読切小説
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高校生トライアングル
「では、ホームルームはここまで。気をつけて帰ってくださいね」

 永かった冬がようやく終わり、代わって春がその顔を覗かせ始める三月の終わり頃。それまで『大学受験』と言う名のハードなイベントを前にして極限まで神経を張り詰めていた反動からすっかり脱力していた三年七組の生徒達は、その担任の女教師のおっとりした言葉を受けてそれまで保っていたなけなしの忍耐力を完全にかなぐり捨てた。
 そして同級生達が思い思いに立ち上がり、一人ないし複数人で固まって先に帰ったり教室に留まって友人と他愛ない話をしているのを尻目に、葵幹矢は一人、窓際の自分の席についたままぼうっと窓の外の景色を眺めていた。
 窓から見える景色は未だ一面の銀世界であった。今でこそ降ってはいなかったが、間近にあるベランダや下方に見える校門前のアスファルト、そして遠くに見える大通りや乱立するビルの屋上にもうずたかく雪が降り積もり、地上は白で埋め尽くされていた。雲に覆われた空もまた白一色に染まり、地上との境界を曖昧にしていた。

「……」

 見たくて見ていたのでは無い。これから自分の身に起こる事を想像して高鳴る心臓を抑えたいがために、その白い静謐の世界を視界に収めていたのである。だが目の前の穏やかで薄ら寒い光景とは裏腹に、幹矢の胸中はこの後のイベントを前にした期待と不安で、溶岩流の如く真っ赤に煮えくりかえっていた。
 そしてそんな感じで真っ白な世界を表面上はつまらなそうに見つめていたその時、幹矢はその世界の中で白以外の色彩を持ったある物を捉えた。それは両翼を忙しく上下にはためかせて幹矢の視界内に左から右へと侵入し、やがて下方へと滑空して視界下部中央にあった電信柱の頂点に両足でピタリと止まった。その物体は具えた四肢こそ鳥のそれであったが、全体的な形は人間のそれであった。
 ハーピー。この世界に古くから存在する、魔物娘と呼ばれる者達の一種である。かつては教団と呼ばれる一派を筆頭にした人間達と対立関係にあったのだが、それも今は昔。今では教団の脅威も殆ど消え去り――幹矢の住むこのジパングでは昔からの事であったが――こうして大手を振って人前に堂々と姿を現す事が出来ていたのだった。
 と、そんな感じに物思いに耽りながら幹矢が向けていた視線に気づいたのか、件のハーピーが一瞬驚いたようにこちらの方を向いた。そして幹矢の姿を認めるやいなや彼に向けてウインクを飛ばしてきた。突然の事に幹矢の顔が赤くなる。
 そんな彼のウブな反応を見て愉快そうに笑みをこぼした後、そのハーピーは翼を広げて幹矢に背を向けるようにして飛び去ってしまった。

「あの子、なかなか可愛かったわね。惚れた?」

 飛び立つその背中をじっと見ていた幹矢の背後から、不意に柔らかな声がかかってきた。幹矢は意識をいきなり現実に引き戻されたような気がして、驚いた表情を浮かべて後ろを振り向いた。

「……なんだ、お前か。びっくりさせるなよ、マシロ」

 そして声の主を視界に収め、正体を掴んだ幹矢が安堵の表情を浮かべる。この時彼の前には、腰に手を当てて片方の足に重心を乗せた形で立つ一人の少女がいた。その少女――永井真白はそんな幹矢の不平混じりの言葉を受け、反省するどころかクスクス笑いながら返した。

「ふふ、ごめんね。君の事見てたら、つい驚かしたくなっちゃったって」
「ついってなんだよ、ついって」
「だーかーらー、ごめんって。謝ってるじゃない。本当にごめんね?」
「わかったよ。わかった。わかったから」

