どうしてこうなった 〜闇魔女集会で会いましょう〜
私は反魔領近くの迷いの森の中に館を持っている暗黒の魔女、ダークメイジだ。
私は今、人生最大の危機(?)に陥っている。
「おや、坊や。どこから来たんだい、ここは怖ーい魔女の縄張りだよ」
「......分からない...お父さんと森に来たらはぐれちゃった......」
森の中で魔法薬の材料集めをしていると。
銀色の髪のショタ......7〜8歳くらいの細く小柄な男の子と遭遇した。
見るからに周りに親らしき大人はいないし、これは......
......。
捨て子か、ここ最近人間たちは羽振りが良くないと聞く。
それに、ここは反魔領から近いからねぇ...。
何にしても、とても夢見が悪いことになった、私は魔女だぞ、ダークメイジだぞ!
欲望に生きるダークメイジが未婚の処女で子持ちになったとかシャレにならんぞ!!
200年は生きたいい、歳こいた大の大人だからね!
あ"〜、本当に困ったことになった......
「.........................................」
何やってるんだ私!!
結局連れてきてしまったじゃないか!!
とりあえず体が冷えていたから温かいココアを飲ませてみたものの......
......まぁ、大人しく飲んでいるし、正解と思っていいはず......
って、大魔女モルガン様がコブ付きだぞォ〜......
これから厳しくなるぞ...
どうしよう......
「......おばちゃん」
「!?」
保護?した男の子がしゃべった。
って、おばちゃんかーい。
「お姉さんとお呼び、で、どうしたんだい?」
「温かい飲み物......ありがとうございました!」
......一応お礼は言える子のようだ。
...............。
当面は私で面倒を見て。
ショタ好きな知り合いがいたら引き渡すか。
うん、そうしよう。
「坊や、行くとこがないならお姉さんのところにいるかい?」
......うん、この子がいると言ったら当面面倒みよう、うん。
「............」
何も言わない。
どうしよう、何か言っておくれ....
こっちだってこの沈黙には耐えられないんだから...。
「......いいの?」
ポツリ。
男の子はそう言った。
「......ッ!」
私はこの子の言動に胸を打たれた。
「いていいんだよ、私が大人になるまで面倒をみてやるさ!」
感極まって思わず男の子を抱きしめた。
「苦しい......」
男の子は私の胸の谷間に顔を突っ込まされ、息が出来なくなっていた。
「あぁ、ごめんね!」
慌てて男の子を解放する。
「そうなれば、お互い名前を聞いておかないとね。魔女のお姉さんの名前は、モルガン。君は?」
「......アーサー」
「そうか、アーサー君。今日から私をママとお呼び!! それから、相当森を彷徨ってたから、ココアくらいじゃまだ温まらないだろう、さぁお風呂に行こうか!!」
こうなったら彼が成人するまで面倒みてやろう、
どこかで意中の娘ができたらその子のバトンタッチするその日まで。
さぁて、今日から忙しくなるよー!!
「さぁ、坊や。この森で暮らすものはみんな何かしら役割があるんだ。坊やも少しずつ物事を覚えていかないとね」
私はまず、男の子......アーサーに魔法を教えることにした。
「まずは簡単な念力の魔法だ、触れずにものを動かせる便利な魔法だよ」
「うん、やってみる!」
一晩ぐっすり睡眠を取ったアーサーは、活力を取り戻したようだった。
この館に連れてきた当初は、もう生きる気力が枯れてる様子だったから心配だったが......。
案外、子供っていうのは順応が早いのかもねぇ...
