SEXi 〜Sexy & TAXi〜
やばいやばいやばいどうしてこうなった!!!
俺はただチャリンコこいで通勤していただけなのに、路肩に止められていた車の助手席側のドアが急に開いたために激突した。
そんで、俺が激突した車から出てきた怖いお兄さんたちが
「オラァ、修理代で1000万払えや、払えねぇなら臓器売ってでも金用意しろや!!」
って絡んできた......
俺は、自転車を起こす間もなく、走って逃亡した。
相手は車だし逃げ切れる、そう思ったが甘かった。
男が車内へ戻ると、運転席・助手席と男二人を乗せたまま車が変形し、二人乗り用で二足歩行のパワーローダーへと変形した!!
......で、自分はその二人組(とパワーローダー)から全力で逃げている真っ最中なのである。
現在、スーパーの駐車場の車と車の間の陰に逃げ込んだ......
だが、このままでは見つかるのも時間も問題だろう......。
その時だった。
「お兄さん、お困りですか?」
声のした方向を見ると、そこにあったのは黄色い車。
そして
『 TAXi 』
......の文字。
こそこそとタクシーの下へ忍び寄ると、後部座席のドアを開けてくれた運転手さん。
中へ乗り込んで運転手さんを向き合う。
なんと、女性のドライバーであり、それもかなりの美人さんであった。
「なにか、面倒なことに巻き込まれた様子ですね?」
「あぁそうなんです、自転車はパーになるわ、ヤクザみたいなやつらに追いかけられるわ......」
「『お客さん』......
......今、このタクシー客待ちなんですよ。
行きたいところへ行けますよ?」
!!!?
どうする!?
ガションガションという機動音が聞こえてきた......
そんな近くじゃないものの......
ええい、背に腹は代えられない!!!
「お願いします!!」
「了解ですー」
運転手さんがそういうと。
ウォーンという音で、車体の屋根やら側部から、何やら加速用パーツが、
カションカションという音で、車体の下部がスポーツカーのごとく変形し、ナンバープレートが入れ替わった。
ウィウィウィウィウィーンという音で、車体が浮かび上がり、浮かんだ隙にタイヤが違うもの......たぶん、レース用?のものへと入れ替わった。
後ろで物音し、見るとリアウイングが展開。
車内で音がするので前方へ視線を戻すと、ハンドルが変形していた!!
「頼む、急いで......」
「今出ますよー」
運転手さんは料金カウントボタンを押して、アクセルを踏んだ......
ゴォォォォォッ!!!!
爆音とともにタクシーが発進した!!
敷地内をレーサー顔負けのテクニックで爆走する運転手さん。
二人組のパワーローダーが気づいて追ってくる!!
だが、二足歩行では限界があったのか、速度的に追いつけない!!
急いで車モードへ変形して追いかけなおしてきた!!
通勤ラッシュ中の車道の車をぐいぐい避けてかっ飛ばすタクシー。
「あぁ、のんびりしてたら渋滞にはまっちゃいますね、シートベルト締めて、サードに入れて飛ばすから」
「あっ、あぁ......」
気づけばパワーローダー車は見えなくなっていた......
だが、こっちの視界もぐらぐらになっていた......
「いやー、お客さんも災難でしたねー」
「えぇ、まぁ......」
振り切ったのを確認すると、タクシーは通常の車と同じスピードになって走行し始めた......
「最近は、主神教団の構成員を名乗ったヤクザものがああやって、魔物娘の技術をパクって作られたパチモンロボだ武器だを悪用するんですよ、本当に迷惑極まりない話です」
「そっ......そうなんですか......
ン? じゃあ、運転手さんも魔物娘......?」
「そうですよー、まぁ、パッと見てわかる種族じゃないですがねー?」
ダメだ、全然わからん。
モロに人間みたいな外見だもの。
そうこう走行してるうちに、目的の自分の職場へとたどり着いた......
