読切小説
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頭痛にBAFFORIN
うぅ、風邪引いた。頭がガンガンする……。
やっぱりこんなボロアパートにするんじゃなかった。クソ寒ぃ。
ええっと薬薬っと、あ、無くなってる。
面倒臭がって補充しなかったのがまさかこんなことになるとは。恨むぞ、過去の僕よ。

……今は薬買いに行く気力もないし、取り敢えず寝るかなぁ。



ピンポーン
ピンポピンポーン
ピピピピンポーン
ピピピピピピピピピピピピピピピピンポーン


……うーん、頭痛いのに十六連打は勘弁していただきたい。
今開けますよーっと
「遅いのじゃ! 早く入れてくれんと寒くて凍えそうじゃ」

なんだ、バフォ様だったんですか。すいません、ついさっきまで寝てたもんで。
あ、けど今日は帰ってもらえませんか?
今風邪引いてるんですよ。移しちゃったら大変だし。

「ふふん、なんじゃそんなことか。儂は風邪なぞ引かんから大丈夫じゃ」

それは……馬鹿ってことですか?

「ちっがーう! 魔物娘は人間の風邪程度どうということはないと言っているんじゃ!」

へー、魔物娘って風邪引かないんですね。それじゃどうぞー



「ところで、兄上は今風邪を引いていると言ったな?」

はい。だから今日はなるべく静かに平和に過ごそうと思っていたのですが。


「なら、今日は一日儂が兄上の看病をするのじゃ!」

すごい心配なんですが……。でも、折角なんでお願いします。
正直、身体はダルいし薬も無くて困っていたんですよ。
じゃあ、早速で悪いんですがバファ〇ン買ってきて貰えます?


「なんと、儂よりもそのバフォなんとかに頼ると言うのか? 儂は怒ったぞ。決めた。兄上の風邪は儂のラブパワーだけで治してやるのじゃ!」

バフォなんとかじゃなくてバ〇ァリンですよ。バファリ〇。
あぁ、なんだか頭痛が酷くなった気が……。それに寒気も。

「うむ。確かにこんな寒い部屋では治るものも治らんな。どれ」パチン

指パッチン一つで部屋がみるみる暖かくなっていく。
よく見ると、指パッチンした方の手に魔法陣が浮かんでいるので
魔法を使ったのだとすぐにわかった。

「それから氷マクラが定番かの」

あ、氷マクラは苦手なんで冷えピタでお願いします。
あのキンキンした冷たさが子供の頃から苦手で。
その点冷えピタは程よい冷たさだし
あの清涼感が気分を楽にしてくれるんですよね。

「だから、そんな小賢しい道具には頼らんのじゃ。」

これまた指パッチン一つでバフォ様の手元に真っ白なタオルが現れた。
タオルはそのまま宙に浮かび、それを魔法陣が取り囲む。
魔法陣がクルクル回ること数週、タオルはみるみる湿り気を帯びていき
見るからに冷たくて気持ち良さそうな濡れタオルが完成した。

バフォ様がそれを手に取り、僕の額に濡れタオルを置いてくれた。
すると、たちまちあの心地好い冷たさが額に広がる。
それから、ミントのような清涼感も感じるけど
こっちの方が冷えピタなんかよりもとっても気持ちいい。

「折角じゃから、そのタオルに解熱作用やら色々と
風邪引きさんに嬉しい効果を付けといたのじゃ」

さっきの部屋の暖かさといい、このタオルといい
魔法ってなんでも出来るんですね。

「こんなもの、魔法の中でもごくごく初歩的なものじゃ。本当はもっと色々なことが出来てすごいんじゃぞ!」

知ってますよ。この間、暴発して研究所一つ潰してましたもんね。
爆発した所は黒い煙がもくもくと上がり、中から出て来る魔女さんやら
ファミリアさんたちの様子はまさに阿鼻叫喚と呼ぶに相応しいものでしたよ。



「ぐぬぬ。あれは成功していたらな、もっとズババーンってなって
シュゴゴゴゴーって感じになっていたのじゃ」

それ、絶対に屋内でやっちゃいけない類のやつですよね?!
もっと広い所でやりましょうよ。

「何を言うておる。回復魔法じゃ」

絶対に回復魔法で出ちゃいけない音ですよねそれ。

「ええい、うるさいうるさい。病人は黙って寝とるのじゃ。
他に何かしてほしいことはあるかの?
手コキからフェラ、なんなら本番まで何でもしてやるぞ♥」

病人なんでゆっくり寝かせ

ぐぅ〜

……病人でも腹は減るもんですな。それじゃあ何か温かいもの作ってくれますか?

