搾精センシュアル

 背後に感じる静かな吐息は、温度の低い室内の空気に触れ、しかし微かにその温もりを残していた。
首に回された腕は私をしっかりと繋ぎ止め、拘束する。
ただの女の子なら、いくら体力に自信の無い私でその程度なら逃げ出せただろう。
しかし今回は相手が相手だ。
いくら私が藻掻いたところで、あちらにとっては赤子をあやすようなもので、徒労に終わるだけだった。
それに正直なところ、恐怖で体が全く言うことを聞かない。

「どんな気分か教えてくれないか?なぁ…?」

目の前でゆらゆらと退屈そうに揺れる、奇妙な形をした尻尾。
そのシルエットは蕾のようにも見えるが、開かれた花弁の内側を占めるのは、とても美しいとは言えない、ピンクの肉壁。
無数の突起物が波立つように蠢き、いかにもそれが自然的でない事を窺わせる。

彼女は息を漏らしながら、より一層密着しその豊満な胸を私の背中に押し当てた。
その感触は確かに感じられるが、今の私にそんな状況を楽しんでいる余裕などなかった。
甘くゆったりとした吐息に撫でられた首筋が、ピクリと震える。
彼女はそれを見て、何が楽しいのか意地悪そうに微笑んだ。

「怖いか?そりゃ怖いだろうなぁ?ふふ」

少し湿り気のある、ざらりとしたものが項から首横へと這いずる。
わざとかそうでないのか、彼女の髪が焦らすように私の耳と擦れ合う。
微かに鼻孔をくすぐる、淫靡な香り。

「齧り付いて食うってのも、悪くないとは思わないか?」

毛の生えそろった、猫を思わせるその手が服の裾から内側へと進入し、私の胸板を愛おしそうに撫でる。
蕾はその花を再び咲かせ、涎のようにだらだらと零れる液体を私に見せつけた。
ドクッ、と自分の心臓が跳ねるのを感じた。
彼女もそれに気づいたのだろうか、彼女自身の鼓動が早まるのを感じる。

「いいよいいよ…アンタから美味しい匂いがしてきたよ…」

久々の獲物にありつけるからなのだろうか、彼女の息は荒くなっていた。
酷く官能的な吐息に、相手を、状況を忘れて酔ってしまいそうになる自分を必死で抑えつける。
自分に言い聞かせる意も込めて、私は無理矢理に口を開かせた。

「い、今更逃げようなどとは…思わない…ただ」
「ただ?」

人でない者と話すのに全力を注いでいる私をお構いなしに、彼女は耳たぶを甘噛みする。
どうして、どうしてなのか。
魔物に、彼女に何かをされるだけで、香りを嗅ぐだけで、言葉を交わすだけで…どうしてこんなに。

私は、下半身に血液が集中していくのを嫌でも感じていた。

それは、ただの生存本能なのか。
それとも、いつの間にか腹部に差し込まれている蕾の針が原因なのか。
或いはただ単に、私がもともとそういう性癖を持ち合わせていたのか。

彼女の愛撫に、私は思わず声を漏らしてしまった。

「『ただ、このひどく猛り立ったペニスを鎮めてください。』とか?」

私は思わず喉を鳴らした。
何を思ったのか、彼女は私のズボンのジッパーを下げ、そこから一物を取り出したのだ。
私にはワケが分からなかった。
確かに先ほどからの行為はとても捕食者と被捕食者間で行われるモノだとは思えなかったが、今度はさらに意図が掴めない。

理解が追いつかないままに状況は進み、ふと内側から戻ってきた頃には、彼女は俺の目の前で恍惚とした表情を浮かべながらペニスを握っていた。

「ちが…私が言いたいのはそんな事じゃなk」
「嘘だぁ。こんなに硬くしておいて他にお願いなんてあるワケないだろう?♡」

言葉を遮るように、彼女は荒々しく私の一物を擦り上げる。
それはあまりに強引に射精を促した。
普段なら痛みの伴っているであろう激しい愛撫だが、今は全くそれを感じない。
人ではないその手のぷにぷにとした感触が新鮮で、寧ろ普段の何倍もの刺激が全身を駆け回っていた。
いつから漏れ出していたのか、溢れ出るカウパー腺液が潤滑液となり、彼女の愛撫はより一層激しさを増す。

「ほらほら、魔物にペニス扱かれてどんな気分?ねえ?」

気持ちが良い、だなんて口が裂けても言えなかった。
主神を信仰する身として、欲に溺れる事は悪であるとされているからだ。

「気持ちいいだろ?素直になりなって」

自分の頭の中に込み上げる欲望を抑えつけるように、私は頭を横に振った。
なんと無様な姿であろうか。
魔物とはいえ女性にペニスを扱かれながら愛撫され、私はその快楽から逃げることができないでいる。
そんな私を見ながら彼女は、とてもうっとりとした表情をしていた。
誰もが魅了されるであろうその美貌、その存在を強調する豊満な胸、引き締まった腰、鷲掴みに出来そうな程に形の良いお尻―そのどれもが、私の絶頂を加速させた。
触ってしまいたい。しかし触ればその瞬間、私はもう戻れなくなってしまう。

ピクリと、ペニスが跳ねる。

「出したい?出したいだろ?いいんだよ、出しちゃっても」
「っ…!」

必死で首を横に振る私を見て、彼女はやらしく笑んでいる。
愛撫が休まることはない、いくら自分が堪えようと思っていても必ず限界が訪れる。

ふわっ、と下腹部が一瞬軽くなり、何かがペニスに集まっていくのが感じられた。
いけない、ダメだ、このままじゃ本当に…!
私は慌てて、彼女の手から逃げるように腰を後ろへと引いた。

