連載小説
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天才と凡人のワルツ(下)
私はヴァイオリンを弾く

今日は本当なら部活が休みだから、個人練習だ

―――一人はいい

これだと、どんな演奏をしても人に迷惑がかからないし、何を弾いてても、何も言われない

それに―――ロウちゃんがいないと、気分的に一人と変わらない分、この方が本当にラクだ

―――何時からだろう、私の周りに人がたくさん居るようになったのは
―――何時からだろう、彼との距離差を感じるようになったのは
―――何時からだろう、私と彼の間に、溝が出来てしまったのは

―――こんなの、少しも望んでなかったのに!

―――私はただ、彼に相応しい女になりたかっただけなのに

そう、気分が悪い方向で高ぶった状態でヴァイオリンを引き続ける

・・・

―――きっかけは恐らく、小学校2年生位のときだろう

たまたま、ヴァイオリンの演奏を家族で見に行った時だった
その時の奏者の美しさを今でも覚えている

「あんな演奏、いつでも聴けたらなぁ〜」

彼が言った、この些細な一言が、私の決意を固めたのだろう

その日以来、両親にねだってヴァイオリン教室へ行った
行ったが…

「この子、とっても才能がありますよ!?」

そういって、気がついたら教室でも教わることがなくなっていた

それからだったと思う
気がついたら、いろんなことが出来ていた
勉強も、スポーツも、音楽も―――

でも、それが、彼との時間を無くされてしまうとは、思ってもなかった

唯一私が安心できる時間

―――彼の部屋で、猫になっている時だけだった

彼が恥ずかしいからやめてほしいのはわかる
が、私たちネコマタにとって、猫の姿でリラックスできる場所というのは、本当に重要な場所なのだ

つまり、私は―――

「…なんか、普段と違うな、ルカ」

その声を聞いて、私は冷や水を浴びたような感覚になる

「ロウ、ちゃん…」

私の最も愛しい人
―――師堂楼樹が、そこに立っていた

・・・

「ど、どうしたにゃ?普段なら帰ってるのに」

彼がこの時間にいないのは当たり前だ
彼はどの部活にも所属していないはずだし、なにより今日は宗弥クンと帰っていた筈…

「なんとなく、ね…」

そう、彼もはぐらかす

―――恐らく宗弥クンも絡んでるのだろう

で、なければロウちゃんが私のとこにくるとはおも―――

「最近、なんかあったのか?」

「へ?」

私は素っ頓狂な声を上げてしまった

「いや、ルカがサボるなんて今日始めただろ?」

―――なんで、こんな所は見てくれているのだろう

「ルカがサボる位なんか辛いことあったのかな、って思ってさ…しかも、さっきの演奏だし」

「あ、あれはそういう演奏なんだにゃ!」

咄嗟に嘘をつく
勿論そんなわけがない

「…嘘だよな」

直ぐにばれた

「あの曲はもっと落ち着いて弾くものだって、自分でいってたじゃんかよ」

私は何もいえない
彼は続ける

「ルカが感情的にどうしようもない時、その曲を必ず弾くしな」

「…よく見ててくれてるんだ」

まぁな、と彼は頭をかく
彼が照れている時の癖だ

「…僕じゃ」

「?」

彼は突然言い出す

「僕じゃあ頼りにならないだろうけどさ、相談に乗ること位はできるから」

彼は、悲しそうに、言う

「そりゃあ、ルカに比べたらなんにも出来ないけど、さ」

「…とない」

「へ?」

「そんなことない!?」

私は大声で言う

「ロウちゃん!ロウちゃんの部屋でいっつも寝てるのはね!?それをしてると私が私でいられるからなんだよ!?」

「ちょ!おま!?いk「ロウちゃんの為なんだよ!?私が頑張ってるのは!?」

「…は?」

私は彼にぶちまける
私の思いを

「ロウちゃんがいつでもヴァイオリンを聴きたいって言ったから、ヴァイオリンだって頑張ったし、ロウちゃんの自慢になりたくて色々頑張ったんだよ!?」

私は何が言いたいのか解らなくなってきている

「ロウちゃんのお嫁さんになりたくて!それが夢で!?わ、わたぢ…」

私の頭の中もグルグルで、泣きながら、何が言いたいのか解らなくなってきた

「…」

無言のロウちゃん
ここまで言っても無言って事は―――

「やっぱり、わたし、嫌われてたんだよね…」

「…は?」

「いいの、わたしじゃつりあw「いや、まて」

彼が静止させる

「確認の為に、いいかな?」

私は頷く

「ルカが好きなのは、僕?」

もう一度頷く
