読切小説
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ウンディーネハード
 ウンディーネのアキュアとそのマスターであるミルドが契約を交わしてから、今年で一年になる。その一年はアキュアにとって、最高の一年であった。
 最初にアキュアと出会った時、ミルドは駆け出しもいいところの魔法使いであった。そしてある日ミルドが川の傍で実験を行い、それに失敗して魔力爆発に巻き込まれ気絶した状態で川流れになっていた所をその川に住んでいたアキュアが助け出したのが、二人の出会いの始まりであった。
 ミルドの失敗した所を目の当たりにしたアキュアは、生来の優しさから自分にも実験を手伝わせて欲しいと懇願してきた。ミルドはその時自分の無様な所を見られた恥ずかしさからそれを断ろうとしたが、その胸の前で手を組んで自分を見つめてくるアキュアの子犬のような目を前にして、断り切れずに結局折れた。
 それから二人は共に実験を行うようになったのだが、この時はまだ二人は契約をしていなかった。そして相変わらずミルドは未熟者だった。
 彼は何度も何度も実験に失敗し、自分の無力さを呪うことも何度もあった。だがそんなミルドをアキュアは見捨てること無く精一杯支え続けた。どれだけ失敗しても最後に成功すればいいと、落ち込んでいたミルドを叱咤激励したのも一度や二度では無かった。そしてミルドもまたそんなアキュアに当たり散らすようなことはせず、彼女の言葉をバネにして必死で努力を積み重ねていった。
 二人はまさに、二人三脚で魔法の実験や修行に打ち込んでいった。そしてそのような二人だからこそ、いつしか互いに恋心を抱き始めたのも、また自然の成り行きであった。
 プロポーズはミルドの方からした。そして自分は実体を持たない精霊だからと躊躇うアキュアの両手を硬く握りしめて、ミルドは「俺は君じゃ無いとイヤなんだ」と顔を真っ赤にして言い放った。それがアキュアの心の壁を崩す楔となり、二人はその日の夜に契約を結んだ。
 それから一年。ミルドは相変わらず失敗ばかりで、恋人の前で醜態を曝してばかりだった。だがそれを前にしても、アキュアは彼と契約を結んだことに後悔も絶望もしていなかった。なぜなら彼女は何度失敗しても諦めずに努力を続ける彼のひたむきな心に惹かれたからであり、そして彼の持つ優しさに惹かれたからである。
 そう。アキュアは幸せだった。昼も夜も大好きな彼と共に居ることが出来て、本当に幸せな日々を送っていた。
 だがそんな彼女にも、一つだけ嫌な事があった。




「あの、今日もあれをなさるのですか……?」

 彼女の嫌な事。それは決まって夜に、二人で愛を交わし合う時に行われる。互いに全裸になり一つのベッドに横並びに寝そべりながら、アキュアが渋い顔でミルドに尋ねる。対してミルドは喜色満面といった風に明るい顔で、それに答えた。

「ああ。今日も頼みたいんだ。いいかな?」
「今日も……ですか……」
「頼むよ」
「……うう……本当に、今日もそれを……?」

 いいながら、アキュアがミルドの手元にある『それ』を見つめる。『それ』こそが、アキュアが嫌がる事だった。
 自らが『それ』を厭う気持ちと、『それ』をもってマスターに奉仕する気持ちがぶつかり合い、眉間に皺を寄せてアキュアが俯く。
 しかしそのアキュアの葛藤を前にしても、ミルドは退かなかった。

「俺は君じゃなきゃ嫌なんだ。これは君だけにして欲しい事なんだよ」
「そ、そんな風に見つめないでください。断れる物も断れなくなってしまいます……」

 ミルドが熱の籠もった瞳でじっと見つめてくる。愛するマスターからそんな眼差しを向けられると、例えそれがどれだけ嫌な事だとしても、アキュアはもはやノーとは言えなくなってしまう。
 逡巡の末、アキュアは項垂れ、いつものように折れた。

「……わ、わかりました。今日もマスターのお好きなように……私も、あ、合わせますので……」
「ああ、そうか。ありがとう」

 一語発するごとに顔を暗くさせるアキュアとは対照的に、ミルドの顔はその一語一句を耳にする度に顔を喜びで光らせていく。そしてそのまま爽やかな笑みを浮かべながら、ミルドがベッドの上で動いて仰向けになるよう姿勢を変える。

