連載小説
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旅行2 再会! 世界を旅する行商人!
「ふぁぁ……ふぅ……」
「眠そうだな」
「まあね……最近体毛を切ってないから結構伸びちゃってるしね」

現在19時半。
私達は次の目的地である港街フォルセカンを目指し、順調に旅を続けていた。ペースを落としたりしなければあと2,3日で到着する予定だ。
そして今は夜ご飯の時間なのだが……襲い来る眠気に、私は大欠伸をしてしまった。
原因はわかっている。自分の身体から生えている、眠りの魔力が宿った毛皮だ。旅の間は行動に支障が出ないようにちょっと短めに切っていたのだが、最近はサボっており結構もこもこになっているのだ。

「日中は平気そうにしてる気がするけどなぁ……」
「動いてる間は良いんだけど……ふぁ……こうやって座ってるとどうしてもね」

まだ行動に支障が出てしまう程伸びてはいないが、今みたいにご飯を食べるために座っていたりすると眠気が襲い掛かってきてしまう。ワーシープとしてはそれでも良いのかもしれないが、なるべく起きて色々と見て回りたいと考えている私にとってはちょっとした困りごとになっている。
ならば切れば良い……と言いたいところだが、鏡があっても自分でやるには背面の毛を切るのは難しく、だからと言ってユウロやアメリちゃんにやってもらおうにも二人とも毛を切る技術は無いのでそれも難しいのだ。
全部刈ってしまうのならばまだやりようがあるが、丁度良い具合を目指すとなると余計難しい。どうにかしたいが……中々良い案は思いつかない。

「サマリお姉ちゃんのもこもこ、抱き着いてると気持ち良いんだけどねー」
「まあ……寝る時は全然それでも良いんだけど、動いてる時に支障が出ちゃうとちょっとね」

寝る、という観点においてはこの毛皮は大いに役に立つ。安眠効果があるのでぐっすり眠れ、しかも目覚めもスッキリ爽快と良い事尽くめだ。
それは私だけではなく、私と一緒に寝ているアメリちゃんにも効果が及ぶ。この『テント』内にある布団はワーシープウールを使っているので同様の効果はあるのだが、生身のワーシープに抱き付いている方が温もりもあってより快眠を得られるとの事。なので寝ている間の利点は大きいのだが……動く時に困ってしまうのだ。

「まあ、次の街でカットしてくれる店があればそこで頼む事だな」
「それしかないか……」

旅をしていなければそこまで気にする事ではないが、それを言ってしまったら元も子もない。
髪の毛は兎も角、全身の体毛をカットしてくれるお店がどれだけあるのかはわからないが、ユウロの言う通りそういうお店を頼るしかないだろう。

「あーあ、カリンが居てくれたらなぁ……」

ふと口にしたのは、かつて一緒に旅をしていた仲間の刑部狸、カリンの名前だ。
彼女が一緒に居た間は、私の体毛を良い具合に切ってくれていた。切った分の毛を自分の懐に入れる為との事だが、かなり器用なもので切り跡が整っていたし、毎度頼りにしていたのだ。
大怪我を負った父親が完治したら旅を再開すると言っていたし、前に会った時にはもうちょっとで良くなるとも言っていたので、そろそろまた旅に出ていると思うのだが……だからといってどこで合流するとかの打ち合わせは一切していないし、そうすぐには会えないだろう。
ただ、合流する事だけに関していえば可能らしい。ユーリムさんのところで別れる際、何かアメリちゃんと二人でコソコソとやっており、こちらの位置が特定できるとか言っていた。良くわからないが、まあ二人がそういうのだから大丈夫だろう。

「カリンなぁ……あいつ何時どうやって合流する気なんだろな?」
「……」
「ん、どうかしたのアメリちゃん?」
「んーん、何でもないよー」

カリンの話題になった途端、急に黙ってニヤニヤとし始めたアメリちゃん。どうしたのかと聞き出そうとしたが、はぐらかされてしまった。なんだか怪しい……

「……」
「えっと……あと10秒もしたらわかるよ!」
「10秒?」

追求するようにジーっと見ていたら、慌てながらそれだけ言ってきたアメリちゃん。10秒という短い時間で何がわかるのかと思いながら、なんとなく心の中でカウントしてみるが……

「……はい、10秒経ったけ……」
「いよーっす! 皆元気しとったかー!」
「うわあっ!?」

丁度10秒経ったその瞬間に、『テント』の扉が勢いよく開かれ、同時に元気な女性の声が響いた。

「ってカリン!」
「久しぶりだな!」
「皆久しぶり! 元気しとったか?」

その女性は、先程名前を出した刑部狸のカリンその人だった。
今はいつも通り人化の魔法を使用中で、見た目は完全に人間だ。知らなければ魔物だとは思わないだろう。

「カリンがここに居るって事は……」
「せや! ウチもこれからはずっと一緒に旅ができんで!」

旅ができるようになったらまた一緒に行くという話になっていた。今ここに居るという事は、また一緒に旅ができるという事だ。
アメリちゃんがニヤニヤしていたのは、名前が出た時にすぐ近くにカリンが居る事に気付いていたからだろう。私達が驚くだろうなと思い、軽い悪戯で黙っていたのだろうか。意外と悪戯好きなアメリちゃんらしい。
ちなみに、この『テント』は虫除け獣除けそして人除けの魔術が掛けられているらしいが、一緒に旅していた事のあるカリンには通じないのでこうして辿り着いて扉を開けられたのだ。

