連載小説
[TOP][目次]
暗い夜空と小さな出会い(上)
―――行ったか

俺はシロウが学校へ向かうのを見送ると、反対のほうへ行く

―――ったく、何年もお互いくっつかねぇんだよ

余計なお世話かも知れなかったが、幼馴染二人が互いの恋の悩みを抱えてるんだから、お節介の一つくらいしたくもなる

―――まぁ、偽善だが、な

偽善でもなんでも、一番の親友と、昔惚れれた女が幸せになるんだそれが良いに決まってる

・・・

最初に瑠華が好きになったのは、始めてあった小学校1年の頃だった
それから小学校4年までは好きだったが…

瑠華が好きだったのは、俺より先に会ってた幼馴染のシロウだと、この時解ってしまった
しかも、シロウも瑠華が好きだと

―――俺は、親友の事を応援したくなってしまった

なぜかって?
そうすりゃ少しは自分が格好よく見えると思ったからだ

自分から惚れた女と親友のために身を引く
見方によってはただの道化だが、俺には格好よく見えたんだ

・・・

「お、シュウじゃねえか!」


「狭山っち、おひさー」

俺はぶらぶらと何をするわけでもなく、友人の職場へ行った

狭山雷地(サヤマライチ)―――シロウ以外に俺が親友や友人と言えるのはこいつくらいだろうな

「新しいバイク、ついに完成したぜ…!?」

こいつは、バイクが好きで好きで仕方なくて中学卒業後、バイク工場に就職した筋金入りだ

「へぇ〜…売り物?」

「もち。だから買え」

「無茶言うな」

俺もバイクはそこそこ好きだが、こいつみたいにそれで生きようとは思えない

「で…成功したのか?」

「多分な…」

そして、俺が二人の幼馴染をくっつけようとしてるのを知ってるのも、こいつだけだ

「しっかし、シロウも自分に自信もてばいいのによ〜。あいつ位だぜ?オレの夢真剣に聞いてくれたの」

そう言いながら、工具を片付け始める狭山っち

「仕方ねーだろ。あいつ、自分の事わかってねーもん」

だよなぁ〜と、ため息をつきながら奥に行く狭山っち
どうやら今日はもう終わりだったようだ

「どっかよるか?」

奥から戻ってきた奴は、いつもの仕事かばん片手に話しかけてきた

「ゲーセンいかね?」

とりあえず、俺達はゲーセンに行くことにした

・・・

さて、殆どの人なら先ず絡まれたらどうするだろうか?
絡まれる相手次第だろうが、謝って済ませたり、そもそも絡まれる場所に行かないが正解なのだろう

俺の答えは―――

「ゲハッ!?」

「…いきなり突っかかって来てんじゃねーぞ」

ぶん殴る、だった

「おい、シュウ」

「狭山っちは先行っててくれ。…俺はこいつらと遊んで帰るから」

―――ゲーセンで遊んでたら、狭山っちに因縁つけたバカがいた
俺はついカッとなり、そいつをぶん殴ってしまった
そいつの連れは後4人、お互い殺気立ってる状態だ

―――狭山っち巻き込む訳にはいかねーな

狭山っちは社会人だ
だからケンカなんかしたら会社をクビになる

それだけは避けないといけなかったのに―――

自分の喧嘩っ早さを悔い始めていた
友人を巻き込む訳にはいかない

「狭山っち、人呼んできて」

「あ、あぁ」

そう言って、ダッシュで店員のとこに行く我が友人

「で、テメェ覚悟できてんのか?」

一昔前のヤンキー系が話しかけてくる
ほかのも臨戦態勢だ

「…外でやろうぜ。ここだと他の客の迷惑だ」

そういって、俺は他の連中と外にでた
…死亡フラグ、乙

・・・

「いつつ…」

外に出て、裏路地まで行った俺は、そこの4人をどうにかしてボコした
が、やはり人数差がでてしまったのと、さすがヤンキー、警棒なんざ持ってやがった
良いのを6発くらい貰ってしまった俺の体はかなり痛い

―――こりゃ、こいつら起きて袋にされるかな?

