とある砂漠のとある町。
　古きよき盗掘屋が集まる場所だったが、今ではすっかりその光景を変えている。
　砂漠の古き王が復活し、その家臣たちが町を飲み込んだ。
　町には包帯や獣の魔物が跋扈している。
　その魔物の一種、アヌビスは頭を抱えていた。

「むぅ。それはやはり困る。」
　娘の相談に尻尾をへたりと垂らしている母アヌビス。
　彼女自身もどうすれば良いかと悩んでいたが、答えの出ていない悩み事なのだった。
「やはり母様もお悩みでしたか。」
「悩まないで居られるか。我々アヌビスにとって管理秩序こそが存在意義なのだぞ。」
「ですが、管理秩序がどうしても出来ない場合は？」
「……別の管理機構を作るしかない。」
　ふぅ、と二人してため息をつく。
　幼いながらも管理者としての英才教育を受け続けてきた娘と共にガラスの無い窓から外の光景を眺める。
「渇いた。せーえき、ちょーだい。」
「うわっ、よろこんでぇ！」
　悩み事というのはいたって簡単。
　マミー問題だ。


　マミーと言う魔物は、アンデッドに分類される「元人間」の種族である。
　体に特殊な包帯を巻きつけている事から、「包帯娘」と呼ばれることもある。
　アンデッド系は人間の精を定期的に採らなければ衝動的に人に襲い掛かってしまう。
　マミーはゾンビやスケルトンと違い、砂の王「ファラオ」の民という分類に当てはまる。
　そして「ファラオ」の家臣は他にもアヌビスやスフィンクスらがいて、アヌビスの仕事は国内の管理と国民であるマミーの統括なのだ。
　アヌビスの悩み事はいたって簡単。
　元々「ファラオ」と共に眠っていたマミーと、新たに増えたマミーたち。
　彼女達が余りにも多すぎるのだ。
　マミーは人間の女性から精を吸い取る事でマミーに変えてしまう。
　目覚めたマミーが多すぎて男女構わず襲い掛かり、結果として潤うマミーより渇くマミーの方が多いという、なんとも借金地獄みたいな状況に陥ってしまった。
　幸いなのは噂を聞きつけた人間の男たちが逃げずにむしろ大挙して押し寄せてきた事だ。
　ある時など、冒険者の集団がそっくりそのまま「国民になりたい！｝と言って来た事もあった。
　マミーの食糧問題は解決した、かと思いきや今度は人口過密による軽犯罪の続出した（殺人などの重刑犯罪は、誰かが犯す前にギルダブルがその人物を性的に犯しているのであまりない）。
　ケンカ、窃盗、誘拐など。
　人間同士のいざこざが多いが、中にはアヌビスの子が誘拐された事もあった。
　ちなみにその無謀な人間は「マミー牧場の刑」に処された。
　彼は嬉し涙とそれ以外の何かを零しながら、今日明日も頑張っているそうだ。
　刑期は不明。一説によれば無期懲役なのだとか。
　ちょうど刑罰の話が出てきたので横道に逸れると、他にも砂の王国ならではの刑罰が存在する。
　大きく分けて２種類に分かれていている。
　犯罪の重さに比例して金銭の代わりに精液の搾り取る「搾取刑」と、精液の代わりに労働する「労役刑」。
　女性からは精液は取れないので、「労役刑」が無条件に処される。
　また重犯罪者に対しては「奉仕刑」が処される。
　「マミー牧場の刑」はこの奉仕刑に分類されている。
　まぁ搾取刑でも、１０回分とかなったらアルラウネの蜜とかの力でも借りない限り体力とかが持たないのだが、それを買う金が無い場合はどうなるかと言えば簡単。
　この王国ではお金の他に精液が金銭代わりになっている。
　だから２,３回分で蜜を買って、一気に１０回分を１日で済ませるという方法が良く使われている。
　それでも犯罪のレベルによっては２千回分とかあったりするので、そういう時は諦めた方がいい。

