連載小説
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前編
太陽が俺に熱戦を浴びせ続けている。愛用のテンガロンハットが無ければ今頃はたってもいられなかっただろう。
俺と向かい合う一人の女。
こんな灼熱の砂原のど真ん中、彼女は露出の高い、この場所とはあまりに不釣り合いな格好をしていた。そして、帽子もかぶらない頭の上でヒクヒクと動く耳。彼女は、スフィンクス。冒険者たちを試す者。
「ニャフフ。お前はテトスが誰なのか知ってるかにゃ〜?」
「ああ、よくご存じだ。これから何をするのかもな」
スフィンクス。ファラオの墓に向かう冒険者の前に立ちふさがり、“問い掛け”の呪いを浴びせる魔物娘。テトス、というのはおそらくこいつの固有名だろう。
「ニャハ!察しがよくて助かるにゃあ!じゃあ早速問題にゃ!」
「待った!」
スフィンクスの目の前に手をピシッとかざし、待ったのポーズ。
「なんにゃ?なにか質問かにゃ?」
「お前、いつもクイズを出す仕事に飽き飽きしてないか?」
「……どういうことにゃ?」
「俺が問題を出す!それにお前が答えられたら俺を好きにするといい。答えられなきゃ通さしてもらうがな」
「ふっふ〜ん。にゃるほど、テトスをクイズで負かそうってんだにゃ?面白い、やってみるにゃ!」
よし、思った通り、誘いに乗ってきた。彼女らは高い知能を持つという。そいつらに敢えて問題を問い掛ける俺は、余程の身の程知らずか何かだとテトスは思っているに違いない。だが、この問題はかなり自信がある。早々解けはしないだろう。
しかし、それだけではなく、これにはある画策があった。
「問題だ」
帽子を深くかぶりなおす。
「俺は見ての通り冒険家をやっている。ここに来る前、俺はある大陸を縦断していたんだが、そこで大きな河にぶち当たった。川幅1000メートル、水深5メートルはあろうとんでもない大河だ。周りには船を作る為の材木は無かった。しかし、俺達のキャラバンは無事に向こう岸までわたる事が出来た。さて、どうやったと思う?」
「にゃ〜?人魚にでも手伝ってもらったんじゃないかにゃ?」
「いや、キャラバンは人間の男だけで、魔物はいなかった。魔物娘の力は使ってない」
「じゃあ、自力で泳いだにゃ」
「説明に合った通り、とても長く、とても深くい河だった。ある程度の犠牲を覚悟すれば出来なくもないが、全員無事となると無理だろうな」
「じゃ、じゃあボートにゃ!あらかじめ折り畳みボートか何かを持っていたにゃ!」
「残念。俺達はそんなもの持っていなかった。それを使わなくても渡りきったのさ」
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ〜」
だんだん顔色が悪くなってきたテトスは頭を抱え始めた。しかし、それがだんだんと悪い笑みに変わっていく。
「ニャフフフフフ。降参にゃ。男よ、よくも私が答えられない問題を出せたにゃ。褒めてやるにゃ」
「心痛み入るぜ」
「そうやっていられるのも今のうちにゃ!問題を答えられなかったテトスがどうにゃるか、お前は知ってるんじゃないかにゃ?」
「いんや、分からないな。どうなるんだ?」
「見せてやるにゃ。問題を答えられないと……」
舌なめずりをして、ショーツに手をかけるテトス。
「ニャッフフフフフフ〜………………あれ?」
「どうした?」
「……エッチな気分にならないにゃ」
切り取って聞くと倦怠期に入ったカップルが言いそうなセリフだが、言いたいことは分かる。
