3.箱入り娘と博物館目録 BACK NEXT


……出して……

……ここから……

……ねぇ……

……誰か……

誰か……ここから出して……

――――――――――――――

「……これは何ですか?」
半ば呆れ果てたような声を挙げて、僕は主任に、閉館後の博物館に運ばれてきた物質について尋ねた。今年四十になると言う、生粋の南東部出身者である主任は、その皺が目立ち始めた顔を笑顔に変えながら、手に持った壺のような物質について相変わらずの高テンションで答える。
「よくぞ聞いてくれた!この壺はな、南部にあるカマトト遺跡」
「カカロト遺跡です」
「そうカカロト遺跡で発見されたんだ!」
主任はたまに名詞を間違える。それが意図的なものかと思う程に別の単語として成立しているので、他の人間にはややうんざりされているというが……他の人間とは言っても、主に付き合わされるのは僕の役目。
そんな内心の溜め息を無視して、主任は舞台の上で脚光を浴びる役者のようなオーバーリアクションのまま説明を続ける。
「見てみろ!この側面に描かれた見事な幾何学模様!しかもある点を中心に線対称点対称を利用して複雑に見せかける手法を利用しているぞ!きっとこれは古代マナ時代に宮廷の后が始めたと言われる――」
嫌がられる理由その二。時代考証確認無しに自分の知識を用いて物の説明を、長時間に渡ってすること。そのせいで主任の話し相手は次々と別の部署へと移り、残る主任の部下は僕だけとなってしまった……というわけだ。
ジョイレイン博物館――。領主の子息が道楽で開いたといわれるこの建物は、歴史学者、古物鑑定者達の多大なる協力によって様々な時代に、様々な生物によって作られた物が整然と並べられるようになった、この世界では珍しい博物館である。
『そりゃウチもそれなりに歴史ァあんだから、いくら綺麗っつってもそのまま展示するわけにァいかねェのよ。新しいなら新しい、古いんなら古い、んでそれがどんなもんなのか分からせねェと、展示品全て我楽多も同然に思われんだろ?
'遊びは、真剣に'。これァジョイレインの爺さん達が再三言ってきたことだ。覚えといた方がいいぜ?』
こんな発言を平然とする公爵子息。でも命令は的確だった。親たちと――恐らくは当人が築き上げたコネを目一杯利用し、現段階で理解できるレベルの年代や物品、制作者を展示品に付与させていき……知を求める学者同士の侃々諤々の議論の末に、一定の基準に展示物の説明が纏められた。
恐らく、公爵家直伝のものまで学者たちに議論させたのは後にも先にもマトシケィジ=ジョイレイン公爵子息だけだろう、との評判だ。そして、趣味で始めた博物館に、ここまでの財と手間を注ぎ込むのも。
そのお陰もあってか、会館してから数ヵ月経つが、来館する人が快適に見れる程度の人数が安定している。少なくともそれなりの利潤も出ているらしい。
で――そんな博物館には外から集められてきたものも数多く展示され……今もその量は増えていたりするわけで……。こうして主任が持ってきたりもする。
「(早く終わってください……)」
心底そう願いながら、僕は目の前で繰り広げられる独演会をただ耳にしていた……。

――――――――――――――

「(やれやれ……)」
かなり長時間拘束されたよ。まだ閉館後だから良かったとはいえ、通常業務に差し支えがある時間まで喋ることがあるからね……。
菷と塵取りを取り出して、館内のゴミを取る自分。飲食禁止、盗難禁止の知らせは基本的に守られているようでほとんど無いとはいえ、人が入るとどうしても埃の問題がある。それを菷で掃いてしまうのは僕の役目だ……前までは別の人がやっていたけど。主任の長話、恐るべし。
「……旧アテライナ時代の織物……天才ドワーフ『クラフトマン・ジョン』の指輪……展示品に見せかけたガーゴイル……ゴーレムも作動中……」
その傍らで展示品と護衛兵器の確認も行う。そうすることで、作業の効率化を図っているのだ……けど、それなら二人この時間帯に入れてよ……。主任は今日の来場者数の確認及び金銭確認をしているから、こちらには来れないんだよ……尤も、来たら来たであの長話が始まるんだけどね……。
「………よし」
壺とか箱とかそういったものの類いは、埃が被っていると輝きが落ちるので、懇切丁寧に拭く必要があるのだ。ショーケースを設けない主義らしいけど、理由は分からない。……何でだろう。本当に。もしかしたら何か特別な意味があるのかもしれないけど……。
「はぁ……よし」
掃除が一頻り終了したところで、早速帰ろうかと従業員室に向かおうとした。
普通であれば、そのまま荷物を持って一人暮らす家へと向かう……そんな日常の一欠片になる筈だった。