　さて。精液で支払いを済ませれば良いのになぜ窃盗が発生するのかというとだ、やはり人間同士のいざこざが関係する。
「ウホッ、なんていい杖。」
　なんていう輩が居るせいで窃盗が発生するのだ。
　この王国では「この国特有のとある理由」により人々の注意が散漫になりやすく、簡単に盗みが成功する。
　お陰で警備隊のギルダブルが喜悦満悦で犯罪者を捕らえるという事件が多発している。
　敢えて盗みを働かせてから大義名分の下に襲い掛かっているとの噂もあるが、アヌビスはその事実を否認している。
　他にも「この人は俺が良いっていいって言ってるんだ！」「だまれはげ、お前は向こうのロリミーとやってろ！」とケンカをしたり、マミーハーレムを作って「ふふふ。ここが俺の王国だ。みんな従え！　世界の中心はここだ！」と勘違いした冒険者が他の冒険者に蛸殴りにされたりと騒動が尽きない。
　何を勘違いしたのか、どさくさに紛れて人間の女性に襲い掛かって「あれマミーじゃなかったんだ？」とか言い出す馬鹿も発生する。
　人間の男性が居なければ成り立たない王国なので男性に対しては門戸を開きっぱなしむしろカムヒァな弊害がここにある。
　他の犯罪はといえば、まぁ人間の女性による犯罪だ。
　変な意味で男尊女卑というか男性に得な事ばかりの王国なので、この王国へと逃げ延びた女性なんかが犯罪者になったりする。
　中には恋人をマミーに取られたので復讐して回る困った女性まで居た。
　あっけなく返り討ちに合った挙句マミーになって、今では恋人と一緒にラブラブ生活をしているらしいが。
　幸いな事に円満解決するケースしか出ていないが、悲惨な事件にまで発展する可能性もあるのでアヌビスは警戒を続けている。


　閑話休題。
　要約すれば「マミー問題」とは、人口肥大だ。
　マミーが増えすぎては食糧が足りなくてマミーが渇いてしまう。
　かと言って人間を増やすと人間による犯罪が多発してしまうし、マミーによる女性の被害もその分増えてしまう。
　現在は元冒険者で男性の警備隊を発足して警備を強化しているが今ひとつ決定打に欠ける。
　なお女性だとうっかりマミーにされてしまうので警備隊には不採用となっている。
　ミイラ取りがミイラ、というかマミー捕りがマミーになるってやつだ。
「やはり、外の魔物に協力を依頼するしか無いか。」
　アヌビスの少女、イリスは授業中でもずっと悩み続けていた。
　ちなみに授業は乱入してきたマミー３人が先生に襲い掛かっているので見る意味が無い、というか見ると気持ちが落ち着かない。
　今も芳しい苦い匂いが鼻に届いてきてアソコがきゅんきゅんとしてあぁもう混ざりたい。
「ではなくてだ！」
　パタパタ煩い自分の尻尾を掴んで自制するイリス。
「先生の話によれば、外には独自の王国を作っている魔物が居るらしい。」
　小規模な物ではゴブリンやワーウルフ。
　大規模な物ならジャイアントアントやハニービー。
　知能その他を重視するならダークエルフやアマゾネス。
　但しダークプリーストや魔女は除外する。
「アレは全く別のものを崇めているらしいからな。」
　砂の王国は「ファラオ」を崇拝するのであり、どこぞのよくわからないモノを崇めてはならない。
　幾つかの分類をつくり、彼女なりにどの魔物に協力を仰げばいいかと悩む。
「んふふー、えいっ♪」
「きゃうんっ♪」
　完全な不意打ちにイリスが獣の悲鳴を上げる。
　ぺろりと敏感な部分を誰かが舐めたのだ。
「あははー、我慢はよくないよー。」
「く、この、きゅぅうんっ！」
　嗅覚の鋭いアヌビスは教室中に染み渡る性臭、さらには風に乗って飛んでくるえっちな匂いまでも拾ってしまう。
　今の魔王の影響をアヌビスも受けているため、そういう匂いに触発されて発情してしまう。
　これもまたアヌビス達にとっては深刻な問題ではある。
「ン、ちゅ、ちゅうう、ちゅ、ちゅっ。」
「きゃう、こ、この、いいかげんに、きゅぅうん、しろ！」
　言って机の下で悪戯をしていたモノを引きずり出す。
「いやー、あははは。」
　出てきたのは小さな羽根に小柄な体躯。
　インプだった。
「この王国は基本的に来るもの拒まずだがな、授業妨害はご法度だ。」
「あのマミーたちは？」
「国民の食事だから問題なしだ。」
「私はー？」
「現在は「ファラオ」様配下以外の魔物は国民ではない。」
　で、何か言い残す事はあるか？とイリスが目を細める。
　小動物を狙う猛獣の目だ。
　びくりとインプが肩を震わせる。
「あ、いやー、そのー。」
　目を四方八方に巡らせてから、インプがにぱっと笑う。
「かわいかったよー、えっと、ロリス。」
「……くすぐりの刑。」
「きゃああああああああああ！！」
　イリスは古き良き羽根くすぐりによる処刑を執行した。


