読切小説
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隔世の約束
「ん……あっ、あんっ! クリネス、クリネス……!」
「ランタナ様……あ、あ……!」
とある小さな遺跡の奥、主の間にて。一対の牝と牡が寝台の上で絡みあい、乱れていた。女の肌は褐色。男の肌はそれよりは幾分か白に近い。この遺跡の主である亡国の女王、ファラオのネフェルランタナと、その夫のクリネス。歳は女が漸く17,8を行ったかと思われる程度、男は20を過ぎたくらいか。その二人が寝台の上で愛を交わしていた。
ネフェルランタナがクリネスの上にまたがり、手を頭の後ろで組んで淫らに腰をくねらせるようにして動かしている。下になっているクリネスも彼女にされるがままというわけではなく、腕を上に伸ばして彼女の動きにあわせて揺れている豊満な胸を愛撫したり、下に伸ばしてクリトリスを愛撫したりしていた。
乾いた砂漠らしからぬ、ぐちゃぐちゃとした水音が部屋に響き、砂漠の風より熱い吐息が二人の口から吐き出されている。
「あっ……あっ! クリネス……もう……!」
限界が近づいてきたのか、ネフェルランタナの上半身が重力に従って前傾する。頭の後ろで組まれていた手もクリネスの胸の上に置かれた。そのネフェルランタナの手をクリネスは取り、そして指を絡ませるようにして繋いだ。
「僕もです、ランタナ様……ッ!」
「はぁ、はぁ……いいわよ。女王たる私の中に……んぅう! たっぷり中出しなさい……!」
女王の腰がますます激しく、ねちっこく、男と自身を絶頂に追いやるべくうねる。目と目を合わせ、呼吸と鼓動を合わせ、二人はともにその最高の時を待つ。
先に我慢できなくなったのは男の方だった。
「うあ、あ……ランタナ、様ぁ……!」
一声、切なそうに啼いてクリネスは腰を突き上げる。小さな遺跡の主と言えどもその遺跡の中で一番上に立つ者、元は国の主だった者。その高貴な女性の中に男の白濁液が吐き出されていく。
「ふあああっ! クリネスぅう!」
愛しい者の精液を膣に受け止め、ネフェルランタナも澄ました女王ではいられなかった。その様子は完全に、牝へと堕ちている。
絶頂に達した女王の膣がもっと精液を捧げよと収縮して要求する。男はその要求にあっさりと屈し、さらに尿道内に残っている精液も差し出した。
「ああ、クリネスのが、いっぱい……」
「ランタナ様……」
狂おしい絶頂が過ぎ去り、うっとりとした余韻に二人は身を漂わせる。その中で二人は互いの名を呼び合い、そしてくちづけをするのであった。


「うーん……」
つい先ほどまで熱く甘い声が響いていた主の間。そこに悩んでいるような唸り声が響く。ネフェルランタナの者だ。寝台の上で裸身を起こし、頭を抱えている。
「どうなさいました、ランタナ様?」
クリネスが上体を起こし、首を曲げて下からのぞき見るようにしてネフェルランタナの様子を伺う。ネフェルランタナを愛称であるランタナと呼ぶのは彼だけだ。
彼の問いかけに対してネフェルランタナは曖昧な答えを返す。しかし、クリネスは彼女の悩みは分かっていた。
「まだ、記憶が戻られないのを気に病んでおられますか?」
「うーん……」
ネフェルランタナがまた唸る。今度は肯定的な唸り方だった。

大昔。それこそ旧世代の魔王の時代。砂漠の国では"ファラオ"とは王の意味であった。だが魔王が今のサキュバスとなったこの時代、"ファラオ"とは今、クリネスの前にいるような魔物を指す。
彼女らは元は魔物ではなく、とある神より加護を受けた、砂漠の国の民を導く王である。それが今の魔王の時代になり、何らかの形で蘇ったのが魔物のファラオだ。ネフェルランタナもそのうちの一人だ。
しかし旧世代の魔王の時より永き眠りについていたファラオである。その記憶は曖昧であることが多い。ネフェルランタナもそうであった。

