読切小説
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前か後ろか
かっぽかっぽ……蹄がコンクリートを打つ音が響く。だが、その音はどこか刺々しい。
音を立てている張本人、ケンタウロスの速水 風歌は苛立っていた。
同じ硬式テニス部の後輩である高橋 賢吾と付き合い始めてもう6ヶ月になる……そろそろ、自分の身体を許してもいいのではないかと彼女は考えている。だが、彼がセックスを誘う様子はない。
もともと押しは強い人ではないから覚悟はしていた。告白も、キスも、全て風歌の方からであった。

『だが、最後の一線まで女の私からさせるつもりか!!』

かつんっ! 苛立ちをあらわに風歌はコンクリートを蹴る。その音にビクッとした者が横にいた。

「あ、あのー……先輩、怒っていますか?」

おどおどと風歌に声をかけてくる少年の声……風歌の苛立ちの種、そして愛おしくて仕方がない男、賢吾だ。高校からの帰り道。二人は並んで歩いている。

「怒ってなどいない」

苛立っているのに、つい風歌は裏返しの言葉を言う。もちろん、賢吾は言葉の通りには受け止めない。その顔が見る見る間に曇る。

『ああ、そんな顔をするな! 私が悪いことをしたような気分になる! それでいていじめたくなる! 滅茶苦茶にしたくなる!』

発情期が近づいていることもあり、風歌は熱が上る顔を見られないように、ツンと横を向いた。

「でも……」
「怒っていないったら怒っていない!」

口先だけだ。もう口調までが苛立ったものになっている。本当は怒っているのに、本当は彼を困らせたくないのに、本当は彼を滅茶苦茶にしたいし逆に彼に滅茶苦茶にされたいのに、なんでそんな言葉を吐いてしまうのか……
そんな自分が情けなくなり、さらに苛立ちが掻き立てられる。自分の苛立ちを振り払うかのように風歌は足を速めた。

「ちょ、先輩……!」

慌ててちょこちょこと彼が小走りになってついてくる。スピードを上げて振り切っても、風歌は良かったのだが、それをしたところで何も解決しない。むしろ、あとで賢吾に悪いことをしてしまったと、家に帰ってから後悔に苛まれる自分が想像できた。

「ならば言う」

不安げにまた賢吾が声をあげたので、風歌は自分の気持ちを伝えようと賢吾の方を振り向いた。
だが、いざ自分がセックスしたいと言おうとすると、言葉に詰まってしまう。
困った彼女は……

「とりあえず、私の家に来い!!」

と、強引に彼を自分の家に引っ張ったのだった。







「みんな、みんなお前が悪いんだぞ!」
「うぇー!? ちょ、ちょ先輩!?」

家につき、自分の部屋に入るなり風歌はわめき散らす。当然、彼女の行動と言葉に賢吾はあわてふためいた。その様子を見て風歌は考える。
『これはチャンスかもしれない……』
相手が動揺している時なら、自分が恥ずかしいことを言ってもある程度は忘れてくれるかもしれない。風歌はわたわたしている賢吾の前でそっと大きく息を吸い、一息に言った。

「私が発情しているのに、ちっとも誘ってくれない、お前が悪いんだ!」
「うっ!? あ……それは……」

風歌の言葉にうつむいてしまう。どうやら今言った風歌の言葉は完全に認識してしまったようだ。そのことに風歌の心の中に、言葉とともに吐き出したはずの羞恥心が一気に戻ってきて膨れ上がる。
だがそれと同時に疑問が沸き起こり、そしてそれは一気に怒りも混ざった。うつむいている賢吾に風歌は畳み掛けて訊ねる。

「なぜ、なぜだ!? 私に魅力がないからか!?」
「そうじゃないです! ただ……」

弾かれたように彼は言ったが、すぐに言葉が小さくなる。風歌は黙って続きを促す。
彼が何か勇気を振り絞って言おうとしている。それをじれったいと叫んで遮ってしまうほど、彼女は愚かではなかった。もじもじしていた賢吾であったが、やがて蚊の泣くような小さな声で答えた。

