読切小説
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初詣の願い
 人里離れた山の中、寂れて朽ちかけた神社の周りに、柏手を打つ音が響く。
「どうか今年は嫁さんが出来ますように。そんでいずれは、子宝にうんと恵まれますように」
 青年は口の中で小さくつぶやき、両手を合わせて頭を垂れる。
 祈ったところで誰も聞いてなどいないだろうと、溜息を吐きつつ青年が顔を上げると、
「あらぁ、久しぶりに賽銭の音がしたかと思えば、何年かぶりの参拝者じゃないのぉ」
 いつからそこにいたのか、朱や金糸をあしらった豪奢な錦を纏った美しい女が賽銭箱に座っていた。
 青年はあんぐり口を開けたまま、驚きの余り言葉も出ない。そんな彼のことなど知ったことかと、女は上機嫌でおしゃべりを続ける。
「わざわざこんな人気のない社まで神頼みに来るなんて、可愛いじゃない。人間達からはとっくに忘れられていると思っていたけど、長く生きると意外な事もあるものね」
 腰程にまで伸びるのは、人ならざる存在であることを示す神々しき黄金色の髪。頭のてっぺんには、人外の証である獣の、狐の耳が生えている。
 目元や口元に紅の引かれた艶やかな顔立ち。着物は胸元や裾がはだけて白い肌が見え隠れして、社に祭られる神と言うよりは舞を捧げる踊り子のようでもあった。
 その背に陽光を金色に照り返す尻尾を揺らめかせ、手に持つ杯の中身を呷りながら、機嫌良さそうに笑って青年に顔を寄せる。
「あんたの願い、かなえてあげよっか? お嫁さんが欲しいんでしょ。何なら、あたしのお婿さんにしてあげよっかぁ」
 酒気が混じったような、甘く香る吐息を吹き付けられ、青年はぼぅっとしながらも慌てて両手を振って後ずさる。
「と、とんでもねぇ。稲荷様の連れ合いなんて、おらみてぇなみっともねぇ田舎もんにはつとまらねぇよぉ」
 そんな答えを聞いたとたん、狐の顔が不機嫌そうなそれへと一変する。
「そうね、あんたみたいなのはこっちから願い下げよ。一生独り身で童貞で過ごすがいいわ」
「お、怒らねぇで下せぇ。おら、ほんとになんも取り柄もねぐって、要領もわるぐって、村からもおんだされちまって」
 狐は溜息を吐いて、杯をひらひらとふって見せる。
「あたしが怒ってるのはそこじゃないのよねぇ。別に顔や体型なんて気にしないわ。あんた真面目で朴訥そうだし、あたし好みの"堕としがいがある"雄っぽいのにさぁ、よりによってあたしと稲荷を間違えるんだもん。ちょっと許せないわよねぇ」
「お、お狐様じゃないんけ?」
「同じ狐でも種族が違うのよ、しゅ、ぞ、く、が。
 あたしは妖狐。愛しい人には、思いっきり真っ直ぐに嘘偽り無く気持ちをぶつける裏表の無い獣なわけよ。まぁ、たまに手段を選ばないときもあるけど、それは置いといて。
 あんなお高くとまったような、清楚ぶっててその実ど淫乱なむっつり助平と一緒にしないで欲しいのよ。あいつらだって卑猥な事しか考えてないのにさぁ。いっつもあたしらのほうが悪者扱いされちゃってさぁ」
「よ、妖狐様? は、妖怪なんけぇ? でも、なんで妖怪が神社にいるんけぇ?」
「知らないわよ」
 狐は鼻を鳴らしてぷいっと顔をそらす。
「ちょっと姿を見せたら、昔の人間達が勝手に社なんて建てちゃって、お供え物なんかもくれるもんだからさ、あたしもいい気になって豊穣とか安産多産とか加護してあげてたの。ただそれだけよ」
「なんだ、やっぱいい神様でねーか」
 そらした顔が赤らんだのは、酒のせいなのか否か。
「そ、そんなんじゃないわよぅ。それに、気づいたら人間達いなくなっちゃってたし。本来あたしってそう言うの本職じゃないっつーかね、あんま得意でもなかったのよ。
 だから人間達はみんな、竜とか天狗とか、……あとあいつみたいな稲荷とか、もっと御利益がありそうな奴らのところに移ってっちゃってさ。
 まぁ、稲育てるよりご飯食べる方が好きだし、生ませるよりヤりたい生みたい派だから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど……。
 私が神様のまねごとなんてしている間に、同族達もみんな連れ合いを見つけて幸せしちゃってるし。
 って、そんなことどうでもいいのよ。大事なのはあんたがあたしを、よりにもよってあの稲荷と間違えたって事よ。
 さて、どうしてくれようかしらねぇ」
