読切小説
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淫魔の辞典 増補改訂版
《ア行》
【愛】
淫魔にとっての全て。永遠の命題であり、唯一にして最大の救い。

【挨拶】
日常において、顔を合わせた者同士が行う礼儀。魔物は特に、パートナーに対する「朝の挨拶」を重要視する傾向にある。
→キス
→フェラチオ

【アウト】
いやらしさが一定の水準をこえていること。主に賞賛の言葉として用いられる。
すばらしい、エロい、美しい、艶やかな。
→セーフ
→野球拳

【朝チュン】
→既成事実

【朝だち】
延長戦の狼煙。
→遅刻

【あざとい】
態度を装いすぎて、かえって狙いが見え透いているさま。特に淫魔が男を捕まえるためにいろいろと芝居をうったり、取り繕ったりすることをいう。
よくある例としては、わざとつまずいて寄りかかる、できないふりをして手伝ってもらう、みずから噂の種をばらまく、などがみられる。

【嘲笑う】
マゾの絶頂を促す。

【忌むべき】
禁欲的な、愛に飢えた、孤独な。
逆説的に淫魔を誘いやすい要素ともいえる。彼女たちは本能的にこうした「におい」に対してしばしば敏感に反応する。
特徴的な性描写によって魔界文学史に名を連ねるプロンタ・プロテネスは、散文『食虫花』において、かような人物の危うい魅力を、まことに率直な筆致で表現している。
「とにかく濡れる。存在そのものが媚薬だ。表面上は人を遠ざけている風に見えても、その所作の端々から“襲ってください”と言わんばかりな態度が見え隠れし、場所をわきまえずに犯してしまいたくなる」

【運命】
幾度もシミュレートした計画がかねがね順調に進んでいることを、相手にそれとなく伝えるために用いられる、ロマンチックな表現。
魔物が目当ての男性に対してこの言葉を発するということは、勝利宣言とほぼ同義である。
→偶然

【SNS[エスエヌエス]】
Social Networking Service[ソーシャル・ネットワーキング・サービス]の略。決してSの魔物2人がノーマルを調教することではない。
毎日、大量の画像データがアップロードされているが、その内容といえば、出会い厨やカップルがめったやたらに上げまくる露出、パンチラ、エロコス、ハメ撮り、鏡撮り写真ばかりで、そのさまは現代の無料アダルトサイトである。
→二枚目

【エクソシスト】
生贄となる結末が約束された役割、スケープゴート。
不死者の文化が根付く地域では、思わぬ幸運が訪れることを「教会から除霊師」と表現する。

【大きいお友達】
サバト信者のうち、巨大な影響力を持った人物をこう称する。潤沢な資金と手広いコネクションでサバトを強力にバックアップしており、フロント企業(玩具メーカーや製菓関連の会社が多い)の役員におさまっているケースも少なくない。 
「少女、幼女の尊厳を貶めたものは大きいお友達によって社会から抹殺される」とまことしやかに噂されており、世間では畏怖あるいは揶揄の意味を込めて、彼らのことを「大友氏」と呼ぶことがある。

【押しかけ女房】
押し込み強盗。何かにかこつけて家に上り込み、どさくさに紛れて関係を結んだかと思えば、家主の戸籍に割り込んで居座り始める。
「許嫁や幼馴染がいれば押しかけられない」という俗説もあるが、「熊に死んだふり」、「蜂さされに小便」と同じくらい無根拠なでたらめである。むしろ付き合いが長く親しい魔物ほど、関係の変化などで思いつめやすく、押しかけにはしろうとする傾向が強いため、逆に危険である。
→既成事実
→事実婚

【襲う】
襲名という単語がある通り、元はあとをつぐという意味だったが、野心から父君を手にかけるものが続出したため、攻撃するといった意味あいに変化。その有様を憂えた魔物たちが人類を修正した結果、今では主にあとつぎをつくるための予備動作、ないし行為そのものを表わす言葉となった。
→子づくり