「う〜ん......できない...」
アーサーはガラス瓶に手を向けて意識を集中していたが、がっくりうなだれた。
「まぁ、勉強し始めて初日だから......毎日続けていれば成果が出るさ」
「...本当?」
「あぁ、ママだって、そういうペーペーの時代があったもんだよ」
「ママ」
「ん?」
今日もアーサーをお風呂に入れている。
魔法の訓練でたくさん汗をかいたからだ。
「ママの髪と瞳って、月の色みたいな金色だね」
「......あっはっはっは、坊や、そういうことは女の人に軽々しく言っちゃいけないよ」
「どうして?」
「それはね、中には悪〜い女の人がその気になったら、坊やはただじゃ済まないからよ」
「そうなの?」
「そうなの」
アーサーと一緒に湯船に浸かりながらの会話。
坊やは、私の脚の間で温まっている。
「さぁ、お風呂から出たら晩ご飯にしようか」
今日、アーサーはたくさん頑張ったから。
この子の好きなものを作ってあげよう。
ぐぐぐぐ......
「ママ、浮いたっ、浮いたよっ!!」
「おぉ〜、ママが浮かせた時より早いねぇ!」
アーサーはわずか三日目で念力の魔法を身につけたようだった。
この子のセンスは、現時点での判断でも相当なものだと推察できる。
大魔女の私でも、一週間は掛かったのだから。
そうだ、魔法と並行して剣術も教えてみようか。
私は魔法だけが取り柄じゃない、剣も長物も使える、バリバリ戦える魔女でもあるのだ。
この子は私を超える逸材になりえるのだ。
おーし、気合入ってきたー!!
バリバリバリッ!!!
シュッ、ズバァッ!!
「どうですかママ!!」
「んんー、まさか魔法と剣を習い始めて2年でこうなるとはねぇ〜......」
目の前でアーサーは熊と戦っていた。
まず念力でクマを拘束し、掌から雷を放ち動きを止め、そこに私が魔法で誂えた剣で一刀両断して止めを刺した。
わずか2年で、アーサーは雷魔法を習得し、剣も熊くらいなら骨ごと斬って真っ二つにするまでの腕となっていた。
身長も10cmも伸び、体格もあの日よりずっと良くなっていた。
「ボクだってもう、11歳ですよ! それに魔女さんの教え方がいいから上手になったんですよ」
「んー、そう言ってもらえるなら悪い気はしないけどさぁ〜」
将来有望すぎる!!
まだ11歳だぞ、それなのにそこらの教団兵なんか相手にならないレベルだよこりゃ!!
「さぁて、次は剣は鉄を叩っ切れるようになって、魔法は.......そうだ、自分で魔法の剣を錬成できるようになろう!!」
「......まずは岩を切れる様になろうか」
うーん、私の手を離れるのも近いかもなぁ......。
「アーサー、ご近所さんのアラクネのお嬢さんの求愛を断ったって?」
「ボクにはモルガンさんがいますから」
アーサーも今年で14歳。
いい加減親離れして、いい相手を見つけて欲しいんだけどねぇ......
「何言ってるのさ、こんなおばさんに本気になるんじゃないよ...」
「何言ってる...のはモルガンさんですよ。ボクはモルガンさん以上に美しい女性は知りません。それに僕はモルガンさんがいいんです」
こんな年増の魔女をからかうんじゃないよ......
あぁ、どうしよう、育て方を間違ったのか......
ワーワー
「この森は魔物が住まう、邪なる森だ! 焼き払え!!」
「勇者たる私がやってきたのだ、魔物どもめ、駆逐してやろう!!」
森に反魔領から教団兵と勇者の軍団がやってきた。
その勇者は森に油を撒き、火を放った。
この森に住んでいる魔物娘たちの中には、その場所を移動できない者や、この森ならではのアマゾネスやエルフの部族もいる。
だが、勇者一人ならまだしも、この人数では......
ドゴーン
即席のポータルを造り森の住人たちを逃がしていると。
この場所を突き止めた勇者が爆破魔法を放ってきた。
「キャアッ!!」
「闇黒の魔女め、お前さえ潰せば我々は勝ったも同然だ!!」
勇者は私に直接爆破魔法を叩き込んでこようとした。
その時だった。
「『ライトニング』ナーウ」
バリバリバリバリッ
森一帯に雷が降ってきた!
勇者はドーム状の防壁を貼って防いだが、兵たちは全滅した!!
私と勇者は、声が聞こえた方向を見た。
そこには......
