読切小説
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Kick start my heart
「お疲れ様でしたー」
「おう、今日も頑張ってたな」
「ありがとうございます」
 何とか日付が変わるまでに業務を終え、先輩社員達と職場を後にする。とはいえ帰宅するための終電は既に終わっており、タクシーを使うか歩くかしなければ帰れないような時間だ。定時より早く業務を初めても終わるのがいつもこんな時間なので、未だに実家暮らしでこの仕事を初めてから半年経ったがちゃんと帰宅する日が休日の前日だけなので一週間の半分にも満たない。まぁ工場勤務だと職場で寝泊りが当たり前だと同期からは聞いたので、ちゃんと退勤できるだけマシかと思う事にする。
「さーて、今日は何時間寝れるかなー」
「睡眠時間確保できるくらいには帰れって上からせっつかれてますよね」
「本当はこんな時間まで残ってちゃダメだしなぁ。残業代つくのも平である今の内だけだし」
 その分先輩たちや上司とコミュニケーションをとる時間は長いから仕事を覚えるのは早かったようで、既に先輩たちのフォローも殆ど必要とせずに一日を過ごせるようにはなってきた。自分なりに早く一つ一つの仕事を終わらせようとはしているし、実際作業時間は短くはなってきているが、その分他の同期ができなかった業務や先輩たちの手伝いなどに走らされている。残業代や成果報酬がキッチリ出るだけまだあちこちに泊まれるお金があるのはいいのだが、これだと正直職場近くでマンションでも探したほうが安くは済みそうな気がする。
「ところでお前は今日どこ泊まんの?」
「適当にネカフェかカラオケでも探しますよ、適当に」
「まぁ、ちゃんと寝れるところにしろよ」
「それは気をつけてますよ。それじゃ、また」
「おう、お疲れ」

 そんなある日のことだった。翌日が休日のため、終電までに仕事を終えて帰宅した時に、家の中から聞きなれない声が聞こえた。この家に客が来ることは別に珍しいわけではないが、こんな夜遅くまでいるというのは非常に珍しい。いるとしたら大体父親の飲み仲間が徹マンしてる時くらいだが、それにしては野郎の野太い声ではない。まぁどっちみち俺には関係がないので、リビングに居る両親に声だけかけてさっさと風呂入って寝るかと思っていたら、一瞬我が目を疑った。
「ああお帰り。こちらアンタのお客さんみたいなんだけど、帰ってくるかわからないって言ったらじゃあ待たせて下さいって言うもんだから……」
「いやそれはいいんだが……」
 リビングのテーブルで母と父に挟まれながら柔らかい微笑みを浮かべて対応していた清楚そうな銀髪の美人に俺は全く覚えがない。その女性は俺と目が合うとすごく嬉しそうな表情を浮かべながら近づいてきた。
「とりあえず部屋片付けるわ」
「ああ、もうアタシとその娘でやっちゃったよ」
「客人に何やらせてんの!?」
「いやだってどうしてもしたいっていうもんだからさ」
 いくらなんでもぶっ飛んだ客人もいたものだ。まぁあまり帰ってくることのない部屋だから物が散らかることもないだろうし、部屋で飲み食いも滅多にしないから、せいぜい洗濯物の片付けとホコリ取りくらいしかしてないだろうけど。如何わしいものエトセトラは全部スマホで済ませてるし。
「とりあえず若いお二人でごゆっくりー」
 やれやれ、俺は早く寝たいんだが。

