ワーウルフの世界
「もうっ、邪魔っ!」
背の高い草が、まるでそれ自体が魔物であるように絡みつく。
乗馬ブーツで強引に踏み潰して、また走る。
ドドッドドッと子馬の馬蹄のような足音が無数、背中から鳴る。
ひいっと恐怖の声が引き結んだ歯の間から洩れる。
それが何なのか私はほんの数分前に知ってしまっていたから。
腰のサーベルで威嚇することも、「失せなさい下賎の獣!」とか怒鳴る余裕もない。それが無意味な相手だとわかってしまっている。
オオオオオオ――――ン
夕刻の黄昏に響く遠吠え。
まるで安い戯曲のワンシーンのよう。だけどあの声は舞台裏の黒子なんかじゃない。
本物の狼より尚恐ろしい――――ワーウルフの群れ。
「こないでって言ってるでしょっ! 群れごと皆殺しにするわよ!」
私の言葉をそもそも理解しているのかもわからない。そんな怒声が貴重な体力を奪うことにまた気付いてしまい、自分の馬鹿さを恥じる。
どうして私は魔物に追われる中で自分を省みているんだろう。
私が今考えるべきは逃げること。この草原を抜けて街道まで出れば……!
無数の足音が更に近付く。振り返るのも怖い。その瞬間に脚を止めてしまいそうで。
そうなれば私は無数のワーウルフになぶられ、彼らの肉となるだろう。
「うううああああああっ!」
声を上げ、自らを奮い立たせる。臆病に絡みつかれないように。
追いつかれれば死ぬ! めちゃくちゃに噛み付かれて死んじゃう……!
ウオオオオオオ――――ン
四度目の遠吠え。今度は幾重も響く。
それが何か、集団的な狩りの合図――獲物を追い詰めたとかそんなのかもしれない。
「はしれぇっ!」
思考も何もかも後回し。神に祈ることも剣士の誓いをそらんじることもなくひたすら走る。
騒ぐ心が静まり、恐ろしいほどの黄昏の静寂とそれを裂く足音が耳にダイレクトに入るようになる。
ようやく、恐怖に打ち勝った……! 後は街道まで走れば……!
「つかまえたっ♪」
その軽い少女の声は、死神の囁きだったのかもしれない。
爪が肩へめりこみ、人外の膂力に勢いを殺される。
まるで透過するようにあっけなく、首に鋭利な牙が深く突き刺さる。
「いっ――――!」
自分の体が草原に倒れこむ音が耳をたたき、人間と酷似した外見の、青い髪の獣人たちが視界に何匹も映る。
私にひと噛み与えたワーウルフは、勝ち誇った笑みで私を見下ろしていた。
私は死ぬ。
正騎士になることも、家に富も名誉ももたらせず、自分がここにいる理由もわからずに死ぬんだ。
「はぁっ…………」
口から出てくるのは怒りではなく諦めとむなしさだった。
「さあ。殺しなさいよ化け物ども。腹を裂くなり腕を持っていくなり好きにしなさいよ」
私は腰に佩いたサーベルから手を離す。
もうここまで追い詰められて、近接格闘でワーウルフに勝てるわけがない。知性は低いがワーウルフは非常に力が強く、そして素早い。鈍重なオーガよりも相手しづらい凶悪な魔物だ。
ワーウルフたちは私を見て、にやにやと笑うだけで牙をたてようとしない。
何がそんなに可笑しいのかわからないし、墓への土産でもワーウルフの文化なんて知りたくもない。
「どうしたのよ。殺しなさいよ。さあ! 早く!」
そういえば首を噛まれたから、私が自然に死ぬのを待っているのかもしれない。
医術の心得がなくても、あんなに深く噛まれれば死ぬなんてわかっている。
痛みはない。でもそれは痛みをこえた致命の域にまで達しているからだ。
「なんなの? 私がキレイな状態のまま死なせたいの? それとも騎士へのせめての名誉?」
「……ふふっ」
嗤った。
私を噛んだものとは違う、顔つきからして私と同年代――つまり二十歳かそれほどの女と見えるワーウルフが嗤った。
「すぐにわかるわよ。あんたにも」
それはありえないことに、私にも理解できる言葉だった。
少し語尾に南部訛りがあるが、『聖都』でも十分通じうる人間の言葉だった。
「な、なぜ、ヒトの言葉を……」
頭の上から、何かが生えた。
「わっ!?」
致命傷を受けたはずだったのに腕が動き、それを確認する。
まるで毛皮のような、細長い何か。
「わ、あ、う……ウ」
喉から私の声とは違う、低い獣の唸りのような――悪魔が憑いたかのごとき声が生じる。口を押さえると、手がぶるぶると震え、篭手の隙間から青い毛皮のようなものがはみ出ている。
まるで虫が手の上を這っているような不快感に私は篭手を投げ捨てる。
「あ、あ……!」
長く伸びた爪、蒼い肉が組み合わさって疾走を可能とした肉球。
それはまるで――
「さぁて。そろそろしっぽも生えるかな」
目の前のワーウルフが言う。
「ひゃ、ああっ!」
スカートの内、臀部に虫が這い、押さえた途端に内側から分厚い何かが這い出る。
大きく動き、私の内腿を毛羽立ったものが撫でる。
「あ、グ、あ……や、やめ」
私はそこではっきりと恐怖を感じた。
自分の身に何が起ころうとしているのか。
私は、魔物になろうとしている――
「やめてっ! そんな、殺してぇっ!」
もがく間に歯から硬質の音が響き、かみ合わせるとそれが牙だと理解する。
「やめてっ。やめてよぉ……」
ばたばたとスカートの中でしっぽが暴れ、頭の上に生じた狼の耳が動く。
「わ、わうう、わぁぁぁう……」
私の悲鳴は、狼の悲痛な鳴き声へと勝手に変じていた。
異形と化した手を空に掲げると、その手を目の前の魔物ワーウルフに握られた。
「さ。ようこそ。あたしらの群れに」
※※※
私にはもはや暴れる気力もありはしなかった。
ワーウルフはなぜか鏡を持っていた。それに映る私は、もうどう見ても騎士などではなく――ただの地を這う低俗な魔物ワーウルフだった。
