読切小説
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旦那様と過ごす夏
 雲一つない空からじりじりと日差しが降り注いでいます。
 辺りが蝉の声に包まれている中を、私は一人歩いていました。

「ふぅ、ふぅ……」

 手に提げている袋のせいで思わず荒い息を吐いてしまいます。買ってきたばかりのお野菜やお魚、それに果物で膨れているそれは少々重く、両手で持った上で不格好によたよた歩く羽目になってしまいました。

――それにしても暑いです

 肌を焼かないよう袖の長い着物を着ているので、身体に熱がこもってしまいます。
 先程まで涼しいお店の中にいたこともあって、余計に暑く感じるような気さえします。もっとも、そんなことを口にしたところで暑さが和らぐ訳ではありませんが。

 旦那様に手伝ってもらえば良かった、とも思いましたが、すぐにその考えを頭の中から追い出します。こんな暑い日に私の都合で連れ出すのは申し訳ないですし、いつまでも旦那様に頼る訳にもいきません。

 今度からは日傘を持っていこうかなと考えつつ歩くこと数分、私は旦那様の待つ家に辿り着くのでした。

§

「旦那様、ただいま帰りました」
「あぁ、お帰り」

 音を立てて引き戸を開けると、奥から旦那様が私を迎えに来てくれました。そして私の姿を見ると、すぐに手提げ袋を奪い取ってしまいました。
 
「あの、旦那様――」
「やっぱり」

 旦那様はそのまますたすたと歩いていってしまいます。私は慌てて履物を脱ぐと、旦那様の後を追いました。

「あの、手を放してください旦那様。私が運びますから」
「いやぁ、流石に一人で買い物に行かせたんだしこの位は」
「いえ、これは私のお仕事ですから」
「お仕事なら手伝うくらいいいでしょ」

 結局、旦那様は台所に着くまで袋を渡してくれませんでした。

§

 台所に着いた旦那様は袋を置くと、その中身を並べ始めます。本来ならそれも私のお仕事なのですが、こうなってしまっては私の話を聞いてくれそうもありません。仕方がないので、私は旦那様が並べた品物を移すことにしました。
 私は袋に包まれたお魚を手に取ると、備え付けてある大きな箱を開けました。冷蔵庫という名前の箱から、ひんやりとした空気が流れてきます。

「ふふっ」

 その心地良い冷気を受けて、私は少し前のことを思い出すのでした。
 それは旦那様に拾われて右も左も分からないころのことです。
 初めて冷蔵庫の扉を開けた時はとても驚いたものでした。魔力も何もないただの箱が、私と同じように冷気を操る力を持っていたのですから無理もありません。私みたいなゆきおんなが入っているのですか、と頓珍漢なことを口走ってしまい、旦那様の笑いを誘ってしまったことは今でもはっきり覚えています。
 あの時はちょっぴり恥ずかしかったです。
 
「ん、どしたの?」

 声がした方を振り向くと、手を止めた旦那様が不思議そうな顔をしてこちらを見ています。
 私の笑い声を聞かれていたのでしょうか?

「い、いえ、今日も暑いですねと思っていただけですよ」

 恥ずかしくなった私は、振り向いた首を戻してから返事をしました。背中から旦那様の生返事が聞こえたかと思うと、がさごそと袋が擦れる音がし始めます。私も旦那様に倣って、冷蔵庫の中身を整理し始めるのでした。

「そうだねぇ。しばらくは暑くなるし、買い物は付き合うよ」
「いいえ、いつまでも旦那様の手を煩わせる訳にはいきません。明日からは日傘をさすつもりですから大丈夫ですよ」
「でも両手がふさがってちゃ傘はさせないよ?」
「う……で、ですが、ずっと暑い訳ではないですし、秋になるまでの我慢です!」
「無理することないのに……」

 呆れたような声が終わったと同時に袋が擦れる音も止みました。旦那様が中身を取り出し終えたのかと思った私は、再び振り向こうとして

「ひゃん!」

 背後から抱きつかれてしまいました。

「おー、流石はゆきおんなだね、外に出てたのにひんやりしてる」
「だ、旦那様、いきなり何を……?」

 戸惑う私を余所に旦那様はもぞもぞと掌を動かします。掌は着物の帯の上にある慎ましい胸へと伸び、辺りを弄りだすのでした。

「あ、ちょっと谷間が蒸れてるね。となるとこっちもかな」
「や、その……」

 すんすん、とわざとらしく匂いを嗅ぐ音が聞こえてきます。私は恥ずかしくて、まともな受け答えすらできませんでした。旦那様を振り払うこともできずにおろおろと視線を彷徨わせます。

 あっ、あれは……。

「あ、あの! 旦那様!」
「うわぁ、びっくりした。どしたのさ、大声出して」

 幸いにも、私はたまたま目についたものからこの状況から逃れる方法を思いつくのでした。

「き、きき、今日は美味しそうな桃を見つけたんですよ、ぜひ、ぜひ今から食べませんか!?」
「えー、今から? 冷やしてから食べたいなー」
「でしたら私が冷やしますから、今すぐ! ね、ねっ?」

