連載小説
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俺の太陽


「全く!それでも男かっ!」

先輩の叱咤の声が耳に痛い。
今日の仕事が終わり、俺は先輩と帰路を共にしている。

「いやぁ、こうも長い事幼馴染やってると逆に色々難しいんですよ…」

先輩は大きく溜息を吐く。
ドワーフという種族の先輩は、見た目は非常に小柄な女性(幼女というとぶん殴られるので注意)であるが、中身は姉御肌の頼りになる人だ。
鉱員見習いの俺に、仕事のイロハを教えてくれている師匠でもある。

「いいかね、アレン!マリーちゃんのような娘には、しっかりとリードしてくれる男性が必要なんだ。
 なのにお前がそんな女々しい事言ってたら終いにゃ愛想尽かされちゃうぞぉ?」
 
今日の昼に、幼馴染のマリーと先輩が顔を会わしたおかげで、先輩からはマリーとの関係を根掘り葉掘り聞かれることになってしまった。
黙秘権を行使するべきだったのだが、その辺は体育会系の組織の怖い所で、結局あれこれと話すことになったのである。


マリー。俺の幼馴染の少女。種族はトロール。
高い背丈に、大きくて優しい印象を受ける手足。
花の香りと、お日様のような落ち着く香りを周囲に振り撒いている少女。


彼女と初めて会った日の事は、もう覚えていない。
物心がついた時にはすでに俺とマリーは一緒に居た。
兄妹のような、親友のような、なんとも微妙な関係。
その関係に疑問を抱くこともなく、生きてきた。つい最近までは。

この関係では、満足できなくなったのはいつの頃だったか。
どんどん女らしく魅力的になっていくマリーを、いつの間にか目で追うようになっていた。
彼女の独特の芳香を鼻で感じる度に、ドギマギとした。
鉱員見習いとして働くようになって、二人でいる時間が減れば元に戻ると思っていたのに、あろうことか彼女は毎日弁当を運んでくるようになる。
結局、俺は余計にマリーの女性らしさを意識するようになってしまった。
弁当を美味しいという度に、太陽のように笑うマリーの事が頭から離れなくなったのだ。

要するに、俺はマリーに惚れてしまっているということだ。

「そもそもだな。
 毎日お弁当作って持ってきてくれる健気なマリーちゃんに、アレンは少しでも礼を返しているのか?」
 
「そりゃぁ、毎日ありがとうとは言ってますけど…」

「アホウ。そんな事は当然だ。
 たまには日頃の礼として贈り物の一つでもしてやるのが男の甲斐性ではないかね?うん?」
 
先輩は小さな胸を張って誇らしげに語る。
つい、悪戯心が湧き立つ。

「じゃあ先輩は、男から何を貰った経験があるんですか?」

偉そうに語っていた先輩が固まる。
実に分かりやすい。

「そ、そりゃあ、まぁ、色々だ!色々!」

ちなみに先輩は未婚の魔物娘である。
この時点で語るに落ちるというものであるが、これ以上ツッコむと後が怖いのでやめておく。

「ま、まぁ、何だかんだ言ってもだな、魔物娘にとって一番の贈り物というのは好いている男からの好意なんだ。
 早く、腹括って好きだと言ってしまえ。」
 
「はい…」

「うむ、マリーちゃんのような娘を泣かせたらそれこそ男の名折れだ。
 嫁の為なら仕事のサボりも許してやるから覚悟を決めろ!」
 
先輩が背中をバンバンと叩いてくる。
幼女体系からは全く想像も出来ない怪力だ。

「いだだだっ!わ、分かりました!分かったから叩くのやめて…!」

「お?あぁ、ごめんごめん。」

背中がヒリヒリする。
全く悪びれずに言う先輩を恨みがましく見るが、意に介する様子はない。

「…マリーちゃんは、ひょっとするとアレン以上に悩んでるかもしれんよ。
 そんなのは、お前としても本意じゃないだろう?」

一転して、真剣なまなざしで先輩がこちらを見つめる。
後輩の悩みには、本気で向き合ってくれるいい先輩だ。絶対に本人に言うつもりはないが。

「…うっす。頑張ります。」

「うむ、じゃあな、また明日。」

いつの間にか自宅の前に着いていた。
こちらを見ずに手をひらひらと振りながら先輩は去っていく。

(頑張ります…かぁ。)

言ってしまった手前、何もしない訳にはいくまい。
なにより、このままの関係でいることに俺自身が我慢ならなくなる予感がある。

チラリと、マリーの家を眺める。
今、彼女は何をしているだろうか。


__________________________________


翌日。
いつも通りの仕事。
個人的な事情で仕事に支障をきたす訳にはいかない。
努めてマリーの事を考えないようにしてつるはしを振るう。

一心不乱で仕事をしていると、いつの間にか日も高くなり、昼飯時となっていた。
そろそろかと思っていると、案の定坑道の入り口から俺を呼ぶ声が聞こえた。

「おーい、アレン!マリーちゃん来たぞー!」

ふぅっと小さく息を吐き、つるはしを置く。
昨日の先輩との会話もあって、少々気まずい部分はあるが、それをマリーに悟られては元も子もない。
いつも通りに、顔を会わそう。

外へ出ると、マリーはいつものバスケットを持って待っていた。
気のせいか、マリーの顔色が悪い。寝不足だろうか。

「マリー?どうした?体調悪いのか?」

「う、ううん!何でもないよ!ほら、ご飯にしよ?」

やはり少し様子がおかしい。
とはいえ、彼女が大丈夫だというならあまり深く追求するべきでもないだろう。
マリーからは何度もデリカシーが無いと怒られている。また怒りを買うのもよろしくない。


マリーの弁当は今日もとても美味しい。
先輩の言いつけ通り、しっかりと美味しいことを伝える。
その度にマリーは嬉しそうに微笑むが、やはり雰囲気が暗い。
さすがに心配になり、彼女に尋ねる。

「なぁ、マリー。ホントに大丈夫か?
 なんか元気ないぞ?」
 
「だ、大丈夫だよぉっ。ちょっと、夜更かししただけだから…」

「ふぅん…」

マリーは隠し事が非常に下手だ。
すぐに顔に出るし、尻尾が落ち込むように垂れるので、ある程度付き合いがあれば誰でも見破れる。
俺には、これが嘘である事もすぐに分かってしまった。
更に追求しようかとも思ったが、遮るようにマリーが言った。

