連載小説
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小さなフェアリーと盗賊団
現在地-海沿いの草原-街道

「うおおおおおおおっ!」

「遅いっ!」

向かってくる男が振り下ろす斧を避けて白地で腹を切り裂く。

「がぁあああああぁぁぁ…!」

悲鳴をあげて倒れる男…これで3人仕留めた。

「うりゃああああああっ!」

「「ぎゃあああああああああ!?」」

最後にパノが2人殴り飛ばして全滅だ。

「おーし、これで全員だな」

「そうだな…と言うか、この程度の盗賊ならセンが出るまでもないだろう?」

イオは少し不満そうだ…確かに総勢20人の人間の盗賊団ならイオやコロナなら1人でも十数秒でカタがつきそうだ。

「ま、集団戦の特訓さ。皆で息を合わせた戦いをするんだよ」

俺たちは街道を歩いていたら、布を被っていた盗賊に奇襲されかけたが、ポウとクーの嗅覚により早く気づき、奇襲は失敗だ。

「ポウ、クー、もう一仕事できるか?」

「勿論ですご主人様!」

「お任せ下さい!…所で何をすれば…?」

「コイツ等の臭いが残っていたら、辿っていって本拠地を叩く…そこで色々回収しておこう」

「回収?」

ウトが不思議そうな表情で聞き返してくる。

「ああ、食料とか…頭は捕まえて街で自警団とかに突き出せば金になるしな」

「せこいわね」

「うるさい」

金品は回収しても頭を突き出した時に押収されるだろうな。

「まあそう言うわけで頼むよ」

「此処は海沿いだから潮の臭いが強いですけど、私が本気になればすぐに見つけれますから!」

テンション高いなポウは…。

てか今「私が」って所を強調したけどどうかしたのか?

