新たな日常〜昼〜
午前７時４０分。
工房オヤカタ。
受付でぼーっとしてるエドがいた。
カランカラン♪
その時、正面の扉が開いた。
「いらっしゃ・・・お、今日は早めの出勤だな」
入ってきたのは、フォンとシェリーだった。
「あはは・・・ちょっと早めに起きてさ」
「え、えぇ。べ、別に何にもないわよ！？」
（ちょ、シェリー。それじゃ逆に感づかれるよ？）
エドが言ったことに対し、フォンは普通に返事したが、シェリーは顔を赤くしながら、慌てて否定した。なんも言ってないのに。
「・・・はぁん？なるほどぉ？」
エドがニヤニヤと笑う。
「ちょ、なによその笑いは！？」
「べっつにぃ？ただぁ？朝っぱらからお楽しみですね、と思いまして？」
「っ！？！！？」
「あはは・・・」
エドがシェリーをいじる。シェリーは真っ赤に染まった顔をもっと赤くして、頭から湯気を出す。フォンはと言えば、フォローを出すわけでもなく、困ったように苦笑いして頬を書いた。
「おぅ、来たか坊主」
「おはようございます、親方」
「ぱ、パパ、おはよぅ・・・」
奥の工房から親方が顔を出した。
フォンは以前より礼儀正しく（どちらかというと緊張気味？）挨拶をする。
シェリーは、赤い顔を俯いて隠しながら、尻すぼみな声でおはようの挨拶。
「・・・またいじめたのか、エド？」
ギロリと親方がエドを睨む。
ところがエドは反省する素振りを見せず、逆にもっと口角を吊り上げた。
「だってぇ？朝からイチャイチャラブラブ、さらにはナニしちまうようなカップル、いじらなきゅ失礼っつぅもんすよ」
「・・・なぁにぃ？」
すると今度は親方はフォンを睨み、ドスドスと足音を立てて近づく。
「・・・フォン、お前・・・」
「あ、あはは・・・」
くわっと目を見開いた親方は、勢いよくフォンの頭を掴み！
わしわしわしわしわし・・・
「よしよし、頑張ってるようだな。早くこの老いぼれに初孫の顔を見せてくれ」
「ちょっとパパ！？はっ、恥ずかしいこと言わないでよ！」
激しく頭を撫でて、褒めた。
「あ、はい、がんばります！」
「フォンも同意しない！」
フォンはぐっと拳を握って気合を入れる。
シェリーは顔を真っ赤っかにして手をわたわた振りながら二人に叫んでいる。
その様子をニヤニヤ笑いながら見つめるエド。
『平和な』工房オヤカタはいつも、こんな感じだ。
「さぁて、坊主、今日も仕事だ」
「はい、親方。じゃ、シェリー。迎えはいつも通りでいいからね」
親方がフォンを連れて奥の工房に入っていく。
「うん、じゃあね。エド、あんたフォンをこき使うんじゃないわよ？」
「へいへい、いつもこき使ってねぇよ」
そうしてシェリーが帰ろうと、振り返った。
カランカラン♪
「兄貴ぃ、フォンにぃ来てｒ・・・」
ビシィッ！
メリッサが入って来た瞬間。
空気が凍りついてヒビが入った。
「・・・あちゃぁ・・・」
エドが似合わない困り顔をして、頭を抱えた。
平和が終わった瞬間だった。
「・・・おはよう、メリッサぁ？」
「・・・おはよう、シェリーさん？」
お互い仁王立ちになり（シェリーについても）、正面に『敵』を見定めた。
ハタから見れば、現在の時点でシェリーが勝っている。
しかし、シェリーにとっては、現時点でも諦めてないメリッサは認めたくないライバルであった。
さらに魔物として備わる嫉妬深さが拍車をかけ、仕事中ずっと一緒のメリッサに対する警戒度もマックスメーター振り切りっぱなしだった。
メリッサにとっては言わずもがな。ずっと好きだった人をポッと出のヒロインに取られたような幼馴染ポジションの彼女。
しかしそれで黙ってないような勝気性格。一度折れても強化されて立ち直る根性。これらを武器に、フォンを取り返そうとしている。
では、もはや何回目かもわからぬ、工房オヤカタ内戦争。
勃発。
「メリッサ、アンタよくもまぁ来れるわねぇ？フォンにトドメさされる前に通うのやめたらぁ？」
「あらぁシェリーさん、今日もフォンにぃと出勤ですか？フォンにぃも大変ねぇ、荷物連れて仕事場来ないといけないんだから」