 その身体からただならぬ妖気が立ち上る。爛々と輝き出した双眸と目が合い、青年は震え上がって這いつくばるように地面に頭を擦りつける。
「も、申し訳ながったですぅ。悪気はながったんですぅ。こ、このとおりですから、どうか、どうかゆるしてくだせえ」
 妖狐が立ち上がり、歩み寄ってくる気配を感じて、青年は縮み上がる。
 しかし覚悟していたような恐ろしいことは何も起こらず、頭に乗せられた手のひらも、少し乱暴に頭をかき回すだけだった。
「ふぇ」
「ま、あんたが大っ分久しぶりにお賽銭をくれて、落ちぶれたあたしなんかを頼ってくれたのは事実だしね。あたし自身はあげないけど、お嫁さんくらいならなんとかしてあげるわよ」
 恐る恐る顔を上げる青年を、意地悪そうに笑いながら妖狐が見下ろす。
「それにしても残念ね。私のお婿さんになったら、これから一生、一年中四六時中気持ちよく幸せに暮らせたのに。私は稲荷なんかと違って回りくどいことせずに率直に旦那様を愛しちゃうし、朝だろうが昼だろうが夜だろうが何でもしてあげちゃうし、一国の支配者になるくらいの"力"も授けちゃったり出来たのにねぇ」
「お、おらは別に、ただそばにいてくれる嫁さんさえいてくれりゃあそれだけで……。それに、妖狐様みたいな別嬪さんが近くにいたら、緊張して何も出来なくなっちまいそうだしよぉ」
 妖狐はふっと小さく笑い、青年に手を差し伸べた。
「欲が無いというか、意気地が無いというか。まぁ、身の程をわきまえているというのは美徳ではあるわね。いいでしょう。普通だったらお嫁さん一人のところを、特別に二人授けてあげるわ」
 その手を掴んで立ち上がりながら、青年は目を丸くする。
「へぁ? 二人?」
 妖狐の尻尾のうち、その二本から陽炎が揺らめきはじめる。そして妖狐が指を鳴らすと、揺らめいていた尻尾が炎を帯びて燃え上がる。
 白い炎と赤い炎。二つの炎は尻尾を離れて、獣の姿へと形を変えながら神社の周りをさまよいはじめる。跳び回り、駆け巡り、そして最後に青年の身体に纏わり付く。
「お、おお許しくだせぇ」
「ふふ、よく見なさい。その子達が、あなたの"お嫁さん"よ」
 白と赤の炎が、獣の形から人の形へと変わっていた。人間の女性、年の頃十余り程の若い娘の姿へと。
 青年は驚き戸惑いつつも、妖狐に似た幼い顔立ちの娘達に右から左から微笑みかけられると、これも男の性なのかにんまりと表情を緩ませてしまう。
「か、かわえぇ」
 狐の耳と尻尾を残したままの、少女の形をした炎が左右から青年に抱きつく。二匹の身体をなしているのは炎であるはずだったが、しかしその熱で身を焦がされたり、着物が燃え上がることは無かった。
 青年は人肌のぬくさに包まれ、ぽうっと気持ちが良くなってくる。
「だんなさまぁ」
「おとうさんっ」
「お、おらのことか? お、お狐さまぁ、この子達はいってぇ」
「私の妖力で生み出した、可愛い狐火ちゃん達よ。せっかくだから白と赤にしてみたの。きっと縁起がいいわよ。大事にしてあげてね」
 妖狐は手を振り、社の扉を開ける。その向こうに見えたのは朽ちた木造建築では無く、桜が咲き乱れる桃源郷のような世界、様々な神や妖怪達が飲めや歌えやの大騒ぎをしている、大宴会のまっただ中だった。
「じゃ、あたしは新年会に戻るから」
「ちょ、ちょっと待ってくんろ」
 青年は我に返り、慌てて妖狐の後を追うが、その指先が触れるか触れまいかと言うところで扉は閉まってしまう。
 急いで扉を開けるが、その向こうにはすでに神域の様子は無かった。古ぼけた狐の木像が寂しげに鎮座しているだけだった。


「おかしな事になっちまったなぁ。まさか嫁さんを願ったら、その場でもらえるなんて思ってもみなかったなぁ。しかも二人もなんてなぁ」
 二匹の狐火達に左右から腕を組まれながら、青年はえっちらおっちら家路をたどっていた。
 困惑する青年に対して、狐火達は終始楽しそうな様子だった。青年の匂いを嗅いでみたり、身体を擦りつけてみたり、狐火同士で尻尾を絡ませてみたりしては、声も立てずに笑っていた。
「どうすりゃいいんだろうなぁ」
 青年は、いっその事この妖怪達をおいて逃げ出してしまおうかとも考える。
 けれども自分がいなくなったら、自分の嫁として生み出されたこの子達はどうなってしまうのかと、寂しい思いをするのではないかと考えると、それも出来なかった。それに、どうやら空も飛べそうな彼女たちから逃げ切れるような気もしなかった。