「ぽ、ポウより私の方が早く見つけれます!」

慌てた様子で俺に詰め寄ってくるクーに、俺も少し焦る。

「お、おう…まあ2人で頼む」

そう言うと、2人共凄い勢いで走っていき、スンスンと鼻で臭いを辿る2人…なんだか妙な光景だ。

「「こっちですご主人様!」」

2人でそう言うと、今度は喉を鳴らしてガルルと睨み合う。

「私の方が早かった!」

「いいや!私の方が早かったに決まっている!」

「いや、どっちでもいいから案内してくれよ…」

この言い争いは5分続いた…。



現在地-海沿いの岩場-岩穴の上

「「此処ですご主人様!」」

「シーッ!お前等、敵の本拠地の傍なのに声がでかい!」

「セン、君もだ」

あ、ヤベ。

思わず口を押さえてコクコク頷く。

「で、どうする?私がブレスで崩してやろうか?」

イオ、後で色々回収するって言ってるじゃん。

「まずは素早いティピに中の状況を確認してもらいたい…あと護衛として体の大きさが似通ってるシャナも頼む」

「了解…じゃあ行こうかシャナ」

ティピに応えるようにコクリと頷いて2人で岩場を下りていき、空洞の中へ入っていく。

そして10分もすると中から2人が出てきた。

「おー、来た来た…」

しかも、敵の盗賊をわんさか連れて。

「ごめーん!見つかっちゃったー!」

…ま、こんな事もあるか。

「全員戦闘態勢…コロナとミスティとイズマはこの岩場の上から援護攻撃…イオは何時も通り空中での遊撃とティピの確保…後は全員突撃!」

指示するだけしたら、俺は岩場から飛び降りて、意図せず盗賊の1人を足で潰した。

「ぎゃふ!?」

「あ、ゴメン」

ピクピク動いてるけど戦闘不能だろうな。

えーっと、敵は後残り30人位か。

俺の後ろからアーリアとアノンとポウも素早く降りてきた。

「死ねぇええええっ!」

盗賊の下っ端が振ってくる剣を掻い潜り、そいつの奥にいた避けてくるとは思わずに動揺している盗賊の脇腹を蹴り、振り返り際に足刀で後ろにいた男を斬った。

「ぐあっ!?」

「げふっ…!」

「おそまつ」

俺が蹴り飛ばした奴は、アノンが斧で止めを与えたようだ。

岩場の上からは、イズマの放つ矢と、コロナとミスティが放つ魔法が盗賊達に降りかかっていく。

「うぎゃ!」

「ぐあぁあああああ!」

「何だコイツ等!?魔物ばっかだし…強え!?」

俺たちの嵐のような攻撃で次々に倒れていく盗賊達。

そして最後に残ったのは盗賊団の頭だった。

頭を囲むようにして武器を構える俺たちに、盗賊団の頭は恐怖の表情を浮かべている。

「て、テメェ等何者だ!?この俺たちがこんなにもあっさりと…」

「なぁに、最近結成した魔物中心の傭兵団だよ…喧嘩仕掛けた相手が悪かったな」

そしてそいつを殴って気絶させ、縄で縛り上げて奴等の本拠地へと侵入した。



現在地-盗賊団のアジト-最深部

「ったく、見つかっても撒いて来いよな」

「あはは…ごめんなさい」

ティピとシャナに内部の案内を頼みながら進んできて、最深部に辿り着いた。

そこには木箱や袋が積まれていた。

「よし、物色開始」

置いてある袋や木箱を開けてゴソゴソと漁っていく。

食料品類は回収し、金品類はどうせ頭を突き出したときに押収されるし、金品を盗んだりするのは性に合わない…まあ街で自警団とかに渡せばいいか。

どんどん回収していく。

「ん?」

しかし向こうの袋の中でガタガタと音がする。

気になったので袋を開けてみると、そこには1つのビンが入っていた。

しかし唯のビンではない。

中には、羽のついた小さな少女が入っていた…。

草や葉のような奇妙な服を着ている。

しかもビンの中でガタガタと暴れている。

「どうしたのセン?」

「いや、これ……」

ティピとシャナにビンを見せると、ティピは驚いたような表情になる。

シャナは何時も通りの無表情で首を傾げているが。

「これフェアリーだよ」

「フェアリー…妖精か?」

「うん、なんでフェアリーがこんな所にいるんだろう?」

こうして話している間にもフェアリーはビンの中で暴れている。

「どうする?開けてみるか?」

「う〜ん…たくさんいると厄介って聞くけど…1匹だけなら大丈夫なんじゃないかな?」

「それじゃ…」

ビンのコルクを抜くと、フェアリーは素早く飛び出して逃げると、飛び去っていった。

「ありゃ、逃げちまったか…」

「…捕まってたから…怯えてる」

シャナは静かに呟く…確かにマリーナとかもそうだったし、あの小さな体で捕まってたらそうなるか。

「でも迷子になったりまた別の奴に捕まっても面倒だし…追いかけるか」

「うん、荷物も纏めたし」

ティピとシャナが沢山物を詰め込んだ袋を頭の上に掲げるように持つと歩き出す。

なんだかコメディな持ち方だなぁ…。

ともかくフェアリーを追いかけると、何故か行き止まりに辿り着いた。

「あれ〜?こっちも行き止まりだ…これじゃ何時まで経っても出られないよ…」

フワフワ飛びながら行き止まりから戻ろうとすると、俺たちに気がついたようだ。

「うわわ!?つ、捕まっちゃう!逃げないと逃げないと!出口!出口は!?」

「…落ち着きが無い」

「出口〜!出口〜!ぷぎゃっ!?」

騒ぎながら飛び回っていると、前を見ていなかったのか壁にぶつかって地面に落ちた。

ありゃりゃ…目をグルグル回してバタリと倒れてしまっているので、俺はそーっと両手で掬い上げてやる。

「怪我は…無さそうだな」

「あわわわ……はっ!?わ〜!捕まってる〜!」

「いや捕まえてないから」

飛び起きると俺の手の平から飛び出して逃げようとするが、俺の言葉に反応して岩の陰から此方をそーっと覗いている。

「…本当に捕まえない?捕まえてない?」

「ああ、本当だ」

「本当の本当の本当?」

「本当の本当の本当だ」

正直面倒くさかったが今ので漸く信用してフワフワと俺の目の前に飛んできた。

「怪我とか無いな?」

「…うん」

「お前、なんであんな所で捕まってたんだ?」

「うん、森で浮かんでたらあま〜い臭いがして…それに釣られて飛んでたら怖い顔のおじちゃん達に捕まって…ビンに入れられて…そしたら何時の間にか此処にいたの」

ん〜…様は臭いに誘われた所を捕まったって所か。

しかし連中はどうしてフェアリーを捕まえたんだ?