 しぶしぶといった様子で私から離れる旦那様を見て、私はほぅと一息吐くのでした。

§

「そ、それじゃあ準備しますので、向こうで座って待っててくださいね」
「はーい」

 去っていく足音を聞きながら、私はもう一度息を吐きました。それから何回か深呼吸をして、夏の暑さとは違う、ぽかぽかと熱くなった体を落ち着かせようとします。ですが、胸のざわめきはすぐには大人しくなりませんでした。

――ど、どきどきしました……

 旦那様と出会って然程時間は経っていないとはいえ、私も生娘という訳ではありません。こうして旦那様を旦那様とお呼びしている以上、とっくにそういうことは済ませています。

――それにしても旦那様は意地悪です

 旦那様に拾われてから、私と旦那様は毎晩体を重ねました。そんな穏やかな日が続けばいいと思っていたのですが、現実はそう上手くいきません。日々が過ぎていくにつれて旦那様が私を求めてくる頻度は増していき、今では昼間でもこうして求められるようになってしまったのです。

――求められることは悪いことではないのですが……

 拾ってもらった身である以上、私には旦那様のお役に立ちたいという気持ちがあります。……気持ちのいいことも、嫌いではないですし。
 ただ、このまま欲望に身を任せていてはどうなってしまうのか。それを想像するとどこか空恐ろしくさえなってしまいます。

――おっと、こうしている場合ではありませんね

 私は買ってきた桃を手に取ると、それを水で軽く洗い流します。流れてくる水が冷たくなってから、桃の表面をこしこしと軽くこすってうぶ毛を落としました。

――次は桃を冷やさないといけませんね

 私は桃を両手で包み込むように持つと、ふぅと長い吐息を吐きました。私の唇から白い霧が放たれて桃の周りに纏わりつくと、染み込むように消えてしまいます。それから少し待っていると、掌の中の桃がゆっくりと冷えていくのを感じました。

――本当はこんなことに使うものではないのですけれど

 すっかり掌の中で冷え切った桃を見つめながら、私は苦笑しました。
 私たちゆきおんなが使う『氷の吐息』は、本来は意中の男性に使ってその心を得るためのものです。それがまさか、旦那様を得た後にこんな形で役に立つことになるとは思っていませんでした。

――旦那様のお役に立てるならそれも構わないですよね

 気を取り直した私は、包丁を使って桃の皮を薄く剥いていきます。綺麗に丸みを帯びた白い果肉から甘い香りが漂ってきました。どうやら当たりのようです。嬉しくなった私は、ついつい鼻歌を口ずさんでしまいます。

――美味しそうです、旦那様も喜んでくれるといいな
 
 包丁の扱いに慣れてきたことを実感して、私は思わず笑みを浮かべてしまいます。もしかしたら旦那様に褒めてもらえるかもしれないと思うと、どうしてもその感情を抑えることが出来ませんでした。

――あとは切り分けて器に盛りつけるだけですね

 私は桃を手早く一口大に切り分けると、爪楊枝と合わせて器に盛りつけました。種の周りの果肉が不格好になってしまったのは今後の課題ということにして、急いで旦那様の下に持っていこうとします。

「おー、綺麗に剥けたね」
「はい、上手く出来ました」
「角切りにしてくれたのは嬉しいな、大きいと食べにくかったりするんだよね」
「はい、一口大なら食べやすいかなって思い、まし、て……」

 あれ? どうして旦那様の声がするのでしょう?

「それじゃあ、さっそくいただこうかな」

 ひょいと私の後ろから手が伸びてきて、爪楊枝が刺さった桃を持っていってしまいました。

「うーん、やっぱり冷えてると甘さが引き立つなぁ」

 背後から聞きなれた声としゃくしゃくという咀嚼音が聞こえてきます。
 私は自分の背中から脂汗がたらたらと流れていくのを感じるのでした。

「あ、あの……旦那様、ですよね?」
「他に誰がいるのさ」

 おそるおそる後ろを振り返ると、そこには旦那様が居ました。
 どこか楽しそうな口調の旦那様の返事を聞いて、私はいかに間が抜けているか改めて実感するのでした。

「い、一体、いつからそこに……?」
「桃に息を吹きかけてるあたりから、かな」

 旦那様は何事もなかったかのように二つ目の桃に爪楊枝を刺すと、それを口に運びます。幸せそうに頬を緩ませながらそれを咀嚼して、目を白黒させている私の前で喉を鳴らして飲み込むのでした。

「食べないの?」

 私は何が何やら分からずに、しばらく呆然としていました。
 そんな私を尻目に、旦那様は一つだけでなく私の分の爪楊枝が刺さった桃まで取ってしまいます。旦那様の口の中に二つの桃が入っていって、頬がリスのように膨らむのでした。