「まぁ……。もう少し様子を見るベ」
 凍える程に寒かった行きの雪道も、狐火達に挟まれて戻る帰り道は日向ぼっこをしているように温かい。
 とりあえず今はその温もりを堪能することに決め、青年は考えるのは後回しにした。


「ただいまぁ。って言っても、誰もいねぇが」
 家にたどり着くなり、青年はいつものように疲れた笑みを浮かべかけるが。
「おかえりなさい。あなたぁ」
「おかえりなさーい」
 右から左から予想外の挨拶を返され、思わず表情がほころぶ。
「そっがぁ、今日からはおめぇたちがいてくれんだもんなぁ。ありがとなぁ」
 青年は狐火達の頭に手を置いた。絹のように滑らかな髪を撫でているような、毛並みのいい毛皮に触れているような、熱くない炎に炙られているような感覚に、一瞬驚いたような表情を浮かべるが、すぐに穏やかな微笑みを取り戻す。
 狐火達は少しくすぐったそうに、どこかうっとりとした表情で青年の手を受け入れていた。
「ここがだんなさまの家なのね」
「私達の新しいおうちなのね」
 青年の元を離れて、狐火達が家の中を飛び回る。
 白く、赤く。明るく、温かく。冷たく暗かった一人暮らしの部屋の中が、妖怪達の暖かな炎に照らし出される。
 青年はしばらく、いつもと異なる部屋の光景から目が離せなかった。
「あ、お、おい。あまり暴れなんでくれな。火が付いたら、住むところが無くなっちまう」
「大丈夫だよ。私達の炎は、燃やそうとしない限り燃え移ったりしないし」
「本来燃やすための炎じゃないしねー」
「けっこう便利なんだよ。こんなことも出来るし」
 白い狐火が虚空にふっと息を吹きかけると、小さな炎が空中に留まり部屋の中を明るく照らし始める。
「こんなことも出来ちゃうんだよぉ」
 赤い狐火が囲炉裏に手を差し伸べれば、その指先から炎が伸びて暖かな炎が灯る。
「おめぇたち、すげぇんだな。えーと、でも名前がないとちょっと不便だなぁ」
 二匹は青年の元に戻ると、不思議そうに首をかしげる。
「私はだんなさまの奥さんだよ」
「私はおとうさんのお嫁さん」
「だから、そんじゃわかんねんだって。えっと、じゃあ白い方がシロで、赤い方がベニでどうだベ? そのまんますぎっかな?」
 二匹の狐火達は互いに顔を見合わせる。
「私がシロで」
「私がベニ」
 シロとベニは青年の身体に抱きつき、その顔を見上げる。
「いい名前ね。ありがとう、あなた」
「おとうさんからの初めての贈り物ね」
「べ、別に大したことじゃねーさ」
 青年は顔を真っ赤にして、消え入りそうな声でそれだけ言った。
 炎が形を変えた物でも、その感触は確かに女体のように柔らかく、初心な青年には、少し刺激が強すぎた。
「さ、さぁ、帰り道は寒かったベ。囲炉裏で、ちょっとあたたまんべ」
 二匹に挟まれ家路は寒くも何とも無かったが、青年はそんな言葉でごまかして腰を下ろした。


「あったけぇなぁ」
「あったかいねぇ」
「あったかあったか」
 赤い炎が揺れる囲炉裏の前で、一人と二匹はつぶやき合う。
 心地よい温もりを前に、青年はうとうとしはじめる。そのうち船をこぎ始めるが、眠りの海に漕ぎ出す直前、左右の二匹がぽんぽんと肩を叩いた。
「ぅん? どした?」
「だんなさまぁ。私、お腹がすいてしまったわ」
「お腹すいたー。おとうさんごはんごはんー」
「んぁ、そだなぁ。そろそろ夕飯の支度せんとなぁ」
「おいなりさんが食べたいわ」
「おいなりさんおいなりさん」
「ごめんなぁ。食いもんって言ったら今朝炊いたおまんまと、そこの鍋の味噌汁くれぇしかねぇんだ。おめぇたちもお狐様だもんなぁ。おいなりさん、食わせてやりてぇけど、ごめんなぁ。
 今用意してやっがら、ちょっと待、ん?」
 立ち上がりかけた青年の袖を、右から左からシロとベニが掴んで止める。
「どこに行くの? ここにあるじゃない」
「おとうさんのおいなりさん。食べたいの」
 白と赤の狐火達が、艶然と微笑む。毛皮のように揺らめく炎を抑えて、艶めかしい女性らしい肉体をあらわに、シロとベニは青年にしなだれかかり、押し倒す。
「ふぇ? ぅわっと」
 嫋やかな白い腕が、細く柔らかな赤い指が、緩められた衿元から、裾の隙間から、着物の中に滑り込む。
 胸元や腹回りを、股の内側や膝小僧を撫で回され、青年は情けない声を上げる。
「二人とも急にどうしたんだよぉ」
 青年は二匹をたしなめるようと手を伸ばすが、二匹はあろう事かその腕を掴んで、自らの膨らみかけた乳房へと押しつけ、握らせる。