そんな事を呑気に考えながら、表に出ようとした時だった
意識が遠のき始めたのだ

―――やっべ、頭殴られたっけ

そんな事を思いながら、倒れる俺
正直、もうだめだと思った時―――

なにか冷えた物が頭に乗せられた

いや、顔を拭いているみたいだ

薄れていく意識の中、最後に見たのは―――

黒い服をきた、小さな女の子
それも、とても、綺麗だった

・・・

「お前、バカだろ」

「シュウ、バカでしょ」

目の前の親友二人は容赦ない罵声を浴びせてきた

例のヤンキーをボコしてから3日後、俺は入院を命じられていた
思った以上に体のダメージが大きかったのと、倒れた所から医者に搬送されたらしい

「ライチに迷惑かけようとしないのはわかるけど、そこに居ればよかったよね?」

正論攻めのシロウ

「おまけに勝手に遠くまで行きやがって…心配させんな」

かなりご立腹の狭山っち

「…しかたねーだろ。あのまま居たら結局俺悪者だしさぁ〜」

「「むしろそうなれ」」

異口同音の親友ども

「しっかし、誰かが電話してくれなきゃ死んでたかも知れねーんだぞ。わかってんのか?」

「…すまねぇ」

俺は謝るしか出来なかった

「ルカも心配してたよ。今度お見舞い一緒に来るかい?」

「いや、大丈夫だ」

―――折角なのだから、ここではなく、他のデートスポットいけ
俺は心の中でそうシロウに言った

「さて、オレは仕事だから行くぜ?」

「僕も用事あるからそろそろいくよ」

そういって立つ二人

「…ホント、迷惑かけたな」

俺がそう言うと

「「今度焼肉おごりね」」

と、二人して、笑いながら言い、そのまま出て行った

「ふぅ…」

俺はベットで横になる

―――あの時のあの子、だよな

俺が考えてるのは、あの黒い少女だ
恐らく救急車を呼んでくれたのもあの子だろう

それに医者曰く、応急処置が出来ていた為俺は生きていたらしい

つまり、彼女は俺の命の恩人なのだろう

―――しっかし、可愛い子だったなぁ…

夜に溶けそうな黒い服
対照的に真っ白な肌
どこか儚げな目

正直、そんな可愛い子に看護してもらってたと思うと嬉しい反面、悔しい反面である

その時の俺は意識を失っていたのだ
しかも救急隊員によると、俺を救急車に乗せると同時に居なくなってたらしい

よって、彼女の連絡先はわからず

お礼、言いたかったな…
そう思いながら、俺は寝ることにした

・・・

ふと、目を覚ますと、誰かが立っていた

黒い髪をした、ロングの誰か

「だれ?」

俺は寝ぼけながら聞く
が、その人は答えない

と、こちらに近づいてきた

「!?」

その顔をみて、俺は驚いた
―――瑠華と、あの少女を足したような容姿だったのだ

「あんた、だれだよ…」

俺は恐怖した
なんでか分からないが、恐怖した

「…貴方の隙間を埋めてあげる」

そういってきた彼女は、俺に近づいてきて

「!?」

かと思えば、突然離れて出て行ってしまった

「なんなんだよ…」

俺は、ただ唖然とするしかなかった

・・・

「多分、ドッペルゲンガーだにゃ」

翌日、瑠華とシロウがお見舞いにきたので、昨日の事を相談した
が、シロウは当然分からず、瑠華が答える事に

「ドッペルゲンガーって、確か失恋した人の所に現れるんだよね?」

「そうにゃ。宗弥クンが失恋して、その心の隙間を埋めようとしてあわられた可能性もあるにゃ」

だが、疑問が残る

「…俺、失恋してないんだけど」

だよね〜と、シロウ
―――まぁ、この件を失恋と言うなら失恋しているが

3人とも首をかしげるという、奇妙な状態が発生した

「…もしかしたら、心の奥底でそれに近い感情があったのかもしれないにゃ」

ポツリ、ともらす瑠華

「…だね。シュウ、自分の中になんでも押し込むから」

お前にだけは言われたくない

「っと、そろそろ時間だし、いこうかルカ」

「うん」

二人とも立ち上がる

「デート前に悪かったな」

「「そう思うなら喧嘩癖を治せ」すにゃ」

…ごもっともで
と、二人はそのまま出て行った

―――デート、楽しんでこいよ

そう思いながら、俺はゆっくりする事にした

・・・

入院から1週間
俺は無事退院する事が出来た

「もう、喧嘩なんてするなよ」

病院の先生からはしっかり念を押され、俺は病院を後にする

とは言うものの、今日は土曜日
今日明日は暇になるの間違いないので―――

「さて、と。人探し、始めますかー」

俺は、命の恩人と、病院にきた彼女を探す事にした

病院で彼女の事を聞いた所、そんな人は俺の部屋について聞きにきていないらしいし、入院患者でもないらしい

瑠華の言う通りなら、恐らくドッペルゲンガーとか言う魔物なのだろう

とりあえず、その魔物の特徴を調べるために、俺は図書館に行くことにした

・・・

図書館についた俺は古い図鑑から、最近の学術書まで片っ端から読み始めた

とりあえず分かった事は
1.ドッペルゲンガーは人の記憶を読み取り、その理想の姿になる
2.元の子は内気な場合が多い
3.今でも自然発生することがたまにある珍しい魔物

と、これ位だろうか

―――しっかし、珍しい、ねぇ…

今の時代、死体とかの管理や、墓場の魔力の管理も充実している事から、ゾンビやグールの子供からしかゾンビやグールはうまれない
今日では、自然発生するアンデットの魔物は非常に珍しいのだ
その為、自然発生した魔物は、孤児とかと同じ扱いになる事が多いらしい

―――ってなると、少し面倒かな

まだ決まったわけではないが、もし彼女が自然発生した魔物なら、情報はほとんど出てこないだろう
つまり、とにかく探し回るしかないのだ

…まぁ、探すのに変わりはないから大差ないのだが

そんな訳で、俺は街に繰り出す事にした

・・・

11/05/26 17:09更新 / ネームレス
戻る 次へ

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33