「あの、まさかですけれど、もしかして、もしかしてですよ……?」
「んぐ、ひょっとまっふぇて……いまふぁべてるから」

 私が感じている危惧を知ってか知らずか、旦那様は桃を味わうようにもぐもぐとよく噛んで食べているのでした。

「ん、お待たせ。……ご機嫌な鼻歌も、旦那様だんなさま〜って独り言もちゃんと聞こえたよ」
「……ぁ、ぁぅ」

 やっぱり聞かれていました。思ったことを無意識に口に出してしまうのは自分でも悪い癖だとは思っているのですが、なかなか治せるものではないようです。
 
――で、でも、旦那様はこのままでいいって笑ってくれてましたし、それに……

「そうだね、ちょっと抜けてる方が可愛いんじゃないかな」
「……ぅぅ、あんまり、苛めないでください」

 笑いながら五つ目の桃を頬張る旦那様を前にして、私は熟れた桃のように顔を赤らめることしかできませんでした。

§

 うう、また旦那様にからかわれてしまいました。旦那様も悪気があってしている訳ではないですし、可愛いとお褒めの言葉を頂けるのは嬉しいことなのですが、どうもこそばゆく感じてしまいます。

「そ、それよりも旦那様、ちゃんと座って食べましょう。さ、お部屋まで持っていきますから」
「いいじゃんここで食べちゃえば」

 むず痒い空気を変えるために挙げた案はあっさり断られてしまいました。お皿に盛られた桃はすでに半分程になっていて、確かにここで食べてしまった方が楽といえば楽ではあるのですが。

「ですが立ったまま食べるのはお行儀が悪いですよ」
「そっか、行儀が悪いのは良くないよね」

 良かった、旦那様も分かってくれました。
 心の中でそう安堵した私は、お皿を取ろうと手を伸ばします。

「じゃあ行儀よく食べないといけないね」

 伸ばした手は皿に触れることなく空を切りました。私は何が起こったのか分からず、そのままの勢いで前につんのめってしまいます。台の上に両肘をぶつけてしまい、恨めし気に後ろを振り向くのでした。

「こっちこっち」

 旦那様はへらへら笑っていました。片方の手にお皿を持って、もう片方の手には爪楊枝が刺さった桃を持っています。

 あっ、今私に歯を見せてにかって笑いました。わざとです。絶対にわざとです。私が焦ってお皿を取ろうとすることを予想してこんな意地悪をしたんです。

「ほら、あーん」

 旦那様は桃を私に差し出してきます。鼻先に突き出されたそれから甘い香りが漂ってきました。これはこれで行儀が悪いと思うのですが、旦那様はそんなことは気にしないのでしょう。

 なんて、もう騙されませんよ。
 どうせ私が口を開けた隙に自分で食べてしまうんです。そしてぽかんと呆気に取られる私を見てまた楽しそうに笑うんです。
 今日はもうやり込められませんよ、残念でした、旦那様。

「食べないの?」

 私はそっぽを向いて旦那様を無視します。ちらりと横を見ると、旦那様は私を気遣ってか心配そうなそぶりをしています。

 ちょっと可哀想な気もしますが駄目なものは駄目です。
 駄目なんです。
 ……駄目なんですから、そんな目で見ないで下さい。

 私が普段にない粘りを見せていると、旦那様は諦めたのか桃を近づけるのを止めてくれました。そのまま自分の口へと運んでいきます。

「さ、旦那様。それを食べたらお部屋へ――んむっ!?」

 そして桃を口に含んだまま、私に接吻をしてきたのでした。
 あまりに突然のことで驚きを隠せない私は、抵抗できずにその動作を受け入れてしまいます。閉じようとしていた唇の間に旦那様の舌が入り込み、無理矢理こじ開けられてしまいました。

「むーっ、んーっ!」

 我に返った私は旦那様の体を叩いて接吻を止めてもらうようにお願いします。ですが旦那様は全く気にした様子もなく、私の口の中へ何かを送り込んできました。
 それは桃でした。旦那様の唾液が絡みついたそれは舌で崩せるほどに柔らかくなっていましたが、そのまま飲み込める程の大きさではありませんでした。
 桃を送り終えた旦那様の舌は、そのまま私の口内を這いまわっています。歯茎の裏まで弄られてしまっているので、歯を動かしてしまっては旦那様の舌に傷をつけてしまいます。

 どうしようかと困惑していた私ですが、ふとある事に気づきました。旦那様の舌が桃を押すような動きをし始めたのです。

 ひょっとして、旦那様は……?

