連載小説
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7/7 『七夕』

『あ、あー・・・んっ、んー!
おはよう諸君!何故だかすごく久しぶりな気がしてならないが、本日は学園が休講だからと言ってゴロゴロして非生産的な一日を過ごすつもりだったものが大半だったと思うので、早起きさせて健康指導と思ったほうがいいかな!ハッハッハッハッハッ!これ前も言ったっけ?』

リクラスト学園、早朝。
いつかあったときのように、全校生徒が校庭に集まっての朝礼が始まっていた。

「前回は・・・なんだっけか?」
「10月くらいのハロウィンだったかと・・・?」
「・・・1年前・・・学年・・・サ◯エさん現象・・・うっ、頭が・・・」

1回生のベルン、ネフィアはわずかに感じた違和感に首を傾げ、ロックは頭痛を訴えて頭を押さえた。

『さて諸君!本日は7月7日!恋バナが好きな魔物娘諸君と、ジパングからの留学生は何があるかわかるだろうね!』

校長の声に、学生の大半が元気の良い『オーッ!』という雄叫びを上げた。

「・・・なにかありましたっけ?」
「さぁ?」

「・・・ジパングってことは、『タナバタ』じゃないか?」

ネフィアとロックが首を傾げたところ、ベルンがポツリと口にした。

「タナバタ?なんだそれ?」

「確か、『タンザク』というものを植物に吊るしておくと、イチャついたカップルが融通聞かせて願いを聞いてくれるとか」

「滅茶苦茶なホラを流布するな、ベルン」

うろ覚えで話すベルンの頭を小突いたのは、生徒会役員の天月であった。

「お、ロリコン役員」
「あ、生徒会長狙いの無謀者」

貴様らたたっ斬られたいのか

ベルン・ロックの悪ふざけに天月が刀に手をかけると、ネフィアが慌ててフォローを入れた。

「えっと!天月さん、タナバタってなんなんですか?」

「・・・手短に言えば、七夕は織姫様と彦星様の逢瀬の記念日だ。古いジパングの風習で、真面目であった両者は結婚を機に堕落し、怒った神が両者を天の川で会えぬようにしてしまうのだが7月7日のみ会うことを許された、という伝説にちなまれている。その日に笹に願い事を書いた短冊を吊れば、織姫様と彦星様が願い事が叶えてくださる、とも言われるな」

天月の説明を聞いた3人はしばらく悩むと、口を揃えて言った。

『・・・大体合ってないか?』

「・・・あれ?」

違う、と否定しようとした天月だが、どこが違っていたのかわからなくなってしまった。

『さて、浮かれるみんなに、本日のイベント『七夕、笹願い』の説明を行おう!』

おっほんと咳払いした校長が話を続けた。

『七夕とはそもそも、仲睦まじい夫婦が仕事をサボるようになったために仲を割かれ、年に一度の逢瀬を祝うものであるらしい・・・だがしかし!君ら生徒は若く、性的な意味で逞しく、そして何より好きな人と離れ離れなものは少ない!よって理由なんてどうでもいいから願い事を叶えて欲しい!という、花より男女なものが多いだろう!!
ということで、本日昼12時から夕方7時まで、校庭に笹を用意する!全生徒・全教師は笹に短冊を吊るしたまえ!
そして7時から、私の独断と偏見による抽選を行い、願い事をサポートしてやろう!
であるからして、私が叶えられそうな願い事、かつ目立つ色や形の短冊などにするとよいかもしれないな!!』

校長の言葉に、生徒たちから期待と楽しみの混じったざわめきがおき始める。ベルンたちはというと、ベルン・ネフィアがため息を吐き、ロックと天月が興味を出していた。

「はいはい、いつもの騒ぎイベントだよ」

「・・・また、振り回されるのかな・・・」

「・・・天月、お前んとこも動くのか」

「無論、生徒会は人混み整理に駆り出される・・・笹に一番近づきやすいポジションでもあるわけだ・・・」

天月がニヤリと笑った時、校長が続きを喋り始めた。

『例えば、去年は『◯◯君と一晩楽しみたい!』という願い事があったので・・・一晩外泊許可書と近隣都市最高クラスのホテル宿泊券をプレゼントした!もちろんそのカップルは次の日朝帰りして男子はインキュバス化していたな!ハッハッハッハッ!