「なんで捕まったか分かるか?」

「妖精の国に連れてけって言われてたけれど、ポップ意地悪な人には言わないもんね」

エッヘンと小さな胸を張って自慢する。

妖精の国か……面白そうだな。

「そっか、じゃあとりあえず外まで一緒に行こうぜ」

「うん!お兄ちゃん優しいね!お名前なんて言うの?」

「セン・アシノだよ」

「私はティピ!」

「…シャナ」

「ポップはポップだよ!ありがとねセンお兄ちゃんとティピちゃんとシャナちゃん!」

…なんだか文字通り妹が出来たみたいだなぁ。



現在地-海沿いの岩場-街道近く

「で、この子はどうするんだい?」

戻ってポップの事を説明すると、アノンが開口一番そう言った。

「此処から自分のいた所に戻れれば問題ないんだが…帰り道分かるか?」

「ううん…分かんない…」

どうするかな……なんて言っても答えなんて決まってるけどな。

「じゃ、俺たちと一緒に来いよ」

「え?」

「俺たちと一緒に世界中を旅すれば、何時かはお前の故郷に戻れるさ」

俺の言ってる意味を理解するために数秒間考え込み、俺の言っている意味が分かった時には顔を輝かせた。

「本当!?本当に帰れるの!?」

「ああ」

「わーい!じゃあポップ、センお兄ちゃんと一緒に行く〜!」

ビュンビュン飛び回って喜びを表現している。

ま、ポップの事は情報を集めれば良いとして…とりあえずこっちだな。

「おいお前、なんで妖精の国になんて行きたいんだ?」

縄で縛っており、既に意識が戻った盗賊団の頭に声をかける。

「へ……俺がお前にそれを話す義理があるか?」

「…へー、その軽口…何時まで吐けるかな?」

俺は馬車に積んであった荷物の中から羽ペンを取り出すと、ニヤッと笑いながら盗賊の頭の靴を脱がす。

「お、おい何する気だ…?」

「見れば分かるだろ?」

そして少しずつ羽を足に近づけていく。

「や、止めろ!それ以上近づけるなあっ!?」

「残念、君の冒険は此処で終わってしまった…!」

呪文みたいな台詞を言って更に近づける。

そして羽の先端が足に掠り…。

「止め…!止めろ…!あああ…あ…」







ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!?



現在地-海沿いの街道-林近く

俺は荷車に座っており、足の上にはミスティ、左腕にはコロナ、右腕にはミン、背中側にはイオという魔物まみれな格好だった。

他に荷車には、笑い死に一歩手前の盗賊の頭も、縛られた状態で寝転がりながら乗っているが、抵抗する気力も無いようだ。

因みに、妖精の国へ行きたかった理由は戦闘力の低いフェアリーとかならたくさん捕まえて売れるかららしい。

白状した後より一層擽ってやったけどな。

「センお兄ちゃ〜ん!」

俺の頭の上にポンと座るポップ…本当に妹みたいだな…ちょっと嬉しいし。

「どうした?」

「えへへ〜、呼んでみただけ〜!」

「フフ、そっか」

さて、もうすぐ街だが…ちょっよ厄介な街だな。

次の街の名はダダイル。

親魔物領と反魔物領の狭間…中庸の街だ。
11/07/03 00:14更新 / ハーレム好きな奴
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■作者メッセージ
…皆さんにお知らせがあるのですが、来週はリアルが忙しくて更新が遅れそうです…スイマセン。

それはともかく次回はギルドのお仕事編です。

皆さんしっかり妄想して下さい…作者は危うく鼻血が出そうになりましたwww

では皆さんまた次回。

因みに傭兵団の名前のアンケートはまだ募集しているのでよろしくお願いします。

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