《カ行》
【甲斐性】
営みの質や量のこと。
→セックス

【キス】
唇で相手の身体に触れる行為。主に愛情や敬慕を伝えるために行われる。
キスする場所によって相手に伝えんとする意味が変わるといわれているが、そんなことをいちいち覚えているのは、よほどのロマンチストかコスプレ貴族の魔物くらいだろう。

【既成事実】
すでに着床してしまったがために、認めざるをえない事柄。
→結婚
→セックス
→妊娠

【規律】
下から順に数えたほうが早い優先事項。
これを重んずる魔物も少なからず存在するが、結局のところそれは、自分が所属する組織の効率化を図ることによって、パートナーと触れ合う時間をわずかでも増やそうとする方便に過ぎない。
→常識
→建前

【禁欲】
一回の営みを盛り上げるために、わざと休息期間をいれること。
パートナーとなった二人は、お互いに十日を越えて禁欲することはできないといわれている。さらに淫魔の俗説には「一ヶ月以上禁欲すると頭がおかしくなって死ぬ」というものまである。

【偶然】
買い物中に出くわす。電車で顔を合わせる。喫茶店で相席になる。
要するにそういうことである。
→運命

【くどい】
いろいろと理由を並び立てては交際、交接、および婚姻を回避、遅延させようとする男に対してよく使われる言葉。それ以上何か言おうものなら、相手は全力で口をふさいでくるだろう。
→忌むべき
→段階

【結婚】
野球でいうところのリーグ優勝。後には長い「消化試合」が待っている。

【検索してはいけない言葉】
アヘ顔
→SNS
→二枚目

【交際】
恋人として付き合うこと。魔物にとっての勝負どころ。
ここからどうやってベッドインへ持ち込むか、相手を結婚する気にさせるか、両親へのご挨拶はどうするか。彼女たちのやるべきことはたくさんある。
→既成事実
→外堀を埋める

【告白】
好意をもった相手にその気持ちを伝えること。もっとも魔物のそれは言葉によるものとは限らないが。
→襲う

【子づくり】
性行為の婉曲な言い回しだった。現在はより露骨な猥雑表現として用いられている。
→妊娠


《サ行》
【酒】
媚薬の代用品。
→朝チュン
→酔いつぶれる

【錯乱】
「お兄ちゃんは優しくて、かっこよくて、ちょっと流されやすいところがあるけれど、愛さえあれば関係ないよねっ!」
→襲う

【死】
魔物は愛する者との別れを何よりも恐れ、またそれに至るあらゆる要因を憎む。
元から人間より寿命の長い連中がほとんどなので、適当にいたすことで相手に魔力を与えて寿命を延ばし、のろけ話を人魚にしては血を分けてもらって寿命を延ばし、それでも足りぬと様々な「体にいいもの」を食べさせてはさらに寿命を延ばそうと試み、いよいよ駄目となってくると、万魔殿に引きこもって死と籠城戦を繰り広げるわけである。
このように魔物を娶った男性は、そのツケを払い終えるまで「真の休息」を得ることができなくなってしまう。それでもつがいになるものが絶えないのは、命をつくる行為の快感に、誰も抗うことができないからだろう。

【事実婚】
政府管轄の手続きを踏んで正式な婚姻関係になっているわけではないが、事実上夫婦の関係におさまっていること。
魔物の中には、わざと曖昧な関係でいることに興奮を覚える倒錯的な連中もいるので、どの年代にも一定数の事実婚家庭の層が形成されている。

【常識】
両想いなら付き合う。一度付き合い始めたら死んでも一緒。これが淫魔の常識である。
非常にシンプルでわかりやすい考え方だが、逆に言えばこれを前提に入れていない規範や行動は、すべて非常識ということになってしまう。
→愛
→規律

【じらす】
テクニックのひとつ。やりすぎると相手が堪えきれなくなって歯止めが利かなくなるので程をわきまえる必要がある。むしろそれを期待してわざと意地悪をする面倒な奴もいるが。
→禁欲
→むずがゆい