スフィンクスの問い掛けに答えられなかったものには呪いがかかり、問い掛けた相手に対し魅了される。つまりこの場合、俺の問い掛けに答えられなかったスフィンクスに呪いがかかるはずなのに、全くその兆候が表れないことを不思議に思っているのだろう。
頭の上で?のマークをプカプカ浮かせている間抜けなスフィンクスがちょっと不憫に思えてきたので、種明かしをすることにした。
「お前の“問い掛け”の呪いは」
一呼吸おいて。
「お前が問題を出さなきゃ発動しないんだろう?」
「あ……」
ようやく自分の失敗に気付いたテトス。
「にゃーーーーーー!!!」
「さあ、案内してもらうぞ」
靴ひもを結び直す。リュックもしっかりしょい直し、遺跡へ一歩踏み出す。いざ、目指すは財宝眠るファラオの墓場。


俺達は迷宮の中を進んでいた。テトスと自称するスフィンクスは松明をもって先導してくれている。
「え〜っと、お兄さん名前なんて言ったかにゃ?」
「ヨコーネル。若き冒険者ヨコーネルとは俺の事だ」
「初耳だにゃ」
「そりゃ、年中砂漠にいたら知らないだろうなぁ」
本当の所は、自分がまだ駆け出しという所も大きいのだろうけれど、それを自分で言っては格好がつかないので伏せておく。
「ヨコーネルは一人で来たのかにゃん?」
「いや、30人くらいで来たんだよ」
「にゃらどうして一人ボッチにゃ?」
「話すと長いんだけどさ……」
港街で、砂漠に眠る王妃と秘宝の噂を嗅ぎつけた俺は、財宝を手に入れんとする同業者と共に大きな船を借りて砂漠の大陸を目指した。
しかし、そこで大嵐にぶち当たる。風にあおられ、波にさらわれ、仲間はいきなり三分の一もいなくなってしまった。
たどり着いてからも大変だった。縄張りを侵されたアマゾネス達に追い回され、巨大なサンドウォームに出くわし、精の匂いを嗅ぎつけたマミーたちから逃れた頃には、キャラバンは俺一人となっていたのだ。
「それはご苦労なこったにゃあ。まあ私達の旦那様になるだけで、死ぬことはないから安心するにゃあ」
勿論知っている。魔物娘たちはは俺の仲間をさらっては犯し尽くし、自分の伴侶としてしまう。
「そんなの、死んだも同然だろ」
結婚は人生の墓場だと俺は思う。たとえばパン屋の娘と恋に落ちたと仮定しよう。当然俺はパン屋を継ぐ事になる為、日夜小麦粉を練る事になる。いつの間にやら子供が生まれ、学校に行かせればさらに金がかかり、仕事の量も増える。子供が独り立ちする事には、店も古くなり、改装でもすればさらにお金が掛かる。要するに冒険をする暇などなくなるという訳だ。
俺にとって冒険の無い人生は死に等しい。だから今も独り身である。
「まあ、そこんところの考えは人それぞれだし、口出しする気はないにゃあ。私たちはそんな事関係なく襲うしにゃ」
着いたにゃ。と、テトスは小道の行き止まり、壁の前で立ち止まる。
壁には小さなくぼみがあり、テトスはそこに首飾りをあてがう。窪みと首飾りはぴったりとはまり込み、それをゆっくり右へ回すと、カチリと小さな音がした直後、大きな音を立てて壁が左右に割れた。
本来、解くのに時間がかかりそうな仕掛けだったが、案内人がいると楽なものである。
壁の向こうは開けた空間があり、その奥には明かりがともっていた。
「ム……来たか」
後ろを向いていた黒髪の女性がこちらに振り向き、駆け寄ってきた。
黒い耳、獣の手足、独特な装束、図鑑に記載されていたアヌビスそのものだった。
「チズス、中々いい感じの奴を連れてきたにゃ」
チズスと呼ばれたアヌビスは、品定めをするように俺を見つめた。
「大丈夫そうか?」
「結構頭も良いし、いけるんじゃないかにゃ?」
「心許ないな……」
「駄目ならまた新しく呼べばいいにゃ」
「おい、何の話だ。俺にもわかる様に説明しろ」