日常は、
思わぬところで、
変化するものなんだなって、思い知った。

――誰か……

「……あれ?」
何か……聞こえた?空耳の可能性を考えて、一時的に立ち止まってみる。

――誰か……

確かに聞こえる。館内……特に展示室には今、この区画には僕しかいない。とすると……展示品か?
亡霊、という可能性もある。万が一という時のために、従業員は清めの塩と十字架、そして軽程度の魔力を付与する手袋を常備することを義務付けている。当然僕も。
「(せめて何が原因で聞こえるか……それくらいは確認しないとな。報告に困るし)」
塩袋をポケットに入れ、そのまま来た道を戻っていく僕。声のする方へ、耳を澄まして歩いていく。
足音はない。床全体に『沈黙(サイレンス)』の魔法が掛かっているからだ。ホラーのような怖さは、そこで半減している。まぁ……完全な静けさはそれはそれで怖いけど。

――誰かぁ……ぐすっ……

……完全に涙声だ。泣き落とし……にしてはやり方が稚拙だろう。そもそも泣き落としなら最初から泣いている筈だ。
「……」
少し可愛そうに思った心を何とか押し留めて、僕は声のする方へと足を進めていくと……?

「……誰かぁ……ここから出してぇ……ぇぅっ……」

きらびやかな魔法石を、見映えがするように整然と並び飾られ、枠はミスリル銀を思わせるような光沢を放ち、木の部分は漆塗り加工を施されている箱。鍵穴はやや小さく、入る鍵は限られている。ピッキングで開く……のだろうか。
それだけで周囲の目を引くであろう、古い王宮の宝物室に置いてありそうな箱――それが、どこか悲しげな雰囲気を纏い、中から泣き声をあげている。
「……」
確かこれは、一ヶ月半ほど前にこの博物館に来たもので……綺麗だからって事で洞窟から持ち出して売りに出されていたものをリトナール公爵子息が兄に頼まれて競り落としたものを、こちらに送って来たものだったっけ。綺麗さを保つために毎日終了後に拭いてはいたけど、まさか声をあげるとは思わなかったな、なんて考えつつ、説明書きを改めて見ると――成る程。
ミミック。ありとあらゆる『物を入れるモノ』に擬態して人間を待ち伏せし、箱を開けた人間をそのままお持ち帰りをする魔物。ここから出して、と言うことは……魔法結界の効果か。
魔法結界――お持ち帰りしようとした人物に、物を返さない限り沢山のデビルバグに襲われ続ける呪いをかける凄まじくえげつない仕様の結界が、ここ一帯には張られている。無論、従業員には無効になるように、従業員証をつけることが義務付けられているが。
ちなみに、物を壊した場合は呪いは永続、早々に売った場合、売った人間にも買った人間にも同様の呪いが掛かる。特に売った人間には、一日中食う暇もないほどにずっと犯され続けるらしい……えげつないにも程がある。尤も、買った人間の方は終わりがけに返却しに行くようデビルバグが輪唱するらしいが。同じ顔、同じ声での輪唱……考えるだけでも怖い。
この結界は魔物には効果がないので、当然のように魔物にも効く結界も張られている。全身から魔力が一気に抜き取られ気絶する仕様となっているものだ。現に以前、野良ゴブリンが大量に侵入して展示物を盗もうとしたところ、みんなで仲良く床に寝そべっていたわけで……誰だろう、こんなえげつない効果を考え出して、しかも生み出したのは。
とまぁこのような効果があるわけで、魔力を腕力に変換させているミミックが無闇に開けられるものでもない状況らしい……けど?
あれ?ミミックって自分からは箱を開けない筈じゃ……?どういう事だろう。
――この時、普通に考えたらそのまま主任に報告すべきだったのかもしれない。けど……このまま放っておくわけにはいかなかった。……流石に『夜泣きする博物館!』なんて噂が立ったら、中央教会が壊しに来るからね。魔物製の物品を。それだけは意地でも避けたい。
僕は箱の前に立って、思い切って話し掛けてみた。

「……どうしたんだい?」

びくっ、と箱が震えた。目に分かるほどに、はっきりと。ガタッと音がしたのも確かだ。箱が結界に触れていないか心配だったが、その恐れは杞憂だったらしい。揺れただけで、触れるほどは動いていなかったからだ。
箱から発されるオーラが、戸惑いのそれに変わっている。何故か箱の気配が解ってしまっている自分がいたがそれはさて置き、箱(の中にいる誰か)は、どう返答すべきか迷っているのか、それきり泣き声が止んでしまっていた。
「……っくっ……」
まだ完全には止まっていなかったみたいだ。
このまま待っても恐らく埒が開かないので、自分から話し掛けてみた。
「……どうして泣いているのかな?」
返事がない。まだ戸惑いっぱなしのようだ。泣き声はようやく完全に止まったようだ。何となく、自分に興味を持っているような雰囲気。けど、急に話しかけたらまた怖がるだろうから……。
「……大丈夫かい?」
……我ながら、ボキャブラリーの無さが恨めしい。普通いきなり大丈夫なんて聞かれたところで答えようがないだろうし。
「……寂しかった……です……」
あ、返してくれた。ぽつり、ぽつりとだけど、僕に対して、ちゃんと返答が来た。
「……寂しかった?」
「……はい……」
「……そうか……」
そのまま沈黙。どうも話が先に進まない。まぁあんな話題の振り方をしたらこうなるのは分かりやすい結果だとは思う。仕方ないこと。
「……あの……」
「……ん?」
沈黙を破ったのは、意外にも相手の方からだった。とは言っても、自分に話題はなかったから、機会提供は嬉しかったけどね。
その声は……どこかもじもじした様子で、辿々しく口を開いた。
「……話し相手に、なってもらえませんか……?」
僕は少し考えて、頷こうとして……そう言えば相手がこっちの姿を見えている訳じゃないのに、頭下げても意味がないことに思い当たった。
「……うん、いいよ」
でも、と続ける。流石に今日は時間が経ちすぎた。そろそろ本格的に博物館が閉まり始める時間だったりする。流石にこのまま留まり続けるのは不味い。
「また、明日の夜でいいかな?今日はもう、帰らなければいけないから」
「……」
何処と無く、残念そうだ。声の持ち主の気分で、ここまで箱の光沢が変わるとは驚きとはいえ、箱は持ち主の体の一部なのだから仕方ない。
カタン、と箱が動いて、一言。