 切り揃えられた茶色のショートヘアと上背の無い(胸も無い)細身の体を揺らしつつ甘えるような口ぶりで謝罪する真白に対し、幹矢がそう投げやりに返す。すると真白はそれを受けて「本当!? 嬉しい!」と今にも飛び跳ねそうな勢いで己の喜びを表現し、対する幹矢もそんな真白の姿を前にして肩の力を抜き、やれやれと呆れたように苦笑する。それはほんの些細なやりとりであったが、同時に見ていてとても微笑ましい光景であった。
 真白と幹矢は高校一年からの付き合いだった。二人はそれから高校三年の今に至るまで、無二の親友として付き合い続けてきた。
 真白はとにかく甘えん坊で、ヒマがあれば幹矢にべったりくっついてきた。背も胸も控えめなサイズだった事もあって、幹矢は同年代であるはずの彼女を妹のように見てしまう事も一度や二度では無かった。まあ、幹矢からそんな対応をされる度に真白は「私そんな子供じゃないもん!」と頬を膨らませて抗議してくるのだが、その姿がまた子供じみていたのでその時の幹矢は笑いをこらえるので精一杯だった。

「はいはい、みんな。もう五時ですよ。日が暮れる前に、そろそろ下校してくださいね」

 その時、教壇の方からおっとりとした声が響いてきた。このクラスの担任の、園田白子の声である。
 彼女は幹矢よりも長身で、垂れ目と小ぶりな唇と豊かな胸、縁の細い眼鏡とポニーテールに纏めた赤い髪が特徴の文字通りの『美女』であり、その独特の間延びした喋り口と嫌みの無いおっとりした性格も相まって、同学年の生徒では知らぬ者のいないマドンナであった。
 そんな美人先生の言葉を受けて、それまで教室に残っていた生徒達も鈍足ながら不満を漏らす事なく教室を出て行った。白子の人望が成せる業でもあったし、単純に白子の言い分が正しいからでもある。冬から春への過渡期とは言っても、未だに日暮れ時は早く外が夜闇に閉ざされるのもまた迅速であったからだ。いくら仲間同士固まって下校したとしても、そんな暗闇の中を安全に帰宅出来ると言う保証はどこにも無かった。

「じゃあ先生、さよなら!」
「うぃーっす」
「はい。さようなら」

 白子はそのゆっくりながら教室を出て行く生徒達の間を縫うようにして、時々生徒からの応答に答えつつ幹矢と真白の下へと歩いて行った。そして二人の前に立つと同時にその顔を交互に見比べ、小さく笑いながら言った。

「二人とも、今日も仲が良くていいですね」
「あ、そうですか? やっぱりそんな感じに見えます私たち?」
「ええ。とっても。まさに一心同体と言った風ですね」

 生徒一人一人の様子を事細かに見つめ、その良い所や見直すべき所を見極めその時その時に的確な言葉を残す。この気配りの細やかさ、人を見る目の鋭さもまた、彼女の魅力の一つであった。
 だがこの時の白子の言葉は、幹矢を困惑させるに十分な効力を発揮した。

「ちょ、先生、やめてくださいよ。そんなに持ち上げると、すぐに真白の奴調子に乗っちゃうんですから」
「え? そうなんですか? でも私には、本当にそんな感じに見えたのですけれど……」
「もー、幹矢ってば何恥ずかしがってるのよー? いいじゃない、先生から褒めて貰ってるんだからさー。それとも……」

 そこで真白が言葉を切り、目を細めて顔を幹矢の所へ近づける。いきなりの事に息をのむ幹矢に、真白がねっとりとした声で言った。

「私と夫婦になるの、イヤ?」
「――ッ!」

 幹矢の体が一気に硬直する。真白の潤んだ瞳はまっすぐに幹矢を見据えていた。この直後に白子の咳払いが無かったらどうなっていたか、幹矢は意識して考えるのを止めた。

「私だってお嫁さんになりたいのに……」
「え、何か言いました?」
「な、なんでもありません! そ、それはともかく、二人も早く支度して、家に帰りなさいね? いいですか?」
「はい。わかりました」
「はーい!」

 そして咳払いの直後にどこか性急に放たれた白子の言葉を受けて、幹矢がはきはきと、真白が元気いっぱいに答える。
 直後、二人の返事を聞いて満足そうに頷いた白子の横に真白が立ち並び、その耳元に口を近づけた。