「料金は......お兄さんタイプだから1500円で」
「ええっ、料金メーター4000円とかでてるじゃないですか!!」
逆ボリすぎ!!
これは困る。
自分が4000円払おうと財布を覗いていると、
「だったら、仕事終わったら連絡くださいよ、帰る手段がないでしょうし、その時に今の残り分の料金でご案内しますから」
ええー......まぁ、借りがあるわけだし......
「じゃあ、それでお願いします」
「まいどー♥」
俺は運転手さんにラインの連絡先を教えてタクシーを後にした。
......本当に純粋な人間っぽい外見だけど、種族はなんなのだろう。
俺はずっとそれが気になっていた......。
「おまちどうさま、帰りもよろしくお願いします」
「はい♥ よろしくお願いされます♥」
ラインで今から帰ることを伝えたら、退勤時間を逆算していたらしく既にいた。
「意外とお早いおかえりですね?」
「送るって言われちゃ残業なんかできないですよ......」
ドアをバタンと閉められた。
その時だった。
後ろから何かがクラッシュ、追突してきた!!
「「!!!?」」
後ろを向くと今朝の二人組が車モードで激突してきたのだった。
しつこい!!
「これはこれはしつこい......」
運動部の泥汚れよりしつこい。
今朝みたいに振り切ってくれと言おうとしたが、運転手さんにさえぎられた。
「お客さん......」
運転手さんは言った。
「お客さんは、悪魔と......魔物娘と相乗りする勇気、ありますか?」
後方でガシャガシャ音を立てて変形していくパワーローダー。
悪魔と相乗り......魔物娘の相乗り......
俺は......
運転手さんを信じる!!
「はいっ、あります!!」
「...よかった、動きますよ」
その瞬間、運転手さんの姿が消えた!!
立体映像の消え方と一緒であった!!
「!!!!!!!!???」
なん...だと......
その瞬間、キュゥゥゥゥゥッ!!! っとタイヤが音を立てて爆走し始めた!!
車モードに変形し直して追ってくる二人組。
消えた運転手さん、運転手がいないのに動くタクシーに一人取り残されて、パニックになる自分。
「なっ、なっ、何ィィッ!! 何が起きてんだァッ!?」
『お客さん、落ち着いて、騒がないで!』
誰もいないはずの車内で聞こえてくる運転手さんの声。
「どこだ!?」
『あー、ラジオです、ラジオから声が出てます』
何!?
『落ち着いて聞いてくださいね? 走り始めてすぐ警察に連絡しました、警察がくる場所まであいつらを誘導すれば万事解決です。 OK?』
「わかった......けど、あんた何者なんだァ!!」
『今にわかりますよ』
そう言ってカーチェイスすること20分。
営業終了した陸上競技場の門を車体で体当たりして突破。
誰もいないグラウンドへ転がり込むタクシーとパワーローダー車。
先に侵入したタクシーはドリフトをしてパワーローダー車に向き合う。
もう逃げ場は塞いだ、俺たちの勝ちだとばかりにパワーローダーへと変形する車。
『お客さん、降りてください』
「ここまで来て見捨てるのか!!」
『いいえ、その逆です』
そう言った直後ドアが開いて、座席が傾いて車外へと放り出された。
何する気だ!!
そう言おうとした瞬間......
タクシーが金属の粒子状にバラバラになって宙を舞い出した!!
そして、それが徐々に固まっていき再構築し......
巨大な人型へと変身した!!
「わーお......」
パワーローダー車の変形が通常のトラソスウォーマーの変形だとすると。
タクシーの『変身』は、実写トラソスウォーマー:ロヌトエイヅの敵トラソスウォーマーの粒子変形であった!!
だが、トラソスウォーマーのようなモロにロボな外見ではなく。
れっきとした『魔物娘』であることを感じられる、美しい女性然とした、戦女神然とした有機的なルックスである!!
