読切小説
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悩む貴方様のお命頂戴。
とある反魔物領の小さな砦にて、すべてが始まった。


「貴様ら、何をやっておるか!」
「げっ、隊長……」

隊長と呼ばれるその男が怒りを表情に表している理由は
彼の部下である複数の兵士たちが、中庭にて捕らえていた魔物を木に縛り
鞭や棍棒を使って嬲っていたからだ。


「貴様らぁ…捕虜である魔物の数が足りんと思って探してみれば……」


その男は木に縛られていた魔物、メドゥーサを見れば息を呑んだ。
全身が傷だらけであり、本来あるべき美貌が酷く崩れてしまっていた。
目も布で隠され、石化能力を封じられている。

「ですがね隊長、こいつ生意気なんですよ!
捕虜で魔物の分際で生意気な口利きやがって…身の程を教えてやろうと…」

「馬鹿者がぁっ!!」

【ばきぃっ】「がはっ!?」



その言葉を聞くや否や、彼は部下を殴り飛ばした。


「だからと言ってこのようなことが許されると思っているのかッ!
貴様らもそうだ!大勢で一人を嬲るなど、外道のすることだっ!
貴様らは偉大なる主神の名を元に戦う我ら教会兵がこのようなこと………」

「お、お言葉ですが隊長!!こいつらは魔物ですよ!?
元来我々の敵である存在に対して隊長はなにをそこまで………」

「人間だろうが魔物だろうがの問題ではない!
己の行いの残虐性に気づけと言っているのだ!」

「で、ですが………」


いくら言っても魔物だからという理由で反省の色がない部下たちを見て
彼はあきれ返ってため息が出た。

「話にならん……もう良い!貴様らの処分は改めて報告する!
それまでは自室待機だ!一歩たりとも外には出るなっ!」

「りょ、了解…」

未だ納得のいかない顔を覗かせながら、部下たちはその場を後にした。
しかし去り際にもブツブツと、恐らく自分に対する文句を零しているであろう
その現状に隊長は落胆した。

(なんということだ……、魔物という理由でなぜここまで残酷になれる?
俺にはとても理解ができん……)

この隊長は、教会の兵隊長ではある。
しかし日頃、魔物に対して見せる人間の残酷さに戸惑いを隠せないのだ。
そしてついには自分の部下までこのような暴挙に出た。
彼にとっては苦痛でならない現実だった。


「うっ……うぅ…」
「あっ…」

そして木に縛られ、傷だらけで涙を流すメドゥーサの姿に彼は戸惑いを見せた


「………俺から言っても詭弁にしかならないだろうが…
………許せ、俺たちにとって魔物は憎まなければならない存在なのだ…」

「ひっ……ごめんっ……ごめんな…ごめんさぁあいいぃ……ひくっ…」

「………許せ」


石化能力があるため目に縛られた布を解くことはできないが、
縛ってあるロープを解き、回復魔術を使い傷を癒せば
彼はそのメドゥーサを再び牢へと連行した。



(本来…人間とは心優しい存在のはずだ、
だがなんということか…魔物という存在がそれを歪めてしまっているのか?
それともコレが人間の本来の姿なのか………
これでは一体どっちが魔物だかわかったものでもない………ん?)


廊下を歩きながら彼は壁に目を向けたがそこにはなにもなかった。

(………気のせいか?)

「……いかん疲れているのか、…今日は早めに休むとしよう……」


頭を抱えながら、彼はその場を後にした。
しかし彼が去った後、なんとその壁が剥がれと思ったら
そこにはその壁とまったく同じ色合いをした布を持ち
彼の去った後を眺めていた一人の魔物が潜んでいたのだった。


「…………………………」





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隊長室にて深夜、彼は疲れた体と頭を休めるためベッドで横になっている。
しかし眠れないのか、うっすらと目は開いている。

(魔物を滅す、それが人類にとっては一番の幸福だと神父さまは言っていた
だが、人の残酷な心が残って本当に幸福といえるのだろうか………)


暗闇の自室のなか、思考にめぐっている彼は気づかなかった。
その暗闇から忍び寄る影に………、
気づいたときは既に口と手足を押さえられていた時だった。

「むぐっ………!?」(な、なにっ!)

暗闇からの突然に彼は驚きながら、
自分を拘束している相手の姿を闇に慣れた目で確認した。


前髪が片目を隠し、後ろに結んだ黒の長髪。
もう片方の目は鋭く、まさに獲物を狙う狩人の其れであった。
そしてその正体が魔物であるとわかったのは、
妙にチラリズムが強いその格好だった。

(ジパング人かっ!?
い、いや…よく見れば尻尾が…それに耳も鋭い…まさかジパングの魔物か!?
初めて見る類だが…………くそっ、俺をどうするつもりだっ!?)

