連載小説
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第四章(最終)
「げぇーっぷ。ごちそーさん」
「はい、おそまつさま」
夕食を終え、食器を片付けるニコラ。
梁に頭をぶつけそうになりながら食器を洗うニコラの背中を、マルギットは見つめていた。
ここに連れてきたのが、つい先日のように思えてならない。
あの頃に比べたら、すっかり大きな背中になってしまったな。
ちびりちびりと酒を煽りながら思い出を辿っていると、テーブルに何かが置かれた。
「今日は街から魚を買ってきたんだって。ちょっと分けてもらったんだ。
 イワシのすり身だよ」
灰色の団子がいくつかと、別の皿で赤いソースが出される。
「こっちは、いつものタヌキさんから分けてもらったんだ。
 東の国の・・・なんだったかな、果実の塩漬けのソース。
 酸っぱいけど、お酒によく合うってさ」
確かに、ソースはかなり酸っぱかった。が、何口か食べるうちに、ソースの適切な分量が判ってきた。確かにこれは酒向きだ。
「すり身は野菜と一緒に、スープで作ってあるから、
 酔い覚ましにどうぞ。余ったら明日の朝だね」
本当によく出来た主夫になってしまったな。
そんなことを考えながら、ふと違和感を覚えた。
あまりに微細なものだったので、それが何かを特定するまで相当悩んだが。
「おいニコラ、ブレスレット見せてみろ」
「え、あぁ・・・うん」
何故か渋々、といった風で、手を差し出すニコラ。
案の定、すっかり自分より太くなってしまった---元からマルギットよりは太かったが---腕には、今にもはち切れそうなブレスレット。
いつものちゃらちゃらという音が聞こえないはずだ。
「言えって言ったじゃねーか、まったく。遠慮しなくていいのに」
「え、いや、そうじゃなくて・・・」
「ほれ、貸してみろ。酔ってたってそれくらいならすぐ伸ばせるから・・・」
軽くニコラの腕を引いた直後。
ちゃりん。
限界に達したチェーンが切れ、ブレスレットがテーブルへと落ちた。
「あーぁ、言わんこっちゃない。ま、外す手間が省けただけだが-----」
ふと見上げたニコラの顔。
それに、思わず言葉を飲んだ。
あどけなさはまだ残るものの、精悍な顔つきになったニコラ。
その表情が、いつになく締まっている。
何かを、決心したかのように。
「・・・マル姉ちゃん」
「ど、どうした、ニコラ」
「僕、前から決めてたんだ」
小さく、これから吐き出す言葉の予行のように、深呼吸するニコラ。
「このチェーンが切れたら、姉ちゃんに告白しようって」
「・・・は?」
突然のことに、完全に思考が停止する。
「姉ちゃん、好きだ。
 ずっと前から、好きだった」
完全に停止していた思考は、それを理解するまで暫く間を要した。
そして理解した瞬間、暴走した。
「え、あ、へ、あ」
顔が灼熱しているのが判る。
鼻や耳から湯気でも出てるんじゃないかという程に。
「あ、アレだろ!姉として好き、とかだろ!
 だよなーアタシもニコラ大好きだぜーほら酒のつまみまで用意してくれ・・・」
「違う!」
迫力ある一言に遮られる。
「一人の男として、一人の女の、姉ちゃんが好きだ」
再度の思考停止。
真摯な眼差しを向けられるが、直視できない。
顔面が、炉の前にいるより熱い。
心臓が、カナヅチで叩かれたように縮こまる。
肺が、万力で潰されているかのように、呼吸が詰まる。
「姉ちゃんは、俺のこと、どう、思ってる・・・?」
尻すぼみな声と、告白という恥ずかしいシーンを意識し出したのか、真っ赤になったニコラの表情を見て、頭がかろうじて動き出す。
「え、あの、いや、じゃ、ない、けど、その」
なんとか絞り出す言葉。
「その、なんだ、アタシはもう、さんじゅ、いやお前とは歳の差がありすぎるし、
 見た目も小汚いガキンチョみたいだし、魔物だし、
 ガサツだし大酒飲みだし片付けできないし短気だし口が悪いしあとはその・・・」
「なんでもいい!