口を開けば凶悪な牙が生え、両手は武器を持つことに適さない大爪が生えている。移動中に短く破かれたスカートからは、だらりと垂れた青いしっぽがむき出しになっている。
私の面影を保つのはなめした革の鎧と、半分ほど青く染まった長い黒髪。
「あんた、名前は?」
『群れの長』と紹介されたその女ワーウルフに片手を握られ問われたけれど、答えるわけもない。
それは私に残る人としての意地なのか、騎士の誓いと共に捨てたはずの子どもの意固地さなのか。
「さっさと言ったほうが身のためよー? 男がもらえなくなっちゃう」
私を噛んだワーウルフは私よりずっと背の低い仔のようだ。大きな瞳がまるで人間の童女のようで、凶暴さが感じられない。
しかしそれは、私が同族となってしまったからだろう。
私は何をすればいいんだろう。
魔物に堕ちて、魔物の群れに連れられ、何をすればいいんだろう。
せめてこの群れを壊滅させて手柄を取ろうと騎士の私は提案する。
しかし体はもう動かない。月のない夜に現れるというグールやゾンビのほうがまだ動く。
あらゆる目的性が消失していた。
「ねぇねぇルズ様、わたしの妹にしちゃだめ?」
私の周りをくるくると回る小さなワーウルフが、長のワーウルフにそう問う。
長のワーウルフは顎に手を当て、まるで人間のように思考する。大した脳もないくせに。
「……そうだな。いいだろう」
「やったぁっ! わたしもおねえちゃんだっ」
小さなワーウルフが飛び跳ねる。それはまるで人間の童女のようなしぐさだった。
私の手を握って、「これからはおねえちゃんってよぶのよ!」などと言っている。
蹴っ飛ばそうと脚を動かそうとした途端、手首に牙を立てられ、噛み付かれた。「ひゃっ」とまるで冷や水を浴びせかけられたような感触。
深く食い込んでいるはずなのに、痛みはない。
「あっ……はぁっ……」
腕の内を何か質量あるものが伝い、私の眉間に集まり、はじける。それがはじけるたびに私の体から緊張がほぐれていく。
「いい? おとなしくしててね? 家についたら、色々教えてあげるから」
「は、はい……」
私はしゃがみこんで、少し頭を下げた。私の耳の間を、目の前にいる小さなワーウルフの子がなでている。
それは気持ちよく、私も自然と「くぅん」と鳴いてしまう。
「ふふっ。それじゃ、いこっか」
「わうっ」
……あれ? これでいいのかな……?
※※※
草原の中の、地面が隆起して作られた台地。
地層がむき出しになった陰に、冒険者が使うときいたことがある携帯テントのようなものが、いくつかあった。
焚き火が焚かれていて、何匹かが周囲を警護している。
ワーウルフの長が私を二十は下らない数のワーウルフの前に出し、新しい仲間だと紹介した。
私はおかしなことに気付く。
皆ワーウルフはメスのように見える。粗いケープが胸部を隠していて、そこは膨らんでいる。顔を見ても、明らかに女性的だ。
『人狼』の別称とは裏腹に、その顔は普通の女性のものであることも気になる。
そうやって悩む間に、小さなワーウルフに手を引かれ、焚き火からやや離れた数匹のワーウルフのところへ連れて行かれ――
「わうっ!? に、人間……」
信じられないことに、そこには人間の男性がいた。
豪胆な顔つきで、巨大な剣を持っていても違和感のない大柄な男。
その男は満面の笑みで――ワーウルフを横に侍らせ、キスを交わしていた。
「な、ななっ……あ、あなたはいったい何をっ!?」
「おや? リム、この娘は『なりたて』かい?」
親しげにその男は小さなワーウルフに話しかける。
「そうだよっ。わたしの妹になるの」
「おお。そうかそうか。リムにもやっと、妹ができたか……」
「グルル……でも、あたしのことも、しっかり孕ませて下さいね」
淫靡な顔つきで男の隣のワーウルフが言い、男は屈託ない笑みでまた口付ける。
絶望より早く、私の騎士の心が知恵を授ける。
私は知っている。教団の教えに従わず、魔物や魔王を崇拝する邪教の民どもの存在を。
親魔物とも呼ばれ、私の街では見つけ次第処刑してよいとされていた。
「邪教の民めっ! この私、メルフィア=ロイスが――」
「だーめっ♪」
小さなワーウルフが首筋に噛み付いた。「あぐっ」と言葉が止まり、私は力が抜けて倒れてしまう。
また首の内側を、何かが伝う。
「お父さんに噛み付くなんて、いけないことだよ? リン」
「は、はなせっ! このっ……せめてこの男だけでもっ……」
私に残る騎士の魂が爪を振り回そうとするが、力がうまく入らない。
口の端から薄く涎が垂れる。
「あ、う……」
「いい? リン。あなたはわたしの妹リン。お父さん――アシュレイとお母さん――クムの娘の一人よ」
私のしっぽがばたばたと動いていたが、やがてゆっくりになり、「はぁぁっ」と長い息をはいた。
「……わ、わううっ……。ごめんなさい。おねえちゃん」
私はしっぽをまるめて、耳をぺたりと伏せた。おねえちゃんは笑って、「だめだよリン」と優しく言う。
「いい? お父さんとお母さんのいうことをきいて、いい子になるの」
「わうっ!」
私は元気よく鳴いて返事をした。
お父さんとお母さんが、くすくすと笑っていた。それが嬉しくて、私もぱたぱたしっぽを振った。
※※※
私が固くて落ち着かない服を脱いで、薄いケープ一枚に着替えていると、お父さんに呼ばれた。
「リン」
「わうっ。お父さんっ」
私はお父さんの足元に近寄って、ぺたりと座った。もちろん両手両足をついて。
「もうちょっと、素直になってみるのもいいぞ。俺も昔は随分、ストイックだったが……そんなもの、この草原では要らない」
「どういうことですか? わうう」
よくわからない。素直にって?