「ごめんなさい……」
「お気になさらず……ランタナ様が記憶や……私との状況を気になさる気持ちも私には分かります」
ネフェルランタナのぽつりとしたつぶやきに、クリネスは手を握って答えた。

普通、ファラオは曖昧な記憶などうっちゃり、王国の復活と世継ぎの誕生のため、愛を交わすことだけに専念する。だがネフェルランタナはそうではなかった。クリネスの言葉の通り、自分の記憶と、そしてクリネスとなぜ結ばれたか、疑問に思っていた。
クリネスのことは愛している。そのことは自信を持って言える。それゆえになぜ彼と迷いもなく結ばれたかが疑問であった。
なぜなら、クリネスは元は主神教団の国の人間なのだから。
二人が出会ったのは5年前である。クリネスはとある主神教団の国、コロタゴークスの奴隷であった。砂漠で何人もの人間が失踪する事件があったため、魔物の仕業と判断したコロタゴークスの幹部は討伐部隊を派遣した。結果は、討伐部隊は惨敗。慣れない砂漠の戦いで次々と戦士たちは捉えられ、その遺跡に住むマミーやスフィンクスに捉えられ、勇者もアヌビスに捉えられて婿となった。クリネスもその中の一人になるはずだった。だが彼はなぜか魔物に襲われず、むしろ奥へと導かれるように歩いて行った。そして主の間に入ったその時、ネフェルランタナは目覚めたのであった。
魔物となった者の本能なのか、それともまだ人間だった時代から何か因縁があったのか、ファラオは概して主神教団の人間には友好的ではない。クリネスを初めて見たネフェルランタナも少し眉をひそめた。だがそれでもどこか彼に懐かしさのような物や親しみを感じ、彼を手元に置き、そして結ばれた。なぜかは分からない。
そして分からないと言えばもう一つ謎がある。ネフェルランタナが目覚めたタイミングだ。ファラオが目覚める条件は二つ。遺跡が魔物の魔力で十分に満ちた時、遺跡にある魔物の魔力がある程度ありかつ男がファラオの前に現れたときだ。しかし、ネフェルランタナはどちらも満たしていなかった。この遺跡に住むアヌビスがそう言っている。ネフェルランタナが目覚めるにはこの遺跡にある魔力は不十分なはずだと。

主神教団の国の人間であるはずのクリネスと結ばれたこと、早すぎる自分の目覚め。この二つがネフェルランタナの記憶への執着心を駆り立てていた。
「ごめんなさい、クリネス。私は……」
「ああ、ランタナ様……さぞお悩みでしょう。その苦しみを少しでも取り除けるのであれば私は命をも差し出しますのに……」
「な、何を言っているのです!?」
クリネスの言葉にびくんと身体を跳ねさせ、ネフェルランタナは声を上げた。そして彼を叱責する。
「あなたがいなくなることなど、記憶が永遠に手に入らないことより恐ろしいこと……そのようなこと、二度と言ってはいけません」
「……はい、失礼しました」
「ただ……」
それ以上はネフェルランタナは言わなかった。いや、言えなかった。魔物と言えども元は人間で、そして女王。相応の羞恥心は持っており、ゆえに自分が言おうとしていることがはしたなく思えて黙ってしまう。それを察してクリネスは微笑んだ。
「はい、ランタナ様。この身も心も全てランタナ様のものです。いかようにもしてください」
「ありがとう、クリネス……」
そう言ってネフェルランタナはクリネスのくちびるを奪いながら彼に覆い被さった。記憶がないことの不安を情事で押し流す。かりそめの解決法ではあるが……だが、彼と一心不乱に愛し合い、彼の愛に包まれているときは安心できた。