 私も旦那様に倣って、反対側から桃を押すように舌を動かします。両側から圧を掛けられた桃は、衝撃に耐え切れずに崩れて細かな欠片になりました。
 それを見計らってか、旦那様はこちらへ体を傾けてきました。私の力では旦那様を支えきることが出来ずに、腰から先を仰け反らせてしまいます。崩れた桃と唾液が交じり合った蜜が喉元に溜まっていくのを感じていました。

「んくっ、こくっ……」

 当然その状態が長く続くはずもなく、息が苦しくなった私はそれを飲み込むしかありませんでした。無理な体勢をとっているので一気に飲み干すことも出来ず、少しずつ喉奥へと送り込んでいきます。

「ん……ん……ん、くっ……」

 口を塞がれているので呼吸も満足に出来ません。それは旦那様も同じはずなのですが、旦那様はまるで堪えている様子がありません。

「ん……ふ……ん、く、ふっ……ん……んぅ……」

 静かな部屋に響くのは、私が発する音ばかりでした。蜜を流し込む音、鼻から息を吸う音と吐く音がいつもより大きく聞こえます。
 旦那様にそんなはしたない音を聞かせているような気がして、私は旦那様の顔をまともに見ることが出来ませんでした。ぎゅっと固く瞑った目から、ポロポロと涙が伝っていくのを感じます。

「ん……く……、――ぷはっ、はっ、ひっ……はーっ、はーっ……」

 それでもどうにか口の中の物を喉に流し込み終えた私を見て、旦那様は体を離してくれました。

「どう、美味しかった?」

 旦那様が何か言っていますが、私はそれに答えるどころではありませんでした。頭の奥がぼうっとして、体はかくかくと情けなく震えています。お尻にひんやりと冷たい感触がしなければ、床に座り込んでいることすら分からなかったでしょう。

「その様子だと味どころじゃなかったみたいだね」
「は……はひ……」

 掠れた声でそれだけ返事をすると、旦那様は嬉しそうな、そして意地悪な顔になりました。その顔は、いつも私をからかって遊んでいるときの顔をでした。

「じゃあ、もう一つ食べよっか」
「は……へ……? ――ふむぐっ!?」

 旦那様は二つ目の桃を口の中に放り込むと、また私に接吻をしてきました。ごろりと桃が口内に押し込まれたかと思うと、今度はすぐに舌が抜けていってしまいます。

「ちゃんとよく噛んで食べてね、味が分からなかったらまた食べさせてあげるから」

 旦那様はこちらを見て、にこにこと楽しそうに笑っていました。

 本当に旦那様は意地悪です。
 今の私には桃を飲み込む力すら残っていなかったのですから。

「お、おねがい、ひましゅ……らんなさまぁ……、どうか、ろうか、わひゃしにももをはべひゃへてくらしゃい……」
「うん、いいよ」

 ぐい、と持ち上げられたかと思うと、私は旦那様に抱きしめられました。そのまま口の中に舌が入り込んできます。私はそれを受け入れるでも拒むでもなく、ただただなすがままにされるだけでした。

「ちゃんと残さず食べないと駄目だよ」
「ひゃ、ひゃい……」

 こうして、私は旦那様に口の中も頭の中もとろとろに溶かされてしまったのでした。

§

 あれから十数分かけて、私はどうにか桃を食べ終えることができました。正確には『食べさせてもらった』のですが。

「ご馳走様、美味しかったね」
「は、はい……」

 私は台所で食器を洗っていました。肌に流れる冷たい水が私の心を正気に戻してくれます。同時に先程まで自分がどんなことをしていたのかを想起してしまい、顔から火が出そうです。

 それにしてもなんてことをしてしまったのでしょう。
 いくら何でもあれは普通ではありません。あんなことをした旦那様もそうですが、受け入れてしまった自分もおかしくなってしまったのでしょうか。

「また買ってきてほしいな」
「ふぇっ!? ま、またですか?」
「だって美味しかったもの、いいよね、桃」
「あ、そ、そうですね、いいですよね、もも!」

 またあんなことをするのかと思って声が上ずってしまいます。旦那様は真面目に桃の話をしているはずなのに、どこか期待してしまっている私がおかしいのでしょうか。だんだん自分に自信がなくなってきました。

 洗い終えたお皿を水切りかごへ入れ、手拭いで手に残った水を拭き取ります。もう少しだけ水に浸って冷静さを取り戻したかったのですが、旦那様が見ている前で水の無駄遣いはできませんでした。

「ねえ、もしかしてさ」

 突然、耳元で旦那様が囁いてきます。甘い声の響きから、こちらから顔が見えなくとも旦那様がどんな顔をしているかが手に取るように分かってしまいます。きっと、あの意地悪な笑みを浮かべているのでしょう。

「またしてもらえるかもって、ちょっと期待した?」
「しっ、してません!」
「ふーん、でもさ」

 後ろから伸びてきた手が私の胸元を弄ります。着物の合わせ目へと入り込んだそれは、たちまち私の慎ましい胸へ辿り着いてしまいます。

「や、やめ……やめて、ください……ひゃんっ」
「あ、やっぱり」

 旦那様はそのまま私の乳首へ触れてきました。つんと立っているそれを指で挟み、こねて、爪を押し立ててきます。

「お願い、ですっ、どうか、これ以上は……」
「こんなに立たせておいて何言ってるの、気持ち良かったんでしょ」
「ちがい、ま――ひぁあっ!?」

 ぐりと乳首を持ち上げるように引っ張られてしまい、変な声が出てしまいます。私の嬌声に気をよくしたのか、旦那様は乳首を責める手を激しくするのでした。

「ひんやりと冷たくて気持ちいいね。でも、こうすると――」
「あ、あぁっ、だ……め……ですっ、おねがい、です、からぁ……ぁんっ」
「先っぽから熱くなってくるんだよね、溶けちゃうくらいに」
「そう、です……っく、ふっ、さわ、られる、と、とけて、しまい、そうに、ぃあ、あぁっ……だめになって、しまい、ますっ……」

