連載小説
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答えを探す者達
世間とは不条理に出来ている物だ、世の中真っ当に働いても報われない
仕組みになっているのだから

漁業、林業、農業、鉱業・・・・第一次産業はその地主や地方の有力者による
権力によって支配される。
例えば農業なら豊作であろうが労働者があずかる恵みと言うのは
一定の水準を超えず何時だって貧乏、不作なら搾り取られる。

何処かの誰かが、資産家と労働者の関係の成り立ちは資産家は給料を、
労働者は労働力を提供し拮抗する事で成り立つ

しかしその関係は地位や領地権といった権力はもちろんのこと、
様々な「力」によって資産家は労働者を押さえつけるわけだ

もちろん不満を持っている労働者だって居るが、資産家は言葉巧みに彼等を騙す・・・


「農作物が育たないのはマンドラゴラのせいだ」

「海が荒れるのはポセイドンが怒っている」

「落盤は悪質なノームをつれた精霊使いが暗躍している」


等・・・・まあ、モンスターたちがそう言った事に関係がある事は珍しくないが、殆どの事実としてそれらはただ労働者の怒りの矛先をモンスターたちにずらしている

結局、悪知恵と金が世間を動かしている

なら、その内の一つの悪知恵を覚えたのが俺達のような人間だろう

人間が自ら作り出した外側から自らを戒める「法律」という教会の教えを元にした戒律を破り
法を破って小ざかしい商売をする者や、他人の物を奪う者等等、あげればキリがない

元々、元から力がある者に有利に働く「法律」なんて破ったところで罰は当るまい

そう考えた者がこうして法の戒めの外に抜け出して暗躍する、あるいはそれに便乗する者もいる、
中には快楽を求める者も居る

人間なのだ

自らの欲望に従うさ、だがそれは国全体から見れば圧倒的に少数派だ。
一つのコミュニティの中では淘汰される存在でしかない

それでも、誰かに使われて見っともない人生を送るよりかは遥かにマシだ



明日は二つ山を越えて、国と国の国境を渡り大きな都にいく・・・・もちろん
違法な移動で、都に行って売るものも違法な物だ
だがそうする事で俺は飯にありつけるし、世間様より少しだけ良い生活が出来るわけである

よって、ダラダラとここまで伸ばして来たが・・・・俺が今成すべき行動は一つ


「おやすみ」


瞼を閉じて夢の国に旅立つ事である

山道へとつながる道のはずれ、やや開けた場所にある暗い森の一角で今夜を過ごす

薄いショーツ・・・・違う、シーツを身体にかけて眠る。
定期的に起きては焚き火の火を汲みたさなければならないがもう慣れっこだ
俺はゆっくりと意識を落としていく・・・・・はずだったのだ










小説等を呼んでいると・・・・落下型ヒロインと言うものがある、

空から落ちてくるヒロインである

そこから巡るめく冒険が始まり、最終的に結婚届を提出する流れになるわけだ、つまり空から女の子が降ってくれば主人公は充実した生活をしていくわけだ。

もちろん御伽噺の中でないかぎり女の子が空から降ってくる事などありえない

しかし・・・・今目の前にあるのは「モグラ型ヒロイン」とでも敬称しようか


「おかしな所に出てしまったな」

「しかし、ここで間違いがありません」


寝返りをうち大きく開いた自分の股の間から、女の子二人の頭が生えてた・・・
向かい合って会話している


「本当にこんな所に面白い人間が居るのか?」

「マスターが飛んだのではありませんか、しかも座標の設定しくじって
Y軸マイナスにかけたから地中に埋められたのですよ?」

「おかしいのぉ・・・・「スライムにでもできる空間転移魔法通信講座」
の通りにちゃんとやったのじゃが・・・」

「と言う事は、マスターはスライム以下と言うことですか・・・・」

「まさか・・・・・あ」

「失敗の心当たりが?」

「うむ、魔法陣を昨日半分寝ながら書いたのが不味かったのじゃろ、
途中でミミズがのたくった字になっとったわ」

「改善を要求します」


さっきから喋っている二人の女の子・・・・会話している内容といい、
焚き火に照らし出されたその顔といい明らかに人間の物ではない・・・・

奥の方で話している女の子は骨の様に白い髪と、不気味なほど色が抜けた肌
・・・頭蓋の骨が顔の半分に纏わりついている

手前の方で話している女の子は山羊のようにぶっとい角が生え、
不気味な獣の骸骨をアクセサリーにしている・・・・

その特徴を自分の持っている知識と当てはめると、おのずとそいつ等が
何者かを悟ってしまう

・・・・不覚にも、独り言のように呟いてしまった


「スケルトンにバフォメット・・・・」

「む!!」

「っ!!」


バフォメットがようやくこちらに気づいたのか首を回転させたとき


「ウゴ!?」


ゴキリと音がした、首をやってしまったようだ・・・・


「ま、不味い!!首が動かん!!」

「マスター!!すみません!この体の自由が利いたら・・・・」

「おいそこの!!ゆっくりと首を正常位に戻してくれ!!首の間接が稼動範囲を超えてしもうた!!」


もはや奇怪な生命体にしか見えない

こいつらはモンスターであり人間様から見れば敵の存在だ・・・
ぶっちゃければ助けてやる必要は皆無である


「何をしておる!ささっと戻してくれ!!あ、できるだけ優しくじゃぞ?何分こんな事ははじめてでの」


しかもこいつはバフォメット、幼女のような見かけに反して恐ろしく
強力な魔力を持つ最高峰の魔物だ、そんな奴に関れば碌な事がない。

つまりここで俺が取るべき選択は・・・・



→ 首を元に戻してやる

  首を元に戻してやる

  首を元に戻してやる



くそ、どれにするか・・・・結局どれを選んでもバッドエンドな気がしてならないぜ・・・・



「って全部同じじゃねえか!!変えろ!選択肢を変えろ!」



→ 首を元に戻してやる

  首を正常位に戻してやる

  初めてを奪いできるだけ優しく首を逆の方向に回す



「誰が文面変えろって言ったよ!!中身を替えろ中身を!!」



→ 首を元に戻してやる                     CV.若○

  首を正常位に戻してやる                   CV.○田

  初めてを奪いできるだけ優しく首を逆の方向に回す  CV.子○



「中の人変えろって言ってんじゃねえんだよ!!選択肢の行動の変えろっつてんだよ!
なんで俺に逃げ道与えねえんだよ!!」

「さっきからこやつは何を叫んで居るのじゃ?」

「あれです、ヒロインには見えない主人公だけが見える選択肢と戦っておられるのです。
今後の人生を決めてしまう重大な選択肢です」

「むう!!ならば少年よ!!迷うな!!ロリを選べ!!」



 ピッ!
→ 首を元に戻してやる                     CV.若○

  首を正常位に戻してやる                   CV.○田

  初めてを奪いできるだけ優しく首を逆の方向に回す  CV.子○







\ブル○アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア/





ゴキリと音が響いた







「いや、すまんの!首を戻してもらっただけではなく引き抜いてくれるとは」

「かたじけのうございます」

<そーですねー


木の陰に隠れて首だけを出して小さく呟く・・・

スケルトンは兎も角、バフォメットが相手では歯が立たないだろう、
下手すれば逆レイプに会う・・・・

ここはいつでも逃げる準備をしなければならない、商売道具が惜しまれるが
背に腹を変えられまい


「そうじゃな、礼をしたいのじゃがおぬしロリコンか?」

「御礼をしたいといって相手の性癖を問う奴に会ったのは始めてだ、俺はロリコンじゃない」

「すぐにロリコンになる、気にせずとも良い」

「(だめだ、既に俺の人生にロックオンされた・・・・いやいや、バフォメットは確か強い男を夫に取るんだったな?俺みたいな男を夫には取るまい)」

「これ、何時までそこで顔だけ出して居るか・・・出てこい、別にとって喰ったりはせんわ」

「本当だな!?絶対だな!!」

「肝の小さき男じゃなあ・・・・」


おっかなびっくり木から出て二人の前に姿を現す・・・・

バフォメットの方は図勘で見た通りの格好をしているが、スケルトンの方は
普通に人間の女の服を着ている。メイド服だ
上位の魔物と下位の魔物の組み合わせ、少々おかしい組み合わせである


「自己紹介がまだじゃったな?儂は見ての通りロリータじゃ」

「すみませんスケルトンさん、彼女の言葉を翻訳してください」


比較的話が分かりそうなスケルトンに活路を見出してみると、スケルトンは
スカートの裾を摘んで優雅に一礼する
こちらのスケルトンは図鑑に載っている情報と大きく違う気がする


「はい、では紹介の方をいたします・・・・こちらに在らせられるは
バフォメット族 アナスタシア家 次女のベルベレット・アナスタシア様
でございます」

「よきに計らえ」

「そして私がベルベレット様の従者を務めております、スケルトンのカメリアと申します」

「これはどうもご丁寧に・・・・自分はしがない行商人のデイヴ・マートンという者です・・・」

「ふむふむ・・・・ブラック・コロブチカ(黒い行商人)か、ぉ、これは珍しい・・・メロウの帽子とは」

「あ!こら!!」


気がついたらベルベレットが自分の荷物を漁っているではないか。慌てて脇下から持ち上げて引き離す


「なんじゃ、見られて減るもんでもなし」

「見られたらイケナイもんなの」

「儂は魔物じゃぞ?人間の法律など知った事ではあるまいて・・・・・」


どさくさにまぎれて荷物を奪い返す事に成功した、さて、後はどうやってここから逃げ出すかだが道具が手に入った事で幾つか手段がない事もない

外敵に襲われたときの煙球がある、スケルトンには効果が薄いだろうが獣系のバフォメットには効果覿面かもしれない

二つ目は洞窟やモンスターが居る場所に謝って踏み込んでしまったときに使う転移札。

最後の手段は少々危険だが機雷札を二人に投げつける・・・・


「無駄じゃよ、機雷符や転移札など儂の魔法で無力化も容易い、煙玉もしかりじゃ」

「!!」

「男の心は読みやすいのぉ、ハッハッハッハッハッハ!!」

「・・・・・」


冷や汗がまるで滝の様に出てくる・・・・焦燥感か唾液が枯れて呼吸が荒くなってくる、
心臓もまるで全力疾走をした後のようにドクドクと動いている


「だから取って喰ったりはせんと言うておろうが、襲ったりもせんわ」

「魔物の言う事が信じられるか」

「失礼な奴じゃのお・・・・礼をしたいと言うて居るのじゃ、大人しゅう礼を受けておけ」

「俺は身持ちが硬いほうだ」

「魔物の礼=淫行か!?大体あっとる」

「合ってんじゃねえか!!」

「まあそれも良いのじゃが?お主はブラック・コロブチカじゃろう?
そんなお主はこういう物の方が喜ぶのじゃろう?」


フィンガースナップが景気のいい音を立てたときだ、ベルベレットのすぐ横の空間が突如湾曲を
始めた・・・

ぐにゃりと大きく捩れるように曲がった後、その空間が元に戻ると
そこには幾つ物アイテムが転がっていた


「ほぉれ?拾うがいい!金を目の前にばら撒かれた貧乏人の如く這い蹲ってかき集めてみろ!!」

「お前は俺にどんなキャラを要求しているんだ!!」

「なんじゃ不服なのか?仕方ないのお」


いそいそとパンツのような装飾具を脱ぎ始めるベルベレット氏
何やってるのこの子


「ほれ、存分にクンカクンカせよ」

「俺の業界では取り扱っていませんそんなプレイ!すみませんカメリアさん、ちょっとあなたの主人と普通の会話が成り立っておりませんけど!?」

「私の・・・・ですか?////」

「お前等言葉のキャッチボールしてる!?か↑な↓り↑一方的なドッジボールしてるよね!!」


グダグダな制玉権(ボケ)を制圧されたドッジボールがその後10分近く続く










「とりあえず、これはありがたく頂戴いたします」

「始めから素直に受け取っておけ、余計な時間を浪費してしまったわい」

「(俺キレていいのかな?)」


人間の方ではそれこそ一部のルートでしか手に入らない貴重な「人魚の血」や「魔女の帽子」
「ユニコーンの角」等下手をすれば一生遊んで暮らせそうな額で取引されそうなアイテムが手に入った、文句は言えまい


