連載小説
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常識の遠回りと常闇の叫び
※不思議の国・森の道※
※シャンプ視点※


「あれ?トリックストリート行きのワープスポットが壊れているわ」

オレンジ色の巨大な花が根元からへし折られていた。

「どうしよう、ヨツンバウェイは今交通規制で入れないし」
「ったく誰だよ、花をへし折ったバカは」

困った顔をするリコちゃんに対し、コーンは苛立っている。

「再生するには時間が掛かりそうね。少し遠回りするけど別ルートで行きましょう」
「わざわざ遠回りしなくてもオレが走ってやるよ」
「リンス、ここから普通に歩いても二日かかるわ」
「ならこの蟹の殻を脱ぎ捨ててでも全力で走る、それなら一日で到着するだろ」

「一日もしたら今日のパーティーに間に合わなくなるだろ、少しは考えろよ」
「そうなのか?」

コーンの指摘にリンスは首をかしげる。

「ったく、筋力ならカムリさんと互角なのに、おつむは足りないんだよな」
「そうだ、腕相撲ならカムリには負けないぞ」
「……どうしてオレ達がこんな脳筋につき合わなきゃなんねーんだ?」

「仕方ないよ、依頼人のS-50さんは他所の町の子供を連れてきてって言っているから」
「大袈裟だな。たかがパーティーなのに」

「そうだ、養鶏場の双子も連れてくれば良かったんだ。何たってあの二人も子供だもんな」
「リンス、気づいてる?」
「何が?」
「あの子達はね、あたしやリンスがこの里に来た時から子供の姿なのよ?」
「それがどうしたんだ?」
「聞いたあたしの思考が鈍かったわ。S-50の送別会にコーンとリコちゃんを連れて行くのは二人が里の中で最年少だからよ」

あたし達は目的地の麦畑に到着

「二人とも麦畑の中に入って、あたしが仕掛けを発動するから」

麦畑の中心に立ち

「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ、ほっ、ほっ、ほっ、ほっ、ほっ、ほっ」

腰を前後に十回動かす。

「成る程、オレがシャンプをバックで犯すときの腰の動きか」

腰を降り終えると、麦畑が太陽のように輝き、あたし達は別の町へと転送される。


M薬餌院M


「なんだここは?」
「ここは薬餌院。薬とお菓子が販売されている村よ、ここから南へ少し歩けばトリックストリートに到着するわ」
「じやあ早速行くぞ!」ダッ!
「待って」スリスリ
「オウ!」ピュッ

あたしは両足でサイドブレーキもといリンスのチンポを擦る。

「その前に買い物をするわよ。合体解除」

と言っても単にリンスの背中から降りただけだけどね。

「こっちにいつもあたしが薬を調達している老舗があるから」

あたしは漢方薬屋へ向かう
足元にリンスが放った精の熱さを感じながら。


M漢方薬屋M


「シャンプ、この店結構古臭いな!」
「当然よ、建国当初から創業しているそうよ」

「ふぅー、いらっしゃいシャンプちゃん」

カウンターには煙管を持ったジャバウォックがお出迎え。

「ふぅー、今日も薬の調達かい?」
「オバーバ様、今日はトリックストリート用のお菓子を買いに来ました」
「ふぅー、そうかい。じゃあ子供のように店内をキョロキョロしてるのが旦那さんかい?」
「はい」

「こっちは壁一面に魔導写真が貼りつくされてるぞ。黒い馬のハーレムに白と黒の景色、世界って昔は白黒だったのか。お、これは何だ?」

リンスが液体入りの注射器を手に取る。

「ふぅー、それは鎮精薬さ。男性の身体から放出される精を一時的に止める薬だよ」
「射精を止める薬なのか?」
「ふぅー、ちょっと違うね。男は身体から微弱な精が放たれるだろ、その薬は精の放出を一時的に止めるのさ。ふぅー、昔弟子の一人が作った偶然の産物でね。常に夫の精を嗅ぎたい住人が多いこの国には需要は殆ど無いがね」
「何、精液ってチンコ以外からも出るのか!?」
「ふぅー、話の通じない男だねぇ」

「すみません。リンスはこういう人なので」
「シャンプ、精液って奥が深いんだな」
「あーもういいから。お菓子を詰めるの手伝って」

「あの、これをください」
「ふぅー、ガンダルヴァエッセンスと癒シップ、二つ併せて銀貨十五枚だよ」
「えっと、はい」

チャリンチャリン

リコちゃんは枚数分の銀貨を受け皿に乗せる。

「リコ、湿布だけじゃなく香料も買ったのかよ」
「とってもいい香りがしたから料理のアクセントに合うかな、って」
「オレは食えればいいけどさ。おっ、これは……」

コーンは乾燥したキノコが二本入ったパックを手に取る。

「おばちゃん、これくれ」
「ふぅー、銅貨三枚だよ」
「ほいっ」

コトトン、コトン

コーンが銅貨三枚を投げるように置くと



「相手目掛けてお金を投げるんじゃないよ!」ブホォッ!