「荷物？あぁそうね。アンタみたいに殺虫剤のに回りを飛び回るハエみたいなしつこい女は特に荷物よねぇ！」
「ハエぇ？ハチの間違いじゃないのぉ？どこぞのヘビみたいにしつこくいらない世話焼いて無理やり夫にしちゃうような危険から追い払うた、め、の！」
「アンタがハチ？ハニービーやらホーネット族に失礼よ。アンタみたいな粘着女なんかデビルバグ以下の扱いを受けるべきなのよ！！」
「だったらアンタはよかったわねぇ！フォンにぃに情けかけられて、デビルバグ以下の扱いを受けなくて！！あんたほど粘着質じゃないからねぇ、あたしは！！」
徐々に悪口を言うたんびに二人の距離は近づき、最後には鼻がくっつく程度の間合いだった。
「シャーッ・・・」
「ガルルル・・・」
あぁ、作者には見える、見えるよ！
シェリーの後ろにはハブが！
メーターの後ろにはマングースが！
上のセリフは二人が言ってるのに、ハブの威嚇やマングースの唸りが聞こえるよ！聞いたことないけど！！
「・・・まったく。もぅ、お前らやめろよ。店に客が入って来た時にお前らのケンカみたら、無言でドア閉めるんだから・・・」
エドが呆れたように二人をなだめるが、聞いちゃいない。
もういつ取っ組み合いのケンカを始めるかわからん空気。
店はガラス張りの玄関で、外でジョギングしてる男性がふと中を見てしまい、大いにビックリしてる。
「こ、の、メスザルがぁ・・・」
「こ、の、クソヘビめぇ・・・」
ギリギリギリ・・・
二人とも額をこすりつけあい、ヤンキーばりのガン飛ばし。
一触即発、臨界点限界、カウントダウン１秒前。もはや核戦争（ガチ喧嘩）もまぬがれない！
そんな空間に、休戦仲介者が現れた。
「シェリー？メリッサ？ケンカしてる、の？」
フォンが、工房からひょこっと顔を出した。
「ううん、してないよ」
「ううん、やってないよ」
一瞬で空気が弛緩し、ニコニコ笑いを貼り付けた二人がフォンに顔を向けた。
「ホントに？」
「うん♪」（メリッサ）
「絶対？」
「えぇ♪」（シェリー）
「なら、いいんだけど・・・」
不安な顔をして、フォンが工房に引っ込んで間もなく。
「「・・・運が良かったわね、フン！」」
一瞬、睨み合い、ばっちりハモってお互いに捨て台詞を吐いたあと、シェリーは出て行き、メリッサは棚の掃除を始めた。
「・・・毎朝こうなんだよな・・・やれやれだぜ・・・」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
フォンとシェリーが結ばれてから、すでに数ヶ月が過ぎていた。
もう正体をフォンに隠す必要がなくなったシェリーは、ウィルベルの街に普通に下りていた。
初めは街の人たちは驚き、なにをされるか分からない恐怖を抱いていた。
が、何気に人望のある親方が親であり、また、フォンにベタ惚れで、彼に迷惑をかけないようにしていることが周知されはじめてからは、シェリーと街の人との溝はなくなっていた。
すでに、こんな会話もされるほどであった。
「おばさん。ちょっと多めに買うからさ、まけてくれない？」
シェリー御用達の肉屋さん。昔は、シェリーは森に食材を取りにいって、街の人に見られるのを避けていた。なにかあってフォンにバレたくなかったからだ。
今はもうそんな気遣いは無用なため、フォンの稼いだ金で食材を買う。
しかしフォンが頑張って稼いだお金。シェリーにとって、びた一文ムダ使いしたくなかった。
「んん、そうだねぇ・・・どんぐらいがいい？」
「半額」
「おいおい！それは勘弁してくんな！うちの店つぶれちまうよ？」
「・・・なら、せめて４割引き！」
「いんや、できても１割引き。これでも血涙もんだよ？」
「えぇ〜・・・もう一言！ね？」
「ダメダメ。あきらめんさい」
「むぅ・・・じゃ、しょうがないなぁ・・・１割引きで、ソーセージ８本束を５つ、豚肉800gに、レバー200g、あとね、んーと・・・」
交渉失敗。しかし言った通り、すこしでも多めに買おうとするシェリー。
「・・・なぁ、シェリーちゃん？お前さんの彼氏は、夜はちゃんとナニは勃ってんのかい？」