 旦那様は乳首だけでなく胸も責めてきました。乳首ほど感度がいい訳ではありませんが、舐めるように撫でまわされてしまうと甘い声を抑えることが出来ません。旦那様の手が着物に潜り込んでいることもあって、いつどこを責められるのかが分からず、耐えることも叶いませんでした。

――それに、まだ、さっきのねつがひいて、なくて

 一度落ち付いたとはいえ、口内を弄ばれたときの熱が完全に収まった訳ではありませんでした。むしろ中途半端に燻った快楽の炎が、旦那様の愛撫によって再び燃え上がろうとしていたのです。

――このまま、だと、わたしは、わたし、ほんとに、おかしく、なって

 口と胸を弄られているだけなのに、私はこんなにも苦しく、そして心地良くなってしまっています。ひょっとして、私はもうだめにされてしまっているのでしょうか。

――でも、ものたりないです、たりないん、です……

 旦那様はまだ私のあそこを触ってくれません。接吻の時も、こうして胸を揉んでいる時も、私の女陰には手を伸ばそうとさえしていませんでした。

――いじわる、ですっ、だんなさまはっ……わたしが……わたしのあそこがどうなってるのか……しっている、くせに……っ

 きっと旦那様は、我慢できなくなった私がはしたなくおねだりをする様を見たいと思っているのでしょう。そのためにこうして焦らすような真似をしているのです。

――ずるい、ですっ……ほんとう、にっ……だんなさまは――

「そうだね。でもさ、ずるいのはお互い様だよ?」
「ぁ――」

 またです。
 また、私は、旦那様の前で、心の内を、吐露してしまって――。

「だってそうじゃない? こうして旦那様の手を煩わせてしまうなんて」
「ひっ!? だ、だんな、さまぁ、そこは、まだ――ひゃ、んぅっ」

 私の女陰に旦那様の指が入りこんできました。
 何の抵抗もなくするすると入り込んだ指は、私のお腹を内側から破るかのように膣壁を擦り始めます。

「いまっ、いじられた、らぁっ、だめっ、だめなんで――ぁ、あぁっ、おなか、あつく、うぁ、あぁーーっ!」

 目の前がぱちぱちと光りだして、お腹の奥からじわじわと熱さが広がって、体の痙攣が止まりません。全身の感覚が波に揺られているかのように心もとないはずなのに、不思議と心地良くて仕方ありません。

 そうです。
 私は旦那様に指で弄られただけで絶頂してしまいました。
 本来なら私が旦那様を満足させるべき立場にあるにも関わらず、自分だけはしたなく快楽を貪ってしまったのです。

「おまけに一人で勝手に満足しちゃうなんてさ」
「ぁ、あ――も、もうしわけ、ありません……」
「大丈夫、怒ってないよ。それより――」

 耳元で囁く声がして、耳朶に息を吹きかけられました。

「もっともっといやらしい姿を見せてほしいな」
「……ん、はぁ……、うぅん……」

 甘く耳の先端を噛まれた私は、媚びているような声を出してしまいました。旦那様はその声を聞きたいとばかりに耳で遊び始めます。舌で舐め回し、唇で甘く噛み、時には息を吹きかけて、その度に返ってくる私の蕩けた声を聞いて、楽しそうに笑っていました。

「可愛いよ」

 絶頂の余韻が引いたころ唾液に塗れた耳に届く声がありました。
 囁くような小さな声でしたが、確かに旦那様の声でした。

「ほんと、ですか……?」

 ぞくぞくと背筋に悦びが走ります。
 こんなにもはしたない私のことを、可愛いと言っていただけるなんて。
 
「本当だよ。こんなえっちなお嫁さんを持てて、俺は幸せ者だ」

――私もです、旦那様

 私はとっくにだめにされていました。
 こんなことをされても、全部その一言で許してしまえるようになっていたのですから。

§

「ほら、それじゃあそこに手をついて」

 旦那様に言われるまま、私は流し台の空いている場所に寄りかかります。どこに腕を置こうかと考えていると、旦那様は私の手をとって壁へと押し付けてしまいました。そのまま、旦那様はこちらへと体を預けてきます。

「旦那様の体、温かくてほっとします」
「こっちは冷たくて気持ちいいよ」

 つぅ、と着物の上から指でなぞるように触れられます。直接触られないもどかしさがあるのですが、今の私はそのもどかしささえ愛おしく感じてしまっているのです。

 旦那様の指は、私の肘と二の腕を通りすぎて脇腹で止まります。背中に伝わる温もりが離れるや否や、旦那様の指は着物の帯の隙間へ入り込みました。

「少し緩めてあげないとね」
「ふぁ……」

 私の脇腹をくすぐるかのように手が動き、帯の締め付けが緩みます。お腹周りと襟元がはだけ、肩の布がすべり落ちていくのを感じました。
 帯から抜け出した指はそのまま下へと降りていき、私のお尻に辿り着きました。旦那様は着物の上から円を描くようにお尻を撫で始めます。