俺はテトスに案内させていたつもりだったが、一体何がどうなってるんだ。
「俺をファラオの所まで案内してくれるんじゃないのか?」
「そうにゃ、案内するにゃ。ただちょっと、込み入った事情があってにゃ?」
「事情?」
聞けば聞く程分からなくなり、俺は騙されているんじゃないかと不安になってきた。
「頼みがある」
突然、チズスが頭を下げた。
「ファラオを外に連れ出してほしい」


「ファラオの力についてはどの位知っている?」
「過去の分明に関する文献には一通り目を通して来た。ファラオについても、大体把握している」
砂漠の支配者、ファラオ。遺跡が魔力に満ちた時目を覚まし、辺り一面をオアシスに変える力を持つといわれている。
「俺にファラオとまぐわって、早いとこ力を使ってほしいってわけか?」
目覚めを早めさせる方法として、男の精を捧げる方法もあるとも書いてあった。夫となった男性にかかる負担は尋常ではないとも。
「いや、その必要はない」
「ファラオはとっくに起きてるのにゃ」
「うん?どういう事だ?」
チズスが言葉が足らないテトスの説明に補足を入れる。
「既にこの遺跡には、辺りを明緑魔界へ帰るほどの魔力は十分に溜まっているのだ」
「しかし、ファラオはいまだ自室に居座り、惰眠をむさぼっているにゃ」
「なんとまぁ……」
それでいいのか、王様なんだろ。
「引っ張り出そうにも、ファラオの隷属である私達にはどうする事も出来ず。こうして有能な冒険者を待ち続けていたのだ」
なるほど、それが先程の会話の意味か。思えばテトスがおとなしく案内をしたのもこの為だったのかもしれない。
「事情ってのはよく分かったよ。しかし俺はどうやって連れ出せばいい」
「それはお前が考えるにゃ!私を出し抜いた頭でどうにかしろにゃ!」
職務を投げ出し引き籠るファラオもそうだが、こいつらも負けず劣らず横暴である。
「タダでやれとは言わん。無事にファラオが出てくれば、この遺跡にある財宝はすべてお前にくれてやる」
「……本当だな」
「我々にとって最も大事なのはファラオ。財宝など遺跡を彩る飾りのようなものだ」
俺は帽子を取り、頭を掻いて、また深くかぶりなおした。
「分かった、やってみよう。そのかわり、約束は違えるんじゃないぞ」
「よろしい。ではこちらだ」
チズスは踵を返すと、ファラオの部屋へと続く通路を歩き出した。
「……あ、そういえば。結局あれの答えは何なのにゃ?」
「あれって?」
「あれにゃ。大きな河をどうやって渡ったのかって奴にゃ。泳がず、ボートも使わず、どうやって渡りきったにゃ?」
「それの事か。答えは単純だよ。歩いて渡ったんだ」
「嘘にゃ!お前は言ったにゃ!水深は五メートルあるって!」
「確かに言った。だがお前は勘違いをしている」
テトスの方を向き、ニヤリと笑ってやった。
「河は凍っていたのさ。俺が前に冒険したのは氷の世界、年中砂漠にいるお前は分からないだろうと思ってたんだ」
俺は口を開けっぱなしにしたテトスを放置し、チズスが案内する方へと歩を進めた。



遺跡の地下奥深く。ファラオが眠る部屋へとたどり着いた。
「ファラオ、起きていますか。ファラオ」
チズスが扉に呼びかけるが、何も返ってこない。
「寝ているのか?」
「今はな……。開けるぞ」
チズスが石の扉をゆっくりと開ける。暗闇の中に松明の光が差し込む。
恐る恐る中へ入る。入って正面、大きな棺が壁に立てかける様に置いてあった。
「こいつか……」
棺の端に手をかけ、横へずらしていく。半分程動かしたところで、人一人は引っ張り出せよう隙間が出来た。
「さあ、早いとこココから出てもらうぜ」