「あ、あの、真白さん?」
「ねえ、シロ先生」

 突然の事に面食らう白子の耳元で、甘く囁くような口調で真白が言った。

「この後、予定とかあったりします?」
「え、それは、その……」
「ないんですね? ありませんよね?」
「それは、まあ、ありませんけれど……」

 悪戯を思いついた子供のように不敵な笑みを浮かべながらしつこく聞いてくる真白に対し、顔を真っ赤にして白子がそう答える。その間白子は幹矢の顔をチラチラと横目で見続け、その顔を染める赤は羞恥と興奮から出来ていた。
 そんな真白の問いかけとそれに対する白子の反応を見て、幹矢もつられるように顔を赤くした。そしてこの後に起こるであろう事を夢想し、紅潮した顔にうっすらと恥じらいと期待の籠もった笑みを貼り付ける。
 これは最初に真白が提案した事に対して、幹矢が「先生も呼んで一緒にやろう」と付け加えた事であった。期待通りに事が運んで興奮しない訳がない。

「もう、幹矢ってば何ニヤけてんのよ。スケベなんだから」

 それを見てどこか底意地の悪い笑みを浮かべながら、真白はやけに通る声で二人に言った。

「最近ご無沙汰だったし、大学合格のご褒美って事で……ねえ、いいでしょ?」

 白子と幹矢が視線を交わし、次いで真白の方を見る。
 三人は同じ熱を共有していた。




 それから数時間後。未だ自己主張を続ける冬によって夜の帳が降ろされ、すっかり闇に包まれた高校にて。
 本来ならば人っ子一人いない筈のその教室――ドアの上に『三年七組』と札が提げられたその空間の中で、三つの影が小刻みに蠢いていた。

「もう、みんな帰っちゃったみたいだね」
「そうみたいね。そういうわけだから、ねえ先生? はやく、はやくっ」
「はいはい。ちょっと待っててね。これを使うにも、それなりに準備がいるんだから――」

 無人の筈の教室の中から冷静な声と急かすような声、そして緊張感のない間延びした声が続けて響く。最初の声は男の物で、後の二つは女の声だった。
そしてその間延びした女の声が聞こえた直後、空中に黄金色に光を放つビー玉ほどの大きさを持った球体が出現し、そのまま静止した。

「さて、これで光の確保は完了ね」

 間延びした声が再び響き、その声の主が魔力を操ってその電灯を一回り弱めた光を放つ球体を天井近くまで上昇させてそこに固定させる。その光に照らされて、それまで影として動いていた三つの存在が白日の下にさらされた。

「照明もバッチリ。ムードもバッチリ……それじゃあ、幹矢君……?」
「うふふっ、みーきーや?」

 身に纏う影を剥がされ実体を得た二人の女は、どちらも人間ではなかった。
 目の前の男を見つめつつ楽しげにコロコロ明るい声を出した少女は姿形こそ人型を保っていたが、全身から放たれる魔力――魔術の素養の無い人間でさえ赤い靄のように波打つ物として視覚化できる程の高密度な魔力が、彼女が人間で無い事を如実に表していた。その少女の隣にいた女性は彼女ほど自身の魔力を垂れ流していなかった――単に自分から魔力を制御していただけだったが、その青ざめた肌と金色の瞳、そして何より腰から下の緑色の蛇体が、彼女の本性を露わにしていた。
 二人は全裸だった。

「みきや、みきや♪ もうやっちゃおう? 私、もう我慢出来なくなってきたんだから……♪」
「幹矢君、私もその、もう自制が効かなくなってきちゃったの……だから、お願い……♪」

 二つの異形が指を咥えて身をくねらせ、無駄な贅肉のない汗ばんだ体から脳を痺れさせる甘い匂いをまき散らしながら目の前の男を誘惑する。そんな人間ではない二人を前にして、同じく全裸になっていた葵幹矢は少しも驚かなかった。むしろ己の肉棒を痛い程に反り立たせ、目の前の女――幹矢のよく知る二人の元へと親愛の笑みを浮かべながら近づいていった。

