『風の行く末・・・』


そよ風で踝ほど伸びている草が靡く大草原。
地上を見渡せば赤土がむき出しの道の所々で休む人や丘陵で寝てしまっているワーシープ、果ては夫婦であろうか…男の横で幸せそうに連れ立って談笑しているラミアなどいるのでここは親魔領と窺える。

そのまま上を見ると…晴れ渡る青一色の空の海に見慣れぬ大きな黒い影。
よく目を凝らして行くと…旧世代の姿に変わっている灰色の鱗のドラゴンだった。
今回の主役の一人である。
では彼…じゃ無かった、彼女に視点を移してみましょう。


ーーーベイヴ、脳天…絡み付くようにhighっ!


「……。」
バサリ…バサリ…。

ドラゴンはただ前だけを見て…いや、視線は遥か彼方を見ている当たり何か考え事をしているみたい?
いやしかし…中々の高高度を飛んでいらっしゃる。
雲がかなり下にあるのだもの。

そんな無表情と思われる彼女だったが時折意図せずして口角が上がっているのだが…果たして彼女は自分で気付いているのだろうか?


ーーー過煩悩です。頭の中では…。


『…くっくっくっ…。』
バサリ…バサリ…。

旧世代のドラゴンがにやけているのを見ると…ぶっちゃけ気持ち悪い
そんな彼女は一体頭の中で何を思っているのか気になるのでちょっと覗かせて貰おう。

『(アイツから…アイツから告白されたっ!!…でもビビッてオレ…はぁ…帰ったらアイツとどんなプレイするかなぁ…やっぱり最初は愛撫からだよなっ!まずは尻尾で…いやいや、マニア過ぎるな。よし、オッパイでパイズリにしようっ!)』


見事なまでのムッツリ変態である。

…いままで一人身だったけどな…けどなっっ!
そんな彼女が恨み言のように小声で呟きながら雲に突っ込みバレルロールを何回転か決めて雲を突き抜ける。

すると彼女は段々人型に変わっていき、雲を抜けるコロには図鑑に載っているような人型にすっかり変わっていた。


ーーー香り立つ あの70's。妖艶且つ破天荒。


「オレにも春が来たぁぁーーっ!!!!」

第一声がそれかいっ!?
まさに雄叫び…いや魂の叫びだなぁ。

「生まれて70年…途中、魔王の影響で雌の体になって…くぅぅっ!」
翼は羽ばたかせながらも片手で目頭を押さえつつもう片方の手はたわわに実った旨の前で握り拳を作っている。
なんというか…彼女の一言一言に哀愁が漂うのは気のせいだろうか…?


ーーー音速(おと)になって…君の元(ゆめのなか)にいこうっ!


「だがそれも…っ! 待っていろよっ!! ディントン!! エッチしようぜぇぇ!!
一言だけ…

このドラゴン最低だ。

真っ赤に上気し涎が漏れる顔と、胸と甲殻の間に隙間が出来るほど立った乳首、さらには下の口から涎以上に溢れる本気汁

これをみて誰がプライドが山より高いドラゴンというだろうか?
なので皆様ご一緒に…

このドラゴン最低だ。

では煩悩まみれの彼女が彼の元へ到達するまでちょっとしたむかしばなしでもしましょう…。

………
……



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それはまだ現魔王への入れ替わりの前の時代。

ーーー手をのばせっ! 風が帰り来る…絶え間ない情熱が…

『はっ! 他愛もないなぁ…人間の勇者様ってのはこんなものか!?』
「くっ…つ、強すぎるっ!?」
ここはどこかの洞窟みたいである。
薄暗く湿り気を帯びた岩壁がテラテラとし、生暖かい風が吹き抜けるこの洞窟の最奥へ行くととても開けた明るい空間へ行き着くのだが…どうやらそこで何かしているようだ。

明るくなった部屋の天井を見ると紫色のどんよりとした雲が見えることから、ここは吹き抜けになっているみたい。

よくよく目を凝らしてみるとそれらは一人と一匹のようで、その一人の後方には死屍累々の山が…といいたいところだがよくよく見れば「うっ」「ぐぅっ」と呻いていることから誰一人として命を落としてはいないようだがそれでも重傷には違いない。

『はん! そんなんでこの【轟風のドラゴン・ディンガード】様に挑むってかぁ?…冗談きっついなぁ♪』
「くそぅ…バカにしやがってっっ!! てりゃぁぁぁ!!」
勇者、と思わしき男が荒々しい風を全身に纏い宙に留まるそのドラゴン・ディンガードへ
なけなしの気力と共に魔法で作り出した斬撃を飛ばすも所詮は人と魔物。
その差は歴然過ぎたのだ。

…シュゥゥ…

『あらら〜残念♪ というわけで…ご退場ぉ〜♪』
「へっ!? う、うわぁぁぁ!?」
台風以上の風速で吹く風の壁を貫くには至らずその攻撃はかき消されてしまったのだ。
対してディンガードは心底嬉しそうな声で本日最強の魔法を唱えると死屍累々の山々とともにその勇者を竜巻で巻き上げて竜巻共々遥か彼方へ消えてしまった。

『頑張れよ少年。また来る日を楽しみにしているぞっ! はっははー♪』
と大げさな態度をとるもそれはあながち嘘ではなく…
彼は「この戦っている時が一番自分の情熱を吐き出せるときだ!」と豪語するくらいの戦好きだった。


