連載小説
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chapter1-2(A) 捜索
「さて…これが一応俺たちが持ってきた道具と、この建物の中で見つけたものだが…」

そう言ってナッカーサーが俺たちの持ってきた道具を机の上に並べ始めたんだが…
み、みんな…結構色々なものを持ってきていたんだな…
いや…旅に使うかって物もかなりあるけどさ?

「…なぁ、ヤマト…その変な人形はなんだ?不気味なんだけど…」
「ぶ、不気味だって!?いや…俺もいつ持ってきたのかは分からないけど…可愛いと思うよ?」
「分からないって…お前の私物じゃないのかよ!?」
「あぁ…俺の鞄の中に入っていたから…たぶん俺が知らない間に花梨が買ったんだと思うけどね?」

そんな話をドラグーンとヤマトがしているのを聞いて、俺も確かに怖いとは思ったんだ…
だけど、俺にはヤマトの人形よりも気になるものが机の上においてあるのを見つけたんだよ!!

あ…あれは…どこからどうみても…木彫りの人形だよな…

「どうして…お前らはそんなに人形を持ってきてるんだ…?」
「ん…?この木彫りの人形は俺が持ってきたんだ…最近、みんなを木彫りに彫って人形を作るのがブームでさ?」
「へぇ…でもさナッカーサー…この人形は1つしかないようだけど…」
「甘いなデメトリオ…この小さな部分にコレクション要素を入れるのが大人って奴さ…な?ユーマン?」
「……確かに、俺の嫁のアニーたんも骨のアクセサリーで成功しているからな…賢い考えではある」
「…なぁ、こんな話をしている場合なのか?」

……確かに、ヤマトの言うとおりだが…なんか、あいつに言われるとムカッと来るな…
しかし、事実だから仕方が無いよなぁ…

それから、全員が持っている道具の中でホテルの捜索に応用できそうなものだけを分けていったんだ…
でも、ほとんどは俺が持ってきた道具でさ…他のみんなは思っていたより道具を持ってきていなかったんだよなぁ…

「デメトリオ…その懐中電灯さ、俺の持ってきた提灯って奴よりも明かりとしては役に立つんじゃないか?」
「いやぁ…?ヤマトが持ってきたそれのほうが明かりとしては使えると思うんだけど…俺のはつかないから…」

って、ちょっと待てっ!!
あ、あの提灯は…俺の提灯じゃないのか!?俺がジパングで買った…
三年間使われなかった…あれじゃないのか!?
どうしてヤマトが持っているんだよ…?

「お前…それ、俺の買った提灯じゃないのか?」
「えっ…?………そうだよ?」
「どうしてお前が持っているんだよ?それ…」
「…いや、だってさ?前に宿屋内の大掃除をしたろ?そのときに埃を被って俺の部屋のタンスから出てきたから…」

……そういえば、結局どう使ったらいいのか分からなかったから、ヤマトの部屋のタンスに押し込んどいたんだったな…
だ、だって…使い方が分からないんだもん…

「…ごめんな?やっぱりこれ…何かに使えそうだって引っ張り出してきたけど返すよ」
「いや…別にいいけどさ?じゃあ、それを使って捜索をしようか…?」
「俺、これの使い方を知らないんだよな…持ってきたけど…」

や、ヤマト…使い方分からないのに持ってきたのかよ…!?
いや…俺もまったくわからないから何もいえないけどさ…?

「それだったら、デメトリオの懐中電灯をどうにかして使えるようにするしかないだろ?」
「どうするって言ったって…ナッカーサー、これ、音が鳴るだけで光つかないんだぜ?それに、提灯はどうするんだよ?」
「提灯だったら、適当にあそこのあまり捜索では使えそうに無いものの中に入れておけばいいだろ…」

「また…埃を被らせるんですか…?」

ん…?何か言ったか…?いや、気のせいだよな…
この建物の中に来てから、幻聴がよく聞こえるんだよな…
そういえば、昔…聴いたことがある
恐怖から見えもしないものや、聞こえるはずの無い声が聞こえる事が多々あるってさ?
つまり、俺が聞いた幻聴は…恐怖心からくるんだと思う…
いや、まぁ…こんな事は今は…どうでもいいか…


「なぁ…デメトリオ?この懐中電灯、音が鳴るけど…何が入っているんだ?」
「えっ…?いや…まだ見てないけど…」
「だったら、開けるが…いいよな?」
「別にいいけど…テープで補修されているから余り強引にはあけないで…」

ガチャッ…

き、聞いちゃいねぇ…
いや、まぁ…別に綺麗に開いたのなら…文句は無いけどさぁ…

俺がそう思って、ナッカーサーが懐中電灯から何かを取り出すのを見ていたんだが…
懐中電灯の中からカランって音を立てて出てきたのは…鍵か…?

【音がなる懐中電灯】は分解され、【懐中電灯】と【食堂の鍵】になった!


さて…俺たちはこれで明かりを手に入れる事が出来たわけだけど…
これから俺たちはどうすればいいんだろうな…?
正直、明かりは見つかっても、探す場所に検討がつかないんだよな…
それに…あの時出会ったラミアの女性のような人が他にいるかもしれない…それを考えると…

俺は、その事を考えると微妙に寒気を感じつつナッカーサーと相談する事にしたんだ
こんなときに、物事を慌てずに考える事が出来るナッカーサーのような男がいると本当に助かるぜ…
俺だったら、たぶん何も考える事は出来ずに…逃げていたんだろうなぁ…

……なんだろう?本当に、そんな感じがしてきたぞ…
違うっ!!俺はきっと…あのときよりは逃げる事が少なくなったはずなんだ!!
それを…今回のホテルの探索で、しっかり見せてやろうじゃないか!


「ナッカーサー…これからどうする?」
「そうだな…まず、二手に分かれる事から始めようか」
「えぇっ!?」

ナッカーサーが提案した言葉により、俺たちの周りの空気が一瞬で停止…した気がした
それくらい、ナッカーサーは物凄い事を言っていたんだよ!

