「はぁ〜ぁあ…なんで今日に限ってアイツっ! 予定が空いてないのよっ!」
梅雨明け前の時期、そんなある夜のこと。
…この日は軽い小雨が降っていた。
どこかの中級３０階建てマンションの一室、具体的にいうと１０階の一つ、【金田】という表札のある住居にて寝間着姿(ほとんど下着ですが…)の女性、いや狐の女性がソファへと携帯電話を八つ当たりするように放り投げて隣の部屋の扉を強引に開けてそのまま奥へと行ってしまう。
そこはスモークピンクと黒のコントラストが目をひく寝室のようで…綺麗にシーツがひかれたベッドへ彼女は拗ねた顔のまま体をベッドへダイブさせ、ポフッという柔らかな着地音と共にクッションを利かせシーツの中へ蹲る。

「…しかも今日に限ってムラムラするし…どうしてくれんのよっ!」
顔を何度もお気に入りであろうビーズ入りの枕に擦り付けて文句を垂らすその姿は夢見る少女のようだが、先の自己申告通り彼女は今火照っているらしく目が少しだけトロンとしている。
その間も尻尾はタシン…タシン…とすこし早いベースでベッドを叩いては揺らぎ、叩いては揺らぐのでそれだけでも彼女の表情をうかがい知るには十分のようだ。

「…久々に…してみようかな…」
いうが早いか彼女はうつ伏せになった体勢を横へ転がることで顔やその豊かな胸を侍従の圧迫から解放する。
…改めて彼女のラインを凝視すればE〜Fくらいの大きな胸に柳腰というアンバランスさの中に美しさがあり、腰から伸びる４本の尻尾はそのアンバランスの上下差を補うように添えられたアクセントのようだ。

「…んっ♪」
シーツの上で身じろいだ彼女は胸を覆う派手さの少ないネイビーのコットンブラ越しに右の乳房の頂点、そのふくらみを右手で包むようにしながら人差し指で引っ掻くような動作でシュッシュッと擦るように刺激し始めた。
その胸の愛撫をしつつ空いている左手を腹へあてつつ徐々に指で肌をなぞりながら…ブラと同色且つやはりこちらも派手さがないショーツの縦筋の窪みに合わせ、右手と同じようにその秘裂を布越しに擦り出す。

「ぁぅん♪…んくぅ…ん♪」
右手で包んでいる胸を手全体を使ってクニクニと揉み解しながら再び人差し指による刺激、それもある程度してくると今度は乳首を布ごとギュッと摘まんで…離す。
漏れる吐息には快感の感情…よりも切なさのほうが多かった。
彼女とて魔物であり、しかも男がいるのならば…交わりだって多々あることだろう。
そんな彼女がそんな生ぬるい愛撫だけで満足するとはとても思えない…。

「ぁ…んぅっ! くぅぅ…はぁん…っぁっ♪」
優しく労わるように揉んでいた乳房だが彼女はその刺激だけでは満足できなくなり…もっと強く、荒々しく、まるで男との激しい交わりの中の一部を再現するような強さへと変わっていく。
勿論、上がそれだけ激しくなってしまえば下も言わずもがな。

「はぁん♪　ク、クリ…こしゅこしゅ…ぁん♪」
秘裂をただ線に沿って触れていただけの優しいものから、胸への愛撫に合わせ激しく擦り出しては止め、親指の付け根のふくらみで布越しに自己主張する突起をグリグリとせめて再び秘裂を擦り出す。
しかしそれも最初だけですぐにクリへの愛撫方法は親指の腹へ、更にはされで満足できない為に程よく手入れされた爪でキュッキュと乳首と同じように摘みだした妖狐。
その顔は恍惚に染まりきっており短く上げる嬌声もだんだん大きく、長くなっていく。

「…きゃぅぅん♪　じかぁ…きもちぃぃっっ♪」
そしてそれらすべての愛撫、その数倍以上に快感をえる方法…直擦りに移るころには顔や細くくびれた腰や腹には珠の汗が浮かび上がりそれらが衣よりも艶やかな妖狐の皮膚を伝ってベットへと落ちる。
ブラを首元へ上げてより乱暴に鷲掴み愛撫し、ショーツはクロッチ部をずらすことで秘部を露わにして大陰唇ごと摘まんだりクリを捻ったり…
彼女がそれらのアクションに一々体が跳ねて反応し、ベットにいる彼女の下へ敷かれたシーツは彼女の体格に合わせた形に湿り気を帯びて…一部はすでに吸水しきれずに液面が残っている。

「はぁはぁ…あっ…」
うつろに為りかけた彼女の視界にふと移る枕。
その枕には「Yes!」と「Now!!」の二面プリントがされてあり、ビーズ入りの今のジメっとした季節にはちょうどいいものである。
…そして今この場にいない彼のお気に入りでもある。

