連載小説
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エキドナ
ええ〜っと、こっちは今日のお客さんの資料で、こっちが丘に住んでるオーク達の情報で・・・ここだな

よっこいしょっ!っと


”閉店後、店主は店の掃除と資料の整理をするんだ
こうして店の掃除をくまなくしているのを見ると、不思議とまともな店の主に見えてくるから困る”


コンコン、コンコン

ん?
もう今日は閉店しましたよ。また明日の朝、お越しください

・・・・・


”こんな時間に誰が何の用で来たんだ?
まぁ、明日の朝にでも来るだr・・・!?”


カチャ・・・ギィィィィ、バタン

あれ?鍵掛ってませんでした?

そうですよね、掛ってましたよね。え?じゃあどうやって?


”フードを深くかぶってて、良く顔が見えない
まずフードを取り―の、ロングヘアーが緑ーの、その先っぽに・・・蛇、だと!?”


あぁ貴方、エキドナですね
魔族とは言え、勝手に鍵を開けるのはマナー違反ですよ


”なんだ、エキドナか。なら仕方無い”


こんな時間にどうしました?まさかエキドナ程の力の持ち主が男を求めて夜這い、なんて事は無いでしょう?


”うわぁ・・・
肝が据わってるのか、それとも馬鹿なのか
よくもまぁ、上位魔族相手に挑発するような言葉を言うもんだ”


ってことは僕のやってることは既に調査済みですよね?
では、明日の早朝にご用件をお伺いしたいのですが

明日の早朝でも良いが、一晩夜伽の相手をしろって?
すみませんでした。僕が悪かったです。土下座するんで今ここで話を聞かさせてください


”エキドナの相手なんて、並のインキュバスですら務まらないのに、このへたれな人間が無事で済むわけ無いからな
しかしこの店主、魔物相手のこんな仕事をしているくせにインキュバスでないどころか、童貞なのが信じられない”


最近貴方のダンジョンに貴方好みの活きの良い男が来ない、ですか?
ではまず、貴方好みのタイプを教えてください

最後の最後まで抗おうとするタイプの人間ですね
抗う人間を力で屈服させて、それでも抗おうとする人間をやさしく包んで自分だけの男にしたい、と

それでも両想いになるのを望むのは高望過ぎかって?
そんなこと無いです。貴方にも、貴方に合った最高の伴侶を望む権利があります。それは誰だって、神だって否定することは許されません!


”お!この店主、いつになく良い事いうねぇ”


実際、貴方のような魔族の妻を望む冒険家は数多くいますからね
アメと鞭とでも言いますか、そういったギャップに人間の男って弱いんです

それに何より、貴方はその男性を愛することができるんでしょう?ならばその男性も全力で貴方の愛を感じてくれます

そうです。もっと自分に自信を持ってください

人間と魔族の垣根が越えられなくて悩んでる方々に、その垣根が低くて簡単に跨げるってことを教えるのが僕の仕事ですから

・・・・

あ、すみません
最後に貴方がいるダンジョンを教えてください

貴方のダンジョンは・・・
クナセドラ大空洞・・・!!


”クナセドラ大空洞とは・・・一言で言うなら、かなりヤバい所だ
魔物が全般的に強すぎる上に、そこに生息する魔族達は突然変異種や新種が多い。どこかにエキドナがいるのではと噂されているが・・・
ま さ か ・・・・”


まさか、貴方が・・・ボス・・・?
(いや、落ちつけ。相手はエキドナである以上に、客なんだ
魔族であると同時に、いつ訪れる夫を待ち望む乙女だ)

それでは、近いうちにエキドナに会いたいという冒険者に声をかけて見ます


”でも、クナセドラ大空洞となると、大半の冒険者はほかの魔物にお持ち帰りされるよなぁ・・・”


え!?
いっそ僕でも良いって!?
僕となら上手くいきそうな気がするって!?

い、いろいろと近いです
む、胸とか当たってますよ
尻尾を巻きつけ始めないでくださぃ・・・


”ウハッw店主オワタw
じゃあ店主、短い間でしたが楽しかったです
それでは、お幸せに〜”


・・・すみません!!!
貴方の誘いは非常にうれしいのですが、断らせていただきます


”ひょ?”


ですが、貴方と貴方に会いたい男性と必ず出会わせて見せます
それはこの仕事をしている僕の誇りに賭けて、誓って見せます!

ご理解いただき、ありがとうございます

これで情報は揃いました
本日はご利用頂き、ありがとうございました


”エキドナもすんなり手を引いたな
無理やり店主を虜にして、連れ去ることも出来ただろうに
まぁ、そんなこともしないだろうがな
魔力と体で店主を虜にしても、強要させた愛であって、心からの愛ではない
それくらい、魔族でも分かるさ”


(い、行ったか・・・)

ガタンッ!


”店主、大丈夫か!?”


・・・・はぁ、はぁ・・・・

ホントは凄く怖かった!
襲われるんじゃないかと思った
そうしたらもうどうしようもないじゃないか!
僕は戦うことも出来ないし、身を守る術も知らない
それでも、僕はこの仕事を続けるよ
そう、決めたから・・・


それから数日後、クナセドラ大空洞に一人の冒険者がたどり着く
10/06/03 00:15更新 / poke
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■作者メッセージ
”流石に今日の依頼主はヤバかったみたいだな
さっきの店主の独白も本音だろうに”

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