タクシー時の車体と同じ色、黄色の装甲を纏い、4枚の蜂の羽根のようなパーツを背中に持っている外観である......。
よく見ると足首がタイヤなっている、これなら機動力が高そうだ......。
そして、白い肌に巨乳で腰が細く、尻がデカいという男が好きそうなスタイル。
金髪に黒いメッシュが入ったボブカットで、青い瞳の持ち主であった。
「さぁ、鉄拳制裁タイムです!!」
そう言って『彼女』は両腕からブレードを展開した!
足首から先のタイヤで、ローラースケートのごとく接近。
速度を生かして前方宙返りへとつなげ、パワーローダーの右腕を切り落とした!
切り落とされた右腕が地面に落ちると同時に着地。
さらに再接近し、今度は左足をぶっこ抜いた!!
半壊するまで......いや、しても手も足も出ず、逃げようとするパワーローダー。
悪あがきをするパワーローダーに、両腕のブレードをひっこめながら近寄る『彼女』。
『彼女』はうつぶせになっているパワーローダーをひっくり返して仰向けにすると、コックピットへ両手をかけ、腹を足で踏みつけて固定し......
ベキベキベキッ!!!
ハッチを引っぺがして中の二人をあらわにした!!
「「あわわわわわ......」」
「これに懲りたら弱い者いじめやアコギな金稼ぎはやめるんですね」
コックピット以外大破したパワーローダーの前で仁王立ちしている『彼女』......
すげぇよ、かっこよすぎるよ......
ようやく聞こえてくるサイレン音。
「やっときましたね......」
壊れた門からグラウンド内へと入ってくるパトカーたち。
そのうち一台が『彼女』の横へ向かってくる。
速度を落とさないまま突っ込んでくると思いきや、『彼女』同様に粒子変形をして、巨大な婦警さんへと変身した!!
「遅いです、それで給料もらうとか警察は楽な仕事ですね」
「そう言うな、運悪く渋滞に嵌ったんだよ......」
......どうやら知り合いらしい。
三言二言話してこちらへ歩み寄ってた『タクシーの彼女』。
身長が目測で5mはあるため、自分と目線を合わせるべくかがんでくる。
かがんだ彼女の顔は......
「あっ、運転手さん!?」
「どうも、運転手さんです☆」
その顔は運転手さんとうり二つだった。
車内の立体映像は自分をモデルにしていたらしい。
「もうお分かりだと思いますが、運転手は立体映像のダミーで、本体は車の方だったんです」
「じゃあ、あなたは......」
「はい、私の種族はオートマトン。それも、機械に擬態する能力を持ったタイプ、のね」
苦笑いするオートマトンさん。
「なんでこんな客一人のために?」
「ふふっ、それはもう言ったと思いますが? 『お兄さんタイプだから』って」
「そんな......体張りすぎでしょ......」
一回乗せた客一人のためにここまでやるとは......
さすが魔物娘だと言わざるを得ない。
「おーい、お取込み中のところ悪いけど、署までこれないか、書類書いてもらわないと!!」
遠くから声をかけてくるパトカーオートマトンさん婦警。
「だそうですよ? 署までエスコートいたします♥」
と言って、車へと変形するタクシーさん。
乗れってことか......
「お兄さん、さっき運転手がいなくなったときは驚いたでしょ、走ることにリソース割いてたから大目にみてください」
「いや、そのおかげで助かったんだし、悪く言う気はないですよ」
署で書類を書いた後、タクシーさんに送ってもらうことになった。
冷静に考えると、ここはあの美人の体の中なんだよな......と、いう邪念が頭をよぎる。
冷静になってるのだろうか?
走りながらの会話がなかなか途絶えない。
この時間がずっと続けばいいのにと思っていると、タクシーさんがこんな話題を切り出した。
「お兄さんってお独り様? 女性の臭いは感知できませんけど」
「......だったら聞かなくてもいいじゃないか、いないけど」
こういうことを聞くってことは、魔物娘的に『そういうこと』だよね?