「…あのね、アレン君。今日は、デザートも作ってきたの。
 上手く出来たか分からないけど、よかったら、食べて…?」
 
マリーは、やけに神妙な面持ちでバスケットから二つの器を取り出す。
美しい青いゼリーを、こちらに差し出してきた。

「おぉ、珍しいな。
 何のゼリーだこれ?」
 
毎日のように弁当を作ってもらっているが、デザートが付いているのは初めてだ。
深い青に染まったゼリーがプルプルと揺れる。

「えっと、リリィさんに珍しい果物を貰ったの。
 口に合ったら嬉しいな…」
 
そう言いながら、マリーは赤いゼリーを手に取った。
やはり表情が固い。
ゼリーの出来が不安なのだろうか。
見た目はとても美味しそうだし、マリーの料理が口に合わなかった経験は無い。
早く安心させてやるためにも、スプーンでゼリーを掬って口に運んだ。

「お…?」

元の果実の味だろうか。さわやかな酸味が口に広がる。
食べたことのない味だ。
思ったよりも酸味が強いが、普通に美味い。

「うん、美味し…あれ…?」

美味いと伝えるために、マリーの顔を見ると、妙な違和感を覚える。

マリーから目が離せない。
もっと近くにマリーを感じたい。
マリーもぼおっとした顔でこちらを見つめている。
眉が下がり、こちらにすがるような色気のある眼差し。
思わず生唾を飲み込む。
なんだこれは。
引き寄せられるように彼女に体が近づいていく。

「アレン君…?」

マリーが熱に浮かされるようにポツリと俺の名を呼ぶ。
マリーの眼が潤んでいるのが分かる。
俺の名を呼ぶ声が、頭の奥に響き続けているような感覚。
彼女の顔が近い。
花の香りと、マリーの優しい香りが鼻に届いて、頭が痺れる。
ふるふると少し震えているマリーの唇。
瑞々しくて、ふっくらとしている。
あの唇を塞いだら、さぞ甘いのだろう。
長い付き合いだが、こうも接近して見つめあった経験は無い。
長いまつ毛や、唇から感じる女らしさにぐつぐつと劣情が込み上げてくる。
あぁ、こんなに可愛くて、愛らしくて…

「「あ…」」

同時に声を漏らす。
いつの間にこんなに近づいていたのだろう。お互いの手が地面で触れ合っていた。
マリーの手は俺より大きいが、触った感触は女性らしい柔らかいものだった。
優しい手だ。手から伝わる彼女の体温が心地いい。まるで春の太陽のように暖かく、優しい温度。
本当なら、すぐに手を離すべきなのだが、お互いに手を離せない。いや、離したくない。
指先が触れ合うだけだった手が自然と動き、マリーの手と絡み合うように指を組む。
もっとくっついていたい。彼女の体温を感じたい。

「マリー…なんか、俺、変だ…。」

気を抜くと、今にもマリーの唇を奪ってしまいそうだ。
これ以上は駄目だ。理性を総動員して、不調をマリーに訴える。
原因は分からないが、今の俺はおかしい。
あれだけ取り繕って、隠してきた愛慕の情が、溢れんばかりに込み上げる。

「…マリー、今日は、もう帰ってくれ…。このままだと、俺…」

必死で訴えるが、その間にも、彼女の芳香が俺の鼻を刺激して甘い痺れが体を巡る。
もっと、近くで、彼女の香りに、埋もれていたい。
息が荒くなるのが分かる。

「…私とくっついてるの、アレン君は、嫌?」

静かだが、熱っぽい声音でマリーが尋ねる。
顔を伏せて、答えを聞くのを怖がるように小さく震えている。


「私は、嫌じゃないよ…?ずっと、アレン君と、くっついてたい、な…。」


「っ…!」

上目遣いでこちらを見つめるマリーと目が合う。
潤んだ瞳に浮かぶのは不安と期待。
頭の向日葵を空いている手で触りながら、絞り出すようにマリーは続けた。

「…もっと、アレン君と、くっつきたい。
 ぎゅうって、抱きしめてほしいし、その、ち、チューもしてほしい…。
 …ねぇ、アレン君は、嫌、かなぁ?」
 
指を絡めていたマリーの手がこわばっているのがわかる。
自分の鼓動の音がうるさい。マリーの声が聞こえないじゃないか。
相変わらず小さく震えているマリーの手を少し強く握る。
彼女から香る芳香がますます強くなった気がして、頭がまともに回らない。
緊張からか、喉がやけに渇く。

「…嫌な訳、あるか」

渇いてはりつく喉をこじ開けるように、小さく呟く。
マリーに聞こえているか不安になるほどの声量だったが、驚きで目を見開く彼女を見れば、声が届いた事が分かった。
その顔を見て、心は決まった。
マリーの手を引き、立ち上がる。

「えっ?アレン君…?」

「いいから、ちょっとついてきてくれ。」

不安そうに声を掛けるマリーの手を強引に引き歩く。
坑道の入り口まで来ると、目当ての人物が見つかった。
もう、余裕がない。
急かされるように大声で先輩に向かって叫ぶ。

「先輩っ!すみません、午後の仕事サボりますっ!」

先輩は、一瞬呆気にとられたような表情を浮かべたが、俺に手を引かれているマリーを見ると、ニヤッと笑った。

「おうっ!午後だけと言わずに明日も休んでいいぞ。
 男見せて来な、アレン!」
 
楽しそうにニヤニヤと笑いつつ、先輩は大声でそう言った。
本当に、いい先輩を持ったものだ。
何が起こっているのか分からず、マリーは目を白黒させている。
先輩に軽く頭を下げ、マリーの手を引いたまま坑道を離れた。

「あーぁ、羨ましいねぇ、全く…」

後ろから先輩のボヤキが聞こえてきた気がしたが、聞こえなかった事にしよう。

_______________________________________


無言でマリーと手を繋ぎ、歩き続ける。
最初は手を引かれるように歩いていたマリーも、今は俺の横に並ぶように歩いている。

目指しているのは、昔から二人の遊び場になっていた小さな広場。
人目に付かないあの場所を、二人の秘密基地と呼んではしゃいでいた。
いつだったか、マリーに向日葵の花を贈って以来、あの広場でどれくらいの時間を彼女と過ごしただろう。