 僕が好きになったのは、そんなマル姉ちゃんなんだよ!」
いつもの勢いが出ない。
それはマルギット自身も感じていた。
「ずっと前から決めてたんだ。ブレスレットが切れたら、告白しようって」
だから、か。
だから、見せるのを嫌がったのか。
「マル姉ちゃんに守られる自分を卒業できたら、告白しようって」
だから、直すのを嫌がったのか。
「大人になれた・・・かな?どうか、自分じゃわからない。
 けど、姉ちゃんに釣り合う男を目指して、頑張ってきたつもりだ。
 どう、かな・・・?」
最初は確かに、守ってやらなきゃ、という気持ちだった。
でも、いつからだろうか。
保護者という立場を仮面にして、自分の気持ちを偽っていたのではないだろうか。
恋心という本心を隠し、向き合おうとしなかったのではないだろうか。
逃げて、いたのではないだろうか。
「・・・あ、はははっ」
負けた。
子供の面倒を見るつもりが、本当に子供だったのは自分だったのか。
子供だと思っていたのが、すっかり大人になっていたというのに。
自分だけが、子供だったのか。
笑うしかない。
「あ、ね、姉ちゃん」
「ははははっ、悪い悪い。そういうつもりじゃないんだよ・・・」
突然笑い出したこと謝罪し。
「ニコラ、大人になったね」
アタシも、自分に向き合う頃合いだったんだね。
だったら、この言葉を伝えなければならない。
「大好き」
アタシも、
「ニコラのこと、大好き!」
椅子からテーブルへと駆け上がり、そのままニコラの胸へ飛び込む。
突然のことだったが、逞しくなった腕はそれを抱きとめた。
見た目相応の、子供のような愛情表現。
短い手は脇までが精一杯で、つま先はニコラのへその前をぶらぶらしていたが。
力一杯抱きしめようとするマルギットの腕と。
完全に包んでしまえるほどに大きくなったニコラの腕と。
互いに苦しいまでに締め付けられるそれらは、互いの心の壁が、距離が、やっと無くなったことを喜ぶようだった。
その距離はさらに縮まり。
唇と唇が。
重なる。
「ん・・・ふ」
二人にとって、永遠とも思える一瞬。
それが離れたとき、互いの瞳に映ったのは、頬を赤らめた、互いの一番愛おしい顔だった。
どちらともなく、緩んでいた手が締まる。
呼吸を、いや、心音すら相手に合わせようとするように。
互いに、早鐘のようなそれを伝えるように。
「マル姉ちゃん・・・」
「へっ・・・四年もかかったか・・・待たせちまったな」
「ううん。平気。知ってたから。姉ちゃんが、僕のこと、大切にしてくれてること」
真顔で、直球で言われ、マルギットの顔が再度真っ赤に染まる。
「こ、のっ、こっ恥ずかしいをどストレートに言いやがって・・・!」
恥ずかしさのあまり、駄々っ子のようにニコラを殴るマルギット。
「わ、いてて!ね、姉ちゃん、その力で殴るのはダメだって・・・わっ!」
逃げたいがマルギットを離せないニコラは仰け反り、そのまま倒れ込む。
ベッドの上へ。
「へ、あ?」
何が起こったか判らないマルギットが妙な声を上げ。
ニコラに馬乗りになっている自分に気付く。
「あの、ね、姉ちゃん・・・」
夜、愛し合うもの同士、ベッドで。
連想するものはもちろん「ソレ」で。
「え?なんか尻の下に固いものが・・・」
疑問を持ったマルギットの下。
そこにはニコラの腰があり。
当たっている「モノ」といえば。
「わ、お、お前!もう魔力にやられてるのか!早くブレスレット直さないと・・・」
退こうとするマルギットの手を、ニコラの手が引き止める。
「いいんだ」
「・・・え?」
「決めたんだ。姉ちゃんと一緒にいるって。
 姉ちゃんに守ってもらうだけじゃない。隣で、一緒に歩いていくって」
「ニ・・・コラ」
「だから、それもいいんだ。魔力がどうとか関係ない。僕は、今、自分の意思で言う。
 姉ちゃん、僕は姉ちゃんと、したい」
さっきの告白よりもさらに恥ずかしい提案に、そのまま血でも吹き出さんばかりに、マルギットの顔が赤くなる。
「いやだからお前、そんな、えっと」
「嫌?」
「いやうれし・・・じゃなくて、えっと・・・」
今まで悟られまいとしてきたこと。
夜な夜な、疼く身体を治めるために「想像」してきたこと。
その後、嫌悪感に苛まれていたこと。
それが。
叶う。
もじもじとしながら。
「脱ぐ、から、その、あっち、向いてて・・・」
「あ、え、うん」
普段とは真逆のしおらしいマルギットに、思わず生返事になってしまうニコラ。
互いに背中を向けたまま、衣擦れの音だけを聞き、逸る心音を感じていた。
「あの、い、いいぞ・・・」
振り向いたニコラの視線の先。
予想通りの寸胴体型を、小さな手で隠したマルギットの姿。
「・・・な、何じーっと見てんだ!