「だったら、私がお兄さんの愛車に立候補してもいい......?」
「......答えは決まってるさ、俺、免許あるけど車も彼女も持ってないし」
返答した瞬間、対向車線を走ってきたカマロをスキャンして車体の外観を変えたタクシーさん、改めカマロさん。
「もうタクシーは卒業! 今からあなただけのものになるからね!」
「だからってカマロかよ......」
高級車ですよー!!
2シーターですよ!!
俺以外乗れねぇじゃねぇか。
ワーワ騒いでると、目的地......ではない場所についた。
「ここは?」
「私の家、今晩は寝かせませんぜ♥」
「......よろしくお願いいたします...」
消えゆく声と一緒に自動で開いたシャッター内へと自分もろとも『仕舞われていった』のだった......
ある日、仕事を終えて同僚と駐車場へ来ると......
「おう、外車だ、カマロじゃねえか!!」
「あぁ、まあね」
「でも、カマロよりメルセデス・ベンツを選んだ方がセンスあるぜ?」
同僚がカマロを貶す発言をした瞬間。
あっという間に変形したタクシーさん......
もとい、本名:ベルタさん。
「あの、私を悪く言うのは構いませんけどね? ちょーっと夫を悪く言うのはいただけないんですよ、ね? 今回は何も言いませんけど、次は無いです。 OK?」
「あわわわわわ......わっ、わかりましたァ......」
同棲してわかったが、意外とコイツけんかっ早い。
あの時あんな行動したのも納得だったり......
「もー、やめなさいよ、騒ぎになるでしょうが」
腰を抜かしている同僚からベルタさんを引き離そうとするもできず(重くて)。
仕方ないので、同僚を引きずってベルタさんから遠ざける。
「ほら、帰ろう。 帰って整備ごっこでもしよう」
「ハァイ♥」
今日も一日仕事を終えて。
愛する車兼女性とともに帰路へつく。
さー、こんな体格差だからこそ燃えるックスが待ってるぞー。
......途中で薬局で精力剤でも買っていこうかと考えながら車が発信するのだった。
俺はただチャリンコこいで通勤していただけなのに、路肩に止められていた車の助手席側のドアが急に開いたために激突した。
そんで、俺が激突した車から出てきた怖いお兄さんたちが
「オラァ、修理代で1000万払えや、払えねぇなら臓器売ってでも金用意しろや!!」
って絡んできた......
俺は、自転車を起こす間もなく、走って逃亡した。
相手は車だし逃げ切れる、そう思ったが甘かった。
男が車内へ戻ると、運転席・助手席と男二人を乗せたまま車が変形し、二人乗り用で二足歩行のパワーローダーへと変形した!!
......で、自分はその二人組(とパワーローダー)から全力で逃げている真っ最中なのである。
現在、スーパーの駐車場の車と車の間の陰に逃げ込んだ......
だが、このままでは見つかるのも時間も問題だろう......。
その時だった。
「お兄さん、お困りですか?」
声のした方向を見ると、そこにあったのは黄色い車。
そして
『 TAXi 』
......の文字。
こそこそとタクシーの下へ忍び寄ると、後部座席のドアを開けてくれた運転手さん。
中へ乗り込んで運転手さんを向き合う。
なんと、女性のドライバーであり、それもかなりの美人さんであった。
「なにか、面倒なことに巻き込まれた様子ですね?」
「あぁそうなんです、自転車はパーになるわ、ヤクザみたいなやつらに追いかけられるわ......」
「『お客さん』......
......今、このタクシー客待ちなんですよ。
行きたいところへ行けますよ?」
!!!?
どうする!?
ガションガションという機動音が聞こえてきた......
そんな近くじゃないものの......
ええい、背に腹は代えられない!!!
