読切小説
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桃太郎 魔物娘ver.
おばあさんはその大きな桃を家に持ち帰り、包丁で切ってみると
なんと 桃の中から男の子が!
おじいさんとおばあさんはびっくり仰天!
けれども2人の間には子供が出来なかったので、まさに天からの贈り物です。
それからその男の子は桃太郎と名づけられすくすくと育ちました。
そしてその頃、辺りには鬼が出没するようになり、人々は鬼を恐がり、ろくに外も歩けません。
そしてある日、桃太郎は鬼のねじろ、鬼ヶ島へいって鬼を退治してくると言い出します。
おじいさんとおばあさんは止めようとしましたが、桃太郎の決心はことのほか強く、しぶしぶ承知しました。
そして旅立つ日の朝、桃太郎はおじいさんに作ってもらった立派な旗と、
おばあさん手作りのきびだんごを持って鬼ヶ島へと旅立つのでした...


桃太郎が鬼ヶ島への道を歩いていると...

もーもたろさん ももたろさん お腰に付けたきびだんご 1つ私にくださいな

と、褐色肌で金ぴかな装飾を身に付けたお姉さんが現れました。

「全く、何で私がこんなことを...」
「...何か申しましたか?」
「いえっ お腰に付けたきびだんご 1つ私にくださいな」

桃太郎がきびだんごをあげて鬼ヶ島のことを話すと、
どうやら付いてきてくれるようです。
桃太郎は褐色肌のお姉さんを仲間にしてまた歩き出しました。




そしてしばらく歩いていると、

もーもたろさん ももたろさん お腰に付けたきびだんご 1つ私にくださいな

と、黄色の露出度の高い服を着た蜂さんが現れました。

「あれ?臼とか栗はどこにいったんだ?さっきまで一緒にいたのに...」
「...何か申しましたか?」
「ぇ?いや...きびだんご、1つくださいな」

桃太郎がまたきびだんごをあげて鬼ヶ島のことを話すと、
どうやら付いてきてくれるようです。
なんだか臼と栗を探しているみたいなので一緒に探してあげる条件付きで。
桃太郎は褐色肌のお姉さんと迷子の蜂さんを連れてまた歩き出しました。




そうしてしばらく歩いていると、

もーもたろさん ももたろさん♪ お腰に付けたきびだんごっ♪ 1つ私にくださいな♪

と、ノリノリの青い翼の女の子が現れました。

「ふふふ どぉ?私の歌声は...」
「...何か申されましたか?」
「...聞いていなかったとはいい度胸じゃないの...まぁいいわ
 きびだんご、1つちょーだいっ♪」

桃太郎がまたまたきびだんごをあげて以下省略。
ちょっと騒がしいけどムードメーカーの女の子が仲間になりました。
そうやって3人のお供を連れて桃太郎は鬼ヶ島へと向かうのでした。



ところは変わって鬼ヶ島。

「頭領!桃太郎とやらとその3体のお供がやってくるようです!」
「うぃ〜 ひっく ふふん いい度胸だな 桃太郎とやらは...
 興味が湧いてきたぞ?そやつは男か?」
「はいっ 残念ながら他3体は魔物ですが...いかが致しましょう」
「久方ぶりに私が行こう」
「とっ 頭領ご自身がですかっ!」
「もう随分と男を味わっておらぬからな...
 男を捕まえても私には似合わんなどとほざいて喰う奴がいるからのぉ...」
「じっ ジト目で私を見ないでください!それは私でh」
「ともかく! 桃太郎とやらは私がもらう」
「頭領が相手とは...その男も運が悪いですねぇ」
「ふふふ この溜まりに溜まった欲をぶつけてやるわぁっ!」



そのころ桃太郎は...

「うぅ...狭い」
「仕方ないんだ。これしか借りられなかったのだから」
「ねぇ〜 もう疲れたよぉ」
「栗〜ピーッ(女の子のタブーな単語)、どこだ〜?」

「あっ 島発見〜♪」
「やっとか...」
「臼〜...海の上にいるわけが無いか」



鬼ヶ島にて...