「マシロ……先生……!」

 その幹矢の言葉を引き金にして、三人は一つになるかのように互いの体をしっかりと抱き合わせた。




 初めに幹矢に告白したのは、『ダンピール』永井真白の方だった。高校二年の九月初めの頃、彼女は幹矢に自らの正体を明かし、真っ赤な顔と初めて見る真剣な口調で「つきあってください」と言ったのだった。
 真白が魔物娘だった事について、幹矢は全く動じなかった。道を歩けば平気で魔物娘とすれ違うような時代である。学校に魔物娘がいてもおかしくはなかったし、実際に人間の姿に擬態する事無く通学してくる魔物娘も幹矢の高校に何人かいた。真白が自らの正体を明かしたのも今まで幹矢に隠し続けてきた後ろめたさからではなく、ただ単に彼女がケジメをつけたかっただけであった。
 真白が告白してきた事にも驚いたが、実は幹矢自身も彼女に惚れていた節があったので、それに関しても必要以上に戸惑う事はなかった。幹矢は少し口ごもった後で顔を真っ赤にしながら「俺からもよろしくお願いします」と返し、真白は感極まって彼の体に抱きついた。この時嗅いだ真白の体から広がる甘い匂いを、幹矢は今でも覚えていた。
 だがその三日後、幹矢は真白とは別の女性から告白を受ける羽目になった。
 相手は『エキドナ』園田白子。彼女もまた自分の正体を明かし、そして一目見た時から幹矢に恋い焦がれていた事を打ち明けた。魔物娘は愛に生きる存在である。教師が生徒に恋をする事に対する気後れは皆無だった。だが幹矢は違った。担任が魔物娘であった事や教師から告白を受けた事に対して、曲がりなりにも人間であった彼はそれなりに衝撃を受けた。そして何よりその場に真白がいた事が、彼にとって一番の危険要素だった。
 その一方で、愛の告白を終えた白子の表情は真剣だった。いつもののんびりした調子を欠片も見せない真剣な顔で、じっと幹矢を見つめていた。
 するとその時、前述の事が原因で大いに混乱し答えを出せずにいた幹矢を尻目に、それまで絡ませていた腕を解いて真白が幹矢と白子の間に立った。そして突然の事に驚く白子に、真白が満面の笑みを浮かべて言い放ったのだった。

「私、負けませんから♪」

 白子もまた魔物娘だったのだ。対抗心はあったろうが、それがドロドロの争いになる可能性は皆無であった。
 それから三年の二学期に入るまでの間、三人はとても甘く濃密な時間を過ごしたのだった。
 そして二学期はじめから今に至るまで、彼らは揃って禁欲生活を強いられてきた。受験勉強である。
 その今まで溜めてきた物を一気に吐き出してしまおうと真白が提案し、幹矢が白子とも一緒にしたいと言った結果が、今に繋がると言う次第である。




「あは……♪ これえ、これがほしかったのお……♪」

 腰を落として目を細め、眼前で天高くそそり立った幹矢の肉棒を愛しげに頬ずりしながら、真白が濡れた声を漏らす。

「この匂い♪ この肌触り♪ 今まで勉強漬けだったから、本当に久しぶり……ああっ♪ もうこれだけでイっちゃいそう♪」
「そ、それを言うなら、私だって……❤」

 それまで受験勉強で疎かにしていた分を取り戻す勢いで頬ずりをする真白にヤキモチを焼いたのか、白子がその反対側に頬をくっつけて甘えるように擦り合わせる。

「私だって、ずっと我慢してきたんだから❤ 幹矢君達が頑張ってる間中、すっと我慢してたんだから❤」
「ああ、マシロ、先生、そんなにこすったら……!」

 その一方、幹矢は美女二人のスベスベの頬で肉棒を挟まれ、今にも爆発寸前であった。それでも『先にイきたくない』と言う男の意地から簡単に出すまいと苦悶の表情を浮かべていた幹矢に対し、一心不乱に頬で愛撫していた白子が目線を上げて不満を漏らす。

「もう、幹矢君? 私たちだけの時は、はあ、先生じゃなくって、うんっ、呼び捨てにしてって、言ったでしょ?」
「ああ、そのっ、ごめん……!」
「ふふっ♪ 思い出してくれればいいの❤ じゃあ今から、私の事を名前で呼んで❤」