「いやあああああっ!!」
ある日の事だった。図書の間から尋常ではないネフェルランタナの悲鳴が響いた。あわててクリネスとアヌビスが駆けつける。そこにいたのは座り込んで頭を抱えているネフェルランタナがいた。そして目の前にはぐしゃぐしゃになった古そうな紙の束が置かれている。
「な!? 私が取り寄せた歴史書が……!?」
私物をダメにされたのが堪えたのだろう。アヌビスがパニックに陥った声を上げる。一方、クリネスも慌てていた。こんなに取り乱したネフェルランタナなど見たことがない。何が彼女をこんなにまでしたのか。
『まさか……』
ぐしゃぐしゃになった紙の一部を見てみる。そこには自分が元いた国、コロタゴークスの名があった。さらに年代が書かれているところを見ると、どうやら歴史の書らしい。そしてその歴史にはネフェルランタナの名もあった。すぐにクリネスは状況を理解する。だがそこから先は頭が回っていなかった。
「ランタナ様、まさか記憶が……」
「いやああっ! 黙って! 二人共ここから出て行って!!」
ヒステリックな声をネフェルランタナは上げる。アヌビスとクリネスの動きがぴたりと止まった。強力な「王の力」を持つファラオの口から発せられる言葉は絶対に近い力を持っている。その言葉に逆らえる者などごく一部だ。だが、そうでなくても今の状況はネフェルランタナの言葉に従ったほうがいい。顔を見合わせたアヌビスとクリネスは目で互いにそう言っていた。二人は黙って一礼し、図書の間から出て行く。それでも気になって扉に耳を押し当ててみると、ネフェルランタナの言葉が聞こえてきた。
「私は……私は……」「とするとクリネスは……!」
かすかに聞こえる声にアヌビスが顔をしかめた。
「ネフェルランタナ様、大丈夫であろうか……」
「……信じましょう。今、ランタナ様は自分の記憶と対面し、そしてそれを受け入れるのに格闘されていると思います。それに助太刀はできません。僕たちができるのは静かに見守り、祈ることだけだと思います」
「夫であるクリネス様がそう言われるならそうだろうが……」
二人の声は不安が色濃かった。



「クリネス、話があります」
ネフェルランタナが取り乱し、クリネスやアヌビスらと顔を合わせるのを拒絶してから3日間が過ぎた日。ネフェルランタナはクリネスを主の間に呼び、静かに話しかけた。
頑強な魔物娘、その中でも特にレベルの高いファラオであるのに、ネフェルランタナはやつれていた。自分の記憶を受け入れるのに相当苦労したのだろう。そしてその記憶は相当凄惨だったのかもしれない。何もできなかった自分が悔しくてクリネスはくちびるを噛む。だが、ネフェルランタナは受け入れる以上に辛いことを今から自分に言う。それを感じてクリネスは心を引き締め、ネフェルランタナに向かいあった。
「私はついに記憶を取り戻しました。しかし……こんなもの、あなたの存在と比べればやはり紙くず以下……いえ、害でしかないのであればもう口にもしたくない代物でした」
しかし、それを今からクリネスに語らなければならない。ネフェルランタナの端整な顔は酢でも飲んだかのように苦痛で歪んでいた。
息を一つつき、ネフェルランタナは語り始める。
「魔物のファラオとして蘇る前……人間だったころの私はこのあたりの国、ジェサカッサルの最後の王でした……」
古の女王は語り続ける。