「頭領!見えましたか!あの船!」
「おぉ あのような船でこの荒波の最中を渡ってくるとは...」
「いえ、今日は比較的落ち着いた天候ですが...」
「言うな 台本に書いてあるのだ」
「おっと、これはすいません」
「とうとう来たなっ!桃太郎ぉぉぉぉぉっっっ!!」
「それもセリフですか?」
「いや、コレは雰囲気を盛り上げるためにだな...」
「単純に言いたかっただけの癖に...」
「何か言ったか?」「いえ何も」


「よし!到着したなっ」

比較的穏やかな荒波を越えてとうとう鬼ヶ島にたどり着いた桃太郎一行。
岩肌が露出しておりなんとも荒々しい鬼ヶ島はまさに鬼の住処だった。

「ううん...よく寝た。あらそこの坊や、私と契約しない?」
「あら、いいオトコ。どぉ?私に巻かれてみない?」
「こんなところに男が!それもいいオトコっ!」

桃太郎は辺りに沸き起こる歓声を見事に無視して先へと進む。
この先に鬼が...。

「おっと、ココから先へは進ませないぜ」
「そうだ。この先には我らが頭がいらっしゃる。通すことは出来んな」

赤鬼A、青鬼Aが現れたっ!コマンド?
...ゴスッ
すいませんちゃんとやるから許してくださいあぁっその関節はそっちには曲がらなっ!?
-しばらくお待ちください-
赤鬼と...青鬼が現れ、桃太郎たちの前に立ちふさがりました。
赤鬼は山へ芝刈りに...青鬼は川へ洗濯n...ぇ?違うんですか?
-しばらくお待ちください-
大変長らくお待たせいたしました。ナレーターの姉です。


赤鬼と青鬼が現れ、桃太郎たちの前に立ちふさがりました。

「ん?あぁ もういいので?
 コホン、私は女を斬りたくはない。どうか退いてもらえないだろうか」
「嫌だね。お前は私がもr...じゃない。かしらのところへは行かせない」
「そうだ。お前は私のもn...じゃない。ここで死んでもらおうっ!」

言うが早いか青鬼は肩に担いでいた大きな金棒を桃太郎めがけて振り下ろしました。
桃太郎はとっさに避けましたが頬をかすり、血が滲みます。
崩れかけた体勢を必死で立て直し刀を構える桃太郎。
しかし鬼たちはいくら待っても襲ってきません。
ふと見やると激しい口喧嘩の真っ最中でした。

「おいっ お前!私の婿に何をするっ!」
「誰がお前の婿だとっ!?アレは私のものだっ!」
「何だとっ!?今の言葉、聞き捨てならんな」
「アレは私の性奴隷にするのだっ!お前には渡さん!」
「なぁにおぅ!?」
「やるかっ!?」

桃太郎とその仲間たちは唖然と立ち尽くすばかり。
若干ながら桃太郎の表情が引きつっているようです。
鬼たちが喧嘩を始めると一番早く我に帰った青い翼の女の子が桃太郎にそっと耳打ちをしました。

「ふ〜っ」
「ひあっ!?」

セイレーンさんちゃんとセリフを言ってください。

「ちぇっ ちょっとふざけたっていいじゃない...
 桃太郎さん、今のうちですっ この隙に通り過ぎてしまいましょう」
「なるほど 今なら...」

桃太郎たちは鬼たちが喧嘩をしている間にわきを通ることにしました。
どうやら気付かれなかったようで、青い翼の女の子が桃太郎に接吻を要求しましたがスルーされ、涙目で文句を言う彼女を蜂さんが慰めながら、また頭領の下へ歩き出します。
そのあとはこれといった事件はなく、強いていうなれば褐色肌のお姉さんが石に躓いてこけ、桃太郎に背負われたことぐらいでした。

「おっ 重い」
「今聞き捨てならない一言が聞こえた気が...」
「き きっと気のせいでござる」
「そうか...しかしお前、そんなキャラだったっかな」

桃太郎はどうにかもう一人分の体重を支えながら頭領の城に着きました。
どうやら見張りがいるらしく、門の前に仁王立ちで立ちはだかっています。

「どうしよう」
「私が注意をひきつけましょう。
 なぁに大丈夫です。門の上から進入すればいいのですから」

蜂さんが囮になってくれるようです。
女の子を危険な目に合わせる訳には行かないと反論したものの、
他に方法がなかったのでしぶしぶ了承しました。

「では、いってまいります」

「...なっ なんだコイツはっ」
「ほぉら 鬼さんこちらっ」
「くっ ふざけやがってっ」

門番の割りに血気盛んな鬼さんたちはいとも簡単に挑発に引っかかり、蜂さんを追いかけてゆきます。
桃太郎たちは蜂さんに感謝しながら門をくぐり抜けました。

「とうとうここまできたか桃太郎よ」

目の前に今までの鬼よりもはるかに大きい赤鬼が立っていました。
どうやらこの鬼が他の鬼から頭領と呼ばれている人(魔物?)のようです。

「いや、ちょっとまってよ」
「なんだ?小娘」
「なんであんたがこんなところにいるのよ」

そういえばそうです。
本来はお城の最上階にいるはずのおかしらがこんなところに...

