読切小説
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呪いの櫛(くし)
 ジパング地方の農村。この村には人間と魔物娘が共存して暮らしている。農村の隅にある山を少し登ったところに、僕は一人で暮らしている。

「今年の米は大丈夫そうかな。少なくとも、去年に比べれば...」

 僕の名前は佐助。ごく平凡な農家の一人息子だった...ちょっと前までは。

 この山にも、かつては農村があり、お父さんとお母さん、生まれたばかりの女の子の赤ちゃんの4人で、裕福とまでは行かなかったが、それなりに幸せに暮らしていた。
 しかし、僕の村で流行り病が起きた。村人達は次々に病に倒れて亡くなり、僕の両親と妹も亡くなった。奇跡的に、僕だけが唯一生き残ったのだ。それは傍から見れば奇跡と思われるかもしれないが、僕自身は「どうして自分だけが生き残ってしまったのか」という辛さと悲しさを背負いながらの生き地獄だとしか思っていない。

 その後、魔物娘達がこの地方にやって来て、山のふもとを開拓して村を作った。この村では農作物がよく育ち、活気に満ち溢れている。
 そんな村の発展を見て、僕も少し生きる希望を貰えているのかもしれない。

「おかえりなさい。」
「あ、巴さん! いつもありがとうございます。」
 家に戻ると、稲荷の巴さんが家に来ており、いろいろと家のことをやってくれたようだ。
 この村の人達や魔物娘達は、皆孤児である僕にも優しくしてくれる。特に巴さんは山の入口近くに住んでいることもあって、よく面倒を見てくれる。

 巴さんはよく、僕に山を下りてこの村に暮らしたらどうかと勧めるのだが、僕は断っている。この山とこの家は、家族との大切な思い出が詰まった家だから。それに山をちょっと登ったところに広場の跡地があり、そこは僕の家族を含めた村人達の墓場になっている。僕が山を下りてしまったら、いつかこの墓場を綺麗にする人が居なくなってしまうだろう。せめて、僕が生きているうちだけは、この墓場を大切にしておきたい。

 巴さんはあわのおかゆを作ってくれた。こうして、巴さんと一緒に夕食を食べているとき、僕は家族で賑わいながら夕食を食べていたことを思い出す。

「佐助君。年貢は納められそう?」
「はい。今年は大丈夫そうです。」
「そう。良かったわ。」

 年貢とは、米の収穫の時期に殿様に納める米のことだ。農民は土地を所有する代わりに、農作物を納めなければならない。もし、納められなければ、牢屋に入れられたり、土地や家を差し押さえられたりしてしまう。
 去年は凶作になってしまい、年貢が納められず、土地を差し押さえられそうになったが、村の人達が僕の分の年貢を肩代わりしてくれたため、何とか無事に済んだ。

「そうだ! 今度街でお祭りがあるみたいよ。行って来たら?」
「無理ですよ。そんなお金ないですし。」
「ふふっ お金のことは心配しないで。」
 巴さんは袖からお金の包まれた袋を取り出した。
「そ、そんな悪いですよ!」
「いいのよ。佐助君、最近街へ行っていないでしょう? たまには遊んできて、美味しもの食べて。」
「で、でも・・・」
「田んぼと墓の掃除は、私がやっておくから。ね?」
「わ、わかりました。ありがとうございます。」
 さすがに、笑顔でここまで勧められて断るのも、かえってよくない気がする。僕はお言葉に甘えることにした。

 夕食を終えた僕と巴さんは、一緒にお皿を洗って片づけた。
「それじゃあ、今日はもう帰るわね。」
「はい。いつもありがとうございます。」
「困ったことがあったら何でも相談してね。」
「はい。」
「それじゃあ、明日は思いきり楽しんでね。」
 巴さんが帰るのを見送って、僕は家に戻った。

 夜。この時間帯になると、もうやることはない。あとは寝るだけなのだが、寝るにしては早すぎる。僕はこの時間が一番嫌いだ。
 家族と一緒に住んでいた頃は、寝るまで賑やかに楽しくお話をして、寝るのが惜しかったぐらいだが、今は暗い家の中でただ一人、寝つくのを待つだけだ。