彼は難しい顔になる

「…ごめん、疑うようで悪いんだけど、マジ?」

「うん」

彼は再び顔を難しくする
―――やっぱり嫌われてるんだ

「えーと…幼馴染だから、とかじゃないよ、な?」

彼は顔を赤くして聞いてくる

「…そんなに気を使わないで、ロウちゃん。私嫌われるの覚悟してたから」

「いや、これはきr「私といると、みんなといれないもんね」

「はぁ?」

彼は素っ頓狂は声を出す

「ごめんね…」

そういって出ようとする

「って、だから待ってルカ!?多分激しく勘違いしてるから!?」

が、彼に手を掴まれる

「離してよロウちゃん!もう気をつk「だからそれが勘違いだっていってんだよ」

そういって、私を抱き締める

「え…?」

「寧ろルカこそいいのかよ?俺なんかで」

彼は、まるでようやく掴んだ宝を離さない、といった感じで力を込めてくる

「俺なんて、どこにでもいるモブキャラCみたいなもんだぞ?そんなのと付き合っても、ルカになんのメリットも「毎日安心できる」

私は彼の話を遮った

「猫にならなくても、毎日安心できる。ロウちゃんがこうしてくれるんなら、私、まだまだがんばれるよ」

「…僕、だから、なんだな?」

彼の腕の中で頷く

「…よかったぁぁぁぁ」

「え?」

「正直、俺みたいなのがルカと釣り合う訳ないって、諦めてたんだ」

彼は心底安心して、その事を暴露した

―――私より優れたところがない
―――私と居ると、影で色々言われた

他多数…

「…否定したいところが幾つかあるにゃ」

「あ、にゃはつけるんだ」

「一応、かにゃ。先ずロウちゃんは私より人を見る目があるし、人に安心を与えられるにゃ」

「お前の贔屓分は何割だ?」

「次に、私と居て陰口を叩かれるのもあるかもしれないけど、私もロウちゃんといて陰口叩かれたことあるにゃ」

「無視かい。そしてそいつ後で殴らせろ」

「最後に。ロウちゃんだけだにゃ」

「なにが?」

私は一呼吸おいて彼に伝える

「私がここまでやる気になれるのも、私を好きにしていいのも」

彼はみるみる真っ赤になっていく

「ば、バカ!好きにしていいとか簡単に言うな!?抑え効かなくなるだろ!?」

彼は真っ赤にして言う
そんな彼が愛しくて―――

―――彼にキスをした

「!?」

「…これでも、抑えなんているか、にゃ?」

彼の腕の中から抜け出す
名残惜しいが、これからまた堪能できるのだ

…でもやっぱり名残惜しい
だから―――

「さ、帰ろうロウちゃん♪」

「って!…まぁ、いっか」

なんかドッと疲れたように言うロウちゃん
あぁ―――そんな顔をしないで
―――襲いたくなってしまうから

でも、まだダメだ

彼は考えが硬く、何回かきちんとデートをしないと、してくれないだろう

わたしは早速デートプランを考え始めた

・・・

次の日の朝、私はいつも通り彼を起こしに行く
猫の体で部屋に入り、普段ならそのまま寝ていたが、今日は違う

私は変身を解き、そのまま彼の横に倒れる

彼の寝起きの悪さは筋金入りで、これくらいじゃ起きない
時間が来ない限り、絶対に起きないのだ

だから、これから至福の時を―――

「させねぇよ?」

ベシッ!

私の頭にチョップが直撃する

「ロウちゃんひどいにゃ〜!」

私は反論する
昨日キスまでした仲なのに、一緒に寝るのは許されないというのか!?

「ったく、まだ眠いんだからじゃれついてくるなよ…ほれ」

「え?」

彼は布団をまくり、スペースを作ってくれた

「行為とかはダメだかんな」

そう言って、また寝始めた

―――恐らく、私は赤面しているだろう

だが、心地よい気持ちでもある
そのスペースに入らせて頂き、私も夢の世界へ行くことにした

―――彼が起こしてくれるまで


11/05/23 23:31更新 / ネームレス
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■作者メッセージ
どうも、ネームレスです

ふと、ネコマタたんの話とドッペルたんの話を書きたいと思っていた矢先、なにかを受信したようです

実際、この未来のお話にする必要あったのかといわれると不安ありますが…

さて、このシリーズ、まだまだ続いていきます

次は当然…


それでは、今回もここまで読んで頂きありがとうございました!
次回もお楽しみに!?

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