ーーーいっせのせでハジケるっ! 替えなんてない、答えもない。

『はい、もう一回♪』
「ちくしょうぅぅ……っ!!」
その日はまた別な勇者を竜巻で吹き飛ばし。

『おしぃ! でももう一回♪』
「いやぁぁ・・・っ!」
また違う日も単身で乗り込んで来た女勇者で遊んでサキュバスの住む里まで豪風で送ってしまったり。

『いやぁ〜楽しかった♪ また今度な♪』
「こんちくしょぉぉ…っっ!」
別な日には中々良い勝負をしてくれたものがいたがその者も例外なくどこかへ飛ばす。

『(やっぱり楽しいっ! この戦うのが一番はじけられるっ♪ なんでこんなにも楽しいんだ…なんで…うぅん…くぅ、答えが出せねぇや♪)』
そして今日もまた敗北者を自慢の風で彼方へ飛ばした後、魔界にしては珍しく夕日が差したので彼はその夕日を見つめながら自己問答に浸っていた。


ーーーロックンロールっ! アイデンティティ!

『この避けたり避けられたり…打ち合いがたまんねぇ! 一つのことに互いに全力になれるこの瞬間こそが生きがいだっ!!』
彼はそう言うと夕日に向かって大きく雄叫びを大きくあげる。
すると音圧により彼の周りの石や岩石は所により粉々に砕け散りまた水が大きく波を立てて波紋を広げては消えていった。

『…おっ? また一名…』
彼がふと視界の端に、正しくは自分がいる場所へ来るために通らなければならない山間道にちらりと物々しい装備の人物を発見する。いや、してしまうが正しいかな?


ーーーワン モア タイムっ!!!

『…(ニィィ』
不適な笑みを零して彼はその挑戦者を迎えるべくいつもの定位置につくのであった。


ただこの時、そう。丁度この時に魔王の入れ替えが行われたのさ。
まぁ彼にもその影響は大きく出たわけだけど…



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ーーーベイヴ、脳天…絡みつくように灰…。 

「…はっ!? いかんいかん…なんか急に眠気が来て寝てしまった。くっ、オレとしたことが挑戦者を待たせる事になるなんて…不覚っ!」
そう、彼の言った通り彼は振り向いて数歩あるった所で【魔王の代替わりの影響】にあってしまったのだ。

しかし彼はその変化に気付く前にさっさと移動を開始してしまう為その後に痛い目に会うんだが…今は知る由もない。

そしてほんの数歩歩いただけでその違和感が出始める。

(…なんか歩みが遅い気がする?? それに視線も低い気が…まぁいい)
本人は全く気付いていないみたいだが…声も細くてとても音域が高くなっている。

そんな些細なことと一蹴した彼はそのままいつもの広場につくとすでに先客がいたので彼は挨拶をすることにした。

「やぁよく来たな挑戦者っ! おぉ!? お前は確か何時ぞやの女勇sy…」
意気揚々と扉を開けてその来訪者をよく観察するとまさに彼が言った通り幾日か前にサキュバスの住む里へ送った女勇者がいたのだが…何故か彼を見てポカーンと口をアホ見たく広げているではないか。

そして彼女は彼が予想もしない一言を…
















「え、えっと…アナタはどちら様? もしくはここのドラゴンと何か関係した人?」













「…は?」
「…え、ま、まさか…アナタ…【ディンガード】!?」
彼は理解できなかった。
だって一度戦ったことがあるヤツから「誰?」といわれてしまったのだからそれは止まっても仕方がないがさらに彼女は彼に追い討ちをかけてしまう。















「えっ! 嘘っ!? 物凄い美人っ!? しかも胸デカッ!!」
「な、ななな、なななななななっ!? なんだってぇ!?」
勇者も勇者だが彼も彼である。

ディンのことを指差して固まる勇者を他所にグイッと首を真下に向けると…

ポヨン♪ ポヨヨン♪

よく弾む鞠が二つありその二つのせいで下が見えない。

「は、はわ…はわわわ…」
フニュン♪ モミュモミュ…ポヨン♪

そのまま手を胸に当てるとしっかりとした弾力に押し返され、胸からも手が触れた感触があった。
…つまり本物。

その胸の感触を確かめた手を今度は観察するととても大きく灰色の鱗がビッシリと詰まっているが総じてドラゴンの手ではなく寧ろヒトの手に近くなっていた。
そのまま彼は更に腹の脇に手を当てる。

スルスルスル…なんの引っかかりもないままとうとう彼は自身の中で最も重要な所にたどり着くのだが…

スカッ…スカッ…

「…な、ない…」
何がないのかは…言わずもがな、男の象徴である。
確かめる為に伸ばした手は空しくも空をきり灰色の鱗に覆われた尻尾がドスンと音を立てて地面にへたり落ちて次いで膝が折れたディンが尻餅をついた。

「えっと…追い討ちかけるみたいだけど…すごく綺麗ですよ? 髪とか、目の舌の黒子とか…」
女勇者がおずおずと近づいて自身の道具入れのポーチから鏡を取り出してそれをディンが見えるように眼前へと突き出した。
…この娘、中々エグいことをっ!?

