新たなる宝を望むなら・・・
旅の始まりはもう思い出せない、気付いたらココにいた・・・
四季の流れ行く情景を目の当たりにしながら私はずっとココにいた・・・
最初に気付いたのはどれくらい昔だったか・・・
行くあてもない。
行く場所もない。
有るのは本能に従い"美しいと思う物"を下等生物の元から解放するという使命感だけだ・・・
もちろん解放した物は我が手中で愛で続けるのみだ。
だがそろそろ飽きが来始めている。
しかし、新しい宝を探しに行くのも面倒じゃ・・・
我の目の前にでも落ちてこぬ物かのぅ・・・
俺は、独りだ・・・
家族が盗賊に殺されて孤児院に引き取られたが半年でその孤児院も潰れた。
今の俺はまさに天涯孤独と言う言葉以外には似合う物がない。
それも10年以上も昔のことだ・・・
なのに未だに夢を見る。
家族の惨殺される夢を・・・
あの時の無力な俺・・・
未だに未熟な俺・・・
どれだけ体を鍛えようとも、どれだけ技を磨こうとも
この心だけは鍛えられない・・・
この心だけは磨かれない・・・
行くあてもなく山岳を登り続けていた。
一つの精神修行の一環だと、己に言い聞かせて・・・
しかし・・・
もしも、新しい何かを手に入れたなら・・・
俺は変われるだろうか・・・?
護身術程度の格闘術に剣術。
正規な教えではなく我流で編み出した技だが、もしも身に危険が迫ったら・・・
戦えるだろうか・・・
答えは、否だ。
街のチンピラなら兎も角、普通の冒険家などには到底太刀打ちできるまい・・・
所詮はその程度の器なのだ・・・
金も地位も名誉もない。
有るのは未だに振り切る事のできない過去だけ・・・
きっと俺は・・・力を欲しているんだろうな・・・
やはり空は良い。
どこまでも続くような錯覚を与えてくれる。
この半竜の我でも未だに空を飛ばせてくれる風と空気。
それに付け加えるならこの翼か・・・
昔・・・宝を解放しに行った先で出会した者のせいで翼に傷は付いた物のこの風達は我に優しい・・・
・・・ん?この一帯に人間が混じり込んだか・・・
我が庭で何をしている・・・?
まぁ、良い。
取るに足らん下等生物じゃ・・・
我が宝にさえ近付かなければコチラにも用はない・・・
・・・飛龍?
超上位個体の魔物がなんでこんな田舎にいるんだ・・・?
でも・・・綺麗だ。
翼にはハートの様な傷があるな・・・
怪我してるのか・・・?
アイツも独りなのかなぁ〜・・・
でも、人間と魔物は合い入れぬ存在だと姉さんが言っていたなぁ・・・
チッ・・・!
また、昔のことを・・・
いつまでも引きずって・・・情けない!!
自分を内心で罵倒しながら急な崖を上っていた・・・
かなり良い距離まで上ってきたな・・・
山頂はもう少しだな・・・
不意に下を向いた瞬間、手に汗が浮かび恐怖心が全てを支配した・・・
急に手が震えだし収まらない・・・
歯がガタガタとぶつかり合う。
落ちたら・・・死ぬ?
駄目だっ!
集中しろ、オレっ!
自分に活を入れ、必死に上を目指す。
一つ一つの岩を確実に安全か確認しながら、ゆっくりと上を目指す。
不意に足下の岩が崩れ、ガクッと体勢を崩しそうになる・・・
ヤバい・・・ヤバい・・・ヤバいっ!!!
死にたくないっ・・・・・・・
遂に堪えきれずに手を離してしまった・・・
落ちる瞬間、手汗がブワッと出るのを感じた・・・
手遅れだった・・・
背を下に、手足を空を切りながらジタバタしたが無意味だった・・・
死にたくない。
我が心内が解らぬ・・・
全く解せぬ。
何故我が、下等生物の生命を守る必要性があるのじゃろうか・・・
自分自身不思議でならぬ。
爪は易々と五体を引き裂けるじゃろう。
尻尾は易々と骨を砕き、五臓六腑を潰すじゃろう。
灼熱の吐息は易々と跡形もなく燃やし尽くすじゃろう。
なのに我は彼奴を助けた・・・
それが我には全く解せぬ!
これも本能なのじゃろうか・・・?