ゴンッッッ！！！
おばさんの問いかけに、シェリーが商品棚のガラスに顔をぶつけた。
「ななな、何を言うのよおばさん！！？」
真っ正面からぶつけたため、鼻をさするシェリー。
はぁ、と息を吐いてからおばさんが続ける。
「だって、お前さんいつも何を買っていく？ソーセージは置いといて、豚肉もしくはレバーがいつもあるじゃないか。精力がつく食いもんの代表みたいなもんじゃないか。欲求不満なのかい？」
「え、あ、う・・・」
もちろん、フォンのあそこは健在で、未だ人間の身でありながら魔物のシェリーの性欲に応えられている分、そこらの奴らより絶倫よりではあるだろう。
ただし、未だ、人間なのだ。
種切れになるやもしれないという不安から、シェリーは毎晩、夕食に肉を欠かさぬようにしている。
ちなみにそれなのに、フォンはあんまり体型が変わってない。元から太らないとかいう体質か。羨ましすぎる。
「ふ、不満なんてないけど・・・」
「いいや、あるんだろう？じゃなきゃこんな毎日食わせるの、おかしいって。毎朝あのボウヤ見てるけど、まだひょろっこいじゃないか」
そのひょろっこいのにシェリーは毎晩イカされまくり、イカしまくりなのだが。
「そんなボウヤに、これを食わしてやりな」
ニカッと笑ったおばさんは、ガサガサと袋を出してきた。
袋は色付きで、横からでは中身が見えない。
「？なにこれ？」
中をのぞくと、白い卵大くらいのものが４、５個入っていた。
「豚の脳みそだよ」
「・・・はい！？」
「だから、それ。豚の脳みそ」
「いやいやいや！そんなゲテモノ、フォンにたべさせらんないわよっ！」
シェリーが袋ごと脳みそを突っ返す。
「まぁ待ちな。シェリーちゃん、豚の脳みそってのはね、すごい滋養効果のある食いもんなんだよ」
「え？」
「それを食わしゃ、例え、勃たない病気持ちでも勃って、激しくヤレるシロモノなのさ！」
「え・・・マジ？」
「嘘は言わないよ」
作者は知っている。滋養強壮効果はあるが、インポを治す効果はない。
え？なんで知ってるか？いや、違うから！俺はそうじゃないから！マジで違うからな！？勘違いすんなよ！？ウチが漢方薬扱うだけだから！服用したことないからな！？
げふんげふん。
シェリーはそれを聞いて、すこし考えた。
（・・・今でも激しいフォンが、そんなん食べたら・・・）
『フォン、まっへ！激しひよぉっ！』
『何を言ってるの。やっと調子出てきたとこじゃないか』
『らっへ、もう、ろっはいも、だひてりゅ・・・』
『六回？まだそんなんか。じゃああと四回はイこうか♪』
『そ、そんにゃ、あらひ、こわれ、きゃはぁぁぁぁっ・・・』
・・・ポタ、ポタ。
「・・・シェリーちゃん？その鼻血は、さっき顔を打ったせいなのかい？」
結局。
シェリーはソーセージと、豚の脳みそを買った。値引きはなしで。
ちなみに、シェリーが行ったあとの肉屋さんの一言。
「ホントに買ってってくれた・・・ウチの旦那の馬鹿が、勝手に仕入れちゃって、処分に困ってたんだよねぇ・・・ありがとう、シェリーちゃん」
おい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えへへ・・・今日のフォンはひと味違うかも・・・えへへへへへ♪」
買い物袋を大切そうに持って進むシェリー。彼女を、複数の男が囲んだ。
「・・・なに？あんたら？」
「君さ、シェリーちゃん？ちょっといいかなぁ？」
ニヤニヤ笑いながら真っ正面を塞いでた男が話しかけてきた。
「俺のよ、アニキがさぁ。君に一目惚れしちゃったらしいんだよぉ？会ってくんないかなぁ？」
「無理。あっち行け」
そうして脇を抜けようとすると、その脇を他のチンピラが止めた。
「あんたら、石化されたいの？」
「ざーんねぇーん。俺たち、耐石化魔法具？とかいうのをつけてるからさぁ、石化されないんだよぉん」
ニヤニヤ笑いながら、全方位をチンピラが囲む。
「ちょっと、どいてよ・・・」
ちょっとやばいかな、という感じの顔をシェリーがした。