大小様々な岩が転がり、僅かに草木の生える広場に到着すると、自然に二人の足が止まる。
相変わらず広場に人は居ない。
この場所に来るのも久しぶりだ。昔は大きく見えた広場も、こんなに小さい空間だったのかと妙な感傷に浸る。

「アレン君、なんでここに…?」

不思議そうに俺の顔をマリーが覗く。

「伝えるなら、ここでと決めてたんだ。
 もう、これ以上、うだうだしてたら、マリーに愛想尽かされるかもしれないからな。
 俺も、覚悟を決めたよ。」
 
内心の緊張、不安、そして彼女に対する劣情を無理やりねじ伏せて、冷静に話す。
喉の渇きは最高潮に達し、唇まで乾いて貼りつく。
手が震えそうになるが、これも必死で抑える。
惚れた女に情けない所を見せる訳にはいかない。

繋いでいた手を解き、マリーと向き合う。
背の高いマリーの顔が、正面にある。
眼が潤み、不安に怯えるような顔。


「…マリー、俺は、お前が、」


「待って!!」


一世一代の告白が、マリーの悲痛な叫びでかき消される。
胸に去来する絶望感。
固まってしまう俺に構わず、マリーが続けた。

「違うの、アレン君…。
 その気持ちは、本物じゃないの…。」
 
「え?」

彼女が何を言っているのか分からない。

「…アレン君がそう思ってくれているのは、さっきのゼリーのせい。
 リリィさんから貰った夫婦の果実が材料になってたの。
 だから、アレン君が私とくっつくのが嫌じゃないのも、
 私を見て息を荒くしてくれたのも、
 全部、全部、果実のせい。
 その、私も、果実でおかしくなっちゃって、
 あんな事言っちゃったけど、気にしないで…?」
 
「……」

今にも泣きそうな顔で、マリーは話す。
俺は、黙って聞いている事しかできない。

「ごめんね、騙すようなことして…。
 もう、私なんて大嫌いになっちゃうよね…。」
 
ついに、大粒の涙が、マリーの眼からこぼれる。
次から次に溢れて落ち、彼女の服に染みていく。

「だから、私なんかにアレン君がそんな事言っちゃ駄目だよ…。
 アレン君は、私よりもっと綺麗で、女の子らしい娘と結ばれないと、駄目だよ…。」
 
「マリー、お前…」

掛けるべき言葉はいくらでもあるはずなのだが、咄嗟に出てこない。

「私なんて、手も足も太くてみっともないし、変な臭いするし、
 肌も浅黒くて汚いし、背も無駄に高くて、女の子らしくないし…。
 リリィさんや、アレン君の先輩みたいに、魅力はないから…。
 …ね?アレン君は私なんかじゃ吊りあわないよ。
 もっと、素敵な相手が沢山いるよ?」
 
ボロボロと泣きながら、顔を上げてマリーが笑う。
いつもの太陽のように暖かい笑顔ではない。悲痛で、内心を押し隠した彼女らしくない笑み。
やめてくれ、俺はマリーの笑顔に惚れ込んでいるんだ。
そんな顔で笑わないでくれ。
俺がどれだけお前の笑顔を見てきたと思っているのだ。
そんなもの、本心じゃない事くらい、俺にはすぐわかるに決まっているだろうに。


「…マリー、お前の手、大きくて優しい手だと思う。
 俺よりも大きいけど、女らしく柔らかいし、凄く暖かい。
 マリーの手が、俺は大好きだ。」
 
「え…っ?」

予想外の言葉だったのだろう。驚きでマリーが声を漏らす。
意に介さずに、俺は続ける。

「マリーの匂いも、大好きだ。
 花の香りと、お日様みたいなお前の匂いを嗅ぐと、凄く安心するんだ。
 それに、訳が分からないくらいに、興奮する。」

「や、やめてよ、アレン君。だから、それは果実のせいで…」

「果実の事なんて知るか。
 そんなモン食べる前から、ずっと思ってた俺の本心だ。
 俺が世界一好きな女が、自分はイイ女じゃないと言うんだ。
 これが黙って見逃せるか。」

ついに、マリーが固まる。
だいぶ恥ずかしいことを口走っている確信があるが、それこそ知ったことではない。
動き出した口は止まらず、ひたすらにマリーの魅力を語り続ける。
彼女の両肩に手を置いて、真っ直ぐに目を見つめた。


「肌が汚い?何言ってんだ。
 さっきから繋いでた手がスベスベで、どれだけ俺が悶々としたと思ってる。
 
 マリーの背が高くて良かった。
 こんな風に真っ直ぐに目を見つめて話せるからな。
 
 マリーの料理は滅茶苦茶美味い。絶対にいい嫁さんになる。
 毎日毎日、大変だろうに弁当を持ってきてくれて、しかもどんどん美味くなる。
 俺には言わないけど、たくさん練習したんだよな?そんなもん惚れるに決まってるだろ。
 
 楽しそうに花の事をしゃべるマリーが可愛くて仕方ない。
 その向日葵、俺がマリーに贈って以来ずっと大切にしてくれてるよな。
 事ある度にその向日葵を気にしているのが俺は凄く嬉しい。
 こんなに健気で可愛いマリーが女の子らしくない訳がない!」
 
「う、うぁ…」

怒涛の勢いで話す俺に、マリーは口をパクパクさせている。

「いいか、もう一回言うぞ。
 
 大好きだ。マリー。
 
 もう、ただの幼馴染で居たくないんだ。」
 
「あぁ…、うぁあ…、アレン君…」

マリーの両肩に置いた手から、彼女の力が抜けていくのが分かる。
相変わらず彼女の涙は止まらない。
茫然として、糸の切れた人形の様になっているマリーの肩を引き寄せる。
彼女の大きな胸が俺の身体で押しつぶされて形を変える。
頬が触れ合いそうな距離に彼女の顔がある。さらさらとした髪が顔に触れてくすぐったい。
胸の柔らかい感触と、一層強まる彼女の芳香に頭がくらくらするが、足に力を入れて踏ん張る。

