読切小説
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ハーレムの行方
「俺の夢は、ハーレムを創ることだ!何人もの女と毎日やりまくりたいんだ!」
 脂ぎった顔の男は、こぶしを突き上げながら叫んだ。大柄な体つきをしており、肌の血色は良い。てらてらと光った顔は、男の精力が絶倫であることを証明しているように見える。
「俺は、今までは毎日オナニーをして、月に一度ソープへ行って快楽を味わうしかなかった。だが、これからは違う!お前と結婚することで、毎日セックス出来るようになったのだ!」
 男は、女の方を見て叫ぶ。女は、微笑みながら男を見つめている。銀色の髪をして赤い瞳を持った美しい女だ。豊かな胸は、女の官能的な魅力をひけらかしている。
 ただ、普通の女ではない。銀色の髪からは、二本の黒い角が突き出ている。女の下半身は黒馬である。馬に乗っているのではない。人間の女の上半身が、黒馬の体とつながっているのだ。女は、バイコーンと言う魔物娘だ。不純を象徴すると言われる魔物娘だ。
「だが、それだけでは満足できない。俺は、いろんな女とやりまくりたいのだ!ハーレムが欲しいのだ!お前の力があれば、ハーレムを創ることが出来る。俺のためにハーレムを創れ!」
 男は、目と顔をぎらつかせながら命じる。バイコーンは、その魔力により自分の伴侶のために女を集め、結びつかせることが出来る。伴侶にハーレムを創ってやることが出来るのだ。それ故に、不純の魔物娘と言われる。
「喜んで創ってあげるわ。あなたに最高のハーレムをプレゼントするわ」
 女は、嫣然と微笑む。
 女の答えを聞いて、男は歓喜を露わにして笑い声を上げた。

 春彦は、うめき声を上げながらソファーに座っていた。仕事を終えて自宅に着き、くつろごうとしているのだ。だが、くつろぐことは不可能だった。
 部屋には四人の女がいる。いずれも美しい女だ。そのうちの三人は、彼に寄り添っている。
 右側から寄り添っている女は、金色の髪をした褐色の肌の女だ。鋭角的な顔立ちだが、肉感的でもある顔立ちだ。豊かな胸を春彦に押し付けながら、手で太ももを愛撫している。そして、緑の瞳で彼を見つめている。
 後ろから手を絡めている女は、青みがかった銀髪の女だ。白い肌をしており、右側の女同様に鋭角的な顔をしている。彼女は、なめらかな手で春彦の首を撫でている。彼女の金色の瞳は、春彦の頭をじっと見つめている。
 左側から寄り添っている女は、純白の髪と抜けるような白い肌をした女だ。細面は穏やかそうな造りだ。彼女は、春彦の左腕を静かに撫でている。彼女の赤い瞳は、彼の顔を覗き込んでいる。
 少し見ただけならば、春彦は三人の美女を侍らせていると思うだろう。だが、春彦は生きた心地がしない。三人とも目を据わらせており、口の端を釣り上げていた。肉食動物が獲物を見つめているような様だ。
 肉食動物と言うのは当たっているだろう。彼女たちは、いずれも蛇の特徴を持つ。右側の女の下半身は、赤い蛇の下半身だ。とぐろを巻いて春彦の右足を拘束している。後ろの女の下半身はソファーに隠れている。だが、ソファーの後ろを覗き込めば、青い蛇の下半身を見ることが出来るだろう。左側の女の下半身は、白い蛇の下半身だ。とぐろを巻いて春彦の左足を拘束している。
 右側の女はラミアと言う魔物娘であり、アスパシアと言う名だ。ラミアは、魔物娘の中でも嫉妬深い事で知られる。後ろの女はメデューサと言う魔物娘であり、メランティオスと言う名だ。メデューサは、ラミア同様に嫉妬深い。左側の女は白蛇と言う魔物娘であり、清華と言う名だ。白蛇の嫉妬深さは、魔物娘随一だ。彼女たちは、夫である春彦を取り囲み、底光りする目で彼を見つめていた。
