読切小説
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とある捕虜の話
「・・で俺は捕まったってことか?」
荷台の上から両手を拘束されたまま下と話し続ける。
「そうだ。それはそうと戦場での活躍は聞いたが、本当のことか?」
「噂がいつも真実どおりとは限らないだろ?」
それに先程から応じているのはケンタウロスのラウ・リーサ。
なんでも今から連れていかれる村の中ではかなり強いうちらしい。
去年結婚したとかそんな話もチラチラ耳に入ってきている。

「そう言えば名前を聞いていなかったな、お前名前は何と言う?」
「俺か?レング・フリジス。教団の中じゃレンって呼ばれてたな。」
「そうか」
この会話を最後に会話は途切れた。
聞きたいこと、必要なことは聞き終わったかららしい。
どうやら、あまり無駄話をする方ではないようだ。
暇だな、と思いつつ俺はひと眠りすることにした。
長い間暇になりそうだし、抜け出す手段も見つかりそうにないからだ。


目が覚めるとそこは意外にも客室のような部屋だった。
正直独房の中にぶち込まれると思っていたのだが・・
戸惑っていると、一人魔物が入ってくる。
それはカマキリの魔物マンティスだった。
「こっち、手続きとかするからついてきて」
話すのは苦手なのだろうか?
そう思いながら後ろをついて歩いていると「忘れてた」といい

「・・変なことしたら、これで腕を使えなくする。」
いきなり後ろに周られ両手を鎌に押しつけられた。
突然の出来事に固まっていると、また俺の前に出て歩き出しながら
「大丈夫、今のは冗談。緊張してるみたいだったから」
と冗談には聞こえない無感情な声で告げられた。
この子なりの気遣いなのだろうが、実際もっと緊張した気がする。

その一件の後互いに無言のまま歩き続けていると
いきなり大きな扉の前で歩みを止めた。
不審に思い隣を見ると「ここ」と言って扉を指している。
「・・俺一人で、ここに入れってことか?」「・・(コク)」
どうやら案内はここまでらしい。
軽く礼を告げ、扉を開けるとそこには小さな巻き角のバフォメットが
これまた小さな胸を誇らしげに張っていた。
「むっふっふ・・ようこそ、我が村へ・・」
その横には長い体を艶めかしくくねらせにやにやと笑み
「これはこれは・・また良い人そうねぇ・・」
こちらを見ているエキドナがいた。
恐らくこちらが村長だろう。

「ええと、よろしくって言えばいいのか?村長さん。
捕虜がよろしくってのもどっか変なもんだけど」
と{エキドナの方に向かって}挨拶する。
瞬間、部屋がまるで時がとまったように静かになった・・気がする。
(なんだ・・?まずいことは言ってないよな・・
はっ、態度が少し軽すぎたか・・!?)

しかし、エキドナの方は口元を押さえたかと思うと
「・・っ、ぷっ・・あははははっ!!
まぁ、最初にはそう思うわよね!捕虜さんっ!・・っ、くく・・はは・・!」
ポカンとする俺をよそにげらげらと笑い転げている。

一方、バフォメットの顔は真っ赤に染まり
「笑うな!笑うでない!
貴様も貴様じゃ!どう見てもわしが村長じゃろうが!?」
「いや、正直子供にしか・・」
「なんじゃと!う〜、もう嫌じゃ!今日は帰って兄者に慰めてもらう!
ラニル、後はお主がやれ!いつまでも笑っておるでない!」
そう言うとついに部屋をでていってしまった。

「はいはい、んもう、貴方もメイのこと虐めすぎよ?」
明らかに自分の方が馬鹿にしていた気がする。
「もしかして、さっきのが村長さん?」
「ええ村長で私の友達、メイノス。
まぁ、私はメイって呼んでるけどね」
あなたは呼んじゃ駄目よ?と言いつつ彼女は席に座った。
「それじゃ、始めましょうか。あなたはそっちに座って?
大丈夫よ、罠なんか仕掛けてないわ。」
嘘を言っているようには思えないので、
言われたとおりに彼女の向こう側に座る。