「任せるのじゃ。玉子粥でよかったかの?」

それでお願いします。



トントントン


コトコトコト



横になりながら心配になって台所の方を見てみる。
予想に反してその手際は流暢で、やり慣れているのが見て取れた。
いつもは無邪気にじゃれてきたり
お菓子買ってーとか駄々をこねたりする所しか見ていないから
このようないかにも家庭的なところを見るのはとても新鮮だった。


「兄上ー出来たのじゃ」

すげー、美味そう。お料理出来たんですね。

「それはそうじゃ。だって兄上と付き合い始めてから練習したんだもん」

えっ


「だって儂が毎日ご飯を作って、それを兄上に食べさせて
二人でらぶらぶな夫婦生活を送るのが儂の夢になったんじゃからな……
って何恥ずかしいこと言わせるのじゃ! 早く食べるのじゃ!
折角の粥が冷めてしまうではないか」

おおっとそうだった。いただきます。

「あ、やっぱり待つのじゃ。はい、あーん♥ なのじゃ」

はい?


「あーんじゃ、あーん。ほれほれ、さっさと口を開けんか」

いや、その。
流石にあーんは恥ずかしいです……
あ、待って、お粥片付けないでくださいよ。あーんしますから。

……あーん。

「そうそう、それでいいのじゃ♥ はい、あーん、なのじゃ。味はどうかの? 兄上の口に合うと良いのじゃが」

モグモグ

モグモグ

ゴクン

すごく美味しいです。少し薄味なのがカラダに優しい感じがします。もっとください。

「それは良かった。まだまだたくさんあるから、好きなだけ食べるのじゃ。あーん、なのじゃ」


それからもバフォ様のあーん責めでお粥を食べたけど
……最初はなんだか気恥ずかしかったけど
段々それが嬉しさに変わってきた。
あーんしてくれるバフォ様の表情は
……自分で言うのもなんだけど、愛しい恋人を見るようにも
我が子を慈しむ母性溢れるようにも見えて、それがとっても魅力的で。
風邪が治ったら沢山たくさん甘えさせてあげよう。
頭撫でて、偉かったね、ありがとうって。



そんなことを思っていると、心地好い睡魔がそろりそろりとやって来た。
うーん、食べるとやっぱり眠くなってくるな。

バフォ様、そろそろ寝ようと思います。今日はありがとうございました。

「何を言うておる。これからが『めいんでぃっしゅ』ではないか」

そういうと、バフォ様は着ている服を脱いで薄着になり、僕が寝ている布団の中に潜り込んで来た。

「なんじゃこのかったい布団は。まるで煎餅みたいではないか」

それはほっといてくださいよ。それよりも、流石に今日はセックスは勘弁して欲しいのですけど。

「ふん、そんなことわかっておるわ。添い寝じゃ添い寝。こうやって幼女と一緒の布団に入っているだけで気分が楽になって寒気が引いてくるじゃろ? 幼女とは、性的魅力に溢れるだけでなく、このような幼さによる付随効果が諸々とじゃな……」

あー、はいはい、バフォ様の幼女論を聞いてると、明日の朝になってしまうのでまた今度にしてください。
それから、確かに大分楽になったし、身体も温かいですけど、それはバフォ様が幼女だからじゃなくてバフォ様がバフォ様だからなんですからね。

「そ、そんなの当たり前じゃ! 他の幼女、特にホルスタウロスやホブゴブリンなんぞに浮気したら承知せんからな」

もちろんですよ。僕はバフォ様一筋ですから。

それではバフォ様


おやすみなさい。
14/12/28 23:40更新 / ターニャ

■作者メッセージ
いいですよね看病ネタ。
お粥をあーんは、人生で一回はやってみたいシチュエーションの1つであります。
最後まで御覧頂きありがとうございました!

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