「! そうかっ!」
「き 急に何よ!びっくりさせないで!」
「これは罠なんだっ!」

そうです。そうに違いありません。
そうでなければいったいなんだというのでしょうか。

「...ナレーター。持ち上げているところ悪いんだが...」

はて?なんでしょうか?

「別に策でもなんでもない。私は早くこの男をくいt...じゃない。
 殺したいだけだ」

し、しかし、打ち合わせでは

「もう我慢ができんっ!桃太郎!私のモノになれっ!」
「き 急展開過ぎてついていけないのでござるよっ!?」

お、大きく振りかぶられた金棒が桃太郎のこめかみに吸い込まれそうになったその時!

「させないんだからっ!」

門番を撒いて帰ってきた蜂さんが鬼のおかしらに体当たりを食らわせました。
金棒の軌道は外れ、地を穿ちます。

「みっ 見事だ!」
「ふふふ あとでたっぷりご褒美くださいね?」

妖艶な笑みを浮かべた蜂さんはさりげなくご褒美をねだります。
しかしこれまたスルーされ、涙目になる蜂さん。
セイレーンさんが分かる、分かるよその気持ちとうんうん頷いている横で、
鬼のおかしらがゆっくりと立ち上がりました。

「め...目の前でいちゃつきおってからに...もう許さんっ!」

どうやら怒らせてしまったようです。
鬼さんは元々赤かった顔をさらに赤く染め、先ほどまで片手で持っていた金棒を両手で持ち直し、血走った目で桃太郎を狙います。
完全にブチ切れてしまった赤鬼さんの猛攻を必死でかわす桃太郎。
けれどもやっぱり桃太郎も桃から生まれたとはいえ人間なので、
魔物の赤鬼さんにかなうはずもありません。
仲間たちが一生懸命援護してくれるものの、赤鬼さんの勢いは留まるところを知らず、あっという間にバテてしまいました。
桃太郎は逃げながら考えます。

「一体どうすればあの化け物に勝てるのだろうか...」

と、そこで赤鬼さんと青鬼さんの会話を思い出します。
あの2人は桃太郎のことを取り合っていました。
けれどもそれは取って肉を食おうというものではなく、性的な何かを感じました。
そして鬼のおかしらが言っていた言葉...
もし本当にそうだとしたならば...

桃太郎は急に立ち止まりました。
桃太郎めがけて振り下ろされる金棒に仲間たちが小さく悲鳴を上げます。
なんとか紙一重で棍棒をかわし、赤鬼の懐にもぐりこむ桃太郎。
赤鬼はあわてて身を離そうとしますが次の桃太郎の行動に動きが止まりました。

ちゅっ



鬼のおかしらはひざから崩れ落ち、女の子座りで惚けた表情をしています。
それもそのはず、初めてのキスだったのですから。
桃太郎は仲間たちにぽかんと口を開けたまま見送られ、おかしらの前に立ちます。
そして膝をつき、そのあごを持ってもう一度接吻をしました。
その接吻で完全におかしらは骨抜きになってしまい、ぐったりと桃太郎に身を任せます。

「私の願いを聞いてはくれないだろうか...?」

その言葉におかしらは頷くしかありませんでした。




「それで...私たちに手を引いてほしいと?」

こくんと桃太郎は頷きました。
鬼のおかしらはどうにかカリスマを取り戻し、まだ口の端がふにゃけているものの、豪華な座に座っています。
桃太郎はもう一度請いました。

「あなたたちを拝見して悪い者ばかりではないと承知した。
 しかし、中身はともかくとして恐がられていることに変わりは無い。
 閉じこもっていろなどとは言わない。
 けれどもどうか行動を自粛して欲しい」