「ん? そういえばセレンはおらんな。って事は無事に例の想い人とはくっ付いたんか?」

一通り再会の挨拶を終えた後、『テント』内をきょろきょろと見渡しながらそう聞いてきたカリン。
言われてみれば、セレンちゃんとカリンは同時期に旅をしていた。セレンちゃんと別れたのはカリンよりも後なので事の顛末は知らないのか。

「ああ。セレンなら無事結ばれた後ダークエンジェルになってセニックと二人でパンデモニウムに行ったぞ」
「おおそうか! ほんならええわ!」

カリンもセレンちゃんの事は心配だったのだろう。ユウロの簡単な説明を聞いて、心から良かったと喜んでいるのだから。

「ほんならええわ、で、一つ思ったんやけど……」
「ん?」

その笑顔のまま、カリンはゆっくりとこっちへ振り向き……

「あんたら、ようやっと結ばれたんか!」

目をくわっと見開いて、私の肩を掴んでそう叫んだ。

「え、あ、うん。わかるんだ……」
「わかるって。サマリの身体から発してるユウロの精の臭いが前より強いし、ユウロからもサマリの魔力を感じるからな」

私がユウロに告白したのはセレンちゃんと別れた後なので、無事カップルとなった事は知らないはずだ。だから後で伝えようとしていたのだが、カリンにはお見通しだったようだ。
というか、ようやっとって言う事は、やはり私は傍から見ればユウロに恋していたのが丸わかりだったという事か。知らぬは本人だけだった事を思い知らされ、少し恥ずかしい。

「んー……せやけど、それにしてはユウロの臭いが薄いな……」
「俺の臭いが薄いってなんだよ……」

ちょっと顔を赤らめていると、今度は鼻をヒクヒクさせながらそんな事を言ってきたカリン。

「あんたらセックス何回した?」
「え? 告白したその日だけだけど……」
「はあっ!? ほんまに!?」

言われてから思ったが、私がユウロと身体を交わらせたのはまだその1回だけだ。睡眠を挟んでいるうえ1回で何発か出してもらってはいるが、回数としてはその一回こっきりだ。
次の日はアメリちゃんが勝手に先に行っちゃったのでそれどころではなかったし、それ以降もなんだかんだ一度も性行為は行っていなかった。

「なあサマリ……ほんまにそれでええんか?」
「いや……正直に言えばもっとシたいけど……」
「やったらユウロとヤッちゃえばええやん! なんでせえへんのや?」
「い、いや、なんか恥ずかしいし……」
「恥ずかしいって……やっぱまだ人間っぽいとこあるなぁ……」

あんなにユウロを強く感じられて、さらに気持ちが良く幸せな気分になれ、美味しい精液も得られ子供も作れるかもしれない行為をしなくても良いのかと聞かれたら、そりゃあしたいに決まっている。
日中は旅をしていたいが、夜は抱きたい、もしくは抱いてほしいという気持ちは勿論ある。ただ、自分から言うのはなんか恥ずかしいし、ユウロの方もノーアクションだったせいで、あれから一度も身体を交えていなかったのだ。

「おい、ユウロ!」
「な、なんだよ……」
「あんたから抱かんでどうするんや! ええか、恥ずかしがらんと積極的にやで!」
「えぇ……なんでだよ……」
「なんでやあらへん! 男ならビシッとせえ!」

カリンの説教はユウロにも飛び火した。やはりユウロも言い出すのは恥ずかしいのか、ちょっと渋っている様子だ。
ユウロは元々性行為に関しては消極的な性格だし、私から行かないと駄目かもとは思ってはいるが……中々恥ずかしいものである。

「アメリちゃん!」
「ふぇ!? アメリも?」
「アメリちゃんは二人がラブラブしてなくてええと思ってたんか!?」
「ううん! でも、アメリに遠慮してるのかなって思うと中々言い出せなくて……」
「はぁ……まあ、それはしゃあないか」

何故かアメリちゃんにも飛び火した。アメリちゃんも自分に振られるとは思っていなかったようで、名前を呼ばれた瞬間驚いていた。
ちなみにアメリちゃんはこう言っているが、別にアメリちゃんに遠慮はしていない。子供の前でそういう事をするのは憚られるとはいえ、アメリちゃんはリリムだし、そもそもユウロより前に私はアメリちゃんとエッチな事をしている、というか一方的に犯されているわけだ。今更遠慮する事は無いだろう。
もし、遠慮というのがユウロとお風呂に入ったり寝たりしていない事だったとしても……それは、私がアメリちゃんと一緒にお風呂に入りたいし、アメリちゃんと一緒に寝たいからである。しいて言うなら、お風呂には3人で一緒に入りたいとはちょっと思っていたぐらいだ。

「つーか何でカリンがそんな事気にするんだよ」
「そ、そうだよ。性事情だって私達の勝手でしょ?」

触れてくれてちょっと有難かったところもあるが……確かに、何故それをカリンが気にするのかは疑問だ。

「そんなんただのおせっかい焼き……と言いたいところやけど、ちょっとしたこっち側の都合やな」
「都合?」
「まあ……ご飯の途中みたいやし、食べ終わってから言うわ」
「あ、そうだった。カリンもご飯いる?」
「いや、ウチは食べてきた。サマリのご飯美味いから食べたいけど、多分今日はもう食べとると思ったからな」