考えてみてくれ…二手に分かれるって事は、それだけ一人ひとりに対しての危険が大きいって事になるじゃないか!
それに…今の俺たちはこのホテルの全容を把握する事も出来ていないのに…無謀すぎる!!
ナッカーサー…俺はさすがにそんな恐ろしい作戦には従えないな…

「恐らくだが、お前たちは俺の考えが無謀だとか思っているんだろう…」
「しかし、そうだろう!?今の状況で戦力を分けるのは…」
「戦力ってお前達はいっているけどな…このホテルで俺たちが出会った彼女は生きているかどうかも分からないって忘れたのか?」

うぐっ…た、確かにそうだった…
ゴースト…とは違うかも知れないけど、確かに彼女は生きているとは思えない…変な雰囲気があったんだよな…
確かに、ナッカーサーが言った事は正しいと、俺でも思うよ?
でも…それと戦力分断との何の関係が…

「つまり、この状況で全員で動く事のほうが馬鹿みたいな考えなんだよ!!俺たちが何人いようが…こちらの攻撃は彼女達に通用しないんだから!」
「「「!!!っ」」」

そ、そうか…そういうことか!!俺でもわかったぞ…
ナッカーサーが言っているとおり、こっちの攻撃は彼女達に一切通用しない…って事は、俺たちがいくら集まっていても…関係ないって事になる!
そうだろ?だって…こっちの攻撃は通用しないんだからさ!!
それなら、人数を分断してホテル内を探したほうがいい…そうだろ?

どうやら、俺以外のみんなもナッカーサーのさっきの台詞で気がついたみたいだし…じゃあ、誰と誰がチームを組むかを決めないと…
そう思い、俺がペアを作ろうと言おうとしたときだった…

「ナッカーサー…僕は、みんなをサポートできそうな道具が作れないか、ここで頑張ってみる…僕はチームからはずしてくれないか?」
「待て…俺は確かに、分断するとは言ったが…1人ってのはいくらなんでも危険だ!」
「だったら、俺が残ろう…ちょうど、調べたい事があったしな…?」

こうしたやり取りがあって、結局俺とナッカーサーの二つのチームで捜索を始める事にしたんだ
俺と一緒に行動するのはヤマト…ナッカーサーとドラグーンが一緒のペアだ…
で、ケイとユーマンはこのロビーに残って、何かを作るって事になったんだよ!
ちなみに、ユーマンの立ち居地は、状況に応じて他のメンバーに変わる…
分かりやすくいえば、ローテーションする事になっているんだけどな?


「さて…じゃあデメトリオ、俺たちはエントランスから二階に上がって、二階を調べてみる」
「わかった…じゃあ俺たちは、ロビーのもう1つの扉から一階を調べてみるよ」
「了解…じゃあ、ある程度捜索したらここに戻ってくるとしよう…いいか?」
「あぁっ!!」

俺たちはそういうと、ナッカーサーたちが部屋を出て行くのを見送ったのだった…
さてっ!!俺たちも…いっちょやるとするか!!

「デメトリオっ!!安心してくれ…俺がいれば、100人力だからさ!!」
「期待してるから…よろしく頼むぜ!!」
「あぁっ!!任せてくれよ!!」

よしっ…ヤマトも気合十分のようだし…俺たちも捜索を始めようじゃないか!!


そうして、俺たちはロビーから行く事ができる廊下に出たんだが…
この建物は物凄く広いんだな…だって、ロビーから行く事が出来る廊下の広さを見てみたら…大体わかるだろ?
それに…この廊下にはたくさん部屋があるようだしね?

「さて…ヤマト、まずは何処を調べる?手頃にこの扉とか?」
「そ、そ、それよりも先に、明かりをつけようぜ?な?いや、別に怖くは無いんだけどさ?」

怖いんだな…
まぁ、確かに明かりをつけるって考えはいいと思うから…つけてやるか…

俺はそう思い、手元にあった懐中電灯をつけたんだ…
これが、ちょうど電池1つで動くタイプでよかったって思うよ
じゃないと…俺たちは明かり無しでホテル内を捜さないといけないって事になるだろ?
この点では、俺たちはまだいいほうだと思うぜ?
だって…ナッカーサーのほうのチームは明かり無いんだからさ…


「じゃあ…開けるぜ?」
「あぁ…心の準備はOkだ…一気に頼む」

俺はヤマトと向かい合って話を済ませると、目の前にあった扉を勢いよく開いたんだ!!

ガチャッ…ガンガンッ…

あれ…?開かないな…
俺は扉が開かないのをヤマトと一緒に確認した後、扉をよく見直したんだ…
扉には【221号室】って書かれているようだけど…鍵でも閉まっているのか?


「開かないみたいだな…」
「そういえば、デメトリオって鍵…持っているよな?」
「ん?そういえば…この懐中電灯の中に入っていたんだよな…」
「それを使おうぜ?まずは確実に行く事が出来る部屋から調べていったほうがいいって!!」
「じゃあ…捜すか?食堂…?」

それから俺たちは、のんびりと食堂を探し始めたんだ…
まぁ…廊下って言っても暗いだけだしな…?俺たちは懐中電灯で明かりもバッチリだ!
それにしても、食堂ねぇ…俺はあの広いロビーが食堂の代わりもつとめているとばかり…

そんなこんなで廊下を調べていると、廊下の一本道のちょうど真ん中辺りで俺たちは食堂を見つけたんだ
…他の扉とは違って、大きな扉なんだなぁ…
さてっ!!鍵がぴったりだといいんだが…

ガチャッ…

「おっ…?開いたぜ…じゃあ、入るか?」
「ま、待てよ!!そう簡単に入るのは…抵抗無いか?」
「抵抗…?それはどういう意味だ?」
「いや…何か罠があるかも知れないぜ…?」

た、確かに…こんな都合よく鍵が手に入ったのも…罠かもしれないな…
ヤマト、中々に勘が鋭いじゃないか!!

「お前…中々賢いなぁ…」
「だろ?いやぁ…そんなにほめるなって!」
「じゃあ…しばらく扉の前で待機…か?」
「そうだな…」

それから何分くらい立っただろう…?二人で夜に廊下で立っているってのは…結構暇だな…
いや…でもさ?確かに安全性を求めるなら…ここで待機するべきだよな…

「…ヤマト、ちょっといいか?」
「なんだ?暗いんだから、急に話しかけてこないで欲しいんだけどな…?」
「何時まで、こうしているつもりなんだ?」
「え…?そ、そりゃあ…何時までだろう?」

……こいつ、まさかずっとこうしているつもりだったのか…?
くっ…だが、ヤマトの考えに乗っかりたい俺がいて仕方が無い…
ここでずっとしていても何にもならないって分かる…分かるけど…
行くしか…ないんだよ…な?

……よしっ!!いいだろう!!行こうじゃないか!!

「ヤマト…入ろうぜ?これだけ注意していれば、大丈夫だよ!」
「そう…だな…じゃあ、入ろうか?」

俺たちはそう相談すると、微妙に木の扉が軋む音を立てながら開いたんだ…
中に入ってみると、真ん中に大きな机が置いてあり、その机の上で二つのロウソクが揺らめいていたんだ…
誰があのロウソクをつけたんだ…?はっ…そうか…
この食堂に誰か来たんだな?火くらい消していかないと駄目だと思うが…

俺はそう思って火を消そうとしたんだが…
その瞬間、ヤマトが慌てて俺の手をつかんだんだよ!!
な、なんだ…?