【心臓発作】
アンデッドの心臓が突然鼓動を始めること。パートナーにときめき過ぎた場合、まれに発生する。
不死者の身体が本来ありえないはずの生命活動を始めるということは、心身共に子づくりの準備段階に入ったことを示している。ゆえに、彼女たちにむかって「ドキドキする」「バクバクする」などと言おうものなら、GOサインととられ即座に押し倒されてしまう。

【好き】
「やればできる」よりよっぽど効果抜群な魔法の言葉。もしそれが本心であれば、後はパートナーの魔物がすべて何とかしてくれる。
逆に魔物が男性に向かって言った場合は、強力な呪縛となって対象を拘束する。

【清楚】
男受けしやすい昼の顔。夜にどう変わるのかは、彼女の旦那しか知らない。

【性的な意味で】
魔物の言動、特にパートナーへ向けたそれのほとんどには、多かれ少なかれ性的なニュアンスが含まれているため、この後置修飾語を使う意味も失われつつあり、今ではほぼ死語となっている。

【セックス】
ここでの説明は不要。
禁忌はなく、許されぬ体位などない。

【セーフ】
おしい、あともう少し、もどかしい、努力が必要な。
→アウト
→じらす
→野球拳

【外堀を埋める】
城を落とすための戦術。転じて、男を落とすための障害となりえる人物を味方につけてしまうこと。ただし、魔物にかかれば味方につけるだけでは到底すまされない。
例えば、長男が嫁を娶る話だったはずが、いつの間にか他の兄弟、従兄弟、独り身の親戚まで差し押さえられて、家系図が一新される事態にまで発展していた、なんてことはざらである。
→腹黒い


《タ行》
【タクシー】
交通手段の一つ。何らかの理由で他の交通機関が使えない場合によく利用される。
その便利さの都合上、会社勤めの魔物は地元のタクシー事情に精通していることが多い。
→ホテル
→酔いつぶれる

【建前】
「うん、ちょっと暑かったから上一枚脱いできちゃったの」
「大丈夫、大丈夫! 一杯だけだから、な?」
「あたしが起こしてあげないといっつも寝坊するんだから!」
「君はすこぶる優秀だと聞いている。来期から私の部署で働いてくれないか」
「ちょっと作りすぎてしまって……、よかったらどうぞ?」
「ああ、こっちはただの覚書やからサインだけでええで」
「ごめんね、今日お弁当つくってあげられなくて。お兄ちゃんにはいつもちゃんとしたもの食べてほしいから……」
→あざとい
→本音

【段階】
魔物にかかると人間の古い慣習がどれだけみじめな扱いを受けるかよくわかる例の一つ。
しばしば無視されたり、頭の上をまたいで通られたり、ひどいときには逆さにひっくり返されたりもする。順序、順番とも。
→キス
→告白
→セックス
→交際

【遅刻】
指定された時間よりも遅く目的地に着くこと。
公の場面では特に忌避されることだが、朝の出勤や学生の登校についてのみ、しばしば黙認される傾向にある。
通勤通学における遅刻の原因は、たいていベッドから出られない、あるいはベッドですべき行為を朝食や着替えの際におこない時間が過ぎた、の二つに集約される。
→甲斐性

【チンチラ】
ズボンは構造的に下着、ましてやその中身など見えないようにできているが、神通力や透視を使う痴女もいるため油断はできない。

【テーピング】
スポーツとSMの世界に用いられる技術。それぞれの目的や手順は違えど、下手な素人がやるとかえって逆効果になることだけは共通する。

【デラックス】
精力剤の商品名にしばしば用いられる単語。

【手料理】
1.外食や出来合いのものではない、誰かのために作る手ずからの料理。
2.パートナーにズリネタを提供すること。あるいは提供されたズリネタそのもの。おかず。

【床上手】
嫁や旦那に対する褒め言葉。いわゆる惚れた欲目というやつである。
→惚気る

【隣】
1.パートナーのこと
例:「私の隣はカラステングなので、正月は親戚まわりが大変なんです」
2.定位置、決まった場所
例:「魔女の隣はお兄ちゃんの膝の上と決まっている」
3.ある地点に接するすぐ傍
例:「あなたの隣は空いていますか?」