オバーバ様が怒鳴るようにコーンの顔目掛けてブレスを放つ。

「ゴホッゴホォッ、めがゴホッ」

コーンは目元を抑えながら咳き込む。

「ふぅー!近頃の子供は最低限の常識が身に付いてないねぇ!」
「けむりでゴホッしみゴホッるぅ」

「なあなあシャンプ。あの婆さんまるでドラゴンみたいに煙を吐くんだな」
「当然でしょ、ドラゴン属だもの」
「へぇー……おっ、軟膏も売ってるのか。婆さん、これは何の軟膏だ?」

「ふぅー!知りたきゃ買って確かめな!」
「じゃあ買う」
「ふぅー!銀貨五枚そこに置きな」
「ほい」チャリーン

「ゴホォッゲホォッ」
「コーン、しっかりして、どうしようどうしよう」

「ふぅー、近頃のマッドハッターはこれしきのことで気品さを失うのかねぇ」
「オバーバ様、あの子達はまだ子供なので多目に見てやってください」

あたしは保護者として、二人をフォローしながら籠いっぱいのお菓子をカウンターに置く。

「ふぅー、銀貨十枚と銅貨十枚だよ」

チャリリンチャリーン

あたしは勘定丁度の銀貨と銅貨受け皿に置く。

無論マッドハッターらしく丁寧にね。





買い物を終えたあたし達は漢方薬屋を出て、近くのテーブルで紅茶休憩をとっていた。
あたしは買ったお菓子を四つに小分けする。

「大丈夫、コーン?」
「ゲホゲホまだ煙でゴホッ咳き込む」

「ならこの軟膏で治してやるよ」

リンスは軟膏の瓶を取り出す。

「その軟膏で治すのですか?」
「そうだ。こうやって塗り塗りするんだ」

リンスは軟膏を拭い、それをリコちゃんの腕に塗りつける。

「多分、それは咳には効かないと思いますよ」
「そうなのか?」
「ラベルの名称からして、それは治療というより性行為に使うもので――」



「ふぅ、やった終わったわ。喉が渇いてきたわね」

お菓子の小分けを終えたあたしは、水分補給をしようとして



ジュッ



「ひゃあっ!」

突然の快楽にあたしは思わず声をあげた。
リンスがあたしの右頬に軟膏を塗ったようだ。

「おおっ、リコの言う通りシャンプの頬に塗ったらハートの模様が刻まれたぞ」
「それは迂闊に使ってはいけない代物なのよ!」
「そうなのか?」
「もし全身に刻んだら、ちょっとした刺激で強烈な快楽に見舞われるの!」
「リコは平気な顔をしてるけど?」
「とにかくこれはあたしが預からせて貰います」

リンスから瓶を没収する。

「ごめんなさい、わたしが説明をしたばっかりに」

リコちゃんはあたしに謝罪した。


※見晴らしのいい一本道※


あたしはリンスと再度合体して、走行する。

「見ろ、あそこの空は星がきれいだな。まるであそこだけ夜みたいだ」

リンスは四つん這いの姿勢で空を眺めている。

「夜も何もトリックストリートは常夜の街ですよ?」
「トリックストリートは確か西側が夜の街だろ?オレ達は南へと向かってるはずだが……」

「リコちゃん、リンスはこういう人よ」

「少しは考えて喋れホォッゲホ!」
「コーン、咳が収まるまで喋らないほうがいいよ」
「ゲホッ、そうだな」



「うおおおお!」
「ぷひぃ!ぷひぃ!」



ふと道沿いで堂々と交わる夫婦を目にする。
青いヘルメットを被った男が四つん這いのオークをバックで犯していた。


「燃料入ります」ビュルルル
「ぷひぃ♪」


「すごいな、結合部から精液が漏れるほど射精してる」


「よし、燃料注入完了」
「ぷひぃ」


男は結合を終えズボンをあげながら空を眺める。

「たまにはヨツンバウェイ以外で走るのも気持ち良いな」
「ぷひぃ」

男はオークと会話しているように見えるが当のオークは「ぷひぃ」と喋るだけ。

「おっ、君たちいいばいくに乗っているね」

男があたし達に接近する。

「俺は風祭翔、こいつは相棒のPIGー400MMだ」
「ぷひぃ」

「リンスだ」
「シャンプです」

「あれ?ばいくの声が聞こえるぞ、テレパシーか?それに変わった乗り方をしてるな。ばいくを背中に乗せているなんて」

「ばいく?こいつ変なこと言ってるぞ、シャンプなら判るよな」
「ううん、流石のあたしでも彼の言葉の意図が理解できないわ」

「ふむふむ、カスタムとして肌色のボディースーツ、右頬に快楽のルーンを刻んでいるんだな。だが俺のばいくが一番だ、見ろよこの薄いピンク色の車体、つぶらなライト、大きめのタンク、城下町にあるばいく屋でこいつを一目見たときから……ウヒヒヒ」ムニムニ
「ぷひぃ〜」