 春彦は、救いを求めるように少し離れた所にいる女を見つめる。彼の妻にしてバイコーンであるネベレは、ただ微笑んでいる。彼の苦境など気に留めていないらしい。
「話が違うぞ」
 春彦は、かすれるような声でネベレを責める。淫魔サキュバス、踊り子アプサラスといった、見るからにエロそうな魔物娘によるハーレムを創ることを、彼は望んでいたのだ。狂気がかった愛憎を叩き付けてくる魔物娘のハーレムではない。
「あら、あなたの望み通り、最高のハーレムを創ってあげたじゃない」
 どこがだ!と叫ぼうとするが、春彦は声を出せなかった。アスパシアが、彼の首筋に唇を当てたからだ。
「そうね、私はあなたにとって最高の妻よ」
 ラミアは、蛇特有の長い舌を首筋に這わせる。
「ハーレムを創る夫に対してもね」
 緑の瞳を持つ蛇は、目を細めながら首筋を甘噛みする。
「動脈を食い破りたいくらい愛しているわ」
 春彦は背を震わせる。
「メデューサ相手にハーレムを創るなんて、いい度胸じゃない」
 春彦は、後ろを振り返ることは出来なかった。メデューサであるメランティオスの瞳は、彼を石に変える力を持つ。
「首から下を三年ほど石にしてみない?私が世話をしてあげるから」
 春彦は、必死に後ろを振り返らないようにしていた。金色の瞳が暗い光を放っていることが、見なくても分かる。
「旦那様は、甲斐性がおありなのですね」
 清華は、口元に笑みを浮かべながら言った。だが、彼女の目は笑っていない。
「妻である私は、旦那様に従います。夫の甲斐性を、妻は誇るべきかもしれません」
 白蛇は、口の端を釣り上げて笑う。
「ただ、旦那様に私だけを見て頂きたいとも思いますわ。十年でも二十年でも拘束して差し上げたいですわ」
 春彦は、白蛇から離れようとした。だが、たおやかそうな清華の体は、鎖のように彼を拘束している。春彦は、すがるように不純の黒馬を見つめる。
「さあ、あなた、ハーレム生活を楽しみましょう。私たちとやりまくりましょう。それがあなたの望みでしょ?『人類みな穴兄弟』と、船の大好きな愛国者のおじいさんも言っています。だったら、私たちは棒姉妹になりますね」
「そんなこと言う奴がいるわけねえだろ!勝手に改ざんするな!」
 春彦は思わず叫ぶが、不純の魔物娘は涼しげな顔をして、拘束されている男を見つめていた。

 春彦は疲れていた。妻たちは、同じ会社の同じ課で働いている。席は、彼を取り囲むようにして配置されている。魔物娘の企業である彼の職場は、妻たちの意向を配慮したのだ。
 仕事が終わった後は、風呂に入ってくつろぐことが彼の習慣だ。会社で仕事以外のことで疲れ切った彼は、風呂で癒されたい。そのささやかな望みは、妻たちによって壊された。春彦は、彼女たちに風呂へと連行されていた。
 彼は、有無を言わさずに服を脱がされる。そして浴室用の椅子に座らせられた。彼の周りには、三人の蛇の魔物娘が取り囲んでいる。少し離れて黒馬の魔物娘が見守っている。
 浴室は広い造りだ。七メートル以上の蛇体を持つ魔物娘や、人間の上半身と馬の体を合わせた体高が二、五メートルある魔物娘たちが四人も入っている。加えて、人間も一人入ることが出来るくらいの大きさだ。
 彼らの住む家は、浴室だけではなく所々が頑丈に造られている。魔物娘が住むことが出来るように、中古住宅をリフォームした住宅だ。
 春彦は、レモン色の明るい浴室を眺めた。その目は、浴室の明るさと対照的に暗くよどんでいる。風呂でくつろぐ快楽を奪われ、目から光が消えている。
 三人の蛇の魔物娘は、春彦の体を丹念に洗っている。ボディーソープを塗り付け、体の済み済みまで手で洗う。ラミアは、揉み解すように右足を洗う。メデューサは、背を愛撫しながら洗う。白蛇は、左腕を恭しい態度で洗う。三人とも一糸まとわぬ姿であり、その魅惑的な肢体を露わにしている。はたから見れば、ハーレムそのものの光景だ。