 悪かったな、おこちゃま体型で!」
「き、気にしてたの・・・?」
「そりゃ、おま、あの・・・
 や、やっぱり男って、その、サキュバスみたいなのが好きなんだろ・・・?
 だったら、アタシみたいのじゃ満足してもらえないだろうし・・・
 って何言わせんだ!」
独りで勝手にキレるマルギット。
その小さな肩を、大きく、力強い手が掴む。
「そんなんじゃない!僕は、姉ちゃんがいいんだ!」
何度も、真っ直ぐな心の声を当てられ、既に限界まで真っ赤になったマルギット。
「だから、その、僕は、あの・・・
 今、すごく、興奮・・・して、いる、んだ・・・」
わざわざ素直に伝えなくていい部分まで。
今度は自分の言葉に赤くなったニコラがうつむく。
ふとマルギットが見下ろした先には、細く締まって割れた腹筋と、完全に臨戦態勢になってしまったそれ。
赤黒く充血し、血管の浮き出たグロテスクな一物に、マルギットの心臓が跳ね上がる。
―-欲しい。
長らく抑え込んでいた「魔物」としての部分が、それを求めた。
快楽を。
欲求を。
劣情を。
―-もう、我慢の必要は無いんだ。
そう言う本能と。
―-何をそんなに飢えているんだ、嫌われるぞ。
そう言う理性と。
心の中で葛藤が起こる。
その葛藤に。
無言に。
疑問を持ったニコラが顔を上げ。
「・・・うわっ!」
「わっ、え、な、何だ!?」
「マル姉ちゃん・・・凄い顔してたよ?」
「えっ・・・?」
「目の前のご馳走をすっごく食べたいけど食べたら怒られる、みたいな顔。
 それも命がけで悩むような」
「や、え、あの・・・マジ?」
嘘だと言って欲しいかのように、きょとんとするマルギットを見て。
「・・・ぷっ、く、は、はははは」
笑い出すニコラ。
何故か、それが可笑しく見えて。
全裸で、大きなモノを反り返らせながら笑うニコラが可笑しくて。
「は、ははははは」
・・・いや。
幸せで。
やっと想いを告げられた相手が、笑顔でいてくれることが幸せで。
温かい。
羞恥心の熱ではなく。
緊張の強ばりではなく。
ただ、幸せで。
「は、はーっ、はーっ」
ひとしきり笑い合った二人は。
「な、しよ?」
「うん、姉ちゃん」
再度の包容とキスを交わす。
ベッドに座ったニコラに、ベッドに立ったままのマルギットが。
「ね、だっこして」
ねだる。
ニコラがひょいと抱き上げ、脚の上に座らせる。
「最初に会った日も、こんなことあったな」
つい昨日のように思い出したマルギットが言う。
「あ、あの、あのときは・・・その、ごめん」
四年も前の気まずさを思い出したニコラが言う。
「ううん。アタシの方こそ、いきなりぶん殴っちゃった」
「まぁ、その、僕、理性トんじゃってたし・・・」
「へへへ、またシてやろうか?」
手で棒をしごく動作をしながら、悪戯っぽく笑うマルギットに。
「じゃ、お願い」
照れ隠しか、やや強がって答えるニコラ。
「かーっ。あんときゃ恥ずかしがってたってのに、
 可愛げがなくなっちまったというか」
「嫌いになった?」
「いや、大好き」
ついばむようにキスを交わし。
マルギットの小さな手が、大きな竿に伸びる。
「・・・っ」
触れた瞬間、ニコラの体がぴくりと、小さく跳ねる。
小さな手が、指が。
玉を、茎を、裏筋を、カリを。
やさしく撫で上げては、締め。
指で擦っては、離れ。
「んっ・・・ん」
意図せず漏れる、ニコラの吐息に。
ぴくりぴくりと、徐々にだが、さらに大きさを増す男根に。
マルギットがにやりと笑う。
そして、丁度いい位置にあるとばかりに、ニコラの乳首を舐め上げた。
「んかっ、はっ」
不意の方向からの刺激に、ついにニコラの声が漏れる。
舌先でちろちろと乳首を弄ばれ。
竿への刺激は止まず。
「あっ、はっ、はっ、んっ、く」
それが、さも責め具であるかのように、苦しそうに喘ぐニコラ。
さらに気を良くしたマルギットが、その身体を屈める。
顔が、それに近づく。