「先輩にそんなことをしていいのか、やっぱり自信がなかったし、それに……」
「それに?」

この理由は予想どおりだ。だが、続きがあるとは思っていなかった。そしてその答えも意外だった。

「ケンタウロス種の身体って、どうなっているか分からないし……」

彼の顔が真っ赤だ。おそらく、女性器がどっちに付いているかわからないのだろう。

『そうだったのか……』

彼の告白を聞いて風歌は納得した。それが理由のひとつだったのなら、話は早い。無言で風歌は制服を脱ぎ始めた。
ブレザーのボタンを外して肩から滑り落としてベッドに放り投げる。そして震える手でブラウスのボタンを一つずつ外していった。

「ちょ、先輩!?」

風歌の行動に、そして今まで見たことがなかった彼女の半裸の姿に賢吾が顔を真っ赤にして驚いている。顔を覆っているが、その目はしっかりと風歌の、ブラに包まれている豊満な胸に釘付けになっていた。今日のブラは青をベースとしたチェック柄のブラだ。あんまりセクシーとは言えないかもしれない。彼を家に呼んでこう言うことをするんだったら、ちゃんと勝負下着を付けるんだったかなと風歌はかすかに後悔した。だが、後悔したところで道は開けない。ブラウスの袖から両腕を抜き、床の上に落とす。

「……!」

彼の視線が胸に注がれているのは恥ずかしかったが、今からそれ以上の物を見せるのだ。ここで恥ずかしがっているわけにはいかない。ぐっと奥歯を噛み締め、風歌は背中に手を回してブラのホックを外した。
ぷるんと胸が震えながら露わになる。テニスをするときは少々邪魔になるのだが

「せ、先輩……」

ぽつりと賢吾がつぶやく。彼の視線は胸に、まるで矢のように突き刺さっている。普段から彼は風歌の胸を盗み見たりする。それを考えれば、少し邪魔なこの胸も嬉しく風歌は思えた。

『ああ、見られている……賢吾に、おっぱい見られてる……』

愛しい彼に女として見られている。発情した牝の心と身体はそのことを喜びと受け止め、昂らせた。その昂ぶりはまるでアルコールのように彼女を酔わせる。
ふわふわとした感覚のまま、風歌はケンタウロス用のスカートに手を伸ばした。下着は履いていないので、これを脱いでしまうと、身にまとっている物はもうない。手をかけたままほんの少しためらった風歌だったが、スカートのホックもはずした。
ぱさりとスカートが床に落ちる。とうとう風歌は生まれたままの姿となり、賢吾の前に立っていた。

「ほら、よく見ろ……」

風歌はへその下……ちょうど人間の境目よりちょっと下の部分を二本の指で指す。

「ケンタウロスは前にも後ろにも女性器が付いている……、っ……」

指を添えたまま風歌は固まってしまった。賢吾に性器を見せるにはその指を左右に広げて見せる必要がある。とは言えやはり恥ずかしいものは恥ずかしかった。恥ずかしいと言えば……

『なんで私、こんなに濡れているんだ……!? 触られてもいないのに、こんなに……!』

やはり恋人を目の前にしているからか、さらに彼に自分の身体を見られているためか、彼女の子宮と膣がきゅうんと疼き、とろとろの蜜を前の膣からも後ろの膣からも垂らしていた。その疼きは羞恥心などより遥かに耐え難い。
疼きに突き動かされたかのように風歌はグッと指を広げ、秘裂をくつろげた。生まれてから十数年、男に触れられていなかった処女肉が表に出る。

「うわ、わ……」

賢吾が顔を覆っている手の向こうで言葉にならない声をあげたその目は生まれて初めて見る女性器に釘付けになっている。グロテスクでありながら桜と見紛わんばかりの美しい色をした柔肉は少年の目と心を奪うには十分の妖しさをたたえていた。