道ゆく人は、チンピラたちが誰か知っているのか、手助けをしようとしない。
それに調子に乗ったチンピラが、地雷を踏んだ。
「いいじゃん？ウチのアニキ、イケメンにスタイル抜群、さらに金持ちよ？あのフォンとかいうダメ男の数倍いいぜ？」
ぶちっ。
チンピラたちは、メドゥーサがどのような魔物なのか、知らなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ねぇ、聞こえなかったんだけど？」
メリメリメリィッ！
「あがががっ！ぶ、ぶぉんのあにぎはっ！せかいいぢのおどごでずぅっ！」
数分後。
石化能力を使わずに、チンピラ全員を叩きのめしたシェリーは、フォンの悪口を言った男を尻尾で締め上げていた。
道ゆく人は、見て見ぬ振りをするが、中にはにやにや笑いながら通り過ぎてゆく人もいる。結構恨まれていたヤツららしい。
「そうよねぇ？フォンがダメ男なんて、どこのどいつが言ったのかしらねぇ！？」
ギリギリギリッ、ベキッ！
「いでぇ！腕！腕がぁっ！」
「誰だっけぇ！？」
「ずびばぜん！おれでず！にどどいいまぜんから！ゆるじでぐれぇ！」
「・・・ふんっ！」
そこまで言わせると、シェリーは力を緩め、男を離した。
「今度フォンの悪口を言ってみなさい、腕一本じゃすまないわよ」
男を一睨みしてから、シェリーは買い物袋を抱え直して、去って行った。
「・・・ぢぐぢょう、おぼえでやがれ・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、買い物をしてから帰ってきたシェリーのやること。もはや日課になりつつあることがひとつある。
シェリーが入ってきたのは、寝室。
「・・・・・・」
ベットは家を出る前のまま、ぐっちゃぐちゃだ。
シェリーはフォンが寝ていた側に進む。
ぼふっ。
無言でベットに倒れこむ。
そして・・・
「・・・スー、ハー。スー、ハー・・・」
臭いを嗅ぎはじめた。
昨晩と今朝の行為の愛液と精液で濡れたあと乾き、ひどい悪臭を放つシーツ。
それでさえ、シェリーには甘い甘い誘惑に堕ちる、魅惑の匂いだった。
（・・・昨日のフォンも、すごかったなぁ・・・）
昨晩も、フォンが攻めであった。
昼間のフォンからは予想できぬ攻撃的な責めにシェリーはいつも通り押されに押され、４度果てた後、眠ってしまった。
「・・・んっ」
クチュッ。
臭いを嗅ぎながらシェリーが手を伸ばすと、すでにしっとりと濡れていた。
「んっ、んんっ・・・」
ニチュ、グチッ。
片手で秘所をいじりながら、もう片手を胸を覆う服を押し上げる。
「・・・なんで全くひっかからずに上がるのかな、アタシの服・・・」
それの理由は、シェリーの胸の大きさ。いつもフォンに弄られ、吸われ、さらには自分でマッサージしてるのに、全然大きくならない、胸の双丘。
（昨日もあんなに・・・あんな、に・・・）
その時のことを思い出し、また自慰を再開する。
「んっ、んふっ・・・」
胸をやわやわと揉み、秘所をひっかくように指を擦らせる。
すぐさま愛液でびしょびしょになったワレメに、人差し指が第一関節まで入る。
「ふぁ、あぁ・・・」
（確か・・・確かフォンはこんな感じに・・・）
昨日のフォンの指使いを思い出し、できるだけ忠実に再現する。
「ふっ、くぅ・・・」
が、どこか違うのか、昨日より快感は緩い。
しかし、それを積み重ねていき、徐々に上りつめてゆく。
「ふっ、ふっ、ふっ！」
最後に、胸の桜色の突起と、股の豆を同時に摘まむ！
「〜〜〜ッ！」
びくっ、びくっと小さく身体が跳ねる。ピシャリと小さい音を立てて潮が吹き、シーツを汚す。
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
（やっぱり、フォンにやってもらう方がいいや・・・）
そう思いながら、ふらふらと立ち上がり、シェリーはシーツを洗うためにシーツを回収した。
シーツを洗濯機に放りこむ前にまた発情したのは秘密。
工房オヤカタ。
受付でぼーっとしてるエドがいた。
カランカラン♪