鼻孔をくすぐる、雄の匂い。
それだけで、身体が打ち震える。
歓喜に。
口を開け。
ちゅるっ。
「――――っ!!」
ニコラの呼吸が、一瞬止まる。
ぴくぴくと、一層の反応を見せる肉棒。
その先から、とろりとした何かが出て、マルギットの口内へと飛び込む。
一旦口を離し、舌でそれを弄ぶ。
苦い。
でも。
甘い。
愛の、甘さがする。
マルギット本人も何を言っているか判らなかったが。
そう、感じた。
なおも痙攣を続ける玉茎から、さらに漏れる、透明な汁。
それを吸い取り。
飲み込み。
舌で、竿を愛撫する。
そうすれば、愛しい人が悦んでくれるから。
そうすれば、もっと甘露を味わえるから。
出続ける先走りと、己の唾液を入れ替えるように。
てらてらと、粘り気のあるマルギットの唾液が、竿を濡らしていく。
「んっ・・・あ、くっ」
耳に届くその吐息に、満足しながら。
尿道口へと、その中へと、舌先を入れる。
「んぐっ、あ、はぁっ」
びくん。
一際大きく跳ねる怒張を感じた。
限界が近いことを、感じた。
竿全体を撫で。
裏筋を親指で刺激し。
陰嚢を揉み解し。
精巣を転がし。
小さな口いっぱいに、先端を飲み込み。
イっちゃえ。
既に顎が外れんばかりに頬張ったそこからは、言葉は出なかったが。
手から、口から、与えたラストスパートは、確実にニコラに伝わった。
「あ、はぁ、んっ、ああぁっ!」
びくん。びくん。びくん。
竿を持っていた指に、一際大きな脈が伝わる。
裏筋を刺激していた親指に、塊が通るような感触がある。
陰嚢が収縮する。
精巣が、それを吐き出したことを合図する。
限界まで満たされていたマルギットの口に、熱い滾りが溢れ出る。
どくん。
「ん!」
どくん。
「んぐんんぐ!」
どくん。
「ん!」
どくん。
「ばっ!がっ、げほっ、げほっ」
喉へ、鼻へ、気管へ、ねじ込まれるように、叩き付けるように出されたそれに、むせ込むマルギット。
「はぁ、はぁ・・・あ、ね、姉ちゃん!ごめん、大丈夫!?」
それに気付いたニコラが、慌てて肩を抱く。
「げほっ、ごほっ、うえっ、だ、出し過ぎだこの野郎!」
「ごっ、ごめっ」
なんとか呼吸を落ち着けた後。
手で鼻をこするマルギット。
無論、そこにはニコラの精液。
「む、無理しなくてもよかったのに」
ずずず、と、鼻の奥に残っていた残滓をすすり上げ。
じゅるり、と、手に付いた白濁を吸う。
「ま、マル姉ちゃん」
なおも心配するニコラの声に。
口の中の精を味わいながら。
「ん、おいし」
多少無理矢理に作った笑顔で、答えた。
それに、ニコラは飽きれた顔で。
「もう、姉ちゃんってば」
まだべっとりと精の残る口元に、口づけを交わす。
舌と唾液と精液が絡み、くちゃくちゃと卑猥な音を立てる。
「ん、ふっ・・・マズい」
自身の精の味を嫌というほど味わったニコラが漏らす。
「ん、ぷ、んはぁ、お前、まだ自分のが残ってるところにするか、普通」
「だって、姉ちゃんが美味しそうにしてるから・・・」
「あのな・・・ったく、ロマンのかけらもありゃしないね」
いつだったか読んだ助平な小説だと、こんなガキっぽいやりとりだったかな。
そんなことを考えるマルギットだったが。
いいや。
これがアタシたちなんだ。
やっと子供から抜け出せたアタシたちなんだ。
いいじゃないか。
まだ抜け出したばかりだ。
子供っぽくても、いいじゃないか。
二人で歩いていくと決めたんだ。
これから、もっと大人になればいいさ。
「ね、ニコラ。もっと。キスして」
座高も高くなってしまったニコラに。
あの時の宿では、目線が合っていたはずの顔に。
精一杯背伸びして、唇を合わせる。
そのまま、まだいきり勃つニコラのそれを。
自らの膣口へと、導く。
「ニコラ、大好き」
そのままゆっくりと、腰を下ろす。
膣口に、先端が当たる。
「んっ」
それが、小さなマルギットの身体へと、侵入を始める。
「んくぅっ」
みちり。みちり。