父が何者かに暗殺され、ネフェルランタナが18と言う若さで王の座に就いた。しかし父の暗殺からネフェルランタナが王座に就くまで、全ては海を隔てたところにある国、コロタゴークスの謀略だった。ネフェルランタナが王に就いたところを狙ってコロタゴークスはジェサカッサルに宣戦布告。王になったばかりで何も分からなかったネフェルランタナが頭のジェサカッサルは一気に窮地に陥れられる。さらに前々からコロタゴークスに内通していた神官たちも寝返り、ネフェルランタナは絶望的な状況に陥っていた。
降伏しても状況は変わらない。敵の手にかかったり奴隷にされたりするくらいなら、自ら"王=ファラオ"として死のうとネフェルランタナは決意した。
大昔、王は死んだら冥界の神になると考えられていた。そしてその魂はやがて元の身体へと戻ってくる。そのために身体はミイラとして残しておかなければならない。そう信じられていた。
かくしてネフェルランタナと残る部下たちは急ごしらえで小さなピラミッドを造った。それが今のこの遺跡だ。ネフェルランタナはその中で自害し、身体はミイラにされ、主の間に安置された。
それまでの時間を稼いでいたのがクリネスの先祖、ハサンであった。彼はネフェルランタナの幼馴染であり、そして黙っていたが互いを思い合っていたようだ。ハサンが時間稼ぎをすると言うことは一緒にピラミッドの中で死ねないと言うこと。ネフェルランタナは彼の作戦に反対したが、彼はそれを断り、約束した。

「『私はどのような形になってでも必ず、ランタナ様を迎えに行きます。ですから、ランタナ様はそのお体と魂を大事に』と……」
幼馴染の言葉を、遠い目をしながらネフェルランタナは呟く。その目がクリネスに見据えられた。
「そしてクリネス。あなたはおそらくハサンの血と魂を引き継いだ者なのでしょう」
「僕が……」
無意識のうちにクリネスは自分の胸に手を押し当てる。頷いたネフェルランタナは寂しそうに笑って頷いた。また、クリネスがネフェルランタナの元に来るまでにここの魔物に襲われなかったのは、おそらくその魂を無意識のうちに魔物が理解し、遠慮したからであろうとネフェルランタナは推測していた。
「これが事の全てです。私達の出会いは運命、魂の引かれ合いのような物……しかし、今としては古い考えかもしれませんね。魂より心を大事にするべきではないでしょうか」
そう言ってネフェルランタナは王座から立ち上がり、続けた。
「クリネス。あなたの人生はあなたのものです。運命や魂のような物で縛られるべきではありません。そして、私はおそらくあなたにハサンを重ねることでしょう。それはあなたにとってあまりにも失礼です。クリネス」
ネフェルランタナの、ファラオの目が光る。
「ファラオとして命じます。私のことは忘れなさい。このピラミッドから財宝を持って出て行くか、あるいはこのピラミッドに住む魔物とつがいになり、自由に暮らしなさい」
そう命じてネフェルランタナは背を向けた。部屋から出て行くクリネスを見なくて済むように。
しばらくクリネスは黙っていたが、やがて立ち上がった。
「分かりました。失礼します」
これで終わりだ。ネフェルランタナは目を閉じた。だがその目が驚きに見開かれる。
クリネスの腕がネフェルランタナの身体に回され、抱きしめられていた。
「では、僕はあなたと……ネフェルランタナ様とつがいになりたいです」
「な……!? 私はそう言う意味で言ったのでは……!」
「ないのですか? ならばその命令は聞き入れられません。私はネフェルランタナ様のことは忘れませんし、ピラミッドから出ていきませんし、ほかの魔物と結婚するつもりもありません」
「……!?」
ネフェルランタナは二つのことに驚く。クリネスの言葉と、そして王の力が効いていないことに。ファラオの言葉に逆らえるのは神やそれに類似する力を持つ者か、命令の内容を心の底から拒否する気持ちを持っている者だけだ。
クリネスが前者のはずがない。とすると後者だ。
「それに……」
抱きしめていたクリネスの手がスッとネフェルランタナの頬を撫でる。それで初めて、彼女は自分が泣いていたことに気づいた。
「泣いているランタナ様を一人になんてできるはずがありません」
「でも私は……あなたを……」
「では、なぜ泣いているのですか? 自惚れかもしれませんが……僕のことを思っていてくれているからではありませんか?」
その言葉にネフェルランタナは心を揺さぶられる。そうだ。私は今では魂など関係なく、クリネスの事が好きだと。魔物の思考がさらにその考えを後押しする。
「いいのですか? こんな私で……」
「ランタナ様じゃなければ……ネフェルランタナ様でなければダメなのです」
クリネスの腕に力がこもる。その状態では身動きが取りにくかったが、なんとかネフェルランタナは身体をひねってクリネスと向かいあった。自分の腕も彼の身体に回し、抱きしめる。
そしてクリネスの目を見つめながら言う。
「ありがとう、クリネス……ならば……私の命令に逆らうだけの心と覚悟、私に見せてくれますね?」
「はい、ランタナ様……前にも言いました。この身も心も全てランタナ様のものです。いかようにもしてください」
クリネスも目を見つめ返しながら応える。その見つめ合っていた二人の目が閉じられ、くちびるがつながった。