「あなた。もう記憶が改変されているのよ」
「ああ。そうか……。うーん、そうだな。リン、おまえは明るい娘になりなさい。リムを見習って、もっと自由に。もっと奔放に生きてみなさい」
「……わうっ! わかりましたっ」
私の心に目的の火が灯る。
聖騎士になるよりも大事なこと。お父さんとお母さんの愛を受けて、いい子になるんだ。
もう、大丈夫。
私は明るい娘になるんだ。
そうやって喜びをかみ締めていると、かぷっと手を甘噛みされた。
お姉ちゃんが悪戯っぽい笑顔で私を見上げていた。
「お姉ちゃん?」
「リーンっ。おねえちゃんとあそぼっか」
「わうっ。あそぶあそぶっ」
お姉ちゃんの元気さを見習わないと。
お父さんとお母さんがいる小高いところから少し離れた草むらまで歩く。
そこには革で出来た小さなかばんが置いていた。白い刺繍――教団の認めた勇者の紋章が刻まれていて、お父さんもこんな時があったんだなぁとしみじみ思った。
私にもそんな時があった。けど今は、お父さんとお母さんの子だから。
いや、ううん、昔からかな……あれ……?
「お父さんのなの。今はもういらないから、わたしがもらったの。わうう」
お姉ちゃんの声でわれにかえった。
お姉ちゃんはそこから羊皮紙を束ねた本を取り出して、「よんであげるっ」と笑顔で言った。
私はお姉ちゃんの隣に座る。お姉ちゃんのしっぽと私のしっぽが重なって、嬉しくなった。
「『むかしむかしあるところに、えっちでかわいいワーウルフのおんなのこと、おおきなおちんちんのたくましいおとこのひとがいました。ワーウルフのおんなのこはちっちゃくても、とっても性技がすごくて、おとこのひとはすぐに絶頂にいってしまいます』」
お姉ちゃんは緩急のつけ方がうまくて、高い声でワーウルフの女の子を演じたり、低く唸るような声でたくましい男の人を演じたりしている。
「きゅうぅ……」
気がつくと、じっとりと私の膣口が濡れていた。私は爪をそっとむき出しの膣に入れて、声を殺して自慰をはじめる。
いつでもすぐいじれるように、いつでも男を犯せるように、ワーウルフは下着をつけない。
「にゅふふ。えっちなこと、したくなったでしょ?」
それは本に書かれているせりふなのかはわからなかったけど、私は素直に「わう」と頷いた。
「わたしももうどろどろなのー。リン、一緒に、きもちよくなろ?」
「えっ……わうっ! もちろんっ」
私は嬉しくなって、お姉ちゃんの胸に飛び込んだ。小さいけれど、毛皮越しに勃起した乳首があって、そこを舐めると「きゃうっ」とお姉ちゃんが鳴く。
可愛いなぁ。
「もう。だーめ。そっちじゃないの。ちゃんと本当に男の人を見つけたときのために、こっちでするの」
お姉ちゃんは爪を二本、私の膣口にあててぐっと開く。黄色い瞳でまっすぐナカまで見つめられて恥ずかしい。
「いれてぇ……お姉ちゃぁん……」
その手でかきまわしてほしかった。どろどろと液が止まらなくて、陰核も内皮を押し上げて膨れている。
かくっかくっと腰が自然と動いてしまって、そこに物語の中の男のようなたくましい男根を意識してしまう。
「さびしいの……お姉ちゃぁん……おまんこ、さびしいの」
私は思うことをそのまま言った。素直に。素直になるんだ。
ずっと男の人なんて触れ合ったこともなかったし、人間だった頃は厳しいきまりがあったから社交に繰り出すこともできなかった。
でもいまは。私は元気なワーウルフだから。
「だーめ。おねえちゃんもすっごくおまんこさびしいから。まずはおねえちゃんを気持ちよくしないとだめ」
「わううー」
お姉ちゃんは鞄から、ちょうど(子どもの時弟のを見た)男の人のおちんちんぐらいの小さな棒を取り出した。根元に穴が開いていて、そこにお姉ちゃんは爪を入れた。
するとその棒は「ぶううう――」と音をたてて一気に大きくなった。色も私のおまんこの中みたいな、あかいいろになってる。
よく見ると、細かく震えていた。
「わぁ――――」
それは…………。
――このしばらく後に見ることになる、成人した男の人の男根にそっくりだった。充血して、中にたくさん精液をためた、魔物にとってたまらなくおいしそうなものだった。
私にははっきりとわからなかったけど、私に芽生えた魔物の本能が、それがたまらなくおいしそうなものだと理解していた。
「わうう……それ……それぇ……」
私は身を乗り出してそれを口に含もうとして、お姉ちゃんがすっとそれを動かす。そこではじめてそれがお姉ちゃんの指にはまった作り物だと思い出す。
だけどそんなことどうでもよくて、私はそれをおまんこにいれたくて、口に含んでちゅぱちゅぱしたくてたまらなかった。
「これを持って、入れるの。私のおまんこにいれて、動かすの。いい?」
「わうっ! わうっ!」
私は何度も頷いた。
「ちゃんとできたら、おねえちゃんがリンのことも、きもちよくしてあげるからね」
おねえちゃんが指からおちんちんを取り外して、私に手渡す。口の中に入れたいけど、おねえちゃんの言うとおり、おねえちゃんのとろとろになったおまんこに近づける。
どろどろになったちいさなおねえちゃんのおまんこは、それを察知したように小刻みに震える。まんなかにあるおまめがおっきくなっていて、そこに軽く、ぶぶぶぶと震えるそれを押し当てた。
「きゃうっ!」
気丈なおねえちゃんが一瞬で一匹のメス狼になった。はぁっはぁっと舌を出して、腰を上げて私の指についたおちんちんをおまんこに取り込む。
「ふってぇ……わたしのおまんこ、ぐちゃぐちゃにしてぇ……わうー」
私はしゅこっしゅこっと手を動かす。何度も何度も、指についたおっきなおちんちんを動かす。
くちゅっくちゅっと音が大きくなって、おねえちゃんが私に覆いかぶさる。私を軸にして、強靭な筋肉のある腰を振る。
ぱちんぱちんと私のお腹とおねえちゃんのおなかがぶつかりあう。その隙間にある私の腕が、大きく振られておちんちんが動く。
「へうっ! わうっ! きゃうっ! きゃうっ!」
私ももう限界で、ひりひりするほど勃ちきったおっぱいをお姉ちゃんにこすり付ける。おねえちゃんのあつい涎がかかるだけでどきどきする。
ぐんっ、ぐんっ、ぐんっ、と突いて、突き続けて、
「おくっ。おく、までっ。いれてっ! つきぬけてぇ」
わう、と鳴いて私は一気に指を奥まで入れた。柔らかいものを突き通したような感覚。
「きゃぅ――――――うぅぅ」
何又にも分かれて真白い濃厚なおしおが噴き出た。ねっとりとねばねばしたおしおが私の肌を伝って、青い手の毛を白く染めていく。
ぶぶぶぶと音を発していた指のおちんちんの音が止まって、最初見たときのように小さくなっていった。
「わう…………」
両手を広げると、肉球のついた青い手のうえに、淫乱ですっぱいにおいを発するおねえちゃんのおしおがたくさんかかっている。
――ここには、少し前までかかるはずのない……とても淫乱で。
ええっと……?