「逃げないんじゃなかったのか?うん?」

引いた腰は、後ろに回されてた尻尾に押されすぐさま元に戻された。
おしおきだと言わんばかりに、彼女は愛撫の速度を速める。
腰がピクッと跳ねるのを、彼女も感じていた。

湧き上がる衝動を、最早私に抑えることはできなかった。
ただ快楽の為に彼女の扱きに身を任せた。

尿道に、欲望が遡っていくのが感じられる。

このまま射精してしまいたいという事だけが、自分の頭の中を、全身を満たしていた。

その心地よい感触を感じながら、私は声を漏らした。

「だ…ダメだ…!出…出r」


「はい、おしまい」

そう言うと同時に、彼女の手がペニスから離れた。
余りに拍子抜けの出来事に、私はその場に崩れ落ちる。
猛り立ったペニスは、苦しそうに脈動し、既に射精寸前の状態だった。
衣服は汗でベタ付き、部屋を吹き抜ける風が空しくも私を撫でる。

「よく耐えた、よぉーく耐えた。さすが主神信仰してるだけはあるねぇ」
「ど、どうして…」
「何が"どうして"なのかなぁ?なになに、『もう少しでイけたのに』とか?」

瞬間、"どうして"などという問いかけをした自分を恥じた。
同時に、射精出来なかった事が自分の中に鬱積していた。
こちらにいじらしそうに微笑む彼女を見て、腹立たしくも思う。
万感交到り、しかし私はただ沈黙する事しか出来なかった。
きっと今、私はひどく残念そうな顔をしているに違いない。

「イきたい?ねえ、イきたい?」
「…」

肯定も、否定もしない私を見て、彼女はゆっくりとその尻尾をこちらに向けた。
蕾が花開くように、針の付いた尾先はゆっくりとその口を開ける。
体液で光沢をもった無数のヒダが、まるでそれぞれが生きているかのように蠢いている。

「さっきとは比べものにならないくらい気持ちよくなりたいと思わない?」
「…」

主神は欲に溺れるなと仰った。
                     私はおもむろに立ち上がる。
主神は潔に生きよと仰った。
                     ゆっくりと着実に彼女の方へと歩き出す。    
は魔物はあると仰った。
                     彼女は私を受け入れるように、そっと背中に手を回す。


主神は     彼女は私に囁いた。

「イかせてやるよ♡」

尾先は私のペニスをすっぽりと飲み込んだ。
動かしてもいないのに、ヒダがペニスを刺激する。
女性器に挿入しているようでもあるが、その刺激は人間のそれとは比べものにならない程に射精を促した。
あまりの快楽に頭を焼かれ、思考が停止していた所にずりゅっ、と尾先が空気を漏らした。

「イきたかったんだろ?ほら、イきなよ」
「待っ…やめ…」

私は刺激を逃がそうと彼女に縋り付くが、この状況を楽しんでいる彼女は先ほどと同じように、決して愛撫を緩めない。
尻尾はじゅぶじゅぶと、いやらしい音とたてながら竿を締め上げる。
甘い蜜のような香りが、尾先から漂い始めた。
よく分からない、よく分からないが愛おしい、これが愛おしい。
込み上がる絶頂もお構いなしに、私は尻尾に合わせて腰を振っていた。

「も…もう、出…出る!!」
「出して!あたしの中に、濃いの全部ぶちまけてぇ!♡」

先ほどとは真逆に、ペニスはぎちぎちと締め付けられ、射精を迫られた。
込み上がってきた欲望が、そのままその尻尾の中へ精液として放たれる。
ドクドクと脈打つペニスを感じてか、彼女もほんの少し満足そうな表情だった。
思考回路の何もかもが焼き切れてしまうんではないかと思うほどの射精感に、私はふたたび腰を抜かして倒れ込んだ。

しかしおかしい。

「射精が…止まらない…?」
「ふふ♡」

吸い尽くすようにペニスを離さない尻尾。
今にもとろけそうな顔をした彼女が、容赦なく私の上に乗りかかった。
ぐちゅり、と尻尾が再びペニスを締め付けるのが聞こえた。
彼女は艶美な笑みを浮かべながら、舌なめずりをする。


「あと10回は出してくれるな?♡」


そう、彼女は仰った。

ごめんなさい、あまりに衝動的に書いてしまったせいで相当な駄文になっている気がします…Σ(゚Д゚;)
でも伝えたかったんです!だって搾精ですよ!搾精!
ただただ尻尾でエサのように搾られるなんてもう願ったり叶ったりじゃないっすかぁああああ!!
それでしかもあれでしょう?十分尻尾で味わったら最終的にはまったりエロエロできるんでしょ?もうそれやばくないっすか。神がかってますよ。怖いっす。マンティコアさんやばいっす。

ふぅ…、ごめんなさい少し興奮し過ぎてしまいました。
そんな感じで、マンティコアSSでございました。
ぶっちゃけこっからが面白くなって来るのかなぁなんて思ったりもしましたが、ここで切るのもこれはこれでアリかなんて思ったりねw
先ほども申し上げましたとおり、結構な駄文でゴザイマスがまた別作も読んでいただけたら幸いです。今回はマンティコアSS「搾精センシュアル」を読んでいただきありがとうございました。

13/06/18 20:49 たったん

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