「……明日もまた……来てくれますか……?」

僕は「いいとも」と一言、そのまま立ち上がって、職員専用の出入り口から、博物館を出た。
外はすっかり、カンテラ無しでは出歩けないほど真っ暗になっていた。

――――――――――――――

「これは随分と面白いことになったね」
物陰から覗く男が一人。言うまでもない。主任である口工力一夕=クリストフ。
主任は従業員の一人――レクター=ノレッドの帰りが遅い事から、自分の仕事を終えた後に、確認のつもりで中に入ったという。そうしたら見つけた、ミミックとレクターの会話。
本来であればすぐに止めなければならない事態ではある――少なくとも、中央教会の教えでも、冒険者の心得でもそんなものだ。
だが――生憎、ロエカータは普通ではなかった。
「言いふらすのは野暮ってもんだろう。さて、お二人さんがどんな道を歩んでいくのか、私は楽しく見守らせていただきますか」
まるで愉快な劇を見るような気安い声で、彼はそれを黙殺することを決めた……。

――――――――――――――

「では、掃除に行ってきます」
「ありがとうね。こっちは会計を締め切っておくから」
主任にそう一言告げて、僕はいつも通りの装備で館内を掃除する。設備を確認し、装飾品を軽く拭き――全て終わったところで、あの箱の前に向かう。心なしか、足取りは軽くなっていたかもしれない。主任が見ていたら何事かと思うだろう。
「待たせたね」
気障かもしれない口調で、僕は箱に向けて話し掛ける。話し掛けられた箱は、昨日と同じ、どこか引っ込み思案なような声で、僕に返してくる。
今更だけど、この世界でのミミックは、全て中身が女の子の体をしている。当然、声も女の子の声だ。これは多分、彼女達の餌である精を摂取するに当たって都合の良い体にしてあるんだろう。
「……ありがとう……ございます……レクターさん……」
ぼそぼそと返す彼女。どうも、話す事自体に慣れていないみたいだ。
「お礼なんて良いよ。それより、今日は何を話そうか?」
あの日以来、掃除の時間を早めに切り上げて、彼女と話すようになった。話題は……お互いの自己紹介……とは言っても、ほとんど自分でしゃべるばっかりだったけど……。
「……っと、こんなところかな」
自分について一通り話し終えた後で、僕は彼女に尋ね直した。
「ところで……君は、何て言う名前なの?」
「……」
彼女は黙り込んでしまった。まるで盲目の人間を相手しているような……下手をしたらそれよりも達は悪いかもしれない。雰囲気は分かるが、細かい仕草が分からない。箱の体でそれを求めるのが間違っているのかもしれない。
「……まだ早い……でも……ううん……」
何やらぼそぼそと言っているみたいだけど、よくは聞こえなかった。何か迷っているみたい……?
名前を言いたくないんだろうか。……なら別の事を聞こう。
「何処からここに?」
ミミックは大体、どこかの洞窟や、あるいは王宮跡に配置されている、と噂に聞いたことがあった。その噂の一例となるか……。
「……ロイヤルディストーション遺跡……の、最初の方」
「偉く大層な名前の遺跡だね」
一体何の因果でそんな名前になったんだ。その理由にもあっさりと返答が――ほぼすぐに。
すぅ……と、空気が変化する。箱を中心に、心地よく張り詰めたのだ。まるで物語を語り聞かせる吟遊詩人が纏うそれに、僕は思わず呼吸するのを止めそうになった。
そんな僕の様子を知ってか知らずか、彼女はぽつり……と話し始める。

「――かつて、'悪魔'と呼ばれ自らの強大な力を意のままに用い、暴虐の限りを尽くした白髪の兄弟が二人、タイムとスライ。彼らを討ち取ったのがその遺跡だった。
討ち取ったのは紫の髪をした齢百歳の魔法使いと、彼女の協力者である次元の操り手。彼らが繰り出した、相手を討ち取りし時のコンビネーションアタック――それがロイヤル・ディストーション。
一説によると、その炎は真夜中だいうのも関わらず、付近の街に朝をもたらしたと勘違いする程に眩しく、そして神々しかったという。
以降、彼女達が去った後も、街の人々は彼女達を讃えるために仕留めた名前で呼んでいる――と言う話です。
ちなみに、異世界の狂える鬼を打ち倒したのもこの遺跡だ……と言われています」