「…駄目だよ、そんなに優しくされたら、私、我慢できなくなっちゃうよ。」

「…俺だって色々我慢の限界だよ。全く、夜寝れなくなったらどうしてくれる。」

「ふふ…、ばか。」

ようやく、マリーの口調がいつもの軽口を言い合う時のものに戻ってきた。
彼女の大きな手がゆっくりと腰に回され、優しく力が加えられる。
顎を俺の肩に乗せるように、マリーがしなだれかかってきた。

「…私も、アレン君の事が大好きです。」

「うん。」

「私、アレン君が先輩と一緒に歩いてるのを見て、急に怖くなったの。
 私の傍からアレン君が居なくなっちゃうって。」
 
「うん。」

「そしたら、もう居てもたってもいられなくなって、あのゼリーを作っちゃってた。
 私、アレン君が思うよりも嫉妬深いし、そんなに良い子じゃないよ?
 それでも、いいの?」
 
「いいよ。マリーじゃないと、嫌なんだよ。」

「えへへ…、そっかぁ…」

腰に回っている手が、キュッと強く締められて、マリーと俺の身体が更に密着する。
彼女の柔らかさ、体温が頭の中まで溶かしてくるような甘い抱擁。

「…じゃあ、もう、我慢しなくていいよね?
 ギューってするのも、チューするのも、いいよね…?」
 
「っ…!」

甘えるような声音でマリーが尋ねると、彼女の芳香がさらに強くなった。
彼女の体温が、俺の身体を溶かし、声と香りが、頼りない俺の理性をドロドロに蕩けさせる。
幼馴染の身体が、急に色気と欲望を纏った女の身体に変わっていくのが分かる。

「ねぇ、アレン君から、優しくチューしてほしいな…♥
 だめ…?」

身体は強く密着したまま、媚びるように顔だけこちらに向けて口づけをねだるマリー。
口内で赤くてらてら光る舌と、白い歯が、強烈に脳髄を揺さぶる。
押し付けられた胸からは、彼女の鼓動が高まって跳ねるのが分かった。
マリーの鼓動すら、俺に快楽をねだっているような気がした。

もう、我慢の限界だ。
マリーの口に誘い込まれるように、唇を彼女に押し付けた。

「ちゅ…、ちゅぅ…ん…♥」

触れ合うだけの、稚拙で、優しいキス。
彼女の唇はとても甘い。
頭が真っ白になりそうな恍惚感。
唇が離れても、残った感触だけで蕩けるような痺れが走る。

「んぁ…♥ちゅっ…、えへへ、アレン君の唇、あまぁい…♥」

目尻が下がり、潤んだ瞳。
余韻を楽しむように、唇をぺろりと舐める舌。
長く一緒に過ごしてきたマリーの、見たことのない淫靡な表情に、ゾクゾクと震える。

「もっと、しよ…?奥まで、ちゅーしてぇ…♥」

マリーが口を軽く開き、舌を揺らす。
彼女はあくまでも受け身で、こちらの行為をねだるだけだ。
しかし、俺はもう彼女の言葉通りに動くことしか考えられなくなっている。

「んっ!ちゅる…んぁ…じゅるぅ…♥」

遮二無二、唇を合わせて舌で彼女の口内に侵入する。
甘い。
舌が溶けるように熱い。
あの果実を食べて以来、苛まれてきた喉の渇きが一気に潤う。
マリーの熱っぽい吐息が顔にかかると、理性を消し飛ばすような香りが鼻孔に甘く流れ込む。

「んふぅ…れろ…、じゅるるっ、んあぁ…♥」

口内の熱だけで溶けそうになっていたのに、更に熱い舌が俺の舌に触れる。
艶めかしく動くマリーの舌は、激しい接吻をねだるように、ゆるく俺の舌の腹を撫でた。
彼女の肢体の柔らかさ、
時折漏れ聞こえてくる悩ましげな喘ぎ、
甘い香り、
舌の熱さ、
全てが総動員されて、俺の理性をぐずぐずに崩していく。

「んあぁ…、じゅるぅ、ちゅぅ…、あれんくぅん…♥」

感極まったように俺の名を呼ぶと、腰に回っていた手が、俺の後頭部に添えられる。
大きくて暖かい手が、俺の頭を愛おしげに撫でた。
優しく慈愛に満ちた動きに、身体の力が抜けていく。
身を焦がすような興奮と、そのまま身を委ねたくなる安心感が渦巻く。

「れろぉ…♥もっほぉ…、舌、からませてぇ…♥」

唇をつけたまま、マリーがねだる。
誘うように動く舌に、舌を絡ませて、しごくように動かす。
マリーの甘い唾液が舌にまみれる。
あの果実なんかより、彼女の唾液のほうが余程俺を興奮させてくるのだ。
吸い付くようにマリーの舌を愛撫する。
口内の熱が体中に伝搬していくような感覚。

「じゅるるるっ!んはぁっ…♥じゅるる、んぅ…、あぁ…♥」

舌の動きが激しくなるにつれてマリーの身体が快楽に悶えるように悩ましげに動く。
柔らかい体を擦り付けるように動く彼女に、興奮を抑えられない。
劣情に誘われるままに手をマリーの臀部に回して、軽くもんでやる。
形がよく柔らかい彼女の尻肉に、指がわずかに埋まり、指先からは若々しい肌の張りを感じた。

「んぁっ♥ふふ…おしりぃ…♥ちゅぅ…じゅる…」

突然の愛撫に、マリーは身を跳ねたが、口づけは止める気配がない。
むしろ、更に激しい愛撫を誘うため、尻を軽く突き出してフリフリと揺らす。
マリーの尻尾が、尻の動きに連動して腕に甘えるように絡まる。
少し指を強めに食い込ませると、喜ぶように彼女の身体が震えた。

「んぁんっ♥ふぅっ、ふうっ、んちゅ、れろぉ…」

マリーの吐息が荒くなってきた。
快感に身をよじるが、なおも激しく舌を絡める。
いつまでもこうしていたいが、やがて限界は訪れる。
いよいよ、酸欠で頭がくらくらとしてきた。
限界を迎え、ゆっくりと唇を離すと、二人の間に唾液で橋が架かる。