「主、名はなんと言う?」

「え・・・デイヴ・マートンだ(さっき言わなかった?)」

「デイブか、一つ訪ねたい事がある」

「はぁ・・・答えられる範囲ならお答えるけど」

「うむ、実は・・・」


ベルベレットはいつの間にか設置された黒い椅子に座り
カメリアがいつの間にか淹れている紅茶を受け取る


「儂は今、勉学の為世界を巡っておるのじゃ」

「勉学の為?」

「うむ・・・・バフォメットとは主等が言う異教徒集団「サバト」を束ねる最高峰の魔物・・・
という認識がされておるようじゃが間違いないかの?」

「ああ」

「・・そもサバトとは「幼い少女の背徳と魅力」「魔物らしく忠実であれ」
という教義がある、儂もいずれは自分のサバトの会を持つことになろうて」

「?サバトは一つだけじゃないのか?」

「大元は一つじゃ、そうじゃの・・・・簡潔に言えばサバトと言う教義があり
バフォメットそれぞれが一つの「会」という単位のコミュニティをもっておると考えよ。そして儂等はそれを大きく広める事で偉くもなるし、性交を通じて力も得る」

「はぁ・・・・あ、じゃあもしかしてその「会」というコミュニティが集まって行うのが」

「「黒ミサ」よ・・・・話がずれたの、黒ミサを開けるバフォメットは一人前のバフォメットじゃ。
比べて儂はまだ50年程しか生きておらん半人前。
それゆえ一人前のバフォメットとなるべく各地を渡り歩き
世界の知識を得て、生きて居る者への理解を深めるため勉学の度をして居るのじゃ」

「目的に目を瞑ればご立派だな」

「うむ、そこでじゃ・・・デイヴよ、お主の意見が聞きたい」

「意見・・・・?」

「魔物に対する価値感じゃとか、人間の存在指標、世界の成り立ち・不条理・・・・
人間は何を目的に生きておる?そうじゃの・・・少々漠然としておるからの?
あれじゃ、おぬしに聞きたいのは「人間とはなんじゃ?」というのをきこうかの?」

「人間とは何か・・・・?」


人間とは何か?


少々処の話ではない・・・・あまりに漠然としすぎた答えだ
こういう職業をやっていれば人間の悪い部分と言うものを多く見ている、
もちろん良い部分と言うものも見ている
悪魔のような人間もいれば聖人君子のような人間もいる、

おや?

結局人間とはどういう生き物なのか?


「そんなの俺が聞きたいよ」

「なんじゃと?」

「人間がなんなのかなんて分からんよ、俺はこれでも結構色んな人間を見てきたけど・・・・色んな人間がいすぎて人間が何なのかなんていわれても俺には分からん。寧ろ教えて欲しいぐらいだ」


そういうと、ベルベレットはほほぅと感心したような顔でこちらをまじまじと見てくる


「なんだよ」

「人間にしてはまだマシな答えが聞けたわ・・・・うむ、デイヴ、お前は様々な人間に出会うと申したな?」

「まあ、こういう職業だからな」


ベルベレットは顎に手を当ててニヤリと笑う、嫌な予感が走る・・・・


「仕方ないのぉ、そこまで申すなら憑いて言ってやらぬ事もない」

「憑いてくんな」


ベルベレットとカメリアは「マジで言ってんのコイツ、マジありえねえ」
みたいな顔でこっちを見ている


「その顔止めろ」

「儂等が居れば他の魔物に襲われる心配もないぞ?」

「お前等に襲われる可能性の方が圧倒的に高いわ」

「何か問題でも?」

「何も問題はないみたいな顔で言うな、俺はまだ人間として人生を謳歌したいんだ」

「人間ってなんじゃ?」(´・ω・)?

「・・・・・兎に角!!これ以上俺はあんた等と付き合うつもりはない!!」


荷物を背負って離れようと思った、そうとも相手は気が良いとは言え
バフォメット一緒に旅をしろなど彼女のエサになれと言っている様な物だ


「ならば、ビジネスパートナーというのならばどうじゃ?」

「何?」


ベルベレットはパチンと再びフィンガースナップをすると空中に幾つ物
アイテムが浮かび上がる、それをお手玉の様にくるくると回し始めた


「お主は儂等に面白い人間が居れば観察の対象として儂等に連絡する、
その対象が面白ければ儂が人間たちでは中々手に入らぬ魔界産のアイテムを渡そうではないか、悪い話ではないじゃろう?」

「・・・・・・そりゃあ・・・・こっちとしては旨い話しだが、お前等・・・いや、
お前はそれでいいのか?アイテムだってただじゃないんだろ?」

「儂はバフォメットじゃ、これくらいの物少量分け与えてもなんともないわい・・・・
使わないものを手元に残しておくよりも自分を成長させる糧にしたほうがよっぽど生産的じゃて」

「・・・・・・・」

「答えを聞かせてもらおうかの?」

「・・・・・」


バフォメットはアイテムを再び何処かへ消して、不敵な笑みを浮かべている
いや、自分の不信感が彼女の笑みを不敵な物に移しているかもしれない・・・・

別に悪い話じゃあない、面白そうな人間がいればこいつに紹介すれば、自分はタダ同然で莫大な金を手に入れる事が出来る

だが、うまい話には必ず裏があるものだ・・・しかし・・・・


「・・・・わかった、ただ一つ約束してくれ」

「?」

「俺にも、紹介した人間にも危害を加えないこと。それが条件だ」

「相変わらず臆病な事じゃ・・・まあいい、交渉成立じゃ」


カメリアは一礼すると腰につけているポーチの中から何かを取り出してこちらに渡してくる


「これで「私はロリコン」と地面に書いてください」

「・・・・・・・」


差し出されたのはバイブレーターだった


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すみません、間違えました」

「(・・・・・・なんで三分に一回のペースでボケが飛んでくるんだ?スルーされてそんな悲しい顔するなカメリアさん!冷たい眼差しで責めてくるなベルベレット!
サバけってか!?このボケのセールをサバけってか!?)」


カメリアはバイブをポーチに直して変わりに偉く禍々しい髑髏の細工がついた羽ペンを差し出してきた、それを受け取ると怪しい物がないか調べてみる


「これを使って何処でも良いので「ロリコンの咆哮」と書いてください」

「結局ロリコンかい!!」

「バフォメットへの市外局番が「ロリコン」なのじゃから仕方なかろう、
それでは期待しておるぞデイヴ」

「失礼します」


二人の足元に巨大な魔法陣が発生し、その魔法陣が目映い光を放った後、
二人の姿は消えていた


「・・・・・夢・・・・じゃないな・・・・」


デイヴは試しに近くの木に「ロリコンの咆哮」と書いて見る・・・・
すると「ロリコンの咆哮」の「ン」の部分から白い光が漏れ始め何かが
浮かび上がってくる・・・・文字のようだ




       こいつ本当に書きおったわwワロス m9(^Д^)

         本当は儂の名前を書けばよいだけじゃ

                                                  byVelverett




その日、その森を雄の臭いに惹かれて来た魔物達が、何処からともなく「コロス」という言葉を連呼している
呼び声が聞えるという心霊現象を体験した















「ふぅ〜〜!!」


〜翌日の夕方〜

なんとか山を越えて国境の向こう側へ渡り、町の宿へと辿り着いた。
その頃にはもう夕方になって日が沈み始めている

デイヴはごろんとベッドに横になると深く息を吐いた


「ま、昨日はあれから魔物にも会わなかったし、ラッキーっちゃラッキーなんだな・・・」


これからの事を考える。もちろん商売(ビジネス)の事だ
ブラックアイテム(禁売品)を売るには幾つか手段がある。まず共通しているのはブラックマーケットへ趣く事

そこにいってマーケットを主催している者にそのブラックアイテムを渡して
その時のレートの時価で取引するか

マーケットで売店を出して店先で自分で売るか

もう一つはマーケットでブラックアイテムを欲しがっている人間を紹介してもらい、
直接その人間に会い取引を行うか


何れにせよリスクとリターンはある


まず一つ目の選択肢にはマーケット側の言い値で取引しなければいけないこと、
もちろんぼったくられる可能性だってあるし、取引する物が物だ、
裏のギルドに目を付けられかねないというリスク


二つ目の選択肢、こちらマーケットへの出店に手数料を取られると言う事。
人が多い分売れる可能性は高いし値段はこちらで設定できる
しかし、人が多いと言う事は同業者から目をつけられる可能性もあり、
間違いなくマーケット側にも目を付けられる


三つ目はアイテムを欲しがっている人間にしか会わないという目のリスクは回避できるし、
値段の決定権もある程度はこちらが握れる
だがアイテムを欲しがっている人間を紹介してもらうためにマーケット側に高い紹介料を取られるし、
もし取引が成立しなければ、その紹介料を払った分はサイフが痛む


今まで、こんな大きな取引を経験した事の無い自分としてはやはり身の安全が第一だが、今は正直言ってサイフにも余裕がない。本音を言うならば3の選択肢は避けたい

そもそもこの紹介料が高いのは、紹介をする時は20人単位のリストで紹介される。売るものが何かを言えばそれを欲しがっている人間を紹介してくれるのだが、シークレットトレードを考えているこちら側とすればそれは出来ない。
リストで紹介されるため紹介料も必然的に高いわけだ


「・・・・・・」


『お主は儂等に面白い人間が居れば観察の対象として儂等に連絡する』


不意にベルベレットの言葉が思い出された

マーケット側に高い金を払い商人の紹介をして、尚且つその商人にもぼったくられる可能性があるのにも関らずマーケットにも足を運ばずシークレットトレードを要求する人間。

そんな人間は一部の収集家やアウトレットな事情を抱える者だ。一部の収集家にはそれなりの拘りがあってそのような者を収集しているのだろうし、
それこそアウトレットな事情を抱える者には何かしらそのアイテムを欲しがる理由がある

