“西の国で土竜出没!”(教国新聞地方紙)

「ん〜、風が気持ちいいなぁ…」

 一仕事終わり、肩に掛けた手拭いで汗を拭っていると風が吹いてきた。
雲一つ無い青空を眺めていると、心に溜まった鬱憤が消えてしまいそうだ。

 …しかし、目の前の現実は正反対である。
ゴツゴツとした岩がそこら中に転がる黒土の大地が広がり、
その周りを、長さの不均一な木々で覆われた森が囲んでいる…
人の手が全くつけられていない辺境に、鍬を引っさげた俺以外、人の姿はない…

うん?自己紹介をしろって?
ここは教国側のとある北の小さな軍国
そして、俺はその母国で名も無き兵卒長だった人間だ。名乗るまでも無い。
まあ、これでも剣術と逃げ足なら母国の誰よりも上だという自信ならある(ドヤッ
襲い掛かる魔物達をなぎ払い、撤退の号令が掛かれば 一目散に逃げていく…
人より多く倒し、無事に帰りつき次の戦に備える事を繰り返せば兵力は減らないだろう。
国王から賜った、勲章と相棒である駿馬が俺の行為が認められている証だろう。
 だが、これが徒となった。
兵卒長となり、新兵達を束ねて国境付近の防衛線に立った際、魔物達の奇襲にあったのだ。
撤退の号令を出したが、兵士達は取り乱していてほとんど伝わらず、
敗走している時に現れた魔物を払いのけることが出来たのは自分だけであった。
防衛戦に居た他の隊も魔物達の餌食なり、母国に戻ったのは俺と相棒だけであった。
まとめ上げるのが難しい新兵ばかりであったことと、国王の御墨付きであったことから処刑は免れた。
しかし、防衛戦を下げてしまい、挙げ句の果てに「兵士を残して一人帰ってきた」人間を生かしておくことは、国にとっては色々マズい。
 そういうことで、俺は戦死したことにし、辺境の開墾を命しこの不祥事を公にすることを避けたのである。



 …只の兵卒長でしかない自分にとって、この処置はとても有り難かった……
がしかし、未開の大地を鍬一本と馬一頭を使って開拓しろだなんて、いくら何でもキツいでしょう?!
ここに移住する道中、相棒の引く荷車に乗って来たが、道とは言えないデコボコの道を進んだ為、尻や腰をいためてしまった。
そこら中に広がっている森林は、針葉樹や広葉樹が入り乱れ、薪にちょうど良い木食用の植物を見つけるのに数日かかり、寒くひもじい思いをしなければならなかった。
 今、目の前にデンッとあるこの石、いや、岩だってそうだ。
肥沃な黒土に覆われてはいるが、畑を耕そうにも大小様々な岩ばかり。
ついさっき「一仕事終わり…」と言ったが、
「邪魔な岩をどかす仕事を諦めた」の間違えだ。
しかし、諦めた所で畑が出来る訳がない。
そこで、休憩をした後「溝を掘って岩を転がしてどかす」という作業に切り替えるつもりだ。
どうだ?俺って頭が良いだろう?(ドヤッ

「…しかし、食堂も無ければ美女も居ない…
俺こんなとこ嫌だぁっ!!」
「…………………ブヒヒン……」
「!…お前か。居たのなら言ってくれよ、恥ずかしい…//」

両手で鍬を掲げて絶叫していた所を、相棒である愛馬に見られてしまった……
相棒は国王から賜っただけあってどの馬よりも早く、そこらの魔物が近付いてきても怯んだりしないガッツもある。
オマケに俺ぐらいに頭が良い!
…現に、一緒に住んでいる小屋の馬小屋から脱走している。
ここに来る前、伴侶が欲しいかと異性の馬とお見合いをさせたが、興味を示さず俺にすり寄ってきた。
男一人で行く俺に遠慮してくれたのではないかと思う。
それぐらい、相棒と俺は馬が合った。
…因みに、雄♂である。
「ヒヒィン……ブルルル…」
「どうした、まだ食事の時間じゃないだろう?」
少し淋しそうに嘶きながら顔を近づけてくる相棒の頭を撫でてやる。
その対応に、相棒は嫌そうな顔(?)をして離れた。
そして震えながらまわりを見回してから俺を見た。
…そういえば、朝起きた時もこんなふうに震えていたような……
だが魔物が出没する地域ではなく、相棒が魔物ぐらいで怯える訳がないので風邪を引いてしまったのだろうと考えた。
実際、毛が逆立って鳥肌になっている。
「そんなに寒かったのか?毛布掛けてやるから薬草食って寝てな!
岩を片付けたら、畑耕すのに一役かって貰うんだからさ」
「………………」
何か言いたげだったが、生憎、馬語は心得ていない。
相棒を馬小屋に連れて行き、毛布をかけてから小屋をあとにした。