その時、正面の扉が開いた。
「いらっしゃ・・・お、今日は早めの出勤だな」
入ってきたのは、フォンとシェリーだった。
「あはは・・・ちょっと早めに起きてさ」
「え、えぇ。べ、別に何にもないわよ！？」
（ちょ、シェリー。それじゃ逆に感づかれるよ？）
エドが言ったことに対し、フォンは普通に返事したが、シェリーは顔を赤くしながら、慌てて否定した。なんも言ってないのに。
「・・・はぁん？なるほどぉ？」
エドがニヤニヤと笑う。
「ちょ、なによその笑いは！？」
「べっつにぃ？ただぁ？朝っぱらからお楽しみですね、と思いまして？」
「っ！？！！？」
「あはは・・・」
エドがシェリーをいじる。シェリーは真っ赤に染まった顔をもっと赤くして、頭から湯気を出す。フォンはと言えば、フォローを出すわけでもなく、困ったように苦笑いして頬を書いた。
「おぅ、来たか坊主」
「おはようございます、親方」
「ぱ、パパ、おはよぅ・・・」
奥の工房から親方が顔を出した。
フォンは以前より礼儀正しく（どちらかというと緊張気味？）挨拶をする。
シェリーは、赤い顔を俯いて隠しながら、尻すぼみな声でおはようの挨拶。
「・・・またいじめたのか、エド？」
ギロリと親方がエドを睨む。
ところがエドは反省する素振りを見せず、逆にもっと口角を吊り上げた。
「だってぇ？朝からイチャイチャラブラブ、さらにはナニしちまうようなカップル、いじらなきゅ失礼っつぅもんすよ」
「・・・なぁにぃ？」
すると今度は親方はフォンを睨み、ドスドスと足音を立てて近づく。
「・・・フォン、お前・・・」
「あ、あはは・・・」
くわっと目を見開いた親方は、勢いよくフォンの頭を掴み！
わしわしわしわしわし・・・
「よしよし、頑張ってるようだな。早くこの老いぼれに初孫の顔を見せてくれ」
「ちょっとパパ！？はっ、恥ずかしいこと言わないでよ！」
激しく頭を撫でて、褒めた。
「あ、はい、がんばります！」
「フォンも同意しない！」
フォンはぐっと拳を握って気合を入れる。
シェリーは顔を真っ赤っかにして手をわたわた振りながら二人に叫んでいる。
その様子をニヤニヤ笑いながら見つめるエド。
『平和な』工房オヤカタはいつも、こんな感じだ。
「さぁて、坊主、今日も仕事だ」
「はい、親方。じゃ、シェリー。迎えはいつも通りでいいからね」
親方がフォンを連れて奥の工房に入っていく。
「うん、じゃあね。エド、あんたフォンをこき使うんじゃないわよ？」
「へいへい、いつもこき使ってねぇよ」
そうしてシェリーが帰ろうと、振り返った。
カランカラン♪
「兄貴ぃ、フォンにぃ来てｒ・・・」
ビシィッ！
メリッサが入って来た瞬間。
空気が凍りついてヒビが入った。
「・・・あちゃぁ・・・」
エドが似合わない困り顔をして、頭を抱えた。
平和が終わった瞬間だった。
「・・・おはよう、メリッサぁ？」
「・・・おはよう、シェリーさん？」
お互い仁王立ちになり（シェリーについても）、正面に『敵』を見定めた。
ハタから見れば、現在の時点でシェリーが勝っている。
しかし、シェリーにとっては、現時点でも諦めてないメリッサは認めたくないライバルであった。
さらに魔物として備わる嫉妬深さが拍車をかけ、仕事中ずっと一緒のメリッサに対する警戒度もマックスメーター振り切りっぱなしだった。
メリッサにとっては言わずもがな。ずっと好きだった人をポッと出のヒロインに取られたような幼馴染ポジションの彼女。
しかしそれで黙ってないような勝気性格。一度折れても強化されて立ち直る根性。これらを武器に、フォンを取り返そうとしている。
では、もはや何回目かもわからぬ、工房オヤカタ内戦争。
勃発。
「メリッサ、アンタよくもまぁ来れるわねぇ？フォンにトドメさされる前に通うのやめたらぁ？」
「あらぁシェリーさん、今日もフォンにぃと出勤ですか？フォンにぃも大変ねぇ、荷物連れて仕事場来ないといけないんだから」
「荷物？あぁそうね。アンタみたいに殺虫剤のに回りを飛び回るハエみたいなしつこい女は特に荷物よねぇ！」
