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エロス神の法廷
まずは色々と紹介しておこう。
私はこの裁判で原告を勤めさせてもらうキューピットのピエリだ。
裁判長はもちろんエロス神様。
そして、証言台に立っているのが今回の被告人だ。

おっと、親切心から言っておくけど他の次元に移動しようとしても無駄だよ。
魔王城のバフォメット達が総出で転移阻害の結界を張っている。
ルル・ハリルとその子供達によって君が"灯"を持っていることは確認済みだからね。
当然それくらいの対策はしてあるさ。

前置きはこれくらいにして早速被告人の罪状を読み上げよう。
被告人の罪は『人間・魔物を問わず数多くの女性から求婚されたにも関わらず、その全てを無視であったこと』だ。
君がこの次元にやって来たのは魔法の研究をするためであり、それ以外には全く興味がなかった。そうだろう?
元被告人のペットである猫のグリマルキンがケット・シーとなった時、結婚を迫った彼女を無視し、最終的に魔法で脅して自宅から追い出したことからもこれは明らかだね。

そのあとも人間・魔物を問わず多くの人物が君に求婚したけど、君は他の次元に逃げたり、酷いときは求婚した魔物を殺害したりしている。全く許しがたい大罪だ。

...おや、何か反論したいことがあるようだね。
私たちの個人的な心境としては発言の機会を与える事さえ不愉快だけど、一応自分で自分の弁護をすることを許そう。
...「自分は一部の反魔物勢力と違って魔物を殺害することは殆どないし、殺害する場合も事前に警告してある。」
...だって?君は何か勘違いしているようだね。
私達が君を裁くのは『知らなかった』からじゃなくて『知っていた』からだ。

大分誤解は解けてきたとはいえ、魔物は敵だと思い込んでいる人間はまだまだ多い。
だから夫を手に入れるようとする多くの魔物にとって、誤解を解けずに殺されるのは覚悟の上なんだ。
だからエロス神様と私達は魔物を応援してる。

けど君は明らかに『知っていた』。
魔物は人間を害する存在で無いと知っていながらその求婚を無視していた。
『知らないでやった』より『知っていながらやった』方が罪が重いのは当然だろう?

警告についても、君が誰かと結婚していたなら裁かれるのは求婚した魔物の方だけどそんなことも無いしね。


さて、もういいだろう。エロス神様。判決を。
『被告を歪ませる原因となった"灯"と知識をレベルドレインにより剥奪』
『これまで無視してきた全ての人間・魔物と結婚すること。』

うん、妥当な判決だね。
君はこれから一生をかけて今まで無視してきた全ての存在に愛を注ぎ、愛を注がれるんだ。
忙しなく次元を飛び回るよりずっと充実した人生を送れるだろうさ。

それでは閉廷。
19/05/03 20:40更新 / 未確認歩行物体

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