 言いながら白子が勢いよく頬を下方へグラインドし、そこで停止して根元を舌で舐める。不意の快楽に幹矢の脳が雷に打たれたように痺れ、それが彼の躊躇いを一気に打ち壊す。

「ああああッ! せん、それ……シロコ! それ、いい! シロコ、気持ちいいよぉ!」
「あはっ♪ 幹矢君、これが気持ちいいのね♪ 私嬉しいわ♪」

 自分を名前で呼んでくれた満足感と幹矢を喜ばせる事が出来た達成感から、白子が幸せそうに笑みを浮かべる。そしてそのまま頬ずりを止めて根元を舐め始めた白子を見て、今度は真白が動いた。

「ねえ幹矢❤ シロコだけじゃなくって、私もみて❤ 私のおまんこもっと見て❤ 私のおまんこ、幹矢のが欲しくてグッチャグチャなんだから……はぁん❤」

 こちらは肉棒の腹を頬ずりしたまま、自分が濡れているのを見せつけるかのように真白が手を自らの割れ目に持って行き、そして割れ目の奥に指を突っ込んで激しくかき回す。
 真白の言う通り、彼女の秘所は既に愛液でしとどに濡れそぼっていた。

「幹矢、聞こえる? 私のいやらしいここの音、聞こえる?」

 中で指が動く度に、そのぷっくらとした割れ目からヒビの入った水道管のように勢いよく愛液が噴き出してくる。プシャッ、プシャッと吐き出されたその愛液は真白の足下にどんどんと溜まっていき、お漏らしをしたかのような透明な水たまりをそこに作った。
 興奮しない訳がない。幹矢は鼻息荒く、こみ上げてくる物を堪えるように苦しげに答えた。

「あ、ああ、聞こえる。すっげー嫌らしい音、えっちでかわいい音が聞こえてくる……!」
「――ああ、嬉しい❤ 私、嬉しすぎて死んじゃいそう❤ じゃあもっと、もっともっと聞いてね❤」

 更に真白はそのまま指を抜き差しする勢いを強め、幹矢は元より白子にも聞こえるように水しぶきの迸る音を響かせた。

「あん❤ ああん❤ もう限界ッ❤ 幹矢、みきやああぁぁぁン❤」
「わ、私だって、幹矢君の事……!」

 その真白の痴態が白子の心にも火を点けた。縋り付くようにして下半身の蛇体を幹矢の腰に絡ませ、肉棒から顔を離して上体を起こし、幹矢の唇に自分の唇を押しつけた。

「んぶッ!?」
「うんッ、ふうッ……❤」

 そのまま一気に舌を伸ばし、幹矢の唇をこじ開けて口内に突き入れる。そして先端が二つに分かれた蛇の舌がらせんを描くようにして舌に巻き付いてチュウチュウ吸い付き、それを解放するやいなや今度は歯ぐきや歯列を二叉の先端で優しくなぞっていく。

「うん……ちゅる、ずぞぞっ、ちゅ……ふううん……うんっ……」

 そんな口内を優しく一方的に蹂躙される感覚は、すぐさま肉棒を頬で撫でられる時とは比べものにならない快楽となって、幹矢の脳をドロドロに蕩けさせて行った。逃げだそうにも白子がその頬を両手で挟むようにして押さえつけ、更に腰にも蛇体が巻き付かれていたので、幹矢はもはやその快楽を受け入れるしかなかった。
 だが幹矢はただ受け身に回るだけではなかった。

「うん、ぴちゅ……うんッ!?」

 それまで緩慢な動きで口の中を泳いでいた白子の舌を、幹矢の舌が乱暴に絡め取ったのだ。そのまま二つの舌は軟体動物のように激しくもつれあい、途方もない量の悦楽を双方にもたらした。

「ふうッ、うんッ……ちゅ、くちゅ、ぴちゃ、んんッ!」
「ちゅ、ぴちゅ、んむ、んッ」

 上半身を密着させ、ほどよく筋肉のついた逞しい胸板に豊満な乳房を押しつけ、互いの顔を掴んで獣のように舌を絡ませ合う。そんな二人を見上げながら、一人置いてけぼりにされた真白が頬を膨らませた。