「…これが…オレ…なのか?」
彼の瞳から光が消えてその瞳のまま鏡を見つめると…
檸檬のように黄色で縦割れの瞳孔を持つ瞳が2つと右目の下に小さな黒子。
その瞳が収まっている切れ長の釣り上がった目、高くない小鼻、小振りの桜色の唇、そこからのぞく少し鋭い八重歯。
その八重歯の先に写る髪は藍色に近い黒、とでもいうのだろうダークネイビーに染まって腰まで伸びた髪を何時の間につけていたのか何かの動物の骨のようなもので纏め上げてポニーテールのようになっている。
そして病的なまでに真っ白な肌。

「……嘘だ…嘘だ…」
「本当よ、本当。…それにあまりに綺麗過ぎるから…ジュルリッ…」
「っ!! ちょ、ちょっとまて…お前人間だったんじゃ…」
今の自分を全力で否定しようとうわ言のように呟いていると不意に女勇者に肩をがっちりとホールドされて嫌でも視線を合わせさせられてしまうが…ディンはその時初めて気付いたのだ。彼女がヒトではないことに。

「そうよ。でもアナタが送ってくれたところで散々絞られて…サキュバスになっちゃった♪…だから責任とって…」

『アナタをいただくわっ!!!』

「な、や、やめ…えっ!? ち、力が入らないっ!?」
「ふふふ。ちょっとした術もこんな簡単にかかるなんて…じゃぁ…いただきます♪
「あ、う、ぅ、……ウァー!!」
哀れ、ディンはサキュバスとなって依然とは比にならない力をつけた女勇者に初物を食われてしまったとさ。

…さっきゅんに性技で勝てると思った? 甘いわよ♪


その後あまりの悔しさにその洞窟を宝ごと放置してどこかへ飛んでいってしまったディンだったとさ。

その日から数ヶ月が経ち…ディンガードは…



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ーーー浮かぶのです。胸の中には…。

「…はぁ…空が青いなぁ…」
岩山のとある一角。
岩だけしかないその山々の中のとある空が見える小窓がついた部屋に膝を抱えて座り自分の翼でくるまっているディンの姿が…
どうやら彼…いや彼女は魔界を捨てて人里遠いこの岩だらけの山に移り住んだようだ。

「…ぅぅ…魔物怖い…人怖い…女怖い…(ガタガタガタガタ」
あの日、とんでもなく大きなトラウマを植えつけられた彼女は以前の威風堂々、勇猛果敢、戦闘狂といったイメージの正反対、ノミの心臓、対人対魔恐怖症、平和主義…
しかもそのことを思い出すと今以上に蹲ってガタガタと震えだす始末。

本当にドラゴンですか?
…なにをしてくれやがった、さっきゅん!!

「(キュ〜…)…腹減ったなぁ…」
そんな状態の彼女でもやはり腹はすくものでいつも彼女は夜な夜な人に見つからないように人里の倉庫を漁るというドラゴンにあるまじき行為をして食料の確保を行っていたのだが今日は運悪くその備蓄が切れてしまっていたのだ。

「…はぁ…人と会いませんように…」
まだ日が高い。その為彼女が活動する時間まで彼女はただ只管ブツブツと呟きながら膝を抱えて夜を待つのである。


ーーー走りだすよなメロディ。香煙焚く間のかげろう…。

やがて夜になり彼女は夜の蚊帳にまぎれては音を出来るだけ立てずに最寄の人里近くの森へ降り立つのだ。
体の変化の後も難なくつかえるが目に見えて弱くなった風の魔法で…

えっ? どうしてトラウマの日使わなかったのか?

…あの日十分に魔力を溜め込んださっきゅんに魔法を封じられた上に魔力も全部吸い出されてしまっていたのだっ!!

そして今使えるのは食料によって細々と集めたからさっ!!

…んんっ! 話を戻しましょう。

いつもどうり使える風魔法でやんわりと着地し静かに町へと歩いていく。
月も眠る深夜という表現どおり町からは物音一つしないほどの静寂であり彼女は心の中でガッツポーズを決めるとそのまま村で一番食料が備蓄されている倉庫へと足を運び鍵をこじ開けて中へと侵入し食べ物を漁り始める。

そして一頻り終わると騒がせ賃とでも言わんばかりに自分の灰色の鱗を数枚倉庫の中へ置いていくのだ。

そうして彼女はまた村の外までもどり帰路に着くため空を飛ぶのであった。

次の日の里はそりゃあ大騒ぎである。
ただし良い意味で…

「やったぁ! ドラゴンさんが家にきたぞっ!!」
「くぅぅ!? 今回は来てくれると思って奮発したんだがなぁ…」
「早速行商にうってくるぞっ!」
そう、彼女は腐ってもドラゴン。
その鱗は元々戦闘狂と言われていた彼女だけあり並みのドラゴンよりも固かった。

町の人も彼女が来たての最初の頃は大事な食料が取られて変わりにみすぼらしい灰色の鱗が数枚あるだけの状況に怒ってはいたが、とあるゴブリンの行商が来てその鱗を見た瞬間目の色を変えてそれに食いついた。

それで掲示された金額に里のものは皆吃驚する。
…だって食料に換算して贅沢に使って2年以上賄える金額なんですよ?
対して取られた食料は節制して1年持つかどうか…という量。

喜ばないほうが可笑しいよね♪

…と、大分話が反れてしまったけれど彼女へ再び目を当ててみy…おや?