 とりあえず、名も知らぬ美人さんを連れて部屋へと入る。普段ならどこかしらから臭う男臭さが消えていることから、換気と消臭までしてくれたのだろう。
「えーと、私のことは母と父から聞いてますかね?」
「ええ、もう色々と」
 そこから、ぎこちないながらも色々と質問やらさせてもらったところ、朗らかな微笑みを崩さない彼女は日本人ではなかった。艶やかな銀髪は染めたものではなく天然物、出身を聞いたがロシアの近くの国らしい。国名は正直覚えられなかった。年齢は俺と同期、日本に来たのは憧れかららしく、既に永住許可もとったとか。
「それで、なんで俺のところに?」
 一番気になったのはここだ。俺はそんな東ヨーロッパになど行った記憶がない。海外旅行は高校の修学旅行で行ったが、その時はシンガポールだ。
「覚えてませんか?私がこの街に来てばかりの頃の話なんですけど……」
 そういって彼女が語ったのは、ああ、そんなこともあったなぁ程度のことだった。少しずつ暖かくなってきて虫やらチンピラやらがやたら湧き出してくる季節、繁華街のど真ん中で不安そうにキョロキョロしてる美人さんがいた。最初は見過ごすつもりだったのだが、その人に絡んでいくクソガキグループが知り合いかつ嫌いな連中だったので、その美人さんの知り合いのフリをしてかっさらった。フラフラとフリーターをしており、退屈な生活にちょっとした彩を求めるつもりで起こした出来事がそんなに彼女にとっては印象的だったのだろうか。まぁ何をしたのかと言えば、どこに行くつもりだったのかを聞いて送り届け、困ったときはどこに頼ればいいかも伝えて爽やかに別れたつもりだったのだが。
「お金も体も求められず、本当にただ親切にしていただいたことなんて、この街に来てからは初めてだったので……」
「ていうかよくそれだけの手がかりでここまでたどり着けましたね?」
「あの街の人達って親切な人が多くて助かりました」
 まぁ昔はあの辺でチンピラ退治して、そいつらから巻き上げた金で遊んでたしなぁ、などと懐かしい話を思い出した。仕事にかまけてこんな昔話ができる人間と会うことも全くなくなっていたほどだ。あの頃の俺はクズだった。まぁそんな話が彼女にできるわけもないのでそれはともかく。
「ご迷惑、でしたか……?」
「いや迷惑かどうかと聞かれればそんなことはないですけど、今の俺は仕事に追われてる身でして、なかなかあの頃のようにじっくりお相手をする時間がなかなか作れないんですよ」
「でしたら、身の回りのお世話とかさせて下さい!」
「ファッ!?」
 目を輝かせて何を言ってるのこの人。やはり海外の人は進んでるのか、色々と。

 それから色々とすったもんだはあったものの、彼女ことシンディさんには住み込みで働いてもらうことになった。何故か無給で。彼女いわく、おいしいごはんと寝るところと俺の笑顔が給与です!とのことだった。現金過ぎて何も言えない。そして肝心の腕前だが、確かにその家事スキルは高かった。我が家の誰よりも。

 そんなこんなで過ごしていたある日、俺は最近になって全く機能していなかった欲望を思い知らされた。やはり男である以上はいい女によく思われたいという願望こそあれど、だからといってそんな原始的な欲望に任せていいはずはない。俺は現代人なのだ。そういった欲望に流された結果お縄なんてゴメンである。それにシンディさんからはそういった下心など全く見えてこない。
「ご主人様、お茶が入りました」
「あぁ、ありがとう」
 いつもニコニコと笑顔を浮かべて献身的に接してくれる。俺のことをどう思っているのかは気になるが、それを聞くのが非常に憚れる。
「……ん、あれ……」
 いつもの緑茶なのに味が若干違う。茶葉が変わったとかではなく、何かが混ざったような。
「シンディさん、これ……」
「如何なさいました?」
「隠し味に何か足した?お茶だけじゃない味もするんだけど……」
「えぇ、少しばかりシロップを」
「通りで……んっ!?」
 そのシロップの効果かどうかは知らないが、突然股間が固くなり出した。確かにシンディさんをおかずにしたことはあるが、その光景がいきなり脳内に浮かぶ。くんずほぐれずなんやかんやグチャグチャになってお互いにペロペロと……って、本人目の前にしてこれはいかん。
「あら……♪」
「いやこの、それは、その……」
「ようやく、私をあなたのものにしていただく時が来たのですね♪」
「ファッ!?」
 するとなんとまぁシンディさんは椅子に座っている俺に股がるようにして、部屋着にしてた俺のズボンの上から利かん坊を撫でてくれる。空いた方の手は俺の右手を持つと、スカートの中で触れてはいけない谷間へと誘ってくれた。
「私はずっと待っていましたよ……あなたが私を助けたくれた時から、この家にいさせてもらっている間、今の今までずうっと」
「え、そんなに……?」
「はい♪ほら、触ってください……んっ」
 その言葉の通りなのか、シンディさんの谷間からは止まることなく雫が沸きだしている。もはや下着では隠せないほどに。
「でも、俺、こんなの初めてで、どうしたらいいやら」
「はぁんっ!?……そんな、私が初めてなんですか……?」
 俺の言葉を聞いて、まるで快楽に体が反応したように震えるシンディさん。マジ可愛い。
「私も初めてです……こんなことがあるなんて……ほら、もっと探って下さい。あなたのものになる体ですよ?」
 ここまで言われて黙っていられる俺ではない。だがその前に、するなら言っておかなければならないだろう。しなければならないことがあるだろう。そのために俺は空いた手でシンディさんの頬を撫でて、ストレートに言葉を送った。
「俺もあなたを愛したい。俺のものに、なってくれますか?」
 その返事は、満面の笑顔と柔らかな口付けだった。
「はい、なります。あなただけのメイドに、何でもお申し付け下さい」
「うん、でもしてほしいこととかない?」
 俺からの質問に、でしたら……と表情を緩ませながら可愛いお願いをしてくれた。
「自分のモノに、敬称はいりませんよね、旦那様?」