「ほら、後ろにも……」

風歌は彼に背中を向け、なんとか腕を伸ばして馬の尻を押し広げてみせた。彼の目に前と同じくらい愛液でぐちょぐちょに濡れている性器と、肛門までもが晒されているはずだ。

『は、恥ずかしい……』

賢吾の視線を痛いほど感じ、風歌は彼に後ろの性器を見せつけたままの格好で、そんなことをしても意味がないのに目をギュッと閉じた。自分から起こした行動であるが、やはり恥ずかしい。早く済ませて欲しかった。
だから、風歌は声を上げる。

「見ているだけで満足か? ほら、触りなさい!」
「は、はい!」

賢吾が風歌の前に回ってきた。どうやらそちらから攻めるようだ。風歌の腰に左腕を回し、そして右手を彼女の下腹部に伸ばした。

「こ、ここですか? すごく熱くなっている……」
「ん、んああっ! そ、そこ……!」

秘裂を彼は上下になぞるように愛撫してくる。ときどきクリトリスに指が擦れ、風歌はビクビクと身体を震わせた。にちゃにちゃと音がたつのが卑猥だ。

「先輩、気持ちいいですか?」
「あ、ああ……気持ちいい……」

普段の強気で意地っ張りの彼女はどこへやら、風歌はうっとりと目を閉じて快感を口にする。今まで彼に触れて欲しかったのにおあずけにされていた膣は触れられるだけで激しく反応した。

「中……すごくぬるぬるして熱い……」
「くっ、こらっ! 誰が指を勝手に入れて良いと……くっ!」

すっかり彼は恋人の性器に夢中になってしまったようだ。普段は遠慮がちにいろいろ私に確認をとってから手をつないだりなんだりと行動するのに、今はいきなり指を差し入れてきて、ぐちゅぐちゅと中を掻き回してくる。身体に力が入らなくなり、風歌は彼にしがみついた。

「ちょ、ま、待て……!」
「わっ! 先輩、すみません! 痛かったですか?」

慌てて彼が指を抜いた。急激に自分の膣内を満たしていた圧迫感が消えてしまう。さらに身体から離れて行こうとする賢吾の手を風歌は掴んだ。

「馬鹿っ、痛いだとかやめろだとか言ってないだろう! 待てと言っただけだ!」
「す、すみません」

すっかり彼は萎縮してしまっていた。獣性に目覚めかけていた彼を冷ましてしまった自分に舌打ちをし、風歌はゆっくりと言い聞かせるように彼に言う。

「いいか、ゆっくり入れて、ゆっくりかき出すんだ……でないと……」
「でないと……?」
「……いいからやるんだ!」

最初からこねくりまわされ続けると、あっと言う間にイカされてしまいそうだった。それは彼に弱点を知られるようで、良いようにされている感じがして、彼女のプライド的に何か癪だったのだ。有無を言わさずに風歌は賢吾に命令する。さっきの勢いはなりを潜め、賢吾はゆっくりと指を侵入させた。

「くっ、ふ……!」

再び訪れた膣内を圧迫する感触に風歌は吐息を漏らす。その指が今度はしずしずと抜かれていった。

「〜〜〜っ!」

自分の指を噛んで風歌は声が漏れるのを抑えた。ずるずると自分の膣肉が指に絡みついて擦れるのを感じる。その感触は彼女にしびれるような快感をもたらした。また彼の指が侵入してくる。そしてゆっくりと引き抜かれる。もどかしいほどゆっくり。
別に彼はじらそうとして緩慢に指を動かしているのではない。風歌の命令に萎縮し、彼女の顔色を伺いながら、過剰なまでに慎重に動いているだけだ。だがそれが風歌にもどかしさをもたらしていた。

「賢吾……もう少し速く……」
「え? あ、はいっ!」

さっきと言っていることが逆であることに戸惑ったようだが、新しく出された要求の方をちゃんと優先した。賢吾の指の出し入れが少し速くなる。
にちゃ、にちゃっといやらしい音が響き、風歌は羞恥心に目をぎゅっと閉じて賢吾にしがみついた。