 だが、近くから見れば、不穏な様子はすぐに分かるだろう。三人とも底光りをする目をして、春彦の体を見据えながら洗っている。時折、彼女たちは春彦の顔を覗き込む。彼は、魔物たちの顔から視線を外す。ほの暗い情念を表情に張り付けて凍らせると、今の彼女たちの顔になるかもしれない。
「あらあら、これだけ丹念に洗ってもらっているのに勃たないの?」
 黒馬の魔物娘は、朗らかに言い放つ。
 勃つわけねえだろ!春彦は叫びたかった。

 風呂から上がると、妻たちは料理を作り始めた。春彦も手伝おうとした。家事を手伝おうという考えよりも、何を作られるのか恐ろしかったのだ。だが、台所から強制排除された。
 蛇の魔物娘たちは、それぞれ別の料理を作ってきた。黒馬の魔物娘は、それらを手伝ったらしい。
 ラミアであるアスパシアは、鶏肉をソテーした物を作った。メデューサであるメランティオスは、ビーフシチューを作った。白蛇である清華は、海鮮サラダを作った。どれも見た目はおいしそうだ。
 だが、春彦は手を付けかねた。彼の目は、妻たちの手を見ている。それぞれカットバンや包帯を付けている。料理を作っている最中に手を切ってしまったそうだ。
 春彦は、彼女たちの手と料理を交互に見る。彼女たちは、料理の腕は良い。特に清華は、熟練の主婦かと思うほどだ。料理の最中に手を切ることは、まず考えられない。
 鶏肉のソテーは、調理法にもよるが黄色が多いだろう。だが、このソテーは赤みがかっている。ビーフシチューは、元から赤い料理だ。赤い物を入れても分からないだろう。海鮮サラダにはマグロを使っている。赤いマグロはつやつやと光っている。汁が滴りそうだ。
 ラミア、メデューサ、白蛇は、微笑みながら春彦を見つめている。メデューサの銀髪は、蛇に変わっている。その蛇たちもじっと見つめている。春彦は、彼女たちの目を見ることが出来ない。緑色、金色、赤色の瞳からは健全な光は消えている。暗い光が宿っていることが分かる。
 バイコーンであるネベレに促され、春彦は料理に目を落とす。フォークを手にすると、ナイフで切ったソテーを刺す。手は、かすかに震えている。ハーレムの主は、汁の滴る鶏肉をゆっくりと口へと運んだ。

 食事を終えたあとは、妻たちは各自でくつろいでいた。春彦は、一人フラフラと家をさまよっている。食事は、味がよく分からなかった。自分が何を食べさせられたのか、考えたくなかった。
 居間では、アスパシアがテレビを見てくつろいでいた。DVDを再生して見ているらしい。古代ギリシア風の衣装を着た登場人物が、舞台の上で嘆いている。春彦は、ぼんやりと画面を見る。
「何を見ているんだ?」
 春彦は力なく尋ねる。
 アスパシアは、笑みを浮かべながら答える。
「エウリピエスの『メディア』よ」
 春彦は、彼女をまじまじと見つめる。エウリピデスの「メディア」は、ギリシア悲劇の代表作の一つだ。夫に捨てられた魔女は、夫の再婚相手とその父を殺す。その上、自分と夫との間に出来た子も殺し、夫に復讐するという物語だ。
「いいわね、復讐物語は。心が躍るわ。子供まで殺したことはやりすぎだけど、寝取ろうとしたクソ女を殺し、それを支援したクソ女の父親を殺したことは素晴らしいわ」
 ラミアである妻は、春彦の方を振り返った。彼女の緑の瞳は、彼を見据える。その瞳は、人間の瞳ではない。蛇の魔物の瞳だ。
「ただ、不満もあるわね。なぜ、裏切った夫を殺さなかったのかしら。子供を殺したりせずに、夫に死を与えればよかったのよ。罪ある者にしかるべき罰を与えるべきよ」
 その声は、固く張りつめている。不貞の者を声で突き刺そうとしているかのように。
 春彦は、何も答えずに背を向ける。そして足早に居間を出た。

 春彦は、隣にある洋間に逃げ込んだ。そこにはテレビがあり、居間のテレビを誰かが使っている時に、他の者はテレビを使うために入る。すでにメランティオスが見ていた。こちらもDVDを見ているらしい。