「もう、二人して楽しんじゃって。じゃあ私はこっちを……❤」
「ちゅ、ふんッ……んむッ!?」

 不意に下方から響いた刺激を受け、口を塞ぎ合ったまま幹矢が呻く。そのまま視線を舌に下ろすと、そこには嬉しそうに涙を流しながら口いっぱいに肉棒を頬張る真白の姿があった。

「ちゅ、ずちゅ、あむ、じゅるるっ❤」
「ふ、ふう……ッ! う、うあ!」

 脳に次々と押し寄せてくる猛烈な快楽の波にたまりかね、白子の唇から顔を離して幹矢が荒く呼吸する。それを見て白子も何が起きたのかを察し、すぐさま下方に目を向けると同時に口を尖らせた。

「ちょっ、真白さん! 一人だけはずるいですよ!」
「ちゅ、じゅるるるるっ、ぷはあっ……先生だって、幹矢のキスを独り占めしたじゃん。だからこれでおあいこ……ちゅっ❤」
「うっ、ううっ……」

 正論を突かれ悔しげに声を漏らす白子を尻目に、真白が自身の唾液と先走りの汁でベトベトになった口を揺り上げて妖艶に笑う。
 二人して対抗意識むき出しである。このままでは埒が明かないと思い、幹矢が二人に言葉を放った。

「はい、二人ともストップ、ストップ。そこまでだよ」
「え?」
「はい?」

 きょとんとした二組の瞳が一斉に幹矢へ注がれる。その視線を受け止めながら幹矢が続けた。

「さっきから二人ともムキになりすぎ。気持ちよくしてくれるのは嬉しいけど、俺たちは別に競争するためにこんな事やってる訳じゃないだろ?」
「それは……」
「そ、そうだけどさ……」

 そこで言葉が途切れ、二人がジト目で互いの姿を瞳に収める。自分の愛を勝ち取るために二人の女が意地になっていると言うシチュエーションは、男にとってはある意味では非常に素晴らしい展開なのかもしれない。だが幹矢は、自分のために同じくらい好きな二人の恋人が争う姿は見たくなかった。

「俺は二人一緒に愛したいんだよ」

 二人を愛したい。二人を妻に迎えたい。幹矢の倫理観は目の前の二人の魔物娘によって、あらゆるふしだらな行為や背徳的な行為を良しとする物へと完璧に書き換えられていた。

「俺はシロコもマシロも好きだ。さっきはどっちの好きも同じくらい伝わってきて、俺はとっても幸せだった」

 幹矢の言葉が魔物娘二人の心を射貫いた。それまで気まずそうに顔を俯かせていた真白と白子が、再び幹矢の方を見つめる。

「どっちが良いとかじゃなくて、俺は二人一緒に愛したい。それじゃだめかな?」
「それは……」
「そ、そこまで言われたら……」

 幹矢の告白に、真白と白子が互いに顔を見合わせ合う。
 愛する男の頼みである。断れる筈も無かった。

「じゃあ今は……」
「一時休戦、て事で」

 そう言い合って二人が笑みをこぼす。そうじゃないんだよ、と訴えかけた口を幹矢は閉じた。
 三人一緒にデートをする時やセックスをする時、幹矢は何かにつけては相手よりも多く愛情を得ようとする恋人達に対して同じ事を幾度となく言ってきたからだ。




 そして幹矢の提案が汲まれてから数秒もしない内に、彼の目の前には『楽園』が広がっていた。

「はい。幹矢君……❤」
「いつでもいいからね、幹矢……❤」

 誰の物かもわからない机を二つ横並びにくっつけてそれを幹矢の前に置き、その上に真白と白子が腰掛ける。そして真白はM字開脚で、白子は両手を使って、自身の熟れきった秘裂を惜しげも無く幹矢に見せつけた。

「私のおまんこ、もう準備万端なんだから……❤ 幹矢に食べて貰いたくて、もうこんなにぐちゃぐちゃなんだから……❤」
「私だって、幹矢君に収穫して欲しくてこんなになってるんだからね❤ ああ、食べて❤ いやらしい蛇おまんこ、いっぱい食べて❤」

 愛液でこれでもかと言わんばかりに濡れまくった秘裂を晒し、奥の奥まで恥ずかしげも無く幹矢に見せつける。その二つの肉花が放つ脳を痺れさせる芳香を前に、幹矢は完全に自制心を失っていた。

