連載小説
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第十一章 折れた心、折れた誇り 前編
 *諸注意*
 
 *第十一章には暴力、強姦、
  貴方様の嫁かもしれない魔物娘が酷い事になる表現が含まれております。
  御読みになる際はその事を重々承知のうえ、先の文へと御進みください  *
 

 *作者、朱色の羽からの注意事項でした。*




 「熱い・・・。ワタクシを追い詰める手段にしても酷い事を平気でしますわね。」

 紅蓮の明かりが肌を照らし、熱風を常時浴びているために汗が滝の様に流れていく。
 次々と紅く染まる木々、燃え移っていく炎から逃げるべく森林の奥へ奥へと走って行った。
 なんでワタクシがこんな目に合わなければならないの。
 ことの発端は、アグノスの大森林に薬草を採りに来たこと?
 いえ、違うわ。
 必要数見つけられずに陽が落ちる頃まで長居したこと?
 これも違う。
 大森林から出た直後に運悪く盗賊に出会ってしまったこと・・・。
 これが一番の理由になるわね。
 しかも彼等はこの辺りで名を轟かせている¨消えない炎¨と呼ばれる集団と構成や特徴が似ていた。
 ワタクシは盗賊が行動を起こす前に踵を返して今まで居た森の中へと逃げて行きましたわ。
 街で見た注意書きが確かならば彼等は全員淫魔化はした人間のはず。
 捕まれば待っているのは絶望しかない。
 足には自信がある。
 いくら淫魔化していても追いつけないだろうと思っていると、赤い塊が側を駆け抜け近くの木に当たり。
 そこから紅蓮へと枝や葉、地面の草を染めていきワタクシの逃亡も始まった。

 炎に身を焦がしたくなく盗賊達の手に落ちるわけにもいかない。
 必死になって逃げていると願っても見ない事が起こる。

 「水滴?これは雨なのかしら・・・。」

 一つもそんな素振りを見せなかった空から落ちてきた大量の水。
 それはワタクシにとって好機を作ってくれる以外の何者でもなかったから。

 「助かりましたわ。これで火は消えて、熱で火照った身体も冷めますわね。」

 さらに雨は地面を濡らし走った軌跡も消して、臭いや音による追跡も不可能としてくれる。
 視界も悪くなるので彼等も追跡を諦めてくれるだろう。
 木蔭へと入り、この雨をやり過ごした後。
 家に帰ろうとするが問題が出てきた。

 「これは・・・。まずいですわね。」

 やみくもに走った事と炎の明かりがない事、そして大量に降った雨のせいで方向感覚が狂ってしまっていたのだ。
 広大なアグノスの中で食糧もなく方角も分からないのでは帰るどころか遭難する可能性も出てくる。
 無暗に動くのは得策ではないと思い、その場にとどまり夜を明かすことにした。
 陽が昇り始めても寝ることができず、不安と濡れた身体を震わせながらその場を後にし、大森林を出るために歩きだす。
 入ってきた方角を陽を見ながら確認をして、東へと進んでいく。
 どれぐらい足を動かしただろうか。
 そんなに深くは入った訳ではないのに・・・。
 道は、方角は合っている。
 だが、大森林の外へと辿りつかない。
 日が沈み、方角を曇らせる夜がまたやってきた。
 段々と視界は霞み、頭の中はぼやけ、身体は重く力が入らなくなってくる。
 どうやら体力を消費したところに雨で身体を冷やしたため、体調を崩してしまったようだ。
 朝となり、また出口を目指して歩き始めていく。
 空腹、疲労、崩した体調、全てがのしかかりふらふらになりながらもようやく明るい開けた場所に出ると。
 そこには焼け焦げた木々と黒い大地が昨日の惨状を物語るかのように広がっていた。

 「こ、こんなにも広く焼かれていたんですの・・・。」

 自分が逃げなければ失われなかった命。
 でも、ワタクシ自身自分は可愛い・・・。
 心の中で葛藤しながらこの光景を見ているとある事に気が付く。

 「焼かれた木々を辿れば出口近くまでいけるんではないかしら?」

 見捨ててまで拾った命。
 まずは無事に帰ることを、と思い黒い道しるべに従って歩いていき出口を目指す。
 重い身体を動かし、なんとか出口付近へとたどり着いたのだが。