「ま、待てってっ!!せっかくの明かりなんだぞ?雰囲気的にも変な感じしないし…せっかくだからつけておこうぜ?」
「じゃあ、俺たちがこの部屋を調べる間だけ…つけておくか?」

俺たちがそう思って、部屋の中を捜そうとしたときだった…

「あの…ちょっといいですかぁ?」
「へっ…?」

誰だ…?さっき俺の後ろから話し声が聞こえてきたんだが…
そう思って振り返ってみた俺の目の前には誰もいなかったんだよな…
このホテルに来てから…疲れてんのかな俺…?

「ヤマト…俺、疲れているのかもしれない…幻聴が聞こえるんだ…」
「幻聴?そりゃあ大変だな…こんな状況だし、精神的にやられているんじゃないか?」
「お前も…そう思う?でもさ…旅行に出発する前はなんとも無かったんだぜ?」


俺がヤマトにそういっていると、また俺は近くで幻聴を聞いたんだよ!!
なんていったら分かりやすいだろうか?20代くらいの女性が話しかけてきた…みたいな感じか?

「あの〜…聞いていますか〜?」

「ひぃっ!?な、なんだ…あの声は…!?デメトリオ…さっきの声、聞いたか!?」
「あぁ…こ、こ、これは…幻聴じゃないかもしれない…」
「奇遇だな…俺もそう思って…」

ヤマトがそういったときだった…
俺たちのすぐ真横でついていたロウソクがふっと消えたんだ…
そして、ヤマトの横にぼんやりと浮かび上がってきたのは…コック帽を頭に被ったシェフのような見た目をしている…女性だった

…………っ…

俺は思わず自分の息を飲み込んだね…
だって、彼女は青白く浮いていて…微妙に透けているんだぜ!?
これは…有名なお化けって奴じゃないのか!?ゴーストだろ!?

「あわわっ…あわわっ…」
「どうした?デメトリオ…そんなに顔を引きつらせて……っ!?」

思わず声を失ってしまうほどの恐怖心が俺たちを襲ってくる…
本当に怖くなったら、声を上げることすらも忘れそうな恐怖心が全身に押しかけてくるんだって、俺はわかったんだ
しかし…捜索を始めてすぐに…遭遇してしまうなんて思ってもいなかったぜ…
やっぱり、このホテルはどこかが変だ!!どうして…二回も連続でゴーストに遭遇するんだよ!!

「ようやく、気がついてくれました?さっきから真上をふよふよ飛んでいたんですよ?」
「ひぃっ…あわ…や、ヤマト…早くここから逃げようっ!!」
「そ、そ、そ、そうだな…デメトリオ、俺もちょうど同じ事を考えていたぜ」
「待ってくださいよ!!どうしてそんなに怖がるんですか?おかしい人たちですね…」

……お、おかしいのはあんただよ!!
そもそもだな…楽しい旅行になるはずだったのに、サリィたちはいなくなるし、他の宿泊客とは連絡がつかないし、何もかもがおかしいんだ!
それに…ほんの数分前には物凄い恐ろしい、ゴーストなのかもわからないラミアの女性と遭遇したばかりなんだぞ!?
俺のメンタル面も配慮してくれよ!!畜生っ!!

「あっ…もしかして…今回つれてこられた新しい旅行者の人?こんにちわーー!!いや…こんばんわー…かな?」
「そうだよっ!!楽しい旅行になるって思ったのに…どうしてこうなったんだよ!!」
「デメトリオっ!!扉が…外から何か強い力で抑えられているように開かない!!」
「ちょっと話を聞いていってくださいよ!一年ぶりなんですよ?この部屋に人が来たの!!いやぁ〜…失敗だったかなぁ?懐中電灯の中に鍵入れるの…?」

……聞いていってくれも何も…出口を何か不思議な力でふさいでいるなら、聞くしかないんだろ!?
それにしても、彼女…物凄く口数が多いなぁ…いや、別にいいけどさ?

「……1つ、はっきりとさせておきたいことがあるんだが…いいか?」
「なんですか?あぁっ!!この格好の事ですね?この格好は…そうですねぇ〜今から10年くらい前の事でしょうか?私が…」
「いや…それじゃなくてさ…君は俺たちに本当に危害を加えないんだよな?」

ここのところをはっきりとさせておかないと、色々な意味で身の危険がかかわってくるからな…
この答え次第では、俺は本気でこの部屋から出る選択肢を選ばないといけないよな…

「危害…?加えるわけ無いじゃないですか!!嫌だなぁ〜…このキャシー=ミント生きていたときも死んでも、人に迷惑はかけませんよ!」
「……本当かよ?俺たちはいま、この部屋につかまっているんだから、危害は加えられている気がするんだけど…」
「しっ…ヤマト…ここは、彼女の機嫌を損ねずに情報を手に入れておいたほうが…いいんじゃないか?」
「…確かに、それには賛成だな…じゃあ、彼女に情報を提供してもらうとするか?」
「あぁ…」

俺たちが小さな声で話していると、遠くのほうからトレイがふよふよと飛んできているのが見えたんだ…
あのトレイの上には…料理が乗っているのか?

「これ、私が作ったんだー!!穀物類アレルギーとか無いよね?パイを作ったんだけど…このパイはね?中に…」
「あ、ありがとう…えっとさ…話を聞いてもいいんだけど、俺たちの質問にも答えてくれないかな?」
「いいですよー?」
「よし、それじゃあ…」

【・このホテルの事を聞く
 ・彼女の事を聞く      】

まずは、ホテルの事でも聞くか?このホテルがどんなものなのかを知っておかないといけないし…ね?
このホテルが普通のホテル…ってことは、おそらくもう無いんだろうしな…

俺は頭の中でそう考えると、彼女に質問をぶつけたんだ!!

「あの…このホテルって…何なんですか?俺たちは旅行って事でここに来たんですけど…明らかにおかしいですよね!?」
「このホテルは…ヘヴンズゲートって名前のホテルで…私の中では幽霊の館って呼んでますねぇ〜」
「ゆ、幽霊の館!?な、なんでそんなぶっそうな名前を…?」
「なんでって…この建物自体がこの世のものじゃないからに…決まっているじゃないですか!!」

……この世のものじゃ…無いだって…!?
ちょっと待ってくれよ!!じゃあ…俺たちはこの世のものじゃない場所にいるって事じゃないか!!
…どうやっておれたちはここに存在しているんだよ!?