「「ぷはぁっ…!」」

二人同時に空気を貪る。
唇が離れてなお、口内にはマリーの甘い味が残っている。
唇が彼女の温度を感じられなくなった事に寂しさを覚え、すぐさまマリーの首筋に唇を落とした。

「あんっ!ふふっ、くすぐったいよぉ…♥」

楽しそうに笑うマリーに、キスの雨を降らす。
彼女の柔らかい肌は、名残惜しむように唇に吸い付く。
うなじの辺りから強く香る彼女の芳香を、息を吸い込んで楽しむ。
甘い痺れが体を走り、痺れは興奮に変わって下半身にドクドクと血を運んでいくのが分かる。
とっくに陰茎はガチガチに反り立ち、彼女のお腹に当たっていた。
唇が離れたことで手の愛撫が活発になり、片手はお尻に、片手は豊満な乳房のあたりをまさぐる。

「うぁっ!あんっ…!アレン君、触り方やらしいよぉ…♥」

「やらしい事、やってるからな。」

淡々とそう答えるが、内心は興奮で煮えたぎりそうだ。
マリーの緑のワンピースは、胸元が大きく開いたデザインになっている。
俺の愛撫のせいでだいぶ胸元がはだけ、張りのある双丘が既に半分ほど露わになっていた。
片手では溢れるほど豊かな胸に手を這わせた。

「んぅっ♥ふふ、私のおっぱい、どうかな…?」

「なんというか、凄い、な。」

馬鹿みたいな感想しか言えないのが悲しい。
マリーの胸は柔らかくて、どこまでも指が沈み込んでいきそうだ。
こんなに大きくて柔らかいのに、乳房の形はとても良くて、垂れるようなこともない。
おそるおそる愛撫をしていると、胸の頂点が固く突起しているのが服の上からでも分かった。

「アレン君、直接、触ってみる…?」

「!あ、ああ。」

上目遣いで提案するマリーの顔は赤く、潤んだ瞳は俺の中のどす黒い劣情を燻る。
緊張で言いよどみながらもなんとか答えると、マリーはワンピースの胸元の紐を緩めた。
すると、ワンピースがするりとずれ落ち、へそのあたりで止まる。
今まで決して露わになる事のなかった双丘が、目前に晒された。

「ぅわ…」

あまりに淫靡な光景に思わず声が漏れた。
ワンピースが落ちた瞬間、抑えを失った乳房が水風船のように揺れたのが分かった。
重量感があるのに、垂れずにピンと張った双丘。
今まで服で抑えられていた濃い彼女の香りが一気に広がった。
丸い乳房の先端には、小ぶりな突起がピンと存在を示す様に突起している。
たまらず、乳房を覆うように手を添えると、マリーがビクリと震える。

「ん…♥ふぁ…」

少し力を込めると、マリーの口から悩ましい声が発せられる。
ほんの少しの刺激でも敏感に反応を示すマリーに如何ともしがたい興奮を覚えた。
加減が分からず、怖々と触る事しかできなかったが、いよいよ興奮が抑えられなくなり、やや乱暴にマリーの胸を揉みしだく。

「うぁあっ…!やんっ…!急に、そんな…、あっ♥」

手の動きに対して、素直に胸が形を変える。
技術も何もない愛撫だが、力を加える度にマリーは嬌声を漏らし、徐々に乳首が固くしこってくるのが分かった。
試しに、乳首を指で強めに弾いてみる。

「んあっ♥んっ!ふぅ、ふぅ、ちくびぃ…すごいぃ…♥」

素直に快感を享受するマリーが、愛おしい。
とっくに崩れ去っている理性を無視して、乳房の先端に吸い付いた。
強く吸い、甘く噛む。
舌で転がし、舐る。
何故こうも甘く感じるのか。

「いぃっ!?うあっ、コリコリ、だめぇ…♥」

駄目と言いつつも、マリーは胸にしゃぶりつく俺の頭を掻き抱いた。
空いている乳首は片手で弄ぶ。
刺激で血が通ってきたのか、浅黒いマリーの肌に少し朱が差した。

「あっ、それぇ…♥噛みながら、んっ!コリコリされるの、すきぃ…♥」

マリーの声も身体も、快楽に陶酔するように力が抜けていく。
彼女がねだる通りに、すこし強めに噛んで、先端を舌で揺らす。
刺激に慣れないよう、緩急をつけながら、マリーを啼かせる。

「んあぁっ…♥アレンくぅん、だめだよぉ…、そんなにしたら、私…♥」

何かに怯えるようにして、マリーが軽く俺を押し返そうとするが、その手に本気の拒絶は感じない。
構わず、片手で彼女の腰を引き寄せて、執拗に愛撫を続ける。
徐々に愛撫にも慣れてきた。様々に変化を加えつつマリーの胸を責める。
焦らすように乳首の周りをなぞり、突然に甘噛みをする。
舌の腹でこすり、先端で弾く。

「うあぁあ…♥だめぇ…、んうっ♥ほんとに、このままだとイっちゃうからぁ…♥」

どうやら、拒否を示したのは絶頂が近いためらしい。
俺の愛撫で、マリーがイク。
その想像で、俺の中の昏い欲望は燃え上り、マリーに法悦を極めさせるための動きにシフトする。
乳首には決して触れないよう、指と舌を円を描くように動かす。
マリーは、自分の懇願が聞き入れられたのだと勘違いして、軽く力を抜くが、焦らされるような動きにもどかしげに喘いだ。