 明日は街へ行く。街の祭りに行くのは久しぶりだ。
 街へは年に数回、両親に連れられて行ったことがある。街には人がたくさん居て、いっぱい建物があって、いろんなお店がある。
 そして、街のお祭りはとても賑やかで楽しかった。特に、米を食べられるのは祭りのときぐらいだ。
 家族で美味しい物を食べて、歌舞伎や芸を見て...とても楽しかった。気が付けば、ここ何年も街へは行っていなかった。もっとも、行けたとしても、お金が無いから何も買えないし食べれないのだが。


(街へ行くのも久しぶりだなぁ。巴さんには何かお土産を買って帰ろう。)

 次の日、僕は巴さんに見送られて馬車に乗り、街へ向かった。

「うわ〜 やっぱり街は凄いなぁ!」
 久しぶりの街の空気は、すっかり忘れていた活気溢れる楽しい気持ちを僕に思い出させてくれた。
 夜の祭りに向けて屋台や提灯を用意する人達が居る。時間はたっぷりある。少し街を歩こう。

(そうだ! 巴さんへのお土産! せめて、何か買って帰らないと悪いよね。巴さんは甘い物が好きだから...そうだ! おまんじゅうだ!)

 確か、この通りに和菓子屋さんがあったはずだ。
「あった!」
 前に家族で来たときに訪れた和菓子屋は、今も変わらず繁盛していた。お店の人達も変わっていない。頑固そうな和菓子職人の男の人、笑顔で接客する提灯おばけ。ずっとあのときのままだ。
「こしあんのお饅頭ください。」
「はい! お買い上げありがとうございます!」
 僕は提灯おばけから饅頭の入った長方形の紙包を受け取り、お金を払って店を後にした。

 まだお金は大分余っている。でも、帰りの馬車代だけは残しておかなければならない。
 僕はうなぎ屋さんで昼食を食べた。うなぎは僕の大好物だ。街の通りまで漂うこのうなぎの匂い。この匂いを嗅ぐだけで、僕はお腹が空いてしまう。

 その後、僕は河原へ行き芸人の芸を見たり、歌舞伎座や行って歌舞伎を見たりして楽しんだ。気づいたら夜になっていて、賑やかな祭りが始まった。

 祭りでは豪華な料理がふるまわれた。
 白蛇や提灯おばけ、狐火達は、暗い街中を賑やかな灯りで照らしている。やがて、盆踊りが始まった。街中の人たちが楽しそうに踊っている。
「ほら! 僕も踊って!」
「えっ? うわっ!」
 あかなめに手を引かれて、僕も盆踊りの輪の中に入り踊った。こんな楽しい気持ちになったのはいつぶりだろう? 何年も心の奥深くに閉まっていたような気持ちだ。

 そして祭りの最後の花火は、とても綺麗だった。

 祭りが終わったあとも、賑わいの残りが続いていた。そろそろ帰ろうかと思ったが、まだ馬車が来る時間には早すぎる。

「あれ? 何の店だろう?」
 ふと、古い建物の店を見つけた。僕は好奇心から店に入った。

「いらっしゃい。」
 刑部狸が挨拶する。どうやらここは骨董品やみたいだ。壺に刀、皿に掛け軸などが並んでいる。

(うわ〜 どれも古そう。巴さん、こういうのも好きかな? ちょっと覗いてみよう...)

 ふと、僕は目の前に置かれていた古い櫛の前で足を止めた。
(櫛か...僕には必要ないかな。でも...なんだろう? この櫛が欲しい。)

 僕の髪は櫛が必要なほど伸びているわけではないが、櫛を使うには十分な長さはある。でも、無理して買う必要はないはずなのだが、何故か僕はこの櫛が気になってしょうがなかった。

「ボウヤ。その櫛が気に入ったのかい?」
「え!? い、いや、あの!」
「その櫛はね、持ち主に幸運をもたらす櫛だよ。その櫛で毎日髪を整えれば、櫛が幸せを運んで来てくれる。」
「そうなんですか?」
 いかにも胡散臭い。さすがに、そんな嘘に騙されるほど子供じゃない。でも...