「…っ、こ、こないでぇ…ひぃぃ…」
「え、えっと…ご、ごめんね? おねぇちゃん??」
何やら壁にべったりと張り付いて膝をガクガクさせているけど?
んで視線を別なほうへ向けると町から彼女が持ってきた食材が沢山入った袋の中からひょっこりと顔を出した少年が…

「え、えっと…そんなに怖がられると落ち込むんだけど…」
「(ビクッ)…ひ、ひぃぃ…」
困った、と少年が頭に手を置いたらその動作を見てビクつき始める彼女。
見ていて痛々しいほどの反応に尚のこと少年は困ってしまうのだった。

「…あ、そうだ何か作ってあげるよ。」
「…っ…ぃ、いい! 別にいらな(くぅ〜〜)…」
明らかな拒否を示す彼女だったが体は正直なのね。
「ははっ。」と少年は笑うがその中に蔑みの意味をこめることは無かった。
そして少年はそのまま彼方此方歩いて様々な場所を把握すると徐に台所へ向かう。


トントントン、グツグツグツ…

「………。」
「何か嫌いなものはある?」
「………ない。」
そうして暫くするうちに聞こえ始める包丁が俎板を叩く音と湯を沸かす音。
彼女はそんな状態でも気が気でなかったがちゃんとされた質問にはきちんと返していた。
…満更でもないようです。

そして暫しの沈黙。
でも決して重苦しいというものではなく逆に何か温かかった、とは後の彼女談。

そうこうしている内に出来た料理を少年はベッドの上で膝を抱えて翼に包まる彼女のいる部屋の台に載せていく。
…簡単に出来るといっても中々ての込んだ料理で、コンソメスープのようなものに野菜が少し浮いているようなものだが香りがとても香ばしい。

「…っ…〜っ…」
「はい、アナタの分。」
精神と体の葛藤の最中、彼女にスプーンを突っ込んだそのスープが入った皿をスッと差し出す少年にかのじょの精神は屈してしまい恐る恐る手を出してそれを受け取る。

そして少年は座ってそのスープをあまり音を立てずに飲み始めるのだが彼女のほうはまだ固まったままだった。
しかしそれも数秒。
彼女はまた恐る恐るスープを掬って口に入れる。

「(パクッ)…っ!!」
するとどうだろう? 彼女の光が無かった目に再び光が宿り先程までとは打って変わってスープーンを使わず一気に皿から直に飲み始めたではないか!

「っく…っく…ぷはぁ! お、おかわりっ!」
「…へ、あ、あぁ。ちょっとまってて!」
その驚異的なスピードに唖然としている少年にズッと皿を突き出してさらにこのスープを強請ると少年は苦笑いしながらも結局はスープ鍋が空になるまで往復させられるのだった。

「…名前はなんと言うのだ?」
「ん? 僕? 僕はディントン。…孤児さ。行く宛てがないからさできればこのまま…」
「そう…か。私はディンガード。…スープ、旨かった…ぞ…Zzz…」
そして腹が膨れたら眠くなったのだろう彼女は転寝をし始めてしまうのだが今回は膝を抱えてでなくてちゃんと足を伸ばして…でも翼には包まった状態で。
少年はその小動物的な性格な180センチもある長身の彼女に何処からか見つけてきたブランケットを羽織らせて静かに台所で後片付けをするのだった。

…その幸せそうな寝顔で見送る彼女を見て。

こうして彼と彼女の不思議な関係が始まったのだ。



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それから月日が流れていくうちに少年、ディントンは成長していくのだが彼女もまた然り。
やがて彼がすっかり主夫がいたにつくようになり、彼女も彼とのスキンシップのおかげでおかげで少しずつ対人対魔恐怖症が薄れてきたようだ。
今では彼限定だがボディタッチも出来るくらいにまで回復しているのだが如何せん他の人にはまだ慣れ慣れしくはなれないようで…。


ーーーうたに乗って、白雲(けむり)の中にいこうっ!

そんなある日彼の頼みで彼女は彼を抱えて近場の町へとやってきた。
以前ならば街の外に止まってから、だったのだが今ではそのまま街の人気が少ない路地に着地するというくらいまでに…彼のおかげだね♪

やがて彼が一人で買い物があるということで別れた彼女はふと何か懐かしい魔力を感じてそれを頼りに先程とは違う路地裏へ足を運んでみると見るからに怪しいテントがあり【ばふぉい亭】と掲げられた看板があった。

「…あ、怪しい…怪しすぎるだろこれ。」
「そんなことはないぞぃ!」
「うぁぁ!?(ベチーン!)…?? び、吃驚した…」
彼女が腕を組んで苦笑いしながらそのテントを眺めていると後ろから急に声をかけられて驚きのあまり尻尾を勢い良く振って後ろを向いてみるも不思議なことに誰もいないのだ。

「い、いたいのじゃぁぁ〜〜!!」
「ひっ!? あ、ご、ごめん?! 大丈夫かっ!?」
同じ人物(?)なのに今度は情けない…いや幼い感じの涙交じりの声が足元から聞こえたので彼女は危うくまた尻尾バチーンをすると娘だったがなんとか理性で堪えてその蹲っている角が生えた少女にむかっててを伸ばす。
しかし、少女から出た次の言葉で彼女は違う意味で驚いてしまうのだった。

「う、うぅ酷いのじゃぁ〜折角【ディンガード】が心配でやって来たのにぃ〜」
「(ピクン)…お前、何者だ?」
「わからんのか? ワシじゃワシ。…あぁ、この姿じゃ初めてだったのぉ。」
手を取って起こしたところで少女はまだ名乗ってもいない彼女の名前を口にしたことで彼女は全盛期に劣るものの殺気を出して威嚇を始める。

ただし及び腰で。

先程まで泣いていた少女も彼女からの殺気を感じて「ほぅ…」としたり顔になった。
彼女が少女の様子を再び確認すると角、獣毛に包まれた手足、あふれ出る魔力。

そしてロリ

以上の事から彼女が出した答えは…

「そんなジジ臭い喋り方しないではやく帰りなさいな。その喋り方癖ついちゃうよ?」
「はぁい♪・・・ってちがうのじゃっ!!」
ただの変身願望のある幼女と勘違いしたようだ。
ノリつっこみを見事に決めた少女が彼女に向かって次に言ったせりふは…