「……へぇ」
すごい話だ。正直……疑わしいけど。どれだけ次元の越えた歴史がある洞窟なんだそれは。
「因みに、因みにだけど、そこにはどんな魔物がいたりするの?」
今度も彼女はあっさりと羅列した。
「グレーターデーモン、バーサーカー、サイクロプス娘、アドニス、ヒュドラ、ワイバーン、リビングアーマー、ラミアクイーン……以上です。ミミックは私一人なので除外いたしました」
……かなりハイレベルな遺跡のようだ。というかサイクロプス娘って……見たこともないし、聞いたこともない。存在していたのかそんなものが。世界は広い。
「他にも、周辺には薬湯の原料になるパイカル草が群生していまして、一ヶ月に一回ほど冒険者の護衛を引き連れて薬剤師と思われる方が採集に来ているようです」
「あの薬湯『パイカロン』の?」
「はい。煎じて直に飲むのが一番ですが、人間には渋味の成分が強すぎますので、お湯にァラディの実と一緒に溶かせば、薬効もそのままに渋味も収まって飲みやすくなります」
薬湯『パイカロン』は、この世界では比較的高級な薬で、解毒と共に自らの治癒力を高める効果があるものだ。身近な延命薬として重宝されているものだけど、少なくともそんな代物にありつけるだけの金は僕にはない。だから味を言われてもピンと来ないけど……少なくとも常識としてパイカル草が原料としてあることは知っている。そんな草が身近に群生しているなんて……どんな場所だ。魔が強い遺跡か。しかし……そんな場所に行ってよくミミックを持ち帰ったな、名も知らぬ冒険者は……。
それにしても……。
「随分とびっくりだ。君は色々知ってるんだね」
止めどなく溢れ出る様々な知識に、思わず舌を巻いてしまった。まるで本を読み上げられたような、しかも要点だけ上手く纏められたような、そんな説明に僕は感心していた。
「……それが私の……取り柄みたいなものですから……」
どこか恥ずかしそうな声で、彼女は呟いた。
もう少し話したいところだけど、そろそろ閉館の時間だ。名残惜しいけど、今日の別れの時間が来たみたい。
「……じゃあ、そろそろ、今日はもう帰らなきゃ……」
「……そうですか……」
残念そうな雰囲気が、彼女の箱を覆う。ちょっと申し訳ない気持ちになったけど、流石に自分の都合もある。
「大丈夫。また明日も仕事でここに来るから」
そう見せた笑顔は、彼女に見えたのだろうか。何気なくそう思いながら、僕は箱の中にいる彼女にさよならを告げて、帰路につく事にした……。

――――――――――――――

それから何週間同じことをしただろう。ただ箱の前で、姿の見えない彼女と会話を交わす日々……。
知識が豊富な彼女だったけど、外の世界について全く見たことが無いらしい。どうして知っているのか……それは、箱の中にぎっしりと敷き詰められた本を読み漁って得た知識らしい。それにしても随分と色々な知識が。スラングの説明まで書いてある本って、一体……。そもそも、本自体が珍しい筈だけど……。
「……本を……レクターさんに見せてあげたいです……」
最近では時々、彼女はこう呟くようになった。その度に僕は笑って誤魔化したけど……。

実は僕も、同じようなことを考えてはいたんだ。

彼女の顔を見てみたい。どんな顔をして話しているのか、どんな風に僕を見ているのか。そして――名前を聞きたい。
話し始めてからずっと、僕は名前を聞くことはなかった。最初の会話で静かになってから、聞いてはいけないことなんだろうと思って控えていたのだ。
でも、僕が名前を呼ばれるのに、呼び返す事ができないのは……辛い。
まるで彼女が遠い存在のような気がして――と、そこまで考えて、僕は彼女をどう思っているのだろうと言うことが疑問に浮かんだ。
彼女はミミックであり、その箱の中に入ることは危険以外の何物でもない行為ではある。それは無知な存在以外なら誰にでも分かることだろう。けど……それでも、彼女に会ってみたいと言う願いは僕の心の底から体全体に、浸透していくように広がっていく。
理性はまだ侵されない。侵されるほどの事はされていないし、何より箱を盗み出したいとも思わない。もし理性が陥落していれば、その場で呪いも結界も気にせず持ち出して箱を開けただろう。
――でも、その行為は彼女に失礼だとすら思える。それは所謂漢としての見栄なのかもしれない。彼女の前でみっともない姿を見せたくないという、ありきたりな見栄。けれど、そんな見栄が浮かぶと言うことは……?