どうやら何か思惑があるみたいだが、言われた通り今は夜ご飯を食べている途中だったので、それは後で聞くとしてまずは食べる事にしたのだった。



……………………



「で、都合って何だよ?」

ご飯も食べ終わったので、ベッドに腰掛けて改めてカリンから話を聞く私達。ちなみにアメリちゃんは机でお絵描きか、もしくは例の手紙を書いているところだ。

「えっとな、単刀直入に言って、ウチにサマリの体毛を安く売ってほしいんや」
「体毛を?」
「せや。安く売ってもらう代わりに、ウチは毛の刈り取り補助や必要な道具の無償貸し出しもするし、売った製品の売り上げ次第やけど利益の一部を便利道具とか食材とかで還元もする。悪くない話やろ?」

開口一番、私の体毛を安く売ってほしいと頼んできたカリン。
私はワーシープ。その体毛は眠りの魔力が宿っており、その毛で作られた寝具は心地の良い眠りをもたらす為か、かなりのお値段で取引される高級品だ。繰り返しになるが、今腰掛けているベッドの布団もワーシープウールでできており、人間だった頃から寝心地は良く感じていた。
ちなみにカリンは以前も私の毛を切り取り、糸に加工して、織物を作っていた。時々お洒落で着けている私の花の形の角飾りも、私の体毛から作ったカリンお手製の物だ。

「まあワーシープウールは高級品だって話だし、それはわかるが……それがさっきの話とどう繋がるんだよ?」

そんな高級品を、身近で安易に入手可能なのだ。売ってほしいというカリンの頼みはわかる。
だが、それがもっと性行為をしろという発言とどう繋がるのかがわからなかった。

「一口にワーシープウールと言っても、その品質はピンキリや。より艶やかで高品質な体毛を生やすには、そのワーシープにとって最高級の精……つまり、サマリにとってはユウロの精を沢山摂取する必要があるんや。品質もやし、育毛速度も上がるしええ事尽くめや」
「あー……」
「ほんでな、ウチも売るとしたらやっぱ高品質のがええんや。やで、もっとあんたらには交わっててほしいんや。欲を言えば毎日やけど、それやと旅もままならんし、せめて1週間に最低2回はな」
「そういう事ね……」

カリンの説明を聞いて納得した。確かに、性行為を重ねる事によってお肌も毛並も艶々になる、とは以前他の魔物達から聞いていたし、それは私も例外ではないはずだ。
そして、毛並が良いほうがより高く売れるのも、よく考えたら当たり前のことだ。一商人として、品質は大事にしたいのだ。性行為を催促してくる理由はここにあるのだろう。

「勿論、品質に合わせてあんたらに払う値段も高くする。サマリとユウロはただ気持ち良くなってお金が手に入るんや。悪い話やないやろ?」
「うんまあ……」
「悪い話ではねえけど……」

ユウロとエッチな事をするだけで、お金も手に入る。資金の調達方法が限られている旅の中では、最高に近いのではないだろうか。少なくとも、パッと思いつくデメリットはない。

「でもなぁ、なんだかんだ理由付けてもそういうのは恥ずかしいんだよな……」
「あんた思っとった以上に初心やな……」

私としては大賛成だが、ユウロはやっぱり恥ずかしく思ってしまうようだ。それと、口にはしていないが、おそらく性行為によって子供ができてしまうかもしれない事に抵抗もあるのだろう。私があれだけ大丈夫だと言っても、そう簡単に過去のトラウマを払拭などできないのだから。

「ほんならまあ、強行手段と行きまっか」

勿論、それで諦めるカリンではない。

「強行手段って何だよ?」
「なに、簡単な話や。見たところサマリの毛もめっちゃ伸びとるようやし、ウチが今から切ったる……今までとちごうて、全部な」

強行手段と称して、今から私の体毛を全部刈り取ると宣言した。

「全部って……全部?」
「せや。胸や腰、肩回りに生えとるもん全部な。勿論、手足の先や髪や尻尾の毛は整えるだけやで」
「あ、それなら安心……だけど、なんでまた?」

丁度切ってほしかったと思っていたし、それ自体は有難いのだが……何故、ここにきて全部刈り取ると言い出したのだろうか。

「ワーシープの毛を刈り取るとどうなるかは知っとるよな?」
「うん。自分じゃ全く想像つかないけど、発情した獣のようになるんだよね」
「せや。それなら否応なしに交わるからな」

一応、知識としてはどうなるかは知っているし、だから今まで切り過ぎないようにしていたわけだ。ただ、カリンの言う通りに発情してユウロを襲う自分が想像つかない。人間だった頃よりは性欲が旺盛な自覚はあるが、流石にそこまでではないと思っているからだ。
しかし、カリンは絶対にそうなると考えているようだ。実際にそうなるかは刈り取らなければわからないが、そうなるというならば確かに強行手段と言えよう。

「またお前は勝手に……」
「まあそう非難しな。半分は親切心やで。ワーシープの夫としていつかは経験せえへんと駄目やし、いつまでも抑えとったら意外と本人にその気がなくてもストレスとなっとるからな。ええ機会や、きちんと発散させへんとあかんよ」
「はぁ……わかったよ。確かに避けては通れない道だしな」