基本的に商人が客の事情に関与するという事は暗黙のルールでやってはいけない事になっている


「・・・・それを聞き出すのはベルベレットだし、俺の事情じゃあない」


俺は面白い人間を紹介しろといわれただけだ・・・・デイヴは静かにごろりと横になった













昨日の夜の内にマーケットに足を運んで紹介してもらったのは、とある三流貴族の令嬢であった

三流貴族の令嬢が人魚の血やドワーフの装飾等を欲しがる事は珍しくもないのだが、
その彼女が欲しがっていた代物は

「サキュバスの血」

文字通りサキュバスが流した血だ、これにはサキュバスの魔力が強く籠められており、
飲むと女はサキュバスに男はインキュバスへと変わる危険な代物だ、もちろん中々手に入る代物ではないが、一昨日ベルベレットに渡されたアイテムの中に一つだけそのサキュバスの血が混じっていた



採血者:サキュバス族 リリアーヌ・キュヴィエ

コメント「一人でも多く良い快楽で喘いで欲しい、変わらない品質と絶対の自信がここにあります」



「生産者の顔が見えるこだわりの商品」だった。

やや胡散臭さが漂っているが魔力に反応する石が反応していたので物は間違いあるまい
デイヴは荷物を持ってその令嬢の家を訪れた

木製の門に備え付けられた銅製のライオンの首にある金輪をもってドアをノックする


「・・・・・・」


――――――――――――――出てこない

もう一度ノックをしようと金輪をもった時だ、パタパタと足音が聞えてきて
ドアが勢い良く開いた


「オリヴィエ!?」

「!!?」


出て来たのは、薄紫のフリルのドレスを着ている、年は17.8位の銀髪の美しい少女であった。
とても魅力的な女性であるのだが、その表情は曇っており肌もやや血色が薄い


「え?・・・・あ・・・す・・・みません」

「あなたが、セヴリール・オベーヌさん?」

「はい・・・私がそうですが、アナタは?」

「失礼、デイヴ・マートンという者です・・・・・こちらの紹介を受け参上いたしました」


マーケットから渡された紹介状を彼女に見せると、セヴリールは一瞬驚いた表情をしたがすぐに平静になりこちらの顔を値踏みするように見てくる


「どうぞ・・・・」


彼女は恐る恐る自分を屋敷に通したのだった










香り高い紅茶が目の前に置かれる・・・・出してくれたのはセヴリールだ。
デイヴの目の前で淹れてくれた

彼女は自分の紅茶をデイヴが座っている逆のソファの前に置き座った・・・・


「使用人は・・・・」

「居ません、全員暇を出しました・・・・どうぞ飲んでください、紅茶の淹れ方には自信があるんです」

「頂きます」



紅茶の香りを十分に楽しんでゆっくりと味わう・・・・旅をしている身には
心地よすぎる味である、その味に人心地ついて一息を入れた


「それで・・・・その・・・「サキュバスの血」は・・・・あるんですか?」

「はい」


荷物の中からその「サキュバスの血」を取り出してテーブルの上に置くと
彼女は一瞬硬直して静かに口の中にたまった唾を飲んだ・・・・その眼は酷く揺れている


「ぉ・・・お幾らで譲っていただけるのですか?」

「300万」

「さ!!300万!?」


300万、我々の感覚で言っても確かに大金だが、この時代の人間には3億円を要求されたようなものだ、そんな金が三流貴族の没落しそうな家のこの令嬢に払えるわけがない


「そんな・・・300万なんて・・・」

「確かに・・・私も目が狂ったわけではない、三流貴族の令嬢であるあなたにそのような大金が払えるとは思っていません・・・・」

「じゃ、じゃあ・・・・」


デイヴは両膝の上で頬杖をついてセヴリールを見据えた





「今アナタの家にある資金と・・・宝物全てを下さい、そして、私の言う一つの要求を呑んでいただきたい。それで手を打ちましょう」



「ええ・・・・!!?」





セヴリールは再び動揺の色を浮かべる。

300万を要求されるよりも確かに緩い条件かもしれないが、それではサキュバスの血を手に入れても彼女は路頭に迷う事になるだろう。
17,8の少女が体一つでこの世の中で生きていくには文字通り身を売るより他はないそれこそ、
サキュバスにでもなったのならばそれも一つの道なのかもしれないが・・・・・

しばしの沈黙が続いた・・・


「・・・・・・・・わかり、ました」

「!」


そう呟くとセヴリールは立ち上がって部屋を出る

7分ほどした後、セヴリールは再び部屋に戻ってきた・・・・
バッグにずしりと入った金をまずデーブルの横に置き
その後再び部屋を出て、同じようなバッグを持って帰ってきた


「・・・・・これが、私の家の全財産です」


後から持ってきたバッグの中身をデイヴに見せた、中には銀食器や少しばかりの宝石、
装飾品などが詰め込まれている


「こちらには約80万あります・・・」


続いて先に持ってきたバッグを見せると、確かに80万相当の紙幣が詰っていた


「ふむ・・・・それほどにまでこのサキュバスの血が欲しいと」

「・・・・・・・はい・・・・それで、要求は何ですか?」


デイヴはフフっと笑って手を伸ばし彼女の手から金の入ったバッグを奪い取る


「ぁ・・・・・・・ぅ・・・・」




「こちらの、80万で手を打ちましょう」






デイヴの言った言葉に、セヴリールは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした・・・・
4秒ほど硬直した後は彼女はオロオロと困惑し始める


「え、で、でででも・・・・さっき」

「失礼、アナタを少し試したのですよ・・・・それほどまでにそれを欲しがっている人間なのかどうか・・・・
そして、貴女はそれに見合うだけの決断をした。金銭の取引に関しては80万でお売りしますよ」

「・・・・・あ・・・・あ! ありがとうございます!!これで・・・・これで、オリヴィエを・・・・」

「待った・・・・確かに金銭の取引はこれで終わりですが、まだ私の要求を飲んでもらっていません」

「あ・・・・っ、よ、要求は・・・なんですか?」

「ある者達にあっていただき、そして・・・何故サキュバスの血を欲しがっているのか・・・・
その訳を話してください」

「え・・・・そ、それは・・・・」

「ご安心を、教会や騎士ではありません」

「・・・・・そういうことなら・・・・」

「交渉成立です。では、どうぞお受けとりください」


彼女の目の前にサキュバスの血を差し出した


「あ・・・・ぁあ・・・・」


セヴリールは飛びつくようにサキュバスの血を手に取った。
興奮気味にそのワインのような美しい液体を眺めて息も荒げに食い入るように見つめている


「これで・・・・これで、オリヴィエを・・・・」

「・・・・・・」


この「オリヴィエ」と言う人物。推測するに男性だろう。
その人物をどうにかしたいと思っているからこそ、このセヴリールは人間の倫理に盲目になり、
タブーを手に入れてしまったのだ。

これほどまでに「異常」な人間はそうはいない

彼女の言う「面白い人間」に当てはまるだろう


「それでは・・・・会ってもらいましょう、約束の人物と」

「今からですか?」

「ええ」

「それでは、出発の準備を・・・」

「いえ、それには及びません」


デイヴは例の羽ペンを取り出すと、メモ帳を一枚千切って彼女の名前を書く

 Velverett

紙は白い光ではなく、真っ黒なエネルギー体を発生させはじめる。デイヴはそれを床に落す


「な!!なんですかこれは!!」


エネルギー体は徐々に形となっていき、二つの影が出来上がった
小さな影と大きな影・・・・・それらが一気にはじけ飛んで、ベルベレットとカメリアが現れた!!






「・・・・・・・・」シャカシャカシャカ「・・・・・・・・」シャカシャカシャカシャカ






パジャマで歯磨きをする二人が・・・・現れた



「・・・・・・なんですかこれは?」

「・・・・・・」















「と言う事なんです」

「はぁ・・・・」


デイヴの横に座るベルベレットと、ソファの後ろ・・・正確にはベルベレットの後ろに立つカメリアを
セヴリールは身を縮めながらチラチラと見ている。気持は分からなくもない

混乱しようにも、あまりに生活観漂う二人の姿に混乱できないセヴリールにデイヴは事情を説明する
こちらに危害を加えないと言う事を伝えると、ベルベレットもそれに頷いてみせるとようやく落ち着いてくれた


「私は・・・そんなに面白い人間なのでしょうか?」

「面白いかどうかは物語が終ってみんと分からんものじゃ・・・・
どこぞの誰かが、物語の出来は最後の結び目で決まると言うとった
それでは早速話してくれんかのセヴリールとやら、おぬしが何故その薬を求めたのかを」

「はい・・・・」







セヴリールは事情を話し始めた・・・・

セヴリール・ドローヌは元々中流貴族の家に生を受けたのだが、彼女が12歳の時に
屋敷に賊が入り、父親は殺され母親もレイプされたあげく殺されてしまった。

運よく難を逃れた彼女だが待っていたのはドローヌ家の引継ぎと、
権力や資金を求める者達との戦いの日々であった

来る日も来る日も、まるでゴミにたかるハエの様に親戚だの恩師だのと名乗る者達が現れては、
メイド達と追い払う日々が続いた

そんな日々が続く中・・・・彼女を支えたのが、幼少の頃より遊び、学び、共に育った
オリヴィエ・バルテルミーというパン屋の少年である

少々物事の移り気が激しい彼であるが、セヴリールの事に関しては献身的に協力してくれて、
行動と言葉で彼女を励まし、時には自分で焼いたパンを彼女に食べさせてくれた。

暖かな味だったのを覚えている


恋に落ちるのは時間の問題であった


徐々に愛想をつかした使用人が離れていき、沈み行く家と比例するように、
苦境に立てば立つほど二人の恋は燃えた


そして、セヴリールは決心をする・・・家を捨て、彼の元に嫁ぐ事を


本来は貴族が自分よりも低い地位に居る者と婚約するならば、その者を婿なり、嫁なりと取るのが常識である。貴族が庶民の家に嫁ぐ事などありえない
もし、それをしようならば周囲からは絶縁され。恥知らず、売女・・・不名誉なレッテルを貼られてる事になるだろう

しかし、反対する者など居なかった。

残った使用人も、町の人々も・・・今まで協力してくれた親戚の貴族達も

彼等は分かっていたのだ、二人の関係と、ドローヌ家がもたん時がきている事を。

没落し掛けとはいえ貴族だ、使用人たちに慰謝料と退職金を出したとしても
まだ財産は余り在る、ささやかに生活していくには十二分なお金がある。


幸せになる条件は揃っていた


領地を協力してくれた貴族たちに分配、使用人たちには退職金と慰謝料を払い退職させた

一人一人に祝福を貰い、後はヴァージンロードを歩き・・・幸せを手に入れるだけである



贅沢などない。


パンを作って売って・・・・今日食べるものを買う


子供に愛を雪いで、夫を支えて、家族全員で笑って過ごす・・・・幸せな日々だ










オリヴィエは、結婚を破棄した










突然の事だ。


まるで人が変わったようにセヴリールを拒絶した

セヴリールの説得にも、周囲の説得にも応じずただ部屋の中に篭ってばかり

だが彼女は諦めなかった・・・・

何度も何度も彼の部屋の前で説得し、耳障りだと乱暴されても諦めずに説得を続けた。



説得を続けること10日ほど経った満月の夜の事だ・・・・
ある町人が真夜中に家を出るオリヴィエを見かけた。

何処へいくのか?と訪ねたが返答はなく、その目は虚ろで様子がおかしい・・・
止めようと町人が彼の肩に手を置いた瞬間・・・・彼は暴れだして町人の腕を振り払い町の外へと走って行ってしまったのだ