「おい、お前......俺のママンに手を出すな......」
「アーサーッ!! 来ちゃダメよ!!」
二十歳を超え、立派に成長したアーサーがいた!!
彼は身長は私をとっくに超えて190cmの。
体格は大剣を軽々片手で扱えるほど強靭なものとなっていた。
「ほう、お前、この魔女の息子か」
「義理だがな、彼女は俺の大切なママンだ......」
アーサーは天に手を向けると。
「『レイン』ナウ」
魔法を唱え、雨を降らせた。
森に放たれた火はたちどころに消えていった。
「天候を操る魔法だとっ......そんな上級魔法を操れるだと......ッ」
「これはママンが教えてくれたんだ......その大切なママンをお前はっ......傷つけた!!」
アーサーから見たことがないほどの怒気が溢れる。
それに気圧され、後退りを始める勇者。
「くっ、だが私とて大義を帯びてここに来ているのだ、逃げ帰るなどできんのだよ!!」
「こいッ!!」
魔法陣から、自分で錬成した剣を取り出すアーサー。
相対する勇者も、光り輝く聖剣を抜いた。
勇者が構えた瞬間、一瞬で間合いを詰めて上段から斬りかかるアーサー。
「『ディフェンド』!!」
勇者はさきほどのドーム状のバリアを張ってそれを防いだ......
かと思いきや、アーサーは刃をバリアに喰い込ませており。
「『マッスル』『マッスル』『マッスル』ナウ!!」
魔法の重ねがけで筋力を増加。
喰い込ませていた刀身を押し込み、バリアを両断した!!
「クソッタレが!!」
勇者は自分が切られる前にバリアを解除して回避し。
爆撃魔法を放ってきた!!
「『エクスプロージョン』!!」
それを。
「『ディバイン』『リフレクト』!!」
減圧魔法で爆発を軽くし、反射魔法の組み合わせで勇者本人に跳ね返した!!
ドーン!!
「グアァッ!!」
直撃したものの、減圧されているため、最小限のダメージで済み、気絶することもできない勇者。
「お前たちの敗因はただ一つ.........『テレキネシス』『ライトニング』!!」
念力で勇者の逃亡を防ぎ、雷撃魔法を勇者に叩き込む。
そして、動けなくなっている勇者に、渾身の鉄拳を叩き込んだ!
「......お前ァッ、はママンを傷つけた!!」
吹き飛ばされた勇者は真後5mにあった大木に激突して気絶した。
勇者に勝利したことを確認すると。
アーサーは私の方へと歩み寄ってきた。
「ごめんなさい、ママン......僕がちょっと出かけたばかりに......」
「いっ、いいのよ、みんな助かったし、教団の人たちも死んじゃいない? だろうし......」
「当たり前だよママン、ママンに『人も魔物娘も殺しちゃダメだ』って教えられたからね」
そっと私の手を握るアーサー。
今にも泣き出しそうなその様子は、さきほどまで武神のごとき怒気を放っていた人物と同じようには見えなかった。
っていうか、強くなりすぎよ、この子......。
「ほら、森のみんなをここに戻すのに力を貸して? 私だけじゃポータルを開けないから...」
アーサーの頭を撫でてあげると。
「......わかったよママン、無理はしないでね」
彼は腕に力を入れて、私を立たせてくれたのだった......
「アーサー? 本当にいいのね?」
「僕はママンがいいんだよ、昔からそう言ってたでしょ?」
今日は私とアーサーの結婚式の日である。
『あの日』がきっかけなのか、すっかり過保護になってしまったアーサーに根負けしたのである。
「大丈夫、なにがあっても。僕はママンを一生守るからね」
「ふふふ、ありがとう。ものすごい親孝行を期待してるワ♥」
まぁ、子供の頃拾った、義理の関係出し問題ないよね?