彼は立場上、この砦を指揮している立場にある。
そう考えれば容易に想像もできる。

(…………暗殺かっ)

力ずくで拘束を振りほどこうにも、
特殊な体技なのか、力が入らず、手足と口を器用に封じられている。

「………無駄な抵抗はよせ…」

小声ながら、その透き通った声に一瞬魅惑的なものを感じたが、
今から自分が殺されるという恐怖が其れを打ち消した。

「…………………」

するとその魔物、クノイチは男を黙らしていた手を解くと、
自身の口元を隠しているマスクを外しはじめた。

「お、おい誰かングゥッ!?」

今のうちに大声を出そうとした男だったが、
突然そのクノイチから熱烈なディープキスで妨げられてしまった。


「んっ!?んんぅ……んっ…!」
「んっ……ちゅ…はぁ…」

目を閉じ自身の唇を夢中で吸い付くその姿に男は戸惑った。
しかし自身の口を蹂躙する相手の舌がさらに男を混乱させる。

(う…おぉっ…)

日頃自身に付きまとっていたはずの思考すらも妨害してくる
クノイチの舌はそれほど強烈なのだ。
そしてやっと相手が唇を話すと、戸惑った頭で男は問う。

「………なんのつもりだ?」
「……………………暗殺だ」

相変わらず鋭い目つきのまま、静かにクノイチは言った。

「……慰みものにした後に殺す気か」
「…………………いずれわかる……」
「なに?お、おいっ!?」

疑問を聞く暇もなく、クノイチは彼の衣服を剥ぎ始めた。
しかし向こうの思い通りにさせるかと思い抵抗するも、
自分が知らない妙な体技でその抵抗も虚しいものとなる。
すると彼女は彼の上にへと跨り始めた。

(………なぜだ?……大声を上げて仲間を呼ぶべきなのに……)


できない。そう気づいたときは既に遅かった。

「お前……さっきの口付け……まさか声を出せなくする毒を…」

しかしクノイチは頭を横に振った。
一見は冷酷な印象を与えるが、頭を横にふるその仕草がどこかかわいらしい…

「………貴方様の本能…」
「本能…?それに…なんのことだ、『貴方様』とは……お前は一体…」

しかしその質問の返事は返ってこなかった。
しかし変わりにクノイチ自身が衣服を脱ぎ始めたという現実が帰ってきた。

「お、おい…なんのつもり……んっ!?」

そして再び唇を唇で塞がれてしまった。
さらに彼女の拘束していた手はいつの間にか男の逸物へと移っていた。
クノイチとは静なる存在でありとても華奢で想像できないテクニックを持つ。
そんな彼女の手で逸物を扱かれては堪ったものではない。


「んぅっ…!?」(よ、よせ…やめろ……くっ…なぜだ…体が……)

拒めない。目の前で自分のことを愛おしそうに
口付ける魔物を拒むことが男にはできなくなっていた。
それどころか…彼自身、目の前の魔物に心動かされ始めていた。

「…………んっ……」
「…………………!」

そこで初めて男は自身のほうから相手の口内に舌を入れ始めた。
それにクノイチは反応したのか、
鋭い目が僅かに開き、みるみるとおっとりとした目になっていった。
男はそれに気づいてはいるものの、暗闇で完全には見えない……
そこで枕もとの机に置いてある小さな蝋燭に魔術で火を付けた。

「あっ………」

部屋が僅かに明るくなり、初めてはっきりとクノイチの顔を拝むことができた
本来、物陰に潜むべき存在である自分が正面から異性に顔を見られている。
それが恥ずかしいのかクノイチは顔を赤くし俯いてしまった。

「………綺麗な顔をしているのだな…」
「……!………有難う…御座います」

相当恥ずかしいのか、自分の顔を見ようとしない。
しかし彼はそんな彼女の両頬を優しく手で押さえると
今度は自分から彼女の口内を蹂躙し始めた。

「んっ……はぁっ…んっ…」
「ちゅ……ああぁっ…んっ」

先程とは打って変わった激しい口付け。
いつの間にか、彼女の両手は男の両肩へと移動しており、
男もキスの最中に自身の手で彼女の頭と背中を優しくなでていた。
しかし次第にその手も彼女の豊かな乳房を揉みにかかった。

「あぁっ……あっ!」

必要最低限にまでクノイチは声を抑えているが、
迫りくる快楽に成すすべもない状態である。
しかしそれでも彼女はクノイチ、受けより攻めが強いのだ。
彼女は男をベッドにへと押し倒し、首筋や鎖骨を舐め回すと男の体も
十分なくらい反応した。