「んぅ…、ふぅ、ふぅ…、ぁ…♥うぅ…」

今だ。マリーがゆるい刺激に油断したタイミングで、強く乳首を食み、指でつまむ。
マリーの身体が、電撃に撃たれたように激しく動く。

「ひぃっ!うああっ!だめ、だめぇっ♥イク、イクイクイクっ、おっぱいだけでイっちゃうっ♥」

もうひと押しだ。舌の先端で乳首を弾き続け、指は突起をしごくように激しく動かした。

「あぁああっ♥もう、むりぃっ!イク!んっ!うあ、ああぁぁぁああぁあっ♥♥♥」

絶叫を上げて、マリーが激しく痙攣する。
おとがいを上げ、快楽を叫ぶ顔は、恍惚として完全に蕩けている。
もう立って居られないようで、はしたなくがに股になって腰をカクカクと震わせた。
崩れ落ちないように腰をしっかりと抱きとめる。
焦点が合わず、虚ろな眼。
端から涎が垂れる唇。
完全に、快楽に塗りつぶされたマリーを見るだけで、俺も絶頂してしまいそうなほどの興奮を覚える。
俺が、マリーを絶頂させた。
俺の手で、マリーを気持ちよくさせる事が出来た。
絶頂の最中にいるマリーには、俺から与えられる快楽が全てだ。
いつも、太陽の様に笑うマリーが快楽に染まった顔をしている。
目の前の女を、俺の一番愛しい女を、自分のモノに出来た。
浅ましい達成感が身を包む。
徐々に、マリーの痙攣が落ち着いてきた。
息は荒く、体重は完全に俺の身体にかかっている。まだ一人では立って居られないようだ。
相変わらず蕩けた締まりのない顔に笑顔を浮かべている。

「あぁぁ…、えへぇ、私、初めてなのにぃ、おっぱいだけでイっちゃったぁ…♥
 どーしよぉ、アレン君…、私、ヘンタイさんなのかなぁ…♥」
 
脱力しきった声で話すマリーは、普段より幼い印象を受ける。

「だったら、マリーを見て興奮してる俺も変態だな。」

「ふふふ、そっかぁ…。じゃぁ、私たちはヘンタイさんカップルだねぇ…♥」

そう言うと、マリーは甘えるように体をこすりつけてきた。
先ほどから、生殺しを喰らっているペニスが、さらに怒張する。
ずっと彼女のお腹に当たっていたので、勃起している事は彼女も承知しているはずだ。
人目は無いとはいえ、外でこんな事をしている以上、変態行為と言われても確かに文句は言えないだろう。
まぁ、この程度の事はこの町の夫婦なら誰でもやっている事なので、もう深く考えるのはやめにした。

「ねぇ、アレン君…?」

「ん?」

「あのね、その、これ、苦しくないの?」

マリーが視線で指し示すのは、ズボンの下でこれでもかと言わんほどに反り立つ陰茎。
ギチギチに張りつめ、ビクビクと震えている。
次いで、マリーは赤い顔でこちらを見つめ、もじもじと体を動かした。

「あの、アレン君のそれって、え、えっち、すれば、治るんだよ、ね?」

「な…っ」

「あの、硬くなって、苦しそうだし、此処で、しよ…♥」

「いや、マリー、こんな場所でそんな…」

「…私たちは、ヘンタイさんカップルだから、この位普通だよね…?
 それに、その、私も、もう、我慢できないかなって…
 お外でえっちしちゃう、いやらしい女の子は、嫌い…?」
 
マリーがゆっくりとワンピースの裾を持ち上げる。
白いショーツが露わになるが、既にぐちょぐちょに濡れておりうっすらとショーツの向こうが透けている。
マリーらしからぬ大胆な行動だが、彼女も勢いでやりきってしまったのだろう、顔は真っ赤で、裾を持つ手がプルプルと震えている。
あのマリーが、男を誘うために、スカートをまくりあげて、秘所を見せつけている。
恥ずかしそうに赤くなった顔には、確かに期待の色が見えて。
その光景を見て去来するのは、脳天を撃ち抜かれたような興奮。

あぁ、もう、可愛い奴め。

マリーの言葉を聞いて、何かが吹っ切れた。
無言で彼女を大岩に手をつかせて、お尻を突き出させる。いわゆる、立ちバックという姿勢だ。
最初は要領を得ていない様子のマリーであったが、お尻を突き出すように指示されて、俺の意図する所が分かったらしい。
にへらと媚びるような笑みを浮かべると、お尻を高く上げた。

ワンピースの裾をもう一度まくり上げると、露わになる桃のようなお尻と貼りつく白いショーツ。
清楚な白いショーツが、愛液にまみれているのが、実に淫靡に映る。
ショーツはマリーの足でも履けるように、左右にホックが付いている。
ホックをずらして外すと、パチンと小気味良い音を立て地面に落ちた。

「んっ…♥は、恥ずかしいから、あんまり見ないで…」

そう言いつつも、マリーは更なる刺激を求めるかのように、ゆっくりと尻を振る。
彼女の匂いが、むわっと熱を伴って鼻に伝わってきた。
脳の芯が、溶ける様な、錯覚。
もう、今日何度目の体験なのか数えるのも億劫なほどだが、一向にマリーが発する香りに興奮を煽られる。
花と、お日様の香り。甘くて、健康的で、決して淫らな臭いではないというのに。
パブロフの犬のように、マリーの香りを嗅げば無条件で興奮を覚えるように体が変わってしまった。

溶け出した思考が赴くままに、自分のズボンを下ろし、陰茎を露出する。
本当に自分のモノなのか疑わしくなるほど、かつてない大きさに反り立っている。
マリーの尻たぶを固定するように掴み、亀頭の先端を、入り口の辺りにつける。
先端があたる感触を感じて、マリーの身体が強張った。
俺はというと、先端をつけただけだというのに、射精しかねないような快感を感じて、衝動を抑えるのに必死だ。
彼女の柔らかく愛らしいお尻と、グロテスクな陰茎の対比が、あまりにも背徳的で。
いまだに奥の方から溢れてくる愛液が、亀頭を濡らす。
思わず、生唾を飲み込む。

「…マリー、いいか?」

我ながら、女性経験のなさがこれでもかと言わんほどに露呈する発言である。
しかし、この段階に至って、まだマリーを気遣う冷静さが残ってくれていたことに、自分で安心する。
技術も知識もない俺が、マリーを気持ちよくさせてやるには、最大限の気遣いをしてやる他ない。

もう、二度と、マリーが自分に自信が持てなくなるような事がないように。
マリーが、俺にとって最高の女なのだと分かってもらえるように。
これでもかというほどに気持ちよくしてやりたい。