「ワシ…あぁ、もぅ! 前の口調ではなしてやらぁ! …オイラのことわっかんねーか? 」
「そのふざけた喋り方…ダレデシタッケ?」
「ぐぬぬ…オイラだよ! バフォメットのマッカートだよっ!!!」
少女、マッカートは歯を食いしばって顔を赤くして大声を張り上げると彼女はやっと納得いったようで…

「あぁ、マッカートか…なにぃぃ!? なんでこんなマイクロサイズにっ!?」
「うるせぇ! マイクロ言うなっ!! 好きでなったんじゃないんだぞっ!?…まぁいい、ちょっとお前に話があってきたんだよ。」
ガヤガヤ口論染みたことをしていても先に進まないので仕方なく先にマッカートが折れる形で進めることにした。

「話ってなんだよ? 手短に頼むな?」
「わかった。【番がいたらセックスしろ。】…ほら短い。」
「なるほど…はぁぁぁ?! どういうことだよっ!?」
そりゃあ叫ぶだろう。行き成りセックスしろなんていわれたら…
彼女も例外ではなく全盛期に劣らない速度で移動するとマッカートの胸倉(正しくは紐ビキニの鎖骨部分)を掴んで前後にブンブン揺するもんだから当の本人はたまったものではなかった。

「や、やめ、せ、せつめい、す、る…おっぶ(ry」
「うわぁぁ!?」



※※※※※※暫くお待ちください。※※※※※※



「…その…色々とゴメン。」
「…次は容赦なく攻撃魔法使うからな? いいよな?」
「で、で〜…なんでセックス?」
マッカートの吐瀉物を処理した後そのまま隠れるようにして彼女らはマッカートのテントに駆け込むとマッカートは着替えをして何かのアイテムを片手に再びテント中ほどの彼女が鎮座している場所の反対側に座り込んでそのもってきたアイテムをコツンと床に置く。

「話そらしたな?…まぁいい。お前、随分魔力が少ないじゃないか。でもお前からはすっかり雄の臭いが染み付いているんだが…どういうことだ?」
「うっ…な、成り行きで同棲しているんだよ…」
「にしてはやけに濃いが…同衾はまだか?」
ズバズバと歯に衣着せぬ言い方の元オスのマッカートの怒涛の質問に顔を茹蛸の様にしてプルプルと震えつつ質問に答えていく彼女。

そんな彼女にマッカートが何処からか取り出したティーカップを置くとふわりと香るダージリンの優しい香り…。

「あ、ダージリン…」
「お前が一番好きなヤツだろ? 取っておいて良かったよ。あ、カモミールもあるぜ?」
「へ、い、いやいい…」
実は彼女達、元の魔物の頃から茶が好きだ。
彼女はその中でもとりわけダージリンが好きで時折マッカートの家に集り(たかり)に行っては根こそぎ茶葉を奪っていくほどでマッカートはその度に「この泥棒ドラゴンがっ!!」と叫んでいたのはいい思い出だ。
…ちなみにマッカートが好きなのはオレンジペコとローズヒップで茶請けがこれまた人間臭いプレーンクッキーである。
その好みは魔物娘になった今でも変わらないようでマッカートの持つカップからはローズヒップ特有の酸味の強い芳醇なバラの香りが漂っていた。

「まぁとりあえず飲め。」
「…あ、あぁ。」
折角の好意を無に返すことは無いあたり彼女、元々律儀なのかも?

「(ニヤッ)…んで? まだ番と繋がってないんだ? というよりもお前はまだ元の竜の状態になれないのか?」
「っ! …なれるのか?!」
「っぁ、あぁ…知らなかったのか!?」
紅茶を優雅に飲んでいる最中にマッカートからの気になる一言に耳聡く反応した彼女は飲んでいた紅茶を一気に煽りマッカートの手をガッシリと掴んで目をコレでもかと見開いて見つめるとマッカートもその反応が想像以上だったのか額に汗を垂らして少し視線が泳いでしまう。

そんな彼女は未だに旧世代のドラゴンにはなれない。…まぁ単なる魔力不足だが。

「だ、だからさっきから聞いてるんだよ。魔力無いけど?って。」
「うっ…だ、だって…怖ぇんだよ。」
「は? 何が?」
また魔力の話になるとバツが悪いといった感じで目線をそらす彼女だったがついに本音を漏らした。
その本音を聞いたマッカートは未だに手を握られているままだがそんな顔を赤くして恥らうまごうことなき乙女の彼女に目を点にして話の続きを待つ。

「だってよ…いままで姉と弟みたいな関係だったんだぜ? 今もだが…本能では分かってるんだ。」
「……。」
「でも不用意にてを出して…ディントンに嫌われたら…俺は誰も彼もがが恐怖なのに、唯一の支えのディントンを失ったら…っっ!」
先程まで真っ赤だった顔はもう何処にも無く、代わりに彼女の顔を埋めるのは眉尻を下げて涙目交じりの悲しい表情。
マッカートはそれを察してか無言で且つ目を閉じて彼女の話、というより負の感情の悲鳴をただただ黙って聞いている。




が。




「…は、はれ? なんか目がまわりゅ?!」
「はぁ〜、やっとまわったか…」
彼女の様子がおかしくなり始めたのはその僕炉の言葉を言い終えてすぐだった。
急に肌が赤みを増していきまた彼女は茹蛸のように赤くなるのだが先程と違って今度はレモンイエローの瞳に涙が溢れそうなくらい潤ませていきも少し荒くなる。

まるで…。

「この薬、意外と効き目が遅効性なんだな…」
「ハァハァハァ…」
とマッカートが彼女の前にラベルを見えないように置いてあった5センチ位の小瓶を自分の目線に合わせるとそのラベルには『ドキッ! 雌トカゲにならせて♪(強制発情薬10倍希釈用)』と書かれていた。
どうやら紅茶に混ぜて使っていたらしい。
…なんと恐ろしいっ!?