「…ぁっ♪　アイツの…匂い…」
少しだけ位置をずらしてその枕に顔を埋めながらスンスンと匂いをかぐ。
たったそれだけなのだが、彼女にとってオナニーを加速させるには充分であった。
匂いを嗅ぎながらすべての手を下半身に行き渡らせて、顔と胸を枕の上から覆いかぶさるようにうつ伏せになった妖狐。
男性用というだけありかなり大判のその枕へ自分の…発情しきった雌狐の匂いを刷り込むかのごとく口から洩れる声と涎を、胸の突起と濃厚な狐汗を身を攀じることで塗り付けまくった。
対して下半身は彼に後ろから突き入れられているのを想像したのか高く尻を持ち上げて前側から両腕を宛がいクリと大陰唇と菊門を同時に攻め、時折尻尾をコシコシとすり出しては全身の毛を逆立てて耳をぴくりと痙攣させる。
どんどん進む快楽への最終点までの階段を昇る妖狐の尻尾、そのふり幅がもっとも大きくなったとき。
ふわりふわり、尻尾が急激に膨らんで…

「ぁっ♪　んぅぅ♪　ぁぁっ、し、しっぽぉ…ほぐれ…ちゃっ…♪」
なんと、しっぽがプルプルと小刻みに揺れたと思ったら４尾だった尻尾がつぼみが花咲くように７尾になってベッドの上で開花したではないか。
…どうやら普段は４尾ということにしているらしいが、何故かは彼女は語ろうとはしない。

肩甲骨裏に切りそろえられた金髪を汗で体に張り付かせ、荒い息を吐きながら続ける自慰。
枕へとより密着した状態で顔を埋めた瞬間。
その瞬間とシンクロさせるように尻尾の付け根とクリトリスを千切れる程に強くひねり上げて…

「っっ〜〜っっ!! 〜〜♪」
７本の尻尾が一斉にブワッと大きく広がって耳がこれでもかと立ち上がる。
…どうやら果ててしまったようだ。

「…はあぁっ♪　…ﾊｧﾊｧ…ﾊｧ…うぅ…さみしぃよぉ…せつないよぉ…」
余韻に浸かってしばらく息を整えていた妖狐はうずまっていた枕から顔を上げて息を吸い込み暫し沈黙して…枕を愛液でべっとり濡れた両腕で抱くようにして切なげな声を漏らす。
耳も垂れ下がり、尻尾なんてベッドへと張り付けられたかのようにまっ平らになってしまった。

だがそんな状態の彼女に関係なく急に、なんの前触れもなく鳴りだす携帯のバイブレータ音。

「…もぅ、誰よ!? せっかく人が気持ちよくなっていたのにっ!」
隣部屋のソファに投げ出した携帯からの着信を告げるものだ。
妖狐はさきほどまでの切ない表情から一変しさも面倒な表情をしつつベッドから立ち上がりソファにあった携帯を拾い上げる。

「…あ、アイツ…だ…」
その携帯に表示されていた人物は妖狐が先ほどまでオナニーしていた枕の持ち主で、妖狐の思い人である『彼』からのものであった。
妖狐はすぐに携帯の通話ボタンを押して顔を近づける。

「もしもし? どうしたn…え? 外をみて?」
妖狐は裸のまま外を見るのもアレかと思ったのか走って渇いてある洗濯物の中からふだん着ている淡い色のピンクと黒の混色ブラと薄手のキャミソール、パンツと一体型の黒いフリルスカートを装着して自宅マンションのベランダへ続く窓をスライドさせる。
そしてベランダのテラスまで歩いていくと…

「っ…」
外はすでに晴れており、頭上では星空がすごくきれいであった。
そして眼下には彼が肩を大きく息をしながら妖狐へ向けて大きく手を振っていた。
…ただし全裸で且つマンションに備え付けられた飛び込み台がついた大きなプール前にて。
余談だがこのプール、マンションにいる住人なら自由に使っていいというオーナーのちょっとした心意気である。
妖狐が理由を聞くために繋げてあった携帯へと問いかければ…

「えっ? …私に早く会いたくて…繋がりたくて作業を終わらせてきた…の…っ!」
当初入っていた予定を大幅に切り上げてやってきたらしい彼。
妖狐は彼が今日来ないものと思っていたのでうれしさも一入である。

「…え? 今日は暑いからプールで泳いでからしないか?…えぇ!? オーナーに頼んで貸切!? …ふふ♪　まってて! 」
彼女はせっかくきた服をまたすべて脱いで携帯も抛り出し、生まれたままの姿になるやテラスへと足をかけて…そのま彼の手前にある飛び込み用の深度が深いプールヘ飛び込んだっ!
妖狐の部屋は有事の際プールへと飛び込める位置にあるゆえの芸当であり、１０Fから飛び込んだ彼女は勢いよく水しぶきを上げて着水した。
彼が無音となったプールをじっと見つめればこちらに向かって泳ぐ影。
その影は水中からライトアップさけたプールノ中で金色の毛をたゆたわせながら進んでいき…プールサイドへと手をかけ、髪を水から振りほどくようにしてたなびかせて地上へと降り立った。

「…今日は待った分…たっぷり、とね♪」
髪からしずくを滴らせる彼女は手を差し出してきた彼の手をつかみながらそう呟く。


そして引き上げられた勢いのまま…愛しの彼の胸の中へと飛び込んだ。

ーーーあぁ、今夜は激しそうだ♪

【完】