ユウロも覚悟ができた、というよりは諦めに近いが、大きな溜息を吐いた後、毛を刈り取るのに承諾した。

「よし、ほんなら刈り取るでー。アメリちゃん、ちょいとスペース借りるでー」
「うん、良いよ!」

アメリちゃんに許可を貰ってから『テント』の隅の方に移動した私とカリン。足元にビニールを敷き、中央に椅子を置きそこに座って待機する。

「ほな、この特製ハサミでじょきじょきいくで……っと、ユウロ、あんたもよう見とき。あんたが将来的にやれるようにもなったほうがええからな」
「んーまあ、そうか。でも一回で覚える自信はねえぞ?」
「わかっとる。今回は近くにおったほうが色々と都合がええからってのもあるし、また今度じっくり教えたる」

カリンはユウロも近くに呼び寄せ、どこからか取り出した大バサミを構えた。

「ほなやるで。痛かったら言ってなー」

そう言ってから、慣れた手つきで私の体毛を刈っていくカリン。まずは大雑把に、全身の毛を短くしていくようだ。腕を上げてとか、首を伸ばしてとか適度に入れられる指示に従い、私も大人しく身体を動かす。

「羊の毛刈りもこんな感じなのかな?」
「さあな。まあ、動物の羊とちごうて指示には従ってくれるし、こっちの方が楽やと思うわ」
「ちょっとー、羊と比べるのって失礼じゃない?」
「あ、わりい。つい……」
「まあ、ユウロにはこないな経験もないやろうししゃあない。元の動物と比較したほうがわかりやすいしな」
「んもう……」

なんてやり取りを交えながらも、順当に短くなっていく私の体毛。手首足首の毛は先を残し全部切り、髪の毛もショートになるまで整えられた。背中側は見えないが、尻尾も軽くなっているのでそれなりに短くはなっているのだろう。
そして、ふわふわと私を覆っていた眠気が少しずつなくなっていく。それと最近ずっともっこもっこしていたので、なんだか肌寒く感じる。

「ん……なんだろ……なんだか……」
「ん? どうかしたのか?」
「あー、サマリでもやっぱそうなるんやな」

しかし、更に切ってもらっているうちに、今度は少し身体が火照ってる気がしてきた。なんだか良い匂いもどこかから漂ってきて、なんとも落ち着かなくなってきた。
この匂いの正体はわかっている……ユウロの、精の匂いだ。

「ん……ふぅ……んっ♪」
「もうちょっと我慢せえよ。今仕上げやで動くと肌傷付けるからなー」

意識した瞬間、あの甘い時間を思い出してしまい、私の身体は強く発情してしまったようだ。下腹部が疼き、少し身体が擦れるだけで甘い息を吐いてしまう。
眠気がないからか、どうやら普段よりも色々と敏感な状態になっているらしく、今まで気にならなかった精の匂いが私の精神を蝕む。あの夜以来頭に無かったピンク色の思考が、私の心を覆っていた。

「よし、あとちょっとや。ユウロもちょっとずつやり方を覚えるんやで」
「あ、ああ……」

あとちょっとと言う通り、私の身体は久方振りにツルツルとなり、普段体毛に覆われている肌が露わになっていた。正確に言えば、下着は身に着けているので下着姿になったというところか。
しかし、その下着も気付けばすごい事になっていた。パンツの、特に股間の部分が筋に沿って濡れているのが一目でわかるようになっていた。ブラの方は一見何もおかしくないように感じるが、その下では乳首がピンと膨らんでいるのが感覚でわかった。
やはり私もワーシープ。眠りの魔力が宿る毛皮がなければ、好色で貪欲で凶暴な発情しきった魔獣という事だ……ほんのちょっぴりだけ残っていた理性でそんな事を考えているうちに、最後の毛皮が刈り取られた。

「よし、終わったでー」

そのカリンの言葉を最後に、私の理性は身体と違い眠りについたのだった。

「えへへ……んんっ!」
「んっ!?」

椅子から立ち上がった私は、近くに居たユウロの顔を左手でぐいと近付け、その唇を無理やり奪った。

「くちゅ、じゅるる、ぐちゅ……」

口を大きく開け、ユウロの口の中に舌をねじ込み、ユウロの舌を絡め取り、唾液を吸い取る。息つく間もなく行われる、濃厚で深い接吻。口内を余す事無く舐めるように、私の舌がユウロの口の中で踊る。
唾液に含まれる精は薄いが、久方振りとなるそれは、更に私を興奮させるには十分だった。唇で絡め出した舌を啄みながら、私はもう一方の手をユウロの股間へと伸ばした。

「んふふ……♪」

そこは想像通り硬く膨らんでおり、私は思わず悦びの声を漏らした。ズボン越しに優しく撫でるだけで、ビクンと小刻みに震えるソレに、多分、今の私は今まで浮かべた事ない程の緩みきった笑みを浮かべている。私の心は高鳴る一方だった。

「ぷは……んっ♪」
「ふぁ……はぁ、はぁ……おわっ!?」

数分間繋ぎっぱなしだった口を離し、空気を吸う。名残惜しむように繋がっていた銀色の橋が、ゆっくりと重力に従い床に落ちた。
ここまでやって、もう我慢などできはしない。だから私はユウロの腕を引っ張り、ベッドの上へと投げ倒し、最早その意味を成していない濡れた下着を投げ捨て、お尻を顔へと向けて股がるように上へと乗った。