「うっ、くっ……ふぅ、ふぅ……!」

だんだん息遣いが荒くなっていく。賢吾の指の動きは稚拙ではあったが、それでもじわじわと風歌を高みへと登らせていっていた。早い動きよりゆったりとした動きのほうが女は感じる事がある。また、ゆっくりとした動きは初めての性行為である風歌の緊張も取り去っていた。

「ひぐっ!? あ、くうう!」

突然、風歌が賢吾にしがみついたままびくんと身体を反らせた。賢吾がたまたま風歌の膣内で指を曲げて出し入れをしたのだが、彼の指先が彼女の膣の天井を強くこすったのだ。自分でも知らなかった弱点を不意に突かれて、焦らされていた風歌の身体に限界が一気に近づく。

「や、やめてっ! イクッ、イッちゃう!」
「えっ!?」

やめて、という言葉に反応してしまったのだろう。賢吾の指の動きが止まる。

「痛かったですか?」
「違う、気持ちよすぎて……ダメ、やめないで! もうすぐイキそうだから……!」
「は、はい……!」

矛盾している風歌の言葉に相変わらず戸惑った表情だったが彼は指の動きを再開する。そのまま風歌は頂点に押しあげられた。倒れ込まないように必死に彼にしがみつく。
彼女の頭の世界が白くなった。前の膣からも後ろの膣からも愛液が吹き出るのを感じる。

「ああああっ!!」

悲鳴のような嬌声を上げて、風歌はガクガクと身体を震わせた。体重をかけてきた風歌と一緒に倒れこまないように賢吾は踏ん張る。
しばらくすると絶頂の波が引いていき、風歌は落ち着いてきた。とろけた顔で今、自分をイカせた男の顔をぼんやりと見る。

「先輩、もしかして……イキました?」

恐る恐る、しかしどこか嬉しそうに賢吾が訊ねる。イッたのであれば、自分の攻めが通じたことになるので、嬉しいのだろう。絶頂の余韻でボーッとしながら風歌はこくんと素直に頷いたが、次の瞬間、自分が無防備な姿を彼に見せてしまったと言う事実を思い出した。

「う、うるさい! 私を見るなぁ!」

かあっと彼女の頭に血が上った。彼の肩に手刀を叩き込み、そっぽを向く。そしてぽつんとつぶやいた。

「私のこんな恥ずかしい姿を見たんだ。賢吾も見せろ……」
「……え? その……」
「いいから見せるんだぁ!」

照れ隠しと鈍い彼への怒りがいなまぜになりながら、風歌は賢吾に襲いかかった。やや強引に彼の学ランを剥ぎ、ズボンを下着ごと下ろす。賢吾が両手で股間を覆い隠すより先に彼の大事な部分が露わになった。
彼のソレは風歌の痴態を見たからか、すでにいきり立っている。大きさ自体は平均的だろうが、青筋が浮かび起こっており、ぴくぴくと脈打っていた。

「うわ、わ……!」
「わ……」

強引に剥かれた賢吾が呆けたような声をあげるが、彼の性器の怒張具合に風歌も驚いた声をあげる。そっと風歌はそのいきり立った肉棒を手で包み込んだ。信じられないほどの熱が手から伝わる。

「こ、これが賢吾の……」
「はう……先輩ぃ……」

風歌の手がゆっくりと上下し始めた。自分で慰めるのとは全く違う感触に賢吾はとろけた声をあげる。その様子に風歌はにやりと強気な調子を取り戻して笑った。

「私の恥ずかしい姿を見たんだ。お前の情けない姿も見せてもらうぞ」
「ふあ、い……あ、あああ……」

半分くらい、賢吾は聞いていない。恋人の手コキの感触に酔っている。彼をよがらせていることに満足しながら、風歌はくちびるを軽く舐めながら賢吾の突起を嬲った。
初めて男のモノを握るがそれでも魔物娘、そして相手は初めて女性にこのようなことをされる男。あっという間に賢吾は追い詰められていく。

