読切小説
[TOP]
物乃怪複鳥草紙 −河童乃巻−
 「さてさて、毎年の如く醍醐味を味わいに行くとしますか。」

 親父の爺さんが育ててくれた野菜。
 胡瓜とトマトを笊に入れて家の近くにある小川へと足を運ぶ。
 サラサラと聞こえる音が心地よく、水の流れが清涼を届けてくれる。

 「ここら辺だよな、っと。あれだあれだ。」

 整備もされていない不揃いな石ころがゴロゴロと転がっている川辺を歩き目的の場所まで向かっていく。
 突っかけの裏から伝わる石の形。
 丸いもの、尖ったもの、平たいものと感触を確かめながら進んでいき痛い思いをしながらもようやくそこへとたどり着いた。

 「痛たたっ、歳食うごとに痛くなるな。さっきなんて足の壷に直撃で入ってきたし生活考えないとなぁ。」

 石の上を歩くだけで自身の身体のくたびれ具合を感じるとは情けないことだ。

 「まあ、生活の事は後として。お楽しみお楽しみっと。」

 脇に抱えた笊を水に沈め、追加の重しで缶麦酒を四本ほどいれてその場を離れる。
 ジリジリと照りつける太陽、下流の方では子供達が人魔混じって楽しそうに遊ぶ姿があり。
 上流では野菜が冷えるのを待つおっさん(俺)が一人。
 川に入ることも考えたが大の大人が川に浮いているのも変な話だろう。
 どうするかと考えていると、仕事の疲れが出てきたのかウトウトしてきたので土手の斜面に寝転がり麦藁帽子を顔にかけて昼寝をすることにした。
 蝉時雨、飛行機の貫くような動力音、子供達のはしゃぎ声。
 深い眠りと合わさって夢の中で何か語りかけてくるものがいる。

 「・・・!・・・丸!」

 「ええぃ!これでどうだ!」

 眠りの世界からいっぺん、頬に当たる冷たい感触で夢から現実に引き戻されて勢いよく飛び起きた。

 「冷てぇ!?何するんだよ!おい!」

 「あははは。ごめんごめん、折角会える時期が来たのに。いざ会ったら寝てるんだもの。ちょっとぐらいいいでしょ?」

 片手に持った缶麦酒を左右に振りながら、悪気もなく微笑んでいる女性に文句を言う。

 「寝てて悪かったと思うが疲れてたんだよ。もうちょっと優しくしてくれてもいいだろ?」

 「最初は優しくしてたよ?でも、それじゃ起きなかったんだもん。」

 頬を膨らませて抗議してくる。
 彼女は清水 緑、俺がここに来たもう一つ目的のやつだ。

 「もうちょっとマシな起こし方があっただろうが。」

 「あれが一番効果的なんだもんね。」

 「効果的なんだもんね。じゃねぇよ!ん?」

 怒りの方に気をとられていて気がつかなかったが、笊の方に視線を向けてみると何かが足りない。
 缶麦酒を一本緑持ってるのはいいとして、更に足りないものがある。

 「み、緑ぃ〜。」

 「河童の好物を無防備に置いておく方が悪いんだよーっ。」

 舌を出しながら川の中へと逃げていく緑。
 彼女は俺が冷やしていた胡瓜を全部平らげて麦酒も一缶開けて飲んでいたのだ。
 持っているのは二缶目・・・。
 俺の醍醐味が減ってしまった!