「んじゃ、まぁオイラから手助けはこんぐらいしかないから後は頑張って励め♪ あ、もし仕事が欲しかったらこの街の町長に話を通せよ。すぐ見つかるから♪」
「ハァハァ…ディントン…ほしい…欲しいっ!」
マッカートの言葉は果たしてどれほど聞いていたのだろうか?
かのじょはそのままテントを壊す勢いで飛び出すとそのまま低空飛行で彼の元へと飛んでいってしまったのだった。

「…さぁて、残りの政務でもやりますか。」
そんな彼女を壊れた入り口のテントの中から見届けたマッカートは肩をグルグルと回しつつテントやその他もろもろを片付けてそのまま市長官邸へ足を向けて歩き出すのであった。


ーーー本当ならば行けるのさ? どこまでも…

「ハァハァ・・・っ! いたっ!」
彼女の嗅覚は今、本来の姿並に敏感になっているので例え一万人の群集に紛れようが彼を探し出すことは容易である。
現に丁度彼女の真正面に麻で出来た買い物袋を担いでいる彼を見つけたのだから。

「ん? ディンガードどうしt」
彼は最後まで言葉を発することが出来なかった。
何故なら突っ込んできた勢いそのままに彼にタックルをかました挙句彼女は彼を抱きとめてそのまま空へと舞い上がってしまったのだ。
そのあまりの速度に彼は一瞬意識を失いそうになるものの何とか堪えて荷物の無事を確かめ彼女へと視線を移す。

「ねぇどうしt…ん?」
「ハァハァハァ…」
と、何やら甘ったるい香りが彼を刺激し始める。
そして彼がにおいに気を向けていると何時の間にやら自宅へと到着してしまっていた。
そのまま彼女は彼の持っている買い物袋を彼を押さえていない空いた左手で剥ぎ取って適当な場所へ投げ落とすと彼を下ろす事無く寝室へと走り出す。
そしてまるで荷物のように彼を彼女はベッドへ放り投げるとすぐさま上から覆いかぶさるようにして彼をベッドへと磔にしてしまう。

その流れるような動作にあっけらかんとなる彼だったがすぐそこに迫る飢えた竜がいることを思い出して目の前に視線を向ける…

「ハムッ! チュルッ…チュ、チュルルッ…レロッ…」
「っ!?」
間もなく彼女の口によって彼は発言権を奪われてしまった。
そのまま幾度と無くむしゃぶりつかれる彼は次第に放蕩の海に溺れていき、そこへ行き着いたものが辿る道はひとつだけ。

彼女と彼は理性の箍が外れたただの一組のつがいのように愛し合い、愛されあうのだった。





…チュン…チュンチュン……。





そして夜が明け、いつもの習慣で早起きした彼はまだ夢に片足を突っ込んでいる状態だったが隣で甲殻と皮膜をとり一糸纏わぬ姿になっている彼女をみて一気に覚醒した。
さらに昨日の激しい交わりを思い出したのか体温も一気に跳ね上がる。

しかし…。

「ぅうん…好きだぜ…ディントン…Zzz…」
「…。」
安らかな、そして幸せそうな笑みを零す彼女を見て自然と彼も笑顔になりはだけていたシーツをそっと彼女へと掛け直した。

その時、この愛しいという感情を抱いた彼女に対して、眠っている彼女に対して彼はそよ風のように言葉を漏らした…。

「…そっか、今まで何処にも行かなかったのはやっぱり君が好きだったからなんだろうなぁ…ふふっ。」
その独白とともに彼はベッドの縁に座りなおして彼女のその艶やかな髪に手櫛を施したのだった。

ーーーウソならば…果てるだけのこと。

「ん…んぅぅ…ん? ディントン?」
「ん? あぁ、起きちゃった?」
どれくらいの時間が経っただろう?
彼は彼女の幸せそうな寝顔を釣られて笑顔で覗き込んでいたら彼女が身じろぎと呻き声をあげ始めてその美しい瞳を徐々に開かせていくと彼と目がピタリと合った。

「…ディンガード? 話があるんだ。」
「ぅぇ? 何? …ふぁ〜っ…」
すると彼女が覚醒したと悟った彼は徐にベッドから立ち上がり八重歯をチラつかせて大あくびをする彼女の前に向き合うと…

『僕、ディントンはアナタのことが好きです。順序があべこべになってしまいましたが、ここで誓います。どうか僕のお嫁さんになってください。』

「…。」
一瞬何を言われたのかさっぱりだった彼女が口を開けたまま止まっているが徐々に睡魔に襲われていた脳が活動を始めると彼女の顔が一気に赤くなってしまった。

「な、なな、なななな!? う、嘘…じょ、冗談だよ…な、なぁ?!」
「いいや、僕は本気だよ。嘘だったらこんなに真面目にならないよ?」
「へ、あ、う…ぅああぅあぁううぅ?!!?」
そして混乱。
上体だけ起こしていた彼女はシーツを被るようにして顔の前で上げ下げを繰り返し翼や尻尾は五月蝿いくらいにバタバタと動いてその混乱の度合いを彼に如突に伝えていた。