「マシロ……!」

 そして自分でも気づかない内に、真白の両腿をがっしりと掴んでいた。真白は嫌がる素振りを少しも見せず、むしろその後を懇願するかのように体を狂おしげによじった。

「幹矢、お願い……❤」

 涙に濡れた瞳が幹矢を捉える。幹矢は黙って頷き、肉棒の先端を秘裂の先端に触れ合わせる。
 それだけで絶頂してしまいそうだった。二人は何とかしてそれに耐え、その中で幹矢が苦しげに言った。

「マシロ、行くぞ……ッ!」
「うん❤ きて、きてえぇぇえッ!」

 幹矢が勢いよく腰を打ち付ける。
 ご無沙汰だったからか、真白の膣内はとても窮屈だった。入ってきた異物を絞め出さんと、ヒダの一つ一つが執拗に絡みついてくる。力を抜くと千切れてしまいそうだった。だがそれが、幹矢の反抗心、嗜虐心を刺激する。
 幹矢が更に腰を押しつける。灼熱の杭がその最奥部まで突き刺さり、その熱が周りの肉を蕩かしていく。亀頭の先と口づけを交わした子宮口さえも、その熱の前にドロドロ融けていく。

「あッ――」

 それは二人の築いた我慢の堤防を軽々と打ち壊した。灼熱の奔流が全身を駆け巡り、全身が性感帯になったかのごとき快感を脳にぶちまける。

「――ひいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃん❤❤❤❤」

 ただ挿入しただけなのに、真白は呆気なく絶頂を迎えてしまった。それと同時に、幹矢も精神がバラバラになるかのような快感の前に、呆気なく白旗を振った。

「マシロ、まし、ろ――ッ!」
「うひぃっ、ひい、ひいいいぃぃぃぃぃんんんん❤❤」

 真白の膣内に精液がぶち込まれていく。まだ絶頂の波から抜け出せていない時にその容赦の無い暴力的な迸りをまともに受け、真白は舌を突きだし白目を向いて更に一段高い場所にある絶頂の領域へと飛翔した。

「ましろ! ましろぉぉぉぉッ!」
「うんッ! うんッ! うんッ! うんッ!」

 電気ショックを食らったかのように体をガクガクと激しく動かし、真白が連続絶頂の前に悶絶する。恥も外聞も無く、ダンピールとしての気高さもかなぐり捨て、ただ一人のメスとしてその快楽を余す事無く受け取っていく。
 そして幹矢も射精を行いながら、激しく腰を前後させていく。それは相手の事を少しも慮る事のない、ただただ自分が快楽を貪るだけの暴力的な物だったが、その獣性さえもが今の真白には愛しく素晴らしい物だった。

「また、イクッ! イくぞ、マシロおッ!」
「いいよ、きて❤ ましろのなか、めちゃくちゃにしてえッ!」

 ばちん、ばちんと強く肉のぶつかり合う音がこだまする。そして幹矢が五回肉棒を膣内の奥深くへと叩きつけた時、限界が訪れた。

「マシロ、うう、あああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「はぁん、はッ、入って、はいッ――にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁん❤❤❤」

 互いにケダモノの叫び声を上げながら、揃って絶頂を迎える。精が子宮口を埋め尽くし、愛する男の精子が自らの卵子を犯し尽くす。その言い様の無い快感が全身を駆け巡り、真白はただただ狂喜の叫びを上げ続けた。

「はあっ、はあっ、う……ッ」
「は――ッ、は――ッ……あ、やん……」

 二人の交わりはやがて終わりを迎えた。幹矢が二回精を放った段階で、真白が燃え尽きたかのように気をやってしまったのだ。そうなるまでに恐らく二分も経っていなかっただろうが、彼はそれを不服とは思っていなかった。一回当たりの時間が足りないなら、その分だけ回数を増やせば良い。
 それに――

「幹矢君……みきや、くぅん……❤」

 横での二人の交わりを見て、すっかり出来上がった白子が涙声で懇願する。幹矢は中に入った物を捉えて離さんと未だひくつく割れ目から意識して肉棒を引き抜き、その体液まみれでてらてら光ったそれを洗う事もせずに白子のそこに押し当てる。