 春彦は、ぼんやりと眺める。舞台の上で、中世ヨーロッパ風の衣装を着た男女が、歌を歌っている。メランティオスはオペラを見ていた。春彦は、歌と一緒に演奏されている曲を聴く。特徴のある迫力ある曲を聴き、春彦の意識ははっきりとする。
「これって、ワーグナーのオペラか?」
 彼は、声が震えないように抑えて言う。
「ええ、『ニーベルングの指輪』よ。ちょうど『神々の黄昏』をやっているところよ」
 メランティオスは、画面を見つめながら言う。
 「神々の黄昏」は、「ニーベルングの指輪」の最終章だ。意図せずに妻を裏切った英雄ジークフリートは、妻であるブリュンヒルトの復讐によって殺される物語だ。
 メデューサである妻は振り返った。金色の瞳は、暗い光を放って夫を見据える。髪である蛇たちの金色の瞳も光っている。
「別の女に浮気した上に、自分の妻を他の男にあてがおうとするなんて最低ね。記憶を失っていたからと言っても、最低なことをしたことには変わらないわ。裏切り者の夫を殺して、自分も滅びる。私も見習いたいわ」
 春彦は目をそらした。これ以上、彼女たちの目を見ていることは出来ない。
「ねえ、一緒に見ない?もうすぐジークフリートが殺されるところよ」
 メデューサの夫は、震えそうになる足を無理やり動かして、部屋を出た。

 春彦は、バーボンの瓶を持って台所に入った。飲まなければやっていられない。グラスと氷を取りに台所へ来たのだ。
 台所では、清華が椅子に座っていた。後片付けは終わったらしい。エプロンをかけたまま、本を読んでいる。
 春彦は戸棚からグラスを出し、冷凍庫を開けて氷を取り出す。氷をグラスに放り込み、バーボンを危なっかしい手つきで注ぐ。グラスに口を付け、音を立てながら蒸留酒を喉へ流し込む。焼けるような喉と胃の感触で、彼はやっと生きた心地を取り戻す。
「清華は、何を読んでいるんだ?」
 春彦は、アルコールの助けを借りて聞いた。
 白蛇である妻は顔を上げ、清楚な顔に薄い笑みを浮かべた。
「島尾敏雄の『死の棘』ですよ」
 春彦はグラスを落とした。グラスは割れなかったが、バーボンと氷を床にぶちまける。彼は、グラスを落としたことを気が付かないかのように、白蛇の顔を見つめる。
 「死の棘」とは、浮気をした夫と、夫の裏切りによって狂った妻を描いた小説だ。狂った妻は、延々と夫を責め立てる。厚い長編だが、狂った妻による夫への追及と糾弾を描くことにほとんど費やしている。
「妻は、夫を全力で愛していました。その夫に裏切られたら、妻は狂うでしょうね。この小説の良いところは、夫を殺さない所です。二人で狂った世界に永遠に閉じこもることこそ、夫の罪にふさわしい罰です」
 白蛇は、口元に笑みを浮かべている。だが春彦は、彼女の赤い瞳を見つめていた。赤い瞳は彼の目を直視し、彼の中まで突き刺そうとしている。
 春彦は、床にこぼれた氷の冷たさで我に返った。ふらつきながら雑巾を探す。
「いいのですよ、私が片付けますから」
 立ち上がった清華は、彼を抑える。彼の足元にひざまずくと、手に持ったタオルで足を濡らすバーボンをぬぐう。恭しく丁寧な手つきだ。だが、彼女の手が触れるたびに、春彦の喉からかすれた声が漏れた。

 春彦は寝室に入った。もう眠りたい。心身ともに限界だ。
 寝室にはネベレがいた。人間と同じ上半身にネグリジュを着ている。黒いシースルーの素材の物であり、乳首が透けて見える。黒馬の体にも、下腹部にショーツを付けている。こちらは赤のシースルーの物だ。
「あらあら、疲れているのね。いいわ、セックスは私がリードしてあげるから」
 不純の魔物娘バイコーンは、「YES」と書かれた枕を見せつけた。
「眠らせてくれ。今日はやる気になれない」
 そう言って、春彦はベッドにうつぶせに寝ころんだ。
