とある魔物領の、服役事情
「被告人、タケリダケの大量密造、密輸入、および、暴安値での密売の罪により、懲役:6年に処す」
被告人のオレ...ラモン・マクダウェルはうな垂れた。
たかがタケリダケ関連で6年か、と。
「被告人を、『例の部屋』へ連れて行きなさい、これにて閉廷」
裁判長のバフォメットが退室する。
例の部屋...刑務所じゃなくてか?
「こっちだ」
「ついてこい」
そこに横に着いたオーガとヘルハウンドに両腕を掴まれ、俺はその部屋へ連れて行かれた...。
「...なんだここは」
その部屋には、多種多様な魔物娘が大勢いた。
ここが『例の部屋』なのか...?
「さぁ、この中から一人選べ」
「......なぜ?」
「いいから!!」
その中から俺は...
「この人で...」
「あら、私?」
俺が声を掛けたのは、20歳手前くらいのファントムさんだった。
それを見て、非常に残念がる選ばれなかった魔物娘たち。
「さぁ、こっちこい」
「ご同行、よろしくお願いします」
「わかってるよ...」
「わかりました〜」
またも両腕をひっつかまれて、さらに別室へ連行されるオレ。
...と、なぜか(やっぱり?)着いてくるファントムさん。
連れて行かれた先は、コンクリートの床に、二つの魔法陣が書かれている大部屋だった。
魔法陣の一つは、ハート模様が多く刻まれている、ピンクと深紅の中間のような色の魔法陣。
もう一つは、青い色で、矢印と竜巻模様を足したような螺旋状の模様の魔法陣だった。
「ここは...?」
「お、今回の服役者さんかい」
迎えたのは、この部屋の主と思わしきリッチだった。
「ささ、君はこっちの青い方に、お嬢さんはこちらへ」
オレが青い魔法陣の上に立つと、魔法陣を包むようにバリアが張られた。
「何をする!!」
「いや〜、説明してなかったねぇ、ゴメンゴメン」
リッチは言った。
「この国での服役ってのはね、魔物娘の子宮、つまり胎内回帰させることで行うなんだよ。
青い魔法陣の上にあるものを、赤ピンクの魔法陣の子宮の中に転送する形でね。
懲役6年なら、6年間魔物娘の子宮の中で胎児として過ごしてもらうってわけ」
なん..だと...!?
「えっ、栄養とかどうするんだよ!?」
「それは魔法で転送と同時に、人造胎盤とへその緒で母体と服役者を接続するから、栄養は供給され続けるから、無問題。まぁ、魔物娘の魔力に晒され続けるから、インキュバスになっちゃうけどね〜。まぁ、相手は責任とってもいいよーって人を有志で募ってるから、これも無問題よ。
服役が完了したら、自然分娩で外に出られるから、あとは気にせずじっくり罪を償ってねェ」
嘘...だろ...。
「さ、お嬢さんも魔法陣の上に」
「はーい」
ファントムさんが赤ピンクの魔法陣の上に乗る。
こちらにはバリアは出なかった。
「では、転送」
リッチが指をパチンと鳴らす。
その瞬間、全裸にされ、視界が真っ暗になり、無理やり体育座りのような体勢にさせられた。
同時に、へそに何か接続された感覚と、全身を液体が包まれる感覚に襲われる。
...気づけば、もうファントムさんの子宮の中に転送されていたようだ。
どれくらい時間が経っただろうか。
生きている内に、また陽の光を浴びることができるのだろうか...。
那由多の彼方へ飛ばされるような感覚と、現実を行き来するような感覚を永遠に宇宙をさまよう気さえしてくる。
そして出してくれと思っても出られないので、俺は考えるのをやめた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一方、?????時間前、『彼』が元いた部屋。
青い魔法陣の上には中身だけ転送された結果、残された服が転がっており、
『彼』を腹の中に宿し、臨月並のボテ腹と化したファントムと、
魔法を起動したリッチが会話していた。
「いや〜、ご協力感謝します」
「いえいえ、罪を償い終えて産んだ男性は自分の伴侶にしても構わないから志願したまでですよー。下心アリアリなので気にしないでください」
「ですよねー、そういう制度だから、志願者が途絶えないんですよねぇー...」
そう、先述のとおり、罪を償い終えると、自然分娩で体外へ出されるよう魔法術式が組まれている。
そして、腹の中にいる内に、母体に愛情を抱く者が大半なため、自然に結婚するケースが99.9%なのである。
それを承知なので、母体に志願する者が絶えないのである。
是非もなし。
「将来のダーリンもおなかの中にもらったことですし、私はこれで失礼します」
「うむ、よろしくやってあげたまえ」
「それでは〜」
臨月並に腹が膨れてさぞ歩きづらい...かと思いきや、ふわふわと浮遊して部屋を去っていったファントム。
よく考えると、彼女たちに足は日常に必要ないのだった。
リッチが一息ついていると、次の服役者と母体となる魔物娘が入室してきた。
「一息つく暇もないのかね...」
リッチは考えるとのやめた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最近、ファントムの子宮の居心地が変だ。
ビクンビクンと震えている。
なぜだろう?