 …さて、問題の岩である。
邪魔になる上着と護身用の長剣と水筒を邪魔にならないところに置いて、岩の前に立つ。
誤って岩が転がらないように注意しながら、溝を掘っていく。

ー暫くしてー
ニョロッ「?」

「やあ土竜君。君は兵舎にあった畑にいるのよりは大きいようだね。
まだ畑が出来てないから、向こうに行っておくれ」
土から這い出てきたデカいミミズの腹(?)を掴んで向こうに投げ、作業再開…
……馬小屋から相棒の声が聞こえる。

ー少ししてー
ズボッ「!」

「やあ土竜君。君は図鑑に載っているものよりも大きいようだね。
作業の邪魔だから向こうに行っておくれ」
顔を出したモグラの首根っこを掴んで投げ飛ばして、作業再開…
…馬小屋が騒がしくなった。相棒が暴れているのだろうか?

ーそしてー
ドゴオォンッ「ぶっはぁっ!!やっと出たぁ!おお、見つけたぞっ♪」

「やあ土竜君。君はこの前捕らえたラミアよりも胸が大きいようだね。
俺の好みだけれど………ってぇ、ナニィッ?!」
忌々しい岩が爆せたかと思うと、そこには一人の美女、否、一体の魔物が居た。
大体中に土の塊をつけ、大蛇の如き下半身を地面から引きずり出したところをみると、地中を潜り岩を砕いて現れたのだろう。

「あんた、ワームだな?」
「ハァハァ…オトコダァ……ん?あぁ、その通り!アタシはワームだよ♪」ドヤッ
余程疲れたのか、息を切らし顔を赤くしていたが、俺の質問に腰に手をあて、胸を張りながら“土竜”が答えた。
…新聞には“西の国”とあったが、恐らく別の個体だろう…

数ある魔物の中でも、力、速さともに秀で、暴力的なその力で教国の強者共を震え上がらせる、ドラゴン。
その一種で、大地を飛ぶように這いずり回り、狙いを付けた獲物をどこまでも追い掛けるワーム。
相棒を賜る前、一度撤退中に遭遇したことがあった。
死に物狂いで走ったが、岩を砕き、大木をなぎ払いながら這い寄る様には恐怖した感じなかった。
偶々通りかかった猟師を投げつけて難を逃れたとはいえ、「ワーム=速い=怖い」という方程式が頭にインプットされたのは言うまでもない。

 …それでも平静を醸して居られるのは、兵卒長にまでなれた所以だろうか。
……改めて相手を見る。
相変わらず荒い息のまま、顔を赤くし、“狩る者の眼”でこちらを見ている。
均等頭から生える2本の角がドラゴンの眷属であることを物語っているが、俺よりも年上の感じがする整った顔は美しい。
甲冑のような鱗に覆われた蛇体はしなやかで、喜んぶ犬のように先っぽを振っている。
竜の爪のような物を身に纏っている乳房は、魔物が呼吸をするたびに上下し、プルンプルンと……ってオイ。

「んん?アタシの体に見惚れて居たようだね♪それは当然!この体は母さん譲りだからね♥」
「…………。じゃあ、そんな体つきになるまで母子揃って人様を喰らってた訳だなぁっ!」

紫電一閃。手にした鍬を魔物の脳天目掛けて叩きつけた!!
その威力は、回転しながら弧を描いて飛んでいく柄の折れた鍬が物語っていた…

「………へ?」
「へぇ…わざわざ会いに来た女の子に、そんなことしちゃうの?」

カァァァンッ

宙を舞っていた鍬が後ろにある岩にぶつかった。
だいぶ滑空したようだ。流石俺の腕前…じゃなくって!

「どんっだけ石頭なんだよぅ!!」
「!!嫌だなぁ、照れちゃうよぉ♥♥」
「誉めてねぇ!!!」

…鱗の無いところを狙ったつもりなんだけどねぇ…
……そういえば、サラッサラの髪の毛の間に砕けた岩と同じ色の砂埃か付いてるような……

 …と呆けている隙は無い!
目の前の土竜が照れているうちに、自慢の逃げ足でトンズラしようか!
いや、剣をとってきて鱗の無い腹部を切りつけようか!
選択肢は………無い?