「あぅ、ぅう…うにゃぁぁぁぁぁ!!!」
「えっ? ちょっと、ディンガードぉぉぉ…!?」
ドガァン!
そして彼女は混乱極まって目を回し始めて、挙句の果てには何を思ったか彼の横を弾丸のように走りぬけその先にあった質素でも頑丈なドアを破壊して大空へと飛び立ってしまったのだ。

だが彼女にその時変化が。
体が光に包まれたかと思うと…なんと旧世代のドラゴンの姿になったのだ。
…昨日の激しいまぐわいでどうやら最低限の制覇もらったようですね。

それでも彼女は変化に気付かぬまま飛び去ってしまい、彼女自身が気づいたのは巣をたってから一時間後のことだったそうな。



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そして冒頭になるわけだね。


ーーー走り出すのはメロディ。香煙焚く間のかげろう…。

「ディントン…ディントン♪」
息を荒げて飛ぶ彼女の後を航跡雲が沈みかけの太陽に反射して淡いオレンジ色に輝く幻想的な風景を描くのだが…彼女のせいで台無しである。

その発情しきった雌ドラゴンはとうとう自分の巣の近くへと帰ってくると上空から愛しの彼の様子を窺う。

ーーー音速(おと)になって…君の元(ゆめのなか)にいこうっっ!

「…くふふ…突撃っ!」
どうやら彼は彼女が破壊してしまったドアを直しているようで彼女から見て後ろを向いていた。
それを確認した彼女は滑空速度そのままで彼めがけてタックルを敢行し、彼はその不意の攻撃に為すすべなく彼女共々ゴロゴロと地獄車の如く錐揉みしながら転がって…


ドン!
「あいたっ!? …ってここは?」
「ハァハァ…すぅー…はぁー…ディントン。良く聞けっ!」
やがてその回転地獄が止まったかと思うとそこは朝方彼が告白を行ったベッドルームだった。
そして彼女は彼からマウントポジションをとって両手を拘束し紅潮し瞳を潤ませた瞳で彼の瞳を覗きこみながら彼女は叫ぶようにして彼に麻の【オカエシ】をする。


『好きだ! 好きだ好きだ好きだ! 好きすぎて雌トカゲになっちまうくらいにディントンが大好きだっ! こんなオレでいいか? 気弱でもいいのか? …お前がいないと壊れちまうくらいもろい心だが、それでもいいのか?』


彼女の情熱がたっぷりと詰まったアツアツの告白に彼は最初何が起こったかわからず呆けていたが次第に笑顔になると…

「もちろんだよ。心が折れそうなときはずっと支えてあげる。ずっと傍にいてあげる!」
「っ!…う、嬉しい…ぜ…っっ!」
と返事をする。
感極まった彼女が顔を崩して嬉しそうに泣いているのを見て彼女の涙を掬ってあげようと手を伸ば…せなかった。

「…ね、ねぇディンガード? もうそろそろ退いてもらえないかn」
「もう…我慢できないっ! 」
「えぇっ!? ちょ、ちょっとディンガーd…アッー」
組み伏せられたまま彼は彼女によって美味しくいただかれましたとさ♪


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その繋がりの夜以降、彼女は順調に魔力を蓄えていき半年も経つ頃にはもう過去の自分に匹敵するくらい魔力が溜まったそんなある日のこと。

ーーー手をのばせっ! 風が帰り来る…絶え間ない情熱が…

彼ら夫婦はなんとかやりくりしていた貯蓄が底をつきかけたので…

え、今まで尽きなかったのにどうして今頃?
…そんなもの繋がりすぎて生産が0だったからにきまっているっ!

んんっ!話がそれました。それで、だ!!
仕事を探そうと話した所、彼女が「ダチに当があるからちょっと聞いてくる。」と家を飛び出してしまったので仕方ないから創作料理のレシピメモを作って待っていると扉を風が強く叩き始めたので彼はその慣れた音を聞き、すぐさま扉の向こうで待っている者の為にそそくさと扉を開け放つ。

「ただいまぁぁ♪」
「おっと!? おかえり。」
そして扉を開けた瞬間のこと。
勢い良く風より速く入ってきて彼にギュ〜ッと抱きつくその姿、間違いようも無く彼女であった。
終始ご機嫌な彼女は彼に抱きつき引きづられるまま彼の匂いを堪能し、リビングに着くと別れ惜しんでそれぞれの席についた。

「それで、どうだった?」
「それが聞いてくれよ! その相談したら即効OKだったんだよ!!」
「そっか…それは良かった♪」
そのまま彼女はその伝手を辿ったら即OKを貰った旨を翼を小刻みに揺らし、さも嬉しいといった表情で彼へと伝えると彼も釣られて笑顔になる。


ーーーいっせのせでハジケるっ! 替えなんてない、答えもない。

「でもよソイツは自分の治めている町に引っ越してくるのが条件だって言うんだぜ?」
「そっか…ディンガードはどうしたい?」
「オレ? …んー、別にこの家に未練は無いからなぁ…引っ越すか?」
軽く唸って出した答えは夫婦揃ってとてもあっさりしていてその言葉どおり彼らはすぐに引越しの支度を済ませる。
まぁ、元々あまり物が無いのですぐに終わりましたけど。

「んじゃ…っっ!!」
…メキッ…メキメキッ!
各自支度を持って玄関に当たる扉の外へ着くと彼女が肩を二、三回鳴らしフッ!、と気合を入れると彼女のシルエットがみるみる膨らんでしきものの数秒で旧世代のドラゴンへと変貌を遂げる。