「や、やめて先輩っ! 出る、出ちゃいます……!」
「いいやダメだ。そのままイクんだ」

恋人の白旗宣言を無視し、それどころか手の動きをますます早くして風歌は追撃にかかる。
そのまま賢吾の身体が快感の閾値を振り切り、射精が始まった。風歌の手にかかるとか性器が汚れるとかそんなレベルではない。若き性器から勢いよく精液が飛び出した精液は風歌の胸を汚した。

「……汚したな、私の胸を……」
「あう、うう……ごめんなさい……」

がくりと射精の余韻で崩れ落ちるのを尻目に、風歌は今しがた胸にかけられた精液に興味を惹かれていた。手に取り、ぬるぬると指をこすり合わせていじり、そしてそれを舐めてみる。

『あ、これが……賢吾の味……』

口に広がる彼氏の精液の味に風歌の強気な顔がまたとろけてメスの顔になる。そんな風歌の脳裏に一つの欲望が浮かんだ。

『これを……私のアソコで受けたら……どんなだろう……』

一度そのことを考えると止まらない。前の膣からも後ろの膣からも、涎が垂れる。しかし、そこで素直に挿れて欲しいと言えないのが風歌だった。まだ崩れ落ちて荒い息をついている賢吾を見下ろす。彼女の視線にはっと気付き、賢吾は立ち上がった。

「す、すみません先輩っ! その……」
「もういい……それより……ハメたいんだろう、お前は……」

自分も挿入して欲しいのに、あえて自分は冷静、肉欲に溺れているのは相手……そんなスタンスを取ろうとするのが風歌だ。だが一方で、自分の気持ちなど殺してしまい、相手の主張を重んじようとするのが賢吾だ。
そういうふうに言われて首を縦に振るはずがない。

「そ、その……風歌さんが嫌なら……」

賢吾は口ごもってしまう。思うように動かない賢吾に風歌は眉を寄せた。仕方がない。理知的なケンタウロスである彼女にとってはかなり恥辱的だったが、風歌は賢吾に背中を向けて軽く尻を振った。

「ほら、来い。後ろからの方が腰を振りやすいだろう?」
「え、でも……」
「いいから!」

苛立ちと恥ずかしさに風歌は大きな声をあげる。彼女の声にびくんと賢吾は身体を震わせて直立させた。そしてようやく賢吾が動き出す。風歌の背中に近寄り、馬の尻に手をかける。

「行き……ます……」

肉棒がまず尻に当たり、そして秘裂にあてがわれた。そのまま、ぬぷぬぷと温かな風歌の中に賢吾の象徴が沈んでいく。

「あっ、くううう!」

風歌の口から嬌声混じりの吐息が漏れる。ケンタウロスの馬体の性器は魔王が代替わりした際に、人間と性交しやすいように相応のサイズに変化している。人間の性器でも十分に彼女の膣にそれは届き、肉壁を押し広げた。ましてや入ってきたその性器は愛しい彼のもの。
馬の身体から全身に回る初めての快感に風歌は悶えた。一方の賢吾も初めての女の味に圧倒されている。快感に賢吾は腰を震わせた。
「ど、どうだ……賢吾? 私の……中は……?」
「すご……くっ、すごく気持ちいいですぅ!」

まるで泣いているかのように叫びながら賢吾は答える。気の弱い、彼らしい声だ。だがその声や彼の性格とは裏腹に彼の腰はガンガンと風歌の尻に叩きつけられ、獣性に目覚めた動きを見せていた。彼が腰を引くたびに陰唇がめくれ上がってぬちゅっといやらしい音が立ち、彼が腰を叩きつけるたびに鈍い音が響く。

「うあ、あ……先輩、ごめんなさ……うあ、ああ……腰が、勝手に動いて……!」
「う、うるさい! 謝るな……くふっ、うっ……お前が好きなようにすれば……くあああっ!」