「お願いします!!」
「了解ですー」
運転手さんがそういうと。
ウォーンという音で、車体の屋根やら側部から、何やら加速用パーツが、
カションカションという音で、車体の下部がスポーツカーのごとく変形し、ナンバープレートが入れ替わった。
ウィウィウィウィウィーンという音で、車体が浮かび上がり、浮かんだ隙にタイヤが違うもの......たぶん、レース用?のものへと入れ替わった。
後ろで物音し、見るとリアウイングが展開。
車内で音がするので前方へ視線を戻すと、ハンドルが変形していた!!
「頼む、急いで......」
「今出ますよー」
運転手さんは料金カウントボタンを押して、アクセルを踏んだ......
ゴォォォォォッ!!!!
爆音とともにタクシーが発進した!!
敷地内をレーサー顔負けのテクニックで爆走する運転手さん。
二人組のパワーローダーが気づいて追ってくる!!
だが、二足歩行では限界があったのか、速度的に追いつけない!!
急いで車モードへ変形して追いかけなおしてきた!!
通勤ラッシュ中の車道の車をぐいぐい避けてかっ飛ばすタクシー。
「あぁ、のんびりしてたら渋滞にはまっちゃいますね、シートベルト締めて、サードに入れて飛ばすから」
「あっ、あぁ......」
気づけばパワーローダー車は見えなくなっていた......
だが、こっちの視界もぐらぐらになっていた......
「いやー、お客さんも災難でしたねー」
「えぇ、まぁ......」
振り切ったのを確認すると、タクシーは通常の車と同じスピードになって走行し始めた......
「最近は、主神教団の構成員を名乗ったヤクザものがああやって、魔物娘の技術をパクって作られたパチモンロボだ武器だを悪用するんですよ、本当に迷惑極まりない話です」
「そっ......そうなんですか......
ン? じゃあ、運転手さんも魔物娘......?」
「そうですよー、まぁ、パッと見てわかる種族じゃないですがねー?」
ダメだ、全然わからん。
モロに人間みたいな外見だもの。
そうこう走行してるうちに、目的の自分の職場へとたどり着いた......
「料金は......お兄さんタイプだから1500円で」
「ええっ、料金メーター4000円とかでてるじゃないですか!!」
逆ボリすぎ!!
これは困る。
自分が4000円払おうと財布を覗いていると、
「だったら、仕事終わったら連絡くださいよ、帰る手段がないでしょうし、その時に今の残り分の料金でご案内しますから」
ええー......まぁ、借りがあるわけだし......
「じゃあ、それでお願いします」
「まいどー♥」
俺は運転手さんにラインの連絡先を教えてタクシーを後にした。
......本当に純粋な人間っぽい外見だけど、種族はなんなのだろう。
俺はずっとそれが気になっていた......。
「おまちどうさま、帰りもよろしくお願いします」
「はい♥ よろしくお願いされます♥」
ラインで今から帰ることを伝えたら、退勤時間を逆算していたらしく既にいた。
「意外とお早いおかえりですね?」
「送るって言われちゃ残業なんかできないですよ......」
ドアをバタンと閉められた。
その時だった。
後ろから何かがクラッシュ、追突してきた!!
「「!!!?」」
後ろを向くと今朝の二人組が車モードで激突してきたのだった。
しつこい!!
「これはこれはしつこい......」
運動部の泥汚れよりしつこい。
今朝みたいに振り切ってくれと言おうとしたが、運転手さんにさえぎられた。
「お客さん......」
運転手さんは言った。
「お客さんは、悪魔と......魔物娘と相乗りする勇気、ありますか?」
後方でガシャガシャ音を立てて変形していくパワーローダー。
悪魔と相乗り......魔物娘の相乗り......
俺は......
運転手さんを信じる!!
「はいっ、あります!!」
「...よかった、動きますよ」
その瞬間、運転手さんの姿が消えた!!
立体映像の消え方と一緒であった!!
「!!!!!!!!???」
なん...だと......
その瞬間、キュゥゥゥゥゥッ!!! っとタイヤが音を立てて爆走し始めた!!