「やっぱり大きいね」
「もぅ、旦那様ったら」

 どこか嬉しそうな旦那様の声に、私は思わず呆れた声を上げてしまいました。おそらくですが、旦那様にとって私のお尻は触り心地がいいのでしょう。何せ、私の胸は他の方と違って慎ましいものなのですから。

「でもやっぱり、触るなら直接――」
「きゃあぁっ!」

 勢いよく着物を捲り上げられてしまい、私は素っ頓狂な声が出てしまいました。お尻が外気に晒されてしまい、恥ずかしい半分涼しくなって気持ちいい半分と複雑な感情を抱いてしまいます。

 えっと、実はですね。私、下着を身に着けていなかったのです。
 いえ、その、着物だとですよ、線が見えてしまうのと、あと、えっと……。

 い、いつでも旦那様に求められてもいいように、じゅ、準備をしていたのです。

「うん、すべすべして柔らかい。それにちゃんと下着を付けずに出かけてくれたんだね」
「だ、だって……、旦那様が、いつでもしたい時にできるように、準備をしておくようにと仰っていたので……」
「でも満更でもないんでしょ?」

 旦那様は再び私のお尻を撫で始めます。今度は円を描くだけでなく、お尻の谷間に沿って指を這わせたり、お尻の肉を掴んで揉みしだいたりしてきます。

「旦那様、それは……くぅん、あ、あまり強く揉まれては……」
「だってそうじゃなきゃさ」

 旦那様の指が女陰へと滑り、ぴちゃと水音を立てました。
 わざと私に聞かせるような、大きく、いやらしい音でした。

「こんなに濡れてるはずがないよね?」

 余韻が引いたとはいえ、一度絶頂した体は容易く反応してしまいます。元々接吻と胸への愛撫で濡れそぼっていた性器は、愛撫を重ねたことで更なる潤滑を得ていたのでした。

「こんなにいやらしい汁をいっぱい出しちゃって、そんなに気持ちいいことが好きなんだ」
「そ、それは……旦那様が……」

――旦那様のせいで、こんなになってしまったんですよ?

 この期に及んで、私は自分の淫らさを旦那様に押し付けようとしていました。先のやりとりで自分のいやらしさを自覚してはいるのですが、こうして改めて問いかけられるとやはり認めたくないような気恥ずかしさを感じてしまいます。

「そっかー、俺のせいか……そうだね、あんまり無理強いするのもよくないよね」

 そう言いながらも旦那様はお尻を弄る動きをやめようとはしませんでした。それどころか私の女陰から蜜を拭いとり、お尻に塗りたくっているのです。

「じゃあ今日はお尻で我慢するよ」

 後ろで何かが擦れるような音がすると、私のお尻に何かが触れました。それはとても硬くて、肌を焼いてしまうような熱を持っていました。

「あっ――」

 私の腰ががっしりと押さえつけられたかと思うと、お尻の谷間を熱いものが行ったり来たりし始めます。それは幾度か動くにつれて、硬さと熱さをさらに増していくのでした。ツンと鼻につくような雄の匂いが漂ってきます。

 どうやら、旦那様は私のお尻を使って欲望の滾りを出してしまうつもりのようです。段々と旦那様の腰の動きが速いものへ変わっていき、荒い息が聞こえ始めたのでした。

――また、旦那様の意地悪です、どうしよう
――ううん、どうすればいいかなんて分かっています……最初から分かっているんです
――でも、私からは求めてしまうのははしたなくて、でも旦那様に挿入してほしくて、だから、どうすれば――

「ねえ」
「! は、はい、どど、どうされました、旦那様」

 急に声を掛けられて、やっぱり私は驚いて背中を震わせてしまいます。首を精一杯後ろに回して、旦那様の方へ顔を向けました。

「あのさ、やっぱり」

 旦那様は微笑んでいました。いつもの意地悪な笑みではなく、どこか困ったような笑顔をしていました。

「入れてもいい?」

 どうやら我慢できなかったのは私だけではないようです。子供がおねだりをするような問いかけを前に、私はすぐに答えを返すことが出来ませんでした。

 ……いいえ、本当は分かっています。
 旦那様は意地を張っている私を見て、助け船を出してくれたのです。
 きっと、私の心の中は全て旦那様に筒抜けになってしまっているのですから。

「……はい、好きなように私を使ってください」

 私はそんな旦那様の優しさに甘えてしまうことにしました。
 
――ありがとうございます、旦那様

 旦那様への感謝の想いが伝わることを願いながら。

「うん、分かった――それじゃ、いくよ」

 お尻に触れていた熱い感触が離れ、女陰の先端へと移りました。肉棒の切っ先が私の性器へと触れ、割れ目に擦りつけられるのを感じます。
 後背位の形をとっているので、直接旦那様の肉棒を確認することは出来ません。
 挿入される時が来るまで、ただ体を昂らせながら待ち続けます。