「それじゃあ…俺とデメトリオはどうやって…」
「それはですね?このホテルは一年に一回、ランダムで人とゴーストを集めるんですよ!!それで、人が存在しなくなったら建物ごと消えるんです!」
「……つまり…どういうことだ?」
「つまりはですね?ゴーストにつかまったら駄目って事ですよ!!あっ!!でも、私は危害は加えませんからね?私、夫手に入れましたから…」

………とにかく、よくわからないけどこのホテルが、ただのホテルじゃないって事は分かったな…
じゃあ次は、俺たちがロビーで出くわしたラミアの女性の事…彼女の事を聞いてみるか…?

「じゃあさ、俺たちがロビーで出会ったラミアの女性のゴーストは誰なんだ?聞きたいんだけど…」
「分かりませんねぇ〜…私、この部屋から出た事はありませんし…このホテル内では、私や他にも人間の人に友好的なゴーストもいますけど…そうじゃない人たちもいるそうですし…まぁ、分からないんですけどね?」
「友好的なゴースト…?」
「はいっ!!友好的なゴーストは夫を手に入れたゴーストたちなんですが…夫を手に入れる事が出来なかったゴーストは危険って聞きましたね」

………ちょっとばかし、話が読めない俺がここにいる…
えっと、つまりは結婚したゴーストは危険じゃなくて、そうじゃないゴーストは危険って事か……

…………

どう見分けるんだよっ!!ぱっと見たら、全然分からないじゃないか!!
単純明快にゴーストを見たらすべて敵だって思えばいいのかよ!?
………いや、デメトリオ…その見分ける方法も聞けばいいんじゃないか!!そうだよ!!
ふっ…俺、中々に賢いじゃないか!

「友好的なゴーストかそうじゃないゴーストか…どうやって見極めるんだ?」
「それ…俺も聞こうって思っていたんだ!!どうなんだい?」
「それはズバリ…オーラですよ!!オーラが違うんです!」

オーラ…だって?彼女…俺たちが馬鹿そうな顔をしているからって…馬鹿にしているのか?
オーラってなんだよ!!オーラって!!

「あっ!!その顔は…オーラってなんだよって顔をしていますね!?仕方がありませんね…教えてあげましょう!!」
「……頼むよ」
「まずは、私のことを見てください!!いいですかぁ?」
「…あぁ、で?」
「私の周りに、青白い線のような物が見えませんか!?これが…オーラです!!」

…っ!?た、確かに…言われてみれば、うっすらとだが青く光る線のようなものが彼女の周りに…
あれがオーラだと言うのか!?あれがっ!?

「み、見える…確かに青白い線が…」
「この線が青かったら、そのゴーストは友好的なんですよ?でも…赤色だったら気をつけてくださいね?夫に飢えているゴーストですから…」
「それで見分けるのか…?」
「はい!!あっ…でも、赤色に見えて微妙に色が違う…血の様なオーラをまとっている子に出会ったら…本気で逃げたほうがいいですよ!」

……い、色々あるんだなぁ…ゴーストにも…
って、ちょっと待てよ…?俺たちが一番初めに出会ったゴーストの女性にはオーラなんて無かったぞ!?
そんな事も…あるのか…?

「なぁ、オーラが無いゴーストっているのかな…?」
「いるわけが無いじゃない!!憑依しても微妙に変化が出てくるのに…そうだ!これ、あげちゃいますよ!!」

これは…レポートのようだけど…何なんだ?
ぱっと見ても、紙が4枚くらいついているだけの報告書のように見えるが…

「これは…?」
「これはねぇ…あたしの夫が人間だった…今から大分昔に、ここに来た彼が書いたレポートなんだ!!受け取ってよ!!」
「あ…あぁ…サンキュー…」

俺は彼女が差し出してくるレポートを受け取ると、彼女に礼をいったんだ…
このレポートが後に役に立つかも知れないだろ?

デメトリオは【ウェイターの報告書】を手に入れた!!

さて…余りここに長居するわけにもいかないからな…そろそろ、サリィ達を探しに戻らないといけないな…
彼女には色々教えてもらったからな…でも、行くとするかな?
俺はそう思うと、彼女に別れを告げて部屋から出る事にしたんだ…

「そろそろ…俺達は行くよ…ありがとな?色々…」
「本当に助かった…怖がって悪かったな…」
「気にしない気にしない!!じゃあ…私はそろそろ寝るかな…お休み〜!!」

そういって彼女が姿を消したと同時に、この部屋の電気がついたんだよ!!
……これは、どういったシステムなんだろうな?いや…いいんだけどさ…

「ヤマト…行くか?」
「そうだな…っと、ちょっと待ってくれよ!!机の上に何かあるぜ?これは…紙のようだけど…」

紙…?あぁ…あれの事かな?なんだろうか…この紙は…?
俺はそう思って紙を手に持ってみたんだけど…何か書いてあるな…

【二人にプレゼントがあるんだ!!机の上にあるサンドイッチ、食べてもいいよ!!言い忘れてたから…あと、食べ物が欲しいならこの紙に書いてくれると、暇があったら作るからね!!】

……彼女が書いたのか?いやぁ…優しいな…

俺は彼女の優しさを感じつつ、サンドイッチをほおばると、ヤマトと一緒に食堂を出たんだ…
食べ物に関しては、しばらくはこれで大丈夫そうだな…
そう思いながら俺はヤマトと一緒に食堂を出たのだった…
ろ、廊下に出てみると、相変わらず暗いんだな…早く、ゴースト以外のほかの人物に会いたいもんだぜ…


さて…食堂で食べ物の心配をしなくてもよくなったってのはいいことだけど…これから先、何処に行けば…?
さすがに、このレポートだけを持って戻るなんて出来ないよな…せめて、もう少し何かを手に入れてから帰ったほうが…いいよな?
しかし…変に大きな廊下だよなぁ…外から見たときのホテルの見た目ではこんなに大きいなんて想像できなかったよな

「なぁ…これからどうする?ヤマト…」
「えっ…?戻るか?別に俺はもう戻ってもいいと思うけど…」
「でもさ…さすがに早くないか?ここで戻ったら…こんなに怖いのにサボりかって思われるぜきっと…」
「そ…それは…嫌だなぁ…」

カツッ…カツッ…チャキッ…

「でもさ…廊下はこんなに暗いし、何処に行けば分からないだろ?だったら、捜しようは無いんじゃないか?」
「ヤマトの言いたい事は分かるけど…俺達はこの廊下の全部の部屋を調べたわけじゃないからな…」
「……確かに、それはそうだけどさ…」

チャキッ…チャキッ…

「んっ…?デメトリオ…なんか、変な音しないか?金属を鳴らしているような音が…」
「えっ?音…だって?いや…聞こえないけど…」

ヤマトに言われて、しばらく黙り込んでみたんだが…やっぱり、何も聞こえないよな…
まったく…恐怖で少しおどおどしているのか…?それとも…はっ!?
俺が感じていた幻聴を今、ヤマトが聞いているだけじゃないのか…?
なんだ…幻聴が聞こえるのは俺だけじゃなかったんだな…