「ハァハァ…♥そわそわしちゃって…そんなに照れなくても良いよ、旦那様♥」
「ウオォ?!」

さっきまで彼女の後ろにあったはずの蛇体が俺の下半身を縛り上げているではないか!
逃げようともがいても離れない!剣を掴もうにも結構遠くにある!

「アァンッ♥暴れないでよぅ♥♥」
「嫌ぁ!ハ•ナ•セ•ッ!!」

……っ!さっき、俺“彼女”ってフレーズを浮かべませんでしたかぁ?!
それよりも気になるワードが……

「だ、旦那様ぁ?」
「アフンッ♥そ、そうっ♥強くて逞しくって…♥怖じ気付かないその態度♥
人っ子一人居ない土地で、やっと見つけた男から…フゥ♥アピールされたら、惚れるしか、無いじゃないっ♥♥
きっと産まれてくる子は…んっ♥綺麗で♪可愛らしくって♪♪淫らで♥綺麗な女の子だよぉっ♥♥♥」
「俺の要素入って無いよっ(泣)
…っていうか、そういう話はワーム同士でしてよっ!」
「旦那様、知らないの?魔物には雄♂が居ないのよ…♥」
「な、なんだってー!」

……なるほどー、だから魔王軍は魅力的な女の子ばかりだったんだなぁ…
そういえば、猟師さんを投げつけた後、妙な粘着音か聞こえていたような………

「ま、待てっ!俺には帰りを待っている想い人が居るんだ!」
「えぇ〜?
……くんくんくん……♪
想い人ってお馬さんのこと?雄馬の匂い以外、とくに女の匂いなんてしないよ?年齢=童貞歴の、旦那様ぁ?♥」
「いやぁん!ばれたぁ(大泣)
ていうか、そんな恥ずかしいこと…ムク ッ」パフッ
「えへへぇ♥その気にならないのなら、無理やりヤっちゃおうかなぁ♥♥」
「(や、柔らかぁいっ…じゃなくてっ!)」ジタバタ

口封じの為か、俺の顔の下半分をマシュマロのような乳ぶ…もとい、おっぱいで覆ってしまった!
引き剥がそうとするが、如何せん、竜の包容力には構うまい…

「汝、この男を一生愛し、元気な赤子を孕むことを誓うか?
…誓いますっ♥♥♥」

大空仰いで、自演自作しとるよ。
駄目だこいつ、、何とか…と思っていたら、今度はこちらを向いてきた。
…心なしか、獲物を見る目がハートの形をしているように見えるが……

「汝、この女を一所懸命に愛し、その体の中にたっくさんの精液をぶちまけることを誓うか?
………誓゙い゙ま゙ず」ボソッ
「ムグ…ムグ…プハッ♥俺はそんな濁声じゃねぇっ!
誓いますっ!!」キリッ
「こうだぁっ!って、
しまっとぅわああぁぁぁぁっ!!!!!!」

はっ、謀られたっ?!
…………いや……嘘みたいだろう?素直に喜んでる顔だぜ、これ?

「やったぁ♥旦那様!覚悟を決めて下さったのですね♥誠心誠意、全身全霊を込めて愛してあげますっ♥♥」
「えあぁぁ、嫌ぁ、嫌ぁ!!」
「旦那様!」ギロッ
「はいっ!!」ビシッ

こういうのを、“メデューサに睨まれた人”とでも言うのだろうか…?
……彼女の“狩る者の眼”が“ハート”に変わった………

「こ♥づ♥く♥り♥しまっしょっ♥♥」
「アーーーーーーーッ!!」













ー教国、教会大図書館、館長室ー
新聞を読む司書官と、ペンをはしらせる図書館長…

「“再び西の国でワームによる捕食が発生、農夫二人が行方不明”でふか……
ところで館長、ワームの別名は“地竜”ではなかったでふか?」
「……新聞社に書き間違えて送っちまったか………ま、いっか」





雲一つ無かった青空はすっかり暗くなり、星が輝いている…
さらに黒くなった大地に、一つの塊となった魔物と人間の番が佇んでいる…

「ハァハァハァ…フフッ♪旦那様ったら、相当疲れたのですねっ♥愛を誓い合った相手よりさきに眠っちゃうなんて…♪」
「…………」ピクッピクッ

干物かと思われるぐらいやつれ、白目を向いて気絶している男の頭を、女は頭をそっと撫でている……

グウウゥゥウ

「…っ//……良かった、旦那様に聞かれたかと…//
それにしても、何か食べる物はないかしら……あら?」

女の視線の先には、こちらを見つめる一頭の馬があった。
鬣は逆立ち、身体は震えていたが、その眼差しは凛としている……

「………あなたが旦那様の“想い人”ね…?」
「……………ブルルッ」
「フフッ、相方が先に初めてを奪われて嫉妬しているのかしら?
でも大丈夫、あなたもすぐに楽にしてあげるわ……………」
「………………………」



