今まで指しか入れたことのない場所へと。
「はぁあぁああぁ」
ずっと望んでいたものが、入る。
「ぁぁぁあああ!!」
押し広げられ、貫かれる感覚に。
脳髄すら突き抜ける感覚に。
思考まで、貫かれるようだった。
「あ、はぁ、はぁ」
軽くイった。
徐々に戻る思考。
徐々に戻る、ヴァギナ以外の感覚。
それが、肩から伝わる温もりをもたらす。
「ね、姉ちゃん、大丈夫?ホントに、無理しなくていいからね・・・?」
不安そうな顔に。
「へへ、大丈夫・・・ちょっと、気持ちよすぎただけだから・・・
 んっ、もう、ちょっと・・・」
さらに腰を落とすマルギット。
その小さな身体に、怒張を飲み込みながら。
「ね、姉ちゃん、それ以上は・・・」
見ている方が不安になる光景だったのだろうか。
「へ、平気だから・・・んぁああ!」
奥へと導くほど。
頭が、真っ白になる。
快感に、塗りつぶされる。
「あ、は、は、あぁああ!」
腹の奥から、とん、と小さな衝撃が伝わる。
「へへ、一番奥まで、はいった・・・」
「ね、姉ちゃん・・・」
「きもち、いい?ニコラ・・・」
「あ、うん、ちょっとキツいけど・・・って、僕より姉ちゃんが・・・」
「アタシは、大丈夫・・・ぜんぜん辛くはない、けど・・・」
「けど?」
「キモチよすぎて、動けない・・・
 ニコラ、あと、お願い」
そのまま、ぱたりとベッドに背中を預ける。
「お願いって、姉ちゃん・・・」
「好きに、動いて、いいから、ね?」
ふーっ、ふーっ、と、自分の鼻息が聞こえる。
今までにないほど息が荒い。
腹に手を当てる。
そこに違和感。
「それじゃ・・・動くよ?」
その正体を探る前に、ニコラからの声に遮られる。
おそるおそる、といった感じで、ゆっくりとピストンが始まる。
「んっ、んんっ」
引抜かれる刺激だけで、声が漏れる。
そしてまた、下腹部の奥を、押しのけるような感覚。
「んっ、はぁっ」
ゆっくりと、繰り返される前後運動。
その度に吐息が漏れ。
違和感の正体に気付く。
「ね、ニコラ、ここ、触って」
自身の下腹部へと、ニコラの手を導く。
ニコラの前後運動に連動して、ぽこんぽこんと跳ねている。
「え、うわ、もしかして、これ・・・」
「そ、ニコラの。へへへ・・・」
悪戯っぽく笑うマルギットに。
驚いた顔のニコラ。
生きている者を、外から判るほどに貫いているのだから当然ではあるが。
「え、ほ、本当に大丈夫なの・・・?」
「えへへ、大丈夫・・・今、すっごくキモチよくて、幸せ。
 ね、もっと、幸せにして?」
躊躇いがちに、こくり、と頷くニコラ。
またゆっくりと、腰が動く。
くちゅ、くちゅ、くちゅ。
溢れに溢れた愛液を混ぜる音と、淫穴を擦る感触。
ぽこん。ぽこん。ぽこん。
手に伝わる、下腹部を突き上げる感触。
今までぽっかり空いていた「女」の部分を埋める、感覚。
次第に、早くなっていく動き。
ニコラが、自身の快楽を追い求めているのだろう。
くちゃ、ぐちゅ、くちゅ。
空気を含み、次第に汚らしくなる陰部の音すら、愛おしい。
ぽこん、ぼこん、ぼこん。
勢いづいたニコラの怒張が、突き破らんばかりにマルギットの腹を突く。
「はぁ、はぁ、はぁ、んっく、はぁ、はぁ」
ニコラの息づかいが聞こえる。
膣壁から、ニコラの鼓動が伝わる。
ニコラが、悦んでいるのが判る。
こんなちんちくりんな自分を、真剣に愛してくれいるのが判る。
嬉しい。
嬉しい。
嬉しい。
幸せ。
幸せ。
幸せ。
あぁ。
アタシ、今。
満たされてる。
その感覚が。
それだけが。
今、マルギットの頭を支配する。
「あっ、はんっ、んぁっ!あぁああぁ!」
堪え難い程の快楽の波に抗うように。
小さな身体を突き上げられて、肺から絞り出されるように。
意図せず、嬌声が上がる。
もっと。
そう訴えるように。
もっと。
そう願うように。
もっと。
そう乞うように。
もっと。
ニコラが欲しい。
もっと。
ニコラを感じたい。