翔と名乗る男はオークの胸を揉みしだく。

「おや、あそこにもばいく乗りが」

翔がリコちゃん達に近づく。

「へぇー、幼いながらもばいくを持っているとはね、そんなにそのばいくが魅力的なんだね。それでも俺のばいくが一番だけどね」
「ぷひぃ」

「そのオークさん、鼻に痣が……?」
「これか、久々にヨツンバウェイを飛び出して走ったら、オレンジ色の花に衝突してしまってね」
「可哀想……そうだ、確か買い物袋の中に」ゴソゴソ「はい、癒シップです」
「それは噂に聞く傷を癒してくれるシップではないか、ばいくの破損にも効くという」
「PIGさんに貼ってください」
「よし、お前の破損を治してやる」

翔はリコちゃんから渡されたシップをオークの鼻に貼る。

「ぷひぃ〜♪」

オークは微笑みながらリコちゃんを見つめる。

「よしよし、お前も喜んでいるのか。君は感謝するよ」
「別にいいですよ、好きな人に何かあったら心配するのは当然のことですから」

と、リコちゃんはコーンを見て微笑む。

「そうか、本当に大好きなんだな……そのばいく、大切にしろよ」

翔はリコちゃんの肩をぽんと叩くと

「いくぞ相棒」パシン「あれ?」パシンパシン

翔は四つん這いのオークの尻を叩く。

「あれ?またエンストか?」パシンパシン

「何なんだアイツ、いくらなんでもあそこまで尻叩きする必要ないだろ?ちょっと文句言ってくる」

リコちゃんとの会話で確信した。


「静電気を除去しながら、給油口を弄ってと」キュッキュッキュッ
「ぷひひん」


トリックストリート行きのワープスポットを壊したのは、十中八九風祭夫妻であることに。

「おいお前、大事な嫁をそんな風に苛めるなウッ」スリスリ

でもあたしはそれを指摘したりしない。

シュッシュッ

「出るっ!」

ビュッビュッ

「ここは不思議の国よ。愛する人を乗せて移動するのは当然のことよ。勿論乗り物役が反抗するならこうやって性器を弄るの」スリスリスリスリ

「また出るっ!」ビュッビュッ

「仕上げね」チュッジュルッ

うつ伏せの体勢でリンスにディープキス。
泡立てた唾液をリンスの口内へ流し込む。
キノコの胞子入り唾液を。

「改めて問うわ、乗り物役のお尻を叩くのは変だと思う?」
「ゴクッ、別に変じゃないな」


「ぷひぃんぷひぃん」
「よし、エンジンが復帰したぞ。じゃあな!」


オークは四つん這いで走り出す、夫の翔を背中に乗せて。


あたし達は歩みを再開する。


※トリックストリート※


街に着いたあたし達を仮装した子供達が歓迎する。

「ほぃ、おかしだぞ」
「わーい」

喉の調子を取り戻したコーンが子供達にお菓子をばら蒔く。

カツン、カツン

「それにしてもこの街の仮装ってちっとも怖くないよな」
「だよな、俺も全然怖くないぞ」

カツン、カツン

「だよな、おっさん」
「ああ、コーンもな」

カツン、カツン

「「ハッハッハ!」」

カツン、カツン

「ヒィィィ傘のおばけだぁ!」

カツン、カツン

ミイラ男の少年が逃げるように走る。

カツン、カツン

「傘の?」「おばけ?」

カツン、カツン

コーンとリンスの前に白と赤を基調とした傘が現れる。

カツン、カツン



パチリ



傘の表面に一つ目が開き



ベロォ



傘の下から長い舌が飛び出す。



「「おばけだぁぁぁ!」」



※続く※
15/03/03 22:02更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ
 ふぅー、近頃のマッドハッターは情けないったらありゃしない。

 ふぅー、昔はアタシの煙入りブレスをどれだけ浴びても平然とお茶を飲んでいたのにね。





キャラクター紹介@
【名前】オバーバ(通称)
【性別】女
【年齢】婆さんと言われても怒らないくらい生きている
【種族】ジャバウォック
【容姿】図鑑のジャバウォック+年季の入った表情+ジパングの和服
【一人称】アタシ
【口調・口癖】ふぅー、とタバコの煙を吐いてから喋る
【能力・特技】タバコの煙入りブレス,漢方薬作り
【所持品】煙管
【概要】
 薬餌院に住むジャバウォックで、シャンプ行き付けの漢方薬屋の店主。
 不思議の国が建国した当初から住んでいる古株。
 気難しい性格でいつもタバコをふかしているが、漢方薬作りの腕はかなりのベテランで医療関係の住人からの評価は高く、薬を調達する際は真っ先に彼女に依頼することが多い。
 マナーの悪い相手は例え子供だろうと容赦なく煙草の煙入りブレスを吐く。このブレスは欲情よりも煙による眼と喉の痛みを伴う。

【補足事項】
かつては『西の魔女』と呼ばれていたが、今や『オバーバ様』と呼ばれている。

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