 「ここで焼け跡は終わり・・・、出口は・・・。ああっ・・・。」

 「ねぇちゃん探したぜぇ?」

 そこには絶望が待っていた。

 「俺達から逃げれると思っていたのかぁ?」

 勝手に追うのを諦めていたと思っていた彼等が、¨消えない炎¨の男達がそこにはいたのだ。
 再び踵を返して逃げるが力が入らず思ったように速度が出ない。
 すぐ傍にある燃えていない生木が生い茂る中へと入り視界の悪さで速度を補っていこうとしたが。

 「おっと、こっちは行き止まりだぜ?」

 「どっちへ行く?逃げないと捕まえちまうぞ?」

 行く先々に彼等は待ち伏せしており、自分の考えが甘かったと思い知る。
 そして、逃げる事の出来る範囲を少しづつ少しづつ狭められていき。
 逃げ場をなくしたワタクシを男達が下衆な笑いを浮かべながら取り囲み、叫び声をあげる間もなく彼等の手に落ちてしまった。
 服を裂かれ、腰に巻いていた布も剥がされ。
 両手を拘束されて脚も押さえつけられる。

 「いい身体してるじゃねぇか・・・。」

 「逃げた礼はたっぷりしてやるからな。」

 導者格の男がワタクシの頬に舌を這わせながら胸を揉んできた。
 乱暴に手を動かされ、形を変えていく乳房。
 そこからくるのは嫌悪感と痛みだけ。

 「触らないでよ!汚らわしい!」

 精一杯の今できる抵抗で暴言を吐くが、男達は唯笑い声を上げるだけだ。

 「今の立場を分かってるのか?」

 「強気なのはかまわねぇがどこまで続くかな。」

 ワタクシの言葉が彼等の何かに触れたのか、男達全員の手がこちらへ伸びてきて身体を弄んでいく。
 あるものが乱暴に尻肉を掴んだかと思えば、あるものはじらすように腹部を撫でまわしてくる。
 大きく自慢出来るほどの乳房を捏ね回され、赤い生き物の様な舌に耳を舐められて、秘所を乱暴に上から擦られていき。
 恋人でも将来を誓い合った人でもない、こんな盗賊達にいいようにされている自分が情けなくなり涙が出てきた。

 「ねぇちゃんよう、嬉しくて涙でも出てきたか?」

 「違いますわ!貴方達みたいな下衆に弄ばれて情けなくて涙が出てきてるんですわ!」

 「情けないねぇ・・・。ならもっと情けなくしてやるよ!おい!」

 「ヘイ!」

 脚を崩され頭を鷲掴みにすると、導者格の男の下半身へ顔を近づけられていく。
 そこには赤黒く強い臭いを放つ男性器があり、口へあてがおうと押しつけてきた。

 「銜えてもらおうか?」

 顔をそむけ、拒否しようとすると首筋に冷たい光が当たり恐怖がワタクシを包み込む。

 「ひっ!?」

 「大人しく銜えてりゃ、命はとらねぇよ。どうする?」

 頬に擦りつけられる男性器、首元には刃が光、他の男達は身体を弄び続けている。
 恐怖と嫌悪で動かない状態にしびれを切らし、乳首を強く摘まれ痛みで口を大きく開けてしまった。
 そこを狙ったかのように男性器が押し込まれ喉の奥まで到達する。

 「歯を立てたら・・・。わかってるんだろうな?」

 軽く肌に沈む鋭い光、血は出ていないが痛みと恐怖だけはそこに存在し男の忠告に背いたらどうなるか充分に理解できた。
 涙を流しながら、刃が刺さらないように頷く。

 「んんぅ!ぐぶっ!んぅ!んんぉ!おぶっ!ぐえっ!」

 「舌を絡ませろ!吸いつけ!やらねぇと分かってるだろうな!」

 そこからは地獄の始まり。
 喉の奥を抉るように乱暴に性器が叩きつけられ嗚咽が続き。
 空の胃から液がこみ上げてくるが吐くこともできずにまた奥へと戻されて喉が痛む。
 そんな中で舌を絡ませろ、強く吸いつけと無茶を強いてくる。
 だが、やらないと命がない。