「いいかい?」
「はい……❤」

 形骸化した短い問答を済ませた後、一気に突き入れる。

「――!」

 本当に待ちきれなかったのだろう。挿入直後にやってきた快楽のイカズチで脳を焼き尽くされ、白子はもはや言葉も出せなかった。長い舌を口の端からだらりと垂らし、醜いアヘ顔を晒しながら体を痙攣させる。その後は交わりの際にいつもやっているように蛇体を幹矢の体に巻き付ける事も忘れて、ひたすら快楽を貪り始めた。

「あんッ❤ あんッ❤ ああんッ❤」
「シロコ……ッ! シロコ……ッ!」

 白子の膣内は、真白の物とは正反対だった。その肉壺は暖かく、肉棒の形に順応してやんわりと飲み込み、絡みつくヒダは締め出すのではなく優しく包み込むようにして肉棒に絡みついてくる。どちらが良いとは比較するつもりは無かったが、この母の胸に抱かれているが如き柔らかさは何度味わっても飽きの来ない物であった。

「ああ、いい……! シロコの膣内、熱くて、優しくて、いい……!」
「み……みき、ああんッ❤ みきや、くぅん❤」

 自身の中を幹矢に褒められた。それが粉々になっていた白子の自意識を繋ぎ合わせ、その覚醒直後でおぼろげな意識の中で愛する彼の名を呼んだ。

「みきや、くん❤ みきやくん❤ みきやくぅん❤」
「シロコ、シロコ! 俺、もう、シロコッ!」
「うん❤ もう、あン! あン! わらし、もッ、もう……あああンッ❤」

 互いに限界が近い事を察し、二人して体を動かしてラストスパートまで持って行く。そこで白子が気づいたように、蛇体を幹矢の足から腰まで巻き付けて二人の体を密着させた。

「みきやくん、もう……ちゅ、くちゅ」
「ぴちゅ、ちゅ、くちゅ……ああ、もう……ッ!」

 互いに舌を絡ませ合い、そしてすぐに離して腰を深く打ち付ける。

「あ――」
「ひッ――」

 その直後、マグマのような粘性の熱流が白子の膣内を駆け巡った。それは途方もない快楽の流れとなって子宮口を叩き、その中を満杯にすると共に気絶させん程の悦びで満たした。

「きゅうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん❤❤❤」

 そして白子もまた、その快楽の渦の中に溺れていったのだった。




「みーきーやー❤」
「みきやくぅん❤」

 気づいた時には朝日が昇り始めていた。幹矢と白子が交わりを終えた後、意識を取り戻した真白も混じって三人で延々と犯し合い続けたのだった。今では床のみならず壁や天井、黒板にまで精液と潮の混じり合った液体が飛び散り、周囲の机にまでべったりと貼り付いてあった。三人の体はもっと悲惨で、頭から糊を被ったかのように髪の毛が顔に張り付き全身がてらてらと光る有様であった。
 だが交わりを終え、液体まみれの床の上に腰を下ろした幹矢の両隣に陣取った二人の魔物娘は、そんな事を気にもとめていなかった。

「あー、すっきりした♪ 幹矢も良かったでしょ?」
「幹矢君、その、私たちで、満足してくれたかな?」

 情欲に濡れた四つの目は、もはや愛する男の姿しか映っていなかった。そして幹矢もまた、この汚れきった教室の事は眼中に無かった。

「ああ、良かったよ。とっても満足した」

 あやすようにそう言いながら、自然な動作で二人の腰に手を回す。二人の魔物娘もそれを受け入れ、愛する伴侶の肩に身を預ける。

「マシロもシロコも、大好きだ」
「……うん」
「私たちも、あなたを愛しています……」

 幹矢の言葉に真白が目を閉じて小さく頷き、白子が幹矢の胸に手を当てて思いの丈を打ち明ける。そうして三人は朝日がゆっくりと窓から差し込む中、幸せの余韻に浸り続けていたのだった。

12/10/07 16:22更新 / 蒲焼

■作者メッセージ
「それよりさ、今日って学校休みだよね?」

















「……え?」

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33