まぁ、良い。
こんな物は要らぬ。
野山に捨て置けば野獣共が好きに食らうじゃろう・・・
そんな事を考えている隙に男は起きてしまった。
「・・・オレは・・・?」
左手を頭に当て、周りをキョロキョロ見回す。
そして・・・沢山の宝物に目が眩んだ。
だが、そんな宝よりも目を引く存在があった。
蒼髪、金眼の女だった・・・
上半身と下半身を鱗で覆い、腹部を覗かせた格好。
腕にも鱗を纏い、素敵な手には鋭利な爪。
後ろからは尻尾の様な物が見える。
何よりも目を見張ったのは背中の翼だった・・・
右翼にはハートの様な模様が見える。
登っている際に見かけた飛竜に違いない。
一目惚れだった・・・
「何をジロジロ見ておる・・・?」
「貴女がオレを助けたのか・・・礼を言う、ありがとう。」
「我には関係ない。早く立ち去るが良い。」
「喰わないのか・・・?」
「主の様な不味そうな物を我が喰らうとでも・・・?馬鹿にするなっ!!」
飛竜は馬鹿にされたと思い激怒した。
男もそれに気が付き説明する。
「お、俺達人間には魔物は人を喰らう存在として恐れられているんだ!別に馬鹿にして言った訳じゃ・・・」
「なんじゃ、やはり人間とは下等な生き物の様じゃ・・・」
「喰わないで見逃すというのなら、一つ頼みを聞いてくれないか?」
「なぜ我がお主の頼みを聞かねばならぬ・・・?」
「それは・・・・・・」
「そうじゃな・・・我の願いと"交換条件で"なら考えてやろう。」
「解った、何でもする!」
「・・・馬鹿な奴じゃ。簡単に"何でもする"等と口にするとは・・・」
「どういう意味だ・・・?」
「我の願いを言うぞ・・・この世で最も価値のある宝を見つけ出し、我に差し出せ!!」
「なっ・・・フザケるな!そんなもの見つかる訳無いだろう!?」
「何でもすると言ったのは主じゃ。」
「なっ・・・滅茶苦茶だ・・・」
「それでは、主の願いを言ってみよ・・・」
「・・・・・・俺の願いは、お前を一緒にいたい。」
「ほぅ、面白い。どういう意味じゃ?」
「そのまんまの意味だ。俺は・・・お前に惚れたんだ・・・」
「物好きな奴め・・・その願い、聞き届けても良いが・・・我の願いも叶えてもらうぞ・・・?(なんじゃ、この心臓の高鳴りは・・・)」
「その願いは・・・お前から見たものか?俺から見たものか?この世界から見たものか・・・?」
「本当の価値が有れば何でも良い。まだ見たことのない宝を、我は欲しているのだ・・・」
「そうか・・・なら簡単だよ。・・・俺の命!俺から見た一番の宝は俺の命!」
「・・・ククッ、面白い奴じゃ。気に入ったぞ?じゃがのぉ・・・」
「なんだ・・・?」
「主の力を見せてみよ。」
「俺の・・・力・・・?」
「主も知って要るであろう?我はドラゴン、この地上の王者じゃ。我より弱き物に用はない。」
「戦えって意味か・・・?」
「要はそうじゃな・・・」
「断る。」
「何故断る?主の願いはすぐ目の前じゃぞ?我に認めさせるだけでよいのじゃぞ・・・?」
「俺が初めて見つけた唯一の宝を傷つけたくないからだ・・・」
「我より己が命が大事か・・・主には興醒めじゃ・・・去れ。」
「違う・・・俺の宝はお前だ!」
「なっ・・・・・・」
ポカンと口を開け、理解できてないかのような顔をする。
まるで、心此処に在らず。
とでも言わんかのように・・・
「俺は天涯孤独の独り者だった・・・でも、要約大切な物を見つけれそうなんだ・・・」
「・・・・・・・・・」
「このまま終わらせたくないんだ!だから、俺と一緒にいてくれ!!」
「・・・良かろう、お主のプロポーズ受け入れよう!」
「本当か・・・?」
「あぁ、我に二言はない。」
クスリと笑い左手を胸に当て翼を大きく広げて宣言する。
「主が望むというのなら、この身に代えて主を守る!我が宝には何人も触れさせはせん!!」
誇らしげに愛を誓う。
地上の王者と天涯孤独の男はゆっくりと唇を重ね、深いキスを交わした。
後に男と飛竜は誓約(エンゲージ)を果たすこととなるだろう。
〜END〜
四季の流れ行く情景を目の当たりにしながら私はずっとココにいた・・・
最初に気付いたのはどれくらい昔だったか・・・
行くあてもない。
行く場所もない。
有るのは本能に従い"美しいと思う物"を下等生物の元から解放するという使命感だけだ・・・
もちろん解放した物は我が手中で愛で続けるのみだ。
だがそろそろ飽きが来始めている。
しかし、新しい宝を探しに行くのも面倒じゃ・・・
我の目の前にでも落ちてこぬ物かのぅ・・・
俺は、独りだ・・・
家族が盗賊に殺されて孤児院に引き取られたが半年でその孤児院も潰れた。
今の俺はまさに天涯孤独と言う言葉以外には似合う物がない。
それも10年以上も昔のことだ・・・
なのに未だに夢を見る。
家族の惨殺される夢を・・・
あの時の無力な俺・・・
未だに未熟な俺・・・
どれだけ体を鍛えようとも、どれだけ技を磨こうとも
この心だけは鍛えられない・・・
この心だけは磨かれない・・・
行くあてもなく山岳を登り続けていた。
一つの精神修行の一環だと、己に言い聞かせて・・・
しかし・・・
もしも、新しい何かを手に入れたなら・・・
俺は変われるだろうか・・・?