「では、第一の質問ね。
あなたは魔物は嫌いな方かしら?」
「嫌いじゃないな、普通ってとこか」
すると意外そうな顔になった。
「あら、なのに教団に入ってられたの?」
「半ば無理やりって感じでもあったけどな」
今度は納得顔になりうなずく。

「なるほど。じゃあ、次の質問ね。
この中で、一週間共に過ごすならどの子が良い?」
「・・なんだそりゃ。本当に質問か?」
「そう言う決まりなのよ、どの子が良いの?」
そう言って、出された紙には、セイレーン、サンダーバード、
ワーシープ、マンティスの4つの種族と説明が書いてあった。
・・うるさいのは苦手だ・・あまりべたべたされるっつうのもな。
そう考えると自ずと答えは絞られていた。
「マンティスだな。静かで必要以上に干渉されないのが良い。」
「マンティスちゃんね・・分かったわ。」
言いながら、手元のペンを走らせていく。
その後も、いくつかの質問・・互いの自己紹介や森が好きかなど
もはや雑談というレベルのことを聞かれた。
そして・・最後の質問が来る。

「それじゃ、最後の質問ね。」「分かった。」
どうせ下らない質問だろうと思い、あくびをする。
しかし・・
「あなたは、童貞かしら?」「・・なんだと?」
来たのは俺にとってかなり、いや最もつらい質問だった。
というのも・・耐え難い記憶のせいだ。
「・・・いや、童貞じゃ・・無い・・」
「あら、妻子持ちかしら?これは悪いことを・・」

「違うッ!!そんなんじゃないッ!!」

つい声を荒げてしまったのに気付いたのは、目の前に居るラニルが
目を見開いているのを見た時だった。
気まずくなり、俯きつつ弁明をする。
「・・いや、すまない、ごめん。
どうしても・・思い出したくない事を思い出しちゃったもんで・・さ」

しばらくの静寂の後、口を再び開く。
「・・聞いてもらっといた方が良いかもな・・あんたが嫌じゃなきゃだけど」
「・・聞かせて頂戴、あ・・少し待ってね、一人呼ぶから。
さぁ、入ってらっしゃいな?立ち聞きは良くないわ。」

そう言うと扉が静かに開き・・一人のマンティスが
正確には先程案内してくれたマンティスが入ってきた。
「・・ごめんなさい、大声が聞こえて気になったから・・」
相変わらず声は無感情だったが、何処となくすまなそうに聞こえた。

「・・なんで、この子が聞く必要があるんだ?」
「貴方・・さっきマンティスを選んだでしょう。
だから、これから一緒に住まうなら必要だと思って。」
監視・・とは思いたく無かったが、有り得ぬ話でも無い。

「分かった・・じゃあ聞いてくれ。
あんまり思い出したくないから手短に行くぞ。
本質を述べるなら・・そうだな、強姦されたってのが正しいか。」
二人は静かに話を聞いてくれている。
「俺は反魔物領の出身でさ、子供のころ無理やり教団に入れられて
なんでも童貞が狙われるからその対策って事で、された。
ほかにも同じようなのがいたけどそいつらは、
俺が協力してなんとか逃げることが出来たんだ。
でも・・俺はドジっちまって、拷問だとばかりに皆にまわされた。
5人くらいだったけな・・それからその事が怖くなって、
逃げようとしたらまたするぞって、ずっと言われ続けてた。
それで今まで来たって、とこだな。」

話し終えるとラニルはいきなり涙を流していた。
マンティスの方は動かないが、視線を下に落としている。
「そん・・な、事がっ・・ごめん、なさいね・・こんなことっ、聞いて・・」
「いや・・良いんだ、実際助けてくれたようなものだから。」
「え・・助けた・・?どういう事?」
「俺の部隊が負けて、ほんとは少し嬉しかったんだ。
もうこれで教団の支配下じゃなくなるって。」
「・・そう、じゃあ、助けたってことになるわね。」

