でっかわいい彼女
「マスター、だいぶ体の方が修復されてきましたね」
「そうだねぇ...膝から下と、手首から先だけだもんね」
初っ端から血腥い会話をお許しください。
なぜなら、一介の冒険者やっておりますワタクシめは、ただいま手足がないと来ております。
遡るのこと半年前、私は親魔国家のマキナデウス遺跡の調査クルー()の一人として出向いておりました。
ですが、そこでブービートラップを起動してしまいました。
床に仕込んであるスイッチを踏んづけたことで、ギロチン×2で四肢が切断。
おまけに地雷(のようなもの)まで誘発した結果、全身大やけどの上、達磨状態になってしまいました。
しかも最悪なことに、場所は遺跡の割と深めな場所で、一人で事故りました。
あっ、俺、死んだ。
......本当にそう思いました。
ですが、天(というか、遺跡の主でしょうか)が味方しました。
爆発で壁が崩れ、中からオートマトンさんが出てきたのです!!
ただ、でかい。
目測で320cm、3.2mはある巨体でした。
彼女は自分の腹部を開くと、中に私を納めました。
腹の中(腹部:胴体。下腹部ではない)に入れられると、何か液体で満たされたとです。
満たされた液体の中では普通に呼吸が出来、かつ切れた手足や焼きこげた肌の痛みがないのです!!
その直後、彼女の声が聞こえました。
「起動してから一番最初に見た人間をマスターとして登録するように設定されていたため、あなたを私のマスターとして登録いたしました。そして、今にも死にそうだったので、修復カプセルに収納しましたが、大丈夫でしょうか?」
...一応、助かったようです。
この言葉をかけられ、自分がなんとか助かったことを認識した私は、彼女に一から事情を説明しました。
彼女は本当に物分りがよく、自分をクルーの下まで運んでくれました(※ 中に入ったまま。つまりは彼女ごと)。
そして彼女は移籍内部のマップを提供してくれ、遺跡も攻略!!
...したものの、私は外に出されたら死ぬということもあり、彼女ごと帰宅することに...オヨヨヨ...。
帰宅してからは彼女に『アルテミス』という名前を付け、以後半年以上一緒にいました...。
それからというもの。
彼女は腹の中の私を慈しみ、まるで子を宿した母のごとく、私を守ってくれました。
修復カプセルの中にいることで、火傷も徐々に回復し、手足も生えてきました...。
やっぱり速度は遅いですが、文句を言ったらバチがあたるだろうし、何より頑張って治してくれている彼女に失礼ですからね。
「マスター、今日の栄養は何がいいですか?」
「...経口摂取するわけじゃないから、任せるよ...」
食事?
...あぁ、腹部に入ってしばらくしたら、彼女の内壁から管が伸びてきてへそに接続されて、それから貰ってます。
さすがに栄養を錬成できるわけじゃないので、彼女が食べ物を食べ、それを内蔵炉で分解、その栄養をいただいてます。
「わかりました、では、レバニラとカキフライ、アサリの味噌汁にしましょう、私も動力に濃いのが欲しいですから」
「ハハハハ...」
彼女の動力?
あぁ、もう一本伸びてきたオナホ管がチ○コに接続されてて、それから絞られてるよ?
そうだ、動力源は私だ!!
経口摂取するわけじゃないから気にしないが、彼女はやたらと亜鉛とタンパク質を取ろうとする。
...気を使われてるのかどうなのかは、彼女の味噌汁、ってやつだ(違う)。
腹の中にいて飽きないのか?
飽きないよ、外が見えるもん。
胸の谷間からへそあたりに掛けて、ほぼ透明になってて、外からも中からも様子が分かる、紫色だが。
こんな感じ。
自分の足で大地に立つのが待ち遠しい。
私は早く治らないかとウズウズしていた...。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あと、足首から先だけですね...」
「そうだな、両手は爪まで完全に治ったし!!」
グーパーグーパーする。
ようやく自分の手が戻ってきた。
「外に...出たいのですか?」
「出たいねぇ、出たら最初に3km走る!!」
「あまり無理はされない方がいいですよ」
苦笑交じるアルテミス。
そうは言っても、仕方長いじゃないか...。
この時の俺は気付かなかった。
どこか寂しそうにお腹を撫でるアルテミスに。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日の晩だった。
「今日はおかゆでいいですか?」
「......どうした、どっか調子悪いの?」
「ええ、ちょっと食欲が無くて...」
「いや、あんた動力は精液だろ」
「.........」
なんでそんな栄養が無さそうなものにするんだ...もっとがっつり食べて、私の体を治してくれよ!!