白状しよう。
恐らく僕は……彼女の事が気になっている。それも……恋愛的な意味で。

一週間……いや、二週間で落ちて育つ恋というのも、中々に節操がないのかもしれない。彼女の事ばかり……とまではいかないけれど、仕事で彼女の近くを通りかかる時は、何処と無くもどかしく辛い。仕事中なのにだ。それだけ、夜の会話が待ち遠しいのもあるけど。
兎に角、彼女の事が僕の心の片隅を占めるようになったのは確かだったりする。かと言って、結界を外してまで会いたいか……と言われれば微妙ではある。当然、自分から結界を気にせず箱を取り去って開けるなんて芸当は出来ない。出来る筈もない。呪いを永遠に受けた犯人の行く末を聞いた身としては……。
一週間近くノンブレスも良いところで三十匹近いデビルバグに全身を揉まれ発情臭を嗅がされ理性の欠片も無いほどに犯されていたらしい。転売先も一晩だけ似たような目に遭って、結局その物は還ってきた。転売先の相手は犯人を訴えようとしたらしいが、その犯人が精神を完全に破壊され、今では鉄格子のある部屋で片隅に踞って、女性監守が通り掛かる度に奇声をあげていると言う報告を聞くと、悲しく首を横に振って帰っていったらしい。
そんな恐怖の呪いが掛かる以上、結界を無視するのは自殺行為だろう。それ以前に――彼女が結界に魔力を吸われて無事な筈がない。
となると……結界を外して会うしかないけれど、そこまでして会いたいかは微妙。けれど、心の中では彼女に会いたい気持ちが膨れ上がってきて……。
どこまでも、ぐるぐるぐるぐると巡る思索。こうして巡るだけでも、僕が彼女の事が気になっていることの何よりの証拠ではあるんだけど――。
どうにかして、箱を開けずに彼女に会う方法は……。

僕は知らなかった。
この時、僕と彼女の思いは、完全にシンクロしていた事を。
そして……解決策は――意外なところから出てきたのだった。

―――――――――――――

「貴方が、レクターさんですね?」
博物館の休館日前の勤めを終えた後、彼女との会話を終えた自分が、荷物を取りに戻ろうと従業員室に戻ろうとすると……不思議な組み合わせの二人組が待ち構えていた。
片方の男は、袖口が膨らんでいる長袖のシャツに、魔法防御のついているベストを重ね、下はドワーフが愛用しているような、ポケットの多数付いたやや大きめの長ズボンを穿いている。腰元にはウエストポーチが吊るされて、中に何が入っているのか、ゴツゴツと膨らんでいる。そして、目につくのが、男の肩口から腰ほどの大きさもあるリュックを背負っている事である。身長は、僕よりほんの少し小さい。……いや、そもそも僕がでかいから、成人男性の平均よりは高いんだろうけど。
もう片方の女性は、男性の方よりやや身長が低い。当然、僕から見たら見下ろす形となる。こちらの方は……何故だろう。メイド服?まさかこんな町中をメイドを引き連れて歩いてきたのかこの男は?
「……確かに、僕はレクターと言う名前ですが、貴方達は一体……?」
不審と戸惑いの目線を向けた僕に、右に立っていたリュックの男は溜め息を一つ吐いて、丁寧に返してきた。
「ロエカータ主任様から依頼されました冒険者……ですけど今回は冒険とは関係ない用事で来ました」
「――主任!?」
なぜ主任が冒険者に?しかも僕に対して?何故?クエスチョンマークの数は尽きない。そもそも僕が冒険者に頼むような用事は無い筈だ……。まさか結界解除なんて頼むわけもないしな。それだったら寧ろ公爵に告げに行くだろう。
だとすると……?
「……つーか、見てもらった方が早いか。幸い、主任殿以外には見てる奴もいないしな」
そう言うと彼は、そのままリュックを下ろす。トン、と音がすると言うことは、中に何か固いものが……って!?
「主任!?何微笑ましく見つめてるんですか!」
彼の背後で、とても四十代には見えない、寧ろ三十代後半でも通せる細身で無精髭な男、ロエカータ主任が愉快な玩具を見るような子供の目で僕を見つめていた。この人は……生粋のジョイレイン地方出身者は大体エピキュリアンだと言う話も強ち外れてはいないだろう……主任を見れば分かる。
「はっはっは、まぁ気にしないでいこうじゃないか」
「気にしますよ!」
あぁ、だからこの人は『空気が読めないただ一つのロエカータ』とか呼ばれているのか。
溜め息は、主任の笑い声でかき消されて主任の耳には届かなかったらしい。
「古来百万を越える王も言っている。空気は読むものでなく作るものだとな!」
最早この人はつっこむだけ無駄なので、冒険者たちの方向を見ると……あれ?メイドの人がいない?出入り口は主任の方向だから、僕らの会話の時に見える筈なんだけど……。
「じゃ、行くぜ?」
すっかり話し方を変えた彼が、リュックの蓋を開ける。ここから何が取り出されるんだ……などと思った次の瞬間――!

「――わっ!」

一瞬、目が焼かれるほどの光がリュックの口から放出され、僕は思わず目を覆う。手を翳しながらも見つめる僕の前で、リュックの口が微かに震え――!