それを聞けて良かったと泣き止むと、
「これで、質問は終わりよ。
空き家があるから案内してあげて、フィーセ。
場所はリスタさん家の隣だから。」
そうマンティス、いやフィーセに指示を出した。
フィーセは黙って頷くと、こちらに歩いてくる。
「・・私は、フィーセ・シックル。
これから一緒によろしく、ってことになる。」
そう言って、鎌を差し出す。
恐る恐る握り返すが、思っていたほど痛くは無かった。

「あ、ああ。こちらこそよろしく、俺は・・」
「レング・フリジス。
知ってる、さっき名簿を書いてきたから。」
そう言い、とことこと歩き扉の前に行き、振り向き言った。
「・・ついてこないと、置いていく。ついてこないの?」
それに対し「ちょっと待ってくれ」と苦笑いしつつ俺はラニルに向き直り、
「じゃ・・またな。俺はなんとか馴染めるように頑張るからさ。」
「えぇ・・じゃ、頑張ってね。」
礼を告げると、フィーセと共に部屋を出た。


家に着くまでは互いに無言だ。
もう二回目だったので慣れたものである。
しかし意思疎通なんかは大変そうだな・・と考えているうちに家に着いた。
「ここ。一緒に住むことになるから、よろしく。」
「ああ、ところで・・フィーセって言ったか。」
「何?」「フィーって呼んでもいいか?」
少しきょとんとした後、
「良いけど・・ヒトデみたいな名前。」
そう言って家に入って行く。
そんなに変だったか、と首をかしげながら俺も入って行った。

中は広すぎもせず、部屋は4つ有ったので話し合った結果
それぞれの部屋、物置、空き部屋と決まった。
それが決まるころには夜になっていたので
フィーは一言「おやすみ」と言い自分の部屋に入り二度と出てはこなかった。
仕方が無いので俺も自分の部屋に入ると一切れの紙が置いてある。
見てみると
=マンティスは無感情な子だけど、大目に見てあげて:ラニル=
と書かれてあった。

「なんかと思えば・・心配性だなあの人は。」
言いつつ布団に入るが・・寝付けない。
何故だか体が緊張しているのだ。
「そういや・・いつも教団の監視付きだったからか・・」
目を閉じ気持ちを落ち着けようとするが・・
「っ、駄目だ、眠れない・・」
ふと窓の外を見ると大きな木があった。
気分転換にあの木まで歩いてくるか・・そう思い体を起こす。
そして静かにドアを開けると俺は歩きだした、訳だが・・


「待てっ、そこの!脱走するつもりか!?」
「ちっ、なんで追いかけられてんだよ!?俺は・・!」
何故だか村中を走って逃げ回っていた。
必死になって逃げてはいるもののやはり、
すぐに袋小路になってしまった。
「さぁ、なぜ逃げていた?やはり脱走か?」
ラウが聞いてくる。
流石はケンタウロスと言うべきか、息は乱れていない。
「そんなの・・そっちが追いかけてくるからだろう!?
だいたい俺は・・!?」
「っ!伏せろ!」
続きを言おうとしたところでラウに持ち上げられ地面に押された。
何事だ、と文句を言おうと彼女を見ると森の方を睨みつけている。
どうした、と聞く前に俺の耳に5人ほどの声が入って来た。

「・・おい、この辺で合ってるのか?」
「はい・・レンが連れて行かれたのはこの辺です・・」
「そうか・・くく、良い餌となってくれたなぁ・・」「えぇ・・」

「教団か・・!おいレン、剣の心得はあるか!」
「ある・・どうしたらいい、囮になれば良いか?」
ラウは少々の逡巡の後、
「私は、皆を呼んでくる!武器は途中のものを使え!
できるだけ殺さぬようにしろ・・撤退でもいい!」
そう言って走り出した。