すぐさまその事はセヴリーヌの耳にも届く、町の男達と共にオリヴィエを探す


あっけなく見つかった


だが、その見つかったオリヴィエは、まるで麻薬中毒者の様に妄言を繰り返している・・・
そして、何かを探しているようであった

誰かが言った


「これは、魔物の仕業に違いない」と


確かに、こうして魔物の気に当てられた男性が引き付けられるかのように姿を消す、
という話は珍しくはない。

絶望の底に落とされた気分だった

魔物に魅入られた男性が正気に戻るなど、それこそ小説や童話の中でしか語られない


「もうオリヴィエは諦めろ」


ついこの間までは自分達を祝福してくれた人達が口をそろえて言った・・・・
すっかり変わってしまったオリヴィエを前にセヴリーヌはただ絶望に浸るしかなかった



そして、もうオリヴィエは戻らない・・・・・そうセヴリーヌは悟った






そう悟ったとき、考え方は変わった



オリヴィエを戻す必要はない、自分が変わればいいのだと。






倫理などない


パンを売ったり作ったりする事はない、今日食べるものはそこにある。


無上の愛を雪いで子供を作り、夫を貪り、家族全員が快楽を求め合う・・・・幸せな日々






そんな日を、彼女は夢に見るようになった















「と、言う事なのです」


デイヴは、今更になって怖くなった・・・・

目の前に居るセヴリール・オベーヌという女性が。
どうしようもない絶望の棘(いばら)の中でもがくうちに、求めていた幸せの形が棘(とげ)に削られ形を変えた。

その歪な幸せを目の前にして、笑みしか浮かべられないこの女性




鳥肌が立つ、いつの間にか体中が震えている・・・・冷や汗が止まらない

本能が告げている・・・・「この女性に、もう関るな」と


「ああ・・・・オリヴィエ・・・・もうすぐ貴方を・・・・」


最上の友情から芽生えた愛(Love)が。
無上の恋情となり歓喜(Joy)を生み。
至上の愛情が届かせた禁忌の果実(Fruit)

その果実を手に入れた彼女を見て、ベルベレットはバフォメットでありながらデイヴと同じ恐怖を感じながら同時に、感動していた


「・・・・・これが人間・・・!!!」


嬉しくて、嬉しくて堪らない・・・・この感動をどう表現していいのかすらわからない。
ベルベレットは久方ぶりに感じた歓喜を持て余しているようだった

デイヴは慌てて立ち上がり、荒い呼吸でバッグを持ち上げる


「・・・・・・失礼する」


歩き出そうとしたその時だ、デイヴの体が突如動かなくなった・・・・
窮屈に動く首をゆっくりと動かしベルベレットを睨みつける
彼女は人差指をこちらに向けていて、指先からは光る文字が輪を作っていた


「ベ・・・・ベルベレット・・・・」

「何処へ行くつもりじゃ?」

「取引は終ったんだ・・・・帰るんだよ」

「馬鹿な、お主にはまだ果さねばならん責務が在る・・・・儂と同じ、果さねばならぬ責務じゃ・・・」

「・・・・・・・・」



やはり、人間欲を出すと碌な事がない・・・・そう改めて再確認した瞬間であった











四人はオリヴィエが居る彼のパン屋へと向かった、ベルベレットとカメリアは秘術で姿を人間に変え
デイヴはと言うとベルベレットの術中にはまって身体を彼女の意のままに動かされている

抵抗は屋敷を出るところまではしていたが、その圧倒的な力の拘束には
抗えないと理解すると抵抗をやめた

パン屋に入ると、そこには疲れた顔をした初老の夫婦がいた・・・・


「ぉお・・・セヴリール・・・・」

「・・・・・おや?見かけない顔だね?どなただい?」

「ベルベット・アナスタシア」

「カナリアと申します」

「・・・デイヴ・マートン」

「旅の方です・・・・オリヴィエを見てもらえないかと思って」

「・・・・・・そうかい・・・・」


二人はすで希望を失っている・・・・昼を過ぎた頃なのですでにパンは幾つか残っているだけであった
店は繁盛しているようだが、二人には生きている意義を見出せずに居るのだろう
目の前に居る三人にも僅かな希望を持つ力すらも失っているのだ


「・・・・・失礼します」


老夫婦は一度も三人と目を合わせることなく、淡々と仕事をこなしていた

階段を上がっているときにベルベレットが口にした



「これが希望を失った人間か・・・・まるでゴーレムのようじゃ」

「・・・・・あの人達は人間だ、一緒にするな」

「・・・・・そうじゃな、あ奴等は人間じゃな」


二階に上がり、オリヴィエの部屋の前までいくとセヴリールはドアをノックしてそっと語りかける


「オリヴィエ、私よ・・・・・セヴリールよ」


反応はない・・・・しかしセヴリールはドアの合鍵を取り出す


「・・・・入るわね」


鍵を開けるとドアノブをまわして部屋への扉を開けた






「・・・・・・え?」






部屋の窓が開き、ズタズタに切裂かれたカーテンだけが棚引いている


「オリヴィエ!!」


四人は慌てて部屋の中へと入ったがオリヴィエの姿はない。
セヴリールは窓からを身を乗り出してオリヴィエの姿を探したが
窓から見える景色の向こうにオリヴィエの姿はなかった


「窓から逃げおったようじゃな・・・・」

「まだベッドが暖かい・・・・逃げ出して然程時間が経ったわけではありません」

「探すぞ!!」


三人は部屋を飛び出してった・・・・だがデイヴはしばしその部屋の中で周囲を見渡していた


「・・・・・・・」


一体、オリヴィエという男はここでどんな思いで過ごしていたのだろうか?

ズタズタに破られたカーテンに、引きちぎられたベッドのシーツ、あちこちに穴やヒビが入った壁、
破られた本・・・・

あらゆる暴力が自らの周囲に在るあらゆる物に向いている、この部屋はまるで・・・・



「狂人の部屋だ」



断言した

そうとしか言い表せないこの空間で、オリヴィエはただ自分が求める物に「渇望」していたのだろう
その渇望はやりきれない暴力となって周囲を、そして自らを苦しめていたに違いない

果たしてそんな奴に救いがあるのか?


<何時までそこで呆けて居るのじゃ!!はよう来い!!

「え?うぉおおおおおおおおお!!?」


窓の外からベルベレットの怒鳴り声が聞えた瞬間、体が何かに引っ張られて
窓の外へと身を投げ出していた


<いてえ!!

<さっさと立て!!行くぞ!!


四人の足音が遠ざかっていった部屋の中・・・・優しい昼下がりの陽気だけが
部屋の中へと降り注いでいた
















「こっちじゃ!!」


ベルベレットとカメリアはすでに人間の姿から元の魔物の姿へと戻っている。
ベルベレットは宙に浮きながらこちらの走るスピードに合わせて先導してくれていた

場所は町から出てすぐの山脈と隣接した森の中だ、丁度デイヴとベルベレット達が出逢った森と
山二つ挟んで反対側の位置の森だその森の中を木々を掻き分けて走っていく


「本当にこっちで合ってるのか!!?」

「雄の臭いがプンプンするわ!部屋に充満していた男の臭いじゃ!間違いないぞ!」


まるで、早くその男の狂った様が見たい・・・・そんな風にすら感じ取れるほど、
ベルベレットの声は弾んでいた

後姿からは確認できないが、恐らくその顔は笑っているのだろう。
探究心に心を躍らせて笑っているのだろう


「はぁ!はぁ!はぁ!」


必死に走るセヴリール・・・・彼女も必死に走っている。その右手に
サキュバスの血が入ったビンを握り締めながら


「居た!!」


先導していたベルベレットが叫ぶ・・・・深い森の中で光はあまり届かない為姿はぼんやりとしか
確認できないが確かにその先に人影が立っていた

四人は更に近づいてみると、そこには一人の男性・・・・
パジャマ姿で体じゅうに痣やキズを作ったやせ細った男がそこに居た

この男がオリヴィエ・バルテルミー、セブリール・オベーヌと人として幸せな人生を歩むはずだった男


「オリヴィエ!!」


セヴリールが叫ぶが、オリヴィエは振り返ろうともせずにヨロヨロと歩く、
まるで今にも何かに襲うかのように両手を構えながら・・・・


「あれは・・・・」


オリヴィエの先・・・・大きな木の根元に追い詰められていたのは一匹も魔物であった、
どうやら追い詰められて観念したようである。


「コカトリスか!」



コカトリス
跳ぶ事の出来ないハーピー種の魔物で飛ばない代わりにその優れた脚力で走る魔物である


「成程、オリヴィエはコカトリスのフェロモンにやられたのじゃな」

「フェロモン?」

「話しは後じゃ!」


ベルベレットの指先から放たれた無数の紫色の光の鎖はオリヴィエの身体に
まとわりついて、彼を拘束してしまった


「はよう逃げよ!!」

「!!」


ベルベレットの声に我を取り戻したコカトリスは一目散に森の中へと
消えていった


「うっぅううぅぅあああああああああああああああああ!!なんて事をするんだ!!
折角もうちょっとで」





『喧しい(やかましい)』





ベルベレットの声が凄まじいプレッシャーとなってオリヴィエに圧し掛かる。圧倒的なプレッシャーに
オリヴィエは訳が分からないまま黙らされてしまう


「・・・・・オリヴィエ!!」


セヴリールがオリヴィエに近寄ったが、オリヴィエはぐったりと意識を落としてしまっているようだ


「・・・・・・オリヴィエ・・・」

「・・・・さっきの魔物・・・あいつが彼をこんな状態にしたのか?」

「・・・・まあ、奴の意思とは関係はないのじゃろうがな」

「どういうことだ?」

「コカトリスは体中から特殊なフェロモンを出しているのです。
そのフェロモンは男性をひきつける強力なフェロモンです」

「何!?」

「安心せい、カメリアがコカトリスを確認した際にフェロモンを寄せ付けぬ
よう結界を発動させておる」


カメリアは右手に持った札をちらりと見せると
デイヴは安堵して胸を撫で下ろす


「じゃが、本来コカトリスは自分より大きな物や強そうな物を見ると逃げ出す臆病な魔物じゃ」

「なんだよそれ、矛盾してるじゃないか」

「うむ・・・それで逃げる奴を捕まえて犯した男を自らの「夫」と認める習性のある変わった魔物
なのじゃが・・・・こやつは随分そのフェロモンにやられて激変したのじゃろう」