「よし、これで大体集めたな。ほなアメリちゃん、お絵描きも済んだみたいやしウチらはお風呂行こうな」
「えー、アメリもうちょっとラブラブしてるとこ見たい!」
「どうせお風呂出た後もやっとるって。ゆっくり温まってから二人のラブラブ見ればええんや」
「そっか! そっちの方が一番良いところかもしれないもんね」
「せや。ほな行こか」
「うん!」

そんな会話も耳に入ってこない。既に私はユウロ以外何も見えていなかった。
私は一切の抵抗を許す事無く、ユウロの穿いているズボンを脱がし、パンツもずり下ろした。そして、露わになったのは、初めて身体を交わらせた日以来となる、ユウロのペニス。それは既に硬く反り勃っており、透明な液と共にむわりと強い精臭を放っていた。

「はぁぁ……んっ♪」

久々に見たソレにウットリと見惚れた後、身体を倒してユウロの顔を足で挟み込みながら、一切の躊躇なく咥えた。熱く滾るペニスが私の口に触れた刺激でビクンと跳ね、立ち込める精臭が鼻腔を抜ける。

「んっ、じゅる、じゅぽ、じゅぷ、じゅっ、じゅるる……」
「ちょ、いきなり激し……ああっ!」

ああ、早くあの濃厚な汁が欲しい……そんな欲に支配された私は、ペニスを咥えたまま顔を激しく前後に動かし始めた。舌も裏筋に這わせ、吸い出すように口も窄めながら、フェラチオを行う。
他人から話を聞いただけで、フェラチオの経験なんて殆どないが、きちんと気持ち良くなってくれているようだ。硬くなったペニスが口内でびくっびくっと暴れながら、私の舌の上にアツくて蕩ける粘液を射精した。

「んっ……んー❤」

口の中に溢れる、青臭くてしょっぱく、そして濃厚で甘美な精液。久方振りにご馳走を口にし、特に触れられているわけでもないのにイッてしまった。
腰が震え、思わず声を漏らしそうになるが、折角の精液を零すまいと口を窄め、ゆっくり味わうように飲み込む。喉を流れ落ちる感覚により興奮を覚え、陰唇から愛液が溢れ出て、体毛がないので一切吸収される事なく、足を伝ってユウロの頬へと触れる。

「んんー……ちゅぽっ」
「はぅっ!」

射精も止まり、口内の精液も飲み干したので、尿道に残る精液を絞り出すように吸い付きながらペニスから口を離した。勢いもあったからか、普段出さないようなかわいらしい声を出しながらユウロが少し悶えている。意外とSっ気でもあるのか、その声を聞いた私はゾクッと一種の興奮を覚えた。

「んふふ……まだカチカチ……❤」

私の唾液や自身の精液などに塗れ照るペニスは、まだまだ硬さを保ったまま私の目の前に聳え立っていた。射精したばかりだというのに存在感を示すその肉棒に、私の頬は更に緩んでしまい、下腹部の疼きが強くなる。

「ユウロ、もっとちょうだぁい❤」
「いや、ちょっとま……ぁあっ!」

一度精を口にしたというのに、いや、精を口で摂取したからこそ、下にも欲しいと強く疼き始めたので、私はユウロの顔が見える様に身体の向きを正面へと変えて、ペニスの上に跨るように膝立ちになった。薄く紅い色に染まったユウロの顔は、触れてもいないのに私の愛液に塗れていた。
そして、連続はキツいのか制止しようとしたユウロの言葉に、興奮が頂点に達している私は一切耳を傾けず、腰を下ろしてペニスを自身の陰唇へと触れさせた。

「んっ……あぁぁあー❤」

そのまま躊躇する事無く更に腰を下ろし、ユウロのペニスを自身の膣内へと挿入した。
久々に割り入ってきた愛しい人のアツい肉棒。心の奥底でずっと望んでいたモノがようやく私のナカに入ってきた悦びに、たったそれだけで身体も心も絶頂に達した。

「ふぁああっ、あっ、イイっ、ひああっ❤」

イッているというのに、早く、早く精液が欲しいと子宮が急かすように、私の腰は自分の意思とは関係なく動いてしまう。激しく肉を打つ音が部屋に響き、尻尾も腰の動きに合わせ激しく揺れる。
もう私のおまんこはユウロのおちんぽの形を覚えてしまったようで、一突き一突きが的確に私の感じるところを擦る。ガチガチに勃起したおちんぽが膣内を出入りする度、カリ首が私の膣襞を掻き乱し、更なる快感に溺れてしまう。
全身に電流が巡ったように痺れ、私の頭は真っ白で、ただ快楽を貪る為に、射精を促すために動いていた。口から唾液が零れようが、汗が飛び散ろうが、たいして無い胸が揺れようがお構いなしに、ユウロの精液を求める私は激しく腰を打ち付ける。

「ふぁ、あっ、あっ、んぁ、あぁあっ❤」
「あっ、うあぁ……ひぁっ……!」

腰を捻り、膣を締め、私が思いつく最大級の攻めを受けたペニスが膣内で更に膨らみ小さく震え出した。前に身体を交えた時と同じならば、これは射精直前の合図だ。
ラストスパートと言わんばかりに、私は一際大きく腰を振り、一番深いところまで打ち付けた瞬間……ユウロのおちんぽが、律動し始めた。