《ナ行》
【仲直り】
茶番同然の痴話げんかとラブラブキスハメの間に横たわる一連の前戯。

【泣く】
「女の涙」とはよく言ったものだが、魔物に対しては「男の涙」が非常に効く。ただ安易にそのような態度を見せるべきではない。たとえ泣き止んだとしても相手がなかなか身体をほどこうとしなくなるから。

【二枚目】
事後の写真のこと。なぜなら、「付き合っている相手はどんな人なの」という質問に対して、一枚目に顔写真を見せておいてから、次にこれを見せるから。

【妊娠】
女性が子供を孕むこと。最新の医学研究によると、魔物の身体構造は、パートナーの精液との接触、受精、さらには出産でも絶頂するようにできているとのことである。
何故このような性質を獲得したのかについては、進化論でも創造論でも説明がつかないため、双方の支持者はテーブルを挟んで頭を抱えることになった。

【寝違える】
いくら気持ちいいからといってつながったまま眠ってしまうと、翌朝には大抵こうなる。
問題は、こういったふしだらな習慣が社会に定着してしまったせいで、たまたま寝違えただけの人間すら「さくやはおたのしみでしたね」などとからかわれてしまうことである。

【惚気る】
多くの魔物は恋愛話を好むし、これを積極的に聞きたがる種族もまた存在する。
ただ、この手の話題に関してひとこと言わせてもらうなら、適当なところで上手に切り上げることも覚えるべきである。パートナーの好きなところについて似たような話が際限なく繰り返されるので、馬鹿正直に最後まで聞こうとすると日が暮れてしまう。


《ハ行》
【はしたない】
想定外の変態行為に対して投げかけられる驚愕の言葉。
SM衣装で乗り込んでくるカップルにも平然としているタクシーの運転手ですら、おもわず二度見してしまうような異次元の性的嗜好をこのように呼ぶ。
仮に「はしたないプレイ」の例をあげるとすれば「ドラゴンカーセックス」が一番わかりやすい。これは竜の姿に戻ったドラゴン族が、不思議の国の魔法で自動車に化けたパートナーを犯すというもの。けたたましい騒音を発するため非常に悪目立ちする。
これが好きなあるドラゴンいわく、バンパーに爪を突き立てる感触が病み付きになってしまうほどたまらないらしい。さらに、喘ぐようなクラクションの音や絶頂と同時に鳴り響く盗難防止サイレンを耳にすると、すさまじい背徳感を覚えて興奮するそうだ。

【パソコン部品】
「宛名人以外開封厳禁」の意。主にアダルト製品を郵送する際、伝票に記載される。
近年、この習慣を悪用した淫魔たちが、自身の破廉恥な映像を収めたDVDや使用済みの下着などを、目当ての男性に送りつける案件が急増しており、社会問題となっている。

【バーナム効果】
誰にでも当てはまりやすい、一般的な人間の傾向についてとりあげた質問にもかかわらず、それがさも自分自身の性格を言い当てているかのように感じてしまう心理現象のこと。
例えばこうである。
・あなたは音楽やダンスに興味があります。
・あなたは他人から好かれたいと思っています。
・あなたはいつまでも若々しくいたいと思っています。
・あなたは今よりもっと素晴らしい人生を求めています。
・あなたはみんなから祝福される恋愛を求めています。
・あなたはより良い世界を望んでいます。
・あなたは愛に飢えています。
・あなたは次に「アプサラスさんのアムリタミルク飲みたい」と言います。
→誘導

【腹黒い】
親切心を装い言葉巧みに目的の人物にすり寄る行為に対する形容。
魔物が男を落とすために腹黒くなると、用意周到な計画と全く隙をみせない手際で追い込みにかかるので、狙われたものがその魔手を振り切ることは困難を極める。
→誘導