車モードに変形し直して追ってくる二人組。
消えた運転手さん、運転手がいないのに動くタクシーに一人取り残されて、パニックになる自分。
「なっ、なっ、何ィィッ!! 何が起きてんだァッ!?」
『お客さん、落ち着いて、騒がないで!』
誰もいないはずの車内で聞こえてくる運転手さんの声。
「どこだ!?」
『あー、ラジオです、ラジオから声が出てます』
何!?
『落ち着いて聞いてくださいね? 走り始めてすぐ警察に連絡しました、警察がくる場所まであいつらを誘導すれば万事解決です。 OK?』
「わかった......けど、あんた何者なんだァ!!」
『今にわかりますよ』
そう言ってカーチェイスすること20分。
営業終了した陸上競技場の門を車体で体当たりして突破。
誰もいないグラウンドへ転がり込むタクシーとパワーローダー車。
先に侵入したタクシーはドリフトをしてパワーローダー車に向き合う。
もう逃げ場は塞いだ、俺たちの勝ちだとばかりにパワーローダーへと変形する車。
『お客さん、降りてください』
「ここまで来て見捨てるのか!!」
『いいえ、その逆です』
そう言った直後ドアが開いて、座席が傾いて車外へと放り出された。
何する気だ!!
そう言おうとした瞬間......
タクシーが金属の粒子状にバラバラになって宙を舞い出した!!
そして、それが徐々に固まっていき再構築し......
巨大な人型へと変身した!!
「わーお......」
パワーローダー車の変形が通常のトラソスウォーマーの変形だとすると。
タクシーの『変身』は、実写トラソスウォーマー:ロヌトエイヅの敵トラソスウォーマーの粒子変形であった!!
だが、トラソスウォーマーのようなモロにロボな外見ではなく。
れっきとした『魔物娘』であることを感じられる、美しい女性然とした、戦女神然とした有機的なルックスである!!
タクシー時の車体と同じ色、黄色の装甲を纏い、4枚の蜂の羽根のようなパーツを背中に持っている外観である......。
よく見ると足首がタイヤなっている、これなら機動力が高そうだ......。
そして、白い肌に巨乳で腰が細く、尻がデカいという男が好きそうなスタイル。
金髪に黒いメッシュが入ったボブカットで、青い瞳の持ち主であった。
「さぁ、鉄拳制裁タイムです!!」
そう言って『彼女』は両腕からブレードを展開した!
足首から先のタイヤで、ローラースケートのごとく接近。
速度を生かして前方宙返りへとつなげ、パワーローダーの右腕を切り落とした!
切り落とされた右腕が地面に落ちると同時に着地。
さらに再接近し、今度は左足をぶっこ抜いた!!
半壊するまで......いや、しても手も足も出ず、逃げようとするパワーローダー。
悪あがきをするパワーローダーに、両腕のブレードをひっこめながら近寄る『彼女』。
『彼女』はうつぶせになっているパワーローダーをひっくり返して仰向けにすると、コックピットへ両手をかけ、腹を足で踏みつけて固定し......
ベキベキベキッ!!!
ハッチを引っぺがして中の二人をあらわにした!!
「「あわわわわわ......」」
「これに懲りたら弱い者いじめやアコギな金稼ぎはやめるんですね」
コックピット以外大破したパワーローダーの前で仁王立ちしている『彼女』......
すげぇよ、かっこよすぎるよ......
ようやく聞こえてくるサイレン音。
「やっときましたね......」
壊れた門からグラウンド内へと入ってくるパトカーたち。
そのうち一台が『彼女』の横へ向かってくる。
速度を落とさないまま突っ込んでくると思いきや、『彼女』同様に粒子変形をして、巨大な婦警さんへと変身した!!
「遅いです、それで給料もらうとか警察は楽な仕事ですね」
「そう言うな、運悪く渋滞に嵌ったんだよ......」
......どうやら知り合いらしい。
三言二言話してこちらへ歩み寄ってた『タクシーの彼女』。
身長が目測で5mはあるため、自分と目線を合わせるべくかがんでくる。
かがんだ彼女の顔は......