「ハエぇ？ハチの間違いじゃないのぉ？どこぞのヘビみたいにしつこくいらない世話焼いて無理やり夫にしちゃうような危険から追い払うた、め、の！」
「アンタがハチ？ハニービーやらホーネット族に失礼よ。アンタみたいな粘着女なんかデビルバグ以下の扱いを受けるべきなのよ！！」
「だったらアンタはよかったわねぇ！フォンにぃに情けかけられて、デビルバグ以下の扱いを受けなくて！！あんたほど粘着質じゃないからねぇ、あたしは！！」
徐々に悪口を言うたんびに二人の距離は近づき、最後には鼻がくっつく程度の間合いだった。
「シャーッ・・・」
「ガルルル・・・」
あぁ、作者には見える、見えるよ！
シェリーの後ろにはハブが！
メーターの後ろにはマングースが！
上のセリフは二人が言ってるのに、ハブの威嚇やマングースの唸りが聞こえるよ！聞いたことないけど！！
「・・・まったく。もぅ、お前らやめろよ。店に客が入って来た時にお前らのケンカみたら、無言でドア閉めるんだから・・・」
エドが呆れたように二人をなだめるが、聞いちゃいない。
もういつ取っ組み合いのケンカを始めるかわからん空気。
店はガラス張りの玄関で、外でジョギングしてる男性がふと中を見てしまい、大いにビックリしてる。
「こ、の、メスザルがぁ・・・」
「こ、の、クソヘビめぇ・・・」
ギリギリギリ・・・
二人とも額をこすりつけあい、ヤンキーばりのガン飛ばし。
一触即発、臨界点限界、カウントダウン１秒前。もはや核戦争（ガチ喧嘩）もまぬがれない！
そんな空間に、休戦仲介者が現れた。
「シェリー？メリッサ？ケンカしてる、の？」
フォンが、工房からひょこっと顔を出した。
「ううん、してないよ」
「ううん、やってないよ」
一瞬で空気が弛緩し、ニコニコ笑いを貼り付けた二人がフォンに顔を向けた。
「ホントに？」
「うん♪」（メリッサ）
「絶対？」
「えぇ♪」（シェリー）
「なら、いいんだけど・・・」
不安な顔をして、フォンが工房に引っ込んで間もなく。
「「・・・運が良かったわね、フン！」」
一瞬、睨み合い、ばっちりハモってお互いに捨て台詞を吐いたあと、シェリーは出て行き、メリッサは棚の掃除を始めた。
「・・・毎朝こうなんだよな・・・やれやれだぜ・・・」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
フォンとシェリーが結ばれてから、すでに数ヶ月が過ぎていた。
もう正体をフォンに隠す必要がなくなったシェリーは、ウィルベルの街に普通に下りていた。
初めは街の人たちは驚き、なにをされるか分からない恐怖を抱いていた。
が、何気に人望のある親方が親であり、また、フォンにベタ惚れで、彼に迷惑をかけないようにしていることが周知されはじめてからは、シェリーと街の人との溝はなくなっていた。
すでに、こんな会話もされるほどであった。
「おばさん。ちょっと多めに買うからさ、まけてくれない？」
シェリー御用達の肉屋さん。昔は、シェリーは森に食材を取りにいって、街の人に見られるのを避けていた。なにかあってフォンにバレたくなかったからだ。
今はもうそんな気遣いは無用なため、フォンの稼いだ金で食材を買う。
しかしフォンが頑張って稼いだお金。シェリーにとって、びた一文ムダ使いしたくなかった。
「んん、そうだねぇ・・・どんぐらいがいい？」
「半額」
「おいおい！それは勘弁してくんな！うちの店つぶれちまうよ？」
「・・・なら、せめて４割引き！」
「いんや、できても１割引き。これでも血涙もんだよ？」
「えぇ〜・・・もう一言！ね？」
「ダメダメ。あきらめんさい」
「むぅ・・・じゃ、しょうがないなぁ・・・１割引きで、ソーセージ８本束を５つ、豚肉800gに、レバー200g、あとね、んーと・・・」
交渉失敗。しかし言った通り、すこしでも多めに買おうとするシェリー。
「・・・なぁ、シェリーちゃん？お前さんの彼氏は、夜はちゃんとナニは勃ってんのかい？」
ゴンッッッ！！！
おばさんの問いかけに、シェリーが商品棚のガラスに顔をぶつけた。