「……んっ、……ふっ……ぅん、うぅっ――ぁ」

 その瞬間は唐突に訪れました。
 旦那様の肉棒と私の膣は愛液で濡れていたため、すんなりと挿入されてしまいました。ずぶずぶと音を立てて挿入された肉棒は、私の膣内へ吸い込まれるように埋もれていきます。亀頭、雁首、そして陰茎の中程までが入ったところで、旦那様は挿入を止めました。

「だ、だんなさま――?」

 それどころか入れたはずの陰茎を抜きだしてしまっています。私は奇妙な虚脱感と共に旦那様が雁首を残して陰茎を抜き去ってしまうのを感じて――

「ぁひぃっ!」

 いきなり根本まで叩き込まれた快楽に悶絶するのでした。
 予想だにしてなかった衝撃を受け、思わず体を仰け反らせてしまいます。

「びっくりした?」
「はひっ……は、ぁーっ……はーっ……」

 口を開いても意味のある言葉は出てきませんでした。肺の中の空気を押し出されてしまったような圧迫感を受けて、私はぱくぱくと口を開けて何とか空気を取り込もうとするのでした。

「はぁ……はぁ……ずるい、です、いきなり、こんな……」
「ごめんごめん、ちょっと意地悪したくなってね」
「……もぅ」

 私は少しだけむくれたふりをして、旦那様の方を振り向きました。旦那様も私の意図を察してくれたみたいで、私に向けて顔を近づけてくれました。

「……ん」

 私たちは、どちらからともなく唇を合わせました。啄むような軽い口づけを二、三度繰り返し、舌を絡ませ合います。舌を吸われると、力が抜けて奇妙な心地よさが舞い込んできました。私もまた、桃の味がする旦那様の舌に吸い付きます。

「……ん、ちゅぷ……ぷは、はむ……ん、んうぅ……んちゅ……」

 帯を緩めたおかげで露わになった胸元へ旦那様の手が伸びていきます。旦那様は快楽で朱に染まった肌をなぞると、徐に掌で包み込んで握りしめました。少し痛いくらいの強さなのですが、私はそれすらも快感に変えてしまっています。

「……ん、むぅん……ぅん……くちゅ……ちゅ……ん、ふぅ……」

 接吻と愛撫を同時に行うことで、私はすっかりどろどろに溶かされてしまいました。肌には玉のような汗が浮かび、唇の周りはだらしなく垂れた唾液でべたべたになっています。最奥まで挿入されてから動かされていないにも関わらず、膣からは愛液がぱたぱた漏れ出している有様です。

「……ん、んくっ……んぅん……ぷぁっ……はぁ、はぁ……えへへ」

 接吻を終え、だらしない笑みを浮かべてしまいます。旦那様はそんな私の頭を、髪の毛を梳かすように優しく撫でてくれるのでした。

「ねぇ、だんなさまぁ……」

 目尻を下げた私の視線を受けて、旦那様は頷いてくれました。胸を弄る手を止め、私の腰をがっしりと掴みます。

「いっぱい、いっぱい、して、くださぁい……ぁんっ」

 旦那様が腰を僅かに引いただけで喘ぎ声が漏れてしまいます。旦那様の肉棒をずっと咥え込んでいた膣は、すっかり旦那様の形を覚えてしまいました。肉棒が動くたびに雁首が膣壁を擦り、私の体を甘い痺れが駆け抜けていきます。

「だんな、さまぁ、もっと、もっと……はげしいのが、いい、のぉ……」
「……っぐ、急に、そんな、締め付けられると……!」

 私はお尻を左右に揺らしながら、膣壁を締めつけて肉棒を絞り上げました。旦那様の呻き声が聞こえ、肉棒がびくびくと震えます。
 後背位での性交は、お互いの顔を見ることも抱きしめ合うことも出来ません。ただ獣のように激しく腰を打ち付けて、快楽を貪るための体位です。

「おねがい、ですっ……ぁんっ、んぅっ……わたしで、きもち、よく、ひんっ、なって、くだ、ぁあっ……んっ」

 ですから旦那様と後背位をする時は、心に浮かんだ素直な思いを伝えるように頑張っています。こうして淫らな願いを伝えることで、私自身と旦那様の劣情を高めることが出来るのです。
 幸い、お互いの顔が見えないこともあって、この時だけは私も淫らな自分を晒すことが出来ます。
 旦那様からの返事は返ってきません。ですがちゃんと想いは伝わっているようで、旦那様は腰の動きを大きく激しいものにすることで応えてくれました。

「だんな、さまぁっ、だいすき、ですっ、だいすき、ですぅっ、ずっと、ずっとこうしていたい、ですっ、ずっと、だんなさまと、えっちなこと、してたいですっ!」
「くっ……俺も、だっ……いやらしいところ、全部、見せてくれ……!」

