連載小説
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激突!vsゲスタ海賊団!
 ここはファース島の漁港。この島の漁師達の漁船が停泊する場所。しかし、現在はゲスタ海賊団によって、占拠されていた。そして、そこに無断で停泊しているゲスタ海賊団の船に下っ端達が帰ってきた。

「船長ー!戻りましたー!」

 下っ端達が甲板に一同に集まっていた。ある者は奪った物資を持ち、ある者は攫ってきた女をロープで縛っていた。その中の1人が船長を呼んだ。すると、船内から白い髪に目が血走った、いかにも狂気的な男が出てきた。ヴィーノが持っていた手配書と同じ顔だった。

「良い女はいたかー? キヒッ!」

 この男こそ、今現在ファース島を荒らしているゲスタ海賊団の船長“ゲスタ・コバルデ”である。

「ええ! 中々の上玉を連れて来ましたよー! おい!」

 下っ端の1人が下卑た笑みを浮かべて言った。そして、他の下っ端に攫ってきた女を連れて来させた。

「い、イヤァ!」

 攫われた女“カリーナ”は周りの下心満載の視線に怯えきっていた。

「おお! コイツはまた良い女だー! この表情も最っ高に唆られるぜー! キヒヒッ!!」

 ゲスタはそんなカリーナの姿に欲情していた。ゲスタの笑い声と共に下っ端たちも一同に下卑た笑みを浮かべた。

「こ、殺さないで...」

 カリーナは震えた声でそう言った。すると

「キヒヒヒッ!! そんな顔されちまったら、もう我慢出来ねぇなー!!」
「いやぁー!! やめて!!」

 ゲスタはそう言って、カリーナを押し倒した。そしてそのまま、下っ端達の前でカリーナの服を無理矢理脱がそうとした。それを見ている下っ端達も興奮し出していた。

 間もなくカリーナの貞操が奪われると思われたその時、

「グヘッ!!」

 突然、1人の下っ端がゲスタの顔面に蹴りを入れた。ゲスタは堪らず、仰向けに倒れた。下っ端達は突然のことに動揺していた。

「話に聞いた通り、とんだクソ野郎だなぁ」
「テンメェ! ナニモンだ!?」
「今更気づくたぁ、アイツの言う通り、お前は部下の顔すら覚えねぇんだな」

 ゲスタを蹴った下っ端はそう言い放った。しかし、ゲスタはすぐに起き上がり、自身を蹴った下っ端に怒りを露わにした。

 すると、下っ端のバンダナを脱いだ。ゲスタと他の下っ端達は動揺した。

「俺はウィリアム・ラカム。海賊だ! と言ってもお前らみてぇなクズ海賊ではねぇぞ」

 下っ端の正体はウィルであった。すると酒樽から1人の女性が出てきた。

「やあ、ゲスタ。久しぶりだね」
「ああ!? テメェは!?」
「相変わらずクズだな。あの時の礼をしに来た!」

 ゲスタは酒樽から出てきた女性“ヴィーノ”を見てハッとした。どうやらすぐに思い出した様子だ。ヴィーノは表情は笑っているが、ゴミを見るような目でゲスタを見つめていた。

「そして、リリーを返してもらう! ゲスタ!」

 ヴィーノがそう言うと、ゲスタは突然笑い出した。

「キッヒヒヒヒヒヒ!!」
「何がおかしい!?」
「テメェら、たった2人で俺様達を倒そうってのかー?」
「そうだ!」
「キヒヒヒッ!! そりゃあ、いくらなんでも舐めすぎだぜぇ!」
「...舐めてるつもりはねぇ」
「それかよーテメェら! 俺様さえ倒せば女共を救えるなんて思ってんのかぁ?」
「そうだ! お前を倒して、かわいこちゃんはもらってく!」
「キヒヒヒ!! 出来るもんならやってみろー!!!」

 突如、ゲスタの腕が黒い炎に包まれ、その腕でウィルに殴り掛かった。ウィルは間一髪で回避した。そしてゲスタの腕を見たウィルは驚愕していた。

「なんだありゃあ!?」

 一方でヴィーノは一度見たことがあったため驚きはしなかったが、内心戦慄していた。

「あれはゲスタの魔法“黒炎爪”だ!」
「黒炎爪?」

 ゲスタは黒い炎で出来た大きな爪を両腕に纏っていた。

「キヒヒヒ! そうだ! 俺様のこの腕を見て生きて帰った奴はいねぇ!! 」
「いいや、ヴィーノは生きて帰ったぞ」
「ここで殺せば良いだけのことだ! キヒヒッ!」

 ウィルは戦闘体制構を取った。すると、ヴィーノがウィルの前に来て、戦闘体制を取り言った。

「ゲスタ! お前は私が倒す! そしてリリーを返してもらう!! 」

そう言ってヴィーノは剣を抜き、勢い良くゲスタに斬りかかった。しかし、

「キヒッ! 威勢だけだな!」
「クッ!」

ゲスタは纏う黒い炎の腕“黒炎爪”でヴィーノの攻撃を防いだ。これにヴィーノは苦虫をすり潰したような表情を浮かべながら、距離を取った。

するとゲスタが部下達の方を見て、号令を出した。

「テメェら!! このサテュロスをやれ!」
「何!?」

           うおおおおおおおお!!!!