「わうう……?」
あれ……なんだか意識がちょっと飛んでた。
いけない。つぎは私。私が気持ちよくしてもらう番。
「おねえちゃんー。つぎ、わたしぃー。わうー」
「……あ。あうう。わう? リン?」
おねえちゃんは口の端から涎をたらしたまま、うつろな目で私を見る。
しばらくぼんやりと見て、「あ」と目覚める。
「あ、そ、そうだった。リン、うまいねー。おねえちゃん、いい妹をもった」
「わうっ。うれしいっ!」
ぱたぱたとしっぽをふると、お姉ちゃんがどろどろの本気汁だらけの手で撫でてくれた。髪がぎとぎとになって、私がすごく淫乱な女になれた気がして嬉しくなる。
濃厚にかおるメスのかおりが、私をさらに盛らせる。
「つぎっ。つぎっ。わたし、いれてぇっ」
「はいはい。じゃあつぎは、おねえちゃんのオナニー術、みせてあげちゃう」
おねえちゃんが指にはめたおちんちんが大きくなって、ぶぶぶぶと音をたてはじめた。
「わう! わう!」
私はくぱっとおまんこを両手で開いて、ぐっと突き出しておねえちゃんを待った。
――私が人間時代ですらろくにしなかった自慰にはまりこんでいくのに、そう時間はかからなかった。
※※※
私はまだ「ふかんぜん」だから、狩りには出られないみたい。
だから、おねえちゃんのくれた色んな『おもちゃ』でおまんこをいじって遊ぶのが最近の日課。
狩りは昼でも夜でもするから、夜にひとりぼっちはすごくさびしくて、おまんこが裂けちゃうほどたくさんぶるぶるするものをいれちゃうこともある。
おねえちゃんは族長様と一緒に狩りに出かけるけど。
一日だけ。
私と残った日があった。
月明かりがすごく綺麗で、その明かりの下で昔から、何か――何かに乗っていた気がする。
ああ、馬だ。馬に乗っていた。だけど、どうしてそんなことしてたんだろう?
「……ね。リン」
「わう? どうしたの、おねえちゃん」
おねえちゃんは私の胸の辺りによりかかって、「くぅん」と少しせつない鳴き声を出した。
「……リンがいて、よかった」
「…………?」
おねえちゃんは私の、最近むちむちしてきたふとももを撫でて、言う。
「わたし、ずっと妹が欲しかったの。でも、女の人がつかまることってあんまりなくて。おかあさんも、昔ちょっと人間にひどいめにあわされて、なかなか子どもができないの」
「きゅぅ……かわいそう」
おかあさん、そんなことがあったんだ。
ひどいことするなぁ。人間って。
私たちは大好きなのに。わかってくれない人も、いるのかな。
「…………リン。わたしの、おっきな妹。きてくれて、ありがとう」
その時のおねえちゃんは、笑顔だけど涙が流れていた。
私は、ずっと昔にここに来た。
でもそのまえどこにいたかはよくおもいだせない。
ええと、なんだっけ。おねえちゃんに首を噛まれたことは、覚えてるけど。
そうだ。人間のおやしき。小さいけど豪華な人間のおやしきで暮らしていたんだ。
そこに、おかあさんがいて。
あれ? ワーウルフのおかあさんがどうして、人間のおやしきにいるんだろう?
そもそもワーウルフの私がどうして人間のおやしきに……?
私に夫はいないのに。
「……ごめん。混乱させちゃうね。リン。きにしないで」
おねえちゃんは私の首を甘噛みして、くるりと回って立ち上がった。
首から全身におねえちゃんのあったかさが満ちていくみたいで、頭がぼんやりして、おねえちゃんが好きだってきもちがむくむく膨らんでくる。
「おねえちゃん。わたし、わたし」
「うんっ。おねえちゃんと、走ろっか」
わうっ! と一声鳴いて、私とおねえちゃんは夜の草原を走る。
両手両足を使って、全力で駆けて、月光の下で思うままに。
※※※
私たちワーウルフは、成長が早い。
特に私は――昔から体が大きかったせいか、私の記憶がはっきりしている限り二ヶ月ほどで、狩りの許可が出た。
狩りにもいくつか種類がある。私たちの食料である野生動物を狩るもの、縄張りを脅かすほかのワーウルフなど地上魔物との戦い。特に他の魔物との戦闘はかなり危険だから、族長様が交渉して収めることも少なくない。
それらより更に興奮して、私が行きたくて止まなかったのが――人間を捕まえるための狩り。
男の人を捕まえれば夫になってくれるし、女の人は私たちの仲間になる。
もちろん夫は欲しいけど、私は――おねえちゃんにもおかあさんにもおとうさんにも言ってないけど、人間の女の人に噛み付きたいと思っている。
昔から何度も、おねえちゃんに噛まれてきた私。
そのたびになんだか体中にあったかいものが染み渡っていくみたいで、それがとっても気持ちよかった。
きっと、おねえちゃんにとってもそれは気持ちのいいことだから、ずっとしてきてくれたんだ。
だから私もしたい。
「行くぞ。みんな」
『わおおおっ――――!!』
日が落ちかけた頃、族長様にひかれて私は狩りに出た。
私たちの家から遠く離れて、草原を駆け抜ける。誰の縄張りでもない、背の高い草が茂る草原。
体を屈めて四足で走るから前は良く見えないけど、先頭を走る族長様のにおいをたどっている。
ガガッ、ガガッと周りから轟くみんなの足音に私の足を合わせると、精神が高揚してくる。
「ぐううっ……おねえちゃん。私、楽しいっ」
「うんっ。おねえちゃんも楽しいよっ」
隣を走るおねえちゃんはにやりと笑って、遠い先を見て舌なめずりをする。
お姉ちゃんは今回の狩りで夫を見つけるって言ってた。族長様からも許可は出ているし、あとは男の人が見つかればいい。
オオオオ――――ン――
族長様が天高く咆える。
それを聞いて先遣のザラさんやムラさんが咆える。
――獲物ハ近イ 隠密ニ近ヅケ――
そんな意味の遠吠え。
私はぶるんとしっぽを振って、更に身を屈める。足音を減らし、爪が大地を掻く僅かな音だけで近付く。