「本来は洞窟などにいる魔物なのですが・・・・・はぐれてここまで来てしまったのでしょうね」

「・・・・・・そのフェロモンにやられたこの男は、もう戻せないのか?」

「・・・・・不可能じゃな、ここまでフェロモンに当てられては人間ならばひとたまりもあるまい
・・・・人間ならな」


意味深な言い方だ、人間でないのならば救う手立てがあるとでも言いたいのか
ベルベレットは腕を組んでセヴリールを見る


「そやつがインキュバスとなったならば、フェロモンの中毒症状からは回復するじゃろうて」

「おい待て!!それじゃあ何の解決にもならねえだろ!!」

「なるぞ?インキュバスとなればフェロモンからは解放されるし、
目の前に居るセヴリールをもう一度愛するはずじゃ、恋人なのじゃからな?
それともセヴリールや、お主が飲んでサキュバスと成りその手でオリヴィエを
インキュバスへ変えるか?」

「・・・・・・・」

「待てって!!それを飲んだら人間じゃなくなるんだぞ!!?」

「・・・・解りました、私が飲みます」

「おい!!!」


デイヴが駆け寄ろうとするが、ベルベレットは再びデイヴの身体を
押さえつけた


「放せベルベレット!!止めさせろ!!カメリアさん!!」

「今更何を言っておる・・・・貴様はあのアイテムが何かわかっていて彼女と取引したのじゃろうが?
それを今になって飲むなと申すのか?」

「それを飲んだら人間じゃなくなるんだぞ!!セヴリールさん・・・・・・!!!」

訴えるように呼ばれた彼女がデイヴに返したのは、
柔らかな笑みと一回の礼だった


「・・・・・なんだよ」

「デイヴさん・・・・本当にありがとうございました」

「っ――――――――」


セヴリールはゆっくりとビンの封を切った。
デイヴは「クッ!!」と悔しさを声に漏らして目を瞑って視線を逸らした

だが・・・


「!!?」


突如体がベルベレットの方に引き寄せられる、体が倒されてズルズルと引きずられてた挙句、
彼女に胸ぐらをつかまれる

凄まじい力で胸ぐらを締められ呼吸が難しい。
だがそれ以上にデイヴを黙らせたのは彼女の表情だ

ベルベレットの表情は、恐ろしいまでに憤っていた



「貴様・・・・この期に及んで自らの責務から目を逸らすのか?ええ!!?」


「責務責務って何なんだよ!!さっきから意味わからねえ!!」


「貴様はあの女に薬を売った!!!その結果が今まさに出ようとしている!!
その者の人生が捻じ曲がるほどのきっかけを貴様は作った!
貴様には見届ける責務があるのじゃ!!解ったか青二才!!」


「知るか!!売った物がどうつかわれようが俺の知った事じゃねえ!!」


「知る事を放棄した貴様が彼女を止める権利などなおさらないわ!!」


「俺は・・・・・俺は人間が魔物に変わる瞬間なんて見たくない!!」



更に恐ろしい力で締め上げられる、ベルベレットは鼻息荒く顔を近づけて
睨んでくる。
その表情は、畏怖されるバフォメットの圧倒的な怒りの表情だ、
この表情の前で人間は恐怖するしかないだろう



「自分の都合のいい事だけ受け容れようとするなよヒューマン・・・・貴様の言っておる事は
ただの子供のわがままじゃ・・・・!!」


「ッ!!」


「嫌だと言っても見てもらうぞ、拒否など断じて一切認めん・・・
その脳髄に決して忘れられぬほど記憶させてやる!
貴様が放った矢がどんな結果を引き起こすのか!

その両の眼に刻みつけて墓穴まで持っていけ!!!」



完全に体の自由が奪われた
口はおろか、視線さえも自分の意思で動かす事ができない。

地面に叩きつけられて髪の毛をつかまれながら無理やり
セヴリールとオリヴィエの方を向かされた






           「   良く観ておけ青二才―――これが人間じゃ」






セブリールは、その赤い液体を一気に喉に流し込んだのだった・・・・・











変化はすぐに現れた

異様なまでの気配が周囲に溢れていくのが第一の変化・・・・
彼女の気配と本質がまず人間のそれから逸脱していく

続いて、荒い呼吸と呻く苦しさの中に混じった「雌」の臭いが周囲に充満し始める。
それを嗅ぐだけで脳の奥がチリチリと焼かれるようだ


「・・・―――・・・・・――!!・・・・――――――」


声を上げようとしているのか、口が陸に上げた魚の様にパクパクと動いている
口の形から推測するに、恐らく「オリヴィエ」と呼んでいるのだろうか?

ボ!と青白い炎が彼女の体包み込み、彼女の纏っている服が燃え上がり
一瞬にして焼失する・・・・

まるで銀細工の様に美しい彼女の体は艶やかで、女性としての魅力はこの上のない程に備えられた身体を悩ましく動かしている

否、変化の苦しみに喘いでいるのか



「!!!」



ビクン、と彼女の体が弓なりにしなると・・・・・彼女は人間ではなくなった

まるで植物が生長するのを早送りで見るかのように、彼女の尾てい骨の辺り
から三つの半透明の何かが急激に成長しながら出てくる



「人間の言葉ならば「魔に堕ちる」と言うのだろうな・・・・しかし儂は言おう、これは「昇華」だ」



独り言の様に呟く彼女の言葉、それをデイヴは否定できなかった
デイヴが感じていたのは・・・・自分が想像していた人間が魔に堕ちるという
イメージよりも、彼女が口にした言葉がその通りであったからだ


半透明な体の三つのそれは徐々に形をあらわにしていく

一つは先がスペードのような形と成り
左右にある二つは蝙蝠の羽の骨のような形へと変化した。

お尻の変化が終らぬうちにもう一つの変化が現れた・・・・彼女のこめかみより
少し上の部分の肉がゆっくりと開いて
その裂け目からぷっくりと栗のような骨が突き出した

それは徐々に、確かなスピードで成長していくのが解る。


角だ。


彼女の頭からは魔族の象徴である角が出始めたのだ・・・・
栗のような小さな骨が変化しまるで牛のような角へと変わっていく
そこに荒々しさはない、それすらも彼女の魅力へと変わっていく

そして、体のあちこちから薄い桃色の体毛が生えていく・・・・胸や女陰を
うように、
美しい毛並みが生え揃っていく



「・・・・・・ふ・・・・・ぅ」



ゆっくりとセヴリールは息を吐きだすと、恍惚とした表情を浮かべた




                          レッサーサキュバス


人間がサキュバスになりたての魔物である、サキュバスと同様人間の精を糧に生きる魔物だ


「・・・・久方ぶりじゃ、成熟した女の姿がこれほどまでに美しいと思えたのは」


ベルベレットの呟きなど聞えないのか、セヴリールはこちらをちらりとも
見ようともせずにオリヴィエを見下ろした


「レッサーサキュバスとなった後は凄まじい感度の上昇と、精への飢餓感に見舞われる・・・・
見やれ、それはお主が愛した男じゃぞ」

「・・・・・・・・」


セヴリールはゆっくりとオリヴィエへと覆いかぶさる


「・・・・・・オリ・・・ヴィエ」

「・・・・・・!!?」


セヴリールはオリヴィエに口付けをする・・・・

ベルベレットは酷く驚いた、レッサーサキュバスと化したセヴリールは
貪るようにオリヴィエを犯すものだと確信していたからだ

だがセヴリールは違う・・・・このセヴリール・オベーヌは違う


「馬鹿な、理性を・・・保っておるのか?」


彼女は修験者でなければ特別な訓練をつんだ人間でもない、

ただの三流貴族の令嬢だった彼女が、自らの理性を焼き尽くすような
性欲と飢餓感に苛まれながらも、彼女はオリヴィエに優しくキスを贈り、
その身体に指を絡ませた

処女が愛しき男と交わる初夜のような恥じらいを持ちながら

デイヴは歓喜した、そして心の中で強くベルベレットに向かって叫ぶ


『これが人間としての誇りと尊厳だ』


聞えたのか、あるいは感じたのか、ベルベレットはデイヴを一瞥すると、
再びセヴリールに視線を移す


「・・・・・ん・・・・んぅ・・・・セヴリール?」


オリヴィエが目を覚ました・・・・・・そして、目の前で自分にキスをしている
セヴリールを見た


「セヴリール・・・・ぅ・・・その・・・姿は・・・・」

「・・・・・・オリヴィエ」


彼女は優しくオリヴィエの頬に両手を添えると、優しく・・・・優しく微笑んだ。まるで子供をあやす
母親の様に暖かな優しさはオリヴィエを安堵させた


「今・・・私が貴方を救ってみせる・・・・だから、もう少しだけ頑張って」

「・・・・・・・」

「私も・・・・頑張るから」

「・・・・・」

「・・・・・・!! オリヴィエ?」


ゆっくりと・・・・オリヴィエの腕が動き、彼女の脇下へ通し・・・・・強く抱きしめた
なんとオリヴィエは、魔物と化した彼女を受け容れたのだ

既に魔物の気配に体を完全に蝕まれた二人が見せた、人間としての思い。

本能に従うまま快楽を貪ることを美徳とするバフォメットでさえ、
その光景を美しい物だと感じてしまった


「(・・・・・これじゃ、これが人間という種族が持つ強さ・・・・)」


三分・・・・・五分・・・・・二人は抱き合っていた


「・・・・・セヴリール・・・・」

「うん・・・・来て」


元々それが必然であったにも拘らず、その場にいたものにはそれは予想外の
出来事にも感じた
否、人間であってもお互いの身体を求めるのは「道理」でもある

セヴリールは自らの理性を削りながら、まず自分の身体をオリヴィエに差し出した


「・・・・」


唇へのキスから徐々にその位置を下げて、喉元、胸元へとキスを送る


「ふぅ・・・・あ・・・・はぁあ」


魔物と化した彼女には幾ら快感が鋭敏化していても物足りなさ過ぎる刺激なのかもしれない、
それでも彼女は歓喜した

嬉々としたその表情は女神の笑顔すら曇らせる、それは愛した者が再び自らを求めてくれるという「喜び」に他ならない

オリヴィエは彼女の乳房を掴み、ゆっくりと揉みしだく

いつも以上の快感が彼女の体を電撃の様に走り抜けて、女が濡れ
彼女の理性を焦がす


「うああ!! ッハ!! アア!!ンッグ・・・・ぃあ!!」


瑞々しい肌が汗ばんで、肉付きのいい肢体が悩ましくよがる・・・・
その度に強烈な女の臭いがばら撒かれる


「んぐ・・・・!! !!? イィ・・・・・ッァアアアアアアアアアア!!!!!」


乳首を甘噛みされた・・・・

強烈な刺激だったのだろう。白目をむきかけて舌を出し、体中がビクンビクンと痙攣している

既に彼女の理性は焼ききれて、もしかしたら廃人になったのではないか?
そう思えるくらい激しい絶頂を間の渡りにして、デイヴの鼓動はバクバクと高鳴り・・・・
嫌な汗が流れた