隙間から中をのぞき込む。しかし中には何もない。ファラオどころかスカラベ一匹、生き物の姿はない。
「ありゃぁ……?」
「馬鹿者、そっちではないわ」
チズスは部屋の照明に次々と火をつけ始めた。明かりが満たされると、部屋の全体像が分かってきた。
部屋の中には棺の他にも、机、棚、クローゼットがあり、王室というよりは普通の部屋に思えた。そして。
「ベッドか……」
「棺は固くて寝心地が悪いそうだ」
白くて見るからにフカフカのベッドの上に、毛布も掛けずに女性が寝そべっている。
「こいつがファラオか」
「口を慎め。お前はこの遺跡の王、タナンクスアムールの御前にいる」
チズスに冷酷な声で一喝された。先程とは打って変わったような態度の変化に少々戸惑う。静かな寝息が聞こえると、俺は咳払いをし、ファラオの御姿を注視する。
ファラオは、一言で表現するなら、美しかった。
顔立ちは世にあふれる女神の彫刻などくらべものにならない、眩ささえ感じるような気品にあふれた美しさだった。
よく撫でつけられた長い髪は、黒曜のように黒く艶を持っている。褐色の肌はオアシスのように潤っており、呼吸に合わせて静かにその体を上下させていた。
「ファラオ、起きて下さい」
チズスがファラオに呼びかける。
「う……ん……」
ファラオはゆっくりと身を起こし、小さな欠伸をした。
「おはようございます。ファラオ」
「うむ……。何事か……チズス……」
まだ眠いのか、目をこすり、瞬かせている。と、俺の存在に気付いたようで、ふいと此方に顔を向けた。
「こやつは何者か?」
「は、遺跡に訪れた勇者でございます」
勇者ではなく冒険者なんだが、便宜上の都合なのだと思い口を挟まないでおいた。
「テトス、チズス、お前達の職務を忘れたか?そのような輩を余の前に連れてくるとは……」
「心得ておりますにゃ。しかしファラオ、この者中々に面白い男ですにゃ」
「一度話を聞く価値はあるかと……」
「ふむ……」
ファラオはベッドから降りて、俺の真正面に立ち、繁々と興味深そうに物色しだした。全身をくまなく見つめられたり、顔を撫でられたり、匂いをかがれたたりまでした。やがて、納得したような顔をした。
「よいだろう。お前に余の遊び相手を命ずる。励むがよい」
「ファラオ。遊んでばかりおられては困ります」
「一刻も早く魔力を解放し、王国の復活を目指さないといけないにゃ!」
「お前たちはもう良い。“下がれ”」
「!!」
途端、背中に寒気を覚えた。これが彼女が持つ“王の力”か。彼女の言葉の前にはどんな者も従わざるを得ない。
当然、下がれと言われたテトスたちは我を忘れたかのように部屋を飛び出し、扉を閉めた。なんというか、見捨てられたような気分だ。
「さて、邪魔者も失せた所で、興ずるとするかの」
「……お手柔らかにお願いします」



「フフフ、どうしたヨコーネルよ。お前の力はその程度か?」
「う、くっ……そぉ。まだ、まだぁ……」
「ほう、まだ強がるか。ならば、これでどうだ……?」
「く、うおぉぉぉ……」
「これで、チェックメイト……♪」
「う、だめだあああぁぁ!」
俺は手に持った絵札を放り投げた。
「ああもう!負けだ負けだ!」
「フフフ、やはり誰かとやるのは楽しいな。ゲームとはこうでなくてはいかん」
ファラオはご満悦といった様子で勝利の美酒に酔っていた。
先程から体感的に一時間ほど、こうしてファラオの遊びに付き合っている。彼女はどうやら娯楽が大好きらしく、ゲームと呼ばれる前文明の遊戯にとても詳しかった。今興じているのはカードゲーム。琥珀色の絵札には旧時代の様々な魔物が描かれており、それを戦わせて優劣を競うというものだった。只今三連敗中。