「ん〜、風が気持ちいいなぁ…」

 一仕事終わり、肩に掛けた手拭いで汗を拭っていると風が吹いてきた。
雲一つ無い青空を眺めていると、心に溜まった鬱憤が消えてしまいそうだ。

 あん?自己紹介をしろと?
ここは親魔領のとある北の魔王軍に敗れた小さな軍国。
そして、俺はその辺境で、オークライナーって村の村長でありしがない人間だった奴さ。名乗るまでも無い。
まあ、これでも“スーパー開拓者”として母国で英雄扱いをされているがな!(ドヤッ 勿論、ひとりでやり遂げた訳じゃ無い…

「旦那様〜、お昼お持ちしましたよぉ♪」
「おっ、待ってたました♪」

…ワームである彼女に殆ど一方的に夫婦にされたあの日から、彼女はドラゴンの眷属たる実力を遺憾なく発揮してくれたのだ。
邪魔な岩石を砕きまくって畑を作り、森林をなぎ払い土地を広くしていった。
人間一人で何十年掛けても達成しえない大事業を、彼女はたったの数日でなし得てしまったのだ。
さらに、俺達が結ばれた次の日のうちに相棒の為に素晴らしい伴侶を地の果てから届けてくれたのだ!
これだけの事をしてくれ、オマケに自分のことを愛してくれる
美人さんの愛を拒むことが出来ようか?いや、出来ない。(ドヤッ
相棒に晴れて伴侶が出来た日の夜、俺は彼女に心から愛していると伝え、自分が賜った勲章を感謝の気持ちを込めて、そして永遠の愛の誓いとしてプレゼントした。
……いやぁ、相思相愛になってヤったセクロスはまじ熱かったぜ!(ドヤッ
何せ彼女に子供が出来ちゃったんだもの//

砕かれた岩で道を整え、伐採した小屋をグレードアップした辺りで、首都から使いが来た。
彼女の事がバレたのかと思ったが、

・首都が陥落して親魔領になったこと
・それに伴い、国内の夫婦が増加。新たな居住地として此処が選ばれたこと
・ここは村になり、俺は村長にされるということ

が伝えられた。
正直、いくら肥えた土壌といっても、広すぎて畑を耕す気になれなかった。
だから、働き手が増えるという知らせは大変嬉しかった。
それよりも、彼女と夫婦であることを公に出来ることが嬉しくて、村長になることなんぞ、気にもならなかった!
……浮かれてたらその他の面倒臭い仕事も引き受けてしまったのは内緒……


 …自分の手で耕し、育てた野菜が並ぶ様を眺めながら、彼女の作った弁当を食べる。
俺より年上の風格でいかにも女王様って顔立ちの彼女だが、とても甘えん坊でそれでいて優しく包み込んでくれる内面と言動とのギャップに何度キュンとしたことかっ!!
ポコリと膨らんだお腹を優しく撫でる彼女の姿は、まさしく聖母!

「……?どうしたの?体に何か付いているの?」
「!あっ、いやぁね…//ただね、
俺のお嫁さんは世界一だっ、て思っただけ!」ドヤッ
「……!!///
…………そんなこという人間は、食べちゃうぞぉ♥」ガバッ
「おっと、へへへ、まだまだ健脚は衰えていないぜ!食べたいのなら捕まえてみな♪」
「言ったなぁ!ならこっちだって…………グォオオオオオッ!!」
「ヘァッ?!竜化は無しだろおぉぉ………」


……俺は名もない一人の男で、愛する彼女の一人の夫。
“地竜”たる我が妻を一所懸命愛し子を成すことを、誓います!(ドヤッ

はじめまして!
初作文&初投稿させて頂きました。
短く書いたつもりでしたが…

バイコーンさんの話を書こうとしていた矢先、
ワームさんの誘惑に負けて書かせて開拓者×地竜として頂きましたが、如何でしょう?
彼女の魅力が引き出せていたか不安です………
因みに、題名の“土竜”は図鑑の“地竜”を読み間違えた事を利用しました(ドヤッ

罵声、改善点等、お寄せ頂けたら光栄です…


※11月5日
……あらすじの大幅変更をしました。馬鹿×愛馬の会話をどうぞ…



12/11/12 19:19 FCK.

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