 「ズゾゾッ!グブッ!ズズッ!ジュルジュル!グェブッ!」

 乱暴にされ過ぎ、頭の中がぼやけるのが重なり自分がどうなっているのかすらわからなくなってくる。
 唯、この時が早く終わればと願うだけだった。
 無理じされた奉仕が続き、作業の様な時間が続いて。

 「そろそろ射精すぞ!」

 だす?何をだろうとかと思ったが男性器がここにあるのだから一つしかない。

 「ジュブ!ジュブ!ズゾゾッ!ズズッ!ジュルゾ!」

 「ぐっ!」

 男の声とともに口内へと強制的に流し込まれる精液。
 吐き出すことは性器によって阻まれ、喉の奥へと入っていく。

 「がぁ!ぐぶっ!げぇ!ごぼっ!」

 「残さず飲め!残った奴も吸い取るんだよ!」

 また奥へと押し込まれ、先ほど飲んだものが逆流しようとしてくるが蓋をされたように閉ざされて胃へと戻っていった。

 「ズッ・・・。ズズッ・・・。」

 「前戯としちゃこんなもんだろ。」

 ワタクシの口から抜かれた性器は、そのまま反り返っており威圧をし恐怖を与えてくる。

 「さて、ここからが本番だ。」

 本番?その言葉が耳に入り血の気が引いていく。
 軽く身体が浮かされて指が秘所付近を撫でてくる。

 「濡れてねぇなぁ?不感症か?」

 「痛いですわ・・・。やめて・・・、そこだけは・・・。お願い・・・。」

 奪われてはワタクシは生きていけない。
 精液を飲まされた時点で絶望的だが、最後の支えだけは・・・。
 そこだけは、そこだけはと懇願し許しを乞う。

 「ここは駄目なのか?」

 「口でなら、口でなら先ほどのようにしていいから・・・。処女だけは・・・。」

 「・・・。なんでお前が俺達に命令してるんだよ!」

 秘肉にあてがわれて、上下に擦られていき。
 笠の部分が入っては出てを繰り返している。
 彼等相手に無理とわかっていても、ワタクシにはそうつぶやき続けることしかできなかった。

 「後生ですわ・・・。入れないで・・・。お願いします・・・。」

 「うるせぇんだよ!お前はよ!」

 怒鳴り声が上がったかと思うと腹部に強い鈍痛が走っていく。
 一瞬何が起きたか分らなかったが穿たれたような感覚と込み上げてくる吐き気で自分の腹部に衝撃が入ったのだと理解できた。