さて、最低限のルールを話しておく。
ひとつ!男女問わず、他人の願い事の内容を指定・強要しないこと!
ふたつ!他人の短冊を下ろしたりしないこと!
みっつ!抽選に選ばれても、私が願い事を叶えるのが無理だと判断したら諦めること!

これだけである!最低限のルールを守り、自分の願い事が叶えてもらえるかドキドキすべし!
説明は以上!朝礼、解散!』

校長の一言に、多くのものが部屋へと帰って行った。短冊を作りにいくものが過半数であろう。そんな中、ベルンたちは立ち話を始めていた。

「ネフィアはどうする?参加するのか?」

「参加しない方がいいかなと思ってましたが・・・ひとつ、吊り下げようと思います・・・保険に・・・」

「お、おう・・・大変だな・・・」

ネフィアの暗い表情に、ベルンは哀れみの声を出した。

「天月殿、ひとつ、取引をしようじゃあないか」

「ほう、ロック殿。如何様な内容で?」

「俺の短冊を目立つような場所に吊るしてくれ・・・それも時間ギリギリのタイミングで・・・」

「見返りは?」

「食堂利用タダ券1週間分はどうだ」

「乗った」

対するロックたちは裏取引のようなことを始め、握手しながら低い声で笑っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


さて、あっという間に夕方。
7時前には、校庭に設置された数十本の笹に所狭しと短冊が吊られていた。

「あれを見ると、全校生徒数がいくらなのかわかんなくなるな」

「だな」

ベルンとロックは、笹に願い事を吊り下げた後、人の集まっている場所から離れて座っていた。

「笹の吊られた願い見ようにもすごい人垣だよな」

「ありゃ天月かわいそうだな」

遠巻きにでも、人々を整理する天月他の生徒会役員が声を張り上げてやっているのが聞こえていた。

「あら、ベルンくん」
「こんなとこにいたの、ベルン」
「やっほ〜、ベルンく〜ん」
「兄様・・・♥」

「面白い人みーっけ!」
「よぉ、ロック!」
「生徒は騒ぎに乗じてもっと遊ぶべきですよー?」

そんな二人の元に、メデューサのサティア・サキュバスのクラリア・ホルスタウルスのミルキィ・大百足の成美、ラージマウスのラトラ・ドワーフのフェラン・魔女のファ先生がやってきた。

「・・・いきなり大所帯が来たな」

ロリは帰れ!帰ってください!

ベルンが疲れたような顔をしたが、猛烈に叫んだロックにより女子陣営には見られなかった。

「えぇ〜、面白い人ひどーい!肩に乗ってやる」
「帰れと言われると、帰りたくなくなるよねぇ」
「先生に向かっていい度胸じゃないですか〜?」

「いや!やめて!ロリだらけに!ロリ漬けになるぅ!」

ロックとロリ集団がわちゃわちゃする横で、ベルンたちの雑談が始まった。

「みんな短冊は吊るして来たのか?」

「ま、まぁね」

サティアはなぜか目をそらしながら肯定する。ベルンが首を傾げて問い詰めようとしたが、そこにクラリアが割って入った。

「ベルンくん、私の短冊が読まれること、覚悟してくださいね♥」

「へ・・・おまっ!?まさか・・・」

「あ、言っときますけど、『ホテルに連れ込む』、とかではないですわ・・・バラしてしまいますと、『もう一度、プロポーズのやり直しをお願いする』、よ」

小悪魔的笑みを浮かべて言ったクラリアの言葉に、ベルンは一瞬惚け、すぐさま学祭後夜祭(「11月中旬『文化祭 午後の部』後編」を参照)でやったことを思い出した。

「・・・待つんじゃ、なかったのかよ」

「女の子はせっかちなのよ」

「・・・ちょ!なに!?プロポーズのやり直しってなに!!?