「ななな、何を言うのよおばさん！！？」
真っ正面からぶつけたため、鼻をさするシェリー。
はぁ、と息を吐いてからおばさんが続ける。
「だって、お前さんいつも何を買っていく？ソーセージは置いといて、豚肉もしくはレバーがいつもあるじゃないか。精力がつく食いもんの代表みたいなもんじゃないか。欲求不満なのかい？」
「え、あ、う・・・」
もちろん、フォンのあそこは健在で、未だ人間の身でありながら魔物のシェリーの性欲に応えられている分、そこらの奴らより絶倫よりではあるだろう。
ただし、未だ、人間なのだ。
種切れになるやもしれないという不安から、シェリーは毎晩、夕食に肉を欠かさぬようにしている。
ちなみにそれなのに、フォンはあんまり体型が変わってない。元から太らないとかいう体質か。羨ましすぎる。
「ふ、不満なんてないけど・・・」
「いいや、あるんだろう？じゃなきゃこんな毎日食わせるの、おかしいって。毎朝あのボウヤ見てるけど、まだひょろっこいじゃないか」
そのひょろっこいのにシェリーは毎晩イカされまくり、イカしまくりなのだが。
「そんなボウヤに、これを食わしてやりな」
ニカッと笑ったおばさんは、ガサガサと袋を出してきた。
袋は色付きで、横からでは中身が見えない。
「？なにこれ？」
中をのぞくと、白い卵大くらいのものが４、５個入っていた。
「豚の脳みそだよ」
「・・・はい！？」
「だから、それ。豚の脳みそ」
「いやいやいや！そんなゲテモノ、フォンにたべさせらんないわよっ！」
シェリーが袋ごと脳みそを突っ返す。
「まぁ待ちな。シェリーちゃん、豚の脳みそってのはね、すごい滋養効果のある食いもんなんだよ」
「え？」
「それを食わしゃ、例え、勃たない病気持ちでも勃って、激しくヤレるシロモノなのさ！」
「え・・・マジ？」
「嘘は言わないよ」
作者は知っている。滋養強壮効果はあるが、インポを治す効果はない。
え？なんで知ってるか？いや、違うから！俺はそうじゃないから！マジで違うからな！？勘違いすんなよ！？ウチが漢方薬扱うだけだから！服用したことないからな！？
げふんげふん。
シェリーはそれを聞いて、すこし考えた。
（・・・今でも激しいフォンが、そんなん食べたら・・・）
『フォン、まっへ！激しひよぉっ！』
『何を言ってるの。やっと調子出てきたとこじゃないか』
『らっへ、もう、ろっはいも、だひてりゅ・・・』
『六回？まだそんなんか。じゃああと四回はイこうか♪』
『そ、そんにゃ、あらひ、こわれ、きゃはぁぁぁぁっ・・・』
・・・ポタ、ポタ。
「・・・シェリーちゃん？その鼻血は、さっき顔を打ったせいなのかい？」
結局。
シェリーはソーセージと、豚の脳みそを買った。値引きはなしで。
ちなみに、シェリーが行ったあとの肉屋さんの一言。
「ホントに買ってってくれた・・・ウチの旦那の馬鹿が、勝手に仕入れちゃって、処分に困ってたんだよねぇ・・・ありがとう、シェリーちゃん」
おい。
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「えへへ・・・今日のフォンはひと味違うかも・・・えへへへへへ♪」
買い物袋を大切そうに持って進むシェリー。彼女を、複数の男が囲んだ。
「・・・なに？あんたら？」
「君さ、シェリーちゃん？ちょっといいかなぁ？」
ニヤニヤ笑いながら真っ正面を塞いでた男が話しかけてきた。
「俺のよ、アニキがさぁ。君に一目惚れしちゃったらしいんだよぉ？会ってくんないかなぁ？」
「無理。あっち行け」
そうして脇を抜けようとすると、その脇を他のチンピラが止めた。
「あんたら、石化されたいの？」
「ざーんねぇーん。俺たち、耐石化魔法具？とかいうのをつけてるからさぁ、石化されないんだよぉん」
ニヤニヤ笑いながら、全方位をチンピラが囲む。
「ちょっと、どいてよ・・・」
ちょっとやばいかな、という感じの顔をシェリーがした。
道ゆく人は、チンピラたちが誰か知っているのか、手助けをしようとしない。
それに調子に乗ったチンピラが、地雷を踏んだ。