 「ゴボッ!ゲェウ!ガボァ!しょ、処女・・・。だけ・・・。は。」

 胃に収められた精液を戻しながらも最後の一線だけは守ろうと訴える。

 「処女処女うっせぇんだよ!このアマ!」

 再び走る鈍痛。
 それでも呟くように、漏らすように、願いを、訴えをやめなかった。

 「ちっ!わかったよ!そこまで言うのならよ!おい!」

 願いが通じたのかと思い、かすかな希望がワタクシを包み込んでいく。
 だが、男の顔はその希望をあざ笑うかのような表情をしている。
 まさか・・・。

 「な、なんでまた。それが近づいてくるんですの・・・。」

 嫌な予感が頭を駆け巡っていき。
 そして・・・。

 「そんなに処女処女いうのなら無くなりゃ喚かなくなるだろうが!」

 いきなり近づけてきたかと思うと、男性器が何の前触れもなく肉を貫き膣内へと入ってきた。

 「いぎぃ!?あがぁ!!」

 渇いた膣を掻き分け、処女膜すらもいつ奪われたか分らないほどの痛み。

 「濡れてもいねぇのにキュンキュン締め付けてくるな!お前の膣肉はよ!」

 乱暴に、男が自身の高みへ昇る為にだけに。
 腰を打ちつけ、秘肉の中を駆けていく。
 身体に伝わるのは痛みのみ、それ以外は何も感じない。

 「いやぁ!いぎぃ!あがぁ!や、やめぇ!ぎぁ!」

 口から洩れる痛みの声も彼には届かずに血だけが。
 男が奪った処女膜から流れる血だけがワタクシを助けてくれた。

 「滑りはいいが締めは緩くなったな!誰か後ろを相手してやれ!」

 「アッシが!」

 痛みで更に思考が鈍くなっていく中で男が何かを言っている。
 後ろ・・・?
 何を言ってるのだろうか。
 そう思っていると、理解より先に痛みが来た。

 「あぐぅ!?」

 「後ろの処女いただき!」

 「はははは!獣姦してるみてぇじゃねぇか!」

 また処女が・・・。
 獣の部分の処女までも・・・。
 終わった。
 何もかも全て、もう残ったものはなにもない。
 今保っている意識すら必要なくなったのだ。
 手放して楽になりたかった。
 だが、二ヶ所からくる裂くような痛みがそれを許してくれず地獄は続いていく。

 「良い締め具合と滑りじゃねぇか!そろそろ二回目行くぞ!」

 「アッシももう限界!」

 膣の中で膨らむ性器。
 あぁ・・・、射精するのか・・・。
 壊れかけたワタクシは彼等の射精に、熱さに身を任せてしまっていた。

 「ふぅ。まだやり足りねぇが・・・。てめぇらで好きにしな!最後は折るからな!多少壊してもかまわねぇぞ!」

 「おおぉぉ!」

 折る?
 心ならとっくに折れている。
 他に何を折るというのだろうか。
 わずかに浮かんだ疑問も、残りの男達に犯されていく中で霞へと消えていく。

 何本の肉棒を何回口に含まされ、何度精を放たれたのかしら?

 何度秘肉を掻き分けられ、何本の肉棒を受け入れ、何度射精をされて膣内に精吐きだされたのかしら?

 何度、何度、何度、何度、何度・・・。

 口内や膣内を犯されたのかしら・・・。

 もう関係ない・・・。

 そう関係・・・。

 ない・・・。

 一人の男が終われば次の男が、その男が終わればまた別の男が身体を貪っていき永久に続く拷問の様な時間が過ぎていき。
 全身が白く白濁へと染まりきったところで彼等は満足したようだ。

 「さて、最後の仕上げだ・・・。」

 虚ろな視界と荒い呼吸で何が起こるのかを見ていると。
 導者格の男が斧を片手にこちらへやってくる。
 四肢を斬られて埋められるのかと思ったが振り上げた先には頭の方を向いていた。
 首かと思われが・・・。

 「一角獣の角は反魔物領の好事家に高値で売れるからな。」

 角、ワタクシ達ユニコーンの魔力の力の象徴・・・。
 この男達は全てを奪っていく気だ。
 もう抵抗すらできない。
 狙いを定め、光る刃を見て何もできない自分を呪った。
 それは重力と共に振り下ろされ、筋の通った先の感覚に刃が入り。
 象徴が、ワタクシの大事なものが、角が・・・。
 同時に何かが折れ。

 「嫌ああぁぁ!」

 叫ぶことしかできずに現へ別れを告げて意識を手放し闇へと落ちていく。
 暗く、生きているのかさえもわからない漆黒の中で何かが聞こえてくる。

 「親分、こいつどうします?」

 「角がねぇから商品価値はねぇけど・・・。けっこうな上玉だからな。連れて帰って性処理の奴隷にもするか。」

 どうやらワタクシにはこの先も絶望しか待っていないようだ。
 なぜ意識を失った後も酷い事を聞かせられるのだろうか。
 そう悲観していると。

 「誰かこっちへ来てるようですぜ?迎え撃ちやすか?」

 「馬鹿!こいつを追いかけ続けて一晩中起きてた上に雨にも濡れてその後気が済むまで犯っただろう。そんな体力が残ってるわけねぇじゃねぇか。冒険者や教会の連中だったらどうする。」