【秘密】
古来、誰かと特別な関係になりたければ、秘密を共有すればよいと言われてきた。
より狡賢い淫魔などは、自分の秘密を目的の人物に伝えた後で、周囲にわざと思わせぶりな発言をして噂をまき散らしたりすることもある。その場合の秘密は特に重要なものでなくてもよく、後は周りが勝手にあれこれ想像し始め、二人の関係を演出する助けとなってくれる。うまくはまれば、おとす側にとってこれほど都合のいい手段はない。

【ヒモ】
女性の経済活動によって養われている男性に対する蔑称。
男性上位の観念、特に、勤労を美徳とする観念が根強い社会では、ことさら軽蔑の対象とされてきた。ただし、今のご時世にこうした意見をおおっぴらに表明してしまうと、たいてい数日間行方をくらますことになる。人間のちっぽけなプライドが大好物な淫魔は大勢いるのだ。
男性を自らの魅力で堕落させることにこだわる魔物は、相方に対して「(つまらない意地なんか捨てて)早くヒモになりなさい」などと迫ったりもする。

【ファッション】
淫魔の服装の歴史はその出発点からして人類のそれとはまったく異なる。彼女たちがもともと裸で過ごしていたことだけは『創世記』における人類の始祖と共通するが、それは無知のためではなく無知な人間をだまして精を得るためであった。
獲物に性的嗜好なるものがあると気付いてから、ようやく彼女たちも服飾に注意を向けるようになったのである。
→フェティシズム

【フェティシズム】
ある特定の部位、物品、行動などに性的な欲求を覚えること。
ところで『淫魔の事典』と銘打っているくせに、なぜ“しり”“ちち”“ふともも”の項目がないのだと不満を抱く読者も少なくないと思われる。単刀直入に言ってしまえば、きりがないからである。
「“ふともも”があるのになぜ“ふくらはぎ”がないのだ」「“ひざコキ”があるなら“わきコキ”も入れるべきだ」「“へそフェチ”や“うなじフェチ”は有るのに“背中フェチ”がないのはどういう了見だ」「“スパッツ”と“レギンス”を同じ項目に入れるとは、なんという無知無学」「“メイド服”はあるのに “割烹着”がない! さては貴様米帝のスパイだな!」などなど、いらぬ難癖をつけられる恐れがあったので、やむを得ずすべて割愛するに至った。

【フェラチオ】
口淫とも。思うに、人類ではじめてこれを試したペアは、はじめて納豆やブルーチーズを口にした者と同じくらい、勇気と好奇心が強かったのではないだろうか。

【不倫】
ラミア族の口癖。浮気ともいう。特定の人物とすでに恋仲となっているにもかかわらず、他の相手とも関係を持とうとする行為全般をさす。
かつてこの言葉は、報道神からご託宣を受けたゴシップ司祭の筆によって大いなる力が与えられ、紙面に顔を出すたび多くの名士たちを震え上がらせてきた。しかし調子に乗りすぎた報いなのか、魔物の天下となってからは痴話げんかの狂言回しとして永遠にこき使われる羽目となった。

【プロレス】
営みのたとえ。特に激しいものや、複数人で行うそれを表わす。関連語にダンス、ヨーガ、ストレッチ、湯たんぽなど。
→セックス

【偏見】
ある人物や集団に対して向けられる、単なるイメージや先入観などで決めつけられた非好意的な評価のこと。
たとえばエルフとドワーフはいつも醜い争いを繰り広げているだとか、白蛇の脳内世界は恋人と自分だけで完結しているだとか、バフォメットのちょっとおバカっぽい振る舞いは人気取りのためのあざとい演技だとか、ドラゴンは即堕ちメストカゲキャラだからギャグ短編でもオチ要因を押し付けられているのだ云々。この手の風評もすべて偏見の産物なのである。
→常識

【ホテル】
宿泊施設。運営目的や業務形態によって、観光ホテル、ビジネスホテル、ラブホテルなどのように分類されるのが一般的である。
利用目的の都合上、会社勤めの魔物は行先のホテルを入念に調べていることが多い。

