連載小説
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はじまり
アイラとモルトが出会ってから1年が経過した。

アイラ8歳
モルト7歳



~ 早朝 モルト家の前 ~

「ふんっ!ふんっ!」
シュッ!!
シュッ!!

「モルト、あなたまだ素振りをしているの?
朝からずーっと素振りばっかりしてるじゃない。」

「むっ!アイラ!!
ずーっとじゃないぞ!ちゃんと早朝ランニングを済ませてから素振りをしてるんだ!
ふんっ!ふんっ!」
シュッ!!シュッ!!

「ふーん……………
相変わらず頑張るわねぇ。モルトなんて弱っちいからそんなことしてもムダなのにねぇ……………」
クスッ

「む、無駄じゃない!
こうやって毎日地道に修行を続けて!そして僕はいずれこのレスカティエで1番強い勇者になるんだからな!」

「はいはい!
もう聞きあきたわその言葉、慣れると良いわね〜レスカティエで1の勇者様に〜
ま、天地がひっくり返っても無理でしょうけど!」

「む、無理じゃない!絶対に絶対になってやるんだ!
レスカティエ1の、いや!世界一の勇者になってやるんだ!そんでもってアイラなんかボッコボコにしてやるんだ!」

「はいはい!
じゃあ世界一の勇者様にこのアイラお姉さんが剣の指導をしてあげる。
ほら!かかってきなさい!世界一の勇者くん。」

「あ、アイラ!お姉さんぶるなよ!僕とひとつしか変わらないじゃないか!」

「お姉さんにはかわりないでしょ!?ほら、早くいらっしゃい!モルト!」

「くっそぉぉぉ!今日こそ泣かせてやるからか!!
うりゃぁぁぁぁ!!」
ブンブンブンッ!!

カシュッ!
ポコッ!

「うわぁぁぁぁぁん!」
ポタポタポタ

「はい、今日もモルトの負け!」

「今のはたまたまだ!まぐれだ!アイラ!もう一回勝負だ!今度は僕が勝つからな!」
ガバッ!!

「はいはい、いったいこのたまたまとかまぐれは何百回続くんでしょうね〜
はい!」

カシュッ!
サッ!
ポコッ!
ポコッ!
ポコッ!

「うわぁぁぁぁぁん!」
ポタポタポタ

「はい、モルトの負け〜
ふうっ………いい加減現実を見なさい!あなたは私に勝てないの!」

グスッ!!
「………………そんなことない!今は勝てなくても!いずれ必ず!絶対にアイラに勝ってやるからな!」

「ふ〜んそっかぁ、ま、せいぜい頑張ってね〜!
世界一の勇者くん!!」

「う、うわぁぁぁぁぁん!!アイラのばかぁ!この!!今に見てろよっ!!」
ダッダッダッダッ!!

「お昼御飯までには帰ってくるのよー!!」

(絶対に!絶対にアイラに勝ってやる!そしたらきっとアイラは僕の事を………えへ!えへへへ!!
よーし!見てよろ!!うぉぉぉぉ!!
毎日ランニング100キロ!
腕立て伏せと腹筋1000回!
スクワット10000回!
素振り100000回!
妥当アイラ!妥当アイラ!うぉぉぉぉ!!)





~ 数日後 ~

「リベットおじさん!モルトが倒れたって!?」
バッ!!

「ああ、アイラちゃんか…………
どうやらトレーニングの最中に軽い熱中症になっちゃったらしいんだ。」

「大丈夫なんですか?」

「ああ、もう大丈夫だよ。
アイラちゃん心配かけてごめんね、これからはおじさんもよくモルトの事を気にかけるようにするから。」

「分かりました………………全くモルトは!皆に心配かけて全く!!」
ガラッ!!
「モルト!」

パチッ!
「う〜ん、う、うん?アイラ?」

「モルト!全くもう無茶して!あなたはほんっとにもう馬鹿なんだから!」

「う、うるさいな!も、もう大丈夫だから!」
ヨロッ!

「ちょっと!どこ行く気よ!?」

「まだ…………スクワット10000回の途中なんだ!その後は素振り100000回を……………」
ヨロッ!

「馬鹿!モルトったらホントに大馬鹿!」
ポコッ!
「あなた熱中症で倒れたばっかりなのよ!?今日1日くらいら大人しく寝てなさい!」

「いやだ!トレーニングするんだ!トレーニングして!1日でも早くアイラに勝つんだ!」

「は?わ、私に!?な、なに言ってるのよ!」

「毎日死ぬ気でトレーニングして!早くアイラに勝つんだ!そしていずれはレスカティエで1番の!いや!世界で1番の勇者になるんだ!」

「…………………はぁ、モルトがここまで馬鹿だとは、なんだか心配してた私のほうが馬鹿みたいじゃない。」

「なんだとぉ!」

「モルト!あなたってば私を倒す前に自分で倒れちゃってるじゃない!そんな事になったら私を倒すもなにもないでしょって言ってるの!!」
ボコッ!

「痛い!グーで殴った!!」

「いい!よく聞きなさい!健康管理も立派なトレーニングの一環なの!ただ根詰めて頑張るだけじゃ勝てるものも勝てないの!先にモルトが限界を迎えるだけなの!
わかる!?」

「うぅ………………」

「ちょっとそこに寝て身体見せなさい!」
ガバッ!!

「わ、や、やめろよぉ!」

「あーあ!こんなに全身の筋肉を強張らせて!それに腰も間接もギシギシ悲鳴あげてるじゃない!このままのペースで無理したらすぐにヘルニアとか肉離れとかになって歩くことも困難な身体になっちゃうわよ!
わかったら今はとにかく寝てなさい!濡れタオルで脇とか間接の内側とか冷やして身体を休めなさい!」
ピタッ!!

ピクッ!
「うわっ!冷たい!わかった!わかったからそんなところ触るなよ!」
ピクッ!

「そんなところってなによ!ガキの癖に変なこと考えてるんじゃないの!」
ゴシゴシッ!!

「ふぁっ!!うっ!!ふわぁぁぁ♥️」
ビクッ!!ビクッ!!





「変な声ださないの!いい!?明日から私が無理のない効率的なトレーニングメニューを考えてあげるからそれだけをこなしなさい!
無理なトレーニングは今後一切禁止!」

「うう、なんだよそれぇ」

ふたりの奇妙な関係はこうして始まった。
19/09/25 16:35更新 / J2
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■作者メッセージ
・アイラとモルトの両親
レスカティエは重税国家のため、お互い両親共働きである。それも結構遅くまで働いている。
その為アイラとモルトは夜遅くまでふたりでいることが多かった。
もちろんこれからも多い(重要)

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