遠吠えもない。ただみんな、黄色い目を輝かせて、狩りの姿勢に入っている。
「グウウウッ……」
私も、ワーウルフの血が目覚めてくる。ずっとずっと昔からあるワーウルフの狩りの血。
これは陽動作戦。族長様が自ら人間の前に出て、その隙に群れが後方から人間を狙う。
「な、なに、今の声!」「ワーウルフだ! 近くにいるぞ!」
ガサガサガサと不規則に乱れた葉擦れの音。背の高い草に身を隠して、走る。
族長様が咆哮して飛び上がったのはその瞬間だった。
「いたぞ!」「任せとけっ!」
弓を引き絞り、放たれたのが音でわかる。族長様には当たっていない。
未だ空中に踊る族長様を軸に私たちは人間たちの後ろへ回る。
草からはみ出す幌馬車が見えた。
一斉に、体を持ち上げて人影を捕捉する。
男2、女3。
「ウオオオオオオオンッ!」
おねえちゃんが咆えて。弓を構えた男の人に突撃する。首筋に噛み付いて、そのまま押し倒す。
悲鳴を上げられる前に、私は一番近くにいた幼い少女に飛び掛った。「きゃぁっ!」と甲高い悲鳴を上げて、私の下に倒れ伏す。
「グウウッ」
人間たちの混乱と私たちの歓喜の音が周りを包んでいたけれど、私は目の前の、自分ではじめて獲った獲物の嬉しさに、周りの音を意識から消し去った。
長いひらひらした服をきて、大きなつばの広い帽子をかぶっていたらしい。金色の髪がとても綺麗で、青い瞳も、なんだか人間らしい。
「やめてっ! 殺さないでっ!」
「グウウ……殺しはしないわ。ただ、きもちよくなるだけ」
私は力をこめて、綺麗な首筋に、牙を突き立てる。
一瞬の抵抗と、貫通の感触。硬い骨に私の牙が触れる。
「いっ」
私はぺろりと舌でその傷を舐める。魔力がそこから注がれ、私の下の少女に行き渡っていく。
「な、あ、なに。なに、を、してるのっ!」
私は答える代わりに、少女の大きなおっぱいを触った。「ひゃひっ」とあんまり艶のない、悲鳴に近い声が出る。
大丈夫。もっともっと感じやすい体になるから。
むにゅんむにゅんとおっぱいをもみつづけていくと、少女が「わ、ぐ」と苦しそうな声をあげだす。
私はそこで、あえて牙を抜いた。ちろちろと光る魔力がよだれと一緒に散る。
「な、なぁ、あ。あ、グウッ」
私の跨ったおなかより先、上半身がびくんびくんと震える。金色の髪のうなじがざわざわとうごめいて、耳が生えようとしていることがわかる。
「か、ああっ。あああっ」
少女が涙目で私に掴みかかる。私の肩に顎をのせて、はぁはぁと荒い息をする。
そこから背中も、おしりもみえる。まるでオナニーを我慢してるみたいに、おしりがもぞもぞと動いている。しっぽが生えようとしてるから。
「ね? 中途半端って、きもちわるいでしょ?」
「なりたいでしょ? ワーウルフ」
ビクッと今度は恐怖で少女が震える。震える片手が動いて、私の首を掴もうとしたけど、手首を掴み返して止めた。
「ほら、こんなにびくびくしてる。体は変わりたくてたまらないの。私たちと同じワーウルフに」
「かぁっ……ふ、ふざけ、ないで……。こんな、穢いま、魔力、なんて……わ、わたしの体にい、いれて……グウウッ」
少女が何度も咳き込む。そこに私は精のにおいを察知する。
魔力が体内の精を追い出し、体の作り変えにかかっている。でも私の入れた魔力は、体を完全変異させるのには足りない。
もちろん、わざとだよ。
「はぁぁぁぁ……グウウッ……こ、声も、う、うまくでな……グウッ」
私にまるで抱擁するようにぎゅうっと抱きついてきた。中身を突き出そうとするようにおしりがぷるぷる振られて、なんだか私は笑ってしまう。
そこに手をかけると、「わううううっ!」と少女は鳴く。ワーウルフの子のように。
「さ、そろそろ、いくよ。大丈夫。怖くないから」
私は抱きついてくる少女をそっとはがして、牙の根元まで入れるように首筋へ噛み付く。私の中でうずいていた魔力が一気に注ぎこまれて、「きゃぁぁぁぁぁっ!」と最後の悲鳴をあげる。
バサリと耳としっぽが生えて、指先から一瞬で青い毛が生え揃う。悲鳴を上げる間に歯はすべて鋭利な牙に変わり、見開いた青い目が黄色くにごった。
金髪が端から少しずつ、青くなっていく。
「わ、あ……う……」
かくりと首を傾けて、私の耳と生えたばかりの少女の耳が合う。ぱたっぱたっと嬉しそうに動いている。
しっぽも少しずつ、振られ始める。
魔力を更に注いで、私は愛しく少女の頭を撫でる。
「わうううっ……なんだろ……きもち、いいかも……」
少女は「わうっわうっ」と何度か鳴く。鳴くたびにしっぽが動いて、ワーウルフとしてのはじまりを喜んでいるとわかる。
金髪がくすんだ青に変わっていき、つむじまで完全に青に染まったところで私は口を離した。少女がぺたりと座り込んで、うつろな目で私を見る。
「はれ……わたし……ワーウルフ……なのかな……」
「そうよ。あなたはワーウルフ。人間からワーウルフになれたのよ」
よだれの垂れた、すこししまりのない……だけど男をそそりそうな笑顔で、にへらと笑う。
「わうう。そう…………いい。すごく、きもちいいかも」
少女は立ち上がって、「わおおおおんっ!」と元気良く咆えた。
その声に族長様も満足げに頷いていて、私も嬉しい。
狩りは終わったみたいで、お姉ちゃんが捕まえた男の人はもうお姉ちゃんと熱いキスをしているし、残り二人の女の人――ラフな格好をした矢立を背負った人と、半分黒髪のメガネをかけた人――もぺたんと座ってぺろぺろと爪の生えた手を舐めている。
二人とも嬉しそうで、もうすっかりワーウルフになれたみたい。よかったよかった。
「わうう。ねぇ、お姉ちゃん。わたし、えっちなこと……したい。今までずっと黙ってたけど、きょうみ、あるの」