「――!?」

――中からせり上がるように、さっきのメイドの人が現れていく――!?明らかにメイドが入るような大きさではないリュックの中から、どうして手品か魔法みたいなことが……?見たところ、この男性は魔法使いではなさそうだけど……。
「……い、今のは一体……?それに……貴殿方は……?」
途切れ途切れに発した言葉に答えたのは、リュックの中から輝かしく出てきたメイドの人だった。
――いや、正確には人じゃなかった。
「改めまして、ミミックの形式番号MID:269339、ムクです。こちらはご主人様のコール=フィレン様。今日は貴方に色々と知ってもらおうと思いまして、こうして参上した次第で御座います」

――――――――――――――

「……いつから知ってたんですか?主任」
コールさん達が何か準備をしている間、僕は主任に問いかけた。主任はとぼけて、
「ん?何の話だ?」
と返してくるが、流石に引けはしない。明らかに言質はとれている。
「コールさん達からお聞きしましたよ。何でも、貴方が彼らを頼んだそうじゃないですか。しかも冒険者を、冒険目的以外で頼むとは……。おまけに冒険者の片割れ、ムクさんはミミックと来た。これでは疑うなと言う方が無理ですよ」
明らかに、僕と彼女が会話している事を知っていなければ出来ないことだ。まぁあの場所で話していれば秘密のへったくれも無いことは百も承知だけど。それならそうと一言言ってくれれば……。
主任ははっはっは、といつも通り笑うと、ずい、と僕に近付いてこう言った。
「悪いね。恋する二人に水を差すのは、流石に野暮だろうと思ったのさ。泣き声を聞いて慰めようなんて、中々思わないだろう。特に――相手がミミックだって分かってから、そいつをどうのしようなんて、中々出来る奴はいない」
「つまり、最初から知っていたと」
「ああ。面白そうだったからね」
全く……何処までエピキュリアンなんだこの人は。……でも、今回の計らいは嬉しかった。普通なら、中央教会に駆け込むなり僕を説得するなりミミック退治するなりしているだろうから。
何故他のミミック(相手持ち)を呼んだのか。それは僕達が思い悩んでいた件の問題を解決できる――裏技があるからだ。

「本当でしたら、自分の夫となる人か、獲物かしかミミック次元にお連れすることは出来ないのですが……今回は特別ですよ。ミミックについて、色々とお話ししたこと、心に留めておいてくださいね」
ムクさんは、そのまま半身を箱に埋め込んだまま、待ち構えるように両腕を広げている。人間を次元に連れていくときはこうして連れていくのがしきたり……らしい。僕はそれに頷いて――彼女に抱き付いた。軟体だと聞いてはいたが、何の事はない。人体と何ら変わらないような感触だ。
そのまま、ズブズブと箱に沈み込んでいく僕の体。どうやら、箱のサイズに合わせて互いの体が縮むようになっているらしい。
やがて――。

――僕は、彼女に出会った。


(illustrations by 彗嵐氏)

どこか上の空で、泣き腫らした目をそのままにペタンコと座っている、淡い雪のように色白な肌。華奢な腕や脚、発展途上の体を包むのは……うちの博物館のにも似た、スーツのような制服。そしてセミロングの髪は薄い灰色。
外見年齢は……僕より遥かに年下に見える。下手をしたら14才ほどに見えてしまうかもしれない。けれど、纏う雰囲気は、間違いなく外で話していた彼女のそれと一致していた。
「――!?……ムク……さん……?と……」
彼女はやや驚いた様子で(とは言っても、表情はあまり変わってはいないけど)、僕とムクさんの間で視線を往復させている。その姿にムクさんは微笑むと、彼女の元に近付いて耳元にゴニョゴニョと呟く。彼女は表情をあまり変えないまま――顔をほんのり赤面させたり目をやや細めたりしている。
……可愛いと思った。変わらないのに、妙に素直で……。

やがて……彼女が何回か頷いた後……、ムクさんは僕に軽く耳打ちした。
「暫く、席を外させていただきます。この空間から出たいときは、私の名前を大声で呼んでくださいね」
え?と思った次の瞬間には、ムクさんの姿は痕跡すら残さず消え、残ったのは僕と……彼女だけ。
「………」
「………」
最初の頃と同じような沈黙。だけど違うのは、互いに互いの顔を見つめ合っていることか。
「………」
どちらも話の切り出し方が掴めず、ただひたすらに沈黙を守る。彼女の方はどこかもじもじし始めている。かく言う自分も、もどかしさに妙な苛立ちが募る。このままじゃいけないと、僕は一声――、

「「――あのっ……」」

……見事に彼女とユニゾンだ。そのままどちらも沈黙を守ってしまう。……まぁこのままじゃいけないから、僕から先に口火を切ろう。
「……先、いいかな?」
彼女は小さく、こくん、と頷いた。それを受けて、僕は話を始める……たわいもない話だったけど。

「……やっと、初めて、顔を見れたね……」
「……はい」
思えば、初めて会話を交わしたときから、もう数ヵ月も一緒に過ごしてきたのだ。その間に顔を会わせたことなんて、一度もない。
本来なら、異常なこと。隣にいるのに、相手の顔も知らないで話すこと。でも今、ようやく相手の顔も姿も見れた。これが嬉しくない筈もない。
自然と僕の頬は、その力を徐々に緩めていた。彼女の方もそれは同じようで、微かに口角が上がっている。恥ずかしそうに俯く姿が、僕にはとても魅力的に見えた。
「……可愛いね」
僕の心からの、彼女への賛美。彼女は、「そ、そうですか……////」と、頬を、顔を赤らめてさらに俯いてしまった。
「……う……ます、レク……ん」
ごにょごにょと何か呟いているけど、聞き返してもさらに俯いてしまうだけで、何も答えてはくれなかった。……しつこく聞く趣味はないので、そのままにしておいたけど……。
「……その……」
もじもじと、かなり恥ずかしそうに言葉をたどたどと話す彼女。何を話そうとして――、

