読切小説
[TOP]
にゃんこ忍法帳(タイトルと中身は一致しません)
我輩は、猫である。
「ワーキャットだろ?」
…ワーキャットである。名前はまだない。
「何を言ってるんだ、タマ?」
違うのだ。
私は決してタマなんて名前ではないのにゃ!
…いや、ないのだ!
「何を取り繕っているんだ?」
取り繕ってにゃんかないのだ。
我輩の名前はきっとそんな平々凡々とした名前じゃにゃく、いや、じゃなく!きっと、マルガリータとかジュリアーノとかアンネローゼとか高貴に満ちた名前のはずなのにゃ!そんじょそこらの猫とは我輩、違うのにゃー!!
「語尾、戻ってるよ。」
もう、良いのにゃ!
我輩は自分に素直に生きると決めてるのにゃ!
「はいはい、何でも良いが静かにしていてくれよ。」
このさっきから五月蝿いツッコミマシーンは、何の因果か我輩の飼い主。
普段は女子大の教授(おいしいもの?)らしいのにゃが、人間の女に囲まれてウハウハな人生を歩んでいるというのに、女というものにまるで興味を持っていにゃい。
はっはぁん?
さては、おぬし、不能でいんぽてんつないーでぃーだな?
この、なちゅらるぼーんおなにすとめ。
「やかましい!大体意味も知らんくせに同じ言葉を羅列するな!!」
黙れ、ツッコミマシーン。
そんなことより、おなにーか?
「こっちは明日提出の論文仕上げるのに手一杯なんだ!さっきから静かにしろと言ってるのに何なんだよ!!」
腹減ったから、メシよこせ。
「……わかった。ちょっと待ってろ。」
ああ、それだめにゃの!
今日はカリカリじゃなくて、お高いネコ缶がいいのー。
「…お前ね、今日が給料日前ってわかる?うちみたいな貧乏教授の家が給料前に食卓に高級ネコ缶を置けるなんて贅沢出来ません。」
じゃあ、ネコ心鷲掴みな置き方してる本の山で爪、研いで良い?
「わかった。今日はネコ缶だぞ。」
この男、貧乏のくせにやたら本を買い漁るにゃ。
おかげでいつも床が抜けそうな音がしているにゃ。
「まったく…、何でワーキャットなんか拾ったんだろ。」
お前が雨の日に濡れて震えていた生まれたばかりの我輩を拾ったからにゃ。
この、ろりこんめ。
「ロリコン違う!良いか、何でワーキャットは存在するのに猫又が存在しないんだ!つーかお前も人型の魔物っ娘なら尻尾二本の猫又になれよ!!」
無理を言うにゃ、この妖怪馬鹿。
でもこいつには教えてあげにゃいけど、ほんとは猫又も河童もいるにゃ。
大分県では河童が町に宣伝していたにゃー。
『キレイになったら帰ります。カッパ』
整形手術でもしてくるんにゃろか?
…………。
………。
……。
…。
おいしかったにゃー。
「当たり前だ、3つも喰いやがって。」
まぁまぁ、お腹もいっぱいになったことだし、やらにゃいか?
「やらねぇよ。つーかお前、フリーダムすぎだろ。」
ネコはいつでもフリーダムにゃー。
ところで、お前に聞きたいことがあるにゃ。
「何だ?」
我輩と同じ飼い猫ならぬ飼いワーキャットって、みんなせくしーに決めてるのに、何で我輩、とっくりのせーたーに、おーばーおーるのすかーとなの?
「…理由はない。何もセクシーに決めるだけが女の子って訳でもないだろう。」
ほほう、そうかそうか。
おぬしの趣味であったか〜。
露出がない方が妄想して楽しめる、とにゃ?
さすがおなにすと。
「繰り返すな!」
わかったのにゃ。
もう邪魔はしないから、存分にろんぶんとやらを仕上げるがよい。
「あたりまえだ…。」
ふんふ〜ん♪(そわそわ)
にゅにゅにゅ〜♪(そわそわ)
………(そわそわ)
にゃー!
「のわ!?何だ!!!」
暇にゃので、お前の膝の上を占拠することにしたのにゃ。
「邪魔しないをわずか3行で撤回!?」
やっぱり、お前の膝の上は最高にゃー。
寝るのにちょうど良い形とやわらかさ…。
いいしごとしてますねー。
「まったく…、じゃあそこで大人しくしていろよ?」
おや、こんなところにそーせーじが。
いっただきまーす♪
「え、あ、コラ!やめ、タマ、マジやめろって…アッーーーーー!」



我輩はワーキャットである。
名前はタマだが、誰よりもフリーダムである。
「ん?ああああああ、朝になってる!!やばいやばいやばいやばい、遅刻遅刻ちこ…、せっかく書き上げた論文に爪あとがぁぁぁ!!!タマァァァァ!!!」
我輩はフリーダムである。
ほとぼり冷めるまで、旅に出るのにゃ!!!
10/10/13 17:15更新 / 宿利京祐

■作者メッセージ
…野良仕事の後、縁側で野良猫と遊んでいたら思いつきました。
やってしまったことに後悔はしてませんが、反省してます。
楽しんでいただけたら、幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33