「あれ…?俺の気のせいかな…?まぁいいや…じゃあ、片っ端から扉を調べて…」

カッ…カッ…ジャキッ…

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!や、やっぱり、聞こえるじゃないか!!なぁっ!?なぁっ!?」
「えっ……聞こえたか?ヤマトの叫びが大きくて、それ以外に気がつかなかったんだけど…」
「いや…確かに聞こえたんだ…さっき、物凄い近くで聞こえたんだ!!やばいよデメトリオ!!きっとなにか…」

……ヤマト、怖がりだな…
それと、ちょっと表現がオーバーだよなぁ…まぁ、別にいいんだけどさ?ヤマトを見ていると…自分を見ている気がするんだ…
いや…俺はヤマトほど怖がりじゃないとは思うけどね?こんなに堂々としているんだぜ?
もう…100%頼りたくなる男性を全身で表現してるよな?な?
きっと読者のみんなも俺を頼りたいと思っているに違いないさ!!はっはっはっ!!

「なにか……なに…ひぃっ!?うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「なっ…!?おいヤマトっ!ちょっと待てって!!まったく…何をそんなに慌てて…」

ヤマト…後ろを振り向いてから物凄い速度で走り抜けていったが…
しかしまぁ…的確に扉を調べながら必死に逃げているのは、愉快ではあるよな…
まったく…落ち着きが無いよなぁ…

俺はそう思って、ちょっとだけ後ろを振り向いてみたんだけど…
そこで俺は…物凄いものを見てしまったんだよ!!

俺の目の前には、俺の腰から上くらいの大きさのハサミを持ち、それを開いたり閉じたりしながら歩いてくる女性がいたんだよ!
そして…彼女の周りには血のような赤黒いオーラのようなものが…っ!!
こ、こ、これをヤマトは見たって言うのか!?

「ねぇ…?知ってるかな…?血って空気に触れてから酸化して黒っぽい色になっていくらしいよ?不思議だね…」

ひぃっ…!?な、なんだ…!?この物凄い嫌な雰囲気はっ!?こんな怖い気配を一瞬で感じ取ったのは久しぶりだぞ…!?
これは…考える必要も無いよな?逃げたほうがいいっ!!絶対にっ!!

俺は頭の中でそう判断すると、一気に振り向いて走り出したんだ!!
その時、慌てすぎて少し体制を崩してしまったんだけど…

「ねぇ…私が聞いたんだよ?答えてくれても…いいでしょ?ねぇっ!!そうだねとか言ってよ!!」

ジャキィンッ!!

俺の真上をハサミが通り過ぎていったんだよ!!
あ…危なかった…!!これは非常にまずかったぞ…
彼女のさっきの一撃には、なぜか物凄い狂気的な何かを感じたんだよ…!!
ご、ゴーストの女性って、魔王が代わったときに夜の営みが大好きな存在に代わったんじゃないのか!?
彼女には全然そんな雰囲気は感じないんだけど!?えぇっ!?なにこれ…怖い!!

「あはははははははははぁっ!!避けないでよ…私を避けないでよ!!」
「いやいやいやいやっ!!逃げるよ!!馬鹿じゃないのか!?」

俺はそう答えると、物凄い速度で逃げ始めたんだ…
彼女はゴーストだけど、なぜか歩いているようにも見えるし…と、とにかく!!今は逃げたほうがいい!!
俺はそう思うと、ヤマトに追いついたんだ…彼女はゆっくりとだが、ハサミをもってこっちに近づいている…
こんなに狭い廊下だと、彼女の横を通過するなんて恐ろしい行為は取れない…もし、行き止まりに直面したら…やばいぞ…
俺がそう思うと、まるでそれを待っていたかのように曲がり角が現れたんだよ!!
そして…俺達が曲がると、そこには無常にも壁が…い、行き止まりじゃないか!!

くそっ…ハサミの音がすぐそこまで来ている…この曲がり角を曲がられたらアウトだ…!!
そして、扉は二つ……頼む…開いてくれっ!!

俺がそう思って扉を開けると…なんとっ!!ここの扉は開いてくれたんだよ!!

「デメトリオっ!!こっちだ!!開いたぞっ!!」

な…っ!?両方開くだって…!?くそっ…どっちに行けばいいんだ…
いや、この場合…どっちにいってもいっしょなんじゃないかって気もするな…

「デメトリオっ!!この部屋に入ろう!!俺を信じてくれよ!!」

……ヤマト…いいだろう!!俺はヤマトを信じる!!
俺はそう思うと、自分の開けた扉を閉めてヤマトの行ったほうの扉に向かったんだ…
そうだ…これは賭けだけど…やってみたい事がある!!

「ヤマト…ちょっといいか?ごにょごにょ…」
「えぇっ!?お、おまっ…馬鹿なのか!?馬鹿なんだろ!!そんな事…」
「俺はお前を信じた…お前も俺を信じてくれよ!!」
「くっ…し、仕方が無いな、わかった!!」

さすがはヤマト…俺にそっくりなだけはある…信じてくれるって俺は思ったんだよ!!うんっ!!
じゃあ…さっそくやってみるか!!

「………あれぇ?何処に行ったのかなぁ…?扉は二つ…どっちかに行ったのかなぁ?」

来たっ…!!
俺とヤマトはそれを察すると、二人で息を潜めたんだ…俺の計画が逆手に出なければいいんだけど…

「慌ててたから…きっとこっちの開いている扉だよねぇ…」

………っ!?逆手に出た…のかっ!?
俺の背中にぞくりと嫌な感じが駆け抜ける…

「…あぁっ!!わかったっ!!ここは逃げ場は無いけど…こっちの扉はっ!!」

バタァンッ!!

「二階に続く階段がある部屋だから…二階に逃げたんだぁ…こっちの扉が開いていたのは、それをだまそうとしたから…ふふっ…」

………それからしばらく静寂が辺りを支配したんだ…
そして、遠くのほうからカツッって音が遠ざかっていく音が聞こえてきたんだ…
俺達はそっと扉を閉めたんだ…

……やったっ!!やったぞっ!!俺の考えが正しかったっ!!
俺が開いた扉の奥には階段のような影が見えた…つまり、圧倒的に1つの部屋であるこの場所と、逃げ場がある階段の部屋の場合…
階段の部屋のほうに向かうって思ったんだ!!
そして…この部屋をあらかじめ開けておく事で、この部屋の中を外からも見れるようにし…ここが逃げ場が無い部屋だってことを伝えたかったんだ
生きている者は部屋の中を確認できる状況で逃げ場が無く、もう片方が逃げる事が出来るって状況なら、ぱっと見てから逃げる選択肢を取れる部屋に行く!
だって…そっちのほうが確実なんだから!!わざわざ逃げ場の無い部屋に逃げるなんて…普通は考えないからな!!
そして…廊下もここもこの暗さだ…扉のすぐ裏に隠れている俺たちに気がつく可能性は少ない…だろ?