「こういうのは勝率五分五分だと思うんだけどなぁ……」
「そう落ち込むな。余はこのゲームが最も得意でな。今まで負けたことなど一度もないのだ」
「流石王様ってことか、ファラオさん」
「ファラオは名前ではない。タナンクスアムール、まあ、特別にタナンと呼ばせてやろう」
「感謝の極み」
ころころとタナンが笑い、俺もつられてげらげら笑う。
寝ている時は、物静かで上品なイメージだと思っていたが、こうして遊んでいると無邪気な少女のようだった。
「時にヨコーネルよ。だいぶゲームにも慣れてきたようだし、次は何か賭けでもしてみるか?」
「へえ、でも何を賭けるんだい?あんたは金なんか要らないだろう」
「勝った方が相手のいう事を一つ聞く。どうだ?」
「ふーん……ま、いいか。やろうやろう」
この時、平常を装っていたが、心中では興奮していた。タナンは強いが、勝てば部屋から連れ出すことが出来る。後はタナンに勝つだけだが、問題ない。実は今の今まで俺は手を抜いて相手をしていたのだ。下手に出てこちらが有利な条件で勝負し、本気を出して抑え込めばいける。
俺にも運がようやく味方してきたように思えた。


甘かった。勝負は一時こちらが優勢に見えたが、あれよあれよと翻弄され、気が付けば俺は大負けしていた。なんてことはない。タナンもまた手を抜いていたのだ。この一勝をものにする為に。
「余の勝ちだな」
タナンがあざ笑うように言った。俺は言い返さない。何も言い返せない程、完膚無きまでに叩きのめされた。再戦すら望めない程、俺の心はへし折られた。
「さあて、勝てばいう事を聞く約束であったな。何をしてもらおうか」
突然汗がダラダラと流れ出す。何をされるか分からないという恐怖が俺を支配する。
「よし、ではヨコーネルよ。こちらに来い」
言われるがまま、俺は椅子を立ち上がりタナンの下へ寄った。タナンも席を立って、ベッドに腰掛ける。
「ヨコーネルよ。“跪け”」
身体から力が抜けタナンに言われた通り跪いてしまった。
俺の目の前に、タナンのつま先が突き出されていた。
「“舐めよ”」
「……はい」
屈辱だった。これ以上ないほど。しかし逆らう事も出来ず、俺はゆっくりと彼女の足指を口に含んだ。
「ん……」
しょっぱい味がする指先をじっくりなめまわし、味わうように丹念にしゃぶる。こんな事をしたことが無いので動きはぎこちなかった。
「フフフ♪足だけではないぞ。ふくらはぎも、太ももも、丹念に舐めよ」
言われるがまま、舌を上へと這わせていく。足首からふくらはぎへ、ふくらはぎから太ももへ。
「あん……フフフ♪まるで犬の様だぞヨコーネル……?」
タナンは時折小さな嬌声をあげて、嬉しそうに俺を貶す。俺は本来マゾではないと思っていたのだが、彼女の言葉には不思議と憤りを感じなかった。というか、ちょっと興奮している自分がいる。
彼女の下肢は、俺の唾液でヌラヌラと光沢を放っていた。俺の姿勢は自然と前のめりになり、まさしく犬になった気分だ。
そして、俺の目の先には、蜜に濡れたタナンの花弁がそびえていた。
タナンは恥ずかしがる様子もなく、厳然として自分の秘所を俺に見せつける。いや、恥ずかしがる事などない。タナンの割れ目は、芸術作品のように、山の頂から望む世界のように、威厳のある美しさだった。
「さあ、ここもだ……。その舌で余の蜜を掬い取れ♪」
彼女のそれへ顔が近づき、舌が伸びる。
俺の舌が、俺の意思とは関係なく、彼女の割れ目をこじ開けていく。
「ぺろ……れる……」
「どうした……?もっと奥まで舌を這わせぬか……♪」
意地悪な笑顔で、タナンが俺を見下ろしている。
(くそっ!悔しい!)
そう思っても舌の動きは止まらない。今、俺は彼女の従順な下僕と化していた。
「じゅる……ぬちゅ……れろぉ……じゅるるっ」
音を立てて、彼女の愛液をなめとり、飲み干す。これが俺に出来る唯一の抵抗だった。しかしそれも彼女を喜ばせるばかりで、鼻腔がタナンの妖艶な匂いで満たされていく。
「んんっ……はっ……あんっ……!」
タナンの声も次第に荒くなる。その声にも魔力が込められているのか、俺は興奮し、ペニスは静かに硬くなっていく。
「ん……?なんだヨコーネル。そんなにいきり立たせて、興奮しておるのか?」
「!!」
気付かれた。
「成程、世のまんこを舐めて興奮して、この中に自分のおちんちんをぶち込みたいと。そう考えておるのだな」
「………………」
「“正直に言え”ヨコーネル。出なければこれで終わりだ」
「!!!」
そんなこと言われたら、命令でなくたって、言ってしまうじゃないか……。このまま終わるなんて、考えられない。
「……したい」
「はて、よく聞こえんなぁ?もう少し声を張れ」
「っ……!!セックスがしたい!俺のちんこを!タナンのまんこにぶち込みたい!」
最早、恥ずかしさなど微塵も無かった。吹っ切れたのだ。きっと扉の向こうのテトスたちにも聞こえているだろうが、構いやしない。俺はタナンとセックスがしたかったのだ。
「フフフ、そうがっつかんでも、ちゃんとしてやるわ♪」
そういうと、タナンはベッドに寝転んで、股を大きく開いて俺に見せつけた。
「さあ、来るがいい……。貴様の欲望を受け止めてやる……」
理性のタガが外れたように、俺はタナンに組みついた。
赤く熟した陰唇に亀頭をピタリとあてると、一気に奥まで押し入れた。
「あ……んんんぅっ!!!」
タナンも驚きと快感の入り混じった声をあげるが、彼女の膣は俺を容易くぬるりと受け入れた。接合部からは愛液が滴り、ベッドを濡らしていた。
「っ……フフフ。中々立派なものを持っているな。遊びがいがあるわ……」
「はっ。そんなこと言って、中はキュウキュウ締まって痛いくらいだぞ。強がってるんじゃないのか?」
腰を動かすと、タナンの肉壁がペニスを握りしめる様に圧迫する。彼女の膣内がペニスからあふれる精液を欲して仕方ないと言っているようだった。
「……ふん、今のうちはほざいているがいいわ」
すると、タナンは両足で俺の腰をがっちり固定し、魔物娘自慢のパワーで俺を組み伏せた。その姿勢のままごろりと転がり、俺がベッドに寝転び、タナンが上に跨る騎乗位の体勢になった。
「やはり余はこちらの方が向いているようだ……♪」
タナンは独特のリズムで腰を上下させる。膣内の動きも緩急があり、まるで蛇がペニスにぐるぐると巻きつかれているような奇妙な快感だった。
「あっ……くっ、やめ……」
思わず情けない声が出てしまう。
「フフフ、やめないぞ♪貴様が音を上げて、余の膣内に射精をするまでわな……」
俺の苦しそうな顔を見て喜ぶタナンは、頬をほんのりと上気させながらも激しく腰を揺らす。経験した事の無い気持ちよさに俺はただ翻弄されてばかりいた。
「くああっ……もう、無理だ……射精る……っ!!」
「フフフ……♪よいよい。“思う存分に精子を吐き出すがよい。余の膣内で果てるがよい”」
その“言葉”が耳に入った途端、心臓が爆発的に動き、下腹部に力がこもる。
「う、うあああああっ…………!!」
タナンの最奥で、白濁が放出され、彼女の中を満たそうとする。タナンもそれに呼応するかのように、膣圧を一気に高めた。
「んあっ……。フフフ、まるで噴水の様だ。ザーメンが子宮に打ち付けられているのが分かるぞ……」
ペニスは膣内で何度も脈打ち、最後の一滴まで吐き出そうとしていた。やがて柔らかくなったペニスを引き抜くと、ドロリと濃厚な乳白色の粘液が零れ落ちた。タナンの褐色の肌とのコントラストで、とても興奮してしまう光景だった。
タナンはそれを指で掬い取り、口に含んで飲み込んだ。
「フフフ、いっぱい射精したな♪冒険でオナニーも出来ずに溜まっていたのか?これでは妊娠してしまうぞ……♪」
多幸感と喪失感で何も言葉を返すことが出来ず、只ぼうっとタナンを眺めているばかりであった。
「さあ、もっと余のまんこを味わいたいだろう?金玉が空っぽになるまで精液を出したいだろう?余はお前がえらく気に入った。余の伴侶となり、永劫ここで暮らすと誓えば、それもまた夢ではないぞ。」
「………………」
「ああ、自分から言うのは恥ずかしいのか?しょうがない、ならこれではどうだ?“答えよオコーネル。余とここで死ぬまでまぐわうのだ”」
「…………それは……」
「それは?」
「それは、絶対に嫌だ」


「え」
「え」
14/07/28 19:49更新 / 牛みかん
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■作者メッセージ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品は色々な冒険映画から影響を受けていますが、ファラオのゲーム好きは某ヒトデ頭の王様から拝借させてもらいました。
後篇もお楽しみに。

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