「……レクターさんも、格好良い……です……」

今度はこっちが赤面する番だった。まさか自分が格好良いなどと呼ばれるとは思ってもいなかったから。しかも、気になっている相手にだ。その衝撃は僕の口を、体を硬化させていく程に強烈だった。
「あ……そ……その……あり……がと……う」
しどろもどろになりながらも、何とかありがとうの一言は言えた。彼女はそれを受けて微笑む。まるで僕の言葉に安心したように……。

「……ムクさん達から聞いたよ、ミミックについて。何故君が僕に名前を教えなかったのか、と言うこともね」
「……そうですか……」
ミミックは各自、形式番号と言うものを持っている。ムクさんが名乗るときに使ったあれがそうだ。けれど……それを通称とするには長く、何より人間味に欠けてしまう。そうすると人間は次に何をするか――あだ名をつけるのである。見た目から、形式番号から……そのどちらからもありうるが、何れにせよ、呼びやすいように相手を――名付けてしまう。
特定条件下で名付けられたミミックは、直ぐ様その人間を披露宴に招待することになる。だがここで一つ問題が発生するのだ。すなわち……何らかの条件があって人間を誘うことが出来ないとき。
「……私達は一ヶ月、箱に何もされずに持ち帰られた際は、その家の持ち主の方の親類関係になります。その際に名前が付けられれば、付けた方の生涯の伴侶として共に暮らす事もまた、定まっているのです。
ですが……同時に、それは本心でもあるのです。人間の心理として、箱があれば開けてみたい、と思うのが当然でしょう。それをせず、ただ箱として持ち帰る人間。それがどのような人物か、私達自身も興味があるのです」
そこで彼女は一度言葉を切ると、どこか気恥ずかしそうにもじもじし始めた。頬もほんのりと赤い。時々首をぶんぶん横に振って元の顔に戻そうとしたり冷静になろうとしたりしていた。その様が何となく初々しくて可愛くて見とれていると――。
「ただ、私の場合……色々な持ち主に渡され動かされる中、丁寧にほぼ毎日拭いて下さる……私の事を綺麗にして下さる……レクターさん。貴方が一番、私の心に残りました……いいえ、唯一無二の感情を抱くほどに……。

……好きです」

「……………」
聞き逃す筈の無い一言。続けて彼女は言う。
「好きです。大好きです。心から愛しています。アイラブユー。ジュテーム。ウォーアイニー。世界中の愛してるを告げたとしても足りないほどに貴方の事を考えています。もっと良い相手なんて考えられません。貴方が箱を拭くときのあの手の感触が大好きです。優しく話しかけてくれた心が大好きです。深く響く声が大好きです。そして――貴方の体も、綺麗で素敵だと思っています。
……それが……レクターさんへの……私の……」
最後の方はごにょごにょと聞こえなくなってしまったが、それまでの言葉で十分だった。
彼女は、僕に心の底から惚れているらしかった。普通なら、その重たすぎる愛に敬遠していただろう。けど……僕は――。

「実は……話を聞きながら、君の名前を考えていたんだ」

「……!!!!」
彼女の目が、大きく見開かれた。口は両手で覆われていたが、驚きで大きく開いているだろうと思う。
隠すほどの事でもない。僕も彼女に心底惚れていたのだ。初め、近づいたのはちょっとした興味だったかもしれない。けど……何度も話しているうちに、その興味は別の物に変わっていった。
説明調のようで、実は微かに抑揚のある知識を話すときの口調。
喜んだときの、照れを隠すような声。
悲しげな泣き声。怒り声は、怒ることはなかったから分からない。
その全てが可愛くて、愛しくて……。それがあの、無表情に見えて実は感情豊かな体から出されていたと思うと……。
他の人が聞いたら、「ミミックに『魅了(チャーム)』の呪文をかけられた」と言われるかもしれないけれど……恋愛って、自ら進んで『魅了(チャーム)』にかかりに行くようなものだと思うから……。

彼女は、嬉しさのあまり涙を流しているようだった。こうして見ると、魔物も人間と変わらないのかもしれないと思えてくるから不思議だ。全てがそう言うわけでは無いのだろうけど……少なくとも、今目の前にいる一人のミミックは……一緒だ。
「……でさ」
でも、まだ嬉しく思うには早い。やらなければならないことがある。彼女と僕の願いを叶えるために、結界を解いてもらう必要があるのだ。鵲の橋を架けるには、姫の言葉が必要だ。
「今から言う事に、同意してもらえるかな?」
耳元で、微かにピリピリとした感触がした。どうやら、ムクさんが『風囁(ウィンドウィスパー)』を使ったらしい。これで会話は全て保存されるのだ。彼女もそれは理解したらしい。泣くのを一時的に止めて……それでも涙が混じった声で……はい、と返した。
「――ありがとう」
その言葉を受けて、僕は――。