 炎で出来ているにもかかわらず、狐火達の乳房はやわっこく確かな弾力を持って青年の指を押し返す。とろけるようなその感触に、青年はごくりと生唾を飲んだ。
「どうしたって。ごはんを食べようとしているんだよ」
「私達のご飯は、人間の精なんだぁ」
「せ、せぇ? せぇって、なんだべ?」
「精って言うのは、生きようとする本能の力みたいなものだよ。女の人も持ってるけど、男の人の方がいっぱいあるし、男の人は精を作る事が出来るの」
「生きたいっていう想いや、子を残したいっていう気持ちが強い程、精の量も多くなるし質も良くなるんだぁ」
「お、おら、食べられちまうのか?」
 怯えたような事を言いながらも、しかし男の本能には逆らえず、あるいはいっそ死ぬならばという捨て鉢故か、その指先は未熟な果実を貪り続けている。
 着物も、またぐら辺りが何かに押し上げられてゆっくりと膨らんでいく。
 二匹は顔を合わせて密やかに笑い、青年の耳元に口を寄せる。
「食べちゃうけど、食べないよ」
「食べないけど、食べちゃうよ」
「ひ、ひえぇ」
「大丈夫だよ。私達が食べるのはお肉じゃなくて」
「精がいっぱい入ってる、精液とかだから」
「だから私達は得意なんだよ。生きたいって気持ちにさせたり、交尾したいって気持ちにさせたりするの」
「ねぇおとうさん。私達のおっぱい、ずっともみもみしてるよね。私達のおっぱい、どうかなぁ」
 青年はしどろもどろになりながら、つっかえつっかえ答える。
「え、えと、ずいぶんと昔に間違って娘っこの胸、触っちまったことあっけど、こんなに気持ちよくねがったなぁ。あんときはすげぇ怒られてぶん殴られて、コブになっちまったっけ。
 ……いや、そーでねぐって。ふざけんのも、この辺にしてくんろ。おら、変になっちまうよ」
「それでいいんだよ。変な気にさせてるんだもん」
「おとうさん、素直で可愛くって、大好き」
「ねぇ、私達のおっぱい気持ちいい?」
「私達のおっぱい触れて、嬉しい?」
「気持ちいいし、嬉しいけんど……。なんか、胸のあたりが苦しくなってきちまったよぉ」
 右から、左から、艶めかしい女の吐息が聞こえてくる。青年の心臓は破裂寸前だ。
「苦しいのは、こっちじゃないの?」
「おいなりさん。きゅってしてる」
 白い指が青年の竿を握り、赤い手がぶら下がる二つのそれを掴む。
「あぅ、おめえたち。本当にやめてけれ」
 狐火達は尖った耳を動かすが、その大きな耳には制止の言葉は届かない。シロは握ったそれをやわやわと扱きはじめ、ベニは掴んだそれを慈しむように揉みはじめる。
「やめっ。もうっ」
 青年は暴れようとするが、彼に寄り添うのは姿こそ若い娘でもその正体は妖怪である狐火だ。しかも二匹に押さえられては、例え大人の男の力だとしても敵う物ではなかった。
「ねぇベニ。私先にもらってもいい?」
「いいよぉシロ。じゃあ私は、こっち」
「シロ、そんなとこきたねぇって。舐めんのやめ、ベニ、むぐぅ」
 シロは青年の肉竿の先端に舌を這わせ、あふれ出ていた汁を舐めはじめる。
 たしなめようとした青年の口は、しかしその言葉ごと吸い取ろうとするかのようにベニの唇に塞がれた。
 シロもベニも、狐火という名の炎の化生。その舌は唾液のような、汁気とは無縁のそれであった。汁気とは無縁であったがしかし、その舌は舐められるとざらりとして心地よく、唾液の代わりに口の中にあふれる炎気が、唾液よりもなお細やかに青年のそこここを覆い、人肌のぬくい炎で燃え上がらせる。
 シロの口からあふれる炎が、青年の下の茂みや睾丸にまで燃え広がっていく。鈴口から竿の中まで入り込み、内から外から燃え上がらせる。
 ベニの舌先からこぼれる炎が、青年の喉奥まで垂れ落ちてその胃の腑を、心の臓を焦がしていく。
 全身が白い温もりの火で燃え、骨身にまで赤い優しさの炎で焦がされる。己の身体が燃え上がっていく様子が見えているにもかかわらず、青年の心にはしかし恐怖は無かった。
(痛くもねぇし、熱くもねぇ。どっちかっつーと、あったかくてきもちえぇ)
 狐火達はうっとりとして、言葉も忘れて舌先を動かし続ける。
(まぁ、ええか。神様からもらった嫁さんだベ。おらたち、もう夫婦なんだから)
 青年は狐火達の身体を抱き寄せる。
 シロの頭を撫でながら、腰を突き上げ喉奥の感触を堪能し、ベニの口の中に舌を伸ばして、炎を絡め取るように擦りつける。