「はぁ。今日も授業にならなかった。」
　マミー問題は人間が考える以上に深刻な問題なのだ。
　仕事をしている人間が襲われてしまっても、アヌビスにそれを止める術が無い。
　なぜなら飢えた国民に食糧を与えるのは管理者として優先すべき事であり、襲い掛かってしまうのは食糧問題を全く解決していないアヌビスが悪いからだ。
　現在はマミー牧場等による一定量の確保を行っているが、それでも圧倒的に足りない。
「それもこれも、精を摂らなくても良いはずのスフィンクスやギルダブルが人間を襲うのが悪いんだ。」
　ぶつぶつと文句を言いながらも、視線は街の一角に向けられている。
「はぁ、ん、いいよぉ。」
　当たり前のように２対１で男性と絡み合うマミーの姿。
　男性は基本的に複数のマミーに襲われてしまう。
　場合によってはエンドレスでマミーが補充されてそのまま気絶してしまう事さえある。
　いや、そのケースがとても多い。
　これでは危機感を覚えた冒険者達がこの王国に来なくなってしまうのではないかと不安で仕方が無い。
　男性陣は揃って「問題ない」の一言だが、イリスは信用していない。
「全く。計画も何もなく、無秩序に、その、食事をするなんて。」
　食事の時間、管理の時間、全てを自己管理しているアヌビスにしてみれば許せない無秩序だ。
　好きな様に食事をし、好きな様にえっちをし、好きな様にキスをし、好きな様に。
「あああああもう、ちがうちがうちがう！」
　真っ赤になった顔を肉球柔らかな手で押さえる。
「大事なのは管理、管理なんだ！　だからあの営みも管理しないといけないんだ！　マミーの管理は私たちの仕事なんだから！」
　びしぃと３対１で絡んでいるマミーたちを指差す。
「増えてる！？」
　どうやら性臭に引き寄せられてマミーが集まったのだろう。
　このまま放置していればまた、エンドレスにマミーが集まって男性が解放されない状況が発生してしまう。
「こ、これは管理しないと！」
　尻尾をパタパタ揺らしながらイリスは勢い込んでマミーたちに突撃していく。
　頭隠して尻隠さずとは言うが、尻尾に本音が出ている所もまたが男女問わず「アヌビス派」の冒険者に好かれるポイントなのだとか。
　だがしかし、その可愛さのあまりお持ち帰りされてしまう事が多いのだ。
　特に子供のアヌビスは。
　そして自分が立てたスケジュールから大きく外れた行動をとっていることに気づいていないイリスはどうなるのか？

　次回に続く。




　そしてこうなった。
「ふぁあ、や、やめて。」
「だめだめー。イリス様にもちゃんと見てもらわないとー。」
「そうそう。お勉強は大事ですよ？」
　ぐちゅぐちゅと愛液を溢れさせながら腰を動かすマミー。
　その接合部分を至近距離で見せられているイリスは、理性を失いつつあった。
　なにせこのマミー達はファラオと共に目覚めた玄人マミーで、子供のアヌビス相手では荷が重すぎたのだ。
　言葉巧みにイリスを誘い、ついでに可愛らしいイリスの体を弄る余裕さえある。
「きゅうんっ♪」
「あらいい声。その声があれば将来の旦那様も喜びますよ。」
「そ、そうなの？」
「ええ。もちろんですよ。」
　イリスを後ろから抱きかかえているマミーが指を動かすと、くちゅくちゅと湿った音が響く。
　男女問わず犯してきたマミーの手技は強すぎず弱すぎず。
　男性経験の無いイリスが簡単に「おち」たのは仕方の無いことだった。
「ん、んむ、ん。」
　マミーがキスをしながら男性の乳首を弄る。
　細い指が妖しく動く様を見て、イリスの心拍数が上昇する。
「イリス様も興味があります？」
「む、な、なんのこと？」
　すっかり素の言葉遣いが出ているイリスに、マミーが耳元で囁く。
「男性を効果的に管理するには、必要な事なのですけどね。」
　甘い囁きに耳への愛撫を添える。
「きゃうっ、ん、そ、そう？」
「そうですよ、イリス様、んん、あはっ、おいし。」
　快楽によだれを垂らすマミー。
　ドクドクと脈打つペニス。
　接合部分から溢れる精液にイリスの焦点がぼやける。