私だって、未だにおぼこだし。
「さぁ、誓いのキスを」
ダークプリーストの司祭の言葉で、アーサーは私のベールを上げた。
あぁ、なんということでしょう。
あの日拾った小さい坊やが。
こんなにも立派な殿方になるなんて......♥
私は今、人生最大の危機(?)に陥っている。
「おや、坊や。どこから来たんだい、ここは怖ーい魔女の縄張りだよ」
「......分からない...お父さんと森に来たらはぐれちゃった......」
森の中で魔法薬の材料集めをしていると。
銀色の髪のショタ......7〜8歳くらいの細く小柄な男の子と遭遇した。
見るからに周りに親らしき大人はいないし、これは......
......。
捨て子か、ここ最近人間たちは羽振りが良くないと聞く。
それに、ここは反魔領から近いからねぇ...。
何にしても、とても夢見が悪いことになった、私は魔女だぞ、ダークメイジだぞ!
欲望に生きるダークメイジが未婚の処女で子持ちになったとかシャレにならんぞ!!
200年は生きたいい、歳こいた大の大人だからね!
あ"〜、本当に困ったことになった......
「.........................................」
何やってるんだ私!!
結局連れてきてしまったじゃないか!!
とりあえず体が冷えていたから温かいココアを飲ませてみたものの......
......まぁ、大人しく飲んでいるし、正解と思っていいはず......
って、大魔女モルガン様がコブ付きだぞォ〜......
これから厳しくなるぞ...
どうしよう......
「......おばちゃん」
「!?」
保護?した男の子がしゃべった。
って、おばちゃんかーい。
「お姉さんとお呼び、で、どうしたんだい?」
「温かい飲み物......ありがとうございました!」
......一応お礼は言える子のようだ。
...............。
当面は私で面倒を見て。
ショタ好きな知り合いがいたら引き渡すか。
うん、そうしよう。
「坊や、行くとこがないならお姉さんのところにいるかい?」
......うん、この子がいると言ったら当面面倒みよう、うん。
「............」
何も言わない。
どうしよう、何か言っておくれ....
こっちだってこの沈黙には耐えられないんだから...。
「......いいの?」
ポツリ。
男の子はそう言った。
「......ッ!」
私はこの子の言動に胸を打たれた。
「いていいんだよ、私が大人になるまで面倒をみてやるさ!」
感極まって思わず男の子を抱きしめた。
「苦しい......」
男の子は私の胸の谷間に顔を突っ込まされ、息が出来なくなっていた。
「あぁ、ごめんね!」
慌てて男の子を解放する。
「そうなれば、お互い名前を聞いておかないとね。魔女のお姉さんの名前は、モルガン。君は?」
「......アーサー」
「そうか、アーサー君。今日から私をママとお呼び!! それから、相当森を彷徨ってたから、ココアくらいじゃまだ温まらないだろう、さぁお風呂に行こうか!!」
こうなったら彼が成人するまで面倒みてやろう、
どこかで意中の娘ができたらその子のバトンタッチするその日まで。
さぁて、今日から忙しくなるよー!!
「さぁ、坊や。この森で暮らすものはみんな何かしら役割があるんだ。坊やも少しずつ物事を覚えていかないとね」
私はまず、男の子......アーサーに魔法を教えることにした。
「まずは簡単な念力の魔法だ、触れずにものを動かせる便利な魔法だよ」
「うん、やってみる!」
一晩ぐっすり睡眠を取ったアーサーは、活力を取り戻したようだった。
この館に連れてきた当初は、もう生きる気力が枯れてる様子だったから心配だったが......。
案外、子供っていうのは順応が早いのかもねぇ...
「う〜ん......できない...」
アーサーはガラス瓶に手を向けて意識を集中していたが、がっくりうなだれた。
「まぁ、勉強し始めて初日だから......毎日続けていれば成果が出るさ」
「...本当?」
「あぁ、ママだって、そういうペーペーの時代があったもんだよ」
「ママ」
「ん?」
今日もアーサーをお風呂に入れている。
魔法の訓練でたくさん汗をかいたからだ。
「ママの髪と瞳って、月の色みたいな金色だね」
「......あっはっはっは、坊や、そういうことは女の人に軽々しく言っちゃいけないよ」
「どうして?」
「それはね、中には悪〜い女の人がその気になったら、坊やはただじゃ済まないからよ」
「そうなの?」
「そうなの」
アーサーと一緒に湯船に浸かりながらの会話。
坊やは、私の脚の間で温まっている。
「さぁ、お風呂から出たら晩ご飯にしようか」
今日、アーサーはたくさん頑張ったから。
この子の好きなものを作ってあげよう。
ぐぐぐぐ......