 身体の奥で、炎が爆ぜる。
 白や赤の火花がまぶたの裏で弾けるのを感じながら、青年は辛抱たまらず白い炎の中に射精した。
 腰を震わせ、白く濁った気炎あげながら、ただただ狐火達に身を任せ続けた。


 うめき声は、誰の声だったのか。
 分からなかった。ただただ、心地よいばかりだった。
 混ざり合う艶やかな声を聞きながら、青年は心地よい倦怠感のままに身体の力を抜く。
「んはぁ。だんなさまのこれ、身体の奥でずっと熟成されてたんだね、とっても美味しい。それに、なんか身体が、すっごく熱くなってきちゃう。身体が、中から、焼かれてるみたいに。あ、ああぁ、だめぇ、なんか、へんなきぶん」
 シロは頬を染めながら、自らの胸を押さえる。
 その喉、炎の奥にはうっすらと、今まさに青年が放ったばかりの白濁が見えた。ゆっくりと喉から胸へと落ち下ってゆき、胸の中心にたどり着いた途端にまばゆいばかりの光を放ち燃え上がる。
「ぅあ、ひぁああんっ」
 シロの身体が大きく跳ねて、弓なりにのけぞる。目も眩む程の炎の中で、その身体が少しずつ変化してゆく。
 手足が伸びて肉付きが良くなり、乳房は大きく片手では包み込めぬ程に、その顔つきも目鼻立ちがくっきりと、大人の色気を感じさせるそれへ。
 炎が収まるとともにそこに居たのは、艶めかしい身体へと成長したシロだった。
「あはぁ、シロ、大きくなっちゃったぁ」
 身体をくねらせ、しなを作る。指先をくわえて、自らの伴侶である男へ流し目を送る。
「シロ。すげぇ、色っぺぇなぁ」
「続き、しよっか」
 色に当てられたのか、青年の逸物はすぐさま力を取り戻して天井に向かって反り返る。
 シロの指が、再びそこに差し伸べられかけたそのときだった。
「だ、だめぇ。今度はベニの番なんだからぁ」
 青年とともに姉妹に見とれていたベニが我に返り、その小さな肢体で夫の身体の上に覆い被さる。
「シロばっかりずるい。ベニだって、おとうさんを気持ちよく出来るもん」
 そそり立つ肉柱を、ベニは自らの入り口へと押し当てる。
「私にもいっぱいちょうだい。ベニだって、おとうさんのお嫁さんなんだから」
 ベニが腰を沈ませる。青年のそれが、ベニの柔肉の中に飲み込まれていく。口の中とはまた違う、炎で形取られた肉の感触に、青年は喘ぎ声を上げる。
「うああ、なんだぁこれぇ。すっげぇ、きもちいぃ」
 炎であるはずなのに、ベニの中はそれを感じさせなかった。ぬるぬるとぬめっているような、細やかな襞がみっちりと詰まっているような、なんとも言えぬ感触で青年を責め立てる。
 青年は、己のそれが燃え上がっているような錯覚を覚える。自分のそれから燃え立つ炎と、ベニの内側で逆巻く炎が混ざり合って激しく燃え盛っているような。
 ベニの細い腰に手を当て、その熟れきる前の身体を突き上げる。
「い、いいよぉ。もっと激しく、おとうさんの好きにしていいからぁ、ぁあんっ」
 ベニは猫のような声を上げる、青年の首筋に噛みつき、その背中に爪を立てる。
 青年が甘い痛みに身をゆだねていると、そうっと覗き込んでいたシロと目が合った。
「あ」
 シロは唇の前に人差し指を立てる。
 そして青年の片手を取り、自らの豊かに育った乳房を握らせる。
 白い肌に指が沈み込み、柔らかく形を変える光景に青年は息をのむ。そして彼が何か言い出す前に、シロは自分の唇で彼の口を塞いでしまう。
「あついよぉ。おへその下が、あっついよぉ」
 ベニが青年の身体にしがみつく。シロの流し込む炎が、青年を更に高ぶらせ、そして一気に燃え上がらせる。
 青年は腰を突き上げる。ベニの身体の奥の奥。一番深いところに、叩きつけるように己のしるしを迸らせる。
「ふぁ、ぁああぁぁあああっ」
 仰け反り暴れる赤い身体を抱きしめる。シロから解放された腕を合わせて、両腕で己の自分から逃れられぬように強く、熱く。
 小さな身体が震え、ぎこちなく痙攣する。青年が脈打つ度に、狐火は身をよじり身体を強張らせ続けた。


 やがて脈動が収まる頃に、ようやく青年はベニの身体を解放してやった。
 頬を上気させ、息も絶え絶えになりながら、ベニは己の下腹部をさすって戸惑うような表情を浮かべていた。
「おなかの、おくが、まだ、どくんどくんて。なんか、あぅ、おなかの下のあたりが、あつくって、あっ、あぁあ」
 その手の下、青年が子種を放ったあたりがぽぅっと明るく光り出し、ベニの赤い身体がびくんと跳ねる。