――――――――――――――

その日からが大変だった。通常業務を終えた後、館内の展示物の目録の作成にかかったのだけど、流石に量が多い。名前のラインナップだけでも大変なのに、それをあいうえお順、歴史順、展示場所別と分けて並び替えて記していくと、それだけで一週間近く掛かることすらあった。
さらに、物によっては歴史背景も必要な場合がある。その辺りの注釈を彼女に尋ねて書き記した、念のため、著名な学者(幸い、その手のコネは主任が体よく協力して提供してもらえた)に確認したりなどして文章を練り、書き記し、推敲して……ようやく、三ヶ月後、『ジョイレイン博物館展示品目録』は完成したのだった。
……まぁ、主任がたいして人が来ない時期に向けて、前もって『展示品整理のため一ヶ月ほど休館します』と連絡していたので、その間に一気に書き進められたから、三ヶ月で済んだんだけどね……。

――――――――――――――

『御幸せになァ!』
マトシケィジ公爵子息の激励を胸に、僕は公爵の家を出た。一応そこそこに派手だが、重要な場所以外は民間に貸し出されている。たまにその重要な場所目指して侵入する人間もいたりするらしいが、例外なく捕まっていたりする。入る部屋全てに罠が仕掛けられているという噂だ。……よくそんな場所で暮らしていけるね、とも思う。
まぁそれは兎も角、その足で博物館に向かうと、主任が何やら書類を書いていた。何だろうと思いつつも、自分にそれを覗く権限は無いので放置。そのまま呼び掛けると、もう、解除の準備は出来ているとのこと。
それに感謝をして、僕は誰もいない展示室へ。
ガーゴイルたちに従業員証を翳しながら、僕は件の――彼女の箱へと歩いていく。心なしか歩調が速くなっていく。思い出を消すためではなく、これから増やすために。
箱の前に付いた僕は、主任の方を見る。主任は――手と腕で大きく○を描いた。結界を一時的に解除したらしい。
パカ……と、内側から開かれる宝箱。ゆっくりとせり出してくるのは……白い肌と薄い灰色の髪。涼しさを含んだ水色の瞳は、既に期待に潤んでいた。
僕はそんな彼女に微笑んで――。

「待たせたね――ユキ」

そのまま彼女に抱きついて――キスを交わした。


fin.
11/06/03 21:34 up
おまけ〜ミミックの旦那達の会話〜

「この度は、おめでとさん」
「ありがとうございます」
「……で、形式番号は何だったんだ?」
「LIB:296339、司書タイプだとユキは言っていましたが……」
「まぁ賢者とか学者みたいなもんだろう」
「同時に作家も兼ねているみたいで、僕がいないときには何やら書いているみたいですよ?彼女の給料は、ほぼ羊皮紙に費やされているみたいで」
「成る程。……そういえば、家事はどっちが行ってるんだ?」
「あ、僕です」
「……え?」
「以前ユキにやらせたら……やり方は分かっているらしいんですが、どうにも体が動いていなくて……」
「随分分かりやすい知識偏重型だなぁオイ」



おまけ2〜ゴキ娘の呪い(録音資料)〜

「うゎぁああぁあぅぅあひぃいがううぃあぁぁみゅみゃみゃゃんぐむぷはぁひゅいぁぁあああっ!」

「あぁんおちんぽちんぽおちんぽおちんぽおちんぽぉぉおおおっ♪」
「びゅくびゅくとぉっ♪もっとひゅくびゅくとぉあぁぁぁ♪」
「んはぁぁんきゅううくぅんふにゅんんんんをんんんんんん♪」
「なめてぇっ♪!もっとおくまでなめてぇっ♪おいしいからなめてぇぇぇぇっ♪」
「んほぁっ♪おひりっ♪おひりのひめふへひもひいいぃぃぃぃぃっ♪」
「おいしいのぉっ♪しおっぽくておいしいのぉっ♪」
「あせもぉっ♪あかもぉっ♪んぁぁぁぁぁぁんっ♪」
「あぁぁぁああああんっ♪わたしにもおかさせてぇぇぇぇぇっ♪」
「おねぇちゃああああああああん♪わたしもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ♪」
「たまごうんじゃうぅぅぅぅぅっ♪たまごたまごたまごたまごぉぉぉぉ♪んふぁぁぁぁぁぁぁっ♪」
「いれてぇっ♪わたしのおしりにいれてぇぇぇっ♪なにかぶちこんでぇぇぇぇっ♪」
「むねぇっ♪むねもまれたらおっぱいでちゃううぅぅぅぅぅぅっ♪」
「らめぇぇぇぇぇぇぇぇっ♪のんでぇっ♪わたしのをのんでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「あはぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあああああんっ♪」

にゅくびゅびゅくぶりゅむぢゅぎゅるるぐにゅにゅじゅぴゅるるちょろぴゅぴゅぷしゅにゅじゅるぐぽるんれろんびゅくびゅくどくんどくんどくん…………。

fin.
初ヶ瀬マキナ
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