「セヴリール・・・・・!? セブリール!!」

「・・・・せ・・・い・・・・・」

「!?」

「精が・・・・ほしい・・・・」


空気が一変する。


彼女の体はまるで重度の風におかされたように発熱し、今にも息絶えてしまうのではないかと思う程呼吸が乱れている
セヴリールの両腕がガチガチと歯車が狂った絡繰のように動いて、
オリヴィエのズボンのベルトを両手で掴む



バリィ、と音を立てて、強い綿のズボンが下着ごとまるで紙切れの様に
引き裂かれると、オリヴィエの魔羅が現れた。

すでに長い間勃起と消沈を繰り返していたのか、酷い男の臭いがする

女と男の臭いが交じり合って恐ろしく卑猥な臭いが立ち込める森の中、
男にまたがる魔物は魔羅を見て満面の笑みを浮かべた


「あぐ!!ぶふ!・・・・ブジュ・・・・ ヂュプ!ヂュブヂュブ!!ズゥゥウ!
ヂュブヂュブヂュブヂュブヂュブッ くあ・・・・アブ」


正しく貪るように魔羅を噛み切ってしまうのではないかと思う程の激しい口淫
その激しすぎる愛撫はオリヴィエに今まで感じた事のない恐ろしさと快感を
叩きつけてくる、オリヴィエは地面の土を掻き、その土屑を握り締めて快楽に抗おうとした・・・・
だがそれも無意味な事である


「ぐぅ!? ぅああああああ!! セヴ!! あが・・・うああああ!!」


大人を押さえつける両腕の腕力、得物を貪る様な猛禽類のように細めた目、
人間離れした高速のストローク・・・

人間の「性交」などではない、明らかにそれは魔物が人間を襲っている
「食事」である。

何度か身体をあわせた間柄、相手の弱い部分は知っていた。そこに魔物としての本能で進化した
舌技が加われば、オリヴィエがすぐさま果てるには日を見るより明らかな事だ


「うぐううううううううううううう!!」


唸るような声を上げた後、魔羅より大量の精を放ってしまった

オリヴィエの精巣が陰茎へせり上がり精子が精管膨大部に運ばれると、
射精反射により待機していた精子が膀胱括約筋が固く萎縮、
前立腺液が尿道前立腺部が静子を押し出す・・・・


「・・・・果ておった」

「ぐぅうう!!んぶ・・・ コクッ――――――ゴク・・・・ゴク、 コク」


膀胱括約筋が一定のリズムで収縮を繰り返して精液をトクントクンと送り出す
セヴリールは待ち望んでいた精液を何の躊躇もなくのどへ通していく、
尻に生えた翼と尻尾がピンと直立し痙攣する
その味は格別か・・・・
飢えに飢えた時に飲んだ草の葉にたまった一滴の朝露の如く、セヴリールの渇きを僅かに癒す


普通ならば凄まじい量の射精量かもしれないが、例えたとおりそれは
一滴の朝露の如き量。彼女の渇きを癒すにはまだまだ――――――

まだまだ足りない

セヴリールの蒼い目に走ったスリット状の瞳孔が細くなり、ギラリと
オリヴィエを捕らえた


「――――」


恐怖で声が上げられないオリヴィエの下腹部は滾っていた、コカトリスの
フェロモンにやられた性欲の脈流は恐怖程度では留まらない
ジブリールはまたがると、ゆ・・・・・・・・くり・・・・マグマのような熱い愛液が滾る女陰と、
張り詰めた弓の糸のような怒張した魔羅を合わせた


「んん・・・ぅあっは!!あああああああああああああああ!!!」

「あ・・・・・・ぅ・・・・が」




蛇は昔から狡猾な女性の揶揄を受けてきたが、これをみれば少しは納得してしまうかもしれない。
飢えた蛇が獲物をゆっくりと嚥下していくかのように、
セヴリールの女陰はオリヴィエの魔羅を飲み込んだ・・・・

オリヴィエにはあの清楚で淑やかな令嬢であるセヴリール・オベーヌがもはや別人・・・
いや、別物に見えているだろう


「ふ!! う!! ア!! ハアア!! アアア!!・・・ンンンン・・・・ングア!!アアアアアアア!!
アッハ・・・ハハハハアハハハハハハハハハハハ!!
イィイ"イ"イ"イ"イ"イ"アアアアアアアアアアア!!」


もはや獣だ

人としての羞恥や尊厳など捨て、狂った人形師に操られる人形のように
メチャクチャに快楽を貪り。狂ったように笑いながら己の快楽を唯ひたすら
我武者羅に腰を動かしている



体中から吹き出す彼女の汗が、森の中に差し込む僅かな光に反射して
キラキラと刹那に輝く

娼婦でさえもクラリときそうなほど、強烈な媚薬のような臭いが香りとなって周囲へ振りまかれる

腰を打ち付ければ、その振動で彼女の形の良い尻が情熱的に震えた

腰を勢い良く持ち上げれば二つの大きな乳房が同時に跳ね上がり、
落せばワンテンポ遅れて落ちる。二つの乳房がタンゴを踊る

獲物を喰らう歓喜に震える獣の表情の中に見える女の喜び、
笑いと共に唾液が漏れ、跳ねる

女陰の内壁が幾千本の触手のように魔羅に絡みつき、滾った精液のようなドロドロとした愛液が混じりあい、卑猥な水音を響かせる


「アアアアンンン!!!ンアアア!!! アハアア♪ うあぁ・・・・アッ!アア! アッ!! アグ
・・・アアアアアア!!アアアアアア!!」


犯す、セブリールは相手を・・・そして自分自身を犯している
精で渇きを癒すため、精を得るために、精を貪るその行為で自分自身の
人としての尊厳を破壊し、完全に魔となっていく


「―――――――――」


声も上げられない強烈な快楽はオリヴィエの体に一切の自由を与えず、
刺激の波が身体に走るたびに身体を痙攣させた
先ほど出したはずの熱い射精感が再び魔羅に急速な勢いで集中する


「・・・・ァ」


小さく漏れた声の後


「アグ!?ゥアアアアア!!ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!」


二度目の射精だというのに、その勢いは一瞬で子宮はおろか膣内を膨脹させるほど放出され、
収まりきらない精液は結合部からドロドロと吐き出ている


「んんんんん・・・・・ん・・・・は・・・・ぁあ」

「・・・・・・・・」


オリヴィエの魔羅はその射精を終えると共に徐々に萎縮を始めた・・・・
当たり前である、あそこまで強烈な射精をしたのだから当然といえば
当然である

だが、までセヴリールの渇きは止まらない


「ゥギ!?! ィア・・・・」


オリヴィエが素っ頓狂な声を上げたと思うと背筋が反射して体が弓なりに逸れる・・・・

なんとセヴリールはその尾をオリヴィエの菊門に捻り込んだのだ
そしてウネウネと動いて前立腺を刺激させて再び萎縮した魔羅を強制的に
勃起させると再び女陰で飲み込んで食事を続けていく


「フゥ―――!!フウ!! ウアア! アン♪・・・・アアアアハハア!」


まだまだ渇きを潤せないのか、オリヴィエの唇を奪って唾液を吸い上げようと
舌を絡める情熱的なデュープキスを始める


「ンブ!ウフゥ・・・・はぁ・・・あぶ・・・んんんん♪ンっ・・・ああああ・・・・」


しかし、そんな熱いキスでさえ彼女の渇望を満たす事など出来ない
それでも彼女は渇きを潤すために大きく口を開けて再びオリヴィエに襲いかかった










――――――――――――ブチリ



「「!!!」」


流石にこれにはベルベレットやカメリアも予想外だった、今までの交わりを
学者の様に観察するベルベレットの表情は驚愕に染まっている


「ンンンンン・・・・・チュゥウウウ・・・・・んは・・・・あは♪」


セヴリールの口元からは赤黒い液体が流れる・・・・そう、セヴリールは
オリヴィエの首筋に喰らいついて血をすすっているのだ。
レッサーサキュバスになった事により、僅かに伸びた犬歯が彼の皮膚を突き破って、
彼女は血を啜っている

血には精液ではないにしろ、非常に濃い魔力が内在している・・・・

彼女はサキュバスの血を飲んだ事によりそれを学習し本能で理解してしまった
それ故にヴァンパイアような行為に走っているのだろうが

その光景を見てベルベレットは震え上がった


「・・・・・・・・」


嫌な汗が止まらない・・・・

もしかしたら、彼女は人間や魔物と言う種の規定を越えて全く別物になってるのではないのかと

もしかしたら、彼女はこのバフォメットでさえ遠く及ばない別種の恐怖を
手に入れてしまったのではないのかと

もしかしたら、彼女はこのまま・・・・オリヴィエを食い殺すのではないのかと


「・・・・・・・あれは一体・・・・何なのじゃ?」


ベルベレットの問いには誰も答えない・・・・代わりに、オリヴィエが三度目の射精を行った


「ンンンンンン!!プアッ!」


自分も絶頂しているのだろう、快感の絶頂すえに彼女は首筋から口を離した


「あっはああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ――・・・・・
アア・・・・んんんんんん・・・・フ」


セヴリールにはどれ程の癒しとなったのかは定かではない・・・・
荒い呼吸をしながらぐったりとオリヴィエの体の上に乗っている

だが、彼女が次にやる事は変わらない・・・・目の前のエサを喰らって更に飢えを満たす事・・・・


「――――ゥぁ・・・」


デイヴは酷い嘔吐感と、体中が凍えるほどの凍えを感じている

両手両足の指先が冷えて動かず、そのくせ喉から溢れてくるような胃液は
少しでも気を緩めようものなら、躊躇いなく吐き出してしまう

心臓がやけに大きく鼓動を刻んでいるのが分かる。目じりから焼けるような涙が流れているのも・・・・


「〜♪」



ぐったりとしていたセヴリールが絶頂の余韻から抜け出して、
再び目を覚ましてしまった



「・・・・・・セヴ・・・・リール」



自分の名を呼ばれて嬉しかったのか・・・・赤く血に染まった彼女の口は
三日月のように歪む

再び紅い血が流れる首筋へ向けて艶やかな口を大きく開いたのだった・・・・・













「ちゅ・・・・・」



僅かに聞えた


「・・・・・」

「ん・・・・・・ふ・・・・・」


ピチャ、ピチャ・・・・と、二人から小さな水音が聞えてくる


「・・・・・・」


一瞬、何が起こったのかセヴリール以外には理解できなかった・・・・・
そこで何が行われていたのか・・・・
彼女はオリヴィエの首筋のキズを優しく舌で舐めているのである。