でも、確かにこの方法は物凄く危険だったんだけどね?
もう1つのほうの扉に行かなかったら…チェックメイトだったんだし…
しかし…ひとまずは安心だな…

「ぜぇっ…はぁっ…お、お疲れ…どうだ?信じてよかっただろ?」
「あぁっ…さすがはデメトリオだな…それで、飛び込んだけどこの部屋は…なんの部屋なんだ?」
「……これを見てくれ、たぶん…談話室じゃないか?客人用の…ほら、扉の脇に書いているし…」
「なるほどな…しかし、この部屋のおかげで助かったぜぇ…なぁ?」
「あぁっ…まさに談話室さまさまだな!」

せっかくだし…この部屋でも何かないか調べてみるかなぁ…
何かいいものが手に入ればいいんだけどさ…
俺達はそう思うと、客人用談話室を捜索し始めたんだ…

客人用談話室の中は物凄く質素だった…
机や椅子などの家具は客人向けにいいものなんだけど…家具が圧倒的に少ないんだよなぁ…
まぁ、談話室だし…何か世間話をするときに休憩所として使っているのかな…?
そういえば、ここでちょっと気になることがあるんだよな…
この建物、食堂にいたキャシーさんの言っていることが正しければ…かなり古い時期からあったと思うんだけど…
食器類は当然だけど、まるで床も掃除したばかりのように綺麗なんだよ!!
くもの巣1つも張っていないなんて…古い建物って感じはしないんだよなぁ…

まっ…電力室は古かったし、建物が古かったら俺達がこの建物じゃないって思ったかもしれないが…
なんだか、不思議な感じだぜ…

「デメトリオ…なにか見つかったか?花梨や他の嫁につながりそうな手がかり…」
「いや…お前はどうなんだ?」
「1つ、気になるものを見つけたんだ…このクローゼットなんだが…」
「迷ったら調べたらいいんじゃないか?」
「そう…だな」

クローゼットの中には、物凄く古びているペンダントが飾ってあったんだけど…
これは、一体なんだろうか?見るところ、今から30年は前の物のように見えるけど…
俺はそう思うと、そのペンダントを取り出し…ってうわぁっ!?
なんだ…?なんだか、ぬちゃぬちゃしたものを触った気が…暗くてよく見えないけど…

デメトリオは【さびたペンダント】を手に入れた!

「デメトリオ…それ、なんだ?」
「分からないが、たぶん重要なものなんじゃないか?それにしても…なんだよ?この手についた変なの…?」
「どうしたんだ?何か手についたのか?」
「あぁ…手にとって見てくれよ…俺の気持ちが分かると思うからさ…?」
「へっ…?うわぁぁぁぁっ!?な、なんだこれっ!?液体か?」

俺は手についたものが何かをもう片方の手で照らしながら見てみたんだが…これは…血か?
なんでペンダントに血がべったりついているんだよ…?
俺が見たところによると、このペンダントは物凄い古いはずなのに…血が手につくなんておかしいんじゃないか?
………まぁ、いいかな?さて、じゃあ別の何かを探すとしようか?

それから数分間、タンスの裏にあたるところまでしっかり調べたんだけど…何も見つける事はできなかったんだ
まぁ、そう簡単に見つかるわけ無いよなぁ…
ヤマト、調べ方が雑だしさぁ…俺が馬鹿みたいにしっかり見すぎているだけかもしれないけどさ…

「じゃあ…そろそろ出るか?結構長時間調べたし、戻ってもいいくらいの時間だろ?」
「そうだな…じゃあ、ケイが待っているところに戻るか…」

ガチャッ…ドンッ…ドンッ…

「あ、あれっ?」
「どうした?ヤマト…」
「扉が…開かないんだけど!?」

なっ…にぃっ!?なんだろうか?物凄く嫌な予感が俺の周りに…
この感じ、食堂で感じた嫌な気配と似たような気配を感じるんだけど…?

「ねぇ…お兄ちゃん…それ、返してよぉっ…」

「なんだっ!?間違いない…またゴーストかよ!?」
「……頼むからもう勘弁してくれよ…さてヤマト…逃げるぜ!?」
「おうよっ!!」

ガチャッ…

………そうだった!!逃げようもなにも…扉が閉まっているから逃げられないんじゃないか!!
くそっ…声から判断するに子供のようだったが、いったい何処にいるんだ…?

部屋の中を見回しても、女の子のような姿は何処にも見つける事はできない…
だが、声が聞こえてきて…しかも俺達はこの部屋から出る事が出来ないって事は…間違いなくゴーストはいるんだよな…
待てよ…?俺達はどうしてこの部屋から出る事が出来なくなったんだ…?
俺達を逃がさないつもりなら、この部屋に逃げ込んだときに扉を閉めて脱出できないようにすればいい…
つまりは…始めの状況なら俺達は逃げる事が出来たってことだ…
だったら、俺達が何かをしたから逃げられなくなったってことじゃないか?
……何処で逃げられなくなったんだ?

俺は必死に頭の中でそれを考えてみるんだけど…いまいち、どのタイミングだったかなぁ…?
俺ももう24だからなぁ…記憶力がちょっと低下していて…っと、待てよ?
クローゼット……そうだっ!!クローゼットだ!!
厳重にロックされていたクローゼット…あのクローゼットの中から取り出したこのペンダント…これしか考えられない!
これが原因で俺達はこの部屋から逃げる事が出来ないんだ!!

俺がこの結論を導き出したとき、ヤマトがちょうどクローゼットのほうを調べにいっているのに気がついたんだよ!!
やばい…俺の感が…逃げ続けてきた感が告げているぞっ!!
あのクローゼット…あの中にいるっ!!

「ヤマトっ!!そのクローゼットから離れろっ!!」

ガタッ!!

「えっ…?」
「返して…ペンダント、返してよぉっ!!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!?なんだっ!?引きずり込まれる!?」

や、ヤマトの身体が彼女につかまれて、だんだんクローゼットのほうに引き込まれている…だとっ!?
くっ…こ、これは助けに行ったほうがいい状況だけど…怖いっ!!
もしだ…もしも俺が助けに行ってヤマトの代わりにあの子につかまれてクローゼットに引き込まれたら…ひどい目にあうのは分かってる!
まさか、このタイミングで自分の足がヤマトを即座に助けに行けなくなるとは…躊躇している場合じゃないのに!!
俺はもうダメトリオじゃないはずなんだっ!!代わったんじゃないのかよっ!?俺っ!?