護身術程度の格闘術に剣術。
正規な教えではなく我流で編み出した技だが、もしも身に危険が迫ったら・・・
戦えるだろうか・・・
答えは、否だ。
街のチンピラなら兎も角、普通の冒険家などには到底太刀打ちできるまい・・・
所詮はその程度の器なのだ・・・
金も地位も名誉もない。
有るのは未だに振り切る事のできない過去だけ・・・
きっと俺は・・・力を欲しているんだろうな・・・
やはり空は良い。
どこまでも続くような錯覚を与えてくれる。
この半竜の我でも未だに空を飛ばせてくれる風と空気。
それに付け加えるならこの翼か・・・
昔・・・宝を解放しに行った先で出会した者のせいで翼に傷は付いた物のこの風達は我に優しい・・・
・・・ん?この一帯に人間が混じり込んだか・・・
我が庭で何をしている・・・?
まぁ、良い。
取るに足らん下等生物じゃ・・・
我が宝にさえ近付かなければコチラにも用はない・・・
・・・飛龍?
超上位個体の魔物がなんでこんな田舎にいるんだ・・・?
でも・・・綺麗だ。
翼にはハートの様な傷があるな・・・
怪我してるのか・・・?
アイツも独りなのかなぁ〜・・・
でも、人間と魔物は合い入れぬ存在だと姉さんが言っていたなぁ・・・
チッ・・・!
また、昔のことを・・・
いつまでも引きずって・・・情けない!!
自分を内心で罵倒しながら急な崖を上っていた・・・
かなり良い距離まで上ってきたな・・・
山頂はもう少しだな・・・
不意に下を向いた瞬間、手に汗が浮かび恐怖心が全てを支配した・・・
急に手が震えだし収まらない・・・
歯がガタガタとぶつかり合う。
落ちたら・・・死ぬ?
駄目だっ!
集中しろ、オレっ!
自分に活を入れ、必死に上を目指す。
一つ一つの岩を確実に安全か確認しながら、ゆっくりと上を目指す。
不意に足下の岩が崩れ、ガクッと体勢を崩しそうになる・・・
ヤバい・・・ヤバい・・・ヤバいっ!!!
死にたくないっ・・・・・・・
遂に堪えきれずに手を離してしまった・・・
落ちる瞬間、手汗がブワッと出るのを感じた・・・
手遅れだった・・・
背を下に、手足を空を切りながらジタバタしたが無意味だった・・・
死にたくない。
我が心内が解らぬ・・・
全く解せぬ。
何故我が、下等生物の生命を守る必要性があるのじゃろうか・・・
自分自身不思議でならぬ。
爪は易々と五体を引き裂けるじゃろう。
尻尾は易々と骨を砕き、五臓六腑を潰すじゃろう。
灼熱の吐息は易々と跡形もなく燃やし尽くすじゃろう。
なのに我は彼奴を助けた・・・
それが我には全く解せぬ!
これも本能なのじゃろうか・・・?