「ボウヤ、この街では見かけない顔だね。どこから来たんだい?」
「村からです。」
「そうか。じゃあ、これはきっといいお土産になるよ。おまけしてあげるから、どうだい?」
「そ、それなら...」
「はい。毎度あり。この櫛はきっと、ボウヤに幸せを運ぶよ。」

 気づいたら買ってしまっていた。刑部狸に勧められたことよりも、この櫛が放つ魔性の魅力に、僕は虜になってしまったのだ。

 その後、僕は馬車に乗って村へ戻った。

「ごめんください!」
 僕は巴さんの住んでいる家の戸を叩く。
「佐助君ね。開いてるわよー!」
 僕は戸を開けて巴さんの家に入った。

 この村では戸に鍵をつける習慣が無い。治安は安定しているし、魔物娘達のおかげで盗賊などは現れない。それに、村人達は皆、お互いを信頼しているからだ。

「巴さん! 本当にありがとうございました! これ、お土産です!」
「ありがとう。あら? あの店のお饅頭ね? 私お饅頭大好きなの! ありがとね!」
「いえ。僕も、久々に街へ行って、楽しかったです!」
 僕は巴さんに数々の街での思い出話を話した。

「ふふっ たくさん楽しんだのね!」
「はい! 来月は村のお祭りもありますよね! 楽しみです!」
「そうね。あら、佐助君。それは何かしら?」
「あ、これですか? 櫛です。」
「櫛?」
「ええ。ははっ...変ですよね...男なのに。何故か、この櫛を見たときに、その、何というか...欲しくて溜まらなくなっちゃって...」
「...なるほどね。ふふっ 佐助君はいい買い物をしたわね!」
「そ、そうですか?」
「ええ。その櫛、大切にね...」
「はい。」

(佐助君を街に行かせてよかったわ! まさか縁結びまでして帰って来るとは思わなかったけど!)

 僕は家に帰った。今日は本当に楽しかった。巴さんにはずっとお世話になっている。たまには僕からも何かお礼をしないといけないんだろうけど、お金もないし、僕があげられる物と言ったら、川で釣った魚かお米ぐらいだ。どうしたらいいものか...

 次の日、僕は朝早くに墓の掃除を済ませ、農作業をして、家に戻った。

 家に戻ってからずっと、僕は昨日買った櫛が気になってしょうがなかった。
「なんだろう? この櫛を見ていると、胸がどきどきする。」
 試しに僕は櫛で自分の髪をとかしてみた。確かに、使い心地は悪くない。見た目から、かなり高級な物だと想像できる。
「でも、何であの値段で売ってくれたんだろう?」

 まぁ、細かいことは気にしないようにしよう。この櫛は大切にしよう。本当に幸せを運ぶかもしれないし。

 その日の夜、僕はなかなか寝付けなかった。

(なんだろう...? 何かがお腹を這い回ってる...虫や蛇じゃない...何か...筆みたいな...)

 僕は目を覚ます。しかし、周囲には変わったところはない。
「あれ? なんでここに?」
 枕元に、あの櫛が置いてあった。確か、部屋の隅に置いておいたはずなのに...。僕は櫛を元あった場所に戻して、再び寝ることにした。

 今日は雨だ。雨は農家にとって大切な恵みだ。雨の日は家の中でゆっくり休める。
「ふぁ〜あ。ちょっと眠いな〜。夕方まで寝よう。」

(...おへそがくすぐったい...わ、脇はやめて! ひぃっ! 胸!)
 何か筆のようなものが、僕の胸を動いている感覚に襲われる。胸やお腹、脇腹やおへそ。更には股間のおちんちんや玉袋にも筆が這い回る。まるで、筆でくすぐられているかのようだ。

 僕は飛び起きたが、周囲は特に変わっていなかった。
「一体何なんだろう? あれ? これ...」

 あの櫛がお腹の上に乗っていた。思えば、この感覚に襲われるようになったのはこの櫛を買ってからだ。

 それから数日間。夜寝るときに、何か筆のような物で体をまさぐられる感覚に襲われるようになった。お腹や脇の下、首筋。最近ではおまたやおちんちんにまで及んでいる。
 はっと目を差すと、周囲には何も異常はない。しかし、しまったはずの櫛が必ず、枕元に落ちている。

「おかしい...これはただの櫛じゃない...まさか! 呪いの櫛!?」

 僕は途端にこの櫛が恐くなる。
「どうしよう...このままじゃあ呪われて死んじゃう! そうだ!」

 僕は櫛を布で包み、床の木の板の一部を剥がし、穴を掘って櫛を埋め、床を元通りにした。

 その日の夜。僕は不安でなかなか寝付けなかった。

 どうしよう...こういうことは、巴さんに相談した方がいいかな?

 ガタッ!