「じゃあ……」
「は、はい……」

 唇を震わせながらアキュアが頷く。そして複雑な表情を浮かべたまま起き上がり、仰向けになったミルドの股下に自らの体を持って行く。
 ミルドが手に持っていた『それ』をアキュアに手渡す。そしてミルドは期待に満ちた眼差しを向けながら、なおも嫌そうに顔をしかめるアキュアに向けて言った。

「そ、それじゃ、今日も……」
「はい……今日も……」




「お願いします! 嬲ってください!」




 ミルドは罵られて喜ぶドMだった。




「ああ……どうしてこのような事に……」

 そこにへたり込み、期待と興奮で既に半分程硬くなっていたマゾヒストの肉棒を赤ら顔で見つめながら、アキュアが悲嘆に暮れるように言葉を漏らした。

「私はもっとこう、優しく、愛のあるご奉仕をしたかったのですが……まさかマスターがこのような方だったなんて……」
「し、仕方無いよ。性癖ばかりはどうしようも無いんだから……」

 ミルドが申し訳なさそうに頬を掻く。そしてその顔をすぐに期待に満ちた物に変え、アキュアが手に持っていた物を見つめながら遠慮がちに尋ねた。

「そ、それで、そろそろ本番に入って欲しいんだけど……」
「え、は、はい。それじゃあ……」

 アキュアがその手に持っていた物――折り畳まれた中に罵詈雑言がびっしりと書かれた紙片を開いて中身を見る。細かい部分は異なるが、それ自体は一年の間に何度も読んできた文章だ。
 だがそれでも慣れない物は慣れない。
 両手で持ったそれを一瞥した直後に顔を羞恥と驚愕で真っ赤にしながら、アキュアが動揺丸出しにして言った。

「き、今日もこ、こここここ、こんな物、今日もマスターの前でよ、読むだなんて……読むだなんて……!」
「た、頼むアキュア! 俺のためと思ってそれを読んでくれ! お願いします! なんでもしますから!」

 そんな混乱の只中にあったアキュアに向けて、ミルドが仰向けになったまま顔だけを上げて必死の形相で頼み込む。皮肉なことに、それがアキュアの意識を元に戻した。
 マスターにこれだけ言われたらもう断れない。意識を取り戻し、顔を真っ赤にしながらアキュアが言った。

「う、ううう……わ、わかりました……。その、それとマスター、今日もあ、足で……?」
「うん……うん! 足で! 足でお願いします!」

 途端に明るくなったミルドに請われるがままに、アキュアが僅かに下がってM字開脚の姿勢を取り、わざと自分の陰部が見えるようにしながら、その両足の裏を肉棒へと近づけていく。
 ぴとっ。
 ウンディーネの柔らかい足裏が、硬くそびえ立つ肉棒を優しく包み込む。だがそのまま足を動かすことはしない。
 彼が望んでいるのはただの奉仕としての足コキではない。言葉で嬲られながら足で肉棒を弄られ、恋人にいいようにオモチャにされるのが彼の望みなのである。

「……ッ」

 今すぐ足を動かしておさわりしたい欲求を必死で抑えながら、アキュアがメモを広げ、中の言葉をたどたどしい口調で読み始める。

「うう……き、きょうも、こんな事をされて……き、気持ちよくな、なりたいのです、か? ……全く……このお、おちんぽは……どうしようもない、へん……変態おちんぽ、ですね……へんたい、へんたいおちんぽ……」

 熱に浮かされるように言葉にしながら、ゆっくりと両足を動かしていく。ゆっくり、さするように、そそりたつ肉棒をそのひんやりした足の裏でなめ回していく。

「女性のあ、足でイってしまうなんて……なんて、なんてい、いやらしいのでしょう……まったく、信じられない……信じられない……ま、マゾ豚さん、ですね……」
「あっ……ううっ……!」

 愛する人に嬲られ罵られ、ミルドのそれがバキバキ硬くなっていく。鈴口が先走りの汁をだらだら垂れ流すそれを足の裏でなおもゆっくりとさすっていきながら、羞恥で顔を真っ赤にしながら言葉を続けた。

「あ、あらあら……? もうそ、そんなに我慢汁……た、たくさん出して……。……私がい、良いって言ってない、のに、そんなにお汁……だして……はぁ……いけない、ぶたさん、子ぶたさんです……ね……。そんな子ぶたさんには……お、おしおき、です……っ」