 けたたましい掛け声と共に下っ端達が一斉にヴィーノに向かっていった。

「お前!!」
「女海賊ぐらい、アイツらだけで十分だからなぁ!」
「どこまで女を侮辱する気だ...!」
「まあ最悪、アイツらがやられたら、俺様が前みてぇに可愛がってやるよ! キヒッ!」
「コイツ...!」

 ゲスタの差別的且つ最低な発言に、ヴィーノは怒りの表情を表わにした。すると、


           ぐああああああああああ!!!!

「んだぁ?」
「!!」

 突如、けたたましい声が鳴り止み、代わりに部下達が苦痛の声を出した。それを聞いたヴィーノとゲスタも声の方に顔を向けた。するとそこには

「お前ら、少し黙ってろ!」

 ウィルが階段を上がろうとするゲスタの部下達に向かって、近くに積んであった酒樽を転がしていたようだった。

「そんじゃあ、俺が相手だ、ゲスタ」
「ウィル!」
 
 ウィルがヴィーノの前に立ち、剣を構えた。

「コイツは私がやる!!この手で...」
「そんな頭に血が昇ってたんじゃ無理だろ」
「え?」

 ヴィーノが言い終わる前にウィルがそう言った。そしてウィルが続けて言った。

「お前はアイツらを相手しろ、その間に頭も冷えんだろ」

 そう言ってウィルは階段の下にいる部下達を指差した。既に全員起き上がり、ウィルを睨みつけていた。

「...それは船長命令なのか?」

 ヴィーノは俯きながらウィルに言った。すると、ウィルから「そうだ」と一言返ってきた。

「...分かったよ船長、アイツは任せる」

 ヴィーノは決心した表情を浮かべてそう言った。

「ヴィーノ...」
「必ずアイツを倒してくれ!」
「ああ!」

 ヴィーノは部下達の方に向かっていった。すると、ゲスタはウィルに言った。

「キヒヒ! 遺言は話せたか?」
「遺言じゃねぇ」



 ウィルとゲスタが睨み合う。先に仕掛けたのは、



「俺様の黒炎爪で散れ!! キヒッ!!」



 ゲスタの方だった。黒炎爪を纏った腕を縦に振りかぶりながら、ウィルに接近し、叩きつけようとした。



「隙だらけだぞ! オラァ!」



 それに対し、ウィルはガラ空きの身体に横一閃を繰り出した。しかし、



「キヒッ!そう来ると思ったぜ!!」
「何!?」



 ゲスタは意地の悪い笑みを浮かべると同時に、ウィルの横一閃をもう片方の黒炎爪で受け止めた。



「しまった!!」
「キヒヒッ! そりゃ!!」
「グアアア!!」



 カットラスを掴まれ動けなくなったウィルに、ゲスタは黒炎爪を振り下ろした。ウィルはそれをまともに受け、床に叩き付けられる。



「グッ! イテェし、アチィ...(やっぱ、腕の黒いのは炎か!)」
「キヒヒッ! どうだ、俺様の黒炎爪は!? 声も出ねぇか? キヒッ!」



 ウィルは余りのダメージにゲスタの声も聞こえなかった。そしてそんなウィルを見て、ゲスタは再び右腕の黒炎爪をウィルに叩きつけようとした。



「んじゃ! おしまいー!!」
「(ヤベェ!! 死ぬ!!)」



 ゲスタの黒炎爪が動けないウィルに襲い掛かる。しかし、ウィルは痛みに耐えて、横に回避する。だが、



「キヒッ!」
「グフッ!!」



 ウィルが回避した所をゲスタは腹に蹴りを入れた。ウィルは吹き飛ばされ、船のマストに身体を叩きつけられる。



(ク、クソ...アイツ、中々強ぇ!)



 ウィルはマストで身体を支えつつ、何とか身体を起こす。



 そんなウィルを見て、ゲスタは意地の悪い笑みを浮かべていた。



「キヒヒ! 大口叩いてた割には大したことねぇなー! もう終わりかー?」
「クゥ!!」



 ウィルは自身が1番嫌いなタイプの人物に”弱い“などと言われ、屈辱的な気持ちになる。それも気持ちも手伝い、ウィルはカットラスを構え直す。



「キヒヒ!! まだ痛めつけられてぇらしいなぁ。テメェはドMかぁ? 」
「そんなんじゃねぇよ」



 ゲスタは満身創痍のウィルを挑発した。そして、その挑発をウィルはサラッと流した。



そして、今度はウィルの方が先に仕掛けた。



「オラァ!!」



 つづく。
22/11/01 02:28更新 / 運の良いツチノコ
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