「ママ、浮いたっ、浮いたよっ!!」
「おぉ〜、ママが浮かせた時より早いねぇ!」
アーサーはわずか三日目で念力の魔法を身につけたようだった。
この子のセンスは、現時点での判断でも相当なものだと推察できる。
大魔女の私でも、一週間は掛かったのだから。
そうだ、魔法と並行して剣術も教えてみようか。
私は魔法だけが取り柄じゃない、剣も長物も使える、バリバリ戦える魔女でもあるのだ。
この子は私を超える逸材になりえるのだ。
おーし、気合入ってきたー!!
バリバリバリッ!!!
シュッ、ズバァッ!!
「どうですかママ!!」
「んんー、まさか魔法と剣を習い始めて2年でこうなるとはねぇ〜......」
目の前でアーサーは熊と戦っていた。
まず念力でクマを拘束し、掌から雷を放ち動きを止め、そこに私が魔法で誂えた剣で一刀両断して止めを刺した。
わずか2年で、アーサーは雷魔法を習得し、剣も熊くらいなら骨ごと斬って真っ二つにするまでの腕となっていた。
身長も10cmも伸び、体格もあの日よりずっと良くなっていた。
「ボクだってもう、11歳ですよ! それに魔女さんの教え方がいいから上手になったんですよ」
「んー、そう言ってもらえるなら悪い気はしないけどさぁ〜」
将来有望すぎる!!
まだ11歳だぞ、それなのにそこらの教団兵なんか相手にならないレベルだよこりゃ!!
「さぁて、次は剣は鉄を叩っ切れるようになって、魔法は.......そうだ、自分で魔法の剣を錬成できるようになろう!!」
「......まずは岩を切れる様になろうか」
うーん、私の手を離れるのも近いかもなぁ......。
「アーサー、ご近所さんのアラクネのお嬢さんの求愛を断ったって?」
「ボクにはモルガンさんがいますから」
アーサーも今年で14歳。
いい加減親離れして、いい相手を見つけて欲しいんだけどねぇ......
「何言ってるのさ、こんなおばさんに本気になるんじゃないよ...」
「何言ってる...のはモルガンさんですよ。ボクはモルガンさん以上に美しい女性は知りません。それに僕はモルガンさんがいいんです」
こんな年増の魔女をからかうんじゃないよ......
あぁ、どうしよう、育て方を間違ったのか......
ワーワー
「この森は魔物が住まう、邪なる森だ! 焼き払え!!」
「勇者たる私がやってきたのだ、魔物どもめ、駆逐してやろう!!」
森に反魔領から教団兵と勇者の軍団がやってきた。
その勇者は森に油を撒き、火を放った。
この森に住んでいる魔物娘たちの中には、その場所を移動できない者や、この森ならではのアマゾネスやエルフの部族もいる。
だが、勇者一人ならまだしも、この人数では......
ドゴーン
即席のポータルを造り森の住人たちを逃がしていると。
この場所を突き止めた勇者が爆破魔法を放ってきた。
「キャアッ!!」
「闇黒の魔女め、お前さえ潰せば我々は勝ったも同然だ!!」
勇者は私に直接爆破魔法を叩き込んでこようとした。
その時だった。
「『ライトニング』ナーウ」
バリバリバリバリッ
森一帯に雷が降ってきた!
勇者はドーム状の防壁を貼って防いだが、兵たちは全滅した!!
私と勇者は、声が聞こえた方向を見た。
そこには......
「おい、お前......俺のママンに手を出すな......」
「アーサーッ!! 来ちゃダメよ!!」
二十歳を超え、立派に成長したアーサーがいた!!