クラリアがウィンクで返した瞬間、サティアがクラリアに食ってかかった。

「貴女には関係ないことですわよ〜」

「ふっざけんじゃないわよ!?アッ、アンタ、ベルンに一体なにををををを!!!」

サティアにガクガク揺さぶられながら涼しい顔で返すクラリア。気まずく頭を掻くベルンに、今度はミルキィが後ろから覆いかぶさるようにして話しかけた。

「ベルンくん、ベルンくん。私はね〜」

「・・・ミルキィ、お姉さん・・・首が痛いです」

「え〜、私太ってないよ〜!」

(乳が重いんですよ・・・とは言えん)

ベルンの頭に乗ってる大きな二つのメロンを、ロックはロリに絡まれながら羨望の眼差しで凝視していた。

「あ、それでね〜、私はね〜『ベルンくんと雪華とムートと一日遊びたい』って書いたの〜」

「遊びたい・・・ですか・・・」
(この人は『遊ぶ』なんだろうけど、他二人はどうなんだろうな・・・)

ご機嫌に話すミルキィに横槍を入れたのは成美であった。

「兄様・・・私も、短冊を吊るしました」

「成美はジパング出身だから毎年やってたのか?」

「はい・・・今までは『家内安全』と吊っていたのですが・・・今年は変えました」

「どんなのにしたんだ?」

「はい・・・『害虫駆除』と」

成美が目元に影を落としながら言うと、サティア以下、ベルンLOVERズが成美をギロリと睨んだ。

「なんだ?寮に虫でも出たのか?」

「私、兄様のそういうとこ・・・悪くないと思います」

「は?へ??」



「面白い人ー!私ね、『ちーずたくさん!』って書いた!」
「私は『魔界オリハルコン求む』!」
「先生は『目指せ、今年のサバト勧誘10人』ですよ!」

「物欲というか食欲かよ!オリハルコンとか学校赤字にする気か!先生に至っては目標だよね!ベルン助けて!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『えー、それではぁ!今から、短冊の抽選を行う!!!今日は10人分くらい、抽選をするぞぉ!!!』

校庭の中心からの校長の叫びに、ほぼ全生徒の雄叫びが呼応する。ベルンたちは先ほどの場所から遠巻きに見ていた。

「そういやベルンはなんて書いたんだ?」

「え?いや、ふつーに『一年健康でいられますように』って」

そのベルンの答えに、ロックを始め、女子メンバーも深い深いため息をついた。

「こんなイベントでそんなつまらねー願いを書いたのかよ」

「お前の『ハーレム結成!』よかマシだ」

「ばっ・・・見てたのか!?」

「・・・いや、すまん。テキトー」

ベルンの引いた答えにハッとロックが見回すと、サティアたちはドン引き、ロリっ娘、特にファ先生が目を光らせていた。

『最初の願い事は・・・くぉれだぁぁぁぁぁぁっ!!!』

校長が書かれた内容を見ずにひとつの笹から取った短冊を天にかかげると、魔力の織りなす不思議な光(要約:細かいことは気にしない)が短冊から空へ上がり、ピカッと瞬いたのち、光り輝く文字が夜空に光った。



もっと彼に対して素直になりたい



「ぎゃーーーーーーーーーっ!!!」

瞬間、どこからか叫び声が轟き、エルフの生徒が寮に向かって顔を覆いながら走り去って行った。それに続き、生徒たちが急にざわめき始めた。

『あ、言うのを忘れていた。願い事はこうやって空に掲示される。願い事を叶えてもらう際は周りにも周知される恥ずかしさを乗り越えてもらうぞ!わっはっはっはっはっ!!!』

『ぎゃーーーーーーーーーっ!!!』

続いて大量の生徒が叫び声を上げ短冊回収を試み始めたが、いつの間にか笹の周りに魔法防壁が張られて近づくことさえできなかった。

「うっわ・・・えぐい・・・」

「校長・・・なんという・・・策士・・・」

ベルンは引き、ロックは一気に脂汗を書き始めていた。しかし周りの女子メンツは涼しい顔をしていた。

(これは願ってもないチャンス・・・公衆の面前でベルンくんにプロポーズまがいでもしてもらえれば、マーキング完了ですわ)

(これなら、雪華もムートもすぐ知れるから楽だな〜♪)

(別に、知られても構わない・・・兄様さえ真の意味を理解しなければ・・・)

こういう風に各々が思う中、ひとり、ロックと同じように脂汗を流す者がいた。

「・・・?おい、サティア、大丈夫か?」

「だっ、ダイジョウブよ。シンパイないわ」

「いや、汗すっげぇぞ・・・」

サティアは汗を滝のように流し、目が泳ぎ、髪の蛇たちが右往左往していた。

『先ほどのエルフの生徒には、そうだな・・・異性に対して素直になりたいならマタンゴモドキを差し上げよう!あ、本人の寮の部屋に直接配達するから名前ばれはしないようにするぞ!』