私の捕まえた少女はもたもたとスカートを脱いで、その下の下着まで脱いで、服をたくしあげてみせた。まだ陰毛もほとんどないおまんこが、じんわりと濡れている。
「ふふ。ワーウルフになるときに、すごく興奮しちゃったのね」
手の早い子。でも、楽しそう。
「あっ。ミューレイ。ミューレイ!」
少女ははっと思い出したように、ぱたぱたと服をたくしあげたままもう一人の男――何人かの大人におちんちんを攻められて苦しそうにうめく男の人に近寄った。
「ミューレイ。わたしずっと好きだったの。もうお母様もワーウルフになったし、えっちしよっ」
「な、お、お嬢様っ! き、気を確かに」
「ミューレイっ!」
少女はそのミューレイという男の人の顔に、おまんこごと乗っかった。くちゅっくちゅっと漏れた愛液が顔とこすれてえっちな音を出す。
「ミューレイ。えっちなことしよ。しよっ。しよっ! しよっ!」
おさえつけていた他の人が族長様の目配せで退くと、解放されたおちんちんに少女はしゃぶりついた。
「ひゃふ……くちゅぅ……ひゅーれい……だいしゅき……」
男の人は「ああ」とか何か言っていたけど、少しするとじゅるじゅるとおまんこをしゃぶる音が聞こえてきて、少女は何のはばかりもなく嬌声をあげはじめた。
その嬌声がさっきまで人間だった残り二人の幼いワーウルフに伝わって、「わうう……」と鳴きながら下着を脱いでオナニーをはじめる。
めがねをかけた方の子は、おねえちゃんの夫候補の人のおちんちんをなめようとしておねえちゃんに吠えられている。
私はやれやれと立ち上がって、そのめがねの子の首筋を噛んであげた。魔力を流し込むと、黒い髪が段々青くなっていく。
「はぁぁっ……きもちいいでしゅぅ……わうううっ」
私はおまけとして、指をおまんこの中に突っ込んであげた。「きゃっ!」と驚いたのも一瞬。
「いれてっ。いれてくださいっ。おまんこぐちゃぐちゃにしてぇっ!」
「……ふふっ」
まだ硬い、歳のわりに未成熟なおまんこをいじりながら、私は狩りの成果に愉悦を浮かべた。
※※※
お姉ちゃんにも無事夫が出来て、私ももうお父さんから一人前だと認められた。
狩りにもすすんで参加したし、最近は猪の解体もできるようになった。首を落として、正中に切り込みを入れて真一文に引き裂くのは、群れでも私が一番うまい。
群れの数も、私の記憶では三度、隊商や旅人の一団を襲ったことでそろそろ四十人になろうとしている。
たくさんの人に夫が出来たし、色んな子が増えた。小さな、まだおっぱいを飲んでいるぐらい小さな子もいる。お母さんも一緒にワーウルフになっていて、人間だった頃より数倍出のいいおっぱいで発育もよくなっている。とってもえっちな子に育つと思うと、私も嬉しい。
さて、私は相変わらず女の子に噛み付くのが大好きだから、いまだに夫はいない。群れに男性がたくさんいるときは違うけど、基本的につかまえた人の夫になることが多い。人間時代の想いを押さえきれずに、変異してすぐその場で襲い掛かっちゃう人もいるんだけどね。
夫がいないことは、群れではちょっと恥ずかしいこと。私ぐらいの歳だといるのが当たり前だし、狩りが別に下手なわけでもないから、他の群れから来た人に誤解されちゃうこともある。
そんなときは優しく噛み付いて私の魔力の味を教えてあげるけどね。
でも。だって。
噛み付くの楽しいんだもん。
私の体の下で身をよじりながら、羞恥と恐怖にまみれて私たちの仲間になっていく様子がもう、たまらない。
なぜなんだろう。噛み付いて仲間を増やすのは私たちにとって本能的なものだけれど、別にそれにこだわるほどのことでもない。
「んふふ……」
私は群れから少し離れた岩場で、最近噛み付いて仲間になった子をなでながら笑う。
「くぅん」と鳴くこの子はミル。名づけは私。最近まで黒かった髪はすっかり青くなって、見慣れない布を何重にも巻いた服がほどよくはだけている。
胸元を開いて、おっぱいを出して私にもんでほしそうにしているけど、私は頭をゆっくりなでるだけ。この子、ワーウルフになる前は悲鳴一つ上げない子だったのに、今はすごく淫乱であえぎ声も大きい。
性欲が強すぎてちょっと私も手を焼くからね。
そんなふうに私は、夫がいないことを除けばいたって充実している。
私の圧倒的な狩りの手際(ただし女の子を捕まえることのみ)や食料調達の手際、そして群れにきた新人を淫らに教育するという係も、私が女の子を捕まえることが多いから図らずとも担うことになった。
そんなふうにたくさんのワーウルフとしてのアドバンテージが、魔物としての最大のアドバンテージである『夫が居る』ということがなくとも、私の品位を下げずにいる。
性欲にまみれた夜が来る。いつものように、淫欲のままに女の子たちに溺れようかと考えていると、
「『早足の』。狩りの時間だ」
族長様が、そう呼びかけ近付いてくる。『早足の』はいつからかそう呼ばれるようになった、ワーウルフの名誉の証・二つ名。族長様もまだ別の群れにいた時代、とある二つ名を持つ名誉ある狼だったらしい。
「わかりましたぁ。じゃあいってくるから、これで遊んでいてね」
ミルに私が昔使っていた『バイブ』を渡す。例の膨らんで男根がぶるぶる震えるおもちゃ。最近はどっちかというと、ムラムラしたときは私の牙にかかった子たちになめてもらうから使う機会がない。
ミルはそれを不思議そうに見ていたけど、スイッチを入れて大きくなると「わぁっ」と笑ってそれにしゃぶりついた。
「それで。族長様ぁ。今日は、どっちの狩りですか?」
「『早足の』を呼んだ時点でもうわかっているだろう?」
にやりと笑う。狩るのは猪ではない。人間だ。