風歌が言う。声がとぎれとぎれなのは後ろから突かれる圧迫感と、快感ゆえだ。実際気持ちよすぎて、目の前にあったベッドの柵に捕まっていないと身体が崩れ落ちそうだった。テニスの試合や走り込みの時以上に息が上がっている。

「あっ、あっ、ああああ……!」

尻から脊髄を通って脳を貫く快感に風歌は声をあげる。抑えようとしても抑えられない。そんな余裕がないくらい、彼女は追い詰められていた。

「先輩ぃ! 僕、もうダメですぅ! おかしく、おかしく……!」

一方、賢吾の方も余裕はなかった。初めて女の味を知った少年が腰を本能の赴くままに振り続けたのだ。自滅行為と言えた。それでもなお、腰を振り続けながら賢吾は泣き叫ぶようにして限界が近いことを告げる。

「うあっ、あ……いい、ぞ……賢吾の好きな時に……一番気持ちいい時に……くうっ!」

身体を仰け反らせ、舌を突き出して風歌は叫ぶ。もはや半分くらい理性が飛んでしまっている。そのまま理性は焼ききれて消し飛んだ。賢吾に射精の許可を出したのち、彼女の口から漏れたのは普段の彼女らしくない、淫らで快感に素直な言葉だった。

「やっ、ふあああっ! 賢吾のおちんちんがぁ! 私の中をごしゅごしゅこすってるのぉ! 気持ちよすぎて私……わ、たし……!」
「……!?」

あまりの風歌の言葉に賢吾はずいっと腰を突き入れたところで硬直してしまう。その刺激で子宮口をぐいっとえぐられて風歌の身体が絶頂を迎えた。

「イく……イクぅうう!」

上半身がグッと丸められて痙攣し、柵を握る手にぎゅっと力が込められる。下半身の馬の部分もぶるぶると痙攣していた。特に膣内はぐにゅぐにゅと搾るように蠢き、賢吾の射精を促す。風歌の言葉に驚いて固まっていた賢吾はその刺激に耐え切れなかった。彼女の奥に深々と肉棒を埋め込んだまま、暴発する。ドクドクと風歌の膣内に精液が何度も浴びせられた。

「あ、ああ……出てる……賢吾のせーえきが……びゅくびゅくって……」
「ふあ、ああ……ダメ、止まらない……」

全身で甘美な快感が暴れまわっている。快感に意識を持っていかれないよう、風歌はベッドの柵にしがみつく。そして自分の尻にしがみついて精液を放っている賢吾のことを意識する。よほど彼は気持ちよかったのだろうか。まだ人間のはずなのにインキュバスと勘違いするほどの精液が彼女の肉壷に溜まっていく。賢吾の肉棒が何度も脈打ち、自分に種付けしているのを風歌は感じた。

「あ、うああ、賢吾……」

ようやく絶頂が過ぎ去る。硬直が解けた。もう限界だ。風歌はベッドの柵を掴んだまま四本の膝をカーペットに突く。釣られるようにして賢吾もカーペットに膝をついて上半身は風歌の馬の背にぐったりと預けた。
しばらく二人はぐったりとしたまま荒い息をついていたが、風歌が先に重い体を起こした。

「はぁ、はぁ……どうだった、賢吾?」

そのまま足音を立てて体ごと賢吾の方へと向き直る。一方の賢吾はショックに打ちひしがれたかのように床の上で座り込んでいて、風歌の方を見ようともしなかった。

「おい、賢吾どうしたんだ。私が訊ねているんだぞ?」
「あうう……僕は、僕は……」

風歌の問いに賢吾は答えず、ぶつぶつとつぶやいている。彼女の中で苛立ちが募っていく。ガッと風歌は賢吾の両肩を掴んで揺さぶった。

「賢吾! どうだったと聞いているんだ! それともなんだ! 何か問題があるのか!?」
「……ありますよぅ……僕は……風歌さんの中に射精しちゃったんですよ? もし、子どもができちゃったら……」
「なんだ、そんなことか」