教団の声は次第に近づいてくる。
(多人数が相手か・・!奇襲しか無い・・!)
教団の一人が隠れている木を通り過ぎかけた。
(ここだ・・!)
同時に拾った木の棒で後頭部を叩く・・が兜に阻まれ効果は薄い。
それよりまずいのは姿を晒してしまったことだ。
如何に森の近くとはいえ再び隠れれば村を危機に陥れることになる。
それだけは避けたいが・・
「はは!捕まったドジ野郎か!?殺してやるぜ!」
幸運な事に5人全員がこちらを追ってきた。
すかさず俺は森へ逃げ込むが、囲まれているのに変わりは無い。
降り下ろされる剣を上手く躱しつつ、5人の相手をするのは辛かった。
そのうち一人が、こんなことを言い出す。
「どうだい!?捕まったらまた強姦ってのは!」「いいなぁ!!」

それを聞いた時にはもう、逃げることなど考えてなかった。
あるのは闘志と怒りと殺意のみ。
「へ、走ってくるかい!だがそんな木の棒じゃ・・ぶふぅッ!?」
木を投擲して、弾かせその内に腹に拳を捩じ込む。
次に剣をかすめ取り、剣の腹で思い切り足を打ち付けた。
「ふざけんな!このクズ野郎共があぁッ!」
その衝撃で一人は動けなくなる。
「なっ、まだだ、奴は一人、囲めば・・!」
俺を囲むが・・だからどうした。

「群れなきゃ、強がることもできねぇか!?笑わせる・・!」
手近なひとりに掴みかかり、鳩尾を柄で殴りつける。
後ろに気配を感じ、痛みに耐えようと目を閉じるが・・
痛みは訪れず、代わりに悲鳴が聞こえた。
「うあっ!?」「がぁっ!?」「ぬおぉっ!?」
振り返ると、ラウとひとりの男、そしてフィーがいた。
「一人を、5人で・・か。
その割にあんまり感心できる出来じゃないね、これ。」
「挙句、隙を突こうとしてこのざまか。
周囲の注意も出来んとは・・素人だな。」
「・・せっかく寝てたのに起こされた。」
どうやら、ラウが呼んできてくれたらしい。

「・・ありがとう、助かった。」
「全く、お前もお前だ。
まずくなったら退け、そもそも単対多の戦いにおいては・・」
「ラウ、その辺にしようよ、こいつら連れてかないと」
「む・・シュンがそう言うなら仕方ないな・・おい貴様」
倒れている兵士にラウが近づこうとする。
瞬間、懐から短剣を取り出し兵士は切りつけようとした!
が、足で腕を蹴られあえなく失敗に終わる。
ラウは何事もなかったかのように見下ろし言い放った。
「それ程に元気があるのなら立て、貴様らを連行する!」


無法者を連行した次の日。
村の皆に馴染むのは思っていたほど難しくはなかった。
まずはお隣、ホルスタウロスのリスタさんだ。
つい胸に目が行ってしまうのは仕方のないことだろう。
「レンさんっていったかな?よろしくね。」
「初めまして、リスタさん・・だよな」
「うん、お隣さんだから何かあったら言ってね。」

またあるところでは、
「昨夜の話、聞き及んでいる。
ひいては一手指南を頼みたいのだが・・」
「駄目だ、俺との勝負が先だ、昨日約束しただろう?」
「悪いな、俺も挨拶回りの途中でさ、今はちょっと無理だ」
「そうか、すまなかったな。では、待たせたな!」「おうっ!」
リザードマンと雑談したり
「すー・・むにゃ・・えへへ・・」
「気持ちよさそうな寝顔だな、こりゃ・・」
ワーシープの昼寝を見たりしていた。

そして、夜。
今は秋の終わり頃あたりだから寒さもまだ緩やかだ。
どちらかと言うとまだ涼しい方に入るだろうその気候のおかげか
寝苦しいということも無く、気持ち良い睡眠を取ることができる。
相変わらずフィーは必要なことしか話をしない。
まるで、俺など居ないかのような生活をしていた。
まぁ、俺自身も静かなのは好みなので気にするほどのことでもないか。
そう結論づけ、布団を被った。
心無しか、昨日より体の緊張はしていない。
ここでの生活の効果だろうか?
考える間にも瞼はずり落ち、いつの間にか眠っていた。