 ガタガタガタガタガタッ!
「ひっ! な、なに!?」

 櫛を埋めたはずの床の木の板から音がする。僕は音がする方へ近づき、床に手を触れようとした。

 バリンッ!

 次の瞬間、床板が割れた! そして中から黒い物体が飛び出してきた!

「うわああああ!!」
 僕は後ずさり、家の外へ逃げようとするが、黒い物体が戸を覆って開けられなくなってしまい逃げられない! そして黒い物体は細い管のように伸び、僕を締め上げて布団の上に放り込まれる!

「な、なにこれ!?」
 気づいたら家の壁が全て、黒い物体に覆われていた。よく見てみると、人の髪のように見える。そして、髪に覆われた壁から僕に向かって伸び、手足を縛られて動けなくする。

「うわっ! 離せ! 誰かー! 助けてー!」
 僕は外へ向かって助けを求めるが、誰も来ない。山のふもとの村ならともかく、山にあるこの場所からは声は届かない!

 床下から髪が伸び、壁や天井を覆いつくした! そして、床に大きな穴が空いて、色白い手が伸びる!

「うわああああ!」

 やがて、床下から、人の姿をして、顔を異様に長い髪で隠した女性が這い出した。

「うわ...お化け!」
 女性のような姿をしたそれは、僕にゆっくり歩み寄り、僕の顔の前までやって来た。

「酷いじゃない...私を床下に埋めて捨てるなんて...」
「だ、だれ!?」
 声からして、どうやら女性であることは間違いないようだ。女性の長い髪が徐々に開き、色白い肌をした片目と顔半分が現れる。
「床下に埋めた上に、今度はお化け扱い? つくづく酷い子ね。もっと優しい子かと思ったのに...」
「あ、あなたは誰なんですか!?」
「私は毛娼妓のかなで。毛娼妓は知っているかしら?」
「え、ええ。聞いたことは...」

 毛娼妓。聞いたことがある。確か、長い髪の女性の魔物娘だっけ? 昔見た歌舞伎では、女性の幽霊だったと思う。

「あなたが私を買ってくれたとき、嬉しかった。ようやく私のことを大切にしてくれる男が来たんだって...そう思ったのに...あなたは私を捨てた!」
「捨てたって...一体何のことですか!?」
「とぼけても無駄。あなたは私を床下に埋めたでしょ?」
「ま、まさかあなたは...」
「ええ。私はあの櫛...と言っても、本当は私が本体で、あの櫛は私の分体に過ぎないのだけど。せっかく、あなたを気持ちよくしてあげようと思ったのに、どうして私を捨てたの?」
「き、気持ちよく!? 何を言っているんですか! あなたのせいで僕は眠れなくなったんですよ!? それに、気持ち悪かっただけです! あんなの!」
「そう...なら、ボクがよがり狂っておかしくなるまで犯してあげるわ!」
「ひぃ!」
 毛娼妓の眼が淫らになる。

 毛娼妓から伸びる無数の髪が、僕の服を脱がせ、僕は裸にされてしまう。そして、首筋や脇の下、乳首や脇腹など、敏感な所をくすぐるかのように這い回る。

「や、やめて...くすぐったい!」
「あら? ここはそうは言っていないわよ?」
「ひぃっ!」
 毛娼妓の髪がおちんちんに巻き付く。その瞬間、何か熱いものがこみ上げてくるような感覚に襲われた。
「ふふっ やっぱり、まだなのね? それじゃあ、私が導いてあげる。」
「な、何か変...」
「恐がることないのよ。これは男の子が大人になるために覚えることだから。」
「お、大人になる?」
 おちんちんに巻き付いた髪が上下に激しく動く。まるで何かを絞り出すかのように。他の体の敏感な所をくすぐっている髪も動きが激しくなっていく。

「お、お姉さんやめて! おかしくなっちゃう!」
「ふふっ おかしくなっちゃっていいのよ?」
「ああっ! やめて! 何か出ちゃう! あああああっ!!」

 佐助は、精通した。

 べとべとした白い液体がおちんちんの先っぽからたくさん出て、毛娼妓の髪の毛や顔、体にかかる。
「ご、ごめんなさい!」
「いいのよ。これは精液って言って、男の子が気持ちよくなったときに出るものなの。」
「せい...えき...?」
「そして、これは精通って言って、男の子が大人になったときにするものなの。佐助君は大人になったのよ。」
「ぼ、僕が大人に...? でも...」
「体の成長は関係ないわ。精通はしたけど...もっと出しやすいようにほぐさないと駄目ね!」
「えっ? いぎっ! やめてっ!!」
「大丈夫よ。でも、暴れないでね? 下手に動いたら、佐助君の大切なところを傷つけちゃうから...ふふふっ」
 毛娼妓の毛が、おちんちんの先端から中に入る! 亀頭から尿道、枝分かれして睾丸、膀胱にまで毛が入っていくのが分かる。