 良いながら足の動きを早める。いきなり強まった快感の波を前に、思わずミルドが腰を浮かせる。ミルドの肉棒から更に先走りが垂れ始め、魔物を狂わせる香ばしい匂いがそこから立ちこめていく。そしてこの時のアキュアの顔もまた愛欲に蕩けきっていた。
 口は半開きになってその口の端から涎を垂れ流し、目はとろんと垂れ下がってその肉棒だけを視界に納め、頬を赤らめながら自分の秘所に指を宛がう。それはもうサディストとは思えない程にだらしない表情だったが、目の前の美味しそうな肉棒を前にして興奮するなと言うのが無理な注文であった。
 そんなドロドロに溶け始めていた頭を漫然と動かしながら、アキュアは熱に浮かされるようにメモの中の文字を再び読み始めた。

「ふふ……もう、そ、そんなに硬くなって……い、いけない子ぶたさん……ですね……でも、だめ、まだだめです……」

 ぐちゅぐちゅ。ぴちゃぴちゃ。アキュアの秘所から水音が漏れ始め、それに反応するようにミルドの肉棒も更に硬く、自ら出した汁によって濡れそぼっていく。
 そんな見るからに熟し切った肉棒を前にアキュアは生唾を飲み込むが、それでもむしゃぶりつきたい欲望を抑えつつ、マスターの望む通りに動いていく。
メモを持った方の手を動かし、一本だけ伸ばした人差し指の先に水のリングを形成させていく。

「さあ、うんっ……子ぶたさんには、はあ……お、おしおき……です……っ」

 その作ったリングを、指を動かして肉棒の根元の近くにまで持って行き、ゆっくりとリングの外周部分と肉棒とを近づけていく。そして両者が触れ合った瞬間、水の性質を持ったリングはその形を保ったまま外周を貫通させて苦も無く肉棒を中へと通し、当たった部分にひやりとした感覚を残しながらその輪の中に肉棒を嵌め込ませる。
 直後、リングはすぐさま魔力を帯びて硬質化し、さらにそのサイズを縮小させて中の肉棒をがっしりと締め上げた。

「あ、あううっ!」
「あ、あはっ……ますたー、締められただけで、も、もう……限界、なんですかぁ……? でも、ま、まだ……まだまだです、よぉ……子ぶたさんへの、お、おしおき、は……まだ、続くん……ですからぁ……ん」

 締められ、悶えるミルドを前にして、アキュアが蕩けた声で言い放った。口調は相変わらずたどたどしかったが、そうなった原因はもはや羞恥だけではなかった。
 足を動かすペースを早め、シュッシュッと擦過音が僅かに聞こえる程度に肉棒を擦りながら、アキュアが言った。

「苦しい、ですか……? つ、つらい、ですか……? 足だけじゃなくて……おててや、お……おくち、で……しゃぶってもらいたい、ですか……?」
「あ、あうう、うあああ……っ」
「うめいてるだけじゃ、あはんっ……わかりません、よぅ……ちゃぁんと、うんっ、ことばにして、くれないと……わかりません……よぉ……?」
「あ、ああ、ああああ……」

 ミルドが顔を上げ、その涙と涎でぐしゃぐしゃになっただらしない表情をアキュアに見せる。弱り切った、命乞いをするかのような子ぶたの顔だった。
 そんなマスターの顔を見て、アキュアは今すぐにでもこの行為をやめて彼を慰めてやりたいという欲求に駆られた。だがそれを、心の中でぐっと押しとどめる。今マスターが欲しいのは慰めでは無く虐待だからだ。

「ほぅら、ちゃ、ちゃんと私の目をみて……ちゃんと言ってくださいねぇ……。何が、ほ、ほしい、んですかぁ……?」
「ほ、欲しい、ほしいです……っ」
「な……な、に、が……?」
「あ、アキュアの……」
「あきゅあ?」
「ご、ごしゅじんさまの……!」

 『ご主人様』の機嫌を損ねないうちに必死に言い直し、ミルドがアキュアを見つめながら言った。

「お、おまんこ! ご主人様のおまんこ! おまんこにいれて、しゃ、射精したいですうううううう!」

 恥も外聞も投げ捨てた、雄奴隷の叫び。
 その告白を聞いて、アキュアは叫びそうになった。言い方はどうあれ、彼が自分を真に求めている事を知って、歓喜の雄叫びをあげそうになった。
 しかし、出そうになった雄叫びを口の中で押し殺し、『いつもの口調』に戻ってうっすら笑みを浮かべながらそれに答える。