　早く舐めたい。
　精液をぺろぺろと舐めて味わいたい。
　本能に任せて交わりたい。
　頭の芯が真っ白になるまで気持ちよくなりたい。
　疼くこの熱をもっと熱い物で埋め尽くしたい。
　キスをしたい。
　甘えたい。
　抱きしめたい、抱きしめられたい。
　獣の本能が固く厚い理性の壁にヒビを入れる。
　もう陥落寸前のイリスだが、アヌビスとしての英才教育が今の今まで理性を保ってきた。
　快楽と本能に対する抵抗ですっかり涙目のイリスに、男性と交わっているマミーが甘く囁く。
「我々マミーの事を知りたいのでしたら、同じものを味わっては如何ですか？」
　女の匂いと男の匂い。
　それだけでも自制するのに精一杯だったイリス。
　マミーが腰を浮かせ、ごぽりと溢れる精液。
「困りましたね。折角の精液が零れてしまって。」
　すぃとイリスを抱きしめていたマミーが彼女をすり抜けるように男性に近付き、ぺろりとペニスに絡みつく精液を舐める。
　キスをしていたマミーも位置を変え、ペニスに近付く。
「あ、おいし。」
「ふふ、本当に美味しい。」
「あ、ああ、あああ。」
　魔物なのだから仕方が無い。
　魔物なのだから精を欲するのは当然だ。
　理路整然としているが故に、自らの行いを正当化することも出来てしまう。
「そう、仕方ない。仕方が無いの。これは勉強。勉強なんだから。」
　クスリとマミーたちが笑う。
　ふらふらとマミーの様にペニスに顔を寄せていくイリス。
　むせ返るような性臭にうっとりと目を細め、だらしなく開けた口から舌を出す。
　ピンク色の可愛らしい舌が黒光りするペニスへと近付き、そして。

「こらぁああああ！　なにをしているお前達！！」

　怒鳴り声がその場の全員を硬直させた。
「え、えと、あ、かあ、さま？」
　さび付いた歯車の様にぎこちない動きでイリスが振り向く。
　そこには胸の前で腕を組んだアヌビスが仁王立ちしていた。
「予定の時間よりも１５秒以上遅いと思って見に来てみれば。なんという体たらくなのだ！」
「こ、これは、緊急事態に際して、その。」
「言い訳無用！　それならば後日に予定を組みかえれば良いだろう！」
　きゅーんと悲鳴をあげ、耳と尻尾をパタンと縮めるイリス。
「お前の我が侭が様々な計画を乱すのだ！　アヌビスとして在ってはならぬことだと肝に銘じておくのだ！」
「う、うぅ、はい、母様。」
　すっかりしょげてしまったイリス。
　そして食事も十分摂って満足したマミーが恐る恐るその場から離れようとする。
「あとお前達の処分を下す。夜までに管理局へ出頭するように。いいな！」
「は、はいぃい！！」
　電撃を受けたような速度で背筋を直すマミー達は、アンデッドに似合わない駆け足で去って行った。
「さて。イリスにも罰を与えないといけないな。」
　クスリと笑みを零したアヌビスが、獰猛に犬歯をむき出しにする。
　砂の王国の一角で子犬の悲鳴がきゅーんと響いた。