そんな生活が続き、季節は寒さ蔓延る冬へと移る。
外に出て焚き火をしていても寒いものは寒かった。
「寒いな・・」
しばらくしてリスタがやって来る。
「あっ、焚き火ですか?私もご一緒しても?」
「ああ構わない、にしても寒いな・・」
そうして焚き火に当たっていると
「レンさんは・・好きな人とかいるんですか?」
唐突にそんな話題を振られる。
「え・・?ああ、気になってる奴なら・・」

「ん〜もしかして、フィーセちゃん?」
「・・・・」「あっ、当たりですね?」
そんなにわかりやすい反応だったろうか。
「・・ああ、まぁそうなるな・・」
「そうですかぁ、私も居ましたから、そういう人。
なんていうか、どうでも良いことが気になっちゃうんですよね。」
「確かに・・そうかもしれない・・な」
どうでも良いこと、そう、例えば性格上当然のことなどだろう。
「でも、そうやって想い続ければ・・あっ、ニールさん。」
と、ここで隣に座ったひとりの男に抱きつき

「こんなふうにいつか絶対に幸せになれます。
だから・・諦めないで頑張ってくださいね?」
そう幸せそうに微笑んだ。
それを見ていると本当にそうなると思えて来て、こちらも笑えてくる。
「ああ分かっている、分かっているさ・・」

昼過ぎにご飯を食べているとフィーが森の中に入って行くのが見えた。
その足取りは淡々としたもので、微塵の迷いもない。
恐らく、これから昼食だろう。
村の書庫で見たとおりならば、その鎌を使い獲物を取るのだ。
繁殖期がどうとかは掠れていて読めなかったが。
しかし、顔がほんのり紅いのは気のせいだろうか・・?

そんなこんなで色々あって今日も一日が終わろうとしていた。
今日も楽しかったな、と思い風呂から上がり夜風に当たっていると
いきなりフィーに体を引っ張られ連れて行かれる。
行き先はフィーの部屋だった。
考えていた通りにすっきりとした綺麗な部屋だ。

そう考えていると、フィーは
「そこに横になって。抱きついて寒さを和らげたいから。」
と、俺を布団に押し倒すと自分もその中に入り抱きついてくる。
マンティスの性質上、これも仕方のないことだろう。
しかし、次の瞬間フィーは信じられない行動に出た。
なんと一旦離れ・・俺の衣服全てを切り裂いたのだ!
着替えは何着もあるとはいえ、これでは寒くてたまらない。
何より・・ペニスが丸見えなのだ、恥ずかしくない訳がなかった。
「何を・・!?」「繁殖期だから。」

俺から見れば全く理由になっていない。
押さえ込もうとするフィーを押し退けようとするが、
流石は魔物、むしろこちらが押されていた。
「大丈夫・・すぐに終わる。
あなたが怖がるようにはしない。
あなたの精をこの中に注ぐだけで良いから」
俺が話した事を一応は考慮してくれているらしい。
それでも、恐怖で体は震えていたが
相手がフィーだと言う事実は少なからずそれを和らげてくれていた。
彼女はそんな様子を気にも留めず、淡々と
自らの生殖器をこちらのペニスに近づけている。
あの恐怖は、痛みは、今度はどのように現れるのか。
それだけが俺の頭を支配し始めた瞬間、遂にペニスは生殖器に吸い込まれた。
その瞬間、またも信じられないことが起きる。