「だめよ、セックスは夫婦生活の中心よ。ハーレムの醍醐味よ。ハーレムの主は、妻たちをセックスで満足させることが義務でしょ」
 うつぶせになっている春彦の耳に、不純の魔物娘の艶やかな声が注ぎ込まれる。
「彼女たちも準備を終えているわ」
 春彦は、顔を上げて入口の方を見る。ラミア、メデューサ、白蛇がいた。
 ラミア妻アスパシアは、黒のブラジャーとショーツ姿だ。シースルーの物であり、乳首と陰毛の茂みが見える。メデューサ妻メランティオスは、黒のベビードールを着ていた。こちらのシースルーの物であり、大事な所が見える。白蛇妻清華は、淡い紫色の襦袢を着ていた。やはり透ける素材の物だ。
 春彦はうめき声を上げる。その彼の元へ、四人の妻は静かに歩いてくる。彼女たちの目は、春彦を見すえている。獲物を狩る者の目だ。彼は、くぎ付けになったように動けない。大型の蛇の這う音が部屋に響く。
 ラミアは寝台に這いあがり、春彦の頬を手で押さえる。口の端を釣り上げると、ラミアは彼の口を口でふさぐ。蛇特有の長い舌が口内へと侵入してくる。ラミアは、春彦の唾液を舐め取り、自分の唾液を飲ませてくる。
 春彦の右腕に、温かい物が這う感触がした。メデューサは、彼の右腕に唇を這わせている。すでにパジャマは脱がされている。彼女の髪である蛇たちも、彼の右腕や右胸に口付けを繰り返している。
 彼の左足は、柔らかく愛撫された。ゆっくりとさする様に、揉む様に愛撫される。白蛇は、彼の足を恭しく奉仕している。春彦に微笑みかけると、白蛇は彼の太ももにキスをした。
 うつ伏せになっている春彦を、蛇の魔物娘たちは強引に奉仕する。黒馬の魔物娘は、その様を穏やかな表情で見守っている。
 右腕に軽い痛みが走った。メデューサは、彼の右腕を甘噛みしているのだ。頭の蛇たちも甘噛みしている。左の太ももは、白蛇によって舐められている。蛇特有の長い舌で、たんねんに奉仕する。ラミアは、春彦の口から口を離した。彼女は、春彦の頬を甘噛みする。舌を首へと這わせていき、首も甘噛みする。
「あらあら、唾液でマーキングしているのね。跡まで付けているなんて、本当に自分のものにしたいのね」
 バイコーンは、春彦に舌を這わせて甘噛みする蛇たちを、うっとりしながら見ている。
 春彦は、蛇妻たちによって体をひっくり返された。仰向けにされると、トランクスをはぎ取られる。彼のペニスはむき出しとなった。蛇妻たちは舌なめずりをすると、顔をペニスに近づけてくる。
 ペニスに軽い感触がした。ラミアが、ペニスにキスをしたのだ。亀頭に繰り返しキスをする。メデューサと白蛇も、竿にキスを繰り返す。彼女たちのキスは、次第にねっとりとしたものとなる。
 ラミアの舌がペニスに絡みついた。人間ではありえない長さの舌は、ペニスに巻き付いていく。メデューサの舌は、右の陰嚢を舐め上げる。白蛇の舌は、左の陰嚢を愛撫する。三つの舌は、唾液をたっぷりと滴らせ、ペニスと陰嚢をふやかしていく。ペニスに奉仕する彼女たちの目は、いずれも据わっている。
「日本には、阿部定と言う女がいたらしいわね」
 ラミアは、ペニスに奉仕しながら言った。
 その瞬間に、春彦のペニスと陰嚢は縮み上がりそうになる。
「愛する男を殺した後、ペニスを切り取って持ち歩いたそうね」
 ラミアは、ペニスを軽く噛む。
「噛み切って、私だけのものにしようかしら?」
 春彦は、背に氷塊が滑り落ちた気がした。
「あなただけのものじゃないわ。私のものでもあるのよ」
 メデューサは不快そうに言う。
「あなたがペニスを嚙み千切るのなら、私は右の玉を噛み千切るわ」
 右の玉を噛まれ、春彦の背にけいれんのような震えが走る。
「そんなことをすれば、旦那様が死んでしまいますわ」
 白蛇は薄く微笑む。
「ですが、私も左の玉を食べてしまいたいですね。私の血と肉となることで、旦那様は永遠に私のものとなりますから」