………いやまぁ、人間は簡単には変わらないんだけどね?それをいってしまったら、夢がないと思うよ?
って、ふと改まってこんな事を考えている場合じゃない!!
くそっ…畜生っ!!やってやる…助けに行ってやるっ!!
もしも俺が代わりにつかまったら…ヤマトも道連れにしてやるっ!!
俺が逆の立場なら…絶対に道連れにはされたくないけど…まぁいいさっ!!
だって人間は…自分1人が不幸な出来事に直面するのを極端に嫌がるんだから!!
俺が取っているこの行動は絶対に間違っていない!!

「待ってろよっ!!ヤマトっ!!」
「なんだっ…?はっ…!?で、デメトリオっ!!このクローゼット…奥がないっ!!沼みたいに身体が連れて行かれる!」
「くそっ…ヤマトっ!!俺の手に…つかまれっ!!」

そして俺はこういうと、ヤマトの手に手を伸ばしたんだ…
……つかんだっ!!絶対に…離さないぞっ!!離してたまるかっ!!

「ぐぐっ…なんて力だ…だが、負けないっ!!うおぉぉぉぉぉぉっ!!」

俺が全力でヤマトを引っ張ると、ヤマトが一気にクローゼットから出てきたんだよ!!
そして…力を入れて引っ張っていた俺は後ろにあったテーブルに腰を打ち付けるっていうね…
ヤマトを助ける事が出来て…俺も無事で…本当によかったっ!!
さて…あとはあの子がクローゼットから出てくるのを待つだけ…
そう思って身構えていると、クローゼットが音を立てて開き、中から四つん這いで銀色の髪の毛をした少女が出てきたんだよ!
暗い中でも銀色って分かったんだなって…そんな野暮なつっこみは無しで頼むぜ?

だが、ヤマトを一時的に助ける事が出来たとしても…彼女をどうにかしないと俺達はこの部屋から出る事もできない…
でも…こっちの攻撃は一切通じないんだぜ!?
いや、もし仮に攻撃が通じたとしても…俺達は武器…持ってないんだぜ!?
俺は丸腰で相手に戦いを挑めるほどに無謀じゃない!!かっこよく言うなら…勇敢じゃない!!
もしも彼女が向かってきたら…この余り広いとはいえない部屋の中で必死に逃げるしかないじゃないか!!なぁ?

「………」

「なぁ、デメトリオ…彼女から物凄い無言のプレッシャーを感じるんだが!?」
「奇遇だなヤマト…俺もだぜ…」

そう…恐らくヤマトと俺の感じているプレッシャーは同じだと思うんだが…
本当に子供か疑いたくなるほどのこのプレッシャーは一体…?
俺が心の中でこう思ったときだ、目の前の女の子が不意にこっちに飛んできたんだよ!!
足を動かしていないのに、こっちに向かってくるのは…飛んできたって表現がぴったりだと思わないか?
って、こんな事を言っている場合じゃない!!

俺は即座にテーブルの右に移動したんだが…ヤマトは左に移動したんだよ!!
そして、あの子はヤマトのほうを向いたんだが…や、ヤマト…選択ミスだな…
でも…俺がヤマトが捕まったときの事を考えようと思った瞬間の事だった…

「……返して…その…」

あれっ…?ど、どうして俺の頭ががっしりと掴まれているんだ?なぜ?
ってか、彼女は俺より身長が小さいはずなのに…どうして俺の頭を……
あぁっ!?浮いているからかぁ…って、馬鹿か俺はっ!?

「くそっ!!は、離してくれっ!!なっ?」
「……それ…無理」
「はぁっ!?いやっ…そこを何とか…なっ!?なぁっ!?」
「………」

くっ、握る力が強くなった…!?
こんなゴーストの小さな女の子に両手で持ち上げられる大人って一体…
いや、そんな事はいいっ!!くそっ…や、ヤマトに助けてもらわないと…
俺はそう思うと、すぐにヤマトに助けを求めたんだ…

「ヤマトっ!!た、助けてくれっ!!」
「ひぃっ!?ち、ちょっと待ってくれよ…こ、心の準備が…」

くそっ!!どこか似ている雰囲気があると思ったが…こんなところも似てるのかよ!?
だが、俺がこう思ったと同時に、ヤマトが俺を助けに来てくれたんだよ!!
こいつ…怖がりだけど勇気は俺より…あるよな…

「デメトリオを離せっ!!てやぁぁぁっ!!」

おぉぉぉぉぉぉっ!!ヤマト、ここでかっこよくジャンプだぁぁぁっ!!
さぁ…そのまま俺の身体を掴んで俺を助けてくれ!!

「…………」

「…あれっ!?ちょ、ちょっとっ!!これはどういうことだよ!?俺、空中で停止しているんだけど!?」

な…なんだっ…?彼女が右手を挙げたと思った次の瞬間、俺の目の前でヤマトが…
あぁっ!!右に手を振られると同時に、ヤマトが物凄い速度で右に吹き飛ばされた!?
物凄い勢いでクローゼットが壊れる音が響いてくる…
これは…色々な意味で致命的だ…!

「……そんなに…怖がらないで…お兄さん…」
「ひぃっ!?」

彼女の手が俺の身体を探って、ポケットの中からあの古びたペンダントを取り出し、女の子は俺と目線を合わせつつ笑ったんだ…
やっぱり、それが捜し物だったのか…それなら、素直に渡しておけばよかったぜ…
でもまぁ、これで彼女からも開放されたんだよな?な?彼女の周りのオーラも赤から色がだんだん薄くなっているし…
探し物が無くなったら俺達が襲われる原因も無いだろ?ふぅっ…なんどもこんなことがあったら、俺は精神が持たないよ…

「………」
「あれ?もう俺はペンダントを返したから、そろそろ手を放してくれないか?」

だが、そんな事を俺が言っても、彼女はなぜか俺から手を放さないんだよ!!
なぜ…なぜだ?俺は自分の身の安全を確保したはずなのに…嫌な予感が消えてくれないだと…?
俺がそう思うと、即座に部屋の扉が小さな音を立てながら開き、彼女がその扉に向かって歩き始めたんだよ!!
それだけならいいんだが…俺の身体も謎の力で引っ張られるんだよぉっ!!

「デメトリオ?お前…なにやってんだ?」
「や、ヤマトっ!!身体が引っ張られるんだ!!助けてくれっ!!」
「なにっ!?くっ…待ってろ!!」
「………」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」

ドゴォッ!!