 「ということは?」

 「撤収だ。撤収。」

 「女はどうしやす?」

 「こんなもん運ぶ余裕なんてねぇよ。捨てて置け。さっさとずらがるぞ。」

 「ヘイ!」

 それを最後に男達の声は消えていき。
 入れ替わりに別の声が聞こえてきたが、段々と音は遠くなっていく。
 そして全てが闇へと閉ざされていった。


 エルフィール視点


 「これは酷い・・・。」

 叫び声が聞こえた場所にたどりつくと、そこには精液で身体を汚されて白目を向いて倒れている魔物娘の姿が。

 「ユニコーンになんてことを・・・。」

 「ユニコーン?ミラ、この娘はユニコーンなのか?」

 実際に知っている姿とはかけ離れていたので初対面ではわからなかった。
 それに・・・。

 「ああ、ここによく薬草を摘みに来ているのを何度か見かけたことがある。だが、この姿は・・・。」

 「角がないわね・・・。」

 アルヒミアの言う通り、彼女には角がないので別の種族だと思ってしまったのだ。

 「この状態、さっきの叫び声と関係があるのだろう。で、どうするのだ?旦那様。」

 「そりゃ、スパスィ。君の考え通りさ。」

 「だろうな。」

 ミラ以外は心得た顔になり、次の指示を待ってくれている。

 「ミラ、確か近くに水辺があったよな?」

 「湖が源流の小さな川が近くに・・・。そうだな、そこがいいな。」

 彼女も今から何をするか理解してくれて、同じように指示を待つ。

 「まずはそこへ向かおう。それとこの娘を運ぶ手段がいるが・・・。」

 何か使えるものはと辺りを見回したり、記憶を探ったりとして先程の焦げた木々の事を思い出す。

 「幸い、川と近いところにいる。焦げた木々を伐採して荷車を作ろう。スパスィ、先行してこれで木々を切っていてくれ。」

 「わかった。」

 残していたロングソードを数本スパスィに渡して、彼女には焼け跡に向かってもらい。

 「ミラ、縄になりそうな蔓を調達できるか?」

 「任せろ。」

 ミラは森林の奥へと姿を消していき。

 「俺とアルヒミア、ルヴィニでこの娘を一旦焼け跡の方へ運んでいくぞ。」

 「わかったわ。」

 「わかった。」

 場所を移すために精液まみれのユニコーンの上半身を俺が、前脚をルヴィニが、後脚をアルヒミアが持つ。

 「臭いわね、この精液。興奮しちゃうじゃないの。あっ、上半身見て興奮しちゃダメだからね。エル。」

 「今は緊急事態だ。そんな不謹慎なことできるか。」

 「そうだよ、アルヒミア。我慢しなきゃ。」

 強姦されていた姿が衝撃的で忘れていたが、彼女はいま何も身に付けていない。変な所に気を持っていかせないでくれよアルヒミア・・・。
 人と馬が合わさった少し大きな体形をしているが、意外と重くなくなんとか三人で何とか運んでいく。
 木々の間を選んですり抜け、スパスィがいる焼け跡まで辿り着くと敷物を広げてその上に彼女を寝かせる。