「ふぁぁぁぁ❤ 射精てるぅ……❤」

ドクドクと勢いよく新鮮な精液が直接子宮内へと注がれる。極上のご馳走にありつけた私は、背筋をピンと反らしながら、全身を激しく痙攣させる程の強い絶頂へと達し、思わず潮を噴いた。
そんな状態でも私の腰の動きは止まらず、もっと精が欲しいと射精中のおちんぽを刺激し続ける。だからか、身体から顔に掛けてべとべとになったユウロも、顔を真っ赤に染め、腰を震わせながらの強い射精に悶えていた。

「もっと、もっとぉ……❤」

長い射精も止まり、私の膣内で大人しくなったユウロのおちんぽ。自身の体液と私の愛液でぐちゃぐちゃになったソレは、まだ硬さを保ちつつも先程よりかは幾分か縮んでいた。
私自身も少し落ち着き、ぐったりと身体をユウロに預ける。汗と愛液に濡れた肌が密着し、冷たさと相手の温もりを同時に伝えてきて、なんとも心地が良い。
落ち着いた雰囲気になってきたが、勿論これで終わりにはしない。1週間はお預けを喰らった身……いや、初エッチ前の長い間我慢させられていた私は、一回中出しされただけでは満足できない。もっと欲しいと強請りながら、ユウロに密着した状態から腰を振り動かした。

「あぁんっ! 良いのぉ……❤」

ユウロの腕を抑え、腰を打ち付けながら、あまり大きくないおっぱいを身体に擦り付けると、それでもむにゅりとユウロの身体に沿って変形する。私の乳首がユウロの乳首と触れ合う度、ピリピリとした甘酸っぱい刺激がおっぱいから脳へと駆け巡り、私を更なる絶頂へと誘っていた。
ぴちゃ、ぴちゃっと結合部から漏れ出した白濁液が飛び散り、ベッドを汚す。腰を打ち付け、膣襞が擦れる度に、熱い息が漏れる。耳をぴくぴくとさせ、それらの音を拾った私は、今まで体感した事ない程の興奮に包まれ、更に動きをエスカレートさせる。
同じ経験が浅い者同士だから、魔物である分私の方が性交に関しては上位となる。その為かユウロはずっと成すがままであり、ほぼ私しか動いていないが、それでも一つ一つの動作が全て快楽へと変わり、挿入してからずっとイキっぱなしだ。

「ふぁ……っ、せーえききたぁ……❤」

眠気とはまた違ったふわふわした感覚だけが身体中を支配し、ただ腰を捻り続けていると……突如ユウロの腰がビクンっと大きく揺れた。それと同時に、本日3発目となる射精が始まった。
長い事ヤッていなかったからか、その勢いは全然衰えを見せない。私を孕ませる勢いで子宮へと流し込まれる精液に、ビクビクと全身で悦びを表現する。

「もっとぉ、もっとちょうらぁい……❤」
「ま、待って……ひぁぁぁ……!」

ナカがユウロの精液で満たされているのを感じるが、それでもまだまだ満足には程遠かった。
1回、2回じゃ全然足りない。今までの分も含め、もう10回は最低欲しい。
そんな願望を抱いた私は、射精が止まった瞬間に抜く事なく腰を動かし始めた。ユウロの悶えたような悲鳴が聞こえた気がしたが、都合が良くなった私の耳には喜びの声にしか聞こえなかった。

「な? まだやっとるやろ」
「そうだね。それにしてもサマリお姉ちゃん激しい……アメリビックリしちゃった」
「ちょい強気な性格しとるとは言うても、大人しい普段からじゃ想像でけへんしな。まあ、サマリも立派にワーシープっちゅうこっちゃな」
「だねー。ユウロお兄ちゃん、気持ちよさそうだけどなんだか大変そう」
「せやなぁ……インキュバスになっとらんし大変やろうな。それに多分、まだまだ終わらへんと思うからな。ま、ウチはあんま気にせんとやる事やっとるから、アメリちゃんもほどほどにして寝るんやで」
「うん! カリンお姉ちゃんも頑張ってね!」

勿論、そんな耳では二人の会話も一切入ってこない。
私はアメリちゃんが目を輝かせながら私達の性行為を見ている事にも、カリンが『テント』の隅で何かやっている事にも気付かず、ユウロの上で腰を振り続けていたのだった。



……………………



「ふぁぁ……んみゅぅ……」

現在……何時だ?
太陽光の眩しさに目を覚ましたので夜ではないだろう。
私は寝ぼけ眼を擦りながら、ゆっくりと身体を起こした。ぽかぽかした日差しと、もこもこの体毛がぬくいので、まだちょっと頭がぼーっとしていた。

「……あれ?」

しかし、ちょっとずつ目が覚めてきたのと同時に、一つの疑問が過ぎった。

「体毛、昨日切ってもらったような……」

自分の身体を覆うもこもこしたもの。それは、どう考えてもワーシープウール、つまり私の体毛だ。
しかし、記憶が正しければ再会したカリンに大半を刈ってもらったはずだ。切る前よりは薄いとはいえ、ここまで残してはいなかったはずだ。ではいったいこのもこもこは……なんて思っていたら、後ろから声を掛けられた。