ま、またヤマトが壁に吹き飛ばされた!?これは…ヤマトに俺を助ける事はして欲しくないってことなのか?
それは…一体なぜだ?なぜ俺が彼女の不思議な力の影響を受けている!?
だが…俺の疑問はすぐに解決する事になったんだ…
俺が焦っていると、彼女が小さい声で俺に話しかけてきたからさ…

「……あのね?ラナ…お兄さんの事、気になって…いいよね?ね?」
「い、いや…駄目だって!!な?俺、奥さんいるし…」
「…えぇ…?嘘でしょ?」

………そ、そんなに未婚者だと思ったのかよ…?
確かに、俺はルックスが限りなく普通にちかいおっさんになりつつあるが…
こんな子供に嘘だと思われるなんて…心の奥からなぜか虚しさがこみ上げてくるんだけど?
そして…彼女から微妙にセムちゃんてきな雰囲気を感じるんだ…
いや…俺の気のせいかも知れないけどさ?微妙に…似てないか?

「……別にいいかなぁ…もう…どうせ奥さんも…帰ってこれないんだし…ね?」

そう言いながら、彼女は俺の胸のほうに手を伸ばしてきたんだ
小さい女の子を相手にしているとはとても思えない…嫌な予感がひしひしと伝わってくる…
彼女の手に触れたら…駄目な気がしたんだよ!!愛しているサリィを裏切ってしまうような…嫌な予感がしたんだ!

だが…俺がこんな事を思っていても、俺は彼女の不思議な力をどうにかする事なんて…
俺がそう思ったときだった…彼女が俺の服に触れたとたん、彼女が少し顔をしかめたんだよ!
そして次の瞬間…彼女の不思議な力がふっと消えたんだよ!!
何が起こったと思う?俺は……わからないな…

「……まさか…上着にアレを仕込んで…?」

アレ?アレってなんだ…?
俺は彼女が言ったアレが何か気になって、そっと上着のポケットを調べてみたんだが…こ、これはっ!?
そう…俺の上着のポケットには、このホテルの中で見つけた女神が彫られたチョークが入っていたんだよ!!
俺がチョークを取り出すと、次の瞬間…少女の表情が狂気じみた感じに変わったんだ
一瞬だったけど…あの表情の変化は間違いない!!
彼女は…このチョークに一瞬の恨み…そして恐怖を感じているようだな…
だったら…俺が取ることが出来る行動は1つしかないよな!!

俺はそういうと彼女…ではなく、ヤマトのほうに走っていったんだ…
俺が取る事が出来るのはこれを使った…逃げる行動だ!!
俺の考えが正しければ、このチョークで俺とヤマトの間に魔方陣…じゃないけど、円を書いたら身を守ることが出来るんじゃないかって思ったんだよ!
地面に倒れこんでいるヤマトの周りを覆えるほどの大きな円をすばやく書く俺…彼女もすばやく俺に近づいてきたんだが…俺のほうが少し早かったんだ
さぁ…どうなるんだ?頼む…なんでもいいからっ!!
何か俺達にプラスな出来事が起こってくれぇっ!!

すると、彼女はいきなり部屋の中を捜し始めると、残念そうな表情を浮かべ…ふっと消えていったんだよ!!
あの感じは…俺達を捜していたのか?ってことは…このチョークにはゴーストから俺達を見えなくする効果があるってことじゃないのか!?
こ、このチョーク…なんてすばらしいアイテムなんだ!?
そう思いチョークを見ると…チョークは真ん中からパキッと折れてしまっていたんだ…
何度も使えるほど…甘くないってことなのか?しかし…これは物凄い事実だぞ!?
この事実をナッカーサーたちに伝えるだけでも、中々だと俺は思う…ここで一度、ロビーに戻るべきか…?
俺はそう思うと、ヤマトの気がつくまで待つ事にしたのだった…


「あいたたたっ…はっ!?き、気絶してしまったか?」
「ヤマト、どこか痛い所はあるか?」
「いや…デメトリオ、彼女は?」

ヤマトがそう聞いてきたので、俺はヤマトにあの後起こったことを告げたんだ…
ヤマトは俺が説明をしているあいだ、色々な反応を見せたが…一番驚いたのはやっぱり、チョークのところだったんだよな…
やっぱり、ヤマトも驚くよなぁ…だって、俺達の命が助かったのはチョークのおかげとか…普通は思わないよな?

「で…デメトリオはこれからどうしようって考えているんだ?」
「俺か?俺は…一度、ロビーに戻ろうかなって思っているんだ…チョークの事を他のみんなに伝えておいたほうがいいと思うし」
「そうだな…じゃあ、もどるか?」

俺とヤマトはその会話をすると、チョークで書いた円から勇気を出して出たんだよ!
もしかしたら、彼女が俺たちがここを出るのを待ち構えているんじゃないかとも思ったが…違うようで、ひとまずはよかったぜ…
俺がそう思って胸をなでおろすと、部屋の真ん中にチェーンがちぎれた鍵が落ちていたんだ…
こんなの…あったか?いや…彼女の持っていたものって事か…?まぁいい…貰っておこっと
そして俺は、謎の鍵と近くにあった…透き通るほどの赤色の宝石をポーチにいれたんだ…
こんな状況じゃあ…手に入るものは手に入れておいたほうがいい…だろ?

デメトリオは【203号室の鍵】を手に入れた!
デメトリオは【赤い宝石】を手に入れた!

そして部屋から廊下に移動すると…相変わらず暗い廊下がそこにあったんだ…
そしてすぐ、俺の目の前にあった扉が音を立てて開いたんだ!
俺は思わず身構えたね…ゴーストか?ゴーストなのか?

「シュールだな…それは」
「そうか?っと、誰だ!?」

こ…この声は…ナッカーサーとドラグーンじゃないのか!?
俺は声の招待が分かると、慌てて扉を開けたんだよ!!

「動くなっ!!って…デメトリオか!?」
「ナッカーサーーっ!!良かったぜっ!!こんなところであえて!!」
「ぬわぁっ!?だ、抱きつくんじゃないっ!!気持ち悪い!!」
「そんな事言うなってっ!!暗くて怖かったんだから!!」
「だぁぁっ!!やめろヤマトっ!!」

俺達はこんな調子でロビーに戻っていったのだった…

chapter1-2(A)END
13/01/20 21:46更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
どうも!!

さて…デメトリオの捜索パートは終了しました…
これから先、デメトリオたちに何が起こるのか…それを楽しみにしていただきつつ作品を楽しんで貰えるとうれしいです!!

次回はナッカーサーたちの捜索パート…次回も彼女が登場する!?
楽しみにしていただけると幸いです…

本当に、ありがとうございましたーー!!

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