わっはっはと笑う校長であるが、名前バレしないにしても自分の欲望を曝け出される羞恥に、生徒たちがソワソワしっぱなしである。

『では次は・・・くぉれだぁぁぁぁぁぁっ!!!』

次の校長の選んだ短冊から、光が空に昇った。



リーフ先生とお食事したい



『ズッシャァァァァァァンッ!!!』

瞬間、慌ただしい生徒たちの整理をしていた天月が膝をつき、血を吐いて倒れた。

(・・・生徒会長か)
(・・・会長さんのか)

天月の恋愛事情を知るベルンとロックは、天月に静かに手を合わせた。

『ほぅ、リーフ先生も隅におけませんな!ではこの生徒には近隣都市で高級レストランを予約してあげよう!って、そこの生徒会役員はどうしたんだ?』

いつもは敏感な校長が首を傾げる目の前で、倒れた天月が保険委員の担架で運ばれて行った。

『では次の願い事を選ぼうか。ふーむ・・・くぉれだぁぁぁぁぁぁっ!!!』

また校長が無作為に短冊を取ると、短冊からの光が瞬いた。



校長、仕事してください



その光を見た瞬間、生徒たちからドッと笑いがあがる。校長は表情を固めたまま辺りを見回すと、無表情で『なにか?』とでも言いたげなリーフ先生と目があっていた。

「・・・ぜ、善処しよう」

「ジパングではそれは『NO』という意味だと耳にしましたが」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・

それから幾人かの願い事(内容は、カップルがその数だけホテルに行ったとだけ言っておく)が選び出され、とうとう最後となり、校長は内容を見るわけでもなく笹の間をウロウロしていた。

「こいっ・・・こいっ・・・俺のロリ抜きハーレムッ・・・」

「・・・願い事が叶うことを願うってなんかおかしいよな」

ベルンが言う横で、ロックは手を合わせて懇願していた。
ちなみに、サティアも手を合わせてブツブツ言っていた。

(・・・選ばれませんように・・・選ばれませんように・・・)

「・・・なぁ、サティア。一体なに書い・・・」

その時、校長の大声が響いた。


「いよぉっし!!!それでは最後の願い事はッ・・・くぉれだぁぁぁぁぁぁっ!!!」


校長の大声ともに短冊がかかげられ、光が夜空に文字を作った。




パパとママが冒険で怪我をしませんように




その文字を見た時、校庭にいる全員がシィンと静まり返り、しばらくして校長の鼻をすする音が鳴った。

「おぉ・・・なんと親思いな願いだろうか・・・涙もろい私には耐えられない願いだッ!!!おぉぉぉぉぉん!!!」

校長の大声の泣きわめきに、周りの教師・生徒は例外なく全員、大げさな、と言いたげな顔をしていた。

「・・・ん?あら!?」

その時、クラリアはベルンとサティアの姿が見えないことに気づいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「・・・お、見つけた」

ベルンは、校舎を挟んで校庭の反対側、女子寮近くのベンチで顔を覆って座っているサティアを見つけた。

「いきなり走ってどっか行くからビックリしたぞ」

「・・・・・・」

顔を手のひらで覆っているため表情はわからないが、サティアの耳まで真っ赤になっているのが見てとれた。

「・・・まぁ、お前らしいっちゃお前らしい願い事だよな」

ベルンの言葉に、サティアがガバリと顔を上げた。その顔は真っ赤に染まり、頭から湯気が出ていた。

(あ・・・やべ・・・)

「・・・見たのね?見たんでしょ見やがったのね!忘れろぉぉぉっ!!!