 そして俺とシンディは裸になり、ベッドで抱き合う。お互いの体温が気持ちいいが、もはやそれではお互いに我慢できない。激しく互いに唇を奪い合い、全身を辛め合う。
「はう、ご主人様……旦那様、流石にもう、我慢が……」
「俺もだよシンディ、じゃあ……」
 そういって俺は彼女を仰向けに倒すと、谷間目掛けて利かん坊を擦り付ける。見ながらはできない位置なので、自らの手で位置を調節しながら。
「ここか……うあっ!?」
「はぁんっ!来たぁ、来ました旦那様ァッ!」
 正解した俺へのご褒美は、利かん坊への熱烈なご奉仕だった。全力でシンディさんの中は俺を全力で歓迎してくれる。すぐさまにも出そうだが、ここで出すのは男のプライドが許さない。もっと奥に奥にねじ込み、互いに密着して抱き締め合う。声すらも繋がりを求めるかの如く絶えず漏れ続け、お互いの手も足も離れたがらずに擦り付け合う。それがまた気持ちいい。
「シンディ、ごめん、もう……」
「下さい、私も……」
 俺も我慢の限界を向かえ、彼女の中に盛大に叩き込んだ。お互いに震え、何かが壊れそうな快楽に包まれながら、出しきって落ち着いた俺は彼女の異変に気付く。
「はぁ、はぁ、あれ……?」
「やぁ、旦那様ぁ……」
 全身が鳥の羽毛に覆われ、足も人の足ではなく鳥のような肉付きになっていた。
「シンディは、人間じゃなかったの?」
「はい……ご主人様にお仕えすることを喜びとする魔の物、キキーモラと言う種族でございます」
「そうなんだ……」
 正体を見られてショックなのか、明らかに気落ちしているシンディだが、俺の利かん坊はさらに固くなってしまった。だってシンディが可愛いことに変わりはないし、このモフモフ感が凄く気持ちいいし仕方ないのだ。
「えっ、旦那様……」
「そんなことどうでもいいよ。シンディはシンディでしょ?」
「……はいっ!」
 その時の彼女の笑顔は、これまでで一番嬉しそうだった。

 家族にはそうそうにバレたが、むしろ俺が飲み屋かどこかでコマしてきたと思っていたらしく、なんやかんやで怒られることはなかった。家族の前では完璧なメイドであり淑女だが、一度二人きりになるとお互いにイチャイチャグチャグチャして気付けば時間を忘れて過ごしている。しかしまぁなんだ、こんな可愛い妻がいる以上、早く二人だけの家を手に入れなくては、ね。
16/02/12 17:55更新 / ☆カノン

■作者メッセージ
 80年代のアメリカン・ハードロックってなんでこんなに聴き心地がいいんですかねぇ。いわゆるビートロックというか、ブルージーっていうんですかね。私生まれてませんけど。

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