「あっ、運転手さん!?」
「どうも、運転手さんです☆」
その顔は運転手さんとうり二つだった。
車内の立体映像は自分をモデルにしていたらしい。
「もうお分かりだと思いますが、運転手は立体映像のダミーで、本体は車の方だったんです」
「じゃあ、あなたは......」
「はい、私の種族はオートマトン。それも、機械に擬態する能力を持ったタイプ、のね」
苦笑いするオートマトンさん。
「なんでこんな客一人のために?」
「ふふっ、それはもう言ったと思いますが? 『お兄さんタイプだから』って」
「そんな......体張りすぎでしょ......」
一回乗せた客一人のためにここまでやるとは......
さすが魔物娘だと言わざるを得ない。
「おーい、お取込み中のところ悪いけど、署までこれないか、書類書いてもらわないと!!」
遠くから声をかけてくるパトカーオートマトンさん婦警。
「だそうですよ? 署までエスコートいたします♥」
と言って、車へと変形するタクシーさん。
乗れってことか......
「お兄さん、さっき運転手がいなくなったときは驚いたでしょ、走ることにリソース割いてたから大目にみてください」
「いや、そのおかげで助かったんだし、悪く言う気はないですよ」
署で書類を書いた後、タクシーさんに送ってもらうことになった。
冷静に考えると、ここはあの美人の体の中なんだよな......と、いう邪念が頭をよぎる。
冷静になってるのだろうか?
走りながらの会話がなかなか途絶えない。
この時間がずっと続けばいいのにと思っていると、タクシーさんがこんな話題を切り出した。
「お兄さんってお独り様? 女性の臭いは感知できませんけど」
「......だったら聞かなくてもいいじゃないか、いないけど」
こういうことを聞くってことは、魔物娘的に『そういうこと』だよね?
「だったら、私がお兄さんの愛車に立候補してもいい......?」
「......答えは決まってるさ、俺、免許あるけど車も彼女も持ってないし」
返答した瞬間、対向車線を走ってきたカマロをスキャンして車体の外観を変えたタクシーさん、改めカマロさん。
「もうタクシーは卒業! 今からあなただけのものになるからね!」
「だからってカマロかよ......」
高級車ですよー!!
2シーターですよ!!
俺以外乗れねぇじゃねぇか。
ワーワ騒いでると、目的地......ではない場所についた。
「ここは?」
「私の家、今晩は寝かせませんぜ♥」
「......よろしくお願いいたします...」
消えゆく声と一緒に自動で開いたシャッター内へと自分もろとも『仕舞われていった』のだった......
ある日、仕事を終えて同僚と駐車場へ来ると......
「おう、外車だ、カマロじゃねえか!!」
「あぁ、まあね」
「でも、カマロよりメルセデス・ベンツを選んだ方がセンスあるぜ?」
同僚がカマロを貶す発言をした瞬間。
あっという間に変形したタクシーさん......
もとい、本名:ベルタさん。
「あの、私を悪く言うのは構いませんけどね? ちょーっと夫を悪く言うのはいただけないんですよ、ね? 今回は何も言いませんけど、次は無いです。 OK?」
「あわわわわわ......わっ、わかりましたァ......」
同棲してわかったが、意外とコイツけんかっ早い。
あの時あんな行動したのも納得だったり......
「もー、やめなさいよ、騒ぎになるでしょうが」
腰を抜かしている同僚からベルタさんを引き離そうとするもできず(重くて)。
仕方ないので、同僚を引きずってベルタさんから遠ざける。
「ほら、帰ろう。 帰って整備ごっこでもしよう」
「ハァイ♥」
今日も一日仕事を終えて。
愛する車兼女性とともに帰路へつく。
さー、こんな体格差だからこそ燃えるックスが待ってるぞー。
......途中で薬局で精力剤でも買っていこうかと考えながら車が発信するのだった。
18/06/22 23:15更新 / 妖怪人間ボム