 「まぁてぇ!許さん!」

 緑を追いかけて川の中へと入っていく。
 そういえば、最初に出会ったのもこんな感じだったな。
 一五年前のこの日、十歳の俺は爺さんと婆さんに頼まれて野菜を冷やしにこの川に来ていた。
 そして今日の様に昼寝をしていたら、笊の中の胡瓜を全部食べられてしまったのだ。
 それから毎年のように笊にいれた胡瓜の攻防戦が御盆の川辺で繰り広げられていったんだった。
 思えば、あの時から気になっていたのかもしれない。
 昔の事を思い出しながら深いところ、浅瀬へと追いかける。
 流石河童と言ったところか深い川の中では敵わず、浅く水が少ないところで距離を詰めていく。
 明らかに加減をしてくれているのが分かったので、後僅かまで迫ると大きく飛びかかり覆い被さる。
 水飛沫が上がり浅瀬に押し倒す形となったがやっと彼女を捕まえる事が出来た。
 だが俺は捕まえた後どうするかを考えてなかった。
 本当は会って、野菜を食べながら話をして酒を飲みながらあれを渡そうと思っていたのだ。
 それがこんな状態。
 互いの顔が近くにあり次第に心拍数も上がり紅くなっていくのが分かる。

 「ねぇ。捕まっちゃったよ?私、この後どうなるの?」

 「あっ・・・。うっ・・・。」

 どうしていいか分らずにとりあえず緑から離れようとするが、腕を伸ばされて引き寄せられ耳元で囁かれた。

 「胡瓜食べちゃったお詫びに、私を食べていいよ。」

 「えっ・・・?」

 ぎょっとする言葉を聞き、返事をしようとすると。

 「んぅ・・・っ。」

 彼女が俺の口を自分の口で塞いできた。

 「ねっ?食べて・・・。」

 濡れそぼった唇を離しながら、懇願してくる緑の顔を見て俺の理性は脆く崩れていく。
 追いかけまわしてる時から股間の息子は危ない状態だった。
 水に濡れて肌着の上から見える水着とわずかな膨らみ。
 後ろからしか拝めない形の良い尻。
 そして押し倒した時に見せた恥じらいの表情。
 我慢などできるはずもない。

 「緑、いくよ?」

 「うん。きてぇ・・・。」

 ズボンのチャックを降ろして、水着の上から緑の割れ目に肉棒をあてがう。
 少し意地悪をし、擦ってやると鈍い刺激と共に甘い声が漏れてきた。

 「うぅん・・・。ねぇ擦らないで早く入れてぇ・・・。鳥丸に食べられる様に私も君の胡瓜が食べたい。」

 その台詞で更に歯止めが効かなくなり。
 阻んでいるものをずらして、鮮やかな淡い桃色をした淫肉へと反り返ったものを沈めていく。
 膣内は侵入してきたものを拒むかのように狭く、力を込めて奥へと入れていくと何かを突き破った感覚と共に痛みの混じった声が耳に届いた。

 「いぎぃ!?や、やっぱり。は、はじめてって・・・。いたいんだね・・・。」

 言葉の意味を確かめるために繋がっている部分を見ると、そこから川の流れにのって赤く染まったものが水へ溶け込んでいっている。

 「は、初めては・・・。君に、君にあげるって・・・。決めていたから。」

 処女を捧げられたということが、理性を取り戻させて頭の中を落ちつけていき性欲が慈しみへと変わってく。

 「ありがとう。出会いはあれだったけどずっと見ててくれてたんだな。」

 「うん。こうしてもらえるまでの十五年は長かったよ。」

 「こうなってから言うのもなんだが緑・・・。」

 「なに?」

 「お前の事ずっと好きだった。出会った時から。」

 「私もだよ・・・。胡瓜を食べたのは君に私を見て欲しかったから。」

 「毎年のように懲りずにあそこで野菜を冷やし続けていたのも緑に会いたかったから。」

 「食べた後凄く怒ってたから、次の年は来ないと思ってたけど。ずっと来てくれてたから嬉しかった。」

 「緑・・・。」

 「好きだよ。鳥丸・・・。」

 軽い触れるだけの口付けをしながらギュッと抱きしめ合い。
 川のせせらぎを聞きながら緑の痛みが引いていくのを待つ。
 しばらくして、彼女がモジモジとしだしたので、続きを始めていく。

 「ねぇ・・・、動かしてもいいよ。奥がうずうずするの。」

 「わかった。」

 実を言うと膣の締め付けが気持ち良すぎて限界状態になっており、これ以上の我慢はできなかった。
 腰を引いて叩きつけるように打ちつけていき淫肉を貪り始める。

 「あくっ!い、いきなりはげしい・・・!」

 「あっ・・・!かはぁ!ああぁぁ!!」

 求めるように締め付けてくる膣に応えるように笠の部分で掻き、竿の部分で押し広げ快感を分かち合う。
 水が弾け飛ぶ音と肉同士がぶつかり合う音が辺りに響く中で獣のように交わる二人。