「うっ・・あっ、こんなに、気持ち・・良い、のかよ・・っ・・!
ひとつは痛みなどなく快楽だけが襲ってきたこと。
だが、最も俺が驚いたのは
「はあぁっ・・!レン、レンっ!好きっ、こんなにおっきい・・!」
なんとフィーが笑い、目には嬉し涙を浮かべながらこちらを見ているのだ!
あれほどまでに無感情で、話しかけても無視こそすれど
愛想笑いを浮かべることさえしなかったあのフィーがだ!
「・・フィー・・?どうした、んだよ・・急にそんなに・・っ」
「なんだかぁっ・・色々なものが、私の頭の中にっ、溢れて、来てぇ・・っ」
言う間にも、フィーの生殖器はギュウギュウと締め付けて来る。

そろそろ限界が近い。
顔は火照り、頭は腰を振ること以外考えられなくなっていた。
「あっ・・ぁっ、レンっ、気持ち、いいっ、私も・・動くぅっ・・!」
「ああっ俺もだっ、気持ち、良い・・ぞっ・・!く・・ぁ・・!」
互いの体をがっちりと抱きしめ合う。
鎌が当たっているはずなのに、痛みは微塵も感じられなかった。
幾度も腰を振り、体を擦り付け、キスをする。
そして・・遂にその時は来た。

「くぁっ!?出すぞっ、フィーっ!フィィィっ!
もう、駄目、だっ・・っ、ああああぁぁぁっ!」
「っ!!レン!レンーっ!熱いのがっ!レンのぉっ、熱いのが、きてぇっ、私も一緒にっ、気持ちっ、良くっ・・!やぁっ、ひあぁぁっ!イイぃぃっ!」
互いに名前を呼び合いながら絶頂を迎える。
フィーが倒れ込んでくるのが感覚でわかった。

少し落ち着いてきたが、先ほどの余韻は未だ残っている。
「はぁ・・はぁ・・フィー、大丈夫・・か・・?」
「うん、大丈夫・・それよりも無理やり、しちゃってごめんね・・」
そう言って申し訳なさそうな顔になった。
やはりなんだかんだ言って考えていてくれたのだろう。
そんな彼女を俺は
「いや・・いい。
こんなことの後に、言うのもなんだが・・俺はな、フィー?
お前のことが好きだ。だから、気にするな・・」
両手を使ってしっかりと抱きしめる。
それに対しフィーは、
「うん・・私もあなたのことが好き・・。大好きなの・・」
こちらの肩に鎌を乗せながら顔を近づけ、キスをしてきた。
舌を絡め、互いに大好きだと言い続ける。
その後疲れ切ってしまい、抱き合ってほぼ同時に眠りに落ちた。



後日、村長の館。
「ふふふ、言ったとおりじゃったろう?ラニル」
「あらあらまぁ、仲睦まじいじゃない、手をつないじゃって。」
「そんなに茶化さないでくれ、フィーが恥ずかしがる。」
「・・・・」
俺達はラニルとメイノスと話していた。
なんというか、挨拶をしておきたかったからだ。
適当に話をした後、夜になったので俺達の家に帰る。

そうそう、あれから料理を二人で作るようになった。
フィーは時には猪を取ってくることもある狩りの達人だ。
まぁ、俺も暴れ牛を取ってたりするが。
食事をすれば、風呂も一緒だ。
フィー曰く「今は一時もレンから離れたくない」ということらしい。
風呂が終われば、もちろんそのあとはお楽しみだ。
彼女は意外に恥ずかしがり屋なので、7:3の割合でこちらから誘っている。
っと、今日は珍しく先制攻撃。
胸の辺りだけを露出させて誘ってきていた。
彼女をお姫様抱っこしつつ、部屋に入る。
俺の生活は、教団の辛い物から、素晴らしい物へと変わった。
それは紛れも無く、魔物達とこいつの、フィーのおかげだ。
本当に捕虜になって良かった、と思いつつ今日も彼女を愛する事に決めた。

大好きだ、愛しているぞ・・フィー。






13/08/02 03:52更新 / GARU

■作者メッセージ
お久しぶりです。
今回は前々から構想を練っていたものをやっと完成させられた感じです。
さて、そろそろワイバーンも書かなくちゃ・・

それでは皆様、またどこかで。

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