遺跡の主の寝台にネフェルランタナは身を横たえられる。その女王にクリネスは覆いかぶさり、そしてくちびるを奪った。手は彼女の頭を包み込むようにして抱きしめられている。
「ん、あむ、んちゅう……」
「ん、んん……」
二人のくちびると舌と唾液がにちゃにちゃと卑猥な音を立て、くぐもった声が互いの口から漏れた。くちびるを離すと、銀の糸が二人の間を繋いだ。
クリネスの顔がネフェルランタナの顔に再び近づく。しかし今度はくちびるは彼女のそれには向かわなかった。向かったのは頬。涙の跡に彼はくちづけを落としていき、舌でその涙の跡を拭う。
「あ、クリネス……ん……」
「ランタナ様に涙の跡は残せません。僕が消します。んちゅ……」
丁寧に両の頬にくちづけをしたクリネスは、もう一度ネフェルランタナにキスをした。ネフェルランタナもそれを受け止め、くちびるを軽く開いて舌を突き出し、クリネスのそれと絡ませ合う。
その間にクリネスの動きが大胆になる。頭に回されていた手が下に降りていき、胸に添えられる。豊穣の象徴を示すかのようにたわわに実った果実。それを優しく揉みしだく。
「ん、んんん……!」
くちびるの端から、先ほどよりさらに甘くなったネフェルランタナの吐息が漏れる。彼女も手を下に持っていった。クリネスの牡の象徴に触れる。麻服の上からでも分かるくらい彼のソレは激しく自己主張をしていた。それをゆっくりと撫でさする。今度はクリネスが快感の呻き声を口から漏らした。
彼の反応に気を良くしたネフェルランタナがさらに動く。砂漠の国の簡素な男性服を脱がせ、肉棒を露出させる。現れたそれを握り込み、ゆっくりと上下運動をさせた。クリネスも対抗するように乳房を露出させ、触って欲しいとばかりに尖って震えている頂きを指先で転がす。男の下で女王の身体がぴくんと跳ねた。
くちづけをしながらの愛撫もいいが、それだけでは物足りなくなってきた。身体はもっと相手の身体を欲しがる。
「ねぇ……クリネス」
口を離したネフェルランタナが、ゆっくりとペニスを手でしごきながら話しかける。名前を呼んで、これから自分がする相手がクリネスであることを実感するためにも名前を呼ぶ。
「口で……させて……」
「僕は……」
「今は私にさせてください。あなたを……クリネスを感じさせて……」
自分からも愛撫したい口ぶりであったが、彼はネフェルランタナの気持ちを優先した。彼女から降り、今度は自分が仰向けになる。
その彼の足元で彼女は身体をうずくまらせる。しなやかな肢体が山猫を思わせた。胸元や腕、足を飾る金の装飾が彼女の褐色の肌と体つきの妖艶さを引き立てている。
しかし、その見た目を堪能している暇はなかった。クリネスの逸物が、女王の口に迎え入れられる。
ネフェルランタナの口内は暖かかったが、渇いてしまったか少しざらついた。渇いた口が潤いを、クリネスの精を求めて貪欲に動き始める。ネフェルランタナの頭がゆっくりと動いた。くちびるが、舌が肉棒に這っており、その状態で動かれる。
「あああ……」
少し動いただけでクリネスは声をあげた。クリネスの反応にネフェルランタナは満足そうに笑う。その口唇愛撫が一段と熱を帯びた。頭の動きを保ったまま舌が亀頭や裏筋を這い回る。この5年の間、何度も身体を重ねたため、彼の弱点は分かっていた。
「ん、じゅるり……どうですか、クリネス。気持ちいいですか?」
「は、はいぃ……ランタナ様のお口、気持ちいいです……」
「ん……クリネスが喜んでくれると、嬉しい……はむ、んちゅう」
直接クリネスから快感の言葉を聞き、女王のフェラチオはいよいよ激しくなった。そして自分も平然としてはいられない。片手はクリネスのペニスに添えられていたが、もう一方の手は腹の下を通って股間に伸びており、秘裂をいじっていた。3日間精を摂取せず渇いていても、そこは男を受け入れる欲望に溢れており、その準備のための蜜をたっぷりと垂らしている。
自分のモノをくわえ込みながら自慰をしている……フェラチオの快感に加えて女王のそんな痴態を目にしたクリネスに限界があっという間に近づいてきた。