「あががっ...がっ...! 僕のおちんちんの中に!」
「ふふっ 恐い? でも、安心して。すぐにこれが気持ちよくなって、これなしじゃあ生きられなくなっちゃうの。」
「やや...やめて! ああああっ!!」

 股間の内側、尿道に広がる毛娼妓の毛がうごめいている。未成熟な尿道や玉袋をほぐすかのように。
 普通ならばゾッとするような感覚。想像を絶する苦痛を生むであろう。
 しかし、今僕は、人間相手では決して味わえないであろう強い快感に襲われている。

(おちんちんの奥が! お姉さんの髪の毛に犯されてる! 痛いはずなのに! 恐いはずなのに! どうして!?)

 最初のおちんちんをしごかれたときとは比べ物にならない快感。たまらず僕は射精しそうになった。

「だ、だめ! また出るっ!! ...あれ!?」
 おかしい。射精したはずなのに、中にまだ残っているような感覚がする。それに、さっきみたいに精液が出て来ない。

「あら、またイッちゃったのね。でも、これじゃあ出せないわよ?」

 そうだった! 今僕のおちんちんの中には毛娼妓の毛が入っているから! 精液が奥で詰まって出せない!

「お姉さんお願い! もうやめて!」
「あらあら。心にもないことを言っちゃって。嘘をつく悪い子には...こ〜ねこね。こ〜ねこねっ」
「ああああっ!」
 尿道、膀胱、玉袋の中で毛が波のようにうごめく! わずかに苦痛があるが、それは微々たるものだ。それよりもはるかに快感の方が強い。まるで玉袋ごとおちんちんから飛び出てしまいそうなぐらいの快感だ!
 僕はまたしてもイッてしまった。体は震え、腰は浮き上がり、胸が熱い! しかし、それでも精液は尿道の奥で止まってしまい出すことはできない。

「あら、またイッちゃったのね。腰まで浮いちゃって可愛い! ここはどうかしら?」
 尿道がさらに奥の方へ進む。やがて、お尻の近くに毛が進んでいくのが分かる。

「えいっ!」
「ああああああああっ!!」
 次の瞬間、僕は射精とは違った、体中が弾ける強い快感に襲われた。
「ここは前立腺って、言って、ここで作られた精液がきんたまへ運ばれて、おちんちんから出るんだけど...て、あら? 聞こえてないみたいね。精通したばかりなのにドライを覚えるなんて、本当にすけべな子ね。」
「あああああっ!! あがああああああああっ!!」
 僕は獣のうめき声のような悲鳴をあげた。自分でも何を言っているのか分からない。

 それから、毛娼妓は、ねちっこく、ときに激しく、尿道、膀胱、玉、前立腺を責め立て続けた。僕の玉は普段の数倍膨れ上がり、尿道から膀胱にまで逆流した精液によって、膀胱がパンパンに膨らんでいた。

「もう限界かしら?」
「お願い! お姉さん! イカせて!」
「お姉さんも良いけど...名前で呼んで欲しいかな。ちゃんと私を名前で呼んでお願いできたらイカせてあげるわ。」
「かなでさんお願い! 白いおしっこ出させてえぇぇぇぇ!!」
「はい。よくできました。それじゃあ...思いきりイキなさい!」
 尿道から毛娼妓の毛が勢いよく抜かれる! 次の瞬間、僕は盛大な射精をした。玉だけでなく、膀胱に溜まっていた精液が一気に尿道を駆け抜けて亀頭から飛び出す!

「おちんちんだけの力では全部出ないかしら? こっちからも出してあげるわ!」
「ああああああああっ!!」
 毛娼妓の指が僕のお尻の穴に入る! そして前立腺を直接押される!