 左の玉を噛まれ、春彦は叫び声を上げそうになった。
 三人の蛇は、ねっとりとペニスと陰嚢を舐め続ける。メデューサと白蛇は、舌を伸ばして蟻の門渡りとアヌスを交互に舐める。三人の目は、光が消えて空虚になっていた。その空虚さは、内心の狂気を示しているように見える。
 快楽と恐怖が春彦を支配する。ペニスから、陰嚢から、アヌスから悦楽が走る。恐怖と共に快楽は腰を走り抜け、頭に叩き付けられる。春彦の絶頂は近づく。
「もうイキそうなのね。いいわよ、精液をぶちまけて」
 そう言うと、ラミアは強く舐め上げる。メデューサと白蛇の舌の動きも早くなる。
 春彦のペニスは弾けた。白濁液の塊が吹き上げ、ラミアの顔にぶち当たる。メデューサと白蛇は顔をペニスに押し付け、白濁液を浴びる。インキュバスとなった男は、人間離れした量の精液を噴出し、蛇の魔物娘たちの顔を汚していく。蛇妻の舌は、射精を助けようと激しくペニスを刺激する。
 長い射精は終わり、春彦は大きく息をつく。彼は、蛇妻たちの顔を見つめた。ラミアの褐色の顔は、白濁液が目立って見える。濃厚な白濁液が、鼻から唇に滑り落ちる。メデューサは、右目から右頬にかけて精液で覆われている。白蛇は、左頬から顎にかけて重い精液が滴っている。彼女たちの顔は、強い刺激臭を放っている。湯気が立ち上りそうだ。
 春彦の頬が押さえられた。彼の口は、不純の黒馬の口でふさがれる。口の中に甘ったるい液体が注ぎ込まれる。アルコールが彼の喉を滑り落ちていく。液体を飲み終わると、バイコーンの口は離れる。春彦と彼女の口の間に、液体の橋が出来て、切れる。
 春彦の下半身に力がこみあげてきた。射精したばかりなのに、ペニスに力が湧いてくる。
「さあ、一回の射精でへたばってはだめよ。まだまだ出してもらわないとね。虜の果実の酒を飲んだから、もう回復してきたでしょ」
 春彦のペニスに、三人の蛇妻の顔が再び押し寄せてくる。精液で汚れたペニスに舌を這わせ、丹念に舐め取っていく。そしてペニスに快楽を叩き付け、再びたぎらせていく。
 その様を、不純の黒馬妻は楽しげに見ていた。

 部屋の中には、男と女の交わりの臭いが充満していた。その臭いは、四人の女から放たれている。彼女たちの顔や胸、手は精液でぬめり光っている。股は白く汚れ、ヴァギナからは白濁液があふれている。その液は、ベッドの上に仰向けに倒れている男から搾り取った物だ。
 四人の妻は、繰り返し春彦とセックスをした。インキュバスとして勢力絶倫になっている春彦が、干からびそうになるくらい搾り取った。精を搾り取ったら、媚薬である虜の果実の酒を飲ませ、ペニスに舌と口で奉仕して勃たせた。春彦のアヌスに舌を潜らせ、前立腺を刺激して無理やり勃たせた。そうしてセックスを繰り返したのだ。
 春彦は、虚ろな眼差しで天井を見ている。彼の股間には、蛇妻たちが顔を寄せている。汚れたペニスに舌を這わせ、甘噛みし、頬ずりをしている。そうして強引に勃たせているのだ。彼女たちの目に光は無い。空虚な目でペニスを見つめて、貪っている。
「さあ、あなた、セックスは始まったばかりよ。明日、明後日は、会社は休みだからね。一日中セックス出来るわよ」
 黒馬の魔物妻は、朗らかな声で宣言する。
 春彦はうめき声を上げる。もはや、まともに話すことは出来ない。魔物妻たちにされるがままだ。
「ねえ、あなた、幸せでしょ。あなたの望み通りにハーレムを持つことが出来て、やりまくることが出来たんだから。この先ずっと、やりまくることが出来るのよ。男の夢をかなえることが出来たのよ」
 春彦は、不純の魔物妻にうめき声で答える。その声は、苦痛の声とも歓喜の声とも取れた。
17/03/12 22:39更新 / 鬼畜軍曹

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