「いいじゃん？ウチのアニキ、イケメンにスタイル抜群、さらに金持ちよ？あのフォンとかいうダメ男の数倍いいぜ？」
ぶちっ。
チンピラたちは、メドゥーサがどのような魔物なのか、知らなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ねぇ、聞こえなかったんだけど？」
メリメリメリィッ！
「あがががっ！ぶ、ぶぉんのあにぎはっ！せかいいぢのおどごでずぅっ！」
数分後。
石化能力を使わずに、チンピラ全員を叩きのめしたシェリーは、フォンの悪口を言った男を尻尾で締め上げていた。
道ゆく人は、見て見ぬ振りをするが、中にはにやにや笑いながら通り過ぎてゆく人もいる。結構恨まれていたヤツららしい。
「そうよねぇ？フォンがダメ男なんて、どこのどいつが言ったのかしらねぇ！？」
ギリギリギリッ、ベキッ！
「いでぇ！腕！腕がぁっ！」
「誰だっけぇ！？」
「ずびばぜん！おれでず！にどどいいまぜんから！ゆるじでぐれぇ！」
「・・・ふんっ！」
そこまで言わせると、シェリーは力を緩め、男を離した。
「今度フォンの悪口を言ってみなさい、腕一本じゃすまないわよ」
男を一睨みしてから、シェリーは買い物袋を抱え直して、去って行った。
「・・・ぢぐぢょう、おぼえでやがれ・・・」
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さて、買い物をしてから帰ってきたシェリーのやること。もはや日課になりつつあることがひとつある。
シェリーが入ってきたのは、寝室。
「・・・・・・」
ベットは家を出る前のまま、ぐっちゃぐちゃだ。
シェリーはフォンが寝ていた側に進む。
ぼふっ。
無言でベットに倒れこむ。
そして・・・
「・・・スー、ハー。スー、ハー・・・」
臭いを嗅ぎはじめた。
昨晩と今朝の行為の愛液と精液で濡れたあと乾き、ひどい悪臭を放つシーツ。
それでさえ、シェリーには甘い甘い誘惑に堕ちる、魅惑の匂いだった。
（・・・昨日のフォンも、すごかったなぁ・・・）
昨晩も、フォンが攻めであった。
昼間のフォンからは予想できぬ攻撃的な責めにシェリーはいつも通り押されに押され、４度果てた後、眠ってしまった。
「・・・んっ」
クチュッ。
臭いを嗅ぎながらシェリーが手を伸ばすと、すでにしっとりと濡れていた。
「んっ、んんっ・・・」
ニチュ、グチッ。
片手で秘所をいじりながら、もう片手を胸を覆う服を押し上げる。
「・・・なんで全くひっかからずに上がるのかな、アタシの服・・・」
それの理由は、シェリーの胸の大きさ。いつもフォンに弄られ、吸われ、さらには自分でマッサージしてるのに、全然大きくならない、胸の双丘。
（昨日もあんなに・・・あんな、に・・・）
その時のことを思い出し、また自慰を再開する。
「んっ、んふっ・・・」
胸をやわやわと揉み、秘所をひっかくように指を擦らせる。
すぐさま愛液でびしょびしょになったワレメに、人差し指が第一関節まで入る。
「ふぁ、あぁ・・・」
（確か・・・確かフォンはこんな感じに・・・）
昨日のフォンの指使いを思い出し、できるだけ忠実に再現する。
「ふっ、くぅ・・・」
が、どこか違うのか、昨日より快感は緩い。
しかし、それを積み重ねていき、徐々に上りつめてゆく。
「ふっ、ふっ、ふっ！」
最後に、胸の桜色の突起と、股の豆を同時に摘まむ！
「〜〜〜ッ！」
びくっ、びくっと小さく身体が跳ねる。ピシャリと小さい音を立てて潮が吹き、シーツを汚す。
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
（やっぱり、フォンにやってもらう方がいいや・・・）
そう思いながら、ふらふらと立ち上がり、シェリーはシーツを洗うためにシーツを回収した。
シーツを洗濯機に放りこむ前にまた発情したのは秘密。
11/05/03 19:19更新 / ganota_Mk2
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