 「ふぅ。とりあえず一段階目は終了かな。」

 手に着いた精液を飲料用の水で洗い落としていると彼女の身体に異変があることに気がついた。

 「これは・・・。熱いな、熱を出してるようだ。」

 首に触れると常温とは思えない程の熱を帯びているのがわかる。
 川まで連れていくという水準ではない。

 「エルフィール。蔓を集めてきたぞ。」

 「ありがとう、ミラ。俺は川まで行って水を汲んでくるよ。」

 「連れていくんじゃなかったのか?」

 「いや彼女、熱を出している。早く身体を綺麗にして暖かくしてやらないと。」

 「そうか。薬の心得はあるし、ここはアグノスの中だ。効果があるものを調合して飲ませておこう。他の三人にも事情は話しておく。」

 「すまない。」

 俺はミラに感謝して頭を下げ、川へと急いだ。



 水を汲み、みんなの所へ戻ってくるとスパスィ、アルヒミア、ルヴィニが荷車を組み立てて。
 ミラは摘んできたと思われる薬草を薬研で細かくし、煎じる準備をしている。

 「待たせた。火は熾してあるみたいだな。」

 「ああ、煎じるためにも必要だったから。」

 鉄鍋二つに水を分け火にかけて湯が沸くのを待つ。
 その間に荷車の製作を手伝うことにした。

 「どうだ。できそうか?」

 「ええ。ルヴィニの発案でなんとかね。」

 「なるほど、流石だな。」

 「照れるよエルさん。」

 顔を紅くしながら作業をしていくルヴィニ。
 発想力に感心させられつつ何か手伝えるとかと聞くと。

 「今は二人で何とかなってるよ。」

 「そういえば、スパスィが戻ってきたら話があるっていってたわね。」

 「わかった。」

 作業をしている二人から離れ、地図とにらめっこしているスパスィの元へと向かう。

 「スパスィ、どうした?地図を見て眉間に皺が寄ってるぞ。」

 「旦那様。いや、こっちの方まで足を延ばしたことがなくて彼女を安静にできる場所を探していたんだが・・・。」

 「ないのか?」

 「いや、あるのはあるんだが。反魔物領に近い場所に中立の村が東に一つ。」

 「中立か、確実に安全とは言い難いな。しかし、距離を考えるとエルフの集落よりこちらの方が近いのか。」

 地図に表記された村の場所と現在地。
 そして昨日まで居たエルフの集落との位置を考えてどちらへ行くべきか考える。
 施設的にはエルフの集落だが、時間的には中立の村だ。
 頭を悩ませていると、ミラが湯が沸いたことを知らせてくれた。

 「スパスィ、悪いが彼女を拭いてくれないか?男の俺が全身を触るのはいかんだろうからな。」

 「まあいいが、変な所で紳士だな。」

 「変な所って言うなよ。」

 笑いながらスパスィはユニコーンの元へと向かっていきその場では俺一人となる。
 次の行動をどうするかを再び考え始め、ここは絶対的な安全を優先するかと思った所でミラの声がこちらへ届いた。

 「駄目だ・・・。薬が喉を通ってくれない。どうしたものか・・・。」

 「どうした?ミラ。」

 「彼女に薬を飲ませようとしてるんだが中々飲み込んでくれないんだ。」

 「この状態じゃ普通には飲んでくれないだろうな。」

 仰向けではなく横を向いた状態。
 管で直接送るなりしてやらないと駄目だろう。
 それか・・・。

 「あまりやりたくないがこれが一番だろうな。ミラ、器を貸してくれ。」

 「ああ。」

 器を受け取ると、中に入っている薬が渦を巻く様を思い起こして具現化していき。
 更に渦の中から細い糸状の液体が伸びていく光景を想像する。

 「スパスィ、彼女の口を軽く開けてくれ。」

 「こうか?」

 身体を拭き終わったスパスィに彼女の顎をもってもらい。
 水の糸が開いた口へと滑りこみ喉の奥へと入っていく絵を膨らませていき、それを現実に呼び起こす。

 『おお!』

 淡い緑色をした水の糸がユニコーンの口の中へと入っていき、舌を滑り、喉を通って胃に収まっていく。
 その光景に二人が感嘆の声を上げた。

 「これでいいだろう。後は暖かくして移動させればいいが・・・。」

 薬も飲めないほど衰弱しているのなら、早く休ませた方がいい。
 安全をと思ったが考えを変えた方がよさそうだ。
 そう考えていると、ルヴィニとアルヒミアが車輪が地面を転がる音をさせながらこちらへとやってくる。