「うん…、アレン君、きてぇ…♥」

甘くマリーが言うと、ゆっくりと腰を前に突き出していく。
僅かな抵抗を感じるが、肉を押し分け亀頭がマリーの膣内に埋まる。

「ぐっ…!くぅっ…」

「あっ、うぁ、ッ〜〜〜♥」

苦悶に耐えるような声をお互いに漏らす。
先端が埋まっただけだというのに、身体中に快感が巡る。
熱く滾った陰茎よりも、マリーの膣内は熱く火照っている。
愛液まみれの膣内は、一切のすき間なく、みっちりと亀頭を包む。
だというのに、奥へ奥へと誘い込むように蠕動し、吸い込まれるように陰茎が埋まっていくのだ。

歯を食いしばり、射精の衝動に耐える。
マリーの尻を掴む指に思わず力が入ってしまう。
限界を何度も感じながらゆっくりと陰茎をマリーの膣内に埋めていく。
たっぷり一分ほどかけて、ようやく陰茎がほぼ見えなくなるまでに至った。

しかし、責めたててくる快感は治まらない。
亀頭の先端が、マリーの最奥に当たると、キュッと膣が締まる。
ただでさえ強烈だった包み込む膣肉の快感が増す。

腰をひたすらに振って、快感を貪りたい。
劣情に支配されそうになるが、秘所からわずかに垂れる赤い血を見て、少し冷静さを取り戻した。

「ぐっ…、マリー、大丈夫か?痛くないか?」

心配になり思わず尋ねるが、返ってきた返事は予想外のものだった。

「う、うんっ!ちょっと、痛いけど、うぁっ♥すごいぃ、キモチイイのぉ…♥
 あはぁ…♥やっぱり、私、ヘンタイさんだぁ…♥」
 
恍惚として、うわ言のような声音で快感を訴えてくる。

「えへぇ、アレン君…、動いて、いいよぉ…?
 ズンズンって、突いてぇ♥私を、もっと、ヘンタイさんに、してぇ…♥」
 
お尻を突き出し、奥に誘い込むように動くマリーを見て、俺の中に僅かに残っていた冷静な理性が完全に破壊された。
肉付きのいい腰を、ハンドルの様に持ち、腰を一度深くまで押し込む。

「いっ!?うああぁっ!ああっ♥すごぉいっ♥」

肉が打ち合う衝撃で、マリーの尻がタプンと揺れる。
抉りこむように奥を突いた陰茎に、膣肉が纏わりつく。
まるで、逃がさないように捕らえ込むような膣肉の動きを振り切り、陰茎を抜く。

「うぁあああ…♥抜けて、いくの、きもちいいよぉ…♥」

「もう、手加減、出来ないからな…っ!」

「うんっ!いいから、遠慮せずに、乱暴に、してぇっ…♥」

歯を食いしばり、下腹に力を込めて、腰を振る。
少しでも気を抜けば暴発しそうだ。

「ひぁっ♥う゛ぁっ♥くぅっ!んぅっ♥」

「はあっ…!はぁっ…!」

獣のような吐息が俺の口から漏れる。
リズムよく上がるマリーの嬌声が、俺を狂わせる。
もっと、もっと、マリーを啼かせたい。

腰の動きが早まる。

「あぁあぁああっ♥ひぃっ♥だめぇ、私、どんどんヘンタイさんになってるぅ…♥」

マリーの尻尾が、俺の腰に絡まる。
花が上下に激しく揺れる。
汗が飛沫になって飛ぶ。

前屈みになって、上半身をマリーの背中に密着させる。

「んうっ…♥もっと、くっついてぇ…♥ギュぅってしてっ…♥」

言われるままに腰に手を回して、きつく抱きしめる。
確実に、奥に精を放つための体勢。
獣の交尾の様に乱れているという現状が、更なる興奮を喚起する。

「あぁ、もう、だめぇ…♥おかしくなるぅ…♥」

「いいぞっ!おかしくなっても、変態になっても、好きだから、大丈夫だっ…」

「ほんとぉ…?あんっ♥いやらしい女の子でも嫌いにならない…?」

「絶対に、大丈夫。もっと、マリーが、乱れるところが、見たいんだ…!」

興奮に中てられて、思ったことが全部口から出る。
それを恥ずかしいと感じる理性すらもう残ってはいない。
本能のままに、お互いの身体を貪る。

「うんっ、もっと、もっと、いやらしく、なるぅ…♥
 私を、ヘンタイさんに、してぇっ!
 アレン君専用の、いやらしいヘンタイさんにぃ…♥」

マリーが叫ぶと、膣の中の感触が一変する。
今まで、陰茎を包み、隙間なくまとわりついていた膣肉が、絞るような蠕動を始めた。
挿入の前後運動に、膣肉による搾精の刺激が加わる。

「うぉっ…!ぐぅ…、マリー…」

あまりに強烈な快感に、腰の動きが遅くなってしまった。
それでも、膣肉の動きは止まらず、絶頂へと確実に押し上げてくる。

「あぁっ♥もっとぉ、奥にぃ…♥」

緩まった動きに痺れを切らしたか、マリーが自分で尻を動かしてくる。
耐えがたい絶頂感が、すぐそこまで迫っていた。

「駄目だ、マリーっ、もう、出るからっ…」

もう少し動きを緩めてくれと伝えるつもりだったのだが、逆効果だったようだ。
マリーは、喜色を顔満面に浮かべると、更に尻の動きを加速させた。
腰を離そうにも、絡んだ尻尾が逃がしてくれない。

「あはっ♥うん、いいよぉっ!出してぇっ!全部、全部、私の中にっ♥」

「うっ…、ぐっ!こ、の…っ」

このままなすがままに射精というのも、男の矜持に反する。
後の事は考えず、勢いをつけて、マリーの膣を抉る。

「ひぃっ!うあぁあっ♥いいっ♥」

「ぐぅっ…!あぁ、もう、駄目だ…!」

ゾクゾクとした快感が背中を駆け巡り、熱い精液が陰茎の中をせりあがってくるのが分かる。
抗う事も出来ないし、既に抗うつもりもなかった。

「う、ぐっ…出る…っ」

「あくっ♥奥っ、奥に、注いでぇえぇ…♥」

尻尾が俺の腰を引き付けて、マリーの最奥に陰茎が固定される。
そのまま、叩きつけるように精を放つ。

「あぁっ♥出て、るぅ!ドクドクってぇ…っ♥」

陰茎が、ビクビクと震える。
同期するように体が痙攣した。

「ひいぃっ♥あぁ、私も、イっちゃ、あ…♥ひぃあああぁぁぁあっ♥♥♥」

甘い声を高らかに発するマリーを抱きしめ、二人同時に快感に震える。
二人が溶け合い、一つに合わさっていくような恍惚感。
鼓動の音すらも重なって、今までよりぐっと彼女の距離が近くなったようだ。