 「はぁっ!くあっ・・・!ううぅ・・・!」

 「ああぁぁ!はぁっ!はあっ!」

 荒い息使い再び重なり合う唇、媚肉が肉棒に絡まりつくだけでなく舌同士も絡まり合い身体中の快楽を高め合っていく。

 「ふっ・・・、ぁふぅっ・・・!」

 「ふんっ!ふぅ・・・、んっ!」

 思考が、水が、日差しが、夏という季節が全てが一つに溶けていく感覚になっていき。
 これがずっと続けばいいのにと酔いしれて愛し合っていった。

 「はぁ・・・。と、とりまる。わ、わたし・・・。」

 「俺も射精そうだ。」

 限界まで高まり、膨れ上がったものが精を吐きだそうとするので膣内から抜こうとするが腰をがっちりと固定されて奥へと導かれていく。

 「み、緑?」

 「な、なかに・・・。ああぁぁ!ほ、ほしいのぉ!」

 行き場がなくなり、子宮口にぴったりとくっついた所で我慢ができずに彼女の中で果ててしまう。

 「くあああぁぁぁ・・・。あ、あついぃぃ。」

 「うあぁぁ!」

 一頻り射精し終わったところで互いに落ち着いていきまた口付けをする。

 「んぅ・・・。」

 「ちゅ・・・。」

 行為後の余韻に浸っていると視線を感じ、そちらに顔を向けるとそこにはトマトを齧りながら麦酒を飲んでいる河童がいた。

 「はぁ、やっと終わった。貴方達、べつにやるのは構わないけど大衆の目と場所を気にしなさい。人を遠ざける身にもなってよ。」

 「えっ・・・?」

 辺りを見回すと遠くの方だが子供達がこちらを見て口付けし合ったり、大事な部分を見せ合ったりしていて。
 親御さんたちも自慰をしたり人目を気にせずに交わり合っている光景が見える。

 「お、お母さん・・・。なんでここに?」

 「お袋さん?」

 「緑が朝からそわそわしてたから心配で見に来たのよ。そしたらこれでしょ・・・。ほら、二人とも行くわよ。」

 気だるい身体を起こして、緑のお袋さんについていく。
 陽は落ち始め、西日が差す土手の上を三人で歩いていると俺の腕に緑が寄り添ってきた。

 「まったく、妬けるわねぇ。で、どうするの?」

 『えっ?』

 「えっ?じゃないわよ。一旦帰って来るの?それとも彼の所にいくの?」

 「・・・、くるか?緑。」

 「・・・、うん。」

 「はいはい、御馳走様。あっ、そうそう。これ返しとくわ。」

 渡されたのは空の笊で、そこで俺は気付く。
 ・・・醍醐味が。
 彼女のお袋さんと別れた後、緑と俺は祖父母の家に向かっていた。
 緑を紹介するために。

 「なあ、待たせ過ぎたお詫び。受け取ってくれないか?」

 ずぶ濡れの恰好で歩きながらポケットから小さな箱を取り出して彼女に渡す。

 「何?これ。」

 箱を開けてもらうとそこには翡翠の指輪が入れてある。

 「これって・・・。」

 「買うのに時間がかかってな。すまなかった。」

 「遅いよ・・・。でも、嬉しい。」

 「結婚してくれないか?」

 「喜んで!」

 俺はこの夏、大切な人と会い。
 大切なものを手に入れた。
11/08/16 02:08更新 / 朱色の羽

■作者メッセージ
 家の近くに川があり、そこで涼むのが毎年の楽しみです。
 涼んでいる時に思い浮かんだこの話。
 いかがだったでしょうか?

 感想、御意見、誤字脱字の報告等ありましたら感想の方からご連絡くださいませ。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33