「..........そうでしたね、忘れてください」
「おう? いいんだよ」
次の日。
「今日は野菜サラダでいいですか?」
「もうちょっと血肉になりそうなものじゃダメなの?」
あれ、今日もか。
本当にどうしたんだ?
「なぁ...俺たち、もう一年くらい一心同体ジャン? 悩み事があるなら相談に乗るよ?」
「お見通しですか」
「お見通しです」
「そうですか...」
ポツリ、ポツリと口を開き始めたアルテミス。
内容を整理するとだ。
アルテミスの自分の中に私がいることが何より幸せだということ
もう少しで私が完治し、腹の中から出て行ってしまうことが嫌だということ
でも、自分の足で地面を走り回りたい私の願いを無碍にはしたくないこと
ならせめて、栄養のなさそうなものを食べて、修復を遅らせようとしたこと
「なんで、なんで......一回もそんなこと、言わなかったじゃないか...」
「...だって、言えるわけないじゃないですか。五体満足でいることは、生物なら当然の欲求なのですから」
「そうだけど、さ...」
こいつなりにいろいろ悩んでたんだな...。
...よし。
「おいアルテミス」
「はい?」
「一晩時間をくれ」
「なんのです?」
「まぁ、今は聞くな」
「はぁ...大丈夫ですけど...」
困惑しているアルテミス。
だが、なんとか、時間はもらった。
明日までに...だな...。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「マスター、本当によかったのですか?」
「何がだ?」
「もう5年以上カプセル中にこもりっきりなのですよ? 自分の足で歩きたかったのではないですか?」
「もういいんだ」
自分は、命の恩人であり、最愛のオートマトンの願いを飲むことにした。
体は五体満足になったものの、あれからずっと腹部カプセルの中にいる。
「本当にいいのですか? 私なんかのために自由を捨てるなんて...」
「いいと言っているだろう、だってなぁ」
「?」
「惚れた女が命の恩人なんだ、恩を返さないとバチが当たるだろう?」
「マスター...」
そうだ、なにも自分の足で歩くだけが自由じゃない。
ここでも外の情報は手に入るし、一人ぼっちじゃない。
何より、よくよく考えると居心地がいい。
今後の人生、自分の足で歩くことがあるだろうか。
いや、考えるだけ無駄だろう。
それこそは、運命の味噌汁、だからな。
「そうだねぇ...膝から下と、手首から先だけだもんね」
初っ端から血腥い会話をお許しください。
なぜなら、一介の冒険者やっておりますワタクシめは、ただいま手足がないと来ております。
遡るのこと半年前、私は親魔国家のマキナデウス遺跡の調査クルー()の一人として出向いておりました。
ですが、そこでブービートラップを起動してしまいました。
床に仕込んであるスイッチを踏んづけたことで、ギロチン×2で四肢が切断。
おまけに地雷(のようなもの)まで誘発した結果、全身大やけどの上、達磨状態になってしまいました。
しかも最悪なことに、場所は遺跡の割と深めな場所で、一人で事故りました。
あっ、俺、死んだ。
......本当にそう思いました。
ですが、天(というか、遺跡の主でしょうか)が味方しました。
爆発で壁が崩れ、中からオートマトンさんが出てきたのです!!
ただ、でかい。
目測で320cm、3.2mはある巨体でした。
彼女は自分の腹部を開くと、中に私を納めました。
腹の中(腹部:胴体。下腹部ではない)に入れられると、何か液体で満たされたとです。
満たされた液体の中では普通に呼吸が出来、かつ切れた手足や焼きこげた肌の痛みがないのです!!
その直後、彼女の声が聞こえました。
「起動してから一番最初に見た人間をマスターとして登録するように設定されていたため、あなたを私のマスターとして登録いたしました。そして、今にも死にそうだったので、修復カプセルに収納しましたが、大丈夫でしょうか?」
...一応、助かったようです。
この言葉をかけられ、自分がなんとか助かったことを認識した私は、彼女に一から事情を説明しました。
彼女は本当に物分りがよく、自分をクルーの下まで運んでくれました(※ 中に入ったまま。つまりは彼女ごと)。
そして彼女は移籍内部のマップを提供してくれ、遺跡も攻略!!
...したものの、私は外に出されたら死ぬということもあり、彼女ごと帰宅することに...オヨヨヨ...。
帰宅してからは彼女に『アルテミス』という名前を付け、以後半年以上一緒にいました...。
それからというもの。
彼女は腹の中の私を慈しみ、まるで子を宿した母のごとく、私を守ってくれました。
修復カプセルの中にいることで、火傷も徐々に回復し、手足も生えてきました...。
やっぱり速度は遅いですが、文句を言ったらバチがあたるだろうし、何より頑張って治してくれている彼女に失礼ですからね。
「マスター、今日の栄養は何がいいですか?」
「...経口摂取するわけじゃないから、任せるよ...」
食事?