 前立腺を押されて強制的に射精を促される僕の体は休むことさえ許さない。
 
 何秒間、何分間、何時間射精し続けたのか分からない。僕の理性は完全に吹っ飛び、通常の人間では出せない大量の精液を出し続け、その間僕はずっとイキッぱなしだった。

「佐助君の精液、美味しいわ。これなら私の髪も艶がますますよくなるわねぇ。これで佐助君は大人になったわ。どんな気持ちかしら?」
「分からない。でも、とにかく気持ちよかった。」
「そう。よかったわ。あら? やりすぎちゃったかしら?」
 僕はかなでに抱かれ、かねでのおっぱいに顔を沈めて、深い眠りに落ちた。

 あの日のあと、かなでさんは自らの髪の一部で首飾りを作り、僕の首にまいた。毛娼妓は夫と認識した相手に自らの髪の一部を切り取って渡すのだ。この首飾りをつけたときから、性欲が強くなっている感じがする。
 こうして、僕とかなでさんの夫婦生活が始まった。

 巴は知っていた。佐助が買って来た櫛の正体にも気づいていた。あの日、巴は心の中でかなでにこう伝えていた。

(あら? 佐助君にお嫁さんができるのね。かなでさんというのね。佐助君のこと、お願いね。)

 村で僕とかなでさんの結婚式が行われた。ジパング地方のこの村では、結婚に年齢制限はない。互いが愛し合ってさえすれば、夫婦として成立するのだ。

「さぁ、今日もお願い。」
「うん。」
 僕は櫛でかなでさんの髪をとかす。
 かなでさんは僕に櫛で髪をとかしてもらうのが大好きだ。朝起きたとき、農作業から帰ってきたとき、夜交わる前に、僕はかなでさんの髪を櫛でとかしている。

 かなでさんは非常に好色で性欲が強く、僕は毎日犯されている。かなでさんは髪を自在に操り、僕のおちんちんや敏感な乳首や首筋、脇の下やお尻を犯す。そのたびに僕は大量の精液を出してイッてしまう。
 だが、同時に献身的で、大人の魅力的な女性のような一面もある。僕が農作業に行っている間、家のことをやってくれるし、ご飯も作ってくれる。だけど、主食があわのおかゆというのは少し嫌がっているみたいだ。

「あわのおかゆばかり作るっていうのも、味気ないね。」
「僕はかなでさんのおかゆ、大好きだよ。」
「でもね...あわのおかゆなんて貧相なものじゃあ、男の胃袋を満足させられないじゃないか。あたしはそれが我慢ならない。」
「仕方ないよ。米は年貢で納める大事な物だから、食べられない。でも、祭りの時期になれば米やいろんな美味しい物が食べられるよ!」
「女ってのはね。髪と体と...料理で男を堕とすもんさ! だから佐助の胃袋を掴んで離さない美味しい物を作ってやりたいのさ!」
「...ごめん。僕が貧乏な農民なばかりに...」
「おいおい! あたしは佐助を責めてなんかいない! それに悪いのは農民をいじめる殿様さ! 全く、人間の殿様ってのは、農民から米を巻き上げやがって...でも、佐助を堕とす方法は他にもあるねぇ...」
 かなでさんの髪が股間の服の上から、撫でまわすように刺激する。
「うっ...い、今はダメ! 食事中だから!」
「そうだね。ごめんよ。ふふっ...可愛いねぇ...」

 かなでさんは家のことだけではなく、墓の掃除までしてくれた。そして毎日、僕の両親と妹が眠る墓で手を合わせている。

(佐助のお父さん、お母さん。佐助を生んでくれてありがとう。佐助のことは、私が絶対に幸せにする! だから、どうか安らかに...)

(佐助の妹は、赤ん坊のときに死んだんだね。可哀そうに...でも...魔物娘としてどこかで生まれ変わっているかもしれないね。そのときには、是非会いに来ておくれよ。)

 巴さんは相変わらず、僕の世話を焼いてくれる。最近では作り過ぎた夕飯の残りや、街へ行ったときのお土産を買って来てくれたりする。時間があるときには、農作業や墓掃除を手伝ってくれたり、3人で料理を作ることもある。

 ただ一つ気がかりなのは、かなでさんが巴さんに焼きもちを焼いていそうだということだ。
「ねぇ、かなでさん。」
「なんだい?」
「巴さんのこと、どう思ってる?」
「いい稲荷だと思っているよ。」
「本当に? なんだか、巴さんが来たとき、かなでさん不機嫌そうだけど...ひっ」
 僕のお尻の穴をかなでは髪で撫でまわす。
「別に、あたしは不機嫌になんてなっちゃいないさ。」