　マミー問題は他にもこんな側面がある。
　例えば、ある所に冒険者のグループがありました。
「おい聞いたか。夢の国の話。」
「ああ聞いた。何でもえっちしてれば何でももらえるって言うんだろ。」
「しかも男なら入出国自由。たっぷりと外のみやげ物を持っていけば貴族同然の生活だって出来るらしいぞ。」
「ついでに王国を拡張するための人手を募集してるってよ。仕事次第じゃ、冒険者でも屋敷を持つ事が出来るとか。」
「決まりだな。」
「ああ。」
　と王国へ集まる冒険者が多発。
　砂漠の王国周辺では冒険者が減っていくという困った問題が発生した。
「ここが夢の王国か！」
「っていかこいつら、マミーか！？」
「しまった、魔物の国かよ！」
「いらっしゃいませー。男性の方々はこちらへどうぞー。」
「あり、襲わないのかあんた。」
「入り口で襲ったら色々と問題なので、門周辺はお腹一杯のマミーが担当してるんですよ。」
「なるほど。じゃあ入り口で猫っぽいのにとっつかまった俺の仲間は？」
「ああ、スフィンクス様に気に入られたんですね。ご愁傷様ー。」
「ちょ、フォロー無しかよ！？」
「私たちじゃ、ちょっと。」
「おい今、蜘蛛っぽい魔物に仲間が襲われたんだけどどうしたらいいんだ！？」
「警備担当のギルダブル様ですねー。以下同文。」
「言ってる傍からふらふらとマミーがやってきてるんですが！？」
「あのー、ちょっといいですか？」
「なんですかもう、仲間がみんなやられて……あの、包帯なんで脱ぐんですか何で包帯で俺をぐるぐる巻きに？」
「お腹すいちゃったんで、５,６本クダサイな♪」
「ウハ、オワタ。」
　王国では入出国は自由だが、マミーが多くて抜け出せる人が全然いない。
　例外は商人だ。
　商人の行き交いが途絶えては人間の住民が困るからだ。
　国民じゃないのかって話だが、国民は基本的にマミーだから、結婚でもしない限りは国民にはなれないのだ。
「ちゅ、ちゅう。」
「うわ、上手いしっていうかでるぅっ！！」
「ちゅぱ、ちゅぱ。」
「おっきいむね、すき？」
「大好物ですありがとうございます！」
　で、だ。
　男性は食糧源として確保されるが、女性は本当に労働力だけで使われる。
　一応三食昼寝つきで健康が保たれる程度の労働量だが、働いている女性とヤッてるだけの男性。
　アヌビスたちの懸念は、女性労働者の暴動とかそういうのもあったり。
　一応マミーは日差しで渇くという事が無いので労役を課しているが。
　恋人の居るマミーはあんまり働かないし動くとお腹が空きやすくなる（ちょっとだけ）なので相当困っている。

「だからって、私たちに無理難題言われてもねぇ。」
　受け取った書類を見て本日何度目かのため息をついているのは、ターバンの様に包帯を巻いているマミー。
　彼女は数人のマミーと同数の男性と共に町を歩いている。
「いいじゃねえか。俺たちも頑張るしさ。」
「だったら蜜無しで私たちの相手を出来るくらい頑張ってよ。」
「や、無理。」
「諦めはやっ！」
「はいはい。そこ、夫婦漫才してないで先行くわよ。」
「めおと違う。」
「だから私たちはそういうのじゃないって！」
　妙に息の合っている二人。
　彼らはこの町でえっちしまくった挙句ひっついたカップルグループ、ではなく同じギルドメンバーだ。
　女性は全員吸われまくってマミーになってしまったが、マミーは食事さえきちんと摂っていれば人と同じ様に行動したり考えたり出来る。
　むしろ魔力（魔物の魔力の方）を使える分だけ実力が増しているぐらいだ。
　その分だけ男たちの大量が劇的に減っていくが。性的な意味で。
「今度の依頼は外へ出て行けってか。」
「そういうこと。この王国に来て協力してくれそうな魔物を連れて来いって。第一候補はジャイアントアント。その子達に巣を作ってもらえれば色々と問題が解決するんじゃないかって。」
「でもさ。この辺って固い土じゃなくて柔らかい砂だろ。巣、作れんの？」
「そんなのはアヌビス様連中に言ってよ。」
「……どうでもいいけどさ。やっぱマミーってアヌビスの管理下に居るんだな。」
「仕方ないでしょ。この「様」付けは。」
　取り回しの効くショートスピアで男を脅す。
　男は素直に降参のポーズをとる。
「他の候補といっても少ないよな。」
「そうね。ハニービーはアルラウネが群生していないこの砂漠じゃ無理があるし、そもそもこの砂漠に適応できる魔物がどれだけいることやら。」
「いいじゃねえか。期限は未定なんだろ。」
「馬鹿。アヌビス様に期限は決められているわよ。」
「げ、まじか。さすが管理犬。」
「やれやれ。ホント、何かと理由をつけて二度と寄り付かないように出来ないもんかしらね。」
「そう思って、はい、これ。」
「ん、なになに。『無期限出張書　ｂｙイリス』。ああ、なるほど。あの子もアヌビスには違いないからね。」
「これで命令の上書きをしたら問題なし。さ、出発しよう。」
「賛成！　あ、でもその前に食事タイムね。」
「げ、まじかよ！？」
　何だかんだでアヌビスの管理はザルだったりする。
　こうして有力なマミーギルドの一つが、外へと出て行った。



　とまぁ万事がこんな感じだ。
　この問題が解決する日は、まだ遠い。
　だって魔王も王国の王様もみんなえっち好きだから。
　えっちを禁止する法律なんて未来永劫ありえないのだ。