見事彼氏、もとい夫を手に入れるのだ。
「さぁ、まだまだ仕事は残っておるぞ！気合入れていこう！」
「「「「「おー！」」」」」
小さな彼女たちは片腕を上げ、自らの仕事に戻ってく。
今日はクリスマス、いつも以上に忙しいが、家へ帰ったら自分専用のサンタさんが待っているのだ。
いい子にしてたらプレゼント、彼女達はそのことを頭に入れ、頑張るのであった。
14/02/16 20:42更新 / バスタイム