 まぁ、2人ともそこまで仲が悪いわけではない。休日は一緒に村で遊ぶこともある。

 今日は待ちに待った村祭りの日だ! 村は活気に満ち溢れており、魔物娘と人間達が楽しそうにお酒を飲みながら踊っている。
 僕とかなでさん、巴さんの3人で神社の階段に座りながら、米と焼き鳥を食べる。巴さんはかなりお酒に強いことは前から知っていた。しかし、かなでさんもかなり酒豪みたいだ。しかし、巴さんはどれだけ飲んでもあまり酔わないのに対して、かなでさんは顔が赤くなり、べろんべろんに酔ってしまっている。
「ほら〜 佐助もお飲みよ〜」
「だ、駄目ですよ! 僕はまだ未成年です。」
「祭りのときぐらいいいじゃないか〜 ほら〜」
「こ〜ら。佐助君はまだ子供なんですから。お酒を飲ませちゃ駄目ですよ。」
「なにさ! あたしが精通させて男にしたってのに!」
 かなでさんは一升瓶をラッパ飲みしてしまう。巴さんはそんなかなでさんの酔いっぷりを見ながら微笑み、静かにお酒を飲む。

「あ! 花火だ!」
「た〜まや〜!」
「ふふっ 綺麗ですね。」
 夜空に盛大な花火が打ちあがる。周囲も歓喜の声があがる。
 かなでさんの髪が僕の体に巻き付き、かなでさんは僕に体を寄せる。
「佐助。愛しているよ。」
「僕もだよ。かなでさん。」
「体が火照って髪もうずいちゃってる。帰ったら満足させておくれよ?」
「うん。いっぱい楽しもうね。」

 あれから数十年後。僕は体も大人になった。
 今でも僕とかなでは山の家に住んでいる。賑わっている村とは反対に、この山は僕とかなでしか住んでいないため閑散としている。それでも、かなでが一緒だから寂しくない。

 僕は今日もあの日に買った櫛でかなでの髪をとかす。
「かなで。今日も綺麗だよ。それに、サラサラして触り心地がいい。」
「佐助がいつもこうして髪をとかしてくれるおかげさ。ありがとう。」

 僕はかなでと一緒に街へ出かけたときに、大きな鏡を買った。鏡に映るかなでは、今日も美しい。
 かなでは家のことをやってくれて、美味しいご飯を作ってくれる。大抵はあわのおかゆなどの質素な食材だが、味付けを工夫してくれて美味しいおかゆが食べれている。そして、墓の管理もしっかりとやってくれる。家族の命日には、2人で手を合わせている。

 巴さんもよく僕達の家に遊びに来てくれる。かなでは僕と巴さんが仲良くしていると少し拗ねてしまうこともあるが、決して巴さんとかなでの仲が悪いわけではないし、2人は街に出かけて服を買いに行くこともある。このとき、何故か「こういうのは女同士で行くもの」と言って僕だけ置いて行かれてしまう。そして、帰ってくると2人で新品の綺麗な着物を着て僕に自慢するのだ。

 今日は家族の命日だ。僕とかなでは墓場へ行き、僕はみかんを供えた。
「僕だけ取り残されてしまったあの日、僕は自分で自分を呪った。どうして僕だけ生き残ってしまったんだろう? 何で僕だけお父さんお母さんと一緒に逝けなかったんだろう? ずっと辛かった...寂しかった...。でも、巴さんや村の人達に支えられて、僕は生きる気力を貰った。そして、今は僕には妻が居ます。今は、僕を生き残らせてくれた神様に感謝しています。あの日から今日まで、生きていたから、かなでと出会えた。お父さん。お母さん。心配しないでね。僕はもう、寂しくない。」
「佐助のお父さん、お母さん、そして妹さん。私は佐助に巡り合えて幸せさ。どうか、安らかに眠ってください。」

 僕とかなでは手を合わせてお祈りをした。
18/09/29 21:59更新 / お菓子な白魔導士

■作者メッセージ
小学校のときの社会の先生が、あわは食べてみたら美味しかったと言っていました。
あわのおかゆと言うと、江戸時代の農民が米代わりに食べていたまずい物というイメージがあるのですが、どうなのでしょうか?

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