慈しむように優しく、傷を造って帰ってきた子供を癒す母のような優しさで、
最愛の人をいたわるかのように


「セヴ・・・・?」


オリヴィエは、絶望の中で諦めていた意識を起こしてセヴリール・オベーヌの愛称を呟いた


「・・・・・・ゴ・・・・・め・・・・・ん・・・・・ネ」


耳元で、小さく呟いた・・・・

だが確かにその言葉はオリヴィエに、離れた位置に居るベルベレット達の耳にも聞えた


「ごめん・・・・ね?」

「セヴ!正気に?!」

「ぅ・・・・・う・・・・グゥウウウウウウウ・・・・!!!」

「!!」


ギラリと開かれたセヴリールの両目にオリヴィエは再び絶望を感じた


「・・・・・オリヴィエ・・・・」


その眼は・・・・先ほどまで自分を犯していた魔物と化した・・・・
渇望を欲望のまま満たす眼であったからだ。

彼女はゆっくりと腰を動かした



「うぅ・・・・うぅう・・・・あ・・・ぐ」



腰が上へと動いて女陰から魔羅が抜けた。

ガタガタと震える身体・・・・まるで何か別の力に引っ張られるかのように
オリヴィエの菊門から尾が抜ける


「・・・・ううううううう!!ううううううううううううううううう!!!  ふ・・・・ウウウウウウ・・・・」


身体中がガクガクと震え、苦しみと渇望の悲鳴をを挙げて・・・・
セヴリールはオリヴィエとの結合を自らの意思で絶ったのである。


「ベルベレット!?」


いつの間にか出るようになったデイヴの声がベルベレットに届いたが彼女は首を振る


「儂は何もしておらん・・・・」


セヴリールはオリヴィエに覆いかぶさり


「・・・・・・オリ・・・ヴィエ」

「・・・・・・!!?」


口付けをする・・・・
そう、薬を飲んで変化をしたのにも関らず人間の理性を保っていた時の彼女の姿そのものだ
そして、唇を離して彼女は優しくオリヴィエの頬に両手を添えると、
優しく・・・・優しく微笑んだ。まるで子供をあやす母親の様に。


「・・・・・人間の理性を・・・気力で呼び起こしおった」


セブリールは語る・・・・


「・・・・・贅沢なんて・・・いらなかった・・・・」


贅沢などない。


「あなたとパンを焼いて・・・・売って・・・・今日のディナーを考えたかった・・・・」


パンを作って売って・・・・今日食べるものを買う


「子供の世話をして・・・・貴方を労って・・・・」


子供に愛を雪いで、夫を支えて



「・・・・・皆で幸せに笑っていたかった・・・・」



家族全員で笑って過ごす・・・・幸せな日々だ










セヴリールは呼び起こしていた、完全に魔物へと変わり。
サキュバスとしての思考と倫理に染まったその脳髄の奥底に沈んだはずの
人間の「理性」と「尊厳」と「幸せ」を・・・・・。


「(・・・・・気力で・・・「人間」を吹き返しおった・・・・三度もその身体の中に精を受け、
意識の変換も完全に魔物になったはずじゃ・・・
しかも、あれだけの精を受ければ渇望感と焦燥感はより一層強まるはず・・・・
何があの娘を動かす・・・・?)」


セヴリールの告白は続く・・・・


「小さい頃から・・・・一人だった私を、貴方が手を引いて皆に紹介して、遊んだ日々は。
すごく楽しかった・・・

オルヴェン伯爵を追い払った後・・・・・諦めかけていた私に・・・「結婚しよう」って・・・・言ってくれたね。
すごく嬉しかった・・・

ウェスターや・・・メイド達を見送った後・・・・貴方に会いに言って・・・・結婚の破談を言われたとき・・・・
すごく悲しかった・・・

貴方が急に変わった原因が魔物にあると知った後、やりきれない思いで毎晩一人で泣いているのが
すごく悔しかった・・・

貴方の愛を失う事が辛かった・・・・・私はただ・・・・・もう一度だけでもいい・・・・
私を・・・・・」




セヴリールは力を振り絞る




「もう一度愛して欲しかった」




それはもしかしたら・・・・彼女の酷い我侭であったのかもしれない。
だが、その我侭に彼女は自分の全てを賭けたのだ・・・・
金も地位も名誉も夢も未来もかなぐり捨てて、最後の思いを彼に伝えた


「でも・・・・こんな姿に成って・・・・こんな事して・・・・貴方を「食べて」も、
貴方を愛した事にはならないよね・・・・」


瞼を閉じて、涙を流しながら最後の懺悔をした


「ごめんなさい・・・・私の我侭で、貴方を傷つけてしまって・・・・・
ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・・・ごめん・・・なさい」


あるいは、彼女は人間として最後に謝るために神経が焼ききれるほどの思いをして
理性を取り戻したのかもしれない
またすぐに彼女の「人」という部分は消え去るのだろう

全てを告げたセヴリールという人間は、愛しい者の胸の中・・・ゆっくりと眼を瞑ろうとした


「・・・・・・・?」

「・・・・・まだ・・・寝るなよ・・・・・セヴ」


オリヴィエは再び彼女を優しく抱きしめている・・・・・・
セヴリールは一瞬困惑しながらオリヴィエと視線を交わす

彼は優しく微笑んでいる・・・・一瞬それは幻かと思うような、オリヴィエのかつての笑顔だった


「・・・・・・生まれて初めて・・・・俺はセヴの我侭をこの耳で聞いたぞ・・・・
でも、まだその我侭を俺は効いてない」

「オリヴィエ?・・・・・あ・・・・」


彼女の太ももに熱い滾りを持つ一物がある事に気づいた




          
「・・・・・俺達、まだ愛し合ってないだろ・・・・?」





あの日、彼がコカトリスのフェロモンにやられなければ、
こんなにも遠回りをする事はなかったのかもしれない
だが、こんなにも遠回りしたからこそ・・・・・裏切られないほどの強い愛を
二人は感じているのだろう


「セヴリール・・・・」

「・・・・アア・・・・・・・オリヴィエ・・・・」


二人は、お互いに唇を重ねた・・・・


「ん・・・・んふ・・・・んむ・・・・チュ・・・・んんん」

「はあ・・・・シヴ・・・・・んんぅ・・・」


失った半身を取り戻すかのように、失われた時間を取り戻すかのように二人は互いを求めている
人間と魔物と言う種の摂理に阻まれない「心」を求めている


「あの夜、お前を抱いた日に誓ったよな・・・・・お互いに幸せになろうって・・・」

「うん・・・」

「また始めてもいいか・・・・?二人で一緒に幸せを夢見ても・・・・」

「・・・私、こんなんだよ?」

「形が変わっても、君は「セヴリール・オベーヌ」なんだろう?
俺が愛した女なんだろう・・・・?」

「――――オリヴィエ・・・・」

「幸せの形は変わるのかもしれないけれど・・・・君を全部から守る事は出来ないかもしれないけど・・・
君を傷つけてしまうかもしれない・・・・・それでも俺は、君を愛して生きていたい・・・・」


オリヴィエ自身の言葉は諦めの言葉ではなかった、一つの幸せが
その両手からこぼれても、幸せをもう一度描いて掴もうとする・・・
前を向いた言葉だ

恐らくはその言葉は本物になるだろう、彼がレッサーサキュバスと化した
セブリールの手によってインキュバスに変わる事は間違いなく
そこには愛する者の為に何もかもを捨てる覚悟をした男の言葉だからだ。


「・・・・・・」

「・・・・・セヴリール・・・・愛している」

「・・・・・私も・・・よ」

「泣いているのか?弱虫め・・・・・」


お互いの額をこつんと合わせて小さく微笑んむ・・・・
二人は、ゆっくりと愛し合う事を始めた・・・

服を脱いで彼女の後ろに上着とズボンを乱雑に敷くと彼女をそこに寝かせ、彼女に覆いかぶさる、
正常位になり・・・オリヴィエの精液と愛液に塗れた魔羅を、
セヴリールの暖かい愛液と精液が混ざり合って流れ出る女陰へ宛がう。


「挿れるぞ・・・」

「きて・・・・・んんんん・・・・あは・・・・あぅ・・・・」


ゆっくりと・・・・彼が彼女と合わさって一つとなる。身体を密着させて指を絡めあいながら
優しく交じり合う


「すごい・・・・熱いね・・・・」


彼女の魔物としての渇望が満たされているためか、
彼女の人間としての愛情が満たされているためか?

とても幸せそうな顔をしたレッサーサキュバスが・・・とても美しく見えた


「!!!」


ベルベレットはそのセヴリールを見て悟る


「これじゃ・・・・これが・・・」


一つの、答えを見つけた

ベルベレットはようやく見つけた宝を見るかのような眼で二人を見つめる・・・・
カメリアはその後姿を見据えて軟らかく微笑んだ


「動くぞ」

「うん・・・・あ・・・・ああ!」


どっぷりと濡れた膣壁は魔羅に絡み付いて、動かなくても極上の刺激で
快楽を与えてくる。腰を動かせばそれがストレートにオリヴィエの魔羅へ響く


「ぅう・・・・ぐ・・・・」

「オリ・・・ヴィエ?・・・あん!・・・んんん・・・どう?」

「はぁ・・・・すげえ・・・・気持いい・・・」


腰を振るピストンは非常にゆっくりとした物だ・・・・
浅い所から徐々に肉道を押し広げて進んでいくと、こつんと亀頭の先が
子宮口にぶつかってキスをする


「ひゃうぅ!」


子宮を押し上げれば、セヴリールは一際高い声で喘いだ。それだけで
彼女の膣内に愛液が増す


「・・・・イった?」

「だ・・・・って・・・奥は・・・・子宮にキスされたら・・・・全身に電気が走ったみたい
・・・んんんぅ」


体中の殆どが性感帯の様になり、その感度も人間の倍誓いサキュバスの身体は
人間のそれだった時には僅かな刺激でさえも、今ではお互いに強い強い快感を得てしまうのである


「つっつ・・・・んん、んうぅううう!!」

「ぐっ・・・・」


刺激が強すぎて、オリヴィエは浅いところでポイントを外したピストンをしているのに
すぐに果ててしまいそうである

しかし、先ほど襲われたことが幸いした・・・・射精を3度もしたペニスは
すぐにオーガズムには至らない

まさしくお互いの交わりを・・・・今のお互いを愛し合うには最適な状況であった


「あはっ!あぅ・・・・んんん! んぐ・・・アアウ!! あは・・・・ああ・・・・くっ うん・・・」


大きく突き上げてはゆっくりと降りてきて、再び軽く突き始める・・・・
それを繰り返していくうちに徐々に動きは大きくなっていく
オリヴィエの理性も徐々に欲望色へ染まりだした