まだ夫の居ない、私より若い子が何人か居るし。
私たちは七人で草原を駆ける。
先頭をいつものように族長様が、そのすぐ後ろに私が走る。嗅ぎなれた草原のにおいの中に混じる、男の汗のにおい……いや、女の子の愛液のにおいを探る。
地を掻く音の隙間にある話し声を探る。
「ウォォォ――――ン」
突然、後ろの仲間たちが吠えた。私は体を伏せ、背の高い草に同化する。がちゃがちゃと金属が擦れる音が前方やや右から不規則に聞こえる。人影は見えない。
相手は狼狽している。
「ウォォォォ――――ン」
族長様が一度大きく吠える。私は作戦を理解した。
――陽動セズ、武装シタモノヲ狩レ 先行セヨ――
「『早足の』。……気をつけてな」
族長様の囁きが風に乗り私の耳に届く。心臓がどくんと一度はねるのを感じた。
隊商とは違うレベルの武装。どんなものか想像はつかない。
そもそも、人間が私たち魔物を狩る様を見たことがない。なぜ狩るのかも、よくわからない。彼らは私たちを憎んでいるのかもしれない。
だけど私たちは別に人間が憎いわけじゃない。魔物として男性が欲しいから襲うし、群れを大きくしたいから女性を襲う。
刹那の間に巡る思考をふきとばし、私は草むらから低く飛び上がる。大きな幌馬車と、その周りを囲む真っ白な鎧を着込んだ三人、そして青い衣を纏った女性が二人。子どもはいない。皆大人ばかり。狙うべき武装した者は、三人。
こちらには誰も向いていない。
「があっ!」
私は鋭く吠えて、近くの男の腕を蹴り上げた。その手に携えていた剣が落ちて、全員がこちらへむく。私はもう一人剣を持つ男へ近付き、手首を打って武器を落とさせる。
残る一人。振り向くと剣を振り上げていた。かぶりもので眼差しが見えない。私は両手の爪を交差させ、刃を正面から受ける。
キィン! と交差した音を耳で知覚した途端に踏み込み押し返す。鎧を着た男がよろめく隙に肉薄し、腕に回し蹴りを叩き込む。
「魔物めぇぇぇっ!」
武器を拾った男が私の背後から近付く音を聞いたが、刃は私に届かず、族長様がその男へ抱きつき押し倒していた。目の前の男も若い子が押し倒し、残った青い衣の女性二人が慌てて幌馬車の中へ逃げようとする。
「あははははっ!」
私はそのうち一人、やや小柄なほうの女性に近付き首筋へ噛み付いた。「きゃぁ!」と悲鳴をあげ、私の体重を支えきれず倒れる。フードが取れて金髪があらわになった。
長旅にもかかわらず、綺麗さを失わない髪。よほど丁寧に手入れしていたんだろう。
もう体の大きい私は、男であっても振りおどけないほどの力を発揮できる。だから首筋から牙を外した。そこを押さえながら、キッと女の子が私を睨みつける。
勝気な目がもう堪らない。
「おいしそう……。いいねその表情。大丈夫。怖くないから」
「ま、魔物風情が気安く人間の言葉を使うな! 汚らわしい!」
「ふふ。今からあなたも、その魔物になるんだけどね」
私は首筋に噛み付き、魔力を注ぎ込む。抵抗されないよう両腕を地面に押さえつけ、ばたばたと暴れる腰や足の感触を楽しむのが私流。
「ぐ、やめっ! はなしなさいっ! このっ!」
ワーウルフになるのに十分な量の魔力を注ぎ込んだら、私は口と両腕を解放した。すかさず首に手が向かってきたので、手首を優しく掴む。
「さあ、体が変化していく様に悶えなさい。それを私は見たいの」
「あんた……。解った。今確信、したわ。魔物の本能と逸脱した異常な性癖……元々人間でしょ。邪教徒め」
封印されていた記憶の糸が繋がって一つになる。魔力にまみれた記憶は、私がずっと昔に噛まれ、ワーウルフになったことを示していた。それだけしか思い出せないけど。
「……ああ。そういえば、そうだった気がする。だけどそんなことどうでもいいの。私は誇り高き『早足の』リン。あなたは今から私の妹になる。さあ、そろそろ耳が生える頃?」
金髪の少女は憎悪の目で私を睨んでいたけど、魔力の侵食によって「ああっ」と艶っぽい声を出す。ばさりと青い狼の耳が生じる。
「くうぅ……こ、殺してやる。絶対、あ、あたし、がぁ、ああっ」
びくんと少女が私の下で跳ね、しっぽが飛び出す。私の首へ狙いをつけた手がわさわさと動いて、青い毛が指を覆っていく。
「今までの子よりヤリがいがありそう。なんだか服もえっちだし……ほら。乳首が立ってるのまで見えちゃう」
少女ははっとして片手で自分の胸を押さえる。青い衣にくっきりと恥丘のラインまで浮き出ているのは、たぶん魔力によって体がより淫乱に――豊満になりつつあるからだ。
私は胸を隠すその腕をどけて、ささやかな胸と勃起した乳首を見る。胸は小さいけど、衣を押し上げる乳首は大きめ。
だめだ。しゃぶりつきたい。
私はその乳首に舌を這わせる。
「ひゃぁぁぁっ」
「くちゅぅ……かたい。男とセックス、してるね?」
少女が羞恥で顔を赤くする。旅の途中にヤった相手は鎧を剥かれて今すぐ近くで仲間に犯されているけどね。
残りいたもう一人の少女はもうワーウルフになって、幌馬車の中に居た男を喜んで犯している。私は焦らしているだけ。
「これは魔物の素質アリ。すばらしいじゃない」
「わううっ。う、うるさいっ。嘗めんじゃないわよっ!」
押さえた腕に力が加わるけど動くことはない。私はもう片方の乳首も舐めて、しっかりと涎と魔力を染み付ける。少女の体がびくびくと震え始める。
少し体をずらすと、青い衣の、ちょうどおまんこのあたりがじんわりと濡れ始めていた。青が藍に近い色に変わっている。
「ほら。もうこんなにぬらしちゃってる。えっちでかわいい」
「ぐ、うっ。あああっ! うあああっ!!」
少女は私の興を削ごうとするのか、むちゃくちゃに叫びだす。私はその口にキスをして止める。くちゅくちゅと口の中を蹂躙してあげると、震える舌がしばし迷って、そっと私の舌へ触れる。