彼は身長は私をとっくに超えて190cmの。
体格は大剣を軽々片手で扱えるほど強靭なものとなっていた。
「ほう、お前、この魔女の息子か」
「義理だがな、彼女は俺の大切なママンだ......」
アーサーは天に手を向けると。
「『レイン』ナウ」
魔法を唱え、雨を降らせた。
森に放たれた火はたちどころに消えていった。
「天候を操る魔法だとっ......そんな上級魔法を操れるだと......ッ」
「これはママンが教えてくれたんだ......その大切なママンをお前はっ......傷つけた!!」
アーサーから見たことがないほどの怒気が溢れる。
それに気圧され、後退りを始める勇者。
「くっ、だが私とて大義を帯びてここに来ているのだ、逃げ帰るなどできんのだよ!!」
「こいッ!!」
魔法陣から、自分で錬成した剣を取り出すアーサー。
相対する勇者も、光り輝く聖剣を抜いた。
勇者が構えた瞬間、一瞬で間合いを詰めて上段から斬りかかるアーサー。
「『ディフェンド』!!」
勇者はさきほどのドーム状のバリアを張ってそれを防いだ......
かと思いきや、アーサーは刃をバリアに喰い込ませており。
「『マッスル』『マッスル』『マッスル』ナウ!!」
魔法の重ねがけで筋力を増加。
喰い込ませていた刀身を押し込み、バリアを両断した!!
「クソッタレが!!」
勇者は自分が切られる前にバリアを解除して回避し。
爆撃魔法を放ってきた!!
「『エクスプロージョン』!!」
それを。
「『ディバイン』『リフレクト』!!」
減圧魔法で爆発を軽くし、反射魔法の組み合わせで勇者本人に跳ね返した!!
ドーン!!
「グアァッ!!」
直撃したものの、減圧されているため、最小限のダメージで済み、気絶することもできない勇者。
「お前たちの敗因はただ一つ.........『テレキネシス』『ライトニング』!!」
念力で勇者の逃亡を防ぎ、雷撃魔法を勇者に叩き込む。
そして、動けなくなっている勇者に、渾身の鉄拳を叩き込んだ!
「......お前ァッ、はママンを傷つけた!!」
吹き飛ばされた勇者は真後5mにあった大木に激突して気絶した。
勇者に勝利したことを確認すると。
アーサーは私の方へと歩み寄ってきた。
「ごめんなさい、ママン......僕がちょっと出かけたばかりに......」
「いっ、いいのよ、みんな助かったし、教団の人たちも死んじゃいない? だろうし......」
「当たり前だよママン、ママンに『人も魔物娘も殺しちゃダメだ』って教えられたからね」
そっと私の手を握るアーサー。
今にも泣き出しそうなその様子は、さきほどまで武神のごとき怒気を放っていた人物と同じようには見えなかった。
っていうか、強くなりすぎよ、この子......。
「ほら、森のみんなをここに戻すのに力を貸して? 私だけじゃポータルを開けないから...」
アーサーの頭を撫でてあげると。
「......わかったよママン、無理はしないでね」
彼は腕に力を入れて、私を立たせてくれたのだった......
「アーサー? 本当にいいのね?」
「僕はママンがいいんだよ、昔からそう言ってたでしょ?」
今日は私とアーサーの結婚式の日である。
『あの日』がきっかけなのか、すっかり過保護になってしまったアーサーに根負けしたのである。
「大丈夫、なにがあっても。僕はママンを一生守るからね」
「ふふふ、ありがとう。ものすごい親孝行を期待してるワ♥」
まぁ、子供の頃拾った、義理の関係出し問題ないよね?
私だって、未だにおぼこだし。
「さぁ、誓いのキスを」
ダークプリーストの司祭の言葉で、アーサーは私のベールを上げた。
あぁ、なんということでしょう。
あの日拾った小さい坊やが。
こんなにも立派な殿方になるなんて......♥
18/03/06 20:58更新 / 妖怪人間ボム