「あは♪ ああ! あんん・・・・ん! うぐ・・・おちん○・・・・ぐちゃぐちゃにかき回して
・・・あ!や・・・くぅあ・・・・」

「ふ・・・・ふ・・・・・ふ・・・・・ふ・・・・・」


オリヴィエの腰使いは激しく、セヴリールもその激しさに合わせて腰を使い始める・・・・


「はぁあ!オリヴィエ!!んぅう!!んんん・・・・んむ!ん!!」


唇を奪い、情緒の炎は更に激しく燃え上がる・・・・
森の中に美しく降り注ぐ光の粒子が、二人の交わりを照らし出す。

汗が迸れば輝いて、身体を揺さぶれば悩ましく艶やかに揺れるセヴリールの身体。
乱れて歓喜を表す美しき髪

長い間引き篭っていたオリヴィエの肉体は決して逞しい物ではないかもしれないが、その両腕は
しっかりとセヴリールを放そうとしない


「ぅっふああ!! あんんん・・・・ うhんうぁ!あぅ!! あはああ!」


膣内をカリが抉るたびにシヴリールは快感と歓喜の声を上げて
自らの幸福を謳歌する

ざわつくヒダや肉壁はその快感を得るとざわつきながらオリヴィエの魔羅を
吸い付き、絡みつき、締め上げて嬉しさを伝える

オリヴィエは突けば突くほど剛直になり、熱を帯び、滾りを増していく魔羅で
セヴリールから受け取った嬉しさに答えるように更に情熱的に腰を躍らせて彼女を愛していく

二人が愛し合えば愛し合うほど、響いてくる結合部からの水音と肉体が
打ち付けられるリズムが静寂な森の中に響き渡る。


「ぅううああはあ!! あああん! オリヴィエ・・・・オリヴィエ!イキそう・・私!んんんんぅう! ンム・・・」

「ん・・・・ああ・・・・良いよ・・・・俺もすぐ・・・ぅく・・・・・・ぅ」


セヴリールとオリヴィエは強くお互いを抱きしめあって唇を重ねあう・・・・
激しく響く音が更に高鳴り加速する




「ぅうううううううう!!!」



「っぷぁ・・・・・はあ・・・あぁあああ!!ふあああああああああああああああああああ!!
イ・・・・―――――――――グゥウウウウウウウウウウウ!!!
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」




四度目の射精は、先程よりも量も少なく勢いも小さい物だったが、
セヴリールの心を満たすには十分な量だった
絶頂の余韻をお互いの身体で共有しながら荒い息を吐きながら抱きついている



「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・・・・フフフ」

「?・・・・・・・・どうした?」

「・・・・・何度もこうしたはずなのに・・・・不思議だね・・・・こうして抱き合うのが
始めてみたいな気がする」

「・・・・・・・・そうだな」


軽いキスでオリヴィエはシヴリールは彼女の唇を奪った


「・・・・・・」


ベルベレットは一瞬俯くと、その唇に小さな笑いを浮かべフィンガースナップをする
ドサドサと目の前に服や食べ物が落ちてきた


「え?あ・・・・」

「いや・・・その・・・あれ?だ、だれ!?」


二人はその物音でようやく二人だけの世界から戻ったのか。
合体したまま慌ててふためき始めた


「よいよい・・・邪魔をしたのは儂等じゃ、良いものを見せてもらった礼じゃ。
儂からの祝福として授けよう」


ベルベレットは大層上機嫌にそういうと、踵を返して歩き始めた


「おい、ちょ・・・・」

「それでは去らばじゃ!お主等が魔界に来た折は挨拶に来いよ!
このベルベレット・アナスタシアの元へな!」


カッカッカと笑いながらデイヴを引きずってベルベレットは歩いて行った・・・・
カメリアも二人に一礼して二人の後を追って森の外を目指して消えていった


「・・・・・・あの三人は何だったんだ?」

「・・・・・・恋の・・・御使い様だったのかもしれないわ・・・ぁん・・・・
また大きくなってきた♪」

「・・・・セヴ・・・」

「オリヴィエ・・・・♪」


ようやく結びついた二人は、一日二日で離れそうなものではなかった・・・・















「すみません、そろそろお尻が真赤に染まりそうなんですが」


ずりずりと引きずられるデイヴのズボンはお知りの部分が擦り切れ始めて
いつ破れてもおかしくない

ベルベレットは終始無言でここまで歩いてきている


「兎に角放せ!!自分の足で歩く!!  ブヘ!!」


引きずられている最中に突如手を放されてデイヴは思い切り地面に後頭部を
打ち付けてしまった(良い子は真似するな)


「っ〜〜〜〜〜・・・・・・」


ベルベレットはデイヴに背を向けて立ちつくしている


「・・・・・おい?何なんだよ黙り込んで・・・」

「のう?・・・・人間とはなんじゃろうな?」


再びあの質問が飛んできた・・・・デイヴは静かにその場で地面に胡坐をかいて
ふぅっと小さく溜息を吐いた

「・・・・・あの二人は人間を捨てた・・・・だけど、最後に見たセヴリールさんも、オリヴィエの野郎も
どうにも人間にしか見えなかった・・・解んねえ・・
一体どんな奴を人間って言って、どんな奴を魔物って言うんだ?

質問を質問で返して悪いが、俺もあんたに聞きたい・・・・
何処から何処までが人間なんだ?一体何が魔物を魔物たらしめるんだ?
今お前たちと会話していても・・・・正直魔物と会話しているって実感はわかない」

「それこそが儂が求める最大の命題よ・・・・人間と魔物の違いとは何なのか・・」


デイヴはカメリアに視線を送るが、カメリアは肩をすかして見せるだけである


「お主は先ほど魔物となる事を大層嫌悪しておったな?」

「・・・・そりゃそうだろ、俺達のコモン・センスは教会の教えが基本なんだ。
昔から魔物は悪いもんだってガキのころから教えられてる
今でも、結構あんた等の事は警戒しているんだぜ?」

「そうであろ?教会は・・・・神はそうやって人間と魔物を隔絶に勤めなければ
自らの設定が上書きされるのじゃからな」

「? 何を言ってるんだ?」

「こちらの話しよ・・・・それで、あの二人を見てもその考えは揺らがぬかの?」

「・・・・・・・・」


デイヴは肯定も否定も出来なかった・・・・解らないからだ、何がと問われれば
恐らくはそれは漠然としている


「セヴリールさんとオリヴィエは・・・・人間として当然の事をしたと思う」

「ほう?魔物の儂に聞かせておくれ、その当然の事とは何じゃ?」

「幸せを求める事だ・・・・人間は誰しも幸せを目指して生きているはずだ、
セヴリールさんの願いは正しく人間のものだった」

「そうよな・・・・そして、それを受け止めたオリヴィエと言う男は
懐の大きな男じゃて」

「確かにお前の言う通り、俺はセヴリールさんの行動を否定なんかできないんだ・・・・
タブーを犯して生きてきた俺が彼女のタブーを否定なんて出来ないし
・・・・あんなもん見せられたら、今まで俺達が受けてきた教示なんて信憑性を失う」

「つまり、お主は人が魔物になる事は悪しき事ではないというのじゃな?」

「・・・・・・解らないよ・・・・解らないさ・・・・」

「フフフフフ」


ベルベレットは静かに笑うと、デイヴに向かって胡坐を組んだ
視線を合わせて満足げな表情をしている


「これが儂が今挑んでおる命題よ・・・・」

「・・・・・俺には到底解けそうにないな」

「そうかの?今回のケースはこの命題を解く一つのピースを与えてくれたぞ」

「?」

「考えてみよ、人間と魔物というこのモヤモヤとした霧を取っ払い、
セヴリールとオリヴィエという個人が在ると言う事を考えたとき
これは一つの感動作じゃて・・・・「愛」だけを求めたラブストーリーじゃ」

「そりゃあまあ・・・」

「魔物は性交によって愛を感じて愛を育む・・・・しかしな、
人間は性交を行わずとも、その愛をゆっくりと暖めるて大きくする事が出来る
そして、その愛という力は種族という倫理の壁に容易く穴をあけたのじゃ」

「・・・・種族を超えるって言うならお前達はどうなんだよ、人間を襲うだろ」

「うむ・・・しかしそれは「本能」にじゃ・・・じゃが「愛」という物も「本能」
に近いものがあると見える・・・
まずは、その辺りを見つめなおすことになるじゃろう・・・・・・ぉお。そうか・・・
魔王殿はもしや、その答えを見つけたが故にこのような世界にしたのかも知れぬな・・・・」


ベルベレットは立ち上がってお尻についた土や草を払うと、デイヴを見て
にやりと微笑んだ


「今日は大変良いものを見させてもろうた、約束のものじゃ・・・受け取るが良い」


ベルベレットはフィンガースナップをすると、デイヴの目の前に一つのアイテムを出現させる


「・・・・またサキュバスの血か?」


デイヴがそれを取ってみると、確かにそれはセヴリールに渡した
サキュバスの血でと同じものに見える


「それは「アリスの血」じゃ・・・アリスとは幼いサキュバスの事で個体数が極めて少ない、
そして尚且つ血を流す事を大層嫌う。人間の市場に出回る事などまずなかろうて」

「・・・・・どうちがうんだ?」

「飲んだ人間が老婆じゃろうが何じゃろうが儂の様なピチピチのロリータになる、すごいのぉ」

「・・・・赤ちゃんに飲ませたら?」

「・・・・・・お主時折興味深い事を言うわな・・・・まあよい、それをどう使おうがお主の勝手よ」


カメリアがベルベレットの後ろまで来ると一礼


「それではのぉ、また面白い人間を見たならば教えてくれてよな」

「またお会いしましょう」


二人の足元に巨大な魔法陣が発生し、その魔法陣が目映い光を放った後、
二人の姿は消えていた・・・・・


「・・・・・・」

















「おや?ここはどこじゃ?」

「先ほどの地点から(0.-60)地点に成ります」



視線を地面に下げると、何処かで見た生首が生えていた・・・・・・















デイヴは宿に戻って荷物をまとめてすぐさま旅路に出た・・・・
随分長い事あの森にいたと言うのにお日様はまだまだ頭上に座している
街道を歩きながらデイヴはベルベレットの言葉を頭の中で考えていた

人間と魔物とは一体何なのか・・・・見つからない答えをずっとグルグルと頭の中で考える


「・・・・・・・」


果たして魔物と人間は一体どんな関係であるべきなのか・・・・
その問いかけに挑んだベルベレットに少しだけ畏敬の念が生まれた
そして、今自分はその答えを知りたがっている。


「本当にどうしようもないね、俺って奴は・・・・よし!」


昔聞いた事がある、隣の国の西には魔物と人間が共存している物騒な国があると
そこにいけば、この人間と魔物の関係の一つの答えが出るのではないのか?



「目指すは西だ!!」



次の分かれ道で進む方向が決まった。 デイヴ・マートンはかくして西を目指したのだった・・・・・






                                         To be continued_...
10/11/23 08:53更新 / カップ飯半人前
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■作者メッセージ
ここまでお読みいただきありがとうございます

はじめまして、カップめし半人前です

健康クロスさんのこの素晴らしきサイト事体は随分前から拝見させていただいていたのですが
こちらの素晴らしき魔物のお嬢さん達と、ここで活躍されている先輩様方の作品を見て
自分もかきたくなり、今回投稿させていただきました。

これからは積極的にウェブ拍手に参加いたします(寧ろ今までしなくてすみません)

いきなり連載物を書く馬鹿ですが、後学のためご意見ご感想をお聞きしたいです。

もしよければ短文で構いませんので一言よろしくおねがいします。

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