「ら、ランタナ様ぁ……出て、出てしまいます……!」
「ん……いいですよ。そのまま出しなさい。3日ぶりの精液……私にください……」
そう言ってネフェルランタナはちゅうっとペニスを吸い立てた。まるでストローで直接精液を吸い取ろうとするかのように。その刺激でクリネスの快感は閾値を振り切った。
女王の口の中でペニスが脈打つ。溜め込まれた白濁液がネフェルランタナの口内に注がれた。3日分の渇きを潤そうと女王は貪欲にその精液を受け止め、飲み下してく。嚥下にあわせて動く小さな喉がそれをあらわしていた。
「んちゅ……はふ……久しぶりのクリネスでした。溜め込んでいましたね」
「ランタナ様のためです」
「ふふ、ありがとう。では……」
妖しげに笑ったネフェルランタナはクリネスから降り、寝台に尻をつく。腰布の留め金を外して取り去った。女王の秘密の場所が顕になる。キスの時点で興奮し、そして口唇愛撫をしていたときには自ら手を加えていたそこはすでに交わりの準備を整えていた。
「今度はこちらにクリネスを……クリネスを下さい」
ネフェルランタナが秘裂を自らくつろげ、自分を誘っている。魔性のファラオにクリネスはフラフラと近寄り、覆い被さった。先ほどフェラチオで出したばかりなのに萎えていないペニスを、ネフェルランタナのヴァギナにあてがう。そのまま腰が押し進められた。ネフェルランタナも脚を彼の腰に回し、自分から彼を受け止めに行く。
「あ、あああ……! クリネス……!」
「うああ……ランタナ、さ、ま……!」
挿入の快感に意識を弾き飛ばされないように、互いの身体にすがりつき合う。二人が身体を密着させることで、ネフェルランタナの中でも、奥の方で二人は限りなく密着することができた。目を見つめ合い、繋がっている幸福感を二人で共有する。
それを味わってから、クリネスは腰を動かし始めた。ゆったりと、しかし一突き一突き、思いを込めて。ぬぷぬぷとクリネスの肉棒が出入りする。
「ひあっ! あ、んああっ! いいっ!」
男の下で身を蛇のようによじりながら、ネフェルランタナは声を上げる。自分の胎内をかき回すペニスの感触が、尻に当たる彼の陰嚢の感触が、太腿同士がぶつかる感触が、クリネスの存在を知覚させ、幸せな気分になる。
一方、クリネスは歯を食いしばっている。ただでさえ、ネフェルランタナの性器は極上だ。一度死んだ、アンデッド種とは思えないくらいの熱さ、ぬくもり、締め付け……暴発してしまったこともなんどもあった。それに加え、今の彼女の膣は3日ぶりゆえ貪欲で、刺激が強かった。少しでも気を抜くと精を放ってしまいそうだ。しかし、それに耐える。ネフェルランタナと一緒に絶頂を見たいから。一体感を味わいたいから。
ぐにゅ……
ひときわ奥に突き刺さったクリネスの分身が、子宮口を圧迫する。抉られる快感にネフェルランタナが声を上げる。
「ああっ! そこ……赤ちゃんの部屋の入口……もっと……!」
赤ちゃん……その言葉が二人の心に響く。そう。交わり続けていればやがて子どもが生まれるはずだ。ネフェルランタナで途切れてしまった血筋が、今はもうないジェサカッサルの王国が復活する。そして何より、二人が愛を結ぶことができた証明が生まれる。
そのことにネフェルランタナの膣はぎゅっと陰茎を締め付け、クリネスのペニスもぐぐぐっと力を増した。二人の交わりもさらに激しいものになる。汗を撒き散らしながら二人は絡み合って動きあう。相手を求めて、その先を求めてすがりつく。
「イク、イクっ……! クリネスも……!」
「ええ、一緒に……!」
二人がきつく抱き合ったその瞬間に、最高潮のときが来た。クリネスの男性器から精液が女王の膣内へと溢れ出る。渇いた大地に水が染み込むように、渇いたネフェルランタナの身体にクリネスが染み込んでいく。クリネスの白濁液によって身も心も、身体の中から染められていくかのようにネフェルランタナは感じた。
遠い過去や魂などもうどうでもいい。今、快感を共有しあい、抱き合っている愛する者が全てだった。思いの丈を吐き出し、それを受け止める二人は絶頂の快感の中、身も心も一つになっていた。