 身体の昂ぶりに耐えかねるように、青年にしがみつき、荒い呼吸を繰り返す。その目尻から、燃える涙が一粒こぼれ落ちる。
「あっ。からだが、ぞくぞくって、あぅっ、ふあぁ」
 その身体が、大きく燃え上がる。天井を突き上げ、部屋中を染め上げるほどに。
 やがて紅色の大きな輝きは、少しずつ人の形へと収束していった。その手足はすらりと長く、腰や胸元がむっちりとした丸みを帯びた、妖艶な女のそれへと。
「ベ、ベニ?」
「これが、おとうさんの味……。うふふ、なぁんか、癖になっちゃいそぉ」
 ベニは自分の身体を確かめるように、自らの肌に指を這わせる。豊満な乳房を掴み、太ももに指を這わせ、足の付け根に忍び込ませる。
「あはっ。もう抜けちゃってるのに、まだおなかに余韻が残って疼いちゃってる。おとうさん、もう一回……。
 あ、あれ? 膝ががくがくしちゃって、動けないよぉ」
「じゃあ、今度は私ね」
 青年の身体に、横から白い腕が回される。
 自らの身体を押し倒させるように抱き寄せたのは、雲行きを見守っていたシロだ。
 仰向けに寝転び、己の身体の下で媚びる女狐を前に、青年の中で目覚めた獣はもう止まらなかった。
「シロ。シロォ」
 手首を押さえつけて、ふくよかに育った双丘の間に顔を埋める。
 鎮まることを知らない己の剛直を荒々しく突っ込み、震える乳房の、その頂きの果実にむしゃぶりつく。
「あぁん、いい、いいの。きもちいいのぉ」
 雌の甘い声は、雄の猛りを更に追い立てる。
 雄は低く唸ると、激しく腰を振り始める。
「あはっ。すっごい。おとうさん、狐がするより激しいよぉ」
 腰を打ち付けながら顔を上げた先には、雄に向かっておしりを突き出し、妖しく揺らして挑発する赤い雌の姿があった。
「シロが終わったら、ベニにももう一回。ね」
 部屋の中に、雄の遠吠えが響き渡る。
 もはやそこには、人間はいなかった。そこにいるのは、ただ情欲の炎に炙られまぐわいつづける、淫らな獣達だけだった。


「う、ああ……。朝、かぁ」
 窓辺から差し込む朝日に目を細めながら、青年は煎餅のような布団からのそのそと這い出す。
「んむぅ。なんだベなぁ。なんか、ものすんげぇ助平な夢を見た気がすんぞ」
 脇腹をぼりぼりとかきながら、青年は首をかしげる。
「しかし、おらぁいつの間に寝たんだベ。しかも裸ん坊で。このまんまじゃ風邪引いちまう。えっと、着物着物っと。
 けんど、昨日は確か、初詣行って、嫁さん欲しいってお祈りして、そしたらお狐様が現れ、て」
 正面に窓があるにもかかわらず、目の前に影が出来ているのに気がつき、青年は大きく目を見開く。
「すげえ別嬪のお狐様が出てきて、二人も可愛い嫁さんくれて、まさかぁ夢としかおもえねぇけんど、でも、この部屋のあったかさ、もしかしてぇ」
 期待とともに振り返り、そして目にした光景を前に、青年は口を大きく開けて声にならない声を上げる。
「はへ?」
 夢にまで見た嫁さん達は、確かにそこにいた。
 しかも一匹ではなく、三匹。
 そう、三匹いた。
「ふ、増えてんでねぇがぁ」
「おはようございます。だんなさま」
「おはよう。おとうさん」
「ぉはよー。ちちうえー」
 狐火が一匹増えていた。
 昨日の夜から若返り、小柄な体型に戻ってしまったシロとベニの間にもう一匹。
 なぜ二匹の体型が元に戻っているのかも青年には非常に気になるところではあったが、しかしそれ以上に確実に理屈が分からないのは、シロとベニによく似た、けれど確実に二匹とは違う狐火が一匹増えていることだった。
 肌の色はシロと同じ雪のような白色。けれどもその身体から燃え立つ炎は、その獣毛は、ベニによく似た朝焼けのような赤色。
 獣毛以外にも、目元や口元にも紅が引かれ、顔だけでなくその身体にも隈取りのような艶やかな赤い文様が刻まれている。
 見覚えのない狐火は、首をかしげてあどけない笑みを浮かべながら、青年の元へとにじり寄ってくる。
「なに、なになになになんなんだべ」
 見覚えがないはずなのに、その身体には覚えがある。触れられるその指先の炎の感触、首筋を舐める舌先の熱さ。
 昨夜の昂ぶりを思い出した青年は、その獣は、すぐさま激しく燃え上がって太く猛々しくそそり勃つ。
 隈取りの狐火はそれが嬉しかったのか、きゃあきゃあと黄色い声を上げながら青年の身体の上に馬乗りになった。
 そして制止する間もなく、青年の獣を自らの下腹の中に納めてしまう。