「お、目覚ましたか。おはようサマリ」
「おはようカリン……どうしたの?」

振り向いたらそこにはカリンが立っていたのだが……人化の術が解け刑部狸の姿を晒しているうえ、髪や尻尾の毛が少しぼさついていた。それに、なんだか疲れた様子を浮かべ、眠たそうだった。

「ウチは徹夜して今あんたが着とるもん作ってたんや」
「私が着てる……?」

私が着てるものとはいったい何の事か……と思って自分の身体を触っていて初めて気付いた。私、今ユウロの上に乗ってる……じゃなくて、私が身に着けていたのは、自分の体毛でできたカーディガンだった。

「これ、カリンが?」
「せや。刈り取ったサマリの体毛から作っといた上着やで。それ身に付けておけば体毛があるのとほぼ同じ状態やで、獣欲は抑えられるしな」
「成る程……」

確かに、体毛自体はほとんどないのにも関わらず、昨日の様に性欲が湧き上がってこない。昨日はどんなに中出しされても物足りなかったが、今はそれなりに満たされていた。
それはきっとカリンが作ってくれたこの服のお陰みたいだ。これなら体毛がなくても普段通りに行動ができるし、ゆったりとした旅もできるだろう。とてもじゃないが、昨日のあの感じじゃ旅どころではないし、その点では助かった。

「でもこれ、一晩で作ったの?」
「んなわけあれへん。前にもろたやつを実家で糸にして作っておいたんや。まあ、ちと足りひんかったで今刈った分から一部作ったもんで一晩掛かってしもたけどな」
「へぇ……ありがとうねカリン!」
「おおきに。まあ、毛刈り後のワーシープ対策によく使われる手やな。ユウロとくっ付いとったら渡そうと思って、用意しておいたんや」
「ユウロと? ああそうか、くっ付いてないと毛刈りした後困るのか」
「それもやし、着せた後もな。説明するためにユウロ起こすわ」

そう言って、私の下で下敷きになっているユウロを揺さぶって起こすカリン。ちなみに下半身こそ丸出しだが、結合自体は解けている。ユウロのペニスもしわしわになって力無く垂れていた。最後の方は記憶があやふやだが、おそらく最後は抜いたか抜けて終わったのだろう。

「ん、んん……う……」
「おはよう。体調の方はどや?」
「ああ? んー……めっちゃ腰がいてぇ……てか全身怠い……」
「やろうな。作業中たまに見てたけどほんま激しかったもんな。インキュバス化してへんユウロじゃそうもなるわな」

目を覚ましたユウロだが、言葉通り、飲酒した時以上にふらふらでお疲れの様子だ。ほとんど動いていたのは私の方だった気がするが、慣れない激しい交わりに身体が付いていけなかったのだろう。激しく交わっていた証拠として、私の太腿やお腹には乾いたユウロの精液がべったりとこびり付いているし、ユウロもあちこちお互いの体液が乾燥した跡が付いている。そして私の股間の下には大量の精液がこびり付いていたのだから。

「あれ? サマリの体毛が……いや、上着か?」
「せや。ウチが作って着させたった。これがあれば性欲も抑えられて、あそこまで激しく犯されることはあれへん」
「そうか、それは安心だ……」
「むむ……」

私としては気持ち良かったしめいっぱいユウロと一つになれたしとても良かったのだが、ユウロにとってはもの凄く大変だったのだろう。そう言ってほっと溜息を吐いた。だが、その様子を見て、ちょっとムッとしている自分がいた。

「安心しとる場合やあれへんわ。対策して我慢させると毛の成長は遅くなるし品質も悪くなるしであまり良くないんや。それに、見てみぃサマリの顔を。不満そうやろ?」
「あ、ああ……そうだな」

カリンの言う通り、不満ではある。旅をする分にはありがたいが、夜の生活も今まで通り我慢する必要があるのはちょっと悲しく思ってしまう。あれだけ激しく交わい、セックスの良さを知ってしまった今、最早1週間もお預け食らうのは我慢できる自信がない。旅をしている以上毎日とまでは言わないが、カリンのお願い通り最低でも週2回以上は抱いてほしい。

「せやから、これを着せてる間はユウロの方からサマリを抱いてやる必要がある。サマリを我慢させてる分、あんたが積極的に行かんとアカンで」
「お、おう……」

そんな私の心を見透かしたように、そうユウロに助言、というよりは説教をするカリン。

「まあ、あんなペースじゃ身体が保てへんのはわかる。今も動けなさそうやしな。やで、行動に支障がでない範疇で激しく交われ。あんたが主導握れるんやから、加減もできるやろ」
「そ、そうか……? まあそういう事なら……」
「ま、インキュバスになればガンガン行ってもそう簡単にしんどい事はのうなるから、身体を慣らすためにも回数重ねるんやな。それに、男なのにずっと受け身でもええんか?」
「はぁ……わかったよ。流石に昨日のはきつかったからあんなペースじゃ無理だけど、これからは俺からもその……積極的にその……するようにする」

顔を真っ赤にしながら言っているので、羞恥心はかなりあるのだろう。年頃の男なのにこうも消極的とは……カリンの言う通り、思っていた以上に初心なようだ。それでも、とりあえずユウロも納得し、そちらから抱く事を約束してくれたので、一応不満は無くなった。