「ふふ……っ、恥ずかしい、子ぶたさん……そんな、ひ、必死になって、お、おまんこだなんて……ふふっ……あなたには、は、恥とかプライドとか、そう言う物は……な、ないんですか……?」
「ご、ごしゅじんさまぁ……」
「も、もう、反論する力も……ないんですね……っ……ぶざま、ああっ、なんて、ぶ、無様なんでしょう……! あなたはも、もう子ぶたさん……ぶ、豚以下の……げ、げすやろう、ですっ……! この、げすめ……っ、下衆め……ッ!」
「ご主人様……ッ! ご主人様ぁ……ッ!」

 言葉遣いを更に乱暴にしていく――無論本心からでは無い――アキュアを前に、ミルドが許しを請うように泣き叫ぶ。
 だが本当に止めて欲しくて言っているのでは無い。相手の嗜虐心を燃え立たせ、更に執拗に虐めて貰うよう懇願しているのだ。マゾの基本テクニックである。

「ご、ご主人様、お許しをぉ……。下衆な豚めに、お、お許しをぉ……!」
「ゆ、ゆるす……? 豚以下の、ゴミクズふ、風情が……い、いまさら何を、言っているん、ですかぁ? あなたを、ゆる、許すとか、そんな、そんなわけ……」
「ひ、ひどいですっ……ひどいです、ご主人様ぁ……!」
「も、もう手も、口も……使いませんっ……このまま、あ、足でい、イかせて、あげます……っ! あなた、みたいな、ゴミクズさん、には……っ、あ、足でイくのが、お似合い、なんです……っ!」
「あ、あし、あしいいいいっ!」

 アキュアの足の動きに合わせるように、ミルドが腰を上下に振って更に快感を得ようとする。だが根元に嵌められたリングによってギッチリ締められていたため、いくらイこうとしてもイけなくなっていた。
 もはや肉棒は爆発寸前だった。それはもう破裂せん程に赤々と膨張し、表面には血管が浮き出て、我慢汁もだくだくと流れ出ていた。それでもなおイけないと知って、更にミルドが腰を強く振る。それは傍目から見ても無様な光景だったが、その屈辱的な姿を見られることが、ミルドの喜びを更に強い物としていった。
 虐められ、蔑まれ、胸の内に言いようのない歓喜を覚えながら、その上更に激しい喜びを得ようとして、ミルドが口を開く。

「だ、だしたい……っ、だしたいですっ、ご主人様ぁ……!」
「な、なあに……? なにを、だ、出したい、ですって……?」
「せ、せーえき……せーえき、出したいです……!」
「だ、出したい、ですかぁ……? 精液、だしたいのですかぁ……?」
「は、はい、はいぃっ!」

 呻くようにミルドが答える。それに対してアキュアは口元に薄い笑みを貼り付けながら、甘く囁くような口調で言った。

「じゃ、じゃあ……ちゃぁんと、宣言して、ください……ね……?」
「せ、宣言……?」
「はい……わ、私は豚以下、です……私はご、ご主人様につ、使われて、初めて価値をもつ……ただのせ、精液奴隷、です、と……」
「……ッ」

 足の動きを止めながらアキュアが言い放つ。そしてじっとアキュアが見つめる先で、ミルドは口をわなわなと震わせていた。
 二人とも顔が真っ赤だった。片方は被虐に打ち震える喜びで。もう片方は慣れないプレイをしている事への羞恥で。
 と、その時、ミルドが一度口を閉じ、そのまま一気呵成に口を開いた。

「……わ、わたしは……」
「わたし、は……?」
「私はッ! 豚以下ですッ! 私はご主人様に使われて、初めて、価値を持つ奴隷! ただの精液奴隷ですッ!」

 壊れた蛇口から溢れ出した水の流れは止まらない。

「ご主人様お情けを! 私めにお情けを! 早く射精、射精させてくださいい! おちんちんからせーえき、せーえき出させてください! お願い、おねがいしますうううううっ!」
「ま、まあ、なんと恥知らずな……」
「ださせて、ださせてださせてださせてえええええっ!」