 ぱんぱんと腰を打ち付ける音や、周囲に飛び散った汗や愛液の雫、膣内でさらに硬度を増す肉棒、全てが重なり合って淫蕩な空間を作り出しています。私はその空気に酔いしれて、とても素面では言えないようなことを口走ってしまうのでした。

「そろそろ、出るっ……中に、全部、出すよっ……!」
「だしてっ、だんなさまぁっ、あんっ、ぜんぶっ、だんなさまの、ぜんぶ、わたしにぃ、だしてっ、だしてぇっ!」

 激しくなった旦那様の腰の動きに合わせて、私も腰を勢いよく振ります。ぐちゃぐちゃと肉同士が絡み合う音はさらに激しさを増し、私の性器からは白く泡立った蜜が糸を引いて垂れています。
 ともすればそのまま飛んでしまいそうな意識を保ち、私はその時を待ち続けました。
 そして――

「く、ああっ、出る、でるっ!」
「――きます、いっちゃいますっ、やぁ、あっ、あぁーーっ!!」

 止めとばかりに子宮にまで突き抜けてしまいそうな抽挿を受けて、私は嬌声を上げて絶頂に至りました。同時に膣内に熱い液体が流れこんできます。粘性のあるどろどろした精液はたちまち私の子宮を埋め尽くすのでした。

「はーっ、はーっ、っく、まだ、出るっ……!」
「あぁ……あつい……おなか、あついので、いっぱい、ですぅ……」

 睾丸の中身を全て注ぎ込む勢いの射精を受けながら、私は体も心も満たされていくのを感じていました。収まりきらない精液が溢れ出して床を汚していることも、今の私にとっては些細なことでした。

「ぁ、く、やばっ、そんなに、締め付け、たらっ――」
「ぁ――」

 私の締め付けに耐えきれなくなったのか、旦那様は私の膣内から陰茎を抜き出そうとします。ずるりと抜け出された陰茎は反動で大きく跳ね上がり、残っている精液をまき散らします。

「ぁは、いっぱい……、だんなさまぁ……きもち、よかった、ですかぁ……?」
「あ、ああ……よかったよ……」
「えへへ……だんなさまに、ほめられちゃいましたぁ……」

 どこか夢心地気分の私は、降り注ぐ精液を浴びながら頬にかかったそれを妖艶に舐めとって微笑むのでした。
§

「もー、あちこちべたべたじゃないですか」
「う……ごめん、わざとじゃなくて、つい……」

 あれから人心地ついて、私たちは飛沫の掃除をしていました。床に飛び散った愛液だけならそう大変な仕事ではないのですが、今回ばかりは話が違います。

「着物の染みって落ちるんでしょうか……?」
「うわ、結構飛んだな……」

 私は裸になって精液が付いた着物を眺めて嘆息し、旦那様は戸棚に降りかかった精液を擦って落としています。自分たちでは気づかないうちにあちこちを汚していたようで、一段落ついたころにはすっかり夕日が沈み始めていました。

「それもこれも旦那様のせいですよ! ……まぁ、釣られてしまった私も悪いですけれど」
「いや、まさかあんなになるなんて……段々量が増えてる気がするなあ」
「もう、あんなことはこれっきりに、して……だ、だんな、さま?」

 どこか他人事のような旦那様を注意しようと、旦那様の方を向いた時でした。

「あんなに出したのに治まってないし」

 旦那様のだんなさまが元気に復活されていました。だんなさまは私の視線を受けてみるみる膨張し、むくむくと元の硬さを取り戻そうとしています。
 
 あの、といいますかどうして全裸になってるんですか。私としている間中、そんな隙はなかったはずですよ。
 ……見せつけないでください、困ります。

「あの、あの、ですよ? だめですからね? ちゃんとご飯を食べないと体によくないってこと、分かってますよね?」
「いやぁ、一食くらい抜いても大丈夫だしもう少し続けたいなーって……だめ?」
「だめですって! せっかくお掃除もしたんですから、また汚してしまうのは……あぁっ!?」

 私はどうにかして話を逸らそうとしますが、それは無駄な行為となりました。振り払おうとする腕を掴まれ、そのまま体を引っ張られます。

「今度はお風呂場でしよう。そこなら汚してもすぐ洗い流せるし」
「え、ちょ、ちょっと、汚す前提ですか? いや、それ以前にだめだって言ってるじゃないですか、そんな、無理矢理……」

 ずるずる脱衣所まで引きずられてしまい、どうすれば旦那様が分かってくれるのか分からずにあたふたしてしまいます。
 そんな私を見て旦那様は笑いました。
 ……とても意地悪な笑顔で笑いました。

「ねぇ、もっとしたくない?」
「……それ、ほんと、ずるい、です」

――したくない訳、ないじゃないですか

 心の内を口に隠して、私は旦那様の口づけを受け入れるのでした。
18/08/02 23:49更新 / ナナシ

■作者メッセージ
紆余曲折ありましたがようやくまともなエロを書くことができました。
至らないところもありますが、これからもよろしくお願いします。

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