もっと。
快楽が。
もっと。
幸せが。
もっと。
欲しい。
きゅう。きゅう。きゅう。
欲求を代弁するように、小さな膣が締まる。
「んくっ!」
それに反応する、ニコラの声。
「ねえ、ちゃ、きつい」
ビクン。ビクン。
締め付けに合わせ、怒張が跳ねる。
ニコラも限界が近いのか、貪るように腰を振る。
さらに奥まで突き上げられる。
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。
ついに根元まで咥え込んだのか、腰を打ち付ける音が響く。
腹の内をかき回される感覚が、激しさを増す。
「あっ、あっ、んあっ、んっ、ふぁあ!」
身体を駆け抜ける快楽に、飲まれる。
その前に。
その前に。
これだけは、欲しい。
「ニコ、ラ、だっこ・・・だっこして・・・」
腕をニコラに向けて広げ---それすら、意識して行ったことか、マルギットには判らなかったが---ねだる。
温もりが欲しいと。
快感で飛びそうになる前に。
もっと、肌の温かさが欲しいと。
マルギットの小さな身体に、ニコラの腕が回される。
それはだっこと言うよりは、覆い被さるようであったが。
密着した皮膚の感触に。
最後の欲望を満たされたマルギットは。
「あ、は、んあ、くる、き、ちゃう」
限界が近いことを告げる。
もはや運動神経すら欲に支配されたのか、腕も、脚も、膣も、ピクピクと細かな痙攣をしていた。
「ね、ねえ、ちゃ、出る、もう、僕」
ニコラの声を頭の上に聞きながら。
「うん、きて、ニコラ、いっぱい、きて」
「んっ、く、うっ!」
ビク、ビク、ビク。
大きく脈打つ怒張。
それを肉壷で感じる。
どろりとした熱い何かが、肉棒と膣壁の間を、押しのけるように流れるのを感じる。
溢れるほど、満たされている。
その感覚に。
「あ、あぁあああああ!!」
脳髄が、真っ白に染め上げられる。
全神経が、悦びに震える。
腕が、脚が、ニコラの身体を掴む。
力一杯。
思考でも欲求でもなく。
ただ、そうしなければいけないかのように。
陰唇を伝い、肛門までそれが流れ落ちる熱を感じる。
「んぁ、で、てる、ニコラの、いっぱい・・・」
「姉ちゃん・・・」
落ち着いたのか、ニコラが上体を上げ、マルギットを覗き込む。
「え、へへ、ありがと、ニコラ・・・」
それだけ伝えると。
火に水をかけたかのように、意識が、ぷつりと途切れた。

「・・・ぁ」
ニコラが目を覚ます。
僅かに開いたカーテンからは、青白く明け始めた空が見えた。
確か、昨日。
長年の想いを遂げることができたのを思い出す。
・・・思い出すだけで気恥ずかしくなるが。
とにかく、朝食の用意をしなければ。
起き上がろうとして、腕が動かないことに気付く。
布団をめくると、そこには、腕に抱きついたマルギットの姿。
まだ、だらしない顔で夢の中にいるようだった。
「んへへへ・・・ニコラのえっちぃ・・・」
だらしない顔をさらに緩めて、ニコラの腕に腰を擦り付ける。
はぁ、とため息をつくニコラ。
「しょうがないな」
そう、嬉しそうな顔で言って。
布団をかけ直し、甘い二度寝を決め込んだ。
15/11/13 09:03更新 / cover-d
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■作者メッセージ
長いだけの駄文にお付き合い頂きありがとうございます。
というワケで第6作、ドワーフさんです。
姉御肌なおにゃのこと甘々えっちしたい。
誰得要素をだいぶつぎ込んだ一作となりました。
もーちょい心理描写みたいの上手くなりたい。

というワケで今回は以上。
最後まで駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

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