そう思っていると...
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ああっ、ああああっ♥」
『彼』を宿した私は、今自宅で産気づいていた。
猛烈な快感に襲われながらも、『彼』に第二の誕生日を迎えさせるべくいきんでいた。
「ひぃ、ひぃ、ふぅ〜...ひぃ、ひぃ、ふぅ〜...んっ!!」
思いっきり『いきんだ』ときだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ぶちゅっ、ぶちゅっ、ぶぼぼぼっ。
そんな音を立て、大量の羊水にまみれながら転がった。
久しぶりの、木の床の上だった。
「あっ、産まれた...♥
「あっ、どうも...」
自分を産んだファントムと目が合う。
よく成人男性を自然分娩で産んだものだ、脱帽ものだよ。
俺は自分を抱きしめるファントムを抱き返す。
6年間彼女の腹の中にいたせいかなのかはわからないが、今俺は彼女に愛情を抱くようになっていた。
それほど時間の経たないうちに、俺と彼女は結ばれる気がした......。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺が第二の誕生日を迎えて、結婚してから数ヶ月。
ファントムと連れ立って街を歩いていると、一通りの多い往来で産気づいているケンタウロスを見つけた。
彼女もそうなんだろう。
彼女の腹の中身もそうなんだろう。
第二の誕生日が往来で、人生初の出産が往来でというのも凄まじいが。
がんばれよ、『産まれてから』真人間として生きるのは大変だぞ。
そう思いながら、俺たちはケンタウロスの出産を応援するのだった...。
被告人のオレ...ラモン・マクダウェルはうな垂れた。
たかがタケリダケ関連で6年か、と。
「被告人を、『例の部屋』へ連れて行きなさい、これにて閉廷」
裁判長のバフォメットが退室する。
例の部屋...刑務所じゃなくてか?
「こっちだ」
「ついてこい」
そこに横に着いたオーガとヘルハウンドに両腕を掴まれ、俺はその部屋へ連れて行かれた...。
「...なんだここは」
その部屋には、多種多様な魔物娘が大勢いた。
ここが『例の部屋』なのか...?
「さぁ、この中から一人選べ」
「......なぜ?」
「いいから!!」
その中から俺は...
「この人で...」
「あら、私?」
俺が声を掛けたのは、20歳手前くらいのファントムさんだった。
それを見て、非常に残念がる選ばれなかった魔物娘たち。
「さぁ、こっちこい」
「ご同行、よろしくお願いします」
「わかってるよ...」
「わかりました〜」
またも両腕をひっつかまれて、さらに別室へ連行されるオレ。
...と、なぜか(やっぱり?)着いてくるファントムさん。
連れて行かれた先は、コンクリートの床に、二つの魔法陣が書かれている大部屋だった。
魔法陣の一つは、ハート模様が多く刻まれている、ピンクと深紅の中間のような色の魔法陣。
もう一つは、青い色で、矢印と竜巻模様を足したような螺旋状の模様の魔法陣だった。
「ここは...?」
「お、今回の服役者さんかい」
迎えたのは、この部屋の主と思わしきリッチだった。
「ささ、君はこっちの青い方に、お嬢さんはこちらへ」
オレが青い魔法陣の上に立つと、魔法陣を包むようにバリアが張られた。
「何をする!!」
「いや〜、説明してなかったねぇ、ゴメンゴメン」
リッチは言った。
「この国での服役ってのはね、魔物娘の子宮、つまり胎内回帰させることで行うなんだよ。
青い魔法陣の上にあるものを、赤ピンクの魔法陣の子宮の中に転送する形でね。
懲役6年なら、6年間魔物娘の子宮の中で胎児として過ごしてもらうってわけ」
なん..だと...!?