「あはぁん。ちちうえの、あっつくてきもちぃのぉー」
 悩ましい表情で素直に悦びを露わにする雌を見上げながら、青年は自分がけだもののようによだれを垂らしていることに気がついてはっとなる。
「お、おら、まるでサカリの付いた獣になっちまったみてぇだ。一体どうしちまっただかぁ。それに、シロ、ベニ、この子なんなんだべぇ。なんでおめえ達の身体も元に戻ってんだベ」
 シロとベニもまた青年の身体に抱きつき、彼を見上げて微笑みかける。
「この子は私達の子供だよ」
「シロと、ベニと、おとうさんの子」
「おらの子ぉ? け、けんど、一日しかたってねぇベさ。普通赤ん坊が生まれんまでには、いくら急いだって半年ぐらいかかんべよ」
「子供って言っても、私達の妖気とだんなさまの精が混ざり合って出来た火の子だからね」
「昨日の夜、おとうさん本当に、獣みたいに凄かったんだよ。休む間も無かったんだから」
「溜まりに溜まってた精が、きっと一気に爆発したのね」
「あんまりにも精の量が多すぎて、私達の身体にも収まりきらなかったの」
「それで、性欲のままありあまった妖力や精力が集まって出来たのがこの子」
「私達は妖力や精力の塊みたいなものだからね」
 隈取りの狐火が腰を揺らしはじめ、青年は呻き声を上げる。生まれたばかりとは思えない、情欲に浮ついた目で男を見下ろしながら、きゅうきゅうと燃え上がる柔肉で締め上げて精をねだる。
「うあぁ」
 その姿はシロとベニと変わらぬようで、その実中身は二匹分を併せ持っているような欲の強さだった。
「だから、こんなことも出来るんだよ」
「よーく見ててね」
 シロとベニは空中に手を差し伸べる。その手のひらに小さな火の玉が灯り、それが獣の形に、人の形へと変化する。小さいながらも昨日神社で見た事と全く同じだった。
 二匹が手を近づけると、二つの炎は混ざり合って一つの桃色の炎になる。
 そして二匹が同時に指を鳴らすと。
「むぐぅっ」
 見入っていた青年の、あんぐりと開いた口の中に飛び込み、喉に、胃の腑に、肺の中に火をつけて回り、そして全身を燃え上がらせる。
 青年は脊髄反射するように腰を突き上げ、我を忘れて交尾に夢中になっていた雌の中に精を吐き出す。
 獣欲のままに腰を掴み、何度も何度も腰を打ち付けながら、おびただしい量の白濁を注ぎ込む。
「あぁ、ああああっ」
「ちち、うえぇ、すご、あ、いく、いくいくいくっ。あふれちゃうっ」
 指が食い込む程にしがみついてくる若い狐火を抱き留めながら、青年は少しずつ息を整える。
 胸の中の身体が昨夜のように大人のものへと変わってゆくのを感じながら、それと同時に役目を果たしたばかりの下の獣が、まだ雌の中に捕らえられている欲棒が節操なしに暴れ出そうとするのを自覚する。
「私達のだんなさまは、本当に素敵な人だよねぇ」
「私達、おとうさんのお嫁さんになれて良かったよねぇ」
 そんな獣達の姿を、覗き込んでいる影があった。
 少し開いた玄関の隙間から、金色の目と尖った耳がちらついていた。


 身体が桃色に燃え上がる寸前だった。背筋にぞくりとしたものを感じて、青年がはたと振り返ると。
「お、お狐さま!?」
「あらあら、見つかっちゃった?」
 玄関をするすると開けて、金色の妖狐が顔をのぞかせる。手で口元を隠してはいたが、その口元に淫猥な笑みが浮かんでいることは狐火達に照らされるまでもなく明らかだった。
「母さま」
「いつからそこに」
「おばあ」
 ただならぬ危機感を察し、青年は即座に繋がったままの狐火の口に指を押し込んだ。彼女はしばらくもごもごと口を動かしていたが、やがて大人しくなって、目を潤ませながら指を舐め回し始める。
「やぁん激しいわねぇ。なんだか見ているこっちまで、火照って濡れてきちゃうわん」
「母さまも混ざる?」
「順番は守ってね」
「そうねぇ。それもいいかもしれないわねぇ」
 妖狐は部屋の中に入り込み、青年の近くに寄り添うように腰を下ろす。
「ちょ、いきなり来たと思ったら、なして脱ぎはじめてるんですかぁ」
「いえね。実は昨日宴の後、遠見の術であんた達の様子を見てたのよ。だって酔った勢いとは言え、自分の娘みたいなものを二人も嫁がせちゃったんですもの。ちゃんとやっているかなぁって心配になるじゃない?
 とにかくそんな感じで覗き……じゃなくて見守ってたら、思った以上にあなた、すごいじゃない? 気がついたら下っ腹がきゅんきゅんして、独りで、その、ね。分かるでしょ?
