魔物に攻められて――
「はぁ、はぁ、はぁ…ふぅ」
複雑に入り組んだ裏路地、そこにある高く積み上げられた酒樽を背にして地面に崩れ落ち、堪らず、と言った風に面帆を跳ね上げて荒い息を繰り返す男。
顔は赤く、顔中汗まみれで無精髭から雨のように汗を垂らす様子から、どれだけ激しい運動をしていたかが伺える。
「ねえ、もしかしてもう男居ないの?」
「…私たちまた出遅れちゃったのかなぁ」
「ッ!?」
表通りから聞こえてくる声にビクッと身体を震わせると、息を殺して樽の隙間から表通りを見る。
彼の目の前、丁度裏路地に入る道で立ち止まっている二つの人影。どちらも少女であるが、人間のような手足は無く、どちらも美しい黒翼と鳥のような形状の足がある。
ハーピー、その中でブラックハーピーと呼ばれている種族だ。他の魔物と違ってハーピー特有の布を巻いただけの服装などから、恐らく町に侵攻してきた部隊とは別の、後方支援部隊の魔物なのだろう。二匹はあたりをキョロキョロと見回しながら残念そうに話し合っている。
突然の魔物の侵攻から既に数刻。恐らく女性を含めてこの国の国民はほとんどが魔物に襲われ交わっているか、魔物になっているかのどちらかだろう。
「ん? 何か凄い精の香りがするんだけど…」
「ほんと!? どこどこ!?」
拙いバレた!? 二匹が自分の潜伏している裏路地の方を向いたのを見て、樽から急いで離れて口元に手を置いて息を殺す。
今までの戦闘から、魔物が精――生命力、精液、魔力など様々な要素――を感知して襲ってくることは知っていたが、まさかこんなところでその効果を知ることになるとは。
じわりじわりと近づいてくる二匹の魔物。息を殺しながらも懐にある剣に手をかける。前線級の魔物ではないとはいえ、魔物である以上自分達人間よりもはるかに強い。その為手加減なんてできやしないのだが、碌な武装もしていない、更に見た目が自分より遥かに年下の少女でしかない二人に武器を振るうと言うのは、騎士として、何より男として少々気が引ける。
だが、ここで倒さなければ更なる被害者が、もしくは自分が大変なことになる。そう考えれば剣を振るわざるを得ない。
「おい! そこのお二人さん!!」
「あ、姐さん男だよ!?」
「本当!! まさかあちらから来てくれるなんて…。私たちラッキーね」
女性と男性の獣のような唸り声と甲高い嬌声が響き続ける町に、理性的な声が響く。
自分はその声を知っている。同僚で、自分の認めたナイスガイの一人。無限の平原を愛する漢。軟派な所が見受けられるが、その実一途で内に暑苦しいほどの情熱を持った奴だ。恐らく、路地裏に何かいることを察した二匹を見てそれを止める為に現れたに違いない。
こんな状況で自ら身体を晒すなんて凄い気力だ、そう感心したのだが――。
「ようやく、ようやく理想の女性を見つけたッ!! この町に侵攻して来たのはどの子も綺麗だけど皆ムチムチな子ばかりッ。お嬢さんたち!! 貴女達のその慎ましい胸とプリンとした尻に色々させて貰えるんなら、俺はこの身すべてを捧げよう!!」
っておいいいいいいいいいいいいいい!? 思わず内心で盛大に叫んだ騎士。確かに同僚は何かにつけて、ペチャパイもみたいだの、ペチャパイ気にしてる女の子を涙目にさせて弄りたいだのと公言していたのを知っているが、まさか魔物にまでその食指を伸ばすとは…。いくら何でも予想外過ぎた。
「姉さん、あの人ああ言ってるけど…どうしよ?」
「うーん、確かに彼は好みだけど…」
確かに、いくら魔物が人間を食べると言っても二人同時になんて口外する男を食べたがるかと言えば微妙な所だろう。うーんと二人して頭を悩ませる姉妹に、もうどうでもいいから早くその馬鹿と一緒に俺の目の前から立ち去ってくれ!! と本気で願う騎士。
「見つけたぞ!! 私のむこどのぉおおおおおおおおおおおおお!!」
「ッチィ!! 回復が早すぎるぞ!?」
ドガァアア!! と言う破砕音と共に新たな女性の声。確実に新手の魔物だ。と言うか婿ってなんだ? と思わず首を傾げる騎士。
「あの程度で私の貴方への愛は薄れない!! 愛してるんだ貴方を!!」
「俺はペチャパイが好きだと言ってるだろうが!! 大きな胸はお断りだ!!」
「身持ちが固いなぁ、婿殿!!」
甲高い金属音が響き渡る。恐らく戦闘が開始されたのだろう。と言うか、婿だのと言ってる奴と切り合うってどういう状況なんだ? そろそろ本当に混乱してきた騎士を差し置いて、表通りの会話はどんどん進んでいく。
「と言うか、何で戦闘に負けたら追ってくるの君!?」
「君じゃなくて、シータと言う名で呼んでほしい!! リザードマンは決闘で負けた男に嫁ぐと言う伝統があるのだ!! あ、別に勝ってもお持ち帰りすることもあるぞ」
「何その理不尽な伝統!?」
「だが、実際はそんな伝統など関係ない!! 貴方との戦いで確信したのだよ!! 私と貴方は運命の赤い糸で結ばれているのだと!!」
「何その超理論!? 怖いよ本当に!?」
く、かくなる上は――そんな微かな声と共に起こった出来事を、騎士は生涯忘れることは無いだろう。
同僚の騎士が、ブラックハーピーの姉妹を両脇に抱えて全力で走りだした。
見事な手際だった。一際大きな音がなったことから、リザードマンの剣を弾きそのまま走ったのだろう。まだ状況に着いてこれていなかったブラックハーピーの姉妹の重心を丁寧に崩しつつ、勢いが嘘のような丁寧な手つきで脇に抱え、そのまま全力で走り抜けたのだ。
ハーピーと言えば、人を攫うことで有名な魔物。そんな魔物が人間の男性に連れ去られる。しかもそれが同僚で、その同僚の手つきがあまりにも慣れ過ぎていた。ショッキングな光景に隠れることも忘れてポカンとその場に固まる騎士。
「くっ、だが逃がさんよ婿殿!!」
彼を追ってリザードマンも駆け出す。一人置いてけぼりとなった騎士は、再び戻った嬌声を耳にしつつ、暫くその場を動けなかった。
それからどれだけの時間が過ぎたのだろうか? ようやく冷静さを取り戻した騎士は、とりあえず先程までの光景を記憶の彼方に消し飛ばす。兎に角ここから移動しよう。体力は大分回復してきたし、いつまでも同じところに留まっていては魔物たちに居場所がばれてしまう。樽の隙間から表通りに敵が居ないか簡単に確認しつつ、移動しようかと腰を上ようとした彼の耳に、ガシャと言う金属音が聞こえてきた。
剣を手に慌てて振り返る。足音は近い。いくら鍛えていると言っても疲労によって集中力が鈍ってしまったか。そのまま剣を抜き放とうとしたところで、暗がりから出てきた人影を見てその動きを止めた。
「はぁ、はぁ、はぁ…ぁい」
「ネル!? 無事だったのか!?」
日に当たった麦のような長い金髪は良く分からない液体に塗れて体中に張り付き、顔もよく見えない。鎧は無残に砕け、下に着る服も無残に引き裂かれ只の襤褸布と化していた。胸は丸出し、下もブーツ以外は張り付けてあるだけ、そんな状態だった。だが、彼は生きていた。
「…ぁ」
「っと、大丈夫か? …良く、よく頑張った」
崩れ落ちる彼の身体を優しく抱きしめ、そしていつものように頭を撫でてやる。騎士としては珍しく、小柄で二次性徴を置いてきたような彼は、自分に撫でられることをいたく気に入っていた。褒めて褒めてと子犬のように駆け寄ってくる彼の笑顔を、騎士はよく覚えている。
はぁはぁと言う荒い息、そしてぁ、んッ! と断髪的に身体を跳ねる彼に、騎士はどれだけの恐怖と戦い、ここまで逃げてきたのだろうと心を痛める。
とりあえず、何とかしてここから逃げよう。幸いなことに今周囲に魔物はいない。これなら二人でこの町を脱出することも不可能ではないだろう。騎士は抱きしめていた彼を話すと、彼の肩に手を置きこれからのことを話そうとした。
「ネル、俺たちはこれから町を脱出す――る?」
違和感を感じて思わず固まる。ネルは今、兜も鎧も纏っていない。では、この彼の頭にある角は、背中から生える翼は? チラチラと視界をうろつく細長い尻尾のようなものは? そして、彼はここまで女性的だったか? 確かに少女然とはしていたが、彼は立派な男だった。微かにも胸は膨らんでいなかった。
そして何より、その瞳。顔に張り付く長髪で分かりづらいが、爛々と輝くその瞳を騎士は良く知っている。魔物が良くしている目だ。男を見つけ、襲う前の、あの無邪気で同時に何よりも恐ろしい目だ。俺が最初にぶつかった魔物、あのサキュバスがしていた目だ。貴方を私の物にする、そう言って魔法をぶち込んできたあのサキュバスと同じ――。
「せんぱぁい」
「おい、ちょっと待てネ――ムグッ!?」
押し倒される。体格差なんて関係ないと言わんばかりの剛力。兜をかぶっているとはいえ、後頭部を強かに打ち付け軽く意識が跳びかける。そして同時に襲いくる、快楽。
柔らかいモノが唇に当たり、痛みに開いた隙間からぬるりとしたモノが自分の口内に侵入してくる。
情熱的に、献身的に一心不乱に自分の口内を貪るネル。一体何が起こっているのか。ネルは後輩、後輩は男だったはずだ。何より人間だったはず。なぜ? なにが? そんな言葉だけが頭の中を掻き乱す。彼、彼女の身体を跳ねのけることなど容易なはずだ。頭部に手を置かれているだけで、彼女が自分を拘束している部分なんてない。敢えて言うのであれば絡ませて股間を擦り付けている足くらいだが、その程度なら何とかなる。
だが、彼は動けない。ただ彼女から与えられる暴力的なまでの愛をただただ受け入れるだけだ。
「ぷは…先輩、私貴方のことが好きなんですよ? 男のころから。でも、男だから我慢してた。でも、今は違います。貴方を好きなお姉さまに出逢って、こうして女の子にしてもらいました。知ってます? 先輩の下着盗んでたの私なんですよ? だから、貴方の匂いはよく覚えています。お姉さまに先輩の居場所を教えてから、それからしようと思ってたんですけど――限界です。貴方が悪いんですよ? 優しくしてくれた貴方が。私の大好きな匂いをそんなにぷんぷんさせながら抱きしめるから。貴方が私の頭を撫でちゃうから。だから先輩」
彼女が離れ、下につけた布を破り捨てる。
そこには本来小ぶりな男性器があったはず。だが今そこにあるのは、何も知らない純粋無垢な白い肌と、男を狂わせる蜜をダラダラとだらしなく溢れ垂らす、ぴったりと閉じた二つの丘。
金髪ゆえに強調される角、暗がりの中でも一際目立つ黒い翼、うねる尻尾。ブーツだけを履き、それ以外生まれたままの姿の彼女を見て、否が応にも股間が膨れ上がるのを感じる。いい加減ズボンが窮屈だった。
それを察したのか、震える手でズボンのチャックを外し、中から凶悪なまでに膨れ上がった騎士の肉棒を晒し出す。
肉棒が外気にさらされた途端、はぁ、と歓喜の涙と共に全身を震わせて表情を蕩けさせた彼女は、熱病を患ったかのように全身を大げさに震わせながら騎士に跨ると、ゆっくりと腰を落としていく。そして、ぴったりと閉じた痴丘と肉棒が触れ合う。クチュっという音と共に彼女がまた身体を跳ねさせる。そして――。
だから、愛し合いましょう?
そんな彼女の言葉と共に、彼は意志を手放した。
「ん、は…先輩の、おっき…いい!」
「あらあら、我慢できなかったのね?」
路地裏で騎士に背を向けて獣の様に腰を振るネルの姿を見て、路地裏から現れたサキュバスが苦笑した。
「あ、おね、さま。…ごめん、さい。がまんぁ、できな…んぁあ!?」
「ふふ、良いのよ? 後で私も混ぜてもらうんだから。今は楽しみなさい?」
息も絶え絶えに申し訳なさそうに言うネルに、まるで妹に言い聞かせるように母性的な笑みを浮かべて言うサキュバス。彼女の言葉を聞いたネルは、嬉しそうに表情をほころばせるネル、だったが。
「じゃあ、い――ぃいい!?」
「ネル!?」
彼女の身体が跳ね上がる。バチュッ! と肌の叩き付けられる音と粘着質な水音が混ざりあい彼女の身体が肉棒が外れそうになるぎりぎりまで浮き上がる。
だが、浮き上がった身体は重力に従ってすぐに降下し始め――そしてまた打ち上げられる。
「ひぎぃ!? お、あ…」
まるで身体の中心を太い杭で打ち貫かれたような衝撃に、堪らず崩れ落ちるネル。だが、そんな彼女の身体を下敷きとなっていた騎士が支え、そして彼女の角を無骨なガントレットを装備した腕で無造作につかんだ。
「なぁ、ネル?」
「い、ぁ、あ、せ、ぃ?」
最早意味ある声も出せないのだろう。快楽と混乱で濁った瞳を何とか騎士の方へと向けたネル。そんな彼女の瞳に彼の表情が写った瞬間、彼が無造作に肉棒を膣に叩き込んだ。
「いあああああああああ!? ひ、せ、んぉおおおおおお!?」
「俺言ったよな? 人とは違う奴の方が興奮するってッ」
膣を、子宮を抉り取るような乱暴な騎士の動きに、堪らず獣のような雄叫びを上げるネル。目は見開かれ、口からは涎を垂らし、全身を熱病に魘されたように震わせながら栓が抜けたように潮を吹き出しよがり狂う彼女を見ながら、彼は表情を歪める。
「んで、女が啼くのに凄い興奮するってよぉ!!」
「ぉ、おお、あ……」
耐え切れずに地面に上半身を落とすネルに、容赦なく腰を振るう騎士。もはや言葉すら発することが出来ず、ただただ騎士から与えられる暴力的な快楽になすすべもなく流されることしか出来ない彼女を見て満足そうに笑いながら、騎士は茫然としているサキュバスの方を向く。
「ああ、あんた。あんたも同じだからな? 覚悟しとけよ?」
「あッ!? …え、え楽しみにしておくわ?」
胸が締め付けられ、子宮が疼く。自分はなんて幸福なのだろうか。騎士に見られただけで絶頂を迎えながらそんなことをサキュバスは考えていた。
それから時間をおかず、その国は魔界に変貌することとなる。その日のうちに魔界の変貌してしまったのは、国中の交わりが原因であるのは明白だが、このナイスガイを自称する騎士たちが必要以上に頑張りすぎたのも、魔界化の原因かもしれない。
「先輩! 私まだ妊娠してないんですけど!? 何で妊娠させてくれないんですか!?」
「無茶言うなよ!? 確率の問題だろ!?」
「ふふ、じゃあまた皆で一緒にしましょ?」
「ええ!? …お姉さまと一緒にはしたい。でも、先輩は私が独占したいですし、妊娠してるから譲ってほしい…私はどうすればいいんですか先輩!!」
「何で俺に言うんだよ!? 知らねえよ!?」
「お、なんだなんだ? また痴話喧嘩か」
「黙ってろ変態!! 誘拐犯!! ハーレム野郎!! 絶倫!! アヌス!!」
「開口一番にヒドイなお前!? てか俺はアヌスじゃねえアルスだっつってんだろうが!! 喧嘩売ってんだよなおい!!」
複雑に入り組んだ裏路地、そこにある高く積み上げられた酒樽を背にして地面に崩れ落ち、堪らず、と言った風に面帆を跳ね上げて荒い息を繰り返す男。
顔は赤く、顔中汗まみれで無精髭から雨のように汗を垂らす様子から、どれだけ激しい運動をしていたかが伺える。
「ねえ、もしかしてもう男居ないの?」
「…私たちまた出遅れちゃったのかなぁ」
「ッ!?」
表通りから聞こえてくる声にビクッと身体を震わせると、息を殺して樽の隙間から表通りを見る。
彼の目の前、丁度裏路地に入る道で立ち止まっている二つの人影。どちらも少女であるが、人間のような手足は無く、どちらも美しい黒翼と鳥のような形状の足がある。
ハーピー、その中でブラックハーピーと呼ばれている種族だ。他の魔物と違ってハーピー特有の布を巻いただけの服装などから、恐らく町に侵攻してきた部隊とは別の、後方支援部隊の魔物なのだろう。二匹はあたりをキョロキョロと見回しながら残念そうに話し合っている。
突然の魔物の侵攻から既に数刻。恐らく女性を含めてこの国の国民はほとんどが魔物に襲われ交わっているか、魔物になっているかのどちらかだろう。
「ん? 何か凄い精の香りがするんだけど…」
「ほんと!? どこどこ!?」
拙いバレた!? 二匹が自分の潜伏している裏路地の方を向いたのを見て、樽から急いで離れて口元に手を置いて息を殺す。
今までの戦闘から、魔物が精――生命力、精液、魔力など様々な要素――を感知して襲ってくることは知っていたが、まさかこんなところでその効果を知ることになるとは。
じわりじわりと近づいてくる二匹の魔物。息を殺しながらも懐にある剣に手をかける。前線級の魔物ではないとはいえ、魔物である以上自分達人間よりもはるかに強い。その為手加減なんてできやしないのだが、碌な武装もしていない、更に見た目が自分より遥かに年下の少女でしかない二人に武器を振るうと言うのは、騎士として、何より男として少々気が引ける。
だが、ここで倒さなければ更なる被害者が、もしくは自分が大変なことになる。そう考えれば剣を振るわざるを得ない。
「おい! そこのお二人さん!!」
「あ、姐さん男だよ!?」
「本当!! まさかあちらから来てくれるなんて…。私たちラッキーね」
女性と男性の獣のような唸り声と甲高い嬌声が響き続ける町に、理性的な声が響く。
自分はその声を知っている。同僚で、自分の認めたナイスガイの一人。無限の平原を愛する漢。軟派な所が見受けられるが、その実一途で内に暑苦しいほどの情熱を持った奴だ。恐らく、路地裏に何かいることを察した二匹を見てそれを止める為に現れたに違いない。
こんな状況で自ら身体を晒すなんて凄い気力だ、そう感心したのだが――。
「ようやく、ようやく理想の女性を見つけたッ!! この町に侵攻して来たのはどの子も綺麗だけど皆ムチムチな子ばかりッ。お嬢さんたち!! 貴女達のその慎ましい胸とプリンとした尻に色々させて貰えるんなら、俺はこの身すべてを捧げよう!!」
っておいいいいいいいいいいいいいい!? 思わず内心で盛大に叫んだ騎士。確かに同僚は何かにつけて、ペチャパイもみたいだの、ペチャパイ気にしてる女の子を涙目にさせて弄りたいだのと公言していたのを知っているが、まさか魔物にまでその食指を伸ばすとは…。いくら何でも予想外過ぎた。
「姉さん、あの人ああ言ってるけど…どうしよ?」
「うーん、確かに彼は好みだけど…」
確かに、いくら魔物が人間を食べると言っても二人同時になんて口外する男を食べたがるかと言えば微妙な所だろう。うーんと二人して頭を悩ませる姉妹に、もうどうでもいいから早くその馬鹿と一緒に俺の目の前から立ち去ってくれ!! と本気で願う騎士。
「見つけたぞ!! 私のむこどのぉおおおおおおおおおおおおお!!」
「ッチィ!! 回復が早すぎるぞ!?」
ドガァアア!! と言う破砕音と共に新たな女性の声。確実に新手の魔物だ。と言うか婿ってなんだ? と思わず首を傾げる騎士。
「あの程度で私の貴方への愛は薄れない!! 愛してるんだ貴方を!!」
「俺はペチャパイが好きだと言ってるだろうが!! 大きな胸はお断りだ!!」
「身持ちが固いなぁ、婿殿!!」
甲高い金属音が響き渡る。恐らく戦闘が開始されたのだろう。と言うか、婿だのと言ってる奴と切り合うってどういう状況なんだ? そろそろ本当に混乱してきた騎士を差し置いて、表通りの会話はどんどん進んでいく。
「と言うか、何で戦闘に負けたら追ってくるの君!?」
「君じゃなくて、シータと言う名で呼んでほしい!! リザードマンは決闘で負けた男に嫁ぐと言う伝統があるのだ!! あ、別に勝ってもお持ち帰りすることもあるぞ」
「何その理不尽な伝統!?」
「だが、実際はそんな伝統など関係ない!! 貴方との戦いで確信したのだよ!! 私と貴方は運命の赤い糸で結ばれているのだと!!」
「何その超理論!? 怖いよ本当に!?」
く、かくなる上は――そんな微かな声と共に起こった出来事を、騎士は生涯忘れることは無いだろう。
同僚の騎士が、ブラックハーピーの姉妹を両脇に抱えて全力で走りだした。
見事な手際だった。一際大きな音がなったことから、リザードマンの剣を弾きそのまま走ったのだろう。まだ状況に着いてこれていなかったブラックハーピーの姉妹の重心を丁寧に崩しつつ、勢いが嘘のような丁寧な手つきで脇に抱え、そのまま全力で走り抜けたのだ。
ハーピーと言えば、人を攫うことで有名な魔物。そんな魔物が人間の男性に連れ去られる。しかもそれが同僚で、その同僚の手つきがあまりにも慣れ過ぎていた。ショッキングな光景に隠れることも忘れてポカンとその場に固まる騎士。
「くっ、だが逃がさんよ婿殿!!」
彼を追ってリザードマンも駆け出す。一人置いてけぼりとなった騎士は、再び戻った嬌声を耳にしつつ、暫くその場を動けなかった。
それからどれだけの時間が過ぎたのだろうか? ようやく冷静さを取り戻した騎士は、とりあえず先程までの光景を記憶の彼方に消し飛ばす。兎に角ここから移動しよう。体力は大分回復してきたし、いつまでも同じところに留まっていては魔物たちに居場所がばれてしまう。樽の隙間から表通りに敵が居ないか簡単に確認しつつ、移動しようかと腰を上ようとした彼の耳に、ガシャと言う金属音が聞こえてきた。
剣を手に慌てて振り返る。足音は近い。いくら鍛えていると言っても疲労によって集中力が鈍ってしまったか。そのまま剣を抜き放とうとしたところで、暗がりから出てきた人影を見てその動きを止めた。
「はぁ、はぁ、はぁ…ぁい」
「ネル!? 無事だったのか!?」
日に当たった麦のような長い金髪は良く分からない液体に塗れて体中に張り付き、顔もよく見えない。鎧は無残に砕け、下に着る服も無残に引き裂かれ只の襤褸布と化していた。胸は丸出し、下もブーツ以外は張り付けてあるだけ、そんな状態だった。だが、彼は生きていた。
「…ぁ」
「っと、大丈夫か? …良く、よく頑張った」
崩れ落ちる彼の身体を優しく抱きしめ、そしていつものように頭を撫でてやる。騎士としては珍しく、小柄で二次性徴を置いてきたような彼は、自分に撫でられることをいたく気に入っていた。褒めて褒めてと子犬のように駆け寄ってくる彼の笑顔を、騎士はよく覚えている。
はぁはぁと言う荒い息、そしてぁ、んッ! と断髪的に身体を跳ねる彼に、騎士はどれだけの恐怖と戦い、ここまで逃げてきたのだろうと心を痛める。
とりあえず、何とかしてここから逃げよう。幸いなことに今周囲に魔物はいない。これなら二人でこの町を脱出することも不可能ではないだろう。騎士は抱きしめていた彼を話すと、彼の肩に手を置きこれからのことを話そうとした。
「ネル、俺たちはこれから町を脱出す――る?」
違和感を感じて思わず固まる。ネルは今、兜も鎧も纏っていない。では、この彼の頭にある角は、背中から生える翼は? チラチラと視界をうろつく細長い尻尾のようなものは? そして、彼はここまで女性的だったか? 確かに少女然とはしていたが、彼は立派な男だった。微かにも胸は膨らんでいなかった。
そして何より、その瞳。顔に張り付く長髪で分かりづらいが、爛々と輝くその瞳を騎士は良く知っている。魔物が良くしている目だ。男を見つけ、襲う前の、あの無邪気で同時に何よりも恐ろしい目だ。俺が最初にぶつかった魔物、あのサキュバスがしていた目だ。貴方を私の物にする、そう言って魔法をぶち込んできたあのサキュバスと同じ――。
「せんぱぁい」
「おい、ちょっと待てネ――ムグッ!?」
押し倒される。体格差なんて関係ないと言わんばかりの剛力。兜をかぶっているとはいえ、後頭部を強かに打ち付け軽く意識が跳びかける。そして同時に襲いくる、快楽。
柔らかいモノが唇に当たり、痛みに開いた隙間からぬるりとしたモノが自分の口内に侵入してくる。
情熱的に、献身的に一心不乱に自分の口内を貪るネル。一体何が起こっているのか。ネルは後輩、後輩は男だったはずだ。何より人間だったはず。なぜ? なにが? そんな言葉だけが頭の中を掻き乱す。彼、彼女の身体を跳ねのけることなど容易なはずだ。頭部に手を置かれているだけで、彼女が自分を拘束している部分なんてない。敢えて言うのであれば絡ませて股間を擦り付けている足くらいだが、その程度なら何とかなる。
だが、彼は動けない。ただ彼女から与えられる暴力的なまでの愛をただただ受け入れるだけだ。
「ぷは…先輩、私貴方のことが好きなんですよ? 男のころから。でも、男だから我慢してた。でも、今は違います。貴方を好きなお姉さまに出逢って、こうして女の子にしてもらいました。知ってます? 先輩の下着盗んでたの私なんですよ? だから、貴方の匂いはよく覚えています。お姉さまに先輩の居場所を教えてから、それからしようと思ってたんですけど――限界です。貴方が悪いんですよ? 優しくしてくれた貴方が。私の大好きな匂いをそんなにぷんぷんさせながら抱きしめるから。貴方が私の頭を撫でちゃうから。だから先輩」
彼女が離れ、下につけた布を破り捨てる。
そこには本来小ぶりな男性器があったはず。だが今そこにあるのは、何も知らない純粋無垢な白い肌と、男を狂わせる蜜をダラダラとだらしなく溢れ垂らす、ぴったりと閉じた二つの丘。
金髪ゆえに強調される角、暗がりの中でも一際目立つ黒い翼、うねる尻尾。ブーツだけを履き、それ以外生まれたままの姿の彼女を見て、否が応にも股間が膨れ上がるのを感じる。いい加減ズボンが窮屈だった。
それを察したのか、震える手でズボンのチャックを外し、中から凶悪なまでに膨れ上がった騎士の肉棒を晒し出す。
肉棒が外気にさらされた途端、はぁ、と歓喜の涙と共に全身を震わせて表情を蕩けさせた彼女は、熱病を患ったかのように全身を大げさに震わせながら騎士に跨ると、ゆっくりと腰を落としていく。そして、ぴったりと閉じた痴丘と肉棒が触れ合う。クチュっという音と共に彼女がまた身体を跳ねさせる。そして――。
だから、愛し合いましょう?
そんな彼女の言葉と共に、彼は意志を手放した。
「ん、は…先輩の、おっき…いい!」
「あらあら、我慢できなかったのね?」
路地裏で騎士に背を向けて獣の様に腰を振るネルの姿を見て、路地裏から現れたサキュバスが苦笑した。
「あ、おね、さま。…ごめん、さい。がまんぁ、できな…んぁあ!?」
「ふふ、良いのよ? 後で私も混ぜてもらうんだから。今は楽しみなさい?」
息も絶え絶えに申し訳なさそうに言うネルに、まるで妹に言い聞かせるように母性的な笑みを浮かべて言うサキュバス。彼女の言葉を聞いたネルは、嬉しそうに表情をほころばせるネル、だったが。
「じゃあ、い――ぃいい!?」
「ネル!?」
彼女の身体が跳ね上がる。バチュッ! と肌の叩き付けられる音と粘着質な水音が混ざりあい彼女の身体が肉棒が外れそうになるぎりぎりまで浮き上がる。
だが、浮き上がった身体は重力に従ってすぐに降下し始め――そしてまた打ち上げられる。
「ひぎぃ!? お、あ…」
まるで身体の中心を太い杭で打ち貫かれたような衝撃に、堪らず崩れ落ちるネル。だが、そんな彼女の身体を下敷きとなっていた騎士が支え、そして彼女の角を無骨なガントレットを装備した腕で無造作につかんだ。
「なぁ、ネル?」
「い、ぁ、あ、せ、ぃ?」
最早意味ある声も出せないのだろう。快楽と混乱で濁った瞳を何とか騎士の方へと向けたネル。そんな彼女の瞳に彼の表情が写った瞬間、彼が無造作に肉棒を膣に叩き込んだ。
「いあああああああああ!? ひ、せ、んぉおおおおおお!?」
「俺言ったよな? 人とは違う奴の方が興奮するってッ」
膣を、子宮を抉り取るような乱暴な騎士の動きに、堪らず獣のような雄叫びを上げるネル。目は見開かれ、口からは涎を垂らし、全身を熱病に魘されたように震わせながら栓が抜けたように潮を吹き出しよがり狂う彼女を見ながら、彼は表情を歪める。
「んで、女が啼くのに凄い興奮するってよぉ!!」
「ぉ、おお、あ……」
耐え切れずに地面に上半身を落とすネルに、容赦なく腰を振るう騎士。もはや言葉すら発することが出来ず、ただただ騎士から与えられる暴力的な快楽になすすべもなく流されることしか出来ない彼女を見て満足そうに笑いながら、騎士は茫然としているサキュバスの方を向く。
「ああ、あんた。あんたも同じだからな? 覚悟しとけよ?」
「あッ!? …え、え楽しみにしておくわ?」
胸が締め付けられ、子宮が疼く。自分はなんて幸福なのだろうか。騎士に見られただけで絶頂を迎えながらそんなことをサキュバスは考えていた。
それから時間をおかず、その国は魔界に変貌することとなる。その日のうちに魔界の変貌してしまったのは、国中の交わりが原因であるのは明白だが、このナイスガイを自称する騎士たちが必要以上に頑張りすぎたのも、魔界化の原因かもしれない。
「先輩! 私まだ妊娠してないんですけど!? 何で妊娠させてくれないんですか!?」
「無茶言うなよ!? 確率の問題だろ!?」
「ふふ、じゃあまた皆で一緒にしましょ?」
「ええ!? …お姉さまと一緒にはしたい。でも、先輩は私が独占したいですし、妊娠してるから譲ってほしい…私はどうすればいいんですか先輩!!」
「何で俺に言うんだよ!? 知らねえよ!?」
「お、なんだなんだ? また痴話喧嘩か」
「黙ってろ変態!! 誘拐犯!! ハーレム野郎!! 絶倫!! アヌス!!」
「開口一番にヒドイなお前!? てか俺はアヌスじゃねえアルスだっつってんだろうが!! 喧嘩売ってんだよなおい!!」
15/04/06 19:24更新 / ソルティ