「で、今からしてくれだなんて言わないよな? 俺、勃たないどころかまともに動けそうにもないんだけど」
「流石に言わないよ。どう見てもふらふらだし、今は外も中もユウロの精で満たされてるしね」
「そっか……じゃあ、おやすみ……」
「あ、ちょっと……」

その後、ユウロはまた力尽きたように眠りについてしまった。
身体も汚れたまま、日中一歩も外に出る事なく寝るつもりなのかと、上に乗ったまま身体を揺さぶり起こそうとしたのだが……

「そっとしておき。最後の方なんて完全にぐったりしとったし、どうせ起きてても一歩も動けへんわ」

そう言ってカリンに止められた。自分ではハッキリと記憶にないが、体力があるユウロがここまでへとへとになる程激しく犯していたようだ……なんだか少し恥ずかしい。

「うーん、でも……この先の街にアメリちゃんのお姉さんがいるみたいだし、早く会いに行きたいんじゃないかなと……あれ、そういえばアメリちゃんは?」

それは兎も角、今私達が目指している街にはアメリちゃんのお姉さんがいるらしいので、早く会いたがっているアメリちゃんの為にも少しでも進んだ方が良いのではないか。そう考えていたところで、ふとアメリちゃんの姿がない事に気付いた。
さっきから一切声が聞こえてこないなとは思っていたが、ベッドやキッチンにも姿が見当たらなかった。した覚えのない洗濯物が干してあるので、それをアメリちゃんがやったというなら起きてはいると思うが……いったいどこに行ったのだろうか。

「ああ、アメリちゃんなら外でちょっとばかし頼んだ事やってもろてる。ウチも寝たいし、ユウロもこんなんでどうせ今日は一歩も動けへんと思うから、丁度ええなと思ってな」
「頼み事?」
「ウチ個人の事やで、詳しくは内緒。ま、この中じゃアメリちゃんくらいにしか頼めへん事、と思っとって」
「んー、そういう事なら……」

どうやらカリンが何か頼んだらしく、外で何かやっているらしい。その内容は教えてくれなかったが、カリンの事だし変な事ではないだろう。とりあえず前みたいに一人先走ったわけではないみたいなので一安心だ。

「あ、そうそう。ちなみに、サマリの言うアメリちゃんのお姉さん、ウチ先に会っとってな」
「え?」

安心したところで、突然そう話を切り出したカリン。

「ウチ、フォルセカンの方から来たんや。そこでブランカって名前のリリムと会ってな、妹と会ってみたいから連れてきてと言われてるんや」
「そうなの!? じゃあやっぱりちょっとでも進まないと……」
「まあまあ待て」

どうやらカリンはフォルセカンの方から来たらしい。港街なので、ジパングから船でそこまで来たのだろう。そして、そこでアメリちゃんのお姉さんの一人と出会ったとの事。おそらく、私達が聞いたリリムはその人の事だ。
しかも、そのお姉さん……ブランカさんは、アメリちゃんに会いたがっているという話だ。だったら尚更早く行かなきゃ……そう思ってユウロの上から飛び降りたら制止された。

「ふらふらのまま進んでもしゃあないやろ。それに、何時までに連れていくとかは言ってへんし、しかも夫婦が交わってたから遅れたって言うなら許してくれるやろ」
「そう……かな?」
「せや。ま、安全に連れてきてくれと言われとるし、きっちり元気になってからの方がええやろ。アメリちゃんともそう話がついとる」
「まあ……そうか」

そういう事なら、今日は一日ゆっくりしたほうが良いかもしれない。慌てて行ってトラブルになるよりは良いだろう。そう考えた私は、ベッドの上に大人しく腰掛けた。たしかに、ユウロがふらふらの状態で盗賊とかに襲われたら危ないし、そのほうが良い。

「ま、もうじきお昼やし、アメリちゃんも一旦中に戻ってくるはずやから、お風呂で身体洗ったらアメリちゃんのご飯でも作ったって」
「わかった。カリンは……寝るんだっけ?」
「ああ。空腹感もあるけど今は眠気が勝っとる。ウチらは夕飯まで寝る事にするわ……」

そう言ってベッドに潜ったカリンも、あっという間に寝てしまった。

「さてと、じゃあ準備だけしてお風呂に行きますか!」

二人分の寝息が響く中、私はそう独り言を言いながら立ち上がり、お昼ご飯の準備とお風呂で身体を洗うために動き始めたのだった。
19/02/10 00:17更新 / マイクロミー
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■作者メッセージ
2話目からいきなり旅もしないし幼き王女の出番も控えめでしたが仕方ありません。
前作終盤でサマリとユウロは夫婦になったのですから折角ですしエロエロな事させないと……という事でエロ回でしたw
前作はいろんなカップルのエロがありましたが今作は主にこの二人のものになるかと。主に、ですがね……

さて、前作一時的に同行していた刑部狸のカリンが合流しました。(居るかは知りませんが)彼女のファンの皆様、お待たせしました!
今作はカリンもレギュラーメンバーです。つまり最初から最後まで共に旅する事になります!
関西弁が似非っぽいのはお許しください。関西の人間じゃないので変換サイトに頼っているので……

さて、次回は……順調に進み、辿り着いた港街フォルセカン。そこで出会ったボクっ娘なお姉さん、ブランカは今までのリリムには居なかったある特徴が……の予定

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