 それで何ていうか、稲荷と間違えられたからって、変に意地を張って相手にしなかった私の方が間違っていたんだって気がついたの。
 だからその、今更だけど、あなたが欲しくなっちゃったの。てへっ」
 妖狐は脱げかけた錦姿で、可愛らしく舌を出してみせる。
「今まで本当に沢山の人間の願いを叶えてきたんだもの、今度は私の願いを人間が叶えてくれたっていいと思わない?」
「た、確かにそうかもしんねぇけんど……。わざわざおらみてぇな駄目な男でねぐたってぇ」
 ぶんぶん首や尻尾を振りながら、妖狐は男の身体にしがみつく。
「いいの! あたしはあんたがいいの!
 そんなわけで、この子が済んだら次は私ね。何百年ぶりだけど、大丈夫。あなたならきっと満足させてくれるって確信しているから」
「何百年!?」
「私も溜まってるからさ、多分この子達みたいな狐火もそりゃもういっぱい生まれちゃうと思うけど、近くまであんたの様子を見に来たらしい女の子もいたし、みんなその子に取り憑けば周りに影響も出ないだろうし」
「取り憑く!?」
「狐火が人間の女の子に取り憑くと、その子も妖怪に近しい狐憑きっていうのになるのよ。まぁ取り憑き切れなくても、近くに村もあるからみんな生き残れるでしょうし。何の問題もないわね」
「むしろ問題しかねーんでは!?
 つーかそこ、おらが追い出された村じゃ……」
 妖狐は押し倒されている青年を助け起こし、そしてその背中に自分の身体を押しつけながら、唇の端をつり上げて笑う。
「いいじゃない。まずはその村を手に入れましょうよ。男達は私達の狐火ちゃん達でみんな骨抜きにして、女は狐憑きにして誑かす。私や狐憑き達はこの子達と違って、肉体を持った子供だって産めちゃうわよ。
 ねぇ、どうかしら? 一緒に楽しくやりましょうよ。私と一緒に、私の為の、じゃなくて妖狐と狐火と狐憑きの国を、あんたが何でも好きにできる国を作りましょうよ。ね。
 ……って、ちょっとあなたたち、人が誘惑しているときに何するのよ。はーなーしーなーさーいー」
 悪女のようにほくそ笑んでいた妖狐はしかし、シロとベニに左右から引っ張り上げられ引きはがされる。手足を振り乱しじだばたともがくその姿は、とても信仰を集めていた御神体には見えなかった。
「母さまと言えど、順番は守って」
「最後に来た母さまは一番最後ね」
 親子喧嘩を背後にしながら、青年は再び床へと押し倒される。
 見上げれば、まさに獲物を前に舌なめずりするように、隈取の狐火が笑っていた。その笑みは、ある意味妖狐でさえも霞む程の凄みがあった。
 彼女達狐火は肉体を持たない。精を注がれても満たされることはなく、むしろ浴びれば浴びる程、それを燃料に力強く大きく燃え盛るだけ。仮に燃料がどうにも身体の中に収まらなくなっても、炎として外に出してしまえば済んでしまう。今まさに青年にまたがる女狐が、そのいい例だった。
 そしてどうやら、自分は一夜にして彼女たちに近しい存在になってしまったらしいと、青年は心のどこかで理解してしまっていた。
 彼女達同様に、交われば交わる程に彼女たちの肉体を求めてしまう、交わりを糧に燃え上がる炎のような、人としての節度も分別も無く、ただただ欲望のまま貪るばかりの獣のような存在に。
「おらの願い、叶ったっちゃぁ、叶ったんかなぁ」
「そんなこと、もうどうでもいいじゃない。でしょ、ちちうえ」
 獣の雌は腰をゆっくりと揺らしながら、淫らに腰をくねらせて笑う。
「ねぇちちうえぇ、わたし、ちちうえのおとしだま、いっぱいほしいなぁ」
「しがたねぇなぁ、そしたら、いまがらいっぺぇそそいでやっからなぁ」
 雄は歯を見せて笑い返し、雌のしりを掴んで引き寄せる。
 そこから先は、もう言葉もなく。ただただ獣達が代わる代わる交わるばかりだった。

 人外化生の手によりて、
 満願成就にて子孫繁栄す。
18/01/19 22:43更新 / 玉虫色

■作者メッセージ
 その後妖狐さん達の楽園が出来たかは、想像にお任せです。
 でも狐達さん達にとっての楽園ということは、我々にとっても楽園なのでは……?



 初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。(今回はそこまでお久しぶり、では無いかな?)
 あけましておめでとうございます。と言うには時期遅れですが。正月ネタです。もう少し寝かせたかったですが、ナマモノなので少し迷いつつも思い切って公開しました。
 今年は改めて色々と色んな力を付けて行きたいなぁ。
 投稿も去年よりはしたいと思っております。

 そんなわけで、荒削りな話でしたが、楽しんでいただけていたら幸いです。
 ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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