ふん、と風歌は鼻を鳴らす。

「多少は面倒かもしらんが、魔物娘は子育てに関しては支援などが保証されている。問題はない。それに、賢吾との子どもなら……」
「……え?」
「そこを聞き返すんじゃない!」

あまりにも賢吾が、間の悪いところで恥ずかしいことを聞き返した。照れ隠しに風歌は賢吾の頭をぽかりと叩く。そして彼を安心させるために続けた。

「そもそも、魔物娘は妊娠しにくい……だから心配するな。せっかくだからもう一回くらい、私の中に出すか?」
「えっ!? でも……」
「うるさい! 中出しされたら一回も二回も変わるもんか! と言うか誇り高きケンタウロスの中に射精したのだから最後まで責任をもって種付けし続けろ!」

自分でも何を言っているのか分からない状態で風歌は喚く。そして無理やり賢吾を立ち上がらせた。

「今度は前だっ! ちゃんと中出しして、私もイカせないと許さないからな!」

そう言って風歌は賢吾を真正面から抱きしめた。戸惑っていながらも賢吾のペニスは二度の射精をしたにもかかわらず目の前の恋人の裸体とセックスの期待にいきり立っている。その肉棒が風歌の前の肉洞に飲み込まれていった。

「う、あ、せんぱ……うあああっ!」
「くうううっ! 賢吾ぉ……!」

抱きしめ合う二人の嬌声が部屋に響く。その日は一日中、初めてを捧げ合った二人の睦びあう声は途切れなかった。
12/12/28 13:19更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)

■作者メッセージ
真昼間からエロSSを爆投します、どうも沈黙の天使です。

ここ最近、いろいろ思うところがあって自信をなくしていました。
というわけで、文章の書き方を少し変えてみたのですが、如何でしょうか? 前とこちらと、どちらのほうが読みやすいでしょうか?
そちらの方も感想に書いてくださると幸いです。

さて、そんなわけで拙著『前も後ろも』で触手プレイをしていた速水 風歌と高橋 賢吾の初体験でした、いかがだったでしょうか?こんなふうに初心におっかなびっくりやっていた二人が、数年後には触手プレイとかやってしまいますwww
てなわけで(?)おまけSSです、どうぞ。

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「あの頃はヘタレだったのにな……」

全身を精液で白く染め上げてベッドに横たわる風歌は、すぐ目の前で同じくぐったりと横たわって寝息を立てている恋人の賢吾を見てつぶやく。
互いに初めてを経験してからもう7年……賢吾も風歌を「先輩」と呼ばずに「風歌さん」と呼ぶようになった。それでも力関係や性の主導権はあの頃と同じく、風歌が握っている。

「いや、今でもヘタレだな……なのに……」

先ほどまでの行為を思い浮かべてピクンと風歌は身体を震わせる。さっきまでの賢吾は普段の賢吾とはまた違う賢吾だった。もはや人ですらなくなっていた。
理由は、触手薬を服用したからだ。
数ヶ月前、触手薬を使ってエッチをした結果、風歌は幸か不幸かそれにはまってしまった。自分が主導権を握って賢吾に命じて腰を動かさせたりするセックスも好みだが、触手に滅茶苦茶にされるのもまた好きだった。
風歌を気遣って恐る恐ると言った感じで愛してくれる賢吾。獣欲を優先して風歌のことをお構いなしに蹂躙し、激しく愛してくれる賢吾。
どちらも賢吾、どちらも風歌にとって大事な人。風歌は眠っているその大事な男の額に口づけをひとつ落とした。

「おやすみ、賢吾。愛しているわ」

キスをした、普段は強気でなかなか本音を言わない頑固な口が素直に愛の言葉を紡ぐ。そして笑みを一つ作ってから、風歌は寝息を立て始めた。

*********

とりあえず、爆散してください

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