「紙くず以下と言いましたが、結局、記憶を取り戻せて私は良かったのかもしれませんね」
事が終わったあと、寝台の中で。ぽつんとネフェルランタナが呟いた。しかしその呟きにはゆるぎがない。
過去を受け止めて彼女は身も心も、そして魔力も強くなったのだろう。部屋にはいくつか小さな植物が咲き始めていた。
「僕も、知ることができて良かった気がします。今ではランタナ様が丸ごと大好きです。愛しています」
「もう……!」
クリネスのまっすぐな言葉にネフェルランタナは恥ずかしがってそっぽを向いた。が、それも一瞬のことですぐにクリネスの方に向き直る。
「でも言いましたね? 私のことを愛していると。ならばファラオとして、ネフェルランタナの名において命令します。クリネス」
「はい」
生まれたままの姿で女王は命じ、男はそれを受ける。
「ずっと私のそばにいなさい。王国が復活し、この遺跡と周辺が緑に包まれるまで……そしてそれ以降も。ずっと、私とともにいなさい」
「かしこまりました。この身も心も全てネフェルランタナ様のものです。いかようにもしてください」
「ありがとう、クリネス」
命令をし、それを受けた印に二人は抱きしめ合い、そしてくちづけを交わした。



国のことにもあまり携われないまま18と言う短い生涯を終えた女王。
しかし彼女は復活し、そして生前の約束も果たされた。
彼女の国の復活と繁栄も、そう遠くないことであろう。
13/03/09 15:44更新 / 沈黙の天使

■作者メッセージ
ということで更新されましたね、ファラオさん!

ちょっととある事で古代エジプトに中学のころから興味がありまして、その死生観は興味がありました。
SS中では簡潔に示しましたが……人間は死ぬとバー(魂・生命のエネルギーのようなもの)とカー(魂・人格のようなもの)が身体から離れ、やがて戻ってきて復活する。そのために身体は残しておかなければならないのでミイラにする……という文化でした。
それを考えるとどうしても魂とか隔世の恋とかやってみたくなって……いやぁ、プロットを考える時点でかなり苦戦しました。
昨日の夜のうちに考えたのですが、朝目が覚めると「やっぱりちょっと変だな」と判断し、こねくり回してできたのがこのSSです。
いかがだったでしょうか?
もっと長いドラマ仕立てにすればよかったのかもしれませんが、それは沈黙の天使の目が短すぎるのでできませんでしたorz

ではでは、また別のSSでお会いしましょう。

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