「う……おっ…!」

それを確認するとここで始めたクノイチは自身の下半身を相手に晒した。
すでに興奮が彼女の体全身を蹂躙し、アソコはすでに洪水状態だ。

「クールなようで、かなり淫乱だなお前…」
「……………………」

声にこそは出していないが、
ウットリした目元と赤くなった顔がすべてを物語っていた。
しかしこれ以上の言葉もクノイチには無用、
自身の割れ目を男の逸物に合わせると一気に腰を下ろした。

「……………っ!!」

そして全身の痙攣とともに、アソコから赤い液体が流れ始めた。

「お前…!はじめ…んっ!?」

其れを見て男は抵抗を感じたが、彼女の唇によってそれすらも防がれ、
尚且つクノイチは自身の腰を降り始めたのだ。
その快楽に男ももはや遠慮すらも消え失せ、口内を蹂躙し合ったまま、
彼女の腰を優しく掴んだ。

「ああっ……はぁっ……あんっ…!」

必死で声を押し殺しながら快楽を味わうクノイチのその姿に
男は余計に興奮するものを感じた。
そして部屋には二人の腰がぶつかり合う音といやらしい粘着音だけが響く。


「げ、限界だ………出すぞっ…!」
「…………………………あぁ…!」

声を必死で押し殺し、クノイチの頭は縦へと振った。
そして互いに押し寄せてきた波に二人は絶頂した。

「はぁ………はぁ…」
「………はぁっ…ん」

男の隣で横になったクノイチであったが、
それを見た男は堪らなく愛おしく感じ、彼女を抱き寄せるのであった。
もはや彼の頭には敵対しているはずの魔物であるという概念は失せていた。
しかし次第に自身を襲う情事の後の睡魔が彼を夢の世界へと誘った……。



目を覚ましたとき、隣には彼女はいない。
それどころか自身の衣服やベッドすらも完璧に元通りとなっている。

(あれは…夢…?………いや…)

だが彼は自身の枕元にある机の蝋燭の短さを見てあれが現実だと確認した。






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それから数日が経った、彼が治める砦は今大混乱である。
魔物の軍勢が攻め寄り、砦は囲まれた状態であった。
しかし砦の兵士たちは篭城して援軍を待っていたが、
その戦いの結末は意外な形で決着する。


「……ずっと考えていた、魔物は我々にとって敵か。
だがもう良い、俺は昔から人間の心のあり方というのが好きだった。
ならば、今俺の心にあるこの気持ちに嘘は付けない………
部下たちを裏切るのは心苦しいが……コレばかりはどうにもできん…許せ」


その言葉を最後に、男は砦地下に捕らわれていた魔物たちを解放した。
さらにその混乱に乗じ、砦の門を開け戦いに終止符を打ったのだった。




その後、彼の功績を元、魔王軍は彼を軍にへと迎え入れたが
「もはや国を裏切った自分が戦場にいる価値はない」
と言って軍の退役を決意。

魔王軍は先の功績の元、彼の生活の保証を約束した後、
彼は世話になった親魔物派の町を後にした。


(行くあてなど俺にはない……
だが…一人でなら、またお前に会えると俺は期待した……)


そして道行く彼の後ろに近づく人影。
彼が其れに気づいたのは後ろからあのクノイチに抱きしめられてた時だった。


「……ああ、またお前に会えるこの瞬間を待っていた…」

「……はい、私もだ………貴方様……。
あの砦で………見たときから………ずっと愛してました……」


男が振り返ると同時に互いに抱きしめあった。
一週間も経っていないはずなのに、まるで数年ぶりの再会のように思える。
嬉しくて涙が出てしまいそうになった。


そして彼らは互いに手を取り合いその場から姿を消した。
その後彼らを姿を見たものは誰もいない、
しかし愛しい彼と手を繋ぎ歩いていくその姿は、
もはやクノイチではなく一人の恋する女。



最後に二人を見かけた君はきっとそう思うだろう…………。









12/02/28 23:39更新 / 修羅咎人

■作者メッセージ
ウォラッーー!!クノイチ初投稿!!

…………って!!
遅かったぁーーーーー!!

チクショーーーーーーーーーーーーーッ!!!(←アナゴボイス)

野郎・オブ・クラッシャーーーーッ!!(←ベネット)
(↑ネタですので悪意はないです!もし気分害したらすみません!)


もうやだなにあのかわいい見た目……、
ワシの好きな魔界戦記ディスガイアに登場する女忍者みたいで……堪らんわ!

できる限り図鑑の説明に基づいて書きましたが如何でしたか!?

とりあえず、コレ投稿した後も、連載のほう手がけないといけないから
忙しい忙しい………、クロビネガ界のこれからのクノイチの活躍に期待ですな

それでは!

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