 ミルドがタガの外れたように叫びながら、足裏に擦りつけるように腰を振り始める。アキュアはその光景を前に、更に顔を赤らめながら言った。

「そ、そんなにだ、出したいなら……ださせて、あげます……っ」
「は、はやくっ、はやくはやくはやく、お願いしますうううう!」
「じゃ、じゃあ……」

 アキュアがメモを持った方の指を動かす。
 リングが霧消し、肉棒が解放される。

「あひっ――」

 ミルドが幸せそうな声を上げた直後。

「――いひいいいいいいんっ!」

 噴水のように、その肉棒の先から精液が勢いよく噴き出した。

「ひいい! ひい! うひいいいいいい!」

 待ちに待った射精。
 気持ちよすぎて死にそうだった。
 ともすれば気絶してしまいそうなほどのその快楽から我が身を守ろうと、歯を食いしばって声にならない叫びを上げ続ける。その光景を見て、アキュアはもはやプレイすることを放棄していた。

「――ああっ、マスターの! マスターの精液! いっぱい! いっぱいいい!」

 びちゃびちゃと全身に降りかかるその白濁を前に、アキュアがうっとりと目を細める。口元に手で受け皿を作り、舌を突きだして、落ちてくる精液を少しでも多く受け取っては口の中に運び入れていく。

「んく、んく、んく……ぷはぁっ……ああ、まだまだ来る……ッ❤」

 更に一回だけで無く、断続的に肉棒から噴き出される精液を浴び続けながら、アキュアは更に喜びで顔をどろどろに溶かしていく。
 そしてその何発目かの射精の直後、宙から降り注いできた精液のひとかたまりが、偶然それまで自分で弄っていた割れ目の中にばたばたと命中する。

「ひっ――ひゃはああああああああああん!」

 直後、アキュアの精神もまた遥か高みへと飛翔していった。




 ミルドが射精を終えてから数分後、そこには両膝を抱きかかえてふくれっ面を見せるアキュアと、その隣に胡座を掻いて申し訳なさそうに俯くミルドの姿があった。

「……マスターのばか」

 不意にアキュアが小さく呟く。面目ない、と言いたげにミルドが更に顔を項垂れさせる。

「ばかです。マスターは馬鹿です」
「……返す言葉もございません」

 ミルドが素直に謝るが、アキュアは頬をぷくっと膨らませたまま顔を逸らした。

「……」

 気まずい空気が流れ始める。アキュアはなおもそっぽを向いている。
 と、その時、ミルドがおもむろに動き始めた。

「あっ……」

 そしてアキュアの後ろに回ってその背中をそっと抱きしめる。恋人からの不意打ちに思わず声が漏れる。

「ごめん」

 耳元でミルドが囁く。それだけでアキュアの心は恋慕と歓喜でいっぱいになっていった。ミルドがその体勢のまま、言葉を続けた。

「ごめんな」
「……本当に、反省しています?」
「もちろん」

 ミルドが答え、抱きしめる力を強める。アキュアが自分の前に来た腕に自らの手を当てて、目を閉じながら言った。

「マスターは、本当に反省していらっしゃるのでしょうか?」
「もちろんだよ。今からさっきの埋め合わせもするから」
「埋め合わせ?」

 期待の色を滲ませながらアキュアが尋ねる。頷いてミルドが耳元に口を近づけ、ぼそぼそと何事かを呟く。
 直後、アキュアの顔が目に見えて赤くなる。一瞬だけ目を大きく見開き、その後すぐに喜びと愛しさに顔を和ませる。
 その様子を見て小さく微笑んでからミルドが言った。

「いいよね?」
「……はい」

 熱っぽい声でアキュアが返す。

「今までの分まで……」
「ああ」
「……優しく……愛してください」
「ああ……」

 ミルドがアキュアの両肩を掴んで振り向かせ、それからゆっくりとその身を倒す。ミルドに上乗りにされた体勢で、アキュアが彼の頬に自分の手を当てる。
 ミルドが腰を浮かせて位置を調整し、アキュアがゆっくりと股を開く。
 お互いのそこは、既に前戯が必要ないくらいに濡れていた。

「んっ……」
「ちゅ……」

 軽くキスを交わし、唇を離してからミルドが言った。

「……行くよ」
「はい」

 第二ラウンドは朝まで続いた。
13/01/29 21:20更新 / 蒲焼

■作者メッセージ
「今度は縄ですか?」
「縛ってください!」
「勘弁してください」

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