「えっ、栄養とかどうするんだよ!?」
「それは魔法で転送と同時に、人造胎盤とへその緒で母体と服役者を接続するから、栄養は供給され続けるから、無問題。まぁ、魔物娘の魔力に晒され続けるから、インキュバスになっちゃうけどね〜。まぁ、相手は責任とってもいいよーって人を有志で募ってるから、これも無問題よ。
服役が完了したら、自然分娩で外に出られるから、あとは気にせずじっくり罪を償ってねェ」
嘘...だろ...。
「さ、お嬢さんも魔法陣の上に」
「はーい」
ファントムさんが赤ピンクの魔法陣の上に乗る。
こちらにはバリアは出なかった。
「では、転送」
リッチが指をパチンと鳴らす。
その瞬間、全裸にされ、視界が真っ暗になり、無理やり体育座りのような体勢にさせられた。
同時に、へそに何か接続された感覚と、全身を液体が包まれる感覚に襲われる。
...気づけば、もうファントムさんの子宮の中に転送されていたようだ。
どれくらい時間が経っただろうか。
生きている内に、また陽の光を浴びることができるのだろうか...。
那由多の彼方へ飛ばされるような感覚と、現実を行き来するような感覚を永遠に宇宙をさまよう気さえしてくる。
そして出してくれと思っても出られないので、俺は考えるのをやめた。
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一方、?????時間前、『彼』が元いた部屋。
青い魔法陣の上には中身だけ転送された結果、残された服が転がっており、
『彼』を腹の中に宿し、臨月並のボテ腹と化したファントムと、
魔法を起動したリッチが会話していた。
「いや〜、ご協力感謝します」
「いえいえ、罪を償い終えて産んだ男性は自分の伴侶にしても構わないから志願したまでですよー。下心アリアリなので気にしないでください」
「ですよねー、そういう制度だから、志願者が途絶えないんですよねぇー...」
そう、先述のとおり、罪を償い終えると、自然分娩で体外へ出されるよう魔法術式が組まれている。
そして、腹の中にいる内に、母体に愛情を抱く者が大半なため、自然に結婚するケースが99.9%なのである。
それを承知なので、母体に志願する者が絶えないのである。
是非もなし。
「将来のダーリンもおなかの中にもらったことですし、私はこれで失礼します」
「うむ、よろしくやってあげたまえ」
「それでは〜」
臨月並に腹が膨れてさぞ歩きづらい...かと思いきや、ふわふわと浮遊して部屋を去っていったファントム。
よく考えると、彼女たちに足は日常に必要ないのだった。
リッチが一息ついていると、次の服役者と母体となる魔物娘が入室してきた。
「一息つく暇もないのかね...」
リッチは考えるとのやめた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最近、ファントムの子宮の居心地が変だ。
ビクンビクンと震えている。
なぜだろう?
そう思っていると...
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「ああっ、ああああっ♥」
『彼』を宿した私は、今自宅で産気づいていた。
猛烈な快感に襲われながらも、『彼』に第二の誕生日を迎えさせるべくいきんでいた。
「ひぃ、ひぃ、ふぅ〜...ひぃ、ひぃ、ふぅ〜...んっ!!」
思いっきり『いきんだ』ときだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ぶちゅっ、ぶちゅっ、ぶぼぼぼっ。
そんな音を立て、大量の羊水にまみれながら転がった。
久しぶりの、木の床の上だった。
「あっ、産まれた...♥
「あっ、どうも...」
自分を産んだファントムと目が合う。
よく成人男性を自然分娩で産んだものだ、脱帽ものだよ。
俺は自分を抱きしめるファントムを抱き返す。
6年間彼女の腹の中にいたせいかなのかはわからないが、今俺は彼女に愛情を抱くようになっていた。
それほど時間の経たないうちに、俺と彼女は結ばれる気がした......。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺が第二の誕生日を迎えて、結婚してから数ヶ月。
ファントムと連れ立って街を歩いていると、一通りの多い往来で産気づいているケンタウロスを見つけた。
彼女もそうなんだろう。
彼女の腹の中身もそうなんだろう。
第二の誕生日が往来で、人生初の出産が往来でというのも凄まじいが。
がんばれよ、『産まれてから』真人間として生きるのは大変だぞ。
そう思いながら、俺たちはケンタウロスの出産を応援するのだった...。
16/12/03 17:30更新 / 妖怪人間ボム