連載小説
[TOP][目次]
5件目 『お仕事、拝見します』
「治安維持っていう名目で、トウカの仕事っぷりを見させてほしいんだけど…いいかな?」
「別に構わないっすよー。仕事が来ないこともあるっすけどー」

探偵事務所『狸の穴』。
メイキングByトウカのわりに事務所の内装は意外に質素。
至るところに書物が乱雑に置かれているが、不思議と息苦しさは感じない。
むしろ落ち着いた雰囲気に心が落ち着いていくのがわかる。
顧客から相談を受けるには最適な環境である。

「あともう1つ。この街で仕事をするには領主様直々の許可が必要になるんだけど、あの人は基本的に多忙の身だから、いつもエリィに代行してもらってるんだ」
「ほむほむ。要するにーベルさんとエリさんがうちの仕事を見学するってことっすねー? 了解っすーノ」

よし、トウカのOKが出た。
あとはエリィの予定さえ合えば……

「実はちょうどー数件の依頼を請け負ってるんすよねー。次はいつ仕事が来るかわからないっすからー、見学するならー今がベストだと思うっすよー」
「あ、そうなの? うーん…ならすぐエリィに連絡取ってみる。大丈夫そうならまた来るよ」
「っすーノ」












数刻後。

「トウカさん、本日はよろしくお願い致します」
「っすーノ」
「査察の主旨はベルから聞いての通りです。半日の間ですが、お仕事を拝見させていただきますね」
「なんか照れくさいっすねー」
「まぁいつもの感じで頼むよ、トウカ」
「ほいっすノ」

そんなわけで、エリィと一緒にトウカの探偵業務を見学することになった。
探偵という職業には興味があったため、この時けっこうワクワクしていたことは内緒。












1件目……転職相談。

「……それで、嫌だと言っても中出しばっかりされちゃうんです。わたしが強く言えないことをいいことに……グスッ」
「風俗も大変っすねー。でもーそれはお客さんの我が儘ボデーが原因だと思うんすよねー」
「わたしの、ボデーが?」
「そっす。サキュバスなんすからーもっと自信を持つっすー。この際男が自分から止めてくれと懇願するまでーじっくりこってり絞り取ってやるのが1番っすよー」
「でも……」
「お客さんの噂は聞いてるっすよー。歓楽街でトップクラスの売り上げらしいっすねー」
「………」
「風俗での仕事はーお嫌いっすかー?」
「いえ…そんなことありません。男の人に気持ち良くなってもらうことが、わたしの生甲斐ですから」
「ならー迷うことないじゃないっすかー。良い女に中出しするのはーある意味男の夢っすよー? その夢をー極上の環境で叶えてあげられるのはーお客さんだけだと思うんすよねー」
「わたし、だけ……」
「そっす。中出しされた分だけー男は最高に幸せを感じてるっす。それを忘れちゃダメっすよー」
「はい……はい! ありがとうございます! わたし、これからも頑張ってイケそうです!」

サキュバスは勢い良く席を立つと、

「なんだか無性にムラムラしてきちゃいました! その辺の男性を捕まえて、早速ヌキヌキしてきます!」
「その意気っすー。頑張って骨抜きにするっすよーノ」
「はい! 本当にありがとうございました!」

探偵事務所を出るや否や、偶然歩いていた男性に飛びかかった。

「いやー、良い事した後は気分がイイっすねー」



転職相談……依頼達成。












2件目……浮気調査。

「なるほどー。旦那さんの浮気相手はバーテンダーさん(ホルスタウロス)だったんすかー。1週間粘ってようやく尻尾を掴んだっすよー」

トウカはバー店内の死角から小型のカメラで浮気現場を撮影(1秒間16連射)。

「はわー、周りにお客さんもいるのにディープキスっすかー。なかなか大胆っすねー」

そう言いながらもカメラによる撮影を止めないトウカ。
それと同時に時刻と状況を事細かにメモし、旦那のアリバイを潰しにかかる。

「ほむ、こんなもんっすかねー。あとはー奥さん(ミノタウロス)に報告っすねー」

悠々とバーを出ていくトウカ。

「旦那さんの今後が楽しみっすねー、ははー♪」



浮気調査……依頼達成。












3件目……犬の散歩。

「すっすっすー♪」
「ハッハッハッハッハッハッハッハッ♪」

テクテクテクテクテクテクテク…………



犬の散歩……依頼達成。












「そんなわけでー、今日のお仕事はこれで終了っすーノ」
「はい、お疲れ様です」
「依頼内容はともかく、けっこうきっちり仕事してるんだな」
「当然じゃないっすかー。何事も信用第一っすからねー」

仕事分の報酬を嬉しそうに数えるトウカ。
至って真面目に仕事をしているトウカに驚くと同時に、多種多様な業務をこなす彼女のポテンシャルに感心してしまった。
しかし、3件目は探偵事務所に頼むべき仕事なのだろうか?
まぁトウカが引き受けているのだから口出しはしないが……。

「業務内容に不正なし。報酬金も規定内に抑えられています」
「というとー?」

エリィは慣れた手つきで書類にサインをすると、顔を上げニコリと微笑む。

「今後もこの街のために、精一杯頑張ってください♪」
「あざっすーノ」



かくして、トウカの職務見学は無事幕を下ろした。
話を聞くと、今日の職務内容以外にも実に様々な依頼を請け負うことがあるそうな。
面白そうだし、今後もちょくちょく事務所に顔を出してみるかな―――





〜探偵事務所・本日の業績〜

・転職相談1件 解決済み
・浮気調査1件 解決済み
・犬の散歩1件 解決済み


17/11/28 22:02更新 / HERO
戻る 次へ

■作者メッセージ
何でも屋さん、近くにいてくれると助かりますよね

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33