...あぁ、腹部に入ってしばらくしたら、彼女の内壁から管が伸びてきてへそに接続されて、それから貰ってます。
さすがに栄養を錬成できるわけじゃないので、彼女が食べ物を食べ、それを内蔵炉で分解、その栄養をいただいてます。
「わかりました、では、レバニラとカキフライ、アサリの味噌汁にしましょう、私も動力に濃いのが欲しいですから」
「ハハハハ...」
彼女の動力?
あぁ、もう一本伸びてきたオナホ管がチ○コに接続されてて、それから絞られてるよ?
そうだ、動力源は私だ!!
経口摂取するわけじゃないから気にしないが、彼女はやたらと亜鉛とタンパク質を取ろうとする。
...気を使われてるのかどうなのかは、彼女の味噌汁、ってやつだ(違う)。
腹の中にいて飽きないのか?
飽きないよ、外が見えるもん。
胸の谷間からへそあたりに掛けて、ほぼ透明になってて、外からも中からも様子が分かる、紫色だが。
こんな感じ。
自分の足で大地に立つのが待ち遠しい。
私は早く治らないかとウズウズしていた...。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あと、足首から先だけですね...」
「そうだな、両手は爪まで完全に治ったし!!」
グーパーグーパーする。
ようやく自分の手が戻ってきた。
「外に...出たいのですか?」
「出たいねぇ、出たら最初に3km走る!!」
「あまり無理はされない方がいいですよ」
苦笑交じるアルテミス。
そうは言っても、仕方長いじゃないか...。
この時の俺は気付かなかった。
どこか寂しそうにお腹を撫でるアルテミスに。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日の晩だった。
「今日はおかゆでいいですか?」
「......どうした、どっか調子悪いの?」
「ええ、ちょっと食欲が無くて...」
「いや、あんた動力は精液だろ」
「.........」
なんでそんな栄養が無さそうなものにするんだ...もっとがっつり食べて、私の体を治してくれよ!!
「..........そうでしたね、忘れてください」
「おう? いいんだよ」
次の日。
「今日は野菜サラダでいいですか?」
「もうちょっと血肉になりそうなものじゃダメなの?」
あれ、今日もか。
本当にどうしたんだ?
「なぁ...俺たち、もう一年くらい一心同体ジャン? 悩み事があるなら相談に乗るよ?」
「お見通しですか」
「お見通しです」
「そうですか...」
ポツリ、ポツリと口を開き始めたアルテミス。
内容を整理するとだ。
アルテミスの自分の中に私がいることが何より幸せだということ
もう少しで私が完治し、腹の中から出て行ってしまうことが嫌だということ
でも、自分の足で地面を走り回りたい私の願いを無碍にはしたくないこと
ならせめて、栄養のなさそうなものを食べて、修復を遅らせようとしたこと
「なんで、なんで......一回もそんなこと、言わなかったじゃないか...」
「...だって、言えるわけないじゃないですか。五体満足でいることは、生物なら当然の欲求なのですから」
「そうだけど、さ...」
こいつなりにいろいろ悩んでたんだな...。
...よし。
「おいアルテミス」
「はい?」
「一晩時間をくれ」
「なんのです?」
「まぁ、今は聞くな」
「はぁ...大丈夫ですけど...」
困惑しているアルテミス。
だが、なんとか、時間はもらった。
明日までに...だな...。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「マスター、本当によかったのですか?」
「何がだ?」
「もう5年以上カプセル中にこもりっきりなのですよ? 自分の足で歩きたかったのではないですか?」
「もういいんだ」
自分は、命の恩人であり、最愛のオートマトンの願いを飲むことにした。
体は五体満足になったものの、あれからずっと腹部カプセルの中にいる。
「本当にいいのですか? 私なんかのために自由を捨てるなんて...」
「いいと言っているだろう、だってなぁ」
「?」
「惚れた女が命の恩人なんだ、恩を返さないとバチが当たるだろう?」
「マスター...」
そうだ、なにも自分の足で歩くだけが自由じゃない。
ここでも外の情報は手に入るし、一人ぼっちじゃない。
何より、よくよく考えると居心地がいい。
今後の人生、自分の足で歩くことがあるだろうか。
いや、考えるだけ無駄だろう。
それこそは、運命の味噌汁、だからな。
17/05/20 13:46更新 / 妖怪人間ボム