まぁ、良い。
こんな物は要らぬ。
野山に捨て置けば野獣共が好きに食らうじゃろう・・・
そんな事を考えている隙に男は起きてしまった。
「・・・オレは・・・?」
左手を頭に当て、周りをキョロキョロ見回す。
そして・・・沢山の宝物に目が眩んだ。
だが、そんな宝よりも目を引く存在があった。
蒼髪、金眼の女だった・・・
上半身と下半身を鱗で覆い、腹部を覗かせた格好。
腕にも鱗を纏い、素敵な手には鋭利な爪。
後ろからは尻尾の様な物が見える。
何よりも目を見張ったのは背中の翼だった・・・
右翼にはハートの様な模様が見える。
登っている際に見かけた飛竜に違いない。
一目惚れだった・・・
「何をジロジロ見ておる・・・?」
「貴女がオレを助けたのか・・・礼を言う、ありがとう。」
「我には関係ない。早く立ち去るが良い。」
「喰わないのか・・・?」
「主の様な不味そうな物を我が喰らうとでも・・・?馬鹿にするなっ!!」
飛竜は馬鹿にされたと思い激怒した。
男もそれに気が付き説明する。
「お、俺達人間には魔物は人を喰らう存在として恐れられているんだ!別に馬鹿にして言った訳じゃ・・・」
「なんじゃ、やはり人間とは下等な生き物の様じゃ・・・」
「喰わないで見逃すというのなら、一つ頼みを聞いてくれないか?」
「なぜ我がお主の頼みを聞かねばならぬ・・・?」
「それは・・・・・・」
「そうじゃな・・・我の願いと"交換条件で"なら考えてやろう。」
「解った、何でもする!」
「・・・馬鹿な奴じゃ。簡単に"何でもする"等と口にするとは・・・」
「どういう意味だ・・・?」
「我の願いを言うぞ・・・この世で最も価値のある宝を見つけ出し、我に差し出せ!!」
「なっ・・・フザケるな!そんなもの見つかる訳無いだろう!?」
「何でもすると言ったのは主じゃ。」
「なっ・・・滅茶苦茶だ・・・」
「それでは、主の願いを言ってみよ・・・」
「・・・・・・俺の願いは、お前を一緒にいたい。」
「ほぅ、面白い。どういう意味じゃ?」
「そのまんまの意味だ。俺は・・・お前に惚れたんだ・・・」
「物好きな奴め・・・その願い、聞き届けても良いが・・・我の願いも叶えてもらうぞ・・・?(なんじゃ、この心臓の高鳴りは・・・)」
「その願いは・・・お前から見たものか?俺から見たものか?この世界から見たものか・・・?」
「本当の価値が有れば何でも良い。まだ見たことのない宝を、我は欲しているのだ・・・」
「そうか・・・なら簡単だよ。・・・俺の命!俺から見た一番の宝は俺の命!」
「・・・ククッ、面白い奴じゃ。気に入ったぞ?じゃがのぉ・・・」
「なんだ・・・?」
「主の力を見せてみよ。」
「俺の・・・力・・・?」
「主も知って要るであろう?我はドラゴン、この地上の王者じゃ。我より弱き物に用はない。」
「戦えって意味か・・・?」
「要はそうじゃな・・・」
「断る。」
「何故断る?主の願いはすぐ目の前じゃぞ?我に認めさせるだけでよいのじゃぞ・・・?」
「俺が初めて見つけた唯一の宝を傷つけたくないからだ・・・」
「我より己が命が大事か・・・主には興醒めじゃ・・・去れ。」
「違う・・・俺の宝はお前だ!」
「なっ・・・・・・」
ポカンと口を開け、理解できてないかのような顔をする。
まるで、心此処に在らず。
とでも言わんかのように・・・
「俺は天涯孤独の独り者だった・・・でも、要約大切な物を見つけれそうなんだ・・・」
「・・・・・・・・・」
「このまま終わらせたくないんだ!だから、俺と一緒にいてくれ!!」
「・・・良かろう、お主のプロポーズ受け入れよう!」
「本当か・・・?」
「あぁ、我に二言はない。」
クスリと笑い左手を胸に当て翼を大きく広げて宣言する。
「主が望むというのなら、この身に代えて主を守る!我が宝には何人も触れさせはせん!!」
誇らしげに愛を誓う。
地上の王者と天涯孤独の男はゆっくりと唇を重ね、深いキスを交わした。
後に男と飛竜は誓約(エンゲージ)を果たすこととなるだろう。
〜END〜
11/03/03 01:11更新 / 紫炎-sien-