鬼のおかしらは難しそうな顔でうなり、少し考えます。
考えがまとまったのか、顔を上げて話し始めました。

「確かに私たちは少しいい気になっていた節がある。
 だから下の者たちには私から言い聞かせておこう」

桃太郎は思わずほっと息をつきました。
しかし鬼のおかしらはまだ話は終わっていないと大きな掌をあげました。

「けれども私たちとて生きねばならん。
 そのためには食物だけでなく男の性が必要なのだ
 だからこそ男を襲わなければならない」

今度は桃太郎がうなる番でした。
人を襲うのはなんとしてでもやめさせたいが、その原因はどうやっても解決できそうにない。
男性を供物としてささげるか?
否、残酷すぎる。
ならば魔物好きなおとk...そもそもそんな人たちがいるのだろうか?
いくら考えてもよい案は出てきませんでした。
故に桃太郎が出した苦肉の策は...。

「承知した。私がここに留まろう」
「それが何を意味するのか。分かっているのか?」
「ああ、ただし、私一人だ。仲間は解放しろ」
「ふむ...気に入った。もっとお前の事が好きになってしまいそうだ」
「ふふ 好きにするがいい。もう私は、あなたたちのものだ」



ことの顛末は城の外で待機していた仲間たちに伝えられた。
...桃太郎によって偽造された物語が。

「桃太郎が死んだ!?」
「きさまらっ 嘘をつくなっ!」
「嘘っ! あの人が死ぬはずが...」

仲間たちは認めなかった。
しかし赤鬼と青鬼が取り出したものによってしんと静まり返った。
彼女らが取り出したのはおそらく桃太郎のものであろう血で染まった、
真っ二つに折られた刀だった。

「あやつは...桃太郎はおかしらの怒りを買い、金棒で...」
「刀で見事に受けたのだが、おかしらの力の前では...」

赤鬼と青鬼は頭を垂れた。
仲間たちは涙を流しながらそれを受け取ると、島を離れていった。


桃太郎は、見ていた。
鬼の城の最上階から、二度と会うことは無いであろう彼女たちを。
一筋の透明な液体が頬を伝った。

「良かったのか?これで...」

背後から神妙な赤鬼の声が聞こえる。

「あぁ...これでいいんだ...これで...」

桃太郎は頬をぬぐって振り返った。
他の鬼よりも大きな赤鬼が心配そうな表情でこちらを伺っている。
桃太郎は安心させるように微笑み、赤鬼を抱きしめた。





その後、桃太郎を見た者はいない。
だが、鬼の乱暴な行いはだんだんと減ってゆき、反魔物派もまた減っていった。
老夫婦はこの朗報を聞いて、桃太郎が帰ってくることを心待ちにしていたが、とうとう顔を見ることは無くこの世を去った。


そして数十年がたち、何もかもが変わり果てたころ...
一人の青年が町外れのボロ家を訪れた。
隣には赤い肌の頭部に突起のある女性を連れている。
彼はゆっくりとそこに踏み込んだ。
ほこりが舞い、数十年、誰も訪れなかった土間に足跡をつけた。

少しばかり腐って崩れているところもあるが...
あの日から全く変わっていない...

青年は積もったほこりに顔をしかめながら、老夫婦を探す。
あの頃にしたかくれんぼのように、壷の中や筵の下を覗き込む。
そして、おそらく布団であったろう布きれをつまみあげると...

「見ぃつけた」

そこには白く、変わり果てた姿の老夫婦が仲良く横たわっていた。

「じっちゃ、ばっちゃ‥‥‥ただいま」

古い家屋の隙間から吹いてきた風がカタカタと老夫婦の顎骨を鳴らした...
10/10/09 18:46更新 / 緑青

■作者メッセージ
ネタで書いたはずがシリアスな結末になってしまいました。
どうしてこうなった!?

そして自分の語彙の無さにがっかりだよっ
最後がなんとも残念なクオリティに仕上がっておりますが、
断じて作者の責任ではありますん。

勢いでやった。後悔はしていない。
既出だったりしたらすいません。

あ、途中からナレーターのお姉さんが急な用事で出かけたため、
ベテランナレーターの母が緊急参戦致しました。

こっそりおまけ
「見ぃつけた」
「おやおや桃太郎じゃないかい」
「大きくなったのぉ...しかし営みに首を突っ込むのは戴けんなぁ」
「しっ 失礼しましたぁっ」
ある方の感想を受けての悪ふざけです。
魔物同士って...あるのかなぁ。

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