サティアはベルンの首をつかんでへし折らんばかりの勢いで前後にガッコンガッコン振り回した。

「ぐげぇぇぇ!!ちゃ、ま、死ぬ!死ぬって!!!」

「人間って、気絶する前後の記憶失うのよね!よし気絶しろ!」

「お前それ全員にやる気か!?」

なんとかサティアを引っぺがしたベルンは、落ち着いて顔の色が戻ったサティアと共に肩で息をしてベンチに座った。

「・・・あんな願い事のどこが恥ずかしいんだよ」

「い、今になって親離れできてないみたいじゃん・・・」

「おじさんのこと思ったらあぁいう願い出るだろ。未だに魔物娘に襲われたりするらしいじゃんか・・・おばさんが追い払ってるらしいけど」

「この前、アポピス固めたって聞いた」

「おばさんの種族限界突破具合が笑えないな・・・まぁ、お前らしい、優しい願い事だったな」

「・・・あ、ありがと」

それからしばらく双方黙り、ベルンが「そういえば」と切り出した。

「お前は他の奴らみたいな願いはないのか」

「・・・他の奴らって?」

「ほら『〜と仲良くなりたい』とか『〜とカップルになりたい』とかの」

すると、サティアはまたうっすらと頬を赤らめながらベルンを睨んだ。

「・・・じゃあ・・・き、『キスしたい』って願い事があったら、アンタ、協力してくれるの?」

「・・・?なんで俺が?校長じゃねぇの?」

瞬間、サティアの顔がカッと赤くなり、勢い任せの拳がベンチに叩きつけられた。ベキッという音とともに破壊されたベンチの背もたれにギョッとするベルンに、サティアが詰め寄った。

「アンタここまで言われて分かんないわけ!?この鈍感!唐変木!朴念仁!にぶちん!」

「へ、へ???」

「キスしたいって願い事がある、アンタに協力を求める、加えてこんな二人っきりのシチュ!少しぐらい色気づいて頭回しなさいよ!頭ん中リボルバーと本の知識で埋め尽くされてんじゃないの!!?」

真っ赤な顔でぐいぐい詰め寄るサティアと、ベンチの端ギリギリまで下がったベルンの顔は、もう息がかかり合うくらいの距離だった。

「お、落ち着けよ・・・つまり、どういうことだよ」

「だっ、だから!わっ、私の・・・キスの・・・」

ここまできて自分たちの姿勢を自覚し恥ずかしさを覚えたサティアだったが、必死に言葉を紡ぐ。

「キスの?」

「きっ、キスの・・・あ、あ・・・」

「・・・あ?」

「あっ、相手は・・・」

「・・・・・・」

しばらく、サティアは言い淀んだが、ついに決心して叫んだ。



「・・・あっ、相手は!ア「あらこんなところにお二人いましたの」



瞬間、ベルンの耳をシパァーンッという音とともに手のひらで塞ぎながら、クラリアが割り込んだ。
(耳を勢い良く手のひらで塞ぐと、誤って鼓膜を突き破る恐れがございますので、イケメンリア充以外は絶対に真似しないでください。リア充は鼓膜破れ

「ぎゃあああああ!!耳ッ!耳いでぇぇぇっ!?クラリア!おまっ、鼓膜破る気かよ!!?」

「あらごめんなさい、ちょっとしたイタズラのつもりだったんですわ」

カラカラと笑うクラリアの前で、ふいに、ベルンの身体がベンチごと持ち上がった。

「ん?お!?うおぉ!?」

「あら」



「・・・ク〜ラ〜リ〜アァ・・・」



ベンチから転げ落ちたベルンが見たのは、ベンチを持ち上げ、まるで親の仇でも見るかのような、憤怒と憎悪にまみれたサティアであった。

「あら、サティアさんったら、はしたないですわね」

遺言はあるかしら

「そうねぇ・・・ベルンくんの子を産んでからならいつでもいいわよ♥」

死 ぬ が い い


・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・

しばらくして、リーフ先生の元に『女子生徒が暴れてる』との報告があり、胃をおさえることになる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「くそぅ・・・俺のハーレム計画がぁ・・・」

しくしくと泣きながら眠る二段ベッドの下で、ベルンは考え事をしていた。

(・・・・・・)

頭の中で考えてるのはサティアの言葉である。キスの相手が誰なのか、なぜ自分に協力を求めたのか。もしかして・・・

(・・・いや、自惚れはよくないな、うん)

一瞬頭に浮かんだ考えを振り払うように、ベルンはしくしく泣いてうるさいロックにベッドを下から蹴って講義するのであった。

14/07/10 10:58更新 / ganota_Mk2
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■作者メッセージ
久しぶりに書いたぜ7000文字オーバー!
え?七夕に遅刻?何を言っているんだ、今は7月7日82時58分じゃないかごめんなさい
これからぼちぼち調子を取り戻していこうと思ってます。
エロがまだ書けない・・・

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