「おぉ、何時見ても迫力あるな…。」
『おだててもディントンへの愛情しか出ないぞ? さぁ乗った乗った♪』
おだてる彼を背に乗せ、荷物をしっかりと両手で抱えてはじけるようにして飛び上がった夫婦は一路ディンガードの親友でバフォメットのマッカートが治める街、【バーバリアンテ】に向かうのであった。

道中、彼を気遣う彼女は本来の航行速度の5割落ちと言うゆっくりとした速度で街へと向かうがその途中も彼との会話を楽しみながら飛んでいく。

「…ねぇ、ディンガード?」
『ん? なんだ、ディントン?』
そんな中彼は彼女の首にしっかりと抱きついたまま心なしか上機嫌の彼女へと問いかける。

「ん…呼んだだけ。」
『な、おいおい…でも許す♪』
「『ふふふっ♪』」
そんな他愛も無い、でも決して替えが聞くことは無い愛しい者との時間を過ごす。

果たして彼らは何時までその熱愛振りを発揮できるのだろうか? …こたえなんて無い。


ーーー未完成の芽。あまねく、どうしょうもない情熱が…

『ディントン。』
「ん?」
『こんなときに言うのもアレなんだが…』
今度は先程と違って彼女の声から真剣みを含ませた声が出たことで彼は少しの緊張感を持って彼女の続きを聞く。

『実は…来てないんだよ。』
「…は?」
『いや、だから…生理が先月から来てないんだよっ。』
彼女の主語が抜けた会話に彼は出来なかったようで今度は彼女が主語を入れて再び彼にとても喜ばしい報告を気恥ずかしそうに、でもほくそ笑むような声色で伝える。

「え、えっとつまり?」
『もぅ、鈍いなぁ…おめでとう、パパ♪』
「…そっか! ディンガードありがとうっ♪」
一瞬思考が追いつかなかった彼だったが彼女の弾むような声にやっとのこと彼女が身ごもったことを理解すると彼は自分のこと以上に喜んだ表情をして彼女に一層強く抱きつき心の底から礼を言うと『どういたしまして♪』とふわりと風に乗せて愛しき彼の耳まで彼女は返礼の言葉を返した。

街へつく数秒前である。


ーーーいっせのせでハジケるっ! 替えはないっ!! 答えもないっ!!!

『ほい、到着。』
「よっと…ありがとう。」
「うわっと!? …ふふ、何度でも言うよ。どういたしまして♪」
街の傍の草原について彼女から降りた彼はすぐ後ろで変体を終えたばかりの彼女に飛びつきいつもより力強く抱きついてさらに彼女へ礼を言う。

「やっぱり君でよかったよ…」
「…よ、よせやぃ。でも…うれしい♪」
さらに彼女も抱き返して尚のこと密着する二人。

「僕は死ぬまで君を愛するよ!」
「…いつ死ぬんだ?」
「えっ、そ、それは分からないよ…」
生涯の愛を誓った彼だったが彼女のジト目を含んだ視線にちょっとくじけるという場面もあったが結局彼らは何の障害も無く街の中にあるマッカートが用意した新居に移ることになった。


ーーーロックンロールっ! アイデンティティ!

その新居にて荷解きが終わりベッドに二人で横たわっていると彼女が天井に視線を向けたまま彼に手を合わせ握りながらこういった。

「なぁ、ディントン? オレ今幸せだぜ?」
「…僕もだけど…」
「昔じゃ今の生活なんて考えらんなかったよ。昔はただ戦って、互いに全力を出してぶつかり合って日がな一日をすごすのが日常であり生きがいだった…」
彼女はそのまま視線を瞼の裏に移しまるで昔を懐かしむような表情になって一拍。




「でも今は全然違う。雌になってからオレは気が滅法弱くなっちまったけどそんなオレを支えてくれるディントンやマッカート、それにこの街の商人共や酒場のおかみさん…皆皆支えあって生きている今この瞬間が大好きだ。暖かくて、居心地がいいこの空気が大好きさ。…この空気を、みんなを、そしてディントンを守る為ならばまた俺は【轟風】になってみんなを守るっ! 今のオレにとってそれが生きがいだよ。」




「…そっか。」
ディンガードは一拍置いた後目を静かに開け今の自分にとっての宝物は今このとき同じ場所にいる皆と宣言をすると彼は彼女と同じように天井をみたままだけど、とても穏やかに微笑んで彼女の手をより強く握り返す。

「あと…」
「ん?」
「ディントンの子供がもっと欲しい♪」
その言葉の後に顔を少し赤らめて笑顔で凭れ掛かってくるディンガードに…

「…はは、お手柔らかに?」
「無理だね♪」
強い否定の言葉を投げかけた彼女は彼の上に転がって跨りそのまま強引に唇を奪い、二人の影はそのままベッドの上で一つになったのだった。

ーーーライド オン タイムっ!!!



…今日も風は穏やかだ。



【完】

こんなドラゴンさんがいたら全力で守ってあげたいっ!!!

どうも、皆さん。
さてこのベースとなった歌なんですが…『Jackson vibe』の『風』という曲です。…きいたこと無いかも知れませんね…

かく言う自分も友達がカラオケで謳っているのを聞いて気に入ったクチですがwww

ただ今回SSを書くにあたり趣旨に沿わない歌詞は一部省略させていただきましたが原曲は中々にノリの良いロックンロールですんでBGMにいかがでしょうか?

さてさて、今回のテーマ…としまして「魔物娘化したら弱くなってしまった場合」を考えて作ってみました。

いかがでしょうか?(´・ω・`)
感想お待ちしています。

12/01/07 01:26 jackry

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