【本音】
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キモチイイ)
→錯乱
→建前


《マ行》
【まさぐる】
服の中身を物色する。

【まとも】
パートナーと二日以上離れると禁断症状があらわれる状態。

【魅了】
人体に害を与えない麻薬。するほうされるほう両方に強い依存性があるため、際限なく深みにはまってゆく。

【むずがゆい】
1.おあずけが長引くにつれて性感帯を苛んでくる我慢できない衝動。
2.なかなか関係が進展しないカップルを見るとわきあがってくる感情。

【ムラムラする】
パートナーのことを考える。

【めまい】
男を落とすための手口の一つ。タイミングを見計らって対象のそばでふらつき、支えてもらうことによって互いの体を接触させる行為。
似たような言い訳として、段差につまづく、ヒールが折れる、鼻緒が切れる、足首をひねるなどがある。
→あざとい
→誘導

【妄想】
次の行動の予定を立てること。

【モザイク】
1.そのまま不特定多数に提供すると不都合が生じそうな映像データにかけられる修正加工。ボカシ、黒塗りとも。
2.邪魔な、無粋な、障害となる。
例:「3親等がどうの年齢がどうのなどとぬかすモザイク議員どもは、みんな我々の手で落選させてやるのじゃ」
3.過度に恥じらうこと。
例:「そこまでかたくなにモザイクされたら、濡れてきちゃうじゃないの」

《ヤ行》
【野球拳】
主に宴会などで行われる余興。決められた掛け声に合わせてじゃんけんをし、負けたほうが一枚ずつ衣装を脱いでゆくというもの。
聞くところによると、もともとは服を脱ぐというルールなどなかったらしく、どうやらどこかのお調子者が勝手に今の形式を広めてしまったらしい。
どちらにせよ「正統派の」野球拳を人々に広める機会は、淫魔によって永遠に失われてしまったのだが。
→アウト
→セーフ

【誘導】
→結婚
→交際
→セックス

【酔いつぶれる】
非常に危険な状態。淫魔の格好の餌食である。
詐欺や事故と同じように「まさか自分が……」と思っている人間ほど被害に遭う。
→朝チュン
→酒


《ラ行》
【裸族】
衣服をまとう習慣を持たない民族のこと。転じてなるべく裸で暮らしたがる人間のたとえ。
「魔物が来てよかったと思うこと」というアンケートを行うと、毎回必ず、「裸で外を出歩けるようになったこと」という答えが上位にあがる。そのため、裸族の素質を持ちながらそれに気づいていなかった、「隠れ裸族」がかつては多く存在していたと考えられる。

【理性】
安心感を演出し、男の信頼を勝ち取るために使われる仮面。
ベッドの上ではしばしばかなぐり捨てられる。
→建前

【霊媒師】
幽霊フェチ、または精霊フェチのこと。

【ローション】
「潤滑油」という比喩表現があるが、魔物たちはなぜかそれを「ローション」と言いかえたがる。フロイト学派の言う無意識のなせる技だろうか。
仮に例文をつくれば以下のようになる。
「初対面の魔物同士では、性感帯についての話題が会話のローションとなっている」
「一部の明緑魔界では、いわゆる『おすそ分け』に似た習慣が形成されており、これが地域共同体のローション的機能を果たしている」
「シャフトにちゃんとローションをさしてやらないと、摩擦でいたんでしまうよ」


《ワ行》
【別れる】
禁句。一度魔物と付き合いだしたのならば、絶対に口にしてはいけない台詞。
そこにどのような事情があったとしても、たとえ相手を思った末の結論だとしても一切関係ない。彼女たちからは宣戦布告と受け取られる。
その愚行が招く結末はただ一つ。淫魔の魔の手からは絶対に逃れられない。
→襲う
17/09/11 23:00更新 / 祈祷誓詞マンダム

■作者メッセージ
初投稿です。
元ネタは『悪魔の辞典』です。
魔物娘のエッチなシーンじゃなくてすいません次はちゃんと書きますから許してくださいお願いします(すぐに書くとは言っていない)

2017/09/11
増補改訂版です。既存の項目にも多少手を加えました。

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