 「エル!出来たわよ。」

 「完成!」

 彼女達が引いてきたのはユニコーンの娘を乗せても余裕があり、ずり落ちたりしないように支えの付いている大きな荷車だ。

 「流石だな。ものを作ることに関して二人の右に出るものはいないな。」

 「み、見事なものだ。」

 「うん。流石二人だな。私は彼女にかける寝袋をとってこよう。」

 自分達の荷物を置いてある所へ向かっていくスパスィ。
 俺達は荷車に彼女を乗せて、寝袋が来るのを待つ。

 「ところでエル。」

 「なんだ?」

 「彼女をどこへ運ぶの?」

 「それもそうだ。やはりエルフの集落へ運ぶのか?」

 「いや、戻るにも時間がかかり過ぎる上に荷車ではうまく運べない。」

 「じゃあ、どうするの?」

 「大森林を抜けて東に進んでいくと中立領だが村がある。旦那様はそこへ向かおうと思っているようだ。」

 「中立領?」

 「魔物娘を嫌ってはいないけど好いてもいない土地の事よ。」

 「そんな区切りがあるのか、集落の外とは広いものなんだな。」

 「そうだな、世界は広いもんさ。途中でスパスィやアルヒミア、ルヴィニに聞くといい。勉強になるぞ。」

 「うん。よろしく頼む。」

 「任せて。」

 「任せろ。」

 「頑張る。」

 森の中だけで暮らし、外界との接点が少なかったミラにとって生きる知恵とエルフの知恵はあるが外の世界の知恵はないに等しい。
 今からそれも必要になってくるだろうから教えてもらうのは良い機会だろう。

 「さて、少し不安もあるが中立領の村へ行く。彼女を早く雨風の当たらない場所で安静にしたいからな。いいかな?」

 「かまわない。」

 「旦那様がそう決めたのなら。」

 「早くいきましょう。」

 「ユニコーンの娘の体調が心配。」

 みんなの了解が出たので荷物を回収し、荷車の握り手に手をかける。

 「それじゃ、出発しようか。」

 「ええ。」

 『ああ。』

 「うん。」

 焼け焦げた木々を背に森林の中へと入り、出口を目指し歩き始める。
 荷車をぶつけないように慎重に進んでいき。
 日が真上へと昇る前にアグノスの大森林を抜けて草原へと出ることができた。

 「広い・・・。木々の隙間からしか見えなかったが、大森林の外はこんなにも広かったのか・・・。」

 「ああ、だが世界の広さはこんなもんじゃないぞ。」

 「そうなのか、凄いな・・・。」

 緑生い茂る草原に立ち、吹き抜ける風を感じるミラ。

 「旦那様、ミラ。急ぐのだろう、早く行こう。」

 「すまんスパスィ。いまいく。」

 先を行く皆の後を追い、荷車を引いていく。

 「おっと、待ってくれ。」

 ミラも俺を追って後をついてくる。
 少しばかり草原を歩くと、土で舗装された道が見えた。
 これで村にかなり近づけただろう。

 「見えてきたな。」

 「そうね。でも・・・。」

 「柵らしきものの横に何か掲げてあるな。あれは・・・、旗?」

 「あの旗はちょっとまずい・・・。かな?」

 村へと続く道、しきりとして刺さっている柵には風にたなびく複数の旗が立っていた。

 「しかし、後戻りはできないだろう。行くだけ行ってみるか。」

 その旗に描かれていたものは親魔物領の者にとっては勧化できないもの。
 俺達にとっていま最もあって欲しくなかったものだ。

 「無駄と思うが致し方ないな。」

 僅かな望みにかけて、旗を掲げている村へと向かっていく。
 教団の紋章が刻まれた旗を見ながら・・・。
12/01/27 19:18更新 / 朱色の羽
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■作者メッセージ
 えぇーっ、第十一章でございます。
 初めに、ユニコーンファンの皆様。ユニコーンを嫁とされている皆様。
 まことに申し訳ありません。

 禁忌に触れるような内容となりまして、書いてる自分も何度か戻しそうになりましたが・・・。
 初期原案の時点で物語の中盤を盛り上げる大事な展開として書かせていただきました。

 彼女がこれからどうなるのか、後半をお待ちください。

 感想、御意見、つっこみや誤字、脱字報告等ありましたら。
 感想の方からお願いいたします。

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