「あぁ…♥えへへ…、アレン君のせーえき、あったかぁい…♥」

未だに、ドクドクと脈を打ちながら精液がゆっくりと吐き出される。
凄まじい量の射精であるが、一滴も逃さぬようにマリーの膣が貪欲に吸い付いてきた。

「アレンくぅん…、チュー、しよぉ…♥」

蕩けきった顔だけをこちらに向け口づけをねだるマリー。
そのまま、肩ごしに唇を合わせた。
貪るような、性欲に突き動かされたキスではなく、お互いの愛しさを確認するような、優しい口づけ。

「ん…ちぅ…♥…アレン君、好きぃ…♥」

劣情が落ち着いて、マリーに対する愛慕が溢れ出す。
あんなにも興奮を覚えた彼女の香りを嗅いで、この上ない安心感を覚える。
彼女の体温、香り、柔らかさ。
太陽の下でまどろむような、心地よさ。
ともすれば、このまま眠りに落ちてしまいそうだが、そうもいかない。
ゆっくりと陰茎を抜く。

「んぁ…ふあぁ…♥」

縋り付くように膣肉が動く。
離れると、愛液が糸を引く。
奥から、精液が漏れてくる光景は、くらくらするほど淫靡だ。

しばらく、尻を突き上げたままの体勢でいたマリーだが、力が抜けたのか、その場でへたり込んだ。
俺も、その隣に座りこむ。
ごつごつとした地面だが、疲労感からかそのまま沈み込んでいくかのようだ。


「ふふふ、しちゃったねぇ、アレン君……」

「そーだなぁ、まさか、外ではじめてとは……」

くすくすと笑うマリーの手が、俺の手と絡む。
甘えるように、頭を肩に乗せてきた。
頭の向日葵を撫でながら、幸せそうにはにかんでいる。


「私、この向日葵があれば、すぐそこにアレン君がいるような気がしてね、いつも元気づけられてたの。
 あったかくて、優しい、私の太陽。
 でもね、これからは、アレン君に傍に居て欲しいの。
 代わりの向日葵じゃなくて、アレン君がいいの。
 ねぇ、これからも、私の傍に、いてほしいなぁ、なんて…」

 
手に絡む指に力が込められるのが分かった。
肩に置かれた顔は赤く、上目遣いで俺の反応を待っている。


「あぁ、その、こっちこそ、マリーに傍に、居て欲しい。
 俺にとっては、楽しそうに笑うマリーが、太陽のようなもんでだな…。
 うん、要するに、マリーが傍で笑っていてくれないと、困るんだよ、俺は。」

 
顔が熱い。
自分の発言でのぼせそうだ。
顔を隠してしまいたいが、この体勢ではそれもできない。

「えへへぇ、そっか、私が太陽かぁ……♥」

マリーが嬉しそうに、腕を組んでくる。
腕に感じる柔らかい感触に胸が高鳴る。
思わず、背筋が伸びてしまう。
すると、悪戯を思いついた少女のような顔で見つめるマリーと目があった。

「ふふ、どーしたの?アレン君…♥」

「いや、その、マリーの胸がだな……」

「へぇ、あんなにいっぱい出したのに、まだ元気になれるんだぁ…♥」

色気のある声が、更に俺の興奮を誘う。
大きな手が、ゆっくりと股間を撫でた。

「えいっ!」

手の動きに気を取られていると、突然マリーに押し倒された。
馬乗りにのしかかられて、見下ろされる体勢。
下から見ると、マリーの女性らしい体が強調されて、見惚れてしまう。

「お、おいっ?マリー?もう今日はだな…」

「もう、嘘はだめだよぉ…?こんなに硬くなってるのに…♥」

腰を、円を描くように動かされると、陰茎が刺激されて、血が送り込まれる。
あれほど射精したというのに、浅ましく屹立していく。

「いや、なにも、外でしなくても…」

「ねぇ、アレン君が、私をヘンタイさんにしちゃったんだよ…?
 責任取って、しっかり気持ちよくしてほしいなぁ…♥」
 
男に媚びた表情で、ワンピースを捲る。
清楚なイメージのあるマリーだが、これが魔物の本能ということか。
冷静になっていた頭が再び沸騰しだす。

「あぁっ、もう!」

「あんっ…♥」

もう、余計な事を考えるのも億劫だ。
欲望に身を任せ、彼女を抱きしめた。


あぁ、先輩。サボりは、明日だけじゃ済まないかもしれません…。


妙に冷静に、心中で先輩に謝罪しつつ、マリーの身体に溺れていく。

俺の真上の太陽は、暗い洞窟の中でなお淫靡に輝いて。
その熱は、どこまでも甘く、優しく俺を包むのだ。


15/07/24 03:06更新 / 小屋
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■作者メッセージ
いかがでしたでしょうか。

後編長いよっ!と思った方も多いかもしれませんが、これでも7千文字は本来の長さから削っております。
ちなみに、そのうちの5千文字がえっちぃシーンでした。なんというか、欲望だけで書くとこうなるといういい見本ではないかと思います。

後編は特に小難しい事も考えずに、ひたすら行き当たりばったりに書いたので、だいぶ荒い出来になっているかもしれませんが、同時に、非常に楽しく書くことが出来て満足です。
普段は、自信なさげで静かな感じの子が、いざ本番になるとどエロイのって股間に来ると思うのです。

次回は、マインドフレイアさんの連載になると思います。
間に読み切りが挟まるかもしれませんが、その時は、また馬鹿が馬鹿やってるなあっくらいに生暖かく見守って下さるとありがたいです。

ご意見・感想・お叱りの言葉全力でお待ちしております。

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毛屋
@keyamonpic
製作状況なども時折呟いてますので、お気軽にどーぞ

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