よし。堕ちた。
少女の目が憎悪から少しずつ、とろんとした恍惚に変わっていく。金髪が端から青に変わり、私が押さえる腕が青い毛に包まれていく。
私は両手の拘束を解いた。腕はぱさりと草原に落ちて、恐る恐る動き私の後頭部に添えられる。
その要望にこたえて私は、貪るように少女へキスする。ぐちゅ、じゅるじゅるじゅるっとよだれを吸い尽くすように。
口を離し、余韻として残ったよだれを少女は両手ですくった。
「だ、だめっ。あ、あたし。体が、もう……わうううっ」
私のよだれにまみれた片手が、愛液で丸く濡れた衣を撫でる。クリトリスの勃起すら見えそうなほど。私は衣の裾から手を入れて、おまんこに指を突っ込んだ。
「きゃぅぅぅっ! だめっ。だめぇっ。こわれちゃうっ。まだ、人間で、わううっ!」
少女は私にぎゅうっと抱きつき、びくびくと腰を振る。その希望通り、おまんこの中をいじってあげると、勢い良く潮をふいた。
「あっあっあっ――! ううー……」
抱きつきを解いて、拗ねた子どもみたいな顔で私を見る少女。
「…………わううっ。あ、あたしも、魔物、に……ううーっ……わぁうぅ」
羞恥と湧き上がる性欲と悲しみが混じった顔。私はまたおまんこに手を入れてあげると。悲しみがとんで性欲が勝る。「いれてぇっ」と囁く。
「これから可愛がってあげる。『ラン』。私の妹」
「うっ、ぐっ……わううっ。もういいっ。いもうと、なるからぁ。このむらむら、なんとかしてぇっ」
勃起した乳首を私の胸にこすりつけて、生まれたばかりのワーウルフは私に懇願する。人間の心じゃ抑えようもない強烈な性欲。それは私がよく知っている。
私もむくむくと欲が膨れ上がってくる。
「わおおおおおおおんっ!」
歓喜のままに私は、月光へ吠えた。
※※※
ランを迎え、私の『妹』たちは既に四人となった。
淫乱で、隙さえあれば私の服を脱がし、おっぱいに吸い付いてくる小さなワーウルフたち。ランも髪がすっかり青になった頃には、わうわう鳴いて私の母乳にあやかろうと吸い付いてくる。
「だーめ。私はまだでないんだから」
……なんて言い訳していたけど、正直言って、なんだか出ないのは気まずい。
なんてことを考えていると、私ははっとした。稲妻にうたれたような衝撃。
そうか。これが母性本能なんだ。子どもたちへ愛を注ぎたい。淫らなことをする仲間であるだけじゃなく、育てて一人前の立派なワーウルフにしたい。
「ごめんねラン。お姉ちゃん……ううん、お母さん、今はおっぱい出ないの」
「わうう……。そう。あたしも、おっぱいでるように、なりたい」
ランは随分と豊満でえっちな体になっていた。妹、いや愛する子どもにいやらしさを抜かれるのはちょっとへこむ。
だから私はその晩、族長様に無理言って狩りをした。族長様と私とミルで、今度は男を探し……前襲ったところに放置していた幌馬車に、数人の男が居るのを見つけた。
あえて語るまでもない。私たちは彼らを一人残らず無力化し、その中――まるで女の子みたいな年端のいかない男の子を、私は夫とすることにした。
性欲がほとんどない、というか精通すらしているのか怪しいけど、私のおっぱいに埋もれてペニスを固くするぐらいには男の子だった。夫というか弟みたいなんだけど、これからゆっくり育てていけばいい。何より女の子みたいなのが堪らない!
「あ、あの。い、いつになったら帰してくれるんですか?」
全裸に剥かれて私の下にいる彼――セシル=ゴールドが困惑して言う。その顔はすごく赤く、目もきつくつむっている。
私は濃厚なキスをして、「だーめ」と言う。
「あなたは私の夫。だからずっとここにいるの。私の可愛い子どもたちのために、もっともっといやらしい男になってもらわないと」
「いっ、いやらしいってぼくはそんな! わぁっおちんちんつかまないでくださいっ! こ、こすっちゃだめっ。だめですっ」
まだオナニーすら知らないのかもしれない。でも腰はかくかくと動いていて、男の本能には逆らえないみたい。私もそんな様に興奮してきた。
手で擦り大きく勃起させた男根を、私は自分のおまんこにあてがう。ずぶっと沈み込む感触に電流が走るほどの快楽を受ける。
「あはぁっ……こんな。こんなきもちよかったんだ……」
そういえば人間だった頃は処女だった。勿体無い。だけど今の今まで男とのセックスを考えてなかった私が言えたことじゃないか。
私の凶悪な膣内に受け入れられた男根はすぐに洗礼を受け、セシルの精液が私の子宮にぶちまけられる。セシルは体験したことのない事態に目を開け、私の裸をくっきりと見ていた。
かぁーっとセシルの顔が赤くなる。
「あ、あ、あの。え、えっと」
「いいの。それが男の役目。セシル。想いのままに動いて」
それが初めてのセックス。
セシルは少しずつだけど淫乱にインキュバス化していき、女の子みたいな声や顔つきはそのままだけど、イチモツは立派な私の理想の夫になってくれた。
母乳も出るようになったし、子どもたちもすくすくと育っている。
この子たちがおおきくなったら、新しい群れを作ろうかな、と私はぼんやりと考える。勿論これからも噛みついて妹や子どもは増やすし、私が孕めばさらにラッキー。
私は草原を見て思う。
この広大な草原の中で、私はこれからも淫らに、母として過ごしていくんだ。
それはとても幸せ。
ワーウルフの世界。
それは淫らな仲間たちと野を駆け、新たな仲間と男を探し日々を淫らに過